JP2017127226A - 自然環境で用いる環境浄化用微生物の培養方法、及び環境浄化方法 - Google Patents

自然環境で用いる環境浄化用微生物の培養方法、及び環境浄化方法 Download PDF

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Abstract

【課題】浄化対象の需用に応じて、迅速に必要とする環境浄化用微生物を供給する方法の提供。
【解決手段】
種菌微生物、濃縮培養基、合成樹脂製の培養袋2、精製水を分離した状態に置き、浄化対象の環境の要求に応じて、必要容量分の数量の合成樹脂製の培養袋2に精製水を充填し、種菌微生物、濃縮培養基を添加して、微生物が必要量になるまでの期間、合成樹脂製の培養基袋内で培養し、培養した微生物が詰まった合成樹脂製の培養袋を、浄化対象の環境に提供する環境浄化用微生物の培養方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、工場跡地など汚染された自然環境の浄化等に好適に用いられる環境浄化用微生物の培養方法、及びこの培養方法を用いた自然環境等の環境浄化方法に関する。
有用な微生物(浄化菌)を土壌、地下水、水域等の浄化対象の環境に導入して浄化を行う「バイオオーグメンテーション(Bioaugmentation)」と呼ばれる浄化方法が知られている。この浄化方法は、自然界に存在する有用菌を活性化するバイオスティミュレーション(Biostimulation)等の浄化方法と比較して、短時間で浄化が可能である、特定の汚染物質に対する分解菌が存在していない場合でも浄化が可能である、などのメリットがある(例えば、非特許文献1〜4参照)。
また、バイオオーグメンテーション等に好適に用いられる浄化菌も多く開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。バイオオーグメンテーションでは、有用な浄化菌を大量に増やし、分解能力が低下しないように、できるだけ迅速に浄化対象とする環境に導入する必要がある。
特許第4704901号公報 特開2014−108061号公報 特開2013−31386号公報
高畑陽,バイオオーグメンテーションの実用化への可能性と課題,環境バイオテクノロジー学会誌,Vol.13,No.2,pp.111-116,2013 Kasai Y, Takahata Y, Manefield M, Watanabe K, RNA-based stable isotope probing and isolation of anaerobic benzene-degrading bacteria from gasoline-contaminated groundwater, Appl. Environ. Microbiol., 72:3586-3592, 2006. 高畑陽,笠井由紀,渡辺一哉,帆秋利洋,嫌気ベンゼン分解菌DN11株を用いる土壌・地下水の浄化技術,大成建設技術センター報,Vol.40, No.43, pp.1-6, 2007. Kasai Y, Kodama Y, Takahata Y, Hoaki T, Watanabe K, Degradative capacities and bioaugmentation potential of an anaerobic benzene-degrading bacterium strain DN11, Environ. Sci. Technol., 41:6222-6227, 2007.
しかしながら、従来は、医薬食品分野では、目的とする物質の生成のために微生物を純粋に培養することが必須条件であった。そのため、高品質の浄化菌を大量培養するために、オートクレーブ等の滅菌装置で厳密な滅菌作業を行った上で、ファーメンター等の大型で高価な培養装置を用いて実施している。また、滅菌装置や培養装置は可搬性が低いために、浄化菌を導入する汚染環境とは別の場所(オフサイト)で浄化菌の培養を行い、遠心分離装置等で集菌等の作業を行った後、培養液を濃縮してから冷蔵便にて現地(微生物を使用する場所)に輸送している。浄化対象地(浄化対象環境)は、大きな工場跡地から町中のメッキ工場など小面積、あるいは、汚染度合いによってこれらの対象地が必要とする微生物量、時期は大きく変動し、需用に対応するには大容量の設備を準備する必要があった。また、濃縮や輸送コストが必要となるだけでなく、浄化菌を用いるまでに一定期間が経過してしまうために浄化菌の分解能力の低下を招いていた。
本発明は、浄化対象の需用に応じて、迅速に必要とする環境浄化用微生物を供給する方法を提案する。
上記の目的を達成するため、本願に係る環境浄化用微生物の培養方法は、種菌微生物、濃縮培養基、精製水、合成樹脂製の培養袋を別々に保管しておき、需用に応じて、必要な数の合成樹脂製の培養袋を用いて、微生物を培養し、必要なフレッシュな微生物量を迅速に供給することを実現した。
本発明の主な構成は次のとおりである。
1.化学物質によって汚染された自然環境に微生物を導入して浄化する自然環境浄化方法に使用する環境浄化用微生物の培養方法において、
種菌微生物、濃縮培養基、合成樹脂製の培養袋、精製水を分離した状態に置き、
浄化対象の環境の要求に応じて、必要容量分の数量の合成樹脂製の培養袋に精製水を充填し、種菌微生物、濃縮培養基を添加して、
微生物が必要量になるまでの期間、合成樹脂製の培養袋内で培養し、
培養した微生物が詰まった合成樹脂製の培養袋を浄化対象の環境に提供することを特徴とする環境浄化用微生物の培養方法。
2.浄化対象が、土壌、地下水又は水域であることを特徴とする1.に記載の環境浄化用微生物の培養方法。
3.必要に応じて合成樹脂製の培養袋を洗浄液で予め洗浄し、
当該合成樹脂製の培養袋に精製水を充填し、種菌微生物、濃縮培養基を添加する操作をクリーンベンチ内で行い、
それぞれの投入量は、精製水90質量%、種菌微生物5質量%、濃縮培養基5質量%とし、
培養は、培養温度20〜31℃、3日以内とすることを特徴とする1.又は2.に記載の環境浄化用微生物の培養方法。
4.微生物が、Rhodocyclaceae科のAzoarucs属、及びThauerzo属のいずれかに属する通性嫌気性微生物であり、好ましくはAzoarucs sp.DN11株である1.〜3.のいずれかに記載の環境浄化用微生物の培養方法。
5.微生物が、好気性微生物又は嫌気性微生物であり、好気性微生物である場合は、微生物を培養するときに合成樹脂袋内に空気又は酸素を供給し、嫌気性微生物である場合は、合成樹脂袋内に窒素又は還元剤を供給する1.〜3.のいずれかに記載の環境浄化用微生物の培養方法。
6.微生物の培養が浄化対象の近傍で実施されることを特徴とする1.〜5.のいずれかに記載の環境浄化用微生物の培養方法。
7.1.〜6.のいずれかに記載の環境浄化用微生物の培養方法により微生物を培養し、培養した微生物を浄化対象の土壌、地下水又は水域に導入し、浄化対象を浄化することを特徴とする環境浄化方法。
8.微生物の培養が、浄化対象の土壌、地下水又は水域の近傍で行われることを特徴とする7.に記載の環境浄化方法。
本発明は、浄化対象の需用に応じて、迅速に必要とする環境浄化用微生物を供給することができる。
高価な装置の使用や厳密な滅菌等を必要としなくても、雑菌等の影響を抑制して、培養目的の微生物を優占して増殖させることができ、微生物の大量培養を簡易に行うことが可能な培養方法を得ることができる。
濃縮等の手間がなく、搬送等も容易であるため、培養した微生物の活性を低下させない迅速な使用が可能となり、微生物の性能を十分に発揮させることが可能となる。
通常の室温程度の環境で十分に培養できるので、浄化対象地やその近くで、簡便に培養することができ、運搬の必要も、余分な貯蔵の必要もなく、無駄なく、浄化用微生物を提供することができる。
このような環境浄化用微生物の培養方法を用いることで、培養した微生物を迅速に土壌、地下水、水域等汚染された自然環境の浄化対象に導入して、微生物の分解能を十分に発揮させることや、浄化対象の自然環境を効果的に浄化することが可能な浄化方法を得ることができる。
環境浄化用微生物の培養設備を取扱いが容易で簡易なものとし、培養環境の管理も特異でないために、環境浄化を容易に行うことができ、コストを低減し環境の浄化の普及を促進し、土地の有効利用を促進に寄与する発明である。
本発明の実施の形態に係る培養方法に用いる培養装置の一例を説明するための説明図である。 本発明の実施の形態に係る培養方法に用いる培養装置の他の例を説明するための説明図である。 実施例1に係る培養方法の手順の一例を示すフローチャートである。 比較例1に係る培養方法の手順の一例を示すフローチャートである。 実施例1において集菌後の保存期間によるDN11株のベンゼン分解能力の変化を示すグラフである。 樹脂製容器を用いた滅菌時間の確認試験の結果を示すグラフである。 実施例2に係る浄化方法の流れを示す概略図である。 実施例2に係る浄化方法の手順の一例を示すフローチャートである。 比較例2に係る浄化方法の流れを示す概略図である。 比較例2に係る浄化方法の手順の一例を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施の形態に係る微生物の浄化方法に用いる培養装置の一例を説明するための説明図である。図2は、同培養装置の他の例を説明するための説明図である。
まず、図1を参照しながら、本実施の形態に係る微生物の浄化方法に用いる培養装置1の構成について説明する。培養装置1は、少なくとも1つの開口部2aを有する培養袋としての容器2を備えている。また、開口部2aには、着脱自在に蓋体2bが取り付けられ、培養中における容器2内への雑菌等の侵入を防止可能となっている。
容器2は、軽量で破損しにくく、廉価であることから、樹脂で形成されている合成樹脂製の培養袋を用いることが望ましい。樹脂としては、特に限定されることはないが、例えば、ポリエチレン(PE樹脂)、ポリプロピレン(PP樹脂)、塩化ビニル樹脂(ポリ塩化ビニル)、ポリスチレン(スチロール樹脂)、AS樹脂、ABS樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、メタクリル樹脂(アクリル樹脂)、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂(ポリ塩化ビニリデン)等が好適に用いられる。これらの中でもポリエチレンがより好適に用いられる。
一般的に、微生物の純粋培養では、滅菌効率(熱伝導)が高いガラス製や金属製の容器を用いることが多い。しかし、このような容器は重量があり、ハンドリング性が悪いだけでなく、ガラス製の培養瓶は大型になると滅菌作業や培養作業時に破損するおそれがある。また、ステンレス等の金属製の容器は一般的に高額である。
これに対して、合成樹脂製の培養袋を用いることで、容量を自由に設定できるという利点がある。特に20L程度の大きさであればハンドリング性が高く、必要となる浄化菌の培養量に応じて複数の容器を準備すればよいため、現地での培養に適している。
一方、合成樹脂製の培養袋は熱に弱く、また、滅菌処理(滅菌設定温度121℃)に対して耐熱性を持つポリプロピレン製の容器であっても熱伝導性が低い。発明者は、合成樹脂製の培養袋を用いた滅菌時間の確認試験を行った。図6に、その確認試験の結果をグラフで示した。具体的には、容量20LのPP製容器(培養袋)に15Lの精製水を充填し、オートクレーブを用いて滅菌処理を行った。
図6に示すように、20Lの蒸留水(装置内部に15Lの精製水入りのPP製容器を配置)を滅菌するのに4時間以上必要であることが確認された。そのため、容器内を完全に滅菌するためには、容器を収納可能な大型の滅菌装置と比較的大容量の電源を準備する必要がある。さらに、1つの容器を滅菌するために長時間を要するために、樹脂製の20L容器を用いた場合であっても、1度に多くの容器を用いて培養することは困難である。
本実施の形態では、容器2は単に洗浄したものを使用し、上述のような厳密な滅菌作業は行わない。容器2の洗浄は、培養装置1の使用者が培養を行う前に行ってもよい。また、予め滅菌がされた容器2を用いても構わない。また、滅菌等がされ、予め精製水が充填された市販品を用いることもできる。
培養装置1の使用者が容器2を洗浄する場合、容器2内に雑菌が大量に残らない方法であれば従来公知の何れの方法を用いて洗浄してもよい。例えば、pH3以下の希塩酸水等の適宜の洗浄液で容器2を洗浄しておくことが好ましい。なお、洗浄液がpH3以下の希塩酸水等に限定されることはなく、従来公知の適宜のものを使用することができる。容器2の洗浄回数も1回に限定されることはなく、複数回行うこともできる。また、1種類の洗浄液で洗浄することに限定されることはなく、2種類以上の洗浄液で洗浄することもできる。最終的に、pH3以下の希塩酸水で洗浄した容器2を用いることがより好ましい。
上述のような培養装置1を用いた本実施の形態の環境浄化用微生物の培養方法について説明するにあたり、まず従来の培養方法について説明する。従来の微生物の培養方法は、ファーメンター等の大型で高価な培養装置を用いて行い、ファーメンターに搭載されている蒸気滅菌システム等が必要不可欠であった。培養後には、遠心分離装置で濃縮した後、冷蔵便で現地に輸送していた。このような方法が用いられてきた理由として、微生物の培養技術は「純粋培養」と呼ばれる他の雑菌が入らないように特定の菌株だけを増やす方法が一般的であったためである。
しかしながら、土壌、地下水又は水域等に対して浄化菌を導入して浄化を行う技術で用いる場合は、環境中には様々な微生物が存在しているため、導入の過程で他の雑菌が混入することを避けられない。培養段階で目的とする浄化菌が優占すれば、わずかな雑菌の混入は浄化効果に影響を与える可能性は低い。実際、遠心分離装置で濃縮を行っている段階では既に培養液中には雑菌の混入が生じており、このような工程で雑菌が混入しても浄化効果に影響を与えないことを発明者は確認した。この観点で考えれば、環境浄化を目的として浄化菌を扱う場合には、必ずしも完全に単一の状態で培養(純粋培養)を行う必要性はなく、目的とする浄化菌を安価で簡単に優占できる培養方法を行うことができれば目的を達成できる。しかしながら、目的とする浄化菌を極めて優占して培養する技術は確立されていなかった。以上を鑑みて、発明者は本発明をするに至った。
すなわち、本実施の形態の環境浄化用微生物の培養方法は、種菌となる微生物及び濃縮培養基(以下「培地」と称する場合もある)、濃縮培養基、合成樹脂製の培養袋としての容器2、精製水を分離した状態に置き、浄化対象の環境の要求に応じて、所定量の精製水が充填された必要容量分の数量の容器2内に、種菌微生物、培地を添加する工程と、微生物が必要量になるまでの期間、容器2内で微生物を培養する工程と、培養した微生物が詰まった容器2を浄化対象の環境に提供する工程と、を備えてなる。これにより、高価な装置の使用や厳密な滅菌等を行わなくても、雑菌等の影響を抑制して、微生物の増殖を簡易に行って、浄化対象に提供することができる。また、培養した微生物の活性の低下を抑制して、性能を十分に発揮することが可能となる。
微生物及び培地を添加する工程では、図1に示すように、精製水が充填された容器2内に、開口部2aを介して微生物と培地とを同時に添加し、混合する。図1に示す3は微生物が充填された容器であり、4は培地が充填された容器である。微生物と培地の添加は、厳密に同時に行う必要はなく、ほぼ同時であればよい。微生物を添加した後に培地を添加してもよいし、培地を添加した後に微生物を添加してもよく、時間を置かずにできるだけ速やかに微生物と培地の添加を完了することが望ましい。微生物及び培地の添加が完了したら、雑菌等の侵入を防止するため、開口部2aに蓋体2bを取り付けて密栓する。
容器2内への精製水の充填は、前述したように、現場で容器2を洗浄液で洗浄してから、行うことができる。または、予め滅菌された容器2と精製水を現場に持ち込み、容器2に精製水を充填してもよく、洗浄作業を省くことができる。精製水は、容器2内に微生物と培地を添加することを考慮した分量を充填する。
また、精製水が予め充填された市販品を、そのまま容器2及び精製水として使用することもできる。市販品としては、精製水20L入りの製品が好適に用いることができ、可搬性に優れるとともに、微生物の大量培養が可能となる。市販品を利用することにより、容器2の洗浄や容器2への精製水の供給の作業を省くことができ、微生物の培養を、より簡単に実施するとこが可能となる。また、市販品を利用する場合は、微生物と培地を添加できるように、容器2内の精製水を所定量、排出しておくことが望ましい。
精製水は、雑菌を極力除去する方法で作製した比較的純粋な水である。雑菌を極力除去する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には例えば、フィルター処理、逆浸透膜を含む膜処理、イオン交換処理、紫外線等の滅菌処理等が好適に挙げられる。これらの処理を単独で用いることもできるし、複数の処理を組み合わせて用いることもできる。
種菌となる微生物の形態としては、液体、紛体、個体のいずれの形態のものを用いてもよいが、純粋培養液を用いることが好ましく、添加や混合作業が容易となるとともに、濃縮された微生物を用いることから効率的な培養が可能となる。純粋培養液とは、滅菌処理した培地で純粋培養後の浄化菌の菌体懸濁液であり、微生物の活性低下を防ぐために、できるだけ使用する直前に調製することが望ましい。
本実施の形態の培養方法で培養する微生物としては、通性嫌気性微生物、好気性微生物、嫌気性微生物(絶対嫌気性微生物)が挙げられる。この中でも、好気的環境でも嫌気的な環境でも増殖が可能な通性嫌気性微生物が最も好適である。
本実施の形態の培養方法は、微生物の増殖を量と時期を臨機応変かつ簡易に行うことが可能であるため、汚染された土壌、地下水、水域等を浄化する微生物(浄化細菌)の培養に好適である。浄化細菌としては、特に限定されないが、揮発性芳香族炭化水素の嫌気分解能を持つものが好ましい。例えば、ガソリン等による土壌汚染により、土壌や地下水を浄化する浄化菌としてRhodocyclaceae科に属する通性嫌気性細菌(脱窒菌)の中のAzoarucs属又はThauerzo属に属するものが好適に挙げられる。Azoarucs属、及びThauerzo属は、嫌気的なトルエン分解能を持っている細菌であり、ガソリンの主成分であるトルエンの浄化を行う場合には効果があるために好ましい。この中でも、トルエンだけでなく、基準値が設定された環境規制物質であるベンゼン(ガソリン中に1%程度含まれている)を分解可能な特殊な細菌であることから、Azoarucs sp.DN11株がより好適に挙げられる。
濃縮培養基である培地は、液体培地、個体培地、粉末培地等を用いることができるが、精製水に混合し希釈して用いることから、濃縮された液体培地を用いることが望ましい。液体培地は、精製水に混合し希釈された後に、微生物を適切に培養できる濃度に調製される。培地の種類としては、特に限定されることはないが、LB培地に硝酸ナトリウムを添加したLBN培地等が好適である。Azoarucs sp.DN11株の場合は、培地のpHを、6.5〜7.5に設定することが望ましい。またこの場合、培地には、リン酸塩、マグネシウム塩、鉄塩、微量金属塩等の無機塩や、ペプトン、カシトン、尿素、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、各種アミノ酸の窒素源や、ビタミン等を、1種又は2種以上を適宜組み合わせて添加することも好ましい。
微生物及び培地の分量は、容器2の容量及び精製水の分量に応じて適宜設定することができ、例えば、精製水90質量%に対して、微生物5質量%、培地5質量%とする場合、微生物及び培地の分量は、それぞれ100〜1,000mL程度が好適である。本実施形態のように20L容器2を用いる場合には、それぞれ、1,000mL程度用いることが好ましい。従って、容器2内の精製水の分量は、予め18L程度に調整しておくことが望ましい。
次に、微生物を培養する工程では、微生物、培地、精製水の混合液が充填された容器2を所定の培養温度で、所定期間、培養する。この培養は、設備の整った研究室や工場等で行う必要はなく、温度調整(エアコン等)ができる部屋や仮設建物があれば、容易に培養が可能である。これにより、雑菌等に影響されない範囲で、必要な微生物を増殖させることができる。
培養温度は、培養対象の微生物の性質に応じて適宜の温度とすることができる。具体的には、10〜36℃が好ましく、至適増殖温度を考慮して、20〜31℃が最も好ましく、微生物の増殖を短時間で行うことができる。
培養期間としては、微生物の種類や培地の栄養源等によって異なるが、1〜14日間が好ましく、10日間以内がより好ましい。その中でも、3日間以内が最も好ましく、雑菌の増殖を抑制して、培養対象の微生物を優占させて培養することができるとともに、微生物の活性を低下させることのない使用が可能となる。
以上のように、本実施の形態の微生物の培養方法では、微生物と培地をほぼ同時に容器2内の精製水に添加している。そのため、容器2内が完全に滅菌されていない状態であっても、培地中には培養対象の微生物が優占して存在することとなり、数日間の培養であれば目的とした浄化菌だけが優占して増殖する。したがって、従来のような厳密な滅菌作業を行うことなく、精製水が充填された容器2に微生物と培地を混合するだけで、簡易に微生物を大量培養することが可能となる。
また、電気容量が大きな滅菌装置や、高価なファーメンター等を用いる必要がなく、簡易な培養が可能であることから、微生物の使用環境の近傍で本実施の形態の培養方法を実施することができる。そのため、培養した微生物を、活性を低下させることなく直ちに使用することができ、微生物の分解能力等の性能を十分に発揮させることが可能となる。
なお、数百ヘクタール〜数平米まで多様な浄化対象地と重複して発生する需用に応じて培養設備、保存施設をまとめて整備していた既存の培養方法は、需用が集中すると供給できず、需用低迷期は有休期間となり、浄化作業に支障があり、稼働率も良くなく、供給する微生物も高価になるが、本発明は、需用に応じて弾力性に富んだ対応ができ、培養設備、培養管理も簡素で容易である。
また本実施の形態の微生物の培養方法において、微生物及び培地を容器2へ添加して混合する作業は、クリーンベンチ内で行うことが望ましく、雑菌の混入の低減効果を向上させることができる。また、現場で容器2に精製水を充填する場合も、クリーンベンチ内で行うことで、雑菌の混入の低減効果を更に向上させることができる。この場合、例えば、市販の蒸留水と微生物の純粋培養液、濃縮培地を個別に現地に調達し、部屋内に設置したクリーンベンチ内で混合し混ぜ合わせて、そのまま数日間培養すればよいため、培養方法を低コストで実施することが可能となる。
上記のような培養装置1を用いた培養方法は、通性嫌気性微生物の増殖に最も好適であるが、培養対象の微生物が、好気性微生物である場合、微生物を培養する工程では、曝気等により、容器内の液体中に空気又は酸素を供給することが望ましい。このような培養方法には、図2に示すような培養装置1Aを用いることが好ましい。以下、この培養装置1Aについて説明する。
図2に示す培養装置1Aは、精製水が充填された容器2、該容器2内の精製水と微生物と培地との混合液中に空気又は酸素からなるエアを供給するエアポンプ5と、容器2から排出される気体から液体を分離する気液分離ビン6とを備えて構成される。
エアポンプ5と容器2は、エアポンプ5からのエアが供給されるチューブ7aにより連結されている。チューブ7aには、エアフィルタ8aが設けられている。チューブ7aの容器2側の一端は、蓋体2bを貫通して容器2内に挿入された散気管9に連結されている。容器2と気液分離ビン6は、容器2内のエアを排気するチューブ7bにより連結されている。チューブ7bにはエアフィルタ8bが設けられている。また、気液分離ビン6には、チューブ7bとは別個に、気液分離ビン6内のエアを排気するチューブ7cが設けられている。
上述のような培養装置1Aでは、図1の培養装置1を用いた場合と同様に、精製水が充填された容器2内に、微生物と培地を添加して混合し、開口部2aに蓋体2bを取り付けて密栓し、所定期間、培養する。この微生物の培養工程で、エアポンプ5を用いて容器2内にエアを供給する。エアポンプ5から供給されるエアは、エアフィルタ8aによって濾過されながら、チューブ7aを介して容器2に流入し、散気管9から容器2内の混合液中に供給(曝気)される。したがって、雑菌の侵入を抑制しつつ、好気性微生物の培養を効果的に行うことができる。
また、容器2内のエアは、チューブ7b及びエアフィルタ8bを介して気液分離ビン6に排気される。気液分離ビン6では、エア中の水分が回収され、気体のみがチューブ7cを介して外気中に放出される。よって、外気中への微生物等の放出等を抑制することができる。
また、微生物が、嫌気性微生物である場合は、容器2内に窒素又は還元剤を供給することが望ましく、嫌気性微生物の培養を効果的に行うことができる。窒素等の気体を供給する場合は、図2のような培養装置1Aを用いて、エアポンプ5によって容器2内に窒素等を供給(曝気)することができる。なお、窒素以外の気体を使用することもできるが、環境等への配慮から、窒素が好適である。また、還元剤を用いる場合は、容器2内に微生物、培地を添加する際等に添加する。還元剤としては、システイン、アスコルビン酸、硫化ナトリウム溶液等、従来公知の適宜のものを用いることができる。
また、本実施の形態に係る浄化方法は、上述のような微生物の培養方法で微生物培養し、浄化対象である土壌、地下水、水域等に導入する工程を有し、浄化対象の土壌、地下水、水域等を浄化する。浄化対象への導入方法は、散布や噴霧、その他従来公知のいずれの方法を用いることができるが、例えば、土壌への導入の場合は、重機(バックホー)による混合、攪拌混合装置による混合等が挙げられる。地下水への導入の場合は、井戸の設置後に菌体懸濁液として注入する方法、原位置攪拌方法等が挙げられる。水域への導入の場合は、散布、注入等が挙げられる。これにより、浄化方法を簡易に行うことができるとともに、大量増殖した微生物を迅速に浄化対象の環境に導入することができ、効果的な浄化が可能となる。従って、本実施の形態に係る浄化方法は、バイオオーグメンテーション等に好適に用いることができる。特に、工場跡地など汚染された環境、建設用汚染土壌の浄化方法に好適に用いることができる。
また、微生物の培養が、土壌、地下水、水域等の浄化対象の近傍で行われることが望ましい。「浄化対象の近傍」とは、浄化対象と微生物の培養場所とが離れておらず、培養した微生物をその活性を低下させることなく浄化対象に速やかに投入できる場所であって、例えば土壌浄化の場合は、土壌浄化対象の敷地(浄化サイト)内をいう。このように浄化サイトで微生物を培養することで、培養した微生物を、より速やかに浄化対象の環境に導入することができ、微生物の分解能を十分に発揮させて、より効果的な浄化が可能となる。
(実施例1)
以下、実施例を用いて、本発明の微生物の培養方法及び浄化方法を具体的に説明する。実施例1の微生物の培養方法では、培養目的の微生物として、Azoarcus sp.DN11株(以下、単に「DN11株」という)を用いた。DN11株は、2009年5月に国が定める「微生物によるバイオオーグメンテーション利用指針」に基づく浄化事業計画の確認を受けている大成建設株式会社保有の菌株(特許第4704901号公報参照)である。DN11株は、通性嫌気性の脱窒細菌であり、好気的な条件だけでなく嫌気的な条件でも、帯水層にDN11株と適量の栄養塩(硝酸塩等)を供給すれば、ベンゼンを浄化できることが明らかとなっている。
実施例1におけるDN11株の培養方法を、図3のフローチャートを参照しながら説明する。実施例1の培養方法は、図1に示す培養装置1を用いて行い、精製水及び容器2として、活性炭フィルター処理、逆浸透膜処理、イオン交換樹脂処理を行った市販の20L精製水を用いた。使用した精製水の水質を、下記表1に示す。
まず、クリーンベンチ内で、容器2から約2Lの精製水を排出し(ステップS10)、1/5LBN培地(LB broth 4g/L+硝酸ナトリウム1g/L)を用いて培養したDN11株の純粋培養液(概ね1×108cells/mL)1Lと、滅菌処理済みの4×LBN培地(LB broth 80g/L+硝酸ナトリウム20g/L)1Lを容器2に添加し、開口部2aに蓋体2bを取り付けて密栓した(ステップS11、S12)。このような容器2を10本作製し、25℃で3日間、静置培養した(ステップS13)。
(比較例1)
比較例1(比較対照)として、従来の純粋培養による培養方法を用いてDN11株を培養した。比較例1の培養方法を、図4のフローチャートを参照しながら説明する。まず、液体培地(19Lの1/5LBN培地)を作成し(ステップS21)、ポリプロピレン製の20L容器に入れて滅菌処理を行った(ステップS22)。次に、DN11株の純粋培養液1Lを、クリーンベンチ内で容器に添加(植菌)して密栓した(ステップS23)。このような容器を3本作製し、25℃で3日間、静置培養した(ステップS24)。
実施例1の培養方法では、滅菌処理が不要であるため、濃縮培地と純粋培養液があれば、作業は5〜10分程度で終了することができた。一方、比較例1の純粋培養による培養方法では、培地の滅菌作業に4時間程度必要であり、滅菌後の培養液の冷却にも時間がかかるため、滅菌作業開始から植菌までに8時間以上の時間が必要であった。
(培養状態の確認試験)
次に、実施例1の精製水を用いた簡易な培養方法が、比較例1の滅菌処理を行った培養方法と同等に優占度の高い浄化菌が得られる培養方法であることを実証する試験を行った。
まず、実施例1の簡易培養した10本の市販の精製水容器2(20L)と比較例1の純粋培養した3本の20L容器から、培養3日後の培溶液をそれぞれ採取した。各培養液について、全菌数(直接計数法)、定量PCR法(特開2013-31386号公報に記載の方法による)、及びMALDI-BioTyperによるデータベースとのマッチングを行った。
MALDI-BioTyperは、微生物に含有しているタンパク質をマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF-MS ultrafleXtreme、Bruker Daltonics社製)で測定し、タンパク質の固有のマスパターンを多数の菌種が登録されているデータベースとマッチングさせることで、迅速かつ正確に細菌種を同定するシステムである。同定結果のスコア値が2.0以上であれば種レベルで一致(概ね純粋培養レベル)とされている。培養液1.4mlを13,000rpmで2分間遠心分離後の沈殿物に300μLの超純水と900μLのエタノールを加えて攪拌し、13,000rpmで2分間遠心分離後に上清を完全除去した。次に、ペレットの量に応じて15〜30μLのギ酸と等量のアセトニトリルを加え攪拌し、13,000rpmで2分間遠心分離後、上清1μLをスチールターゲットプレートに分注して乾燥させ、その上にACCマトリックス溶液(Bruker社製)を1μL添加して乾燥させた。キャリブレーションスタンダードは、Bruker Bacterial Test Standard(Bruker社製)を用いた。
以上の試験結果をまとめたもの(平均値)を下記表2に示し、全データを下記表3に示す。
表2に示すように、実施例1の簡易培養及び比較例1の純粋培養おける培養液中の全菌数の平均値は、それぞれ7.6×107cells/mL、6.9×107cells/mLとなり、菌数はほぼ同様に増加していた。また、DN11株のベンゼン分解遺伝子(ベンゼンモノオキシゲナーゼ)を特異的に検出可能なプライマーも用いた定量PCRの結果から、DN11株が特異的に持つ遺伝子数もほぼ同等存在していることが示された。
また、MALDI-BioTyperによるマッチング検索を純粋培養したDN11株を用いて事前に検討した結果、データベースに登録されているトルエン分解菌「Aromatoleum toluvorans Td21 MP」とスコア平均値で2.0以上の一致を示した。Aromatoleum属はDN11株が分類されているAzoarcus属と系統学的位置づけが近いトルエン分解菌である。3日間簡易培養したDN11株は、純粋培養したDN11株と同様に「Aromatoleum toluvorans Td21 MP」とスコア平均値で2.0以上の一致を示しており、両者の培地中には、純粋培養と同等の状態でDN11株が優占していることを確認した。
また、表3の結果から、実施例1において、培養から3日までは簡易培養を行った10試料のうち雑菌が混入してベンゼンモノオキシゲナーゼ遺伝子数が低下したり、マッチング検索のスコアが2.0以下になったりした事例はなく、高い確率で培養が成功することが示された。一方、簡易培養を10日間継続した培養液では、マッチング検索のスコアが2.0を下回る約1.5となっているため、DN11株以外の雑菌が増加していると考えられる。したがって、培養期間は3日間以内が最も好ましいことがわかる。
(DN11株の分解能の確認試験)
実施例1の簡易培養した培養液(約180L)をディスク型遠心分離装置により集菌して濃縮した菌液を0.02Mリン酸バッファーにより洗浄・濃縮して、約1Lの菌体懸濁液としてベンゼンの分解能の確認試験を実施した。分解試験に用いる培地は、50mLのガラスバイアル瓶に約1mg/Lのベンゼンを単一の炭素源とする微好気培地を用いた。本培地に、集菌直後、冷蔵保存して3日目及び21日目のDN11株の菌体懸濁液を、終濃度が約1×105cells/mLになるように植菌し、1週間後(7日後)の培養液中のベンゼン濃度をGC-MSを用いて測定した。比較例2(コントロール:比較対照)として、DN11株を植菌しない条件についても検討した。
図5に、ベンゼン分解能力(分解率)の変化のグラフを示す。図5中の(1)が集菌直後、(2)が冷蔵保存して3日目、(3)が冷蔵保存して21日目の各DN11株について測定された分解能力の測定結果を示すグラフである。(4)はDN11株が無添加の比較例2(コントロール)の分解能力の測定結果を示すグラフである。
図5より、ベンゼンの分解能力は冷蔵保管している間に低下していくことが示された。したがって、浄化菌は培養終了後に速やかに浄化対象とする環境(浄化サイト)に導入することが望ましい。実施例1の培養方法は、現地で簡単に浄化菌を培養できることから、この方法を用いた浄化方法は、浄化対象とする環境に浄化菌を迅速に導入できる。従って、実施例1の培養方法を含む浄化方法は、従来のように浄化サイトから離れたサイト外で培養・集菌して現地に輸送する方法に比べて、より有効であることが示された。
(実施例2)
以下、本発明の実施例2に係る浄化方法について、図7、図8を参照しながら説明する。図7は実施例2に係る浄化方法の流れ及び浄化システムの構成を示す概略図であり、図8は実施例2に係る浄化方法の手順の一例を示すフローチャートである。実施例2は、浄化対象として揮発性有機塩素化合物で汚染された地下水の浄化方法を実施した例である。
実施例2の浄化方法は、図7に示すような浄化システムにより実施される。この浄化システムは、例えば、微生物(菌体)の培養手段としての培養装置1Aと、地盤中に複数設けられた注入井戸10と、注入井戸10を介して菌体液や栄養素等を含む液体を地盤中に供給する液体注入装置11と、菌体の生育に必要な空気を供給する気体供給装置12とを主に備えている。その他にも、地下水を汲み上げて水処理を行う水処理装置や、地盤中に供給した空気を集めて回収する気体回収浄化装置等を備えている。なお、浄化システムの構成は、実施例2の構成に限定されることはない。また、実施例2の浄化方法が土壌(地下水)の浄化に限定されることはなく、水、水域等の他の浄化対象の浄化にも適用できる。
液体注入装置11は、図7に示すように、菌体液や栄養素が貯留された菌体貯留槽13、各注入井戸10と菌体貯留槽13とを連結する送水管14、送水管14に設けられた送水ポンプ15、バルブ、流量計、pHメータ(以上、図示せず)等を備えている。液体注入装置11は、トラック等の車両16に搭載されており、可搬性に優れ、浄化サイトに簡易に浄化システムを構築する。
市販されている20L入りの樹脂製の容器(培養容器)2を必要個数準備する。また、種菌(図7の容器3内)と濃縮培地(図7の容器4内)を準備する。次に、土壌浄化を行う敷地(浄化サイト)に設けられたクリーンベンチ17内で、培養容器2内に、種菌と濃縮培地とを同時に添加し(ステップS31)、浄化サイトに設けられた恒温室18で、培養する(ステップS32)。クリーンベンチ17と恒温室18は、浄化サイトに作業用に設けた建物等の内部に設置する。あるいは、トラック16などに積み込んだ可搬型とすることもできる。
培養した培養液(菌液)は、浄化サイトにおいて、濃縮、希釈、運搬等することなく、培養容器2からそのまま菌体貯留槽13に移し替えて、液体注入装置11によって注入井戸10から地盤へ注入することで、土壌の浄化を行う(ステップS33)。
大容量の菌体の注入を行う場合であっても小容量(20L)の培養容器2を複数用いて、臨機応変に必要量を培養して菌液を作ることができる。また、培養後に雑菌等が発生した個別の培養容器に影響を限定することが可能である。
(比較例2)
次に、比較例2として従来の微生物の培養方法を用いた浄化方法を図9、図10に示した。説明する。図9は、比較例2に係る浄化方法の流れ及び浄化システムの構成を示す概略図であり、図10は比較例2に係る浄化方法の手順の一例を示すフローチャートである。
図9の概略図及び図10のフローチャートに示すように、比較例2では、菌体培養機関において、大掛かりかつ高価な装置であるファーメンター30を用いて、菌体の培養(純粋培養)を行なう(ステップS40)。その培養後、遠心分離機31等により菌体の濃縮を行い(ステップS41)、菌体濃縮液32を取得する(ステップS42)。得られた菌体濃縮液32を、冷蔵車等の輸送車両33等を用いて冷蔵状態で、浄化サイトに輸送する(ステップS43)。浄化サイトに搬入された菌体濃縮液32は、菌体貯留槽13に投入され、蒸留水34等で希釈された後(ステップS44)、菌体貯留槽13から液体注入装置11を経て注入井戸10から地盤中に注入されることで浄化が行われる(ステップS45)。
現在は、全国に数カ所けられている商業的な菌体培養機関から、要望に応じて、浄化対象地へ搬送して、供給している。菌体の輸送距離が遠く、時間を要するため、培養後の菌体をそのままの容積で冷蔵して輸送することはコストが高いため、輸送容量を減らしてコストを縮減するには、濃縮している。また、濃縮菌体液は、時間経過とともに浄化能力が低下していくため、供給範囲が限定されることになる。
これに対して、実施例2の浄化方法では、浄化サイト内において、菌体の培養から地盤注入までの作業工程を完結させることができる。従来技術である比較例2との相違点としては、培養した菌体を、遠路を輸送車両で輸送する必要がないこと、遠心分離による培養液を濃縮する必要がないこと、輸送にかかる時間ロスがないこと、にある。
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態又は実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
2 容器(合成樹脂製の培養袋) 17 クリーンベンチ

Claims (8)

  1. 化学物質によって汚染された自然環境に微生物を導入して浄化する自然環境浄化方法に使用する環境浄化用微生物の培養方法において、
    種菌微生物、濃縮培養基、合成樹脂製の培養袋、精製水を分離した状態に置き、
    浄化対象の環境の要求に応じて、必要容量分の数量の前記合成樹脂製の培養袋に前記精製水を充填し、前記種菌微生物、前記濃縮培養基を添加して、
    前記微生物が必要量になるまでの期間、前記合成樹脂製の培養袋内で培養し、
    培養した微生物が詰まった前記合成樹脂製の培養袋を浄化対象の環境に提供することを特徴とする環境浄化用微生物の培養方法。
  2. 前記浄化対象が、土壌、地下水又は水域であることを特徴とする請求項1に記載の環境浄化用微生物の培養方法。
  3. 必要に応じて前記合成樹脂製の培養袋を洗浄液で予め洗浄し、
    当該合成樹脂製の培養袋に前記精製水を充填し、前記種菌微生物、前記濃縮培養基を添加する操作をクリーンベンチ内で行い、
    それぞれの投入量は、前記精製水90質量%、前記種菌微生物5質量%、前記濃縮培養基5質量%とし、
    培養は、培養温度20〜31℃、3日以内とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の環境浄化用微生物の培養方法。
  4. 前記微生物が、Rhodocyclaceae科のAzoarucs属、及びThauerzo属のいずれかに属する通性嫌気性微生物であり、好ましくはAzoarucs sp.DN11株であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の環境浄化用微生物の培養方法。
  5. 前記微生物が、好気性微生物又は嫌気性微生物であり、前記好気性微生物である場合は、前記微生物を培養するときに前記合成樹脂袋内に空気又は酸素を供給し、前記嫌気性微生物である場合は、前記合成樹脂袋内に窒素又は還元剤を供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の環境浄化用微生物の培養方法。
  6. 前記微生物の培養が浄化対象の近傍で実施されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環境浄化用微生物の培養方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の環境浄化用微生物の培養方法により微生物を培養し、培養した前記微生物を浄化対象の土壌、地下水又は水域に導入し、前記浄化対象を浄化することを特徴とする環境浄化方法。
  8. 前記微生物の培養が、前記浄化対象の土壌、地下水又は水域の近傍で行われる請求項7に記載の環境浄化方法。
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