JP2012211212A - 自己修復性高分子材料及びこれを用いた樹脂被覆物品 - Google Patents

自己修復性高分子材料及びこれを用いた樹脂被覆物品 Download PDF

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【課題】 自己修復性に優れ、成形加工が容易でコストパフォーマンスに優れる自己修復性高分子材料及び樹脂被覆物品を提供する。
【解決手段】 ビニルブチラールに由来する分子鎖を含む重合体と、可塑剤とを含有する自己修復性高分子材料である。重合体と可塑剤の質量比率が70:30〜99:1、ガラス転移温度が50℃以上、80℃以下、10Hz、23℃における引張貯蔵弾性率の値が100MPa以上、10Hz、100℃における引張貯蔵弾性率の値が0.5MPa以上である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、傷つき等を自己修復し得る新規な自己修復性高分子材料に関するものであり、さらには、これを用いた樹脂被覆物品に関する。
インテリジェント材料として、またバイオミメティック材料として、近年、自己修復性材料に対するニーズが高まっている。また、自己修復性を付与することで製品寿命が飛躍的に向上し人工構造物の削減に繋がることから、環境低負荷技術としても期待されている。
高分子物質は、その分子の形状が線状で極めて長く、からみ合いと呼ばれる独特の分子間作用を示す。さらに、分子骨格の化学構造は様々であり、一部の化学結合は修復に利用可能である。そこで、このような高分子物質の特徴をいかした自己修復材料がこれまでにいくつか提案されている。
具体的に、自己修復材料の設計としては、大きく分けて(1)化学結合を利用する方法、(2)からみ合い相互作用を利用する方法、(3)水素結合等の二次的な結合力を利用する方法等がある。
化学結合を利用する方法としては、切断した主鎖の再結合を利用する方法を挙げることができ、例えば非特許文献1や非特許文献2等において報告されている。高分子物質では、主鎖の切断によって劣化を生じることが多いが、主鎖切断によって生じた分解生成物が自発的に再結合して元の材料に戻れば、有用な自己修復材料になるものと期待される。また、他の方法として、マイクロカプセル等に治癒剤を封入する方法も提案されている(非特許文献3等を参照)。
からみ合い相互作用を利用する方法としては、ガラス転移温度Tg以上に加熱する方法(例えば、非特許文献4等を参照)や、溶媒浸漬法(例えば、非特許文献5等を参照)等が提案されている。固体状態で結晶性を示さない非晶性高分子は、ガラス転移温度以上で分子鎖が巨視的に運動し、例えば同一高分子物質をガラス転移温度以上で接触させた場合、境界面を越えて分子拡散し、その結果、境界面には分子鎖のからみ合い相互作用が働き接着する。前者は、このような自着と呼ばれる現象を利用したものである。これに対して、後者(溶媒浸漬法)は、溶媒に浸漬させることで分子運動性を向上させ、自己修復させるものである。
二次的な結合力を利用する方法としては、水素結合を利用する方法(例えば、非特許文献6や非特許文献7等を参照)や、主鎖に数多くの芳香環を有するポリマーのπ−πスタッキングを利用する方法、アイオノマーを利用する方法等が提案されている。
さらに、本願発明者らは、特許文献1において、緩いゲルを利用し、ダングリング鎖の分子運動で修復する方法を既に提案している。特許文献1に記載される自己修復材料は、高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した結晶性の高分子架橋体であって、結晶融点以上においては、高分子架橋構造に対するダングリング鎖の結合量と、高分子架橋構造の架橋点間分子量とが一定の特異的領域内に調整されることにより、材料形状の保持作用と自己修復作用とが両立する臨界点近傍のゲルの特性を示し、結晶融点以下で使用することを特徴とするものである。
特開2008−239722号公報
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しかしながら、例えば非特許文献1や非特許文献2等に記載されるような化学結合を利用する方法では、修復に長時間要することや、特定の物質に限定されること等の課題が残っている。また、非特許文献3等に記載されるようなマイクロカプセル等に治癒剤を封入する方法では、多大な製造コストを要することや、成形加工が困難であること等の問題がある。
一方、非特許文献4等に記載されるようなガラス転移温度Tg以上に加熱する方法では、治癒温度の範囲が狭いという大きな問題がある。また、非特許文献5に記載されるような溶媒浸漬法では、溶媒処理が必要であること、治癒時間の範囲が狭いこと等の問題がある。
非特許文献6や非特許文献7に記載されるような水素結合を利用する方法は、特定の物質に限定される他、芳香環を有するポリマーのπ−πスタッキングを利用する方法や、アイオノマーを利用する方法等と同様、基礎研究のレベルに止まり、直ちに実用化するのは困難である。
これら従来技術に対し、本願発明者らが特許文献1において提案した緩いゲルを利用し、ダングリング鎖の分子運動で修復する方法は、特定の原材料に限定されず、かつ、優れた自己修復性を示すことから、実用化の可能性が高いものと期待されるが、架橋度の調整が難しいことが課題となっている。
本発明は、かかる従来の実情に鑑みて提案されたものであり、自己修復性に優れる他、成形加工が容易でコストパフォーマンスに優れる等、様々な用途分野への実用化を図ることが可能な自己修復性高分子材料を提供することを目的とし、さらには、樹脂被覆物品を提供することを目的とする。
前述の目的を達成するために、本発明の自己修復性高分子材料は、ビニルブチラールに由来する分子鎖を含む重合体と、可塑剤とを含有し、
(1)前記重合体と可塑剤の質量比率が70:30〜99:1、
(2)ガラス転移温度が50℃以上、80℃以下、
(3)10Hz、23℃における引張貯蔵弾性率の値が100MPa以上、
(4)10Hz、100℃における引張貯蔵弾性率の値が0.5MPa以上
であることを特徴とする。
また、本発明の樹脂被覆物品は、基材表面に本願発明の自己修復性高分子材料からなる被膜が形成されていることを特徴とする。
本願発明の自己修復性高分子材料は、ごくわずかな結晶性を示す高分子物質の結晶状態とガラス転移温度を制御することにより、外部から受けた傷を自然と治癒する新しい概念の自己修復性高分子材料である。
特許文献1記載の発明では、臨界点に近い緩いゲルを用いて自己修復材料を設計しているが、本願発明では、わずかに存在する結晶を架橋点に用いることで同様の効果を狙っている。すなわち、ビニルブチラールに由来する分子鎖を含む重合体(ポリビニルブチラール系プラスチック)に特定の可塑剤を添加することにより、分子運動が活発になるとともに、ある程度の結晶が存在して巨視的な流動が抑えられる。その結果、表面の微細な傷等が自然に治癒する。
本発明によれば、汎用の高分子物質であるポリビニルブチラールに可塑剤を添加するだけで自己修復性を実現することができ、成形加工が容易でコストパフォーマンスに優れ、様々な分野で実用化を図ることが可能な自己修復性高分子材料及び樹脂被覆物品を提供することができる。
(A)は実施例1の動的粘弾性を示す図であり、(B)は比較例1の動的粘弾性を示す図である。 実施例1に関して、紙やすりで傷を付けた場合の自己修復の様子を示す図面代用写真であり、(A)は傷付け直後の表面の様子を示し、(B)は室温で1週間放置した後の表面の様子を示す。 実施例1に関して、ナイフで傷付けた場合の経時変化を示す図面代用写真であり、(A)は0分後、(B)は5分後、(C)は30分後、(D)は2時間後、(E)は12日後の表面の様子を示す。
以下、本発明を適用した自己修復性高分子材料及び樹脂被覆物品の実施形態について、詳細に説明する。
本発明の自己修復性高分子材料では、極めて少ない結晶が架橋点の役割を果たし臨界点近傍のゲルに近い状態になっていることに加え、材料表面のガラス転移温度Tgがバルクのガラス転移温度Tgより低いことを利用する。なお、臨界点近傍のゲルが示す自己修復挙動に関しては、本願発明者らが例えば特許文献1等において初めて明らかにした現象であり、特許文献1記載の発明においては、物質中に存在する片末端自由な部分鎖(ダングリング鎖)のからみ合い相互作用を利用している。ただし、実用的には、臨界点近傍のゲルを調製することが難しいという問題がある。それに比較して、本願発明では、結晶性を制御することで試料調製が可能であり、実用化に際しての課題が少ない。
なお、本願明細書において、「臨界点」、「ガラス転移温度Tg」、「ダングリング鎖」なる用語は、それぞれ下記の通り定義されるものである。
(1)ゾル−ゲル転移の臨界点
直鎖状の高分子液体を三次元的に架橋すると、やがてゲルと呼ばれる流動不可能な状態に至る。流動可能なゾル状態からゲル状態に転移する点を臨界点と呼ぶ。臨界点ではひとつの巨大分子が生成するが、その架橋構造は十分に発達していない。
(2)ガラス転移温度Tg
高分子物質の分子運動が凍結されている状態から、からみ合い点間のセグメントの運動が生じる温度がガラス転移温度と定義される。一般的に材料表面では、物質内部に比べて分子の持つ自由体積が増加するため、ガラス転移温度は低下する。
(3)ダングリング鎖
臨界点近傍のゲルは、両末端が架橋点に繋がり弾性に寄与するネットワーク鎖と、片末端は架橋点に連結しているが別の末端は架橋点に繋がらずに自由に運動できるダングリング鎖から構成されている。このダングリング鎖は運動性が高く、隣接するダングリング鎖とからみ合い相互作用も示し易い。
次に、本願発明の自己修復性高分子材料の具体的構成について説明する。
本発明の自己修復性高分子材料は、ビニルブチラールに由来する分子鎖を含む重合体と、可塑剤とを含有するものである。ビニルブチラールに由来する分子鎖を含む重合体は、ビニルブチラール単独重合体であってもよいし、ビニルブチラールにビニルアセタールやビニルアルコールを共重合した共重合体であってもよい。また、前記共重合体としては、ビニルブチラールにビニルアセタールあるいはビニルアルコールの一方を共重合した二元共重合体であってもよいし、ビニルブチラールにビニルアセタールとビニルアルコールの双方を共重合した三元共重合体であってもよい。
ただし、前記ビニルアセタールやビニルアルコールの割合は、30質量%以下とすることが必要である。前記割合が30質量%を越えると、結晶性の制御が難しくなり、自己修復性が発現しなくなるおそれがある。特に、可塑剤との相溶性を損なわないためには、ビニルアルコール含量は15質量%以下とすることが好ましい。同様に、耐熱性を損なわないためには、ビニルアセタール含量は5質量%以下とすることが好ましい。
一方、可塑剤であるが、本発明においては特に限定されず、公知のものがいずれも使用可能である。具体的に例示するならば、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジブチルベンジル、イソフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジアルキレングリコール類等のフタル酸系可塑剤;アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジブチルジグリコール、アジピン酸ジアルキレングリコール類、アゼライン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの脂肪族エステル系可塑剤;トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリデシル等のトリメリット酸系可塑剤;ピロメリット酸系可塑剤;リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブトキシエチル等のリン酸エステル系可塑剤;エポキシ化大豆油などのエポキシ系可塑剤;塩素化パラフィン、ポリエステル系高分子可塑剤、ポリエーテル系高分子可塑剤に代表される高分子可塑剤等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
前記ビニルブチラールに由来する分子鎖を含む重合体と可塑剤の比率であるが、質量比率で70:30〜99:1であることが好ましい。可塑剤の割合が30質量%を越えると耐熱性が劣化するおそれがあり、逆に可塑剤の割合が1質量%未満であると自己修復性が悪化するおそれがある。
また、本発明の自己修復性高分子材料は、ガラス転移温度Tgが50℃以上、80℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度Tgが50℃未満であると耐熱性に劣るものとなるおそれがあり、逆にガラス転移温度Tgが80℃を越えると、自己修復性を示さなくなるおそれがある。
さらに、本発明の自己修復性高分子材料において、10Hz、23℃における引張貯蔵弾性率の値が100MPa以上、10Hz、100℃における引張貯蔵弾性率の値が0.5MPa以上であることが好ましい。10Hz、23℃における引張貯蔵弾性率の値が100MPa未満であると、やはり耐熱性の劣化が懸念される。同様に、10Hz、100℃における引張貯蔵弾性率の値が0.5MPa未満であると、耐熱性の劣化が懸念される。
10Hz、23℃における引張貯蔵弾性率や、10Hz、100℃における引張貯蔵弾性率の上限については、特に規制されるものではなく、これらの値が高いほど良好な特性となる。ただし、これらの値が過剰に高くなり過ぎると、修復性が低下するおそれがあることから、10Hz、23℃における引張貯蔵弾性率については3GPa以下、10Hz、100℃における引張貯蔵弾性率については10MPa以下とすることが好ましい。
なお、本発明において、前記ガラス転移温度Tgや引張貯蔵弾性率は、強制振動型動的粘弾性測定装置(測定周波数は10Hz)を用い、幅5mm、長さ20mmに切り出した試験片について、0℃から150℃までの温度範囲を2℃/分の昇温速度で測定される値を用いることとする。前記測定において、損失正接が極大を示す温度をガラス転移温度Tg(バルクの値)とすると共に、23℃及び100℃の引張貯蔵弾性率を計測する。
本発明の自己修復性高分子材料では、結晶性の制御で自己修復材料を調製可能であることから、材料の選択を適切に行うことで工業化が可能である。対象となる高分子は結晶性が低く、ガラス転移温度が室温以上の物質であり、前記ポリビニルブチラール系の高分子を挙げることができる。結晶性やガラス転移温度の制御は、共重合等による高分子の一次構造の操作に加え、可塑剤の添加で実施可能である。
前述の通り、本発明の自己修復性高分子材料においては、房状ミセル構造(高分子の結晶状態のひとつとして提案されている構造で、微結晶と凝集状態の乱れた非晶領域から構成されているとするモデル)に代表されるような結晶化度の低い結晶性高分子を用いる。また、本発明の自己修復性高分子材料では、分子鎖の一部が結晶に拘束され、残りは自由に運動可能であるダングリング鎖を形成させる。さらに、系のバルクのガラス転移温度Tgを使用温度より若干高める。これらにより、ある程度の分子運動が生じ、ダングリング鎖のからみ合い相互作用により自己治癒する。
自己修復性高分子は、そのニーズは極めて高いものの、これまでに提案されている方法では、コストパフォーマンスや成形方法の難しさが問題となるため、これまで実用化には至っていない。本発明の自己修復性高分子材料は、汎用的に用いられている高分子成形加工装置にて製造が可能な材料であり、様々用途分野への実用化を図ることが可能である。
特に、本発明の自己修復性高分子材料は、ポリビニルブチラール系の高分子を主体とするものであることから光学特性(特に透明性)に優れ、着色も容易であることから、ディスプレイを中心とした光学分野等へ適用することが可能である。表面傷により製品価値の低下が著しい光学材料やデバイス分野へ応用することで、商品価値を大きく高めることができる。
具体的に、本発明の自己修復性高分子材料の被膜で被覆した樹脂被覆物品としては、例えば、プラスチック眼鏡やゴーグル、光学ディスプレイ用保護シート等を挙げることができる。これら樹脂被覆物品において、前記自己修復性高分子材料の被膜は、自己修復性高分子材料を含む塗料を塗布することにより形成してもよいし、自己修復性高分子材料のシート状成形物を成形しておき、これを貼り合わせることで形成してもよい。各物品の基材も、プラスチック、金属、木材等、任意のものを使用することが可能である。
以上、本発明を適用した自己修復性高分子及び樹脂被覆物品に係る実施形態について説明してきたが、本発明が前述の実施形態に限定されるものでないことは言うまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
以下、本発明の具体的な実施例について、実験結果に基づいて詳細に説明する。
実施例1
ビニルブチラール−ビニルアセタール−ビニルアルコール三元共重合体(電気化学工業社製PVB、商品名4000−4、ビニルアルコール18質量%、ビニルアセタール2質量%)に10質量%のジ−2−エチルヘキシルアジペート(di-2-ethylhexyl adipate、大八化学社製、DOA)を可塑剤として加え、クロロホルムを溶媒として溶液混合(樹脂濃度5%)を実施した。室温にて乾燥させた後、200℃で圧縮成形機により溶融成形を行い、厚み1mmのフィルムを調製した。
実施例2
ジ−2−エチルヘキシルアジペートの割合を5質量%とし、他は実施例1と同様にしてフィルムを調製した。
実施例3
ジ−2−エチルヘキシルアジペートの割合を15質量%とし、他は実施例1と同様にしてフィルムを調製した。
実施例4
ジ−2−エチルヘキシルアジペートの代わりにジ−2−エチルヘキシルフタレート(di-2-ethylhexyl phthalate、大八化学社製、DOP)を用い、他は実施例1と同様にしてフィルムを調製した。
実施例5
ビニルブチラール−ビニルアセタール−ビニルアルコール三元共重合体の代わりにビニルブチラール単独重合体(Aldrich社製、商品名418420)を用い、他は実施例1と同様にしてフィルムを調製した。
比較例1
ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)を添加しない他は実施例1と同様にしてフィルムを調製した。
比較例2
ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)の添加量を35質量%とし、他は実施例1と同様にしてフィルムを調製した。
比較例3
ビニルブチラール−ビニルアセタール−ビニルアルコール三元共重合体として、ビニルアルコール11質量%、ビニルアセタール1質量%のビニルブチラール−ビニルアセタール−ビニルアルコール三元共重合体(創和科学社製、PBV)を用い、他は実施例1と同様にしてフィルムを調製した。
評価結果
これら実施例及び比較例で調製したフィルムについて、動的引張弾性率及びガラス転移温度Tgを計測するとともに、自己修復性及び耐熱性を評価した。結果を表1に示す。なお、計測及び評価の方法は下記の通りである。
自己修復性の評価
#100の紙やすりで表面に傷をつけた後、実体顕微鏡により写真撮影を行った。23℃で2週間放置した後、再び写真撮影し、自己修復の有無を判断した。明らかに傷が少なくなっている場合は○、表面傷の状態がほとんど変化していない場合には×とした。
動的引張弾性率、ガラス転移温度の決定
幅5mm、長さ20mmに切り出した試験片を用い、0℃から150℃までの温度範囲を2℃/分の昇温速度で測定した。測定装置は強制振動型動的粘弾性測定装置(UBM社製、商品名DVE E4000)、測定周波数は10Hzである。損失正接が極大を示す温度をガラス転移温度Tgとして評価すると共に、23℃及び100℃の引張貯蔵弾性率を計測した。
耐熱性の評価
100℃にて1mm厚みの試験片に接触面積1cmで15gの錘を置き、1時間放置した。1時間経過後の錘の下の試料を観測し、耐熱性の指標とした。全面に残っている場合には○、一部でも流れている場合には×とした。
Figure 2012211212
表1から明らかな通り、本発明を適用した各実施例のフィルムでは、良好な自己修復性が発現されるとともに、耐熱性も十分に確保されていた。これに対して、可塑剤を加えていない比較例1では、自己修復性が得られていない。また、逆に、可塑剤の量が多すぎる比較例2では、ブリードが激しく、フィルムの調製自体が困難であった。さらに、10Hz、100℃における引張貯蔵弾性率の値が0.28MPaである比較例3では、耐熱性が不十分であった。
図1(A)は実施例1の動的粘弾性を示す図であり、図1(B)は比較例1の動的粘弾性を示す図である。図1(A)から明らかなように、実施例1の材料は、ガラス転移温度が80℃程度の非晶性高分子の動力学挙動を示しているが、ゴム状領域が異常に広い。ゴム状平衡弾性率の温度範囲は、分子量の増加と共に広がるが、このように広い場合には、分子量以外の効果(水素結合や結晶性等)が関与しているものと考えられる。実施例1の材料でも、何らかの物理的拘束点が巨視的な流動を阻害している可能性が高い。
図2は、実施例1に関して、紙やすりで傷を付けた場合の自己修復の様子を示すものである。図2(B)に示すように、室温で1週間放置した後には、傷が目立たなくなっている。また、図3は、実施例1に関して、ナイフで傷付けた場合の経時変化を示すものである。実施例1では、ナイフで傷付けても(すなわち、完全に切断されても)、図3(E)に示すように12日後には傷がほぼ修復されていることがわかる。

Claims (8)

  1. ビニルブチラールに由来する分子鎖を含む重合体と、可塑剤とを含有し、
    (1)前記重合体と可塑剤の質量比率が70:30〜99:1、
    (2)ガラス転移温度が50℃以上、80℃以下、
    (3)10Hz、23℃における引張貯蔵弾性率の値が100MPa以上、
    (4)10Hz、100℃における引張貯蔵弾性率の値が0.5MPa以上
    であることを特徴とする自己修復性高分子材料。
  2. 前記重合体が、ビニルブチラールにビニルアセタールおよび/またはビニルアルコールが30質量%以下の割合で共重合された二元共重合体または三元共重合体であることを特徴とする請求項1記載の自己修復性高分子材料。
  3. 基材表面に請求項1または2記載の自己修復性高分子材料からなる被膜が形成されていることを特徴とする樹脂被覆物品。
  4. 前記基材が、プラスチック、金属、木材の中から選ばれる少なくとも1種よりなることを特徴とする請求項3記載の樹脂被覆物品。
  5. 前記被膜が、前記自己修復性高分子材料を含む塗料を塗布することにより形成されていることを特徴とする請求項3または4記載の樹脂被覆物品。
  6. 前記被膜が、前記自己修復性高分子材料のシート状成形物を貼り合せることにより形成されていることを請求項3または4記載の樹脂被覆物品。
  7. プラスチック眼鏡またはゴーグルであることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項記載の樹脂被覆物品。
  8. 光学ディスプレイ用保護フィルムであることを特徴とする請求項3から6のいずれか1項記載の樹脂被覆物品。
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