JP2012207980A - フッ素化不飽和炭化水素の検出方法及び検出センサー - Google Patents
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Description
特に、ドライエッチングガスとして用いられてきた四フッ化炭素、オクタフルオロシクロブタンなどの飽和フルオロカーボン類は地球温暖化への悪影響から使用が制限されており、これらの代替物として、オクタフルオロシクロペンテン(C5F8)、ヘキサフルオロブタジエン(C4F6)、ヘキサフクオロシクロブテン(C4F6)などの分子内に炭素の不飽和結合を有するフッ化炭化水素化合物が開発されてきている。これらの炭素の不飽和結合を有するフッ化炭化水素化合物(以下、「フッ素化不飽和炭化水素」という)は、選択比が高く微細加工のための高性能なマテリアルとして知られ、各半導体プロセスにおいて一部使用されている。これらは、地球温暖化係数は改善されているものの、元来その蒸気圧の高さや毒性の課題から管理基準濃度2ppmの規制が布かれている。さらには、現存する環境負荷の観点から、またプロセス現場において環境中のガスコンタミ源ともなり、高感度に検出する技術等が求められている。
前者の手法は、C5F8やC4F6と過マンガン酸塩との反応により、過マンガン酸塩の消色を利用した方法である(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、以下のデメリットがある。
(1)反応が鈍く、測定する濃度は50ppm以上の濃い条件でないと感知が難しい、(2)検出するまでの時間が50ppmで平均約19分以上と長くかかる、(3)無機物を使用しているため加工性に難点があり、検出のための形態が制限される、(4)強い酸化剤である過マンガン酸塩を使用するため、ボロン誘導体などの水素化物や錯化物などの試剤により消色が起こり誤報の原因となる。
(1)熱分解を行うため大きなエネルギーを消費する、(2)高温における熱分解を行うため、洗浄剤、絶縁体等で多用されるフッ素系液体などのガスからも同様の酸性ガスが発生し誤報の原因となる、(3)高温における熱分解を行うため、非常に危険な酸性ガスHFを発生させてしまう、(4)最終的にはその非常に危険な酸性ガスを検出しているので、他の類似の酸性ガスそのものが混入した場合に、これも誤報の原因となる。
本発明は、上記の従来の技術における実状に鑑みてなされたものであって、高温熱分解や強い酸化剤を使用せずに室温付近で検出でき、簡便にC5F8やC4F6等のフッ素化不飽和炭化水素の検出方法を提供することを目的とするものである。
[1] フッ素化不飽和炭化水素と、下記の一般式(I)で表される、グアニジン骨格を有する化合物との反応を用いて、前記フッ素化不飽和炭化水素を検出することを特徴とするフッ素化不飽和炭化水素の検出方法。
[2] 前記反応による光学的変化を検出することを特徴とする[1]に記載の検出方法。
[3] 前記反応による発光状態変化を検出することを特徴とする[1]に記載の検出方法。
[4] 前記一般式(I)で表される、グアニジン骨格を有する化合物以外の有機物が共存する態様を用いて検出することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の検出方法。
[5] 前記フッ素化不飽和炭化水素が、C5F8又はC4F6或いはこれらの混合物であることを特徴とする請求項[1]〜[4]のいずれか一項に記載の検出方法。
[6] 前記C5F8がオクタフルオロシクロペンテンである[5]に記載の検出方法。
[7] 前記C4F6がヘキサフルオロブタジエン又はヘキサフクオロシクロブテン或いはこれらの混合物である[5]に記載の検出方法。
[8] 前記反応における、吸光度、反射率、赤外振動、発光、蛍光、燐光、屈折率、液晶状態、及びX線による光電子運動エネルギーの変化から選ばれる1つ又は2つ以上の光学的変化を検出することを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載の検出方法。
[9] 前記光学的変化として、発光状態の変化を用いることにより、濃度が0.1%以下のフッ素化不飽和炭化水素を検出することを特徴とする[8]に記載の検出方法。
[10] 前記反応による質量変化を検出することを特徴とする[1]に記載の検出方法。
[11] 前記グアニジン骨格を有する化合物を一定の周波数で振動する表面に少なくとも吸着させ、それにより形成された膜表面と前記フッ素化不飽和炭化水素との反応による質量変化を、当該表面における振動の一定の周波数からの変化でとらえることを特徴とする[10]に記載の検出方法。
[12] フッ素化不飽和炭化水素を検出する検出剤であって、下記一般式(I)で表される、グアニジン骨格を有する化合物を有効成分とすることを特徴とするフッ素化不飽和炭化水素の検出剤。
[13] フッ素化不飽和炭化水素を検出するためのセンサーであって、検出部に、下記の一般式(I)で表される、グアニジン骨格を有する化合物を用いたことを特徴とするフッ素化不飽和炭化水素の検出センサー。
[14] 前記グアニジン骨格を有する化合物を含む液体が多孔質材に含浸されていることを特徴とする[13]に記載のフッ素化炭化水素の検出センサー。
[15] 前記多孔質材が、セルロース又はポリマー又は多孔質アルミナである[14]に記載のフッ素化炭化水素の検出センサー。
[16] 前記グアニジン骨格を有する化合物を含有するポリマーを用いることを特徴とする[13]〜[15]のいずれか一項に記載のフッ素化炭化水素の検出センサー。
R1〜R5の先には、一般的な炭化水素基やそれらを有するポリマーから形成される置換基が結合するもしくは挿入される場合もあり、また、隣どうしのR間で環状の構造をとり、それらの置換基がさらなる環状部分を形成する場合を含む。
ここで、一般的な炭化水素基とは、有機化学における一般的な官能基;ヘテロ原子、典型元素、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、およびそれらのイオンから選ばれるコンポーネントも含み、複素環の場合もある。例えば一例として、アルキル、アルケン、アルキン、フェニル、ナフチル、アントラセニル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルデヒド、ケトン、エーテル、クラウンエーエル、ポリエチレングリコール、カルボン酸エステル、カルボン酸塩、アセタール、エポキシ、アミノ、アミド、イミノ、ニトロ、シアノ、イソシアノ、チオイソシアノ、アゾ、アゾキシ、ポルフィリン、チオール、スルフィド、ジスルフィド、スルフィン酸エステル、スルホン酸エステル、それら酸の塩、ピリジン、ピロール、ピロリジン、ピペリジン、モルフォリン、ピペラジン、キノリン、アルリジン、チオフェン、フラン、遷移金属錯体などの置換基が結合もしくは途中に入り込む形で結合し、またそれらを介して有機ポリマーが結合した化合物群を意味する。
例えば一例として、C2F4、C3F6、C4F6、c−C4F8、c−C5F8、CF3OCF=CF2、C2F5OCF=CF2(c−はcyclic:環状を表し、c-C5F8は、前述のC5F8と同じである、C4F6には前述の2種類がある)等がある。またこれらの一部は、半導体プロセスでエッチングガスとして使われることが多い。
混合する有機物としては、一般的な有機溶媒(例えば、エタノールやエチレングリコールやグリセリンなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド(DMF)やN−メチル−2−ピロリドン(NMP)やヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)などのアミド類、テトラヒドロフラン(THF)やジオキサンなどのエーテル類)、ジイソプロピルアミン(LDA用)やトリイソブチルアミンやジシクロヘキシルメチルアミンやペンタメチルピペリドンなどの有機液体、ウレア類などの有機固体、セルロースやポリエチレンやポリブタジエンやポリエチレンアクリレートやポリイミドポリ安息香酸などの有機ポリマー、などが挙げられる。
一般式(I)で表される、グアニジン誘導体の含有量は、0.1〜99.9質量%の範囲である。好ましくは、10〜80質量%の範囲である。
これらの種々の形態を用いた検出の形態としては、例えば、
(1)検出対象とするフッ素化不飽和炭化水素を、グアニジン骨格を有する化合物を含んだ液体へ接触させる態様、
(2)検出対象とするフッ素化不飽和炭化水素を、グアニジン骨格を有する化合物を含んだポリマー膜に接触させる態様、
(3)検出対象とするフッ素化不飽和炭化水素を、グアニジン骨格を有する化合物を含んだセルロースに接触させる態様、
(4)検出対象とするフッ素化不飽和炭化水素を、グアニジン骨格を有する化合物を含んだテープ上もしくはシート上に接触させる態様、
(5)検出対象とするフッ素化不飽和炭化水素を、グアニジン骨格を有する化合物を含んだビーズもしくは粒子を内包した筒の内部に接触させる態様、
(6)検出対象とするフッ素化不飽和炭化水素を、グアニジン骨格を有する化合物を含んだビーズもしくは粒子を固定したテープに接触させる態様
などがあり、あらゆる態様を含む。例えば、検出対象とするフッ素化不飽和炭化水素をグアニジン骨格を有する化合物を含んだ液体へバブリングする態様や、検出対象とするフッ素化不飽和炭化水素をグアニジン骨格を有する化合物を含んだセルロースに通過させる態様のように、検知対象とするフッ素化不飽和炭化水素物があらゆる基材に物質に接触する。尚、グアニジン骨格を有する化合物を含有するポリマーとは、有機ポリマー中に物理的にグアニジン誘導体が混合されている場合、もしくは、グアニジン誘導体が化学的な結合形態をとっている場合を意味する。
検出対象とする流体を接触させる態様の際に、検出対象とする流体を流す速度、すなわち流量が設定されるが、これに限定されることはない。反応を促進させる観点からは、流量は800mL/分以上が好ましい。装置の観点からは、200〜2000mL/分が好ましい。省エネの観点からは、20〜500mL/分が好ましい。
吸光度の変化は、紫外可視光領域における波長の光の透過率の変化に起因するもので、本発明における紫外可視光領域とは、真空紫外線含む紫外光領域から紫、青、緑、黄、橙、赤色を含む可視光領域の光の領域を意味し、波長では200〜800nmの範囲が好ましい。光源の観点から特に300〜700nmの範囲が最も好ましい。可視光においては、それを目視し、比色によっても検出ができる。また、紫外可視光において、機械を用いて光学的変化の検出も可能である。
(実施例1)
1,3−ジ−o−トリルグアニジン(1,3-di-o-tolylguanidine)95mgを有機溶媒の1種であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1mLに溶解した。そこへドライ窒素ベースのガス状の濃度約10%のC5F810mLを注射器でとり、該溶液にバブリングすると、黄褐色の変化が紫外可視吸収450nm前後±100nmにおいて確認できた。
1,3−ジ−o−トリルグアニジン(1,3-di-o-tolylguanidine)95mgをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1mLに溶解した。そこへ濃度約0.5MのC5F8のアセトン溶液を加えると黄色の変化が紫外可視吸収400nm前後±100nmにおいて確認できた。
1,3−ジフェニルグアニジン(1,3-diphenylguanidine)89mgを有機溶媒の1種であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1mLに溶解した。そこへドライ窒素ベースのガス状の濃度約10%のC5F810mLを注射器でとり、該溶液にバブリングすると、黄褐色の変化が紫外可視吸収400nm前後±100nmにおいて確認できた。
1−(o−トリル)ビグアニド(1-(o-tolyl) biguanide)97mgを有機溶媒の1種であるN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1mLに溶解した。そこへドライ窒素ベースのガス状の濃度約10%のC5F810mLを注射器でとり、該溶液にバブリングすると、黄褐色の変化が紫外可視吸収450nm前後±100nmにおいて確認できた。
以上、光学的変化の手法の一つを使うことにより、フッ素化不飽和炭化水素の一種であるC5F8ガスを検出できた。
金を蒸着してあるQCM(Quarts Crystal Microbalance:水晶天秤)の表面を6−ヒドロキシヘキサンチオール(6-hydroxyhexanethiol)のエタノール溶液に浸漬した。得られた表面に1,3−ジフェニルグアニジンのエタノール溶液をキャストし、窒素雰囲気下、乾燥させた。その膜表面をチャンバー内のQCM装置に表面温度を約55度に昇温した状態でセットし、10%のC5F8のガスを流入すると、QVCM上に形成した該膜表面の質量変化に伴い、QCMの周波数の変化(基準となる周波数=6MHz)が確認できた。
以上、グアニジン骨格を有する化合物の反応による質量変化を用いて、フッ素化不飽和炭化水素の一種であるC5F8を検出できた。
Claims (16)
- フッ素化不飽和炭化水素と、下記の一般式(I)で表される、グアニジン骨格を有する化合物との反応を用いて、前記フッ素化不飽和炭化水素を検出することを特徴とするフッ素化炭化水素の検出方法。
- 前記反応による光学的変化を検出することを特徴とする請求項1に記載の検出方法。
- 前記反応による発光状態変化を検出することを特徴とする請求項1に記載の検出方法。
- 前記一般式(I)で表される、グアニジン骨格を有する化合物以外の有機物が共存する態様を用いて検出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の検出方法。
- 前記フッ素化不飽和炭化水素が、C5F8又はC4F6或いはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の検出方法。
- 前記C5F8が、オクタフルオロシクロペンテンである請求項5に記載の検出方法。
- 前記C4F6が、ヘキサフルオロブタジエン又はヘキサフクオロシクロブテン或いはこれらの混合物である請求項5に記載の検出方法。
- 前記反応における、吸光度、反射率、赤外振動、発光、蛍光、燐光、屈折率、液晶状態、及びX線による光電子運動エネルギーの変化から選ばれる1つ又は2つ以上の光学的変化を検出することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の検出方法。
- 前記光学的変化として、発光状態の変化を用いることにより、濃度が0.1%以下のフッ素化不飽和炭化水素を検出することを特徴とする請求項8に記載の検出方法。
- 前記反応による質量変化を検出することを特徴とする請求項1に記載の検出方法。
- 前記グアニジン骨格を有する化合物を一定の周波数で振動する表面に少なくとも吸着させ、それにより形成された膜表面と前記フッ素化不飽和炭化水素との反応による質量変化を、当該表面における振動の一定の周波数からの変化でとらえることを特徴とする請求項10に記載の検出方法。
- フッ素化不飽和炭化水素を検出する検出剤であって、下記一般式(I)で表される、グアニジン骨格を有する化合物を有効成分とすることを特徴とするフッ素化不飽和炭化水素の検出剤。
- フッ素化不飽和炭化水素を検出するためのセンサーであって、検出部に、下記の一般式(I)で表される、グアニジン骨格を有する化合物を用いたことを特徴とするフッ素化不飽和炭化水素の検出センサー。
- 前記グアニジン骨格を有する化合物を含む液体が多孔質材に含浸されていることを特徴とする請求項13に記載のフッ素化炭化水素の検出センサー。
- 前記多孔質材が、セルロース又はポリマー又は多孔質アルミナである請求項14に記載のフッ素化炭化水素の検出センサー。
- 前記グアニジン骨格を有する化合物を含有するポリマーを用いることを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載のフッ素化炭化水素の検出センサー。
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