JP2012210612A - 薬注制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水系のスライム状況と生物の活性とを総合的に勘案して適切なスライムコントロール剤の薬注制御を行うことができる薬注制御方法を提供する。
【解決手段】外観観察で水系にスライムが見出される場合には該水系にスライムコントロール剤を添加するスライムコントロール剤の薬注制御方法において、付着物の呼吸活性及び付着物の生物濃度を測定し、付着物の生物量あたりの呼吸活性を算出し、スライムが見出されず、かつ呼吸活性が所定値よりも小さい場合には薬注量を減少させ、スライムが見出されず、かつ呼吸活性が所定値よりも大きい場合には薬注量を増加させ、スライム量が増加したときには薬注量を増加させ、スライム量が非増加であるが呼吸活性が所定値よりも大きい場合には薬注量を増加させ、スライム量が非増加であり呼吸活性が所定値よりも小さい場合には薬注量を維持する。
【選択図】図1

Description

本発明は、水系へのスライムコントロール剤の薬注を制御する方法に関する。
冷却水系、ガス処理用スクラバー水系、紙パルプ製造工程水系、膜分離システム水系などにおいて薬注を適切に行うには、水系のスライム発生状況を検知する必要がある。
スライム量を光学的手法によりモニタリングして薬注制御する方法として、特許文献1(特開2004−113981)には、循環水系の流路の一部となる筒状の測定室と水の流れと直角方向に測定室をはさんで発光部および受光部を配置し、受光部からの電気信号を測定データとして演算処理してスライム防止剤添加手段を制御することが記載されている。
この特許文献1の方法では、スライムが水系において増加する傾向なのか、減少する傾向なのかは長期の経時的データで判断しなくてはならない。また、付着物が生物か非生物かを区別できないため、薬注精度が劣る。
特許文献2(特表2003−519390)には、菌の代謝を測定する方法を利用したモニタリング法として蛍光染料の添加によって、産業用水システムにおける浮遊性及び付着性微生物個体群をモニタリングする方法が記載されている。
この方法では、用水に蛍光物質を添加し、反応によって系内に生じた生成物の第二の蛍光を測定するため、系内の生物量と生物の活性を総合した値が得られる。そのため、生物量が少なくて活性が高いために値が高いのか、各細胞の活性が低いにもかかわらず、生物量が多くて値が高いのか区別することができない。
また、この方法では、反応前の蛍光物質と反応後の蛍光物質の測定、そしてその比率の演算を実施している。そのため、現場には高価な蛍光測定装置、演算装置の設置、および、それらへ系内の循環水を取り入れる流路、廃液を流す流路、蛍光物質の流入させる流路、ポンプ、供給する蛍光物質を入れるタンクなどの設備が必要である。これらは多大な初期投資、維持投資、場所の確保を必要とする。
特開2004−113981 特表2003−519390
本発明は、水系のスライム状況と生物の活性とを総合的に勘案して適切なスライムコントロール剤の薬注制御を行うことができる薬注制御方法を提供することを目的とする。
請求項1の薬注制御方法は、外観観察で水系にスライムが見出される場合には該水系にスライムコントロール剤を添加するスライムコントロール剤の薬注制御方法において、付着物の呼吸活性及び付着物の生物濃度を測定し、付着物の生物量あたりの呼吸活性を算出し、スライムが見出されず、かつ呼吸活性が所定値よりも小さい場合には薬注量を減少させ、スライムが見出されず、かつ呼吸活性が所定値よりも大きい場合には薬注量を増加させ、スライム量が増加したときには薬注量を増加させ、スライム量が非増加であるが呼吸活性が所定値よりも大きい場合には薬注量を増加させ、スライム量が非増加であり呼吸活性が所定値よりも小さい場合には薬注量を維持することを特徴とするものである。
請求項2の薬注制御方法は、請求項1において、呼吸活性はデヒドロゲナーゼ活性であることを特徴とするものである。
付着微生物の場合、増殖した菌体のうちの一部が残留して微生物層を形成する。そのため、付着微生物の増減は増殖の有無が支配因子と考えることができる。
デヒドロゲナーゼの反応は電子転移反応、水素化物イオンH−転移反応、水素転移反応に分けられる。多種類の酵素が知られており、代謝中間体の酸化・還元、呼吸・発酵、膜電位の維持、能動輸送に関するものもある。呼吸は微生物増殖に欠かせないことから、この呼吸活性が微生物増殖の判断指標として有効である。
本発明によれば、種々の水系における様々な微生物が形成する微生物膜に対するスライムコントロール剤の効果を明確に判断することができる。
本発明では、現地にモニター用の装置を持ち込むことなく、スライムコントロールの良し悪しを簡易かつ迅速に判断することができる。
本発明では、現在注入している薬品の濃度、添加頻度でスライムの増加を抑制できるかどうか判断することができる。また、現在注入している薬品の濃度が過剰であると判断された場合には薬品量を低下させることができる。本発明によれば、過剰又は過小なスライムコントロール剤注入を行うことなく、スライムコントロールを良好に維持することができる。
本発明方法を説明するフローチャートである。 実験結果を示すグラフである。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明は、水系に発生したスライムを外観観察によって検知すると共に、生物量当りのデヒドロゲナーゼ活性などの呼吸活性を測定して生物の増殖傾向を調べ、これらの結果に基いてスライムコントロール剤の薬注制御を行う。具体的には、図1のように、まず水系のスライム状況を所定期間観察し、判定する(ステップ1,2)。スライムがなければ、薬注停止を維持し、ステップ3からステップ1に戻る。ステップ2において、スライムが観察されるときには、ステップ4に移り、最小量の薬注量にて薬注を行い、所定間隔(例えば1回/週、特に1回/月)で観察すると共に、生物量当りのデヒドロゲナーゼ活性(DVA)を測定した後、判定する(ステップ5,6)。スライムが観察されず、かつ生物量当りのデヒドロゲナーゼ活性が基準値aよりも低ければ、薬注量を所定量減少させ(ステップ7)、ステップ5に戻る。なお、所定量減少させた薬注量が0以下になるのであれば、薬注停止とし、ステップ5に戻る。なお、スライムが採取されなければ、デヒドロゲナーゼ活性は基準値aよりも低い(下限値以下)となるので、薬注停止が継続する結果となる。
ステップ6の判定の結果、スライムは観察されないが、生物量当りのDGAが所定値よりも大きいときには、薬注量を増加させ(ステップ8)、ステップ5に戻る。ステップ6の判定の結果、スライムが観察されるが、スライム量に変化がないか又は減少しており、かつDGAが所定値よりも小さいときには現状維持(現状の薬注量維持)とし(ステップ9)、ステップ5に戻る。スライムが観察されるが、スライム量に変化がないか又は減少しており、かつDGAが所定値よりも大きいときには薬注量を増加させ(ステップ10)、ステップ5に戻る。
ステップ6の判定の結果、スライム量が増加しているときには、薬注量を所定量増加(ステップ11)させた後、ステップ5に戻る。
このように、スライム量と生物量当りのデヒドロゲナーゼ活性値とを総合的に勘案することにより、必要最小限の薬注量にてスライムを防止することができる。
上記のデヒドロゲナーゼ活性の測定は、薬注を間欠的に行っている場合、薬注終了時に行うのが好ましい。
なお、水系としては、冷却水系、ガス処理用のスクラバーの水系(特にスクラバーの用水を循環使用する場合に好適である。)、紙パルプ製造工程水系、膜分離装置への通水系などが例示されるが、これらに限定されない。スライムコントロール剤としては、特に限定されることなく、各種のものを用いることができる。
[基準値aの決定方法]
上記の基準値aとは、デヒドロゲナーゼ活性がこの値よりも低いときには該水系における生物繁殖量が減少し、高いときには生物繁殖量が増加する境界値である。付着微生物が増減する生物量当たりのデヒドロゲナーゼ活性値等の呼吸活性は生物種や環境によって異なる。従って、対象とする付着微生物が対象とする環境で増加する場合と減少する場合との境界値aは、水系に応じて実験により見出す。
[生物量あたりのデヒドロゲナーゼ活性測定手順]
本発明で採用するのに好適な生物量あたりのデヒドロゲナーゼ活性測定手順について次に説明する。
(1) スライムのサンプリング
シリンジ(20mL)で冷却水ピット壁面のスライムを吸い取り、滅菌済みのチューブ(50mL遠沈管など)にサンプリングする。サンプル量は50mL程度採取する。肉眼でスライムが見い出せるレベル量あれば定量できる。
(2) 2-p-iodophenyl-3-p-nitorophenyl-5-tetrazolium chlorideとの反応(INT染色)
1) あらかじめ、超純水で0.2% 2-p-iodophenyl-3-p-nitorophenyl-5-tetrazolium chloride溶液(以下INT溶液)を作成し、滅菌済みの容器にポアサイズ0.2μmで濾過する。4℃保存。
2) あらかじめ、PY培地(ポリペプトン10g、酵母エキス10g、NaCl5gを1Lに含む培地:pH7.0±0.2、滅菌121℃で15分)を作成する。
3) INT溶液1/10vol.(最終濃度約0.02%,滅菌メスピペットで採取)、PY培地1/100vol.(最終濃度1/100PY、滅菌メスピペットで採取)混合液を超純水で作成し、滅菌済みの容器(100mLポリ瓶、50ml遠沈管、滅菌済みガラスフラスコなど)にポアサイズ0.2μmで濾過する(濾過滅菌操作)。この液をINT染色液と呼ぶ。作成量は1サンプルあたり5mL程度+10mLで算出する。当日作成、使用後廃棄。
4) スライム懸濁液の蛋白濃度を測定する。
5) 濾過器にポアサイズ0.45μm φ25mmニトロセルロースフィルターを設置する。
6) 濾過量が蛋白量200mg〜400mgになるように、スライム懸濁液量を算出し、10ml滅菌ピペットでサンプルを濾過器に供する。サンプルはよく攪拌しさらにピペッティングで攪拌する。できるだけ均一になるようにスライム懸濁液を採取し、吸引濾過する。ブランクとして滅菌水を用いる。−コントロールとしては同量のスライム懸濁液を濾過し、INT染色部分を除いてサンプルと同様の操作を行い抽出に供する。+コントロールとしてはP.putida A660nm 0.1の液を蛋白量として約200mg供する。
7) 滅菌水10mlを添加し、濾過する。(洗浄)
8) INT染色液5mL添加。約1mL程度濾過して、フィルター上の菌に確実に接触させる。
9) 37℃、1時間、暗所静置
10) 濾過したフィルターを濾紙などの上において乾燥させ、反応停止させる。軽い重石をおいて、フィルターが丸まらないようにする。
11) フォルマザンの抽出と吸光度測定をおこなう。
・ フィルターをエッペンドルフチューブに入れる。
・ 1mLのクロロフォルムを添加し、約1時間攪拌する。
・ 光路1cmセルで490nm吸光度を測定する。
(3) 蛋白質濃度の定量
蛋白質濃度の定量は、Folin-Ciocaltenのフェノール試薬による測定に基づいて行う。
(4) 値算出
INT Formazan吸光度をDehydrogenase Activityに換算
活性の単位:一単位(1unit 1U)は1分間に1μmolの基質、または1μ当量の結合に作用する酵素量。この反応はINTが脱水素酵素(Dehydrogenase)によって還元され当量のINT Formazanが形成されると考えられることから、1μmol/minのINT Forumazan生成を1Uとする。酵素活性の単位にはUとkatがあるが、今回は一般に多用されているUnitを用いる。
抽出液量から抽出されたINT Formazan モル数を算出し、反応時間で除算すると活性が算出される。
Dehydrogenase Activity[U]=ミリモル濃度[mmol/L]×μモル換算[1000μmol/mmol]×抽出液量[L]/反応時間[min]
=(0.044×490nm吸光度−0.0004)×1000×(1/1000)/60
* ミリモル濃度[mmol/L]=0.044×490nm吸光度−0.0004
* 抽出液量 1ml
* 反応時間 60min
Dehydrogenase Activityから求める生物量当たりのデヒドロゲナーゼ活性は活性を分析に用いた蛋白量で除算した値を100000倍したものとする。
生物量当たりのデヒドロゲナーゼ活性=Dehydrogenase Activity[U]/蛋白量[mg] × 100000
生物量当りのデヒドロゲナーゼ活性測定方法の別方法としては、たとえば活性を生物量で割る際に、タンパク質以外の量(たとえばDNAなど)を用いる方法がある。また、デヒドロゲナーゼ活性測定をINT以外の試薬(電子受容により発色、発光する試薬)で行うこともできる。また、呼吸活性をデヒドロゲナーゼ活性で求めているがそれ以外の方法(たとえば微生物燃料電池の電位)を用いることもできる。
[実験例1]
殺菌剤を添加することによる生物量当たりのデヒドロゲナーゼ活性の低下を確認するための実験を行った。サンプルは、電子産業の有機溶剤捕集用スクラバーの付着物懸濁液であり、蛋白質を27.2mg/L as protein含有している。
試験条件は次の通りである。
評価薬剤:有機臭素系殺菌剤
主な有効成分濃度:0,175,325,450,650mg/L
反応液:純水に薬剤を希釈し菌と接触
薬品との接触時間:60分
その後デヒドロゲナーゼ活性測定を実施
試験フローは次の通りである。
i) サンプル2mL(1.7mL)をニトロセルロースフィルター(ポアサイズ0.45μm φ25mm)で濾過する。
ii) 10mL滅菌水デ濾過(洗浄)し、所定濃度のスライムコントロール剤(クリセーフ355)(栗田工業株式会社製)水溶液をアプライする。
iii) 30℃に1h静置した後、吸引濾過により薬剤除去し、10mLの滅菌水を濾過(洗浄)する。
iv) 0.02%INT溶液(1/100PY培地含む)アプライする。<ここからINT染色>
v) 37℃に1h静置した後、吸引濾過により溶液除去し、乾燥後、1mLクロロフォルム抽出(1h)を行い、490nm吸光度測定を行った。
結果を図2に示す。図2の通り、スライムコントロール剤との接触によって、菌の活性は低下した。このことから、スライムコントロール剤によって、デヒドロゲナーゼ活性が阻害されることが明らかにされた。
[実施例1]
実機スクラバーに対して本方法を適用し、スクラバースライムの目視観察による増減評価と生物量当たりのデヒドロゲナーゼ活性の変動を測定した。測定対象は実機スクラバーの循環水タンク壁面の生育スライムである。外観観察は循環水タンク壁面について行い、生物量当たりのデヒドロゲナーゼ活性の測定は循環水タンク生育スライムについて行った。スライムコントロール剤(クリセーフ355)の濃度は1280mg/Lとし、薬注は2〜3日に1回、10分間/回の間欠注入とした。
対象としたスクラバーの外観観察と付着物のデヒドロゲナーゼ活性測定を3月〜9月までの間、1〜3回/月の割合で継続的に実施した。
得られた値を、スライムコントロール管理指針フローに基づき判断した。対象としたスクラバーでは、薬注前のデヒドロゲナーゼ活性が設定値よりも高いため、スライムコントロール剤の注入が必要と判断され、月、水、金に薬注を行った。7月までは、薬注後のデヒドロゲナーゼ活性が設定値よりも低く、外観観察も良好であった。8月上旬に薬注後のデヒドロゲナーゼ活性が設定値よりも高く、スライムコントロールの悪化が予想された。8月中旬に外観が悪化し、隔日注入から毎日注入に変更すると、薬注後のデヒドロゲナーゼ活性が設定値以下に低下し、外観悪化も停止した。
この結果から、本発明方法により過剰・過小なスライムコントロール剤注入をすることなく良好なスライムコントロールがなされたと考えられる。

Claims (2)

  1. 外観観察で水系にスライムが見出される場合には該水系にスライムコントロール剤を添加するスライムコントロール剤の薬注制御方法において、
    付着物の呼吸活性及び付着物の生物濃度を測定し、付着物の生物量あたりの呼吸活性を算出し、
    スライムが見出されず、かつ呼吸活性が所定値よりも小さい場合には薬注量を減少させ、
    スライムが見出されず、かつ呼吸活性が所定値よりも大きい場合には薬注量を増加させ、
    スライム量が増加したときには薬注量を増加させ、
    スライム量が非増加であるが呼吸活性が所定値よりも大きい場合には薬注量を増加させ、
    スライム量が非増加であり呼吸活性が所定値よりも小さい場合には薬注量を維持する
    ことを特徴とする薬注制御方法。
  2. 請求項1において、呼吸活性はデヒドロゲナーゼ活性であることを特徴とする薬注制御方法。
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