JP2012211569A - ロータリ圧縮機 - Google Patents

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順英 樋口
Keiji Komori
啓治 小森
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ちひろ 遠藤
Masaaki Adachi
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Abstract

【課題】高圧ドーム型のロータリ圧縮機において圧縮機構の揺動ピストンと駆動軸の偏心部との間へ潤滑油を供給する場合に、十分な量の潤滑油を供給する。
【解決手段】給油ポンプ36を備え、ケーシング10内の油溜まりから、偏心部35bと揺動ピストン42との摺動部へ給油し、この摺動部からケーシング10の内部空間へ潤滑油を排出する排油通路71を圧縮機構20の第1プレート43に形成する。
【選択図】図2

Description

本発明は、ロータリ圧縮機に関し、特に、高圧ドーム型のロータリ圧縮機において圧縮機構へ潤滑油を供給する構造に関するものである。
従来、ローリングピストン型や揺動ピストン型のロータリ圧縮機は、一般に、縦型円筒形状で密閉型の圧力容器であるケーシングの中に、圧縮機構と駆動機構とが設けられた構成になっている。上記圧縮機構は、ケーシングに固定されるシリンダと、このシリンダに形成されているシリンダ室の中で偏心回転動作をするピストンとを備えている。
いわゆる高圧ドーム型の圧縮機は、ケーシング内の空間が高圧圧力(吐出圧力)になる圧縮機である。高圧ドーム型圧縮機では、圧縮機構で圧縮された高圧ガスがケーシング内に充満してケーシング内が高圧圧力になった後、ケーシングに設けられている吐出管から機外へ高圧ガスが吐出される。
上記駆動機構は、ステータとロータとからなる電動機と、電動機のロータに固定された駆動軸とを有し、この駆動軸とロータとが一体的に回転するように構成されている。駆動軸(クランク軸)は、主軸部と、主軸部の中心から偏心して形成された偏心部(偏心ピン)を有している。この偏心ピンには上記圧縮機構のピストンが装着されている。
上記圧縮機の電動機を起動すると、ステータの中でロータが回転し、それに伴って駆動軸が回転する。駆動軸が回転すると、主軸部の回転中心の周りで、偏心ピンの偏心量を半径とする周回軌道上を該偏心ピンが旋回(公転)する。偏心ピンにはピストンが装着されているので、シリンダ室内でピストンが旋回(公転)することになる。なお、ピストンの外周面とシリンダの内周面との間には、シリンダの内周面に潤滑油の膜が形成される程度の微細なクリアランスが形成されている。
上記圧縮機構は、シリンダ室を低圧室(吸入室)と高圧室(圧縮室)の2つに区画するブレードを有している。圧縮機構には、ピストンとは別部材で形成されたブレードの先端がピストンの外周面に圧接する構成(ローリングピストン型圧縮機構)と、特許文献1に記載されているように、ピストンと一体的に形成されたブレードが揺動ブッシュを介してシリンダに保持される構成(揺動ピストン型圧縮機構)とがある。
この種の圧縮機の駆動軸の下端部には給油ポンプが取り付けられ、駆動軸の内部には給油ポンプに連通する給油通路が形成されている。そして、ケーシング内の底部の油溜まりに溜まった潤滑油が、この給油ポンプで吸い上げられ、給油通路を通って偏心ピンとピストンとの間の摺動部に供給される。油溜まりが高圧であり、上記摺動部はシリンダ室の低圧室につながっていて油溜まりよりも低圧であるから、その圧力差によって冷凍機油が油溜まりからシリンダ室に供給される(差圧給油)。偏心ピンとピストンとの間に潤滑油を供給する構成は、圧縮機構がローリングピストン型と揺動ピストン型のどちらの場合でも、一般的には同じである。また、上記摺動部に供給された冷凍機油はシリンダ室の吸入側(低圧室)へ流入する。
特開2008−45415号公報
従来の高圧ドーム型の単段圧縮機で、偏芯ピンとピストンの摺動部への潤滑油の供給は、ケーシング内の底部の油溜まりに溜まった油を、シリンダの外側端を閉塞するミドルプレートやプレートとピストンの高さ方向のクリアランス部の絞りを通じてシリンダ室の低圧室に差圧給油することで行っている。ところで、特許文献1の圧縮機は、2シリンダの圧縮機を用いて、冷媒回路の冷媒を2段圧縮するように構成されている。この構成において、偏芯ピンとピストンの摺動部への潤滑油の供給を、従来の様に差圧給油を行う場合には、圧縮機のケーシング内の高圧空間と低段側圧縮機構の吸入側との圧力差は、従来の単段圧縮と同等の圧力差になるので、2段圧縮の低段側では、単段圧縮と同量の潤滑油を差圧給油することが出来る。
しかし、2段圧縮の高段側では、圧縮機のケーシング内の高圧空間と高段側圧縮機構の吸入側との圧力差は、その高圧空間と低段側圧縮機構の吸入側との圧力差より小さくなる。そのため、高段側圧縮機構の偏芯ピンとピストンの摺動部への潤滑油の供給量が、低段側のそれより少なくなり、給油量が不足することが考えられる。
このような給油量不足は、運転状態が変化して冷媒回路の高圧圧力が低下した場合などに生じやすく、そうすると潤滑不良で偏心部(偏心ピン)が異常摩耗したり焼き付いたりするおそれがある。また、給油量を増やすために、シリンダの外側端を閉塞するミドルプレートやプレートとピストンの高さ方向のクリアランスを広げて差圧給油量を確保しようとすると、そのクリアランスを潤滑油だけでなく、冷媒ガスが流れる量も増え、高温の冷媒ガスが圧縮室の低圧側へ流入することになる。その結果、圧縮機効率の低下や、吐出冷媒ガス温度の異常上昇で運転出来なくなる問題が生じる事になる。
本発明は、このような問題点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、高圧ドーム型のロータリ圧縮機において圧縮機構の偏心ピンとピストンとの間へ潤滑油を供給する場合に、十分な量の潤滑油を供給できるようにして、圧縮機の運転効率が低下したり摺動部の摩耗や焼き付きが生じたりしにくくすることである。
第1の発明は、圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)を駆動する駆動軸(35)を有する駆動機構(30)と、圧縮機構(20)及び駆動機構(30)を収納するケーシング(10)と、圧縮機構(20)及び駆動機構(30)の摺動部(80,81)に給油をする給油ポンプ(36)とを備え、上記圧縮機構(20)が、シリンダ室(25,26)を有するシリンダ(41,51)と、シリンダ室(25,26)の中でシリンダ室(25,26)の内周面に沿って周回動作をするピストン(42,52)とを備え、上記駆動軸(35)が、主軸部(35a)と、主軸部(35a)の中心から偏心して形成されて上記ピストン(42,52)に嵌合する偏心部(35b,35c)とを備え、上記給油ポンプ(36)が、ケーシング(10)内の油溜まりから上記偏心部(35b,35c)とピストン(42,52)の摺動部(80,81)に潤滑油を供給するように構成されている高圧ドーム型のロータリ圧縮機を前提としている。
そして、このロータリ圧縮機は、上記偏心部(35b,35c)とピストン(42,52)の摺動部(80,81)からケーシング(10)の内部空間へ潤滑油を排出する排油通路(71,72)を備えていることを特徴としている。
この第1の発明では、ケーシング(10)内の油溜まりから上記摺動部(80,81)へ潤滑油が給油ポンプ(36)によって送られる。摺動部(80,81)へ送られた潤滑油は、後から送られてくる潤滑油に押し出されるようにして、排油通路(71,72)を通ってケーシング(10)の内部空間へ流出する。潤滑油は連続的に排油通路(71,72)を流れるので、偏心部(35b,35c)とピストン(42,52)の間の摺動部(80,81)に留まらない。したがって、先に摺動部(80,81)に入っている潤滑油は、後から送られてくる潤滑油が摺動部(80,81)へ流入する際の抵抗にはならない。
第2の発明は、第1の発明において、
上記圧縮機構(20)が、第1圧縮機構(40)と第2圧縮機構(50)が重ねて配置された2段圧縮機構(20)であり、第1圧縮機構(40)の第1シリンダ(41)と第2圧縮機構(50)の第2シリンダ(51)とがミドルプレート(21)を挟んで積層され、第1シリンダ(41)の外側端が第1プレート(43)で閉塞され、第2シリンダ(51)の外側端が第2プレート(53)で閉塞され、上記駆動軸(35)が、第1圧縮機構(40)のピストン(42)と嵌合する第1偏心部(35b)と、第2圧縮機構(50)のピストン(52)と嵌合する第2偏心部(35c)とを有することを特徴としている。
この第2の発明では、2シリンダタイプの圧縮機において、第1圧縮機構(40)と第2圧縮機構(50)の両方で、摺動部(80,81)へ供給された潤滑油が、後から送られてくる潤滑油に押し出されて排油通路(71,72)を通り、ケーシング(10)の内部空間へ流出する。潤滑油は連続的に排油通路(71,72)を流れるので、上記摺動部(80,81)に留まらない。したがって、後から送られてくる潤滑油が摺動部(80,81)へ流入する際の抵抗にはならない。
第3の発明は、第2の発明において、上記圧縮機構(20)は、上記第2圧縮機構(50)が低段側圧縮機構であり、第1圧縮機構(40)が高段側圧縮機構であり、第1圧縮機構(40)の第1プレート(43)に上記排油通路(71,72)を構成する第1排油通路(71)が形成されていることを特徴としている。
この第3の発明では、高段側である第1圧縮機構(40)の摺動部(80,81)に供給されている潤滑油は、後から送られてくる潤滑油に押し出されて排油通路(71,72)を通り、ケーシング(10)の内部空間へ流出する。潤滑油は連続的に排油通路(71,72)を流れるので、上記摺動部(80,81)に留まらない。したがって、後から送られてくる潤滑油が上記摺動部(80,81)へ流入する際の抵抗にはならない。また、低段側である第2圧縮機構(50)の摺動部(80,81)には、潤滑油の高圧圧力と吸入圧力との圧力差を利用して効率よく給油できる。
第4の発明は、第3の発明において、上記第1偏心部(35b)に、その第1偏心部(35b)を一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第1連通孔(73)が形成されていることを特徴としている。
第5の発明は、第4の発明において、上記第2偏心部(35c)には、その第2軸心部を一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第2連通孔(74)が形成されていることを特徴としている。
第6の発明は、第2の発明において、第2圧縮機構(50)が低段側圧縮機構であり、第1圧縮機構(40)が高段側圧縮機構であり、第2圧縮機構(50)の第2プレート(53)に上記排油通路(71,72)を構成する第2排油通路(72)が形成され、上記第2偏心部(35c)には、その第2偏心部(35c)を一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第2連通孔(74)が形成されていることを特徴としている。
この第6の発明では、高段側である第1圧縮機構(40)の摺動部(81)に供給された潤滑油は、後から送られてくる潤滑油に押し出されて連通孔(74)から排油通路(71)を通り、ケーシング(10)の内部空間へ流出する。潤滑油は連続的に排油通路(71)を流れるので、偏心部(35b)とピストン(42)との摺動部(81)には留まらない。したがって、第1圧縮機構(40)において、摺動部(81)に既に存在する潤滑油は、後から送られてくる潤滑油が上記摺動部(81)へ流入する際の抵抗にはならない。また、低段側である第2圧縮機構(50)の摺動部(80)に供給された潤滑油は、潤滑油の高圧圧力と吸入圧力との圧力差を利用して効率よく給油できる。
第7の発明は、第6の発明において、上記第1偏心部(35b)には、その第1偏心部(35b)を一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第1連通孔(73)が形成されていることを特徴としている。
第8の発明は、第2の発明において、上記第2圧縮機構(50)が低段側圧縮機構であり、上記第1圧縮機構(40)が高段側圧縮機構であり、第1圧縮機構(40)の第1プレート(43)に第1排油通路(71)が形成され、第2圧縮機構(50)の第2プレート(53)に第2排油通路(72)が形成され、第1偏心部(35b)をその一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第1連通孔(73)と、第2偏心部(35c)をその一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第2連通孔(74)とが形成されていることを特徴としている。
この第8の発明では、高段側である第1圧縮機構(40)の摺動部(81)に供給された潤滑油は、後から送られてくる潤滑油に押し出されて第1排油通路(71)を通り、ケーシング(10)の内部空間へ流出する。低段側である第2圧縮機構(50)の摺動部(80)に供給された潤滑油は、後から送られてくる潤滑油に押し出されて第2排油通路(72)を通り、ケーシング(10)の内部空間へ流出する。その際、第1,第2圧縮機構(50)の摺動部(80,81)に供給された潤滑油は、第1連通孔(73)及び第2連通孔(74)を通って各排油通路(71,72)へ流れていく。
第9の発明は、第4から第8の発明のいずれか1つにおいて、上記連通孔(73,74)は、駆動軸(35)の回転時の遠心力により該連通孔(74)の中の潤滑油が排出される方向へ傾斜していることを特徴としている。
この第9の発明では、連通孔(74)の中の油は、駆動軸が回転するときに排出されやすくなる。そのため、潤滑油が偏心部(35b,35c)とピストン(42,52)の摺動部(80,81)に溜まりにくくなる。
第10の発明は、第6から第9の発明のいずれか1つにおいて、上記第2プレート(53)に形成される第2排油通路(72)は、出口が上記油溜まりの中に開口していることを特徴としている。
第1プレート(43)と第2プレート(53)の各排油通路(71,72)を比較した場合、第2プレート(53)を第1プレート(43)の下方に配置すると、第2プレート(53)の排油通路(71,72)の方が第1プレート(43)の排油通路(71,72)よりも油が油溜まりに戻りやすい。一方、この第10の発明では、油溜まりの中に第2プレート(53)の排油通路(71,72)の出口が開口しているので、第2プレート(53)の排油通路(71,72)の出口と油溜まりとの間にガスが介在しない。両者の間にガスが存在すると、そのガスが排油通路(71,72)を逆流して上記摺動部(80,81)にガスが流入する可能性があるが、この発明ではガスの逆流は生じない。
本発明によれば、摺動部(80,81)へ送られた潤滑油が、後から送られてくる潤滑油に押し出されるようにして、排油通路(71,72)を通ってケーシング(10)の内部空間へ流出する。したがって、既に摺動部(80,81)に存在する潤滑油がその場所に留まらないので、後から送られてくる潤滑油が摺動部(80,81)へ流入する際の抵抗にはならない。また、本発明によれば、シリンダ(41,51)の外側端を閉塞するミドルプレートやプレートとピストン(42,52)の高さ方向のクリアランス部を通って圧縮室へ流れる摺動部(80,81)を潤滑して高温になった潤滑油の量が減っても、摺動部(80,81)への給油量は減らないので、摺動部(80,81)の潤滑を確保しながら、圧縮室へ入る油の量を少なく出来る。したがって、圧縮機の効率が低下するのを抑えられる。このように、本発明においては、上記の差圧は潤滑性能には実質的に影響しないので、2段圧縮機構(20)の高段側で高圧圧力と中間圧力の圧力差が小さくなる場合でも、給油量が不足するのを防止できる。
以上のように、本発明によれば、高圧ドーム型のロータリ圧縮機において圧縮機の効率
を低下させることなく圧縮機構(20)の偏心部(35b,35c)とピストン(42,52)との間へ十分な量の潤滑油を供給することができる。
上記第2の発明によれば、第1圧縮機構(40)と第2圧縮機構(50)の両方において、摺動部(80,81)へ送られた潤滑油が、後から送られてくる潤滑油に押し出されて排油通路(71,72)からケーシング(10)の内部空間へ流出する。そのため、潤滑油が偏心部(35b,35c)とピストン(42,52)の摺動部(80,81)に留まらないので、後から送られてくる潤滑油が摺動部(80,81)へ流入する際の抵抗にはならず、潤滑性能を高められる。また、高温の潤滑油が低圧の圧縮室へ入ることによる圧縮機の効率低下や、高圧圧力と中間圧力(吸入圧力)の圧力差が小さい場合の給油量不足も防止できる。したがって、第1の発明と同様に、高圧ドーム型のロータリ圧縮機において、圧縮機構(20)の偏心部(35b,35c)とピストン(42,52)との間へ十分な量の潤滑油を供給することができる
上記第3の発明によれば、高段側の第1圧縮機構(40)において、吸入圧力(中間圧力)と潤滑油の高圧圧力との圧力差が小さくなった場合に、上記摺動部(80,81)への給油量が不足しやすいのに対して、摺動部(80,81)に供給される潤滑油を第1排油通路(71)からケーシング(10)内の空間へ流出させることにより、第1圧縮機構(40)における給油抵抗を減らして十分な給油量を確保できる。
上記第6の発明によれば、高段側の第1圧縮機構(40)において、吸入圧力(中間圧力)と潤滑油の高圧圧力との圧力差が小さくなった場合に上記摺動部(81)での給油不足が生じやすいのに対して、摺動部(81)に供給された潤滑油が、後から送られてくる潤滑油に押し出されて連通孔から排油通路(71)を通り、ケーシング(10)の内部空間へ流出するようにしている。このため、潤滑油が上記摺動部(81)に留まらない。したがって、第1圧縮機構(40)における給油抵抗を減らして十分な給油量を確保できる。また、低段側の第2圧縮機構(50)の摺動部(80)に供給される潤滑油も第2排油通路(72)から排出できるので、第2圧縮機構(50)においても十分な給油量を確保できる。
上記第8の発明によれば、高段側である第1圧縮機構(40)の摺動部(81)に供給された潤滑油は、後から送られてくる潤滑油からの圧力を受けて押し出され、第1排油通路(71)を通ってケーシング(10)の内部空間へ流出する。低段側である第2圧縮機構(50)の摺動部(80)に供給された潤滑油は、後から送られてくる潤滑油の圧力を受けて押し出され、第2排油通路(72)を通ってケーシング(10)の内部空間へ流出する。その際、第1,第2圧縮機構(50)の摺動部(80,81)に供給された潤滑油は、第1連通孔(73)及び第2連通孔(74)を通って各排油通路(71,72)側へ流れていく。したがって、第1圧縮機構(40)と第2圧縮機構(50)の両方における給油に対する抵抗を減らして十分な給油量を確保できる。
上記第9の発明によれば、第1連通孔(73)と第2連通孔(74)の中の潤滑油が、駆動軸が回転するときに遠心力の作用を受けて連通孔(73,74)から流出していくようにしているので、第1,第2排油通路(71,72)からケーシング(10)内へ排出されやすくなる。したがって、潤滑油が各圧縮機構(40,50)の摺動部(80,81)に留まりにくくなり、十分な給油量を確保しやすくなる。
上記第10の発明によれば、第2プレート(53)に形成される第2排油通路(72)の出口が上記油溜まりの中に開口しているので、第2排油通路(72)の出口と油溜まりとの間にガスが介在しない状態になる。両者の間にガスが存在すると、そのガスが第2排油通路(72)を逆流して上記摺動部(80)に流入する可能性があるが、この発明ではガスの逆流は生じない。したがって、上記摺動部(80)の潤滑性能が低下するのを防止できる。また、第2プレート(53)を第1プレート(43)の下方に配置すると、第2プレート(53)の排油通路(72)の方が第1プレート(43)の排油通路(71)よりも油が油溜まりに戻りやすくなるので、排油性能も向上する。
図1は、本発明の実施形態1に係るロータリ圧縮機の縦断面図である。 図2は、実施形態1に係る圧縮機の要部拡大断面図である。 図3は、圧縮機構の横断面図である。 図4は、揺動ブッシュの斜視図である。 図5は、実施形態1の第1の変形例に係るブッシュ給油通路の構成を示す断面図である。 図6は、図5の圧縮機構の横断面図である。 図7は、実施形態1の第2の変形例に係るブッシュ給油通路の構成を示す断面図である。 図8は、図7の圧縮機構の横断面図である。 図9は、実施形態1の第3の変形例に係るブッシュ給油通路の構成を示す断面図である。 図10は、図9の圧縮機構の横断面図である。 図11は、実施形態2に係る圧縮機の要部拡大断面図である。 図12は、実施形態2の変形例に係る圧縮機の要部拡大断面図である。 図13は、実施形態3に係る圧縮機の要部拡大断面図である。 図14は、実施形態4に係る圧縮機の要部拡大断面図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係るロータリ圧縮機(1)の縦断面図である。このロータリ圧縮機(1)は冷媒回路に設けられ、冷凍サイクルの圧縮行程を行うものである。図示するように、このロータリ圧縮機(1)は全密閉型圧縮機であって、上下が閉塞された縦長円筒状のケーシング(10)と、圧縮機構(20)と、圧縮機構(20)を駆動する駆動機構(30)とを備えている。上記ケーシング(10)には圧縮機構(20)及び駆動機構(30)が収納されている。上記駆動機構(30)は電動機(31)と駆動軸(35)とを備えている。電動機(31)はケーシング(10)内の空間における上方寄りの位置でケーシング(10)に固定され、圧縮機構(20)は電動機(31)よりも下方の位置においてケーシング(10)に固定されている。
図2は圧縮機構の構造を示す図1の要部拡大断面図、図3は圧縮機構の横断面図である。上記圧縮機構(20)は、第1圧縮機構(40)と第2圧縮機構(50)を上下に重ねて配置した2段圧縮機構である。この実施形態では、第1圧縮機構(40)が第2圧縮機構(50)の上方に配置されている。また、この実施形態においては、第2圧縮機構(50)が低段側圧縮機構であり、第1圧縮機構(40)が高段側圧縮機構である。
上記ケーシング(10)には、第2圧縮機構(50)に接続される低段側吸入管(11)と、低段側圧縮機構(50)に接続される低段側吐出管(12)と、第1圧縮機構(40)に接続される高段側吸入管(13)と、ケーシング(10)内に開口する高段側吐出管(14)とが設けられている。低段側吐出管(12)は高段側吸入管(13)に接続管(図示せず)を介して接続されている。低段側吸入管(12)にはアキュムレータ(15)が接続され、高段側吸入管(13)にはマフラー(16)が接続されている。また、上記接続管には、図示していないが、中間冷却器を有するインジェクション配管が接続されている。
上記第1圧縮機構(40)及び第2圧縮機構(50)は、それぞれ、シリンダ室(25,26)を有するシリンダ(41,51)(第1シリンダ(41)及び第2シリンダ(51))と、シリンダ室(25,26)の中でシリンダ室(25,26)の内周面に沿って周回軌道上を公転する揺動ピストン(42,52)(第1揺動ピストン(42)及び第2揺動ピストン(52))とを備えている。第1圧縮機構(40)は、第1シリンダ(41)と第1揺動ピストン(42)に加えてフロントヘッド(第1プレート)(43)を備え、第2圧縮機構(50)は、第2シリンダ(51)と第2揺動ピストン(52)に加えてリヤヘッド(第2プレート)(53)を備えている。また、第1シリンダ(41)と第2シリンダ(51)の間にはミドルプレート(21)が設けられている。
このように、第1圧縮機構(40)の第1シリンダ(41)と第2圧縮機構(50)の第2シリンダ(51)とがミドルプレート(21)を挟んで積層されている。また、第1シリンダ(41)の外側端がフロントヘッド(43)(第1プレート)で閉塞され、第2シリンダ(51)の外側端がリヤヘッド(53)(第2プレート)で閉塞されている。第1シリンダ(41)及び第2シリンダ(51)の内側端は、それぞれミドルプレート(21)で閉塞されている。
そして、上記圧縮機構(20)は、フロントヘッド(43)、第1シリンダ(41)、ミドルプレート(21)、第2シリンダ(51)、及びリヤヘッド(53)を上方から下方へ重ねて締結して、これらを一体化することにより構成されている。フロントヘッド(43)の上面にはマフラー(22)が固定され、リヤヘッド(53)の下面には下部プレート(23)が固定されている。
駆動軸(35)は、ケーシング(10)の上下方向の中心線に沿って配置されている。駆動軸(35)は、主軸部(35a)と、主軸部(35a)の中心から偏心して形成されて上記各揺動ピストン(42,52)に嵌合する偏心部(偏心ピン)(35b,35c)とを備えている。この偏心部(35b,35c)には、第1揺動ピストン(42)に嵌合する第1偏心部(35b)と、第2揺動ピストン(52)に嵌合する第2偏心部(35c)とが含まれている。第1偏心部(35b)は、第1シリンダ(41)に形成されている第1シリンダ室(25)内に位置するように形成され、第2偏心部(35c)は、第2シリンダ(51)に形成されている第2シリンダ室(26)内に位置するように形成されている。第1偏心部(35b)と第2偏心部(35c)は、主軸部(35a)の回転中心に対する偏心方向が180°ずれている。
上記各揺動ピストン(42,52)には、その外周面から径方向外方へのびるブレード(42a,52a)(第1ブレード(42a)及び第2ブレード(52a))が一体的に形成されている。各シリンダ(41,51)には、図4に外観形状を示すようにほぼ半月形状の一対の揺動ブッシュ(44,54)(第1揺動ブッシュ(44)及び第2揺動ブッシュ(54))が保持されている。これらの揺動ブッシュ(44,54)は、平面部分が対向して配置され、各シリンダ(41,51)のブッシュ孔(45,55)(第1ブッシュ孔(45)及び第2ブッシュ孔(55))に保持されている。第1揺動ブッシュ(44)及び第2揺動ブッシュ(54)のそれぞれの一対の平面の間にブレード溝(46,56)(第1ブレード溝(46)及び第2ブレード溝(56))が形成され、このブレード溝(46,56)に上記ブレード(42a,52a)がそれぞれ挿入されている。上記各シリンダ(41,51)には、ブッシュ孔(45,55)の径方向外側に背圧空間(47,57)(第1背圧空間(47)及び第2背圧空間(57))が形成されている。これらの背圧空間(47,57)を各シリンダ(41,51)に設けることにより、各ブレード(42a,52a)の進退動作と揺動動作が可能になっている。
一対の揺動ブッシュ(44,54)は、ブレード(42a,52a)に対して図3の左側に配置されている吐出側ブッシュと、ブレード(42a,52a)に対して図3の右側に配置されている吸入側ブッシュとを含んでいる。本実施形態では、揺動ブッシュ(44,54)には、吐出側と吸入側のいずれにも、上下方向(駆動軸(35)の軸方向)にのびる油溝(44a,54a)がその平面部分(ブレード(42a,52a)に対向する揺動ブッシュ(44,54)の平面)に形成されている。
圧縮機構(20)には、上記油溜まりからブッシュ孔(45,55)まで潤滑油を供給するために、図2に示すブッシュ給油通路(60)が形成されている。ブッシュ給油通路(60)は、リヤヘッド(53)、第2シリンダ(51)及びミドルプレート(21)に順に形成された一本の主給油通路(61)と、主給油通路(61)から分岐して各ブッシュ孔(45,55)に連通する分岐給油通路(62)とを有している。主給油通路(61)はリヤヘッド(53)にチューブを接続することにより構成されている。分岐給油通路(62)は、ミドルプレート(21)を上下方向に貫通して第1シリンダ(41)と第2シリンダ(51)のブッシュ孔(45,55)同士を連通する縦孔(63)と、この縦孔(63)と主給油通路(61)とを連通するようにミドルプレート(21)に形成された連通孔(64)とから構成されている。縦孔(63)は、吸入側の油溝(44a,54a)に連通している。
上記連通孔(64)は、駆動軸(35)の軸心に直角な線分に対して、主給油通路(61)側の端部がフロントヘッド(43)側に位置するように斜めに形成されている。連通孔(64)は、駆動軸(35)の軸心に直角な線分に対してリヤヘッド(53)側へ斜めに形成してもよい。このように連通孔(64)を斜めに形成する理由は、上記連通孔(64)を上記軸心に直角な線分に沿って(ミドルプレート(21)の軸方向両端面と平行な線分に沿って)形成すると、連通孔(64)の外周端がミドルプレート(21)の外周面に開口するので、その開口を閉塞するためのプラグが必要になるのに対して、連通孔(64)を斜めにすると、連通孔(64)を主給油通路(61)の開口からドリルを挿入して形成できるので、ミドルプレート(21)の外周面に開口が形成されないようにすることが可能になり、その外周面に開口が形成される場合に必要な閉塞用のプラグを用いなくて済むからである。
なお、本実施形態では、各揺動ピストン(42,52)のブレード(42a,52a)を挟んで左右両側に位置するシリンダ室(25,26)のうち、右側のシリンダ室(25,26)が吸入室であって圧力が低圧でほぼ一定に保たれる一方、左側のシリンダ室(25,26)は圧縮室であって圧力が高圧から低圧まで繰り返し変動する。このため、ブレード(42a,52a)には、図3の左側から右側へ(圧縮室から吸入室へ)向かって、高圧圧力と低圧圧力との圧力差で押し付けられる傾向がある。
このように、ブレード(42a,52a)と吸入側の揺動ブッシュ(44,54)との摺動面が圧接状態となる構成において、吸入側ッシュにおけるブレード(42a,52a)との摺動面に形成される軸方向の油溝(44a,54a)は、吸入側ブッシュとブレード(42a,52a)の摺動面を潤滑する機能を有する。
一方、吐出側ブッシュは、ブレード(42a,52a)の左側のシリンダ室(圧縮室)(25,26)の圧力が高圧圧力と低圧圧力の間で変動するのでチャタリングを起こしやすいが、この吐出側ブッシュの油溝(44a,54a)に高圧の潤滑油を供給すると吐出側ブッシュの外周の円弧面をブッシュ孔(45,55)の内面に(図3の左方向に)押し付けることができる。したがって、揺動ブッシュ(44,54)のチャタリングを抑えることができる。
上記駆動軸(35)の下端部には給油ポンプ(36)が設けられている。また、駆動軸(35)の内部には、給油ポンプ(36)から上方へ向かってのびる給油通路(37)が形成されている。この給油通路(37)には、フロントヘッド(43)と第1シリンダ(41)の間の位置と、リヤヘッド(53)と第2シリンダ(51)の間の位置とにおいて、駆動軸(35)に形成された給油孔(38)が連通している。駆動軸(35)には、給油孔(38)が開口する位置において、周方向にのびる給油溝(39)が形成されている。上記給油ポンプ(36)、給油通路(37)、給油孔(38)及び給油溝(39)により、上記偏心部(35b,35c)と揺動ピストン(42,52)とが摺動する摺動部(80,81)へ、ケーシング(10)内に形成される油溜まりから潤滑油を供給する給油ポンプ(36)が構成されている。
上記圧縮機構(20)には、図2に示すように、駆動軸(35)の偏心部(35b)と揺動ピストン(42)との摺動部(81)からケーシング(10)の内部空間へ潤滑油(冷凍機油)を排出する第1排油通路(71)が形成されている。この第1排油通路(71)は、フロントヘッド(第1プレート)(43)に形成されている。第1排油通路(71)は、一端(フロントヘッド(43)の内周側の端部)が駆動軸(35)の給油溝(39)に向かって開口し、他端がフロントヘッド(43)の外周面に開口する通路である。この実施形態において、第1排油通路(71)は、高段側圧縮機構である第1圧縮機構(40)にだけ形成されている。この第1排油通路(71)は、その中を冷凍機油が流れるときに、冷凍機油の流れの抵抗が大きくならない程度に直径が定められている。この第1排油通路(71)の直径は、使用する冷凍機油の粘度など、条件に応じて決定すればよい。
−運転動作−
次に、この実施形態に係る圧縮機(1)の運転動作について説明する。
電動機(31)を起動すると駆動軸(35)が回転し、その回転が圧縮機構(20)に伝達される。圧縮機構(20)においては、電動機(31)の回転に伴って、駆動軸(35)の各偏心部(35b,35c)が、その偏心量を半径とする周回軌道上を旋回する。一方、各揺動ピストン(42,52)は、ブレード(42a,52a)が揺動ブッシュ(44,54)に保持されているので、揺動ブッシュ(44,54)の中心に対して振り子のような動作(揺動動作)を行う。以上の動きが合成されて、揺動ピストン(42,52)は、ブレード(42a,52a)が揺動ブッシュ(44,54)に対して進退するとともに揺動ブッシュ(44,54)と一緒に揺動しながら、シリンダ(41,51)の内周面に沿って周回軌道上を旋回する。上記の動作は、第1圧縮機構(40)と第2圧縮機構(50)のいずれも同じである。
低段側の第2圧縮機構(50)では、第2揺動ピストン(52)の動作により、低段側吸入管(11)から第2シリンダ室(26)に低圧冷媒が吸入されてから圧縮され、中間圧になった冷媒が低段側吐出管(12)から吐出される。この冷媒は、図示していない接続管を通る際に中間冷却器で冷却された後に、高段側吸入管(13)から高段側圧縮機構である第1圧縮機構(40)に吸入される。
第1圧縮機構(40)に吸入された冷媒は、第1揺動ピストン(42)の動作によって圧縮されて高圧冷媒になり、ケーシング(10)内の空間へ流出する。ケーシング(10)内に流出した高圧冷媒は、そのケーシング(10)に設けられている高段側吐出管(14)から圧縮機(1)の外へ吐出される。高段側吐出管(14)から吐出された冷媒は、図示していない冷媒回路内を循環する際の放熱行程、膨張行程及び蒸発行程を経て、ふたたび第2圧縮機構(50)に吸入される。
圧縮機構(20)の動作が行われるとき、駆動軸(35)の下端部に設けられている給油ポンプ(36)により冷凍機油(潤滑油)が吸い上げられる。この冷凍機油は、駆動軸(35)の内部に形成されている給油通路(37)を通って上方へ送られて一部が横孔(38)を通り、偏心部(35b,35c)と揺動ピストン(42,52)とが摺動する摺動部(80,81)に供給される。この摺動部(80,81)に冷凍機油が供給されることにより、駆動軸(35)が円滑に回転する。また、冷凍機油は、フロントヘッド(43)及びリヤヘッド(53)と駆動軸(35)との摺動部分(軸受け部)にも供給される。
上記摺動部(81)には冷凍機油が連続的に送られてくるので、摺動部(81)で油が滞っていると後から送られてくる冷凍機油が摺動部(80,81)に導入されにくくなる。しかし、本実施形態では、後から送られてくる冷凍機油により、既に摺動部(81)に導入されている冷凍機油が押し出され、押し出された冷凍機油が第1排油通路(71)を通ってケーシング(10)内へ流出する。ケーシング(10)内へ流出した冷凍機油は、ケーシング(10)の底部の油溜まりへ戻っていく。
−実施形態1の効果−
この実施形態1によれば、第1偏心部(35b)と第1揺動ピストン(42)との間の摺動部(81)に供給されている冷凍機油を第1排油通路(71)からケーシング(10)内へ排出できるようにしているので、駆動軸(35)の下端部から給油ポンプ(36)で汲み上げられた冷凍機油を上記摺動部(81)に供給するときに、既に摺動部(81)に存在している冷凍機油が、後から摺動部(81)へ送り込む冷凍機油の導入抵抗にならなくなる。したがって、圧縮機構(20)における偏心部(35b)と揺動ピストン(42)との間の摺動部(81)へ、十分な量の潤滑油を供給することができるようになる。
また、本実施形態では、上記第1排油通路(71)の直径が、第1排油通路(71)内を流れる油の抵抗にならない程度の寸法に設定されているので、第1偏心部(35b)と第1揺動ピストン(42)との間に形成される摺動部(80)に供給されている冷凍機油がその部位に滞らず、後から供給されてくる冷凍機油に容易に押し出されてケーシング(10)内へ流出する。したがって、上記第1排油通路(71)の直径を所定の太さ寸法に設定していることも、摺動部(80)へ十分な量の潤滑油を供給するのに寄与する。
ここで、従来の高圧ドーム型の圧縮機構では、偏芯ピン(偏心部(35b,35c))とピストン(42,52)の摺動部への潤滑油の供給は、ケーシング(10)内の底部の油溜まりに溜まった油を、シリンダの外側端を閉塞するミドルプレートやプレートとピストンの高さ方向のクリアランス部の絞りを通じてシリンダ室の低圧室に差圧給油することで行っていた。その結果、高温の潤滑油が上記クリアランスからシリンダ室(25,26)の吸入側へ多く流入することになり、冷媒が加熱されて圧縮機(1)の効率が低下することになっていた。これに対して、本実施形態によれば、上述の通り、上記クリアランスを大きく設定しなくても必要な潤滑油量を確保できる。したがって、シリンダ室(25,26)の吸入室側へ高温高圧の冷凍機油が流入する量を抑えられるから、圧縮機(1)の効率が低下するのも抑えられる。
また、従来の構成では、仮に運転状態が変化して圧縮機(1)のケーシング(10)内の高圧空間と第1圧縮機構(40)の吸入側との圧力差が比較的小さくなると、第1圧縮機構(40)の偏心ピンと揺動ピストン(42,52)との間の摺動部のクリアランスに上記圧力差による差圧給油を行う場合には、十分な給油差圧が得られずに給油量が不足することが考えられる。しかしながら、本実施形態では、摺動部(81)の冷凍機油を積極的に摺動部(80)からケーシング(10)内へ排出する構成を採用しており、差圧が給油にはほとんど影響しないので、上記差圧が小さくなった場合でも摺動部(81)への冷凍機油の供給を円滑に行うことができる。その結果、給油不足になりがちな第1圧縮機構(40)においても、上記摺動部(81)の潤滑性能を高めて、摺動部(81)における異常摩耗や焼き付きなどの問題が生じるのを抑えられる。
また、従来、2シリンダで単段圧縮していたものが例えば1軸2段圧縮機になれば、一つの圧縮室の取り込み容積はほぼ2倍になるので、シリンダ(41,51)と揺動ピストン(42,52)の内径と外径が変わらなければ、圧縮室の高さがほぼ2倍になる。そして、1シリンダ当たりのシリンダ容積が増えることと、摺動部の高さが約2倍になることにより、吸入側の揺動ブッシュが潤滑不良に陥りやすくなり、揺動ブッシュ(44,54)とブレード(42a,52a)とが摺動する摺動部で異常摩耗や焼き付きが起こりやすい問題があった。しかし、本発明では、揺動ブッシュ(44,54)には、吐出側と吸入側のいずれにも、上下方向(駆動軸(35)の軸方向)にのびる油溝(44a,54a)がその平面部分(ブレード(42a,52a)に対向する揺動ブッシュ(44,54)の平面)に形成されており、上記油溜まりからブッシュ孔(45,55)まで潤滑油を供給するために、図2に示すブッシュ給油通路(60)が形成されているので、差圧が小さくなって高段側圧縮機構の吸入側の揺動ブッシュ(44,54)の給油量が減っても、油が摺動面に確実に導入される。したがって、ブレード(42a,52a)の焼き付きが生じず、信頼性の高い1軸2段圧縮機(1)が実現できる。また、揺動ブッシュ(44,54)の軸方向の溝(44a,54a)は、ブッシュ素材を引き抜き加工する時に設けることができるし、ミドルプレート(21)の給油通路(62)もドリルで加工できるので、安価な構造で揺動ブッシュ(44,54)への給油を実現できる。
−実施形態1の変形例−
上記実施形態では、ブッシュ給油通路(60)を、リヤヘッド(53)、第2シリンダ(51)及びミドルプレート(21)に順に形成された主給油通路(61)と、主給油通路(61)から分岐して各ブッシュ孔(45,55)に連通する分岐給油通路(62)とから構成している。また、分岐給油通路(62)を、ミドルプレート(21)を上下方向に貫通して第1シリンダ(41)と第2シリンダ(51)のブッシュ孔(45,55)同士を連通する縦孔(63)と、この縦孔(63)と主給油通路(61)とを連通する連通孔(64)とから構成している。
しかしながら、上記ブッシュ給油通路(60)の構成を変更してもよい。
(変形例1)
例えば、ブッシュ給油通路(60)として、図5,図6に示すように、油溜まりからミドルプレート(21)の側方まで上下方向に延びるチューブ(61)を用いることができる。そのような構成を採用する場合、ミドルプレート(21)の外周面からブッシュ孔につながる連通路(65)を形成し、この連通路(65)におけるミドルプレート(21)の外周面側の端部に上記チューブ(61)を接続してもよい。
(変形例2)
また、図7,図8に示すように、ミドルプレート(21)を、その一部が第1シリンダ(41)及び第2シリンダ(51)よりも径方向外側へ突出するように形成し、そのミドルプレート(21)に形成した連通路(65)に下方からチューブを接続するようにしてもよい。この場合、連通路(65)の外側端はプラグ(63)で閉塞される。
(変形例3)
さらに、図9,図10に示すように、ブッシュ孔(44,54)に連通する連通孔(66)をミドルプレート(21)に形成し、リヤヘッド(53)の下方からチューブ(61)を挿入してその上端開口がブッシュ孔(55)に連通するようにしてもよい。
要するに、ブッシュ給油通路(60)は、油溜まりからブッシュ孔(45,55)までつながる通路であれば、油がブッシュ孔(44,54)から摺動部(80,81)へ供給されるので、具体的な構成は適宜変更してもよい。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。
この実施形態2は、排油通路の構成を実施形態1とは異なるようにした例である。具体的には、実施形態1ではフロントヘッド(43)(第1圧縮機構(40)の第1プレート)に第1排油通路(71)だけを形成した構成にしているが、この実施形態2では、図11に示すように、第1排油通路(71)に加えて、駆動軸(35)の第1偏心部(35b)に連通孔(第1連通孔)(73)を形成している。この第1連通孔(73)は、駆動軸(35)の第1偏心部(35b)を一端面から他端面までほぼ軸心方向へ貫通している。ただし、第1連通孔(73)が形成されている方向は、駆動軸(35)の軸心の方向に一致はしておらず、駆動軸(35)の回転時の遠心力によって、その第1連通孔(73)の中に存在する潤滑油が第1排油通路(71)の方へ向かって排出される方向へ傾斜している。
具体的には、上記第1連通孔(73)は、第1排油通路(71)側の開口端がミドルプレート(21)側の開口端よりも径方向外側に位置し、なおかつ第1排油通路(71)側の開口端がミドルプレート(21)側の開口端よりも駆動軸(35)の回転方向後ろ側に位置するように傾斜している。つまり、この実施形態で第1連通孔(73)は2方向へ傾斜している。なお、第1連通孔(73)は上記の2方向のうちのどちらか1方向へ傾斜するようにしてもよい。
また、第2圧縮機構(50)が低段側圧縮機構であり、第1圧縮機構(40)が高段側圧縮機構であることを始め、圧縮機構(20)や駆動機構(30)、及びケーシング(10)などの全体的な構成は実施形態1と同じである。
この実施形態においても、圧縮機構(20)で冷媒を圧縮するとき、駆動軸(35)の下端部に設けられている給油ポンプ(36)で冷凍機油(潤滑油)が吸い上げられる。この冷凍機油は、駆動軸(35)の内部に形成されている給油通路(37)を通って上方へ送られ、各偏心部(35b,35c)と各揺動ピストン(42,52)との間の摺動部(80,81)の微細なクリアランスに供給される。この摺動部(80,81)に冷凍機油が供給されることにより、摺動部(80,81)にくさび効果で油膜が形成され、駆動軸(35)が円滑に回転する。
また、この実施形態2の構成でも、後から摺動部(80,81)へ送られてくる冷凍機油の圧力により、既に摺動部(80,81)に導入されている冷凍機油が押し出され、第1排油通路(71)を通ってケーシング(10)内へ流出する。ケーシング(10)内へ流出した冷凍機油は、ケーシング(10)の底部の油溜まりへ戻っていく。
具体的には、第1偏心部(偏心ピン)(35b)と第1揺動ピストン(42)の間の摺動部(80)を潤滑した油は、実施形態1と同様に、後から送られてくる冷凍機油に押し出されるようにして、第1排油通路(71)を通ってケーシング(10)内へ流出する。また、第2偏心部(偏心ピン)(35c)と第2揺動ピストン(52)の間の摺動部(81)を潤滑した油は、後から送られてくる冷凍機油に押し出されるようにして、第1偏心部(35b)と第2偏心部(35c)の間のスペース(28)を通り、さらに第1偏心部(35b)に形成されている第1連通孔(73)を流れた後、第1排油通路(71)を通ってケーシング(10)内へ流出する。
以上のようにしてケーシング(10)内へ流出した冷凍機油は、ケーシング(10)の底部の油溜まりへ戻っていく。
−実施形態2の効果−
この実施形態2によれば、第1圧縮機構(40)の第1偏心部(35b)と第1揺動ピストン(42)との間の摺動部(81)を潤滑した油を第1排油通路(71)からケーシング(10)内へ排出できることに加えて、駆動軸(35)の第1偏心部(35b)に、その第1偏心部(35b)を一端面から他端面までほぼ軸心方向へ貫通する第1連通孔(73)を形成しているので、第2圧縮機構(低段側圧縮機構)(50)の摺動部(81)の油も第1連通孔(73)から第1排油通路(71)を通して圧縮機(1)のケーシング(10)内へ排出することができる。したがって、両方の圧縮機構(40,50)の摺動部(80,81)で潤滑性能を高めることが可能になる。
その他の効果は実施形態1と同様である。
−実施形態2の変形例−
(変形例1)
この変形例1は、連通孔(73,74)の構成を、図11に示した実施形態2とは異なるようにした例である。具体的には、図12に示すように、駆動軸(35)には、第1偏心部(35b)を一端面から他端面までほぼ軸方向に貫通する第1連通孔(73)に加えて、第2偏心部(35c)を一端面から他端面までほぼ軸方向に貫通する第2連通孔(74)が形成されている。この変形例においては、上記第1連通孔(73)と第2連通孔(74)の両方が、各連通孔(73,74)の中に存在する潤滑油が駆動軸(35)の回転時の遠心力により排出される方向へ傾斜している(図示せず)。
なお、上記第2圧縮機構(50)が低段側圧縮機構であり、第1圧縮機構(40)が高段側圧縮機構であることを始め、圧縮機構(20)や駆動機構(30)、及びケーシング(10)などの全体的な構成は実施形態2と同じである。また、フロントヘッド(43)(第1圧縮機構(40)の第1プレート)には、上記第1排油通路(71)が形成されている。
この実施形態においても、圧縮機構(20)で冷媒を圧縮するとき、駆動軸(35)の下端部に設けられている給油ポンプ(36)から冷凍機油(潤滑油)が吸い上げられる。この冷凍機油は、駆動軸(35)の内部に形成されている給油通路(37)を通って上方へ送られて一部が給油孔(38)を通り、各偏心部d(35b,35c)と各揺動ピストン(42,52)との間の摺動部(80,81)に供給される。この摺動部(80,81)に冷凍機油が供給されることにより、摺動部(80,81)にはくさび効果で油膜が形成され、駆動軸(35)が円滑に回転する。
また、この変形例の構成でも、後から送られてくる冷凍機油の圧力により、既に摺動部(80,81)に導入されている冷凍機油が押し出され、第1排油通路(71)を通ってケーシング(10)内へ流出する。
この変形例では、第2偏心部(35c)に第2連通孔(74)を形成しているので、リヤヘッド(53)の軸受け部の潤滑に用いられた油が滞り気味になると、その油も、第2偏心部(35c)の第2連通孔(74)から、第1偏心部(35b)と第2偏心部(35c)の間の空間(28)を通り、さらに第1偏心部(35b)の第1連通孔(73)から第1排油通路(71)を通ってケーシング(10)内へ流出する。
したがって、この変形例によれば、実施形態2の効果をさらに高め、圧縮機構(20)への給油をより円滑に行うことが可能になる。
(変形例2)
上記実施形態2では、第1連通孔(73)を駆動軸(35)の回転時に油が遠心力で排出される方向に傾斜するように構成し、実施形態2の変形例2では、第1連通孔(73)及び第2連通孔(74)の両方を駆動軸(35)の回転時に油が遠心力で排出される方向に傾斜するように構成しているが、連通孔(73,74)は必ずしも傾斜させなくてもよく、駆動軸(35)の軸心と平行な方向に沿って形成してもよい。この場合、連通孔(73,74)を傾斜させる場合と比べて油の排出効率が若干低下することが考えられるものの、駆動軸(35)に連通孔(73,74)を形成する際の加工を容易に行うことが可能になる。
《発明の実施形態3》
本発明の実施形態3について説明する。
この実施形態3は、給油通路(60)と排油通路(71,72)の構成を実施形態1とは異なるようにした例である。具体的には、実施形態1ではフロントヘッド(43)に第1排油通路(71)を形成しているのに対して、図13に示すように、この実施形態3ではリヤヘッド(第2プレート)(53)に第2排油通路(72)を形成し、フロントヘッド(43)に第1排油通路を形成していない。また、駆動軸(35)には、第1偏心部(35b)を一端面から他端面までほぼ軸方向へ貫通する第1連通孔(73)と、第2偏心部(35c)を一端面から他端面までほぼ軸方向へ貫通する第2連通孔(74)とが形成されている。
第2排油通路(72)は、第2偏心部(35c)と第2揺動ピストン(52)との間の摺動部(80)からケーシング(10)の内部空間へ潤滑油(冷凍機油)を排出するようにリヤヘッド(53)(第2プレート)に形成されている。第2排油通路(72)は、一端が駆動軸(35)の給油溝(39)に開口し、他端がリヤヘッド(53)の外面に開口している。この第2排油通路(72)は、図13に仮想線で示しているように、上記他端側(出口側)が油溜まりの中に開口するように形成することが好ましい。
なお、この実施形態3においても、第1圧縮機構(40)が高段側圧縮機構であり、第2圧縮機構(50)が低段側圧縮機構である。また、上記連通孔(73,74)は、駆動軸(35)の回転時の遠心力により該連通孔(73,74)の中の潤滑油が排出される方向へ傾斜するものとして形成してもよいし、傾斜させずに駆動軸(35)の軸心と平行な線分に沿って形成してもよい。
この実施形態においても、圧縮機構(20)で冷媒を圧縮するとき、駆動軸(35)の下端部に設けられている給油ポンプ(36)から冷凍機油(潤滑油)が吸い上げられる。この冷凍機油は、駆動軸(35)の内部に形成されている給油通路(37)を通って上方へ送られ、各偏心部(35b,35c)(偏心ピン)と各揺動ピストン(42,52)とが摺動する摺動部(80,81)に供給される。この摺動部(80,81)に冷凍機油が供給されることにより、駆動軸(35)が円滑に回転する。
そして、この実施形態3の構成でも、後から送られてくる冷凍機油の圧力により、既に摺動部(80)に存在している冷凍機油が押し出され、第2排油通路(72)を通ってケーシング(10)内へ流出する。ケーシング(10)内へ流出した冷凍機油は、ケーシング(10)の底部の油溜まりへ戻っていく。
具体的には、第2偏心部(35c)と第2揺動ピストン(52)との間の摺動部(80)を潤滑した油は、後から送られてくる冷凍機油の圧力を受けて、第2排油通路(72)を通ってケーシング(10)内へ流出する。また、第1偏心部(偏心ピン)(35b)と第1揺動ピストン(42)との間の摺動部(81)を潤滑した油は、後から送られてくる冷凍機油の圧力を受けて、第1偏心部(35b)と第2偏心部(35c)の間のスペース(28)から、さらに第2偏心部(35c)に形成されている第2連通孔(74)を流れた後、第2排油通路(72)を通ってケーシング(10)内へ流出する。
また、この実施形態3では、第1偏心部(35b)にも第1連通孔(73)を形成しているので、フロントヘッド(43)の軸受け部の潤滑に用いられた油が滞り気味になると、その油も第1偏心部(35b)の第1連通孔(73)から、第1偏心部(35b)と第2偏心部(35c)の間の空間を通り、さらに第2偏心部(35c)の第2連通孔(74)から第2排油通路(72)を通ってケーシング(10)内へ流出する。
以上のようにしてケーシング(10)内へ流出した冷凍機油は、ケーシング(10)の底部の油溜まりへ戻っていく。
−実施形態3の効果−
この実施形態3によれば、偏心軸(偏心ピン)(35b,35c)と揺動ピストン(42,52)との間の摺動部(80,81)に供給されている冷凍機油を第2排油通路(72)からケーシング(10)内へ排出できるようにしているので、駆動軸(35)の下端部からポンプで汲み上げられた冷凍機油を上記摺動部(80,81)に供給するときに、既に摺動部(80,81)に存在している冷凍機油が後から送られてくる冷凍機油に押し出されやすくなり、摺動部(80,81)へ冷凍機油を導入する際の抵抗にならない。したがって、圧縮機構(20)の偏心軸(35b,35c)と揺動ピストン(42,52)との間の摺動部(80,81)へ十分な量の潤滑油を供給することができる。
また、第1偏心部(35b)に第1連通孔(73)を形成し、第2偏心部(35c)に第2連通孔(74)を形成しているので、第2偏心部(35c)と第2揺動ピストン(52)の間の摺動部(81)の潤滑油に加えて第1偏心部(35b)と第1揺動ピストン(42)の間の摺動部(80)の潤滑油もケーシング(10)内へ排出できる。したがって、リヤヘッド(53)の第2排油通路(72)から第1圧縮機構(40)と第2圧縮機構(50)の両方に滞りがちな潤滑油を排出し、両圧縮機構(20)の潤滑性能を高められる。
また、第2排油通路(72)の出口側が油溜まりの中に開口するように構成すると、第2偏心部(35c)と第2シリンダ(51)との間の摺動部(80)の油は、第2排油通路(72)から油溜まりへ直接戻っていく。ここで、第2排油通路(72)の出口が油溜まりの中の位置で開口せずにケーシング(10)内の空間部分に向かって開口していると、場合によってはケーシング(10)内のガス冷媒が第2排油通路(72)を逆流して上記摺動部(80)内へ逆流することが考えられる。しかしながら、本実施形態では第2排油通路(72)の出口端が冷凍機油で満たされているので、ガスの逆流は生じない。そして、ガスが逆流すると摺動部(80,81)の潤滑性能が低下するが、本実施形態では潤滑性能が低下しない。
《発明の実施形態4》
本発明の実施形態4について説明する。
この実施形態4は、排油通路の構成を上記各実施形態とは異なるようにした例である。具体的には、この実施形態4では、図14に示すように、フロントヘッド(第1プレート)(43)に第1排油通路(71)を形成するとともに、リヤヘッド(第2プレート)(53)に第2排油通路(72)を形成している。また、実施形態4では、連通孔として、駆動軸(35)の第1偏心部(35b)に、その第1偏心部(35b)を一端面から他端面までほぼ軸心方向へ貫通する第1連通孔(73)を形成するとともに、駆動軸(35)の第2偏心部(35c)に、その第2偏心部(35c)を一端面から他端面までほぼ軸方向へ貫通する第2連通孔(74)を形成している。
上記第1連通孔(73)及び第2連通孔(74)は、駆動軸(35)の軸心の方向に一致する方向に沿っては形成されておらず、駆動軸(35)の回転時の遠心力により、その第1連通孔(73)及び第2連通孔(74)の中に存在する潤滑油が排出される方向へ傾斜している。具体的な傾斜の方向は上記各実施形態と同じである。ただし、この実施形態4においても、第1連通孔(73)及び第2連通孔(74)を傾斜させなくてもよく、駆動軸(35)の軸心の方向と平行な線分に沿って形成してもよい。
また、上記圧縮機構(20)について、第2圧縮機構(50)が低段側圧縮機(1)であり、第1圧縮機構(40)が高段側圧縮機構であることを始め、圧縮機構(20)や駆動機構(30)、及びケーシング(10)などの全体的な構成は上記各実施形態と同じである。
この実施形態4においても、圧縮機構(20)で冷媒を圧縮するとき、駆動軸(35)の下端部に設けられている給油ポンプ(36)から冷凍機油(潤滑油)が吸い上げられる。この冷凍機油は、駆動軸(35)の内部に形成されている給油通路(37)を通って上方へ送られ、各偏心ピンと各揺動ピストン(42,52)とが摺動する摺動部(80,81)に供給される。この摺動部(80,81)に冷凍機油が供給されることにより、駆動軸(35)が円滑に回転する。
この実施形態4の構成でも、後から送られてくる冷凍機油により、既に摺動部(80,81)に導入されている冷凍機油が押し出される。そして、冷凍機油は、第1圧縮機構(40)の側では第1排油通路(71)を通ってケーシング(10)内へ流出し、第2圧縮機構(50)の側では第2排油通路(72)を通ってケーシング(10)内へ流出する。
具体的には、第1偏心部(35b)(偏心ピン)と第1揺動ピストン(42)との間の摺動部(81)を潤滑した油は、実施形態1と同様に、後から送られてくる冷凍機油の圧力を受けて、第1排油通路(71)を通ってケーシング(10)内へ流出する。また、第2偏心部(35c)と(偏心ピン)と第2揺動ピストン(52)との間の摺動部(80)を潤滑した油は、後から送られてくる冷凍機油の圧力を受けて、第2排油通路(72)を通ってケーシング(10)内へ流出する。
以上のようにしてケーシング(10)内へ流出した冷凍機油は、ケーシング(10)の底部の油溜まりへ戻っていく。
また、この変形例では、第1偏心部(35b)と第2偏心部(35c)の両方に連通孔(73,74)を形成しているので、フロントヘッド(43)とリヤヘッド(53)の軸受け部の潤滑に用いられた油が滞り気味になると、その油も第2偏心部(35c)の第2連通孔(74)から、第1偏心部(35b)と第2偏心部(35c)の間の空間(28)を通り、さらに第1偏心部(35b)の第1連通孔(73)から第1排油通路(71)を通ってケーシング(10)内へ流出する。
したがって、この変形例によれば、上記各実施形態の効果をさらに高め、圧縮機構(20)への給油をより円滑に行うことが可能になる。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記各実施形態では、2シリンダ(41,51)型で二段圧縮を行う圧縮機(1)に本発明を適用しているが、本発明は、シリンダ数や圧縮段数を限定するものではない。例えば、1シリンダまたは複数シリンダで単段圧縮を行う圧縮機や、3以上のシリンダで多段圧縮を行う圧縮機であっても、本発明を適用することは可能である。
そして、単段圧縮の場合でも、従来は、摺動部(80,81)の微細なクリアランスを小さくすれば効率を上げることができるのに対して、潤滑性能を上げるためにクリアランスを大きくしていたため、摺動部(80,81)の高温高圧の冷凍機油がシリンダ室の吸入側に入り、圧縮機の性能が犠牲になっていたが、本発明を適用すればクリアランスを小さくしても摺動部(80,81)への油の導入抵抗が小さいので潤滑性能が低下するのを抑えられる。その結果、摺動部(80,81)からシリンダ室の吸入側へ流入する冷凍機油が少なくなるので、圧縮機の性能が低下得するのも防止できる。また、多段圧縮機構に本発明を適用する場合は、特に、高段側での潤滑性能の低下を効果的に防止できる。
また、上記実施形態では、揺動ピストン(42,52)とブレード(42a,52a)とが一体になった揺動ピストン型の圧縮機(1)について説明したが、本発明は、環状ピストンとブレードとが別部品になったローリングピストン型の圧縮機など、他の形式の圧縮機構を備えた圧縮機にも適用可能である。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明は、高圧ドーム型のロータリ圧縮機(1)において圧縮機構(20)へ潤滑油を供給する構造について有用である。
1 ロータリ圧縮機
10 ケーシング
20 圧縮機構
21 ミドルプレート
25 第1シリンダ室
26 第2シリンダ室
30 駆動機構
35 駆動軸
35a 主軸部
35b 第1偏心部
35c 第2偏心部
40 第1圧縮機構
41 第1シリンダ
42 第1揺動ピストン
43 第1プレート
50 第2圧縮機構
51 第2シリンダ
42 第2揺動ピストン
53 第2プレート
60 給油機構
71 第1排油通路
72 第2排油通路
73 第1連通孔
74 第2連通孔
80 第1摺動部
81 第2周胴部

Claims (10)

  1. 圧縮機構(20)と、該圧縮機構(20)を駆動する駆動軸(35)を有する駆動機構(30)と、圧縮機構(20)及び駆動機構(30)を収納するケーシング(10)と、圧縮機構(20)及び駆動機構(30)の摺動部(80,81)に給油をする給油ポンプ(36)とを備え、
    上記圧縮機構(20)は、シリンダ室(25,26)を有するシリンダ(41,51)と、シリンダ室(25,26)の中でシリンダ室(25,26)の内周面に沿って周回動作をするピストン(42,52)とを備え、
    上記駆動軸(35)は、主軸部(35a)と、主軸部(35a)の中心から偏心して形成されて上記ピストン(42,52)に嵌合する偏心部(35b,35c)とを備え、
    上記給油ポンプ(36)が、ケーシング(10)内の油溜まりから上記偏心部(35b,35c)とピストン(42,52)の摺動部(80,81)に潤滑油を供給するように構成されている高圧ドーム型のロータリ圧縮機であって、
    上記偏心部(35b,35c)とピストン(42,52)の摺動部(80,81)からケーシング(10)の内部空間へ潤滑油を排出する排油通路(71,72)を備えていることを特徴とするロータリ圧縮機。
  2. 請求項1において、
    上記圧縮機構(20)は、第1圧縮機構(40)と第2圧縮機構(50)が重ねて配置された2段圧縮機構(20)であり、第1圧縮機構(40)の第1シリンダ(41)と第2圧縮機構(50)の第2シリンダ(51)とがミドルプレート(21)を挟んで積層され、第1シリンダ(41)の外側端が第1プレート(43)で閉塞され、第2シリンダ(51)の外側端が第2プレート(53)で閉塞され、
    上記駆動軸(35)が、第1圧縮機構(40)がピストン(42)と嵌合する第1偏心部(35b)と、第2圧縮機構(50)のピストン(52)と嵌合する第2偏心部(35c)とを有することを特徴とするロータリ圧縮機。
  3. 請求項2において、
    上記圧縮機構(20)は、第2圧縮機構(50)が低段側圧縮機構であり、第1圧縮機構(40)が高段側圧縮機構であり、
    第1圧縮機構(40)の第1プレート(43)に上記排油通路(71,72)を構成する第1排油通路(71)が形成されていることを特徴とするロータリ圧縮機。
  4. 請求項3において、
    上記第1偏心部(35b)に、その第1偏心部(35b)を一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第1連通孔(73)が形成されていることを特徴とするロータリ圧縮機。
  5. 請求項4において、
    上記第2偏心部(35c)には、その第2軸心部を一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第2連通孔(74)が形成されていることを特徴とするロータリ圧縮機。
  6. 請求項2において、
    上記圧縮機構(20)は、第2圧縮機構(50)が低段側圧縮機構であり、第1圧縮機構(40)が高段側圧縮機構であり、
    第2圧縮機構(50)の第2プレート(53)に上記排油通路(71,72)を構成する第2排油通路(72)が形成され、
    上記第2偏心部(35c)には、その第2偏心部(35c)を一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第2連通孔(74)が形成されていることを特徴とするロータリ圧縮機。
  7. 請求項6において、
    上記第1偏心部(35b)には、その第1偏心部(35b)を一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第1連通孔(73)が形成されていることを特徴とするロータリ圧縮機。
  8. 請求項2において、
    上記圧縮機構(20)は、第2圧縮機構(50)が低段側であり、第1圧縮機構(40)が高段側圧縮機構(20)であり、
    第1圧縮機構(40)の第1プレート(43)に第1排油通路(71)が形成され、第2圧縮機構(50)の第2プレート(53)に第2排油通路(72)が形成され、
    第1偏心部(35b)をその一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第1連通孔(73)と、第2偏心部(35c)をその一端側から他端側まで軸方向へ貫通する第2連通孔(74)とが形成されていることを特徴とするロータリ圧縮機。
  9. 請求項4から8の何れか1つにおいて、
    上記連通孔(73,74)は、駆動軸(35)の回転時の遠心力により該連通孔(74)の中の潤滑油が排出される方向へ傾斜していることを特徴とするロータリ圧縮機。
  10. 請求項6から9の何れか1つにおいて、
    第2排油通路(72)は、出口が上記油溜まりの中に開口していることを特徴とするロータリ圧縮機。
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