JP2017020904A - フッ化物の検出剤、フッ化物の検出方法、フッ化物検出キット、およびフッ化物検出装置 - Google Patents

フッ化物の検出剤、フッ化物の検出方法、フッ化物検出キット、およびフッ化物検出装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2017020904A
JP2017020904A JP2015138900A JP2015138900A JP2017020904A JP 2017020904 A JP2017020904 A JP 2017020904A JP 2015138900 A JP2015138900 A JP 2015138900A JP 2015138900 A JP2015138900 A JP 2015138900A JP 2017020904 A JP2017020904 A JP 2017020904A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
detection
fluoride
detection agent
agent
change
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2015138900A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6643611B2 (ja
Inventor
中村 徹
Toru Nakamura
徹 中村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2015138900A priority Critical patent/JP6643611B2/ja
Publication of JP2017020904A publication Critical patent/JP2017020904A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6643611B2 publication Critical patent/JP6643611B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Abstract

【課題】不飽和炭化水素のフッ化物を簡便に安定して検出できる検出剤を提供する。【解決手段】検出剤は、硫黄アニオン種を含有する無機硫黄化合物または有機硫黄化合物を有効成分として含み、フッ化物を検出する。フッ化物は、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、ならびに(2)水素と結合している第一の炭素と、アニオン性脱離基および第一の炭素と結合している第二の炭素とを備える炭化水素のフッ化物、の少なくとも一方である。無機硫黄化合物は、硫化ナトリウムまたは硫化水素ナトリウムであることが好ましい。有機硫黄化合物は、チオール、ジスルフィド、チオエステル、ジチオエステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、ジチオカルバミン酸、およびチオ尿素、ならびにこれらの誘導体の少なくとも一種であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、不飽和炭化水素のフッ化物などを検出するフッ化物の検出剤、フッ化物の検出方法、フッ化物の検出キット、およびフッ化物の検出装置に関する。
近年、地球環境の保全および多くの生物種や人類の存続のため、地球温暖化物質である含フッ素化合物の使用削減が求められている。特に、ドライエッチングガスとして用いられてきた四フッ化炭素やオクタフルオロシクロブタンなどの飽和フルオロカーボン類は、地球温暖化への悪影響から使用が制限されている。これらの代替物として、オクタフルオロシクロペンテン(C)、ヘキサフルオロブタジエン(C)などの分子内に炭素の不飽和結合を有するフッ化炭化水素化合物が開発されてきている。
炭素の不飽和結合を有するフッ化炭化水素化合物(以下「不飽和炭化水素のフッ化物」ということがある)は、酸化シリコンを高選択比で微細加工できる高性能な化合物として知られ、半導体製造プロセスで一部使用されている。不飽和炭化水素のフッ化物は、飽和フルオロカーボン類と比べて地球温暖化係数が改善されているものの、蒸気圧の高さや毒性の課題から、漏洩防止や環境濃度管理のための規制がある。このため、不飽和炭化水素のフッ化物を高感度に検出する技術が求められている。
現在、過マンガン酸塩または熱分解を用いた不飽和炭化水素のフッ化物の検出手法が開発されている。過マンガン酸塩を用いた不飽和炭化水素のフッ化物の検出手法では、CやCと過マンガン酸塩の反応による過マンガン酸塩の消色を利用する(特許文献1)。しかし、この手法は、(1)反応が鈍く、フッ化物の濃度が50ppm以上でないと検出が難しい、(2)濃度50ppmの不飽和炭化水素のフッ化物を検出するのに、平均19分以上かかる、(3)過マンガン酸塩は加工が難しいため、フッ化物を検出のための形態が制限される、(4)強い酸化剤である過マンガン酸塩は、ボロン誘導体などの水素化物や錯化物などと反応しても消色するため、誤検出のおそれがある、等の問題がある。
熱分解を用いた不飽和炭化水素のフッ化物の検出手法では、気体中に存在するCやCを熱分解炉において熱分解し、その際に発生する酸性ガスHFを光学的に検出する(特許文献2)。しかし、この手法は、(1)非常に危険な酸性ガスHFを取り扱う、(2)熱分解のためにエネルギーを消費する、(3)高温で熱分解を行うため、洗浄剤や絶縁体材料として用いるフッ素系液体から発生する酸性ガスを誤検出するおそれがある、(4)HFと構造が似ている酸性ガスが混入すると誤検出するおそれがある、等の問題がある。
これら問題点を解決するため、アミジン誘導体等の反応の特性を利用して、室温付近で選択的にCやCを検出する検出剤が開発された(特許文献3)。しかしながら、この検出剤は、空気中の水蒸気や酸性ガスによる影響によって寿命が短くなる。このように、従来の不飽和炭化水素のフッ化物の検出方法には種々の問題があるため、高性能・高耐久・長寿命で経済的な新しい検出方法が必要とされている。
特開2001−324492号公報 特開2001−324491号公報 国際公開第2012/002239号
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、高温熱分解や強い酸化剤を使用せずに室温付近で簡便に検出でき、フッ素系液体等からの妨害ガスの干渉を受けずに検出でき、迅速に高感度で検出でき、耐久性があり長寿命で検出できる不飽和炭化水素のフッ化物の検出剤等を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、CやC等の不飽和炭化水素のフッ化物の選択的な直接反応を利用することにより、上記の目的を達成できる知見を得た。すなわち、ある硫黄化合物群と不飽和炭化水素のフッ化物が選択的な発色反応を起こすことを見出し、不飽和炭化水素のフッ化物が低濃度であっても、光学的に高感度で検出できることを明らかにした。
さらに、この硫黄化合物群を含む検出剤は、アミジン誘導体を用いた検出剤と比べて高湿度の空気中での耐久性に優れ、検出剤の長寿命化を示すことを見出した。また、この硫黄化合物群を含む検出剤によって、水素と結合している第一の炭素と、アニオン性脱離基および第一の炭素と結合している第二の炭素とを備える炭化水素のフッ化物も検出できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいてなされたものであり、以下の構成が提供される。
本発明のフッ化物の検出剤は、硫黄アニオン種を含有する無機硫黄化合物を有効成分として含み、フッ化物を検出する検出剤であって、フッ化物は、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、ならびに(2)水素と結合している第一の炭素と、アニオン性脱離基および第一の炭素と結合している第二の炭素とを備える炭化水素のフッ化物、の少なくとも一方である。
本発明の他のフッ化物の検出剤は、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物を有効成分として含み、フッ化物を検出する検出剤であって、フッ化物が、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、ならびに(2)水素と結合している第一の炭素と、アニオン性脱離基および第一の炭素と結合している第二の炭素とを備える炭化水素のフッ化物、の少なくとも一方である。
本発明のフッ化物の検出方法は、本発明の検出剤とフッ化物とを反応させる反応工程と、検出剤の反応前後の物性値変化を測定する測定工程とを有する。
本発明のフッ化物の検出キットは、本発明の検出剤を含む検出部材と、検出剤とフッ化物を反応させたときの反応後の検出剤の色を、比色により判定するための判定部材とを有する。
本発明のフッ化物の検出装置は、本発明の検出剤を備える検出部と、フッ化物を含むガスを検出部に導く導入部と、検出部に光を照射する光源と、検出部の光の反射率を測定する測定部とを有する。
本発明の他のフッ化物の検出装置は、本発明の検出剤が表面に設けられた水晶振動子を備える検出部と、フッ化物を含むガスを検出部に導く導入部と、水晶振動子の共振周波数を測定する測定部とを有する。
本発明によれば、不飽和炭化水素のフッ化物が簡便に検出できる。
実施例2における光学的変化の検出時間依存性を示すグラフ。 実施例11における光学的変化の検出時間依存性を示すグラフ。 本発明の実施形態に係る検出キットの模式図。 本発明の実施形態に係る検出装置の模式図。 本発明の他の実施形態に係る検出装置の模式図。
以下、本発明のフッ化物の検出剤、検出方法、検出キット、および検出装置について、実施形態と実施例に基づいて詳細に説明する。重複説明は適宜省略する。なお、2つの数値の間に「〜」を記載して数値範囲を表す場合には、この2つの数値も数値範囲に含まれるものとする。
本発明の第一の実施形態に係る検出剤は、硫黄アニオン種を含有する無機硫黄化合物を有効成分として含み、フッ化物を検出する検出剤であって、フッ化物が、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、ならびに(2)水素と結合している第一の炭素と、アニオン性脱離基および第一の炭素と結合している第二の炭素とを備える炭化水素のフッ化物、の少なくとも一方である。第一実施形態の検出剤は、水と、塩基および還元剤の少なくとも一方をさらに含んでいてもよい。
本発明の第二の実施形態に係る検出剤は、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物を有効成分として含み、フッ化物を検出する検出剤であって、フッ化物が、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、ならびに(2)水素と結合している第一の炭素と、アニオン性脱離基および第一の炭素と結合している第二の炭素とを備える炭化水素のフッ化物、の少なくとも一方である。第二実施形態の検出剤は、水と、塩基、還元剤、および遷移金属イオンの少なくとも一種をさらに含んでいてもよい。
硫黄アニオン種とは、負の電荷を有する硫黄を含む化学種、または分極により電子密度が高い状態の硫黄を含む化学種をいう。化学反応等によって硫黄アニオン種が発生すると、硫黄アニオン種は、比較的安定で、反応対象の選択性が高い求核反応を起こす。一方、酸素アニオン種である水酸化物イオンやアルコキシド等の化学種は強アルカリ性で、酸素アニオン種にプロトンが結合した化学種の酸性度は低い。酸素アニオン種は、不安定で、反応対象の選択性がない激しい求核反応を起こす。これに対して、硫黄アニオン種にプロトンが結合した化学種の酸性度は高い。
硫黄アニオン種の安定性は、本実施形態の検出剤の高耐久性、長寿命化に寄与する。硫黄アニオン種の求核反応後に、炭素と硫黄の共有結合を形成する場合がある。このとき、硫黄の電子軌道、特に硫黄のローンペアの電子が、炭素骨格の電子軌道、特に炭素π電子雲とマッチングした混成軌道を形成し、芳香族性を高める効果を発現する。このため、硫黄アニオン種は炭素骨格に作用して、長波長側に光の吸収がある、すなわち光学的に測定しやすい変化を引き起こす。また、硫黄アニオン種は炭素骨格に作用して、光学的変化以外の変化を引き起こす。このような硫黄アニオン種の効果のため、不飽和炭化水素のフッ化物と硫黄アニオン種が選択的な反応を起こし、硫黄アニオン種の変化に伴う検出が可能となる。
第一実施形態の検出剤では、無機硫黄化合物が硫黄アニオン種を含有する。また、第二実施形態の検出剤では、有機硫黄化合物が硫黄アニオン種を含有する。ここで、”無機硫黄化合物または有機硫黄化合物が硫黄アニオン種を含有する”とは、無機硫黄化合物中または有機硫黄化合物中に存在する硫黄アニオン種が、検出対象であるフッ化物とそのまま直ちに反応できる場合のほか、無機硫黄化合物または有機硫黄化合物が検出対象のフッ化物とそのままでは反応できないが、無機硫黄化合物または有機硫黄化合物を化学処理すると硫黄アニオン種が生成し検出対象であるフッ化物と反応できるようになる場合を意味する。
この化学処理に用いられる試薬として、塩基、還元剤、または遷移金属イオンが挙げられる。塩基は、水酸化物、アルコキシド、および水素化ナトリウム等のヒドリド化合物、弱アルカリである酢酸ナトリウムや酢酸カリウム等、ならびにアンモニアやアミン等の窒素化合物などのアルカリ性を示す物質である。還元剤は、還元反応を起こす物質であって、ナトリウム、カリウム、および亜鉛等の金属単体や、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、およびロンガリット等の還元用試薬などの物質である。遷移金属イオンは、硫黄アニオン種の安定性を増大させ、反応の選択性を制御する。遷移金属の種類は特に制限がない。
無機硫黄化合物としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、典型元素のカチオン種と、S2−とから構成される化合物が挙げられる。化学的に知られているポリ硫黄アニオン種(S 2−:n≧2)や硫化リン化合物も無機硫黄化合物であるが、安定性や反応性の観点から、これら以外の無機硫黄化合物が好ましい。反応性、溶解度、経済性の観点から、無機硫黄化合物としては、ナトリウムやリチウム等のアルカリ金属の硫化物、またはナトリウム以外のカチオンを有する硫化物、例えばカルシウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属の硫化物がより好ましい。これらの中でも、硫化ナトリウムと硫化水素ナトリウムが特に好ましい。
有機硫黄化合物は、チオール、ジスルフィド、チオエステル、ジチオエステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、ジチオカルバミン酸、およびチオ尿素、ならびにこれらの誘導体の少なくとも一種であることが好ましい。チオール、ジスルフィド、チオエステル、およびジチオエステルは、塩基や還元剤との反応によって硫黄アニオン種が生成できる。したがって、チオール、ジスルフィド、チオエステル、およびジチオエステルの誘導体は、検出対象であるフッ化物との反応性が高く、第二実施形態の検出剤がフッ化物と反応したときの反応前後の光学的変化が大きい。
また、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、およびジチオカルバミン酸は、酸性度が比較的高く、弱アルカリによってこれらの塩が簡単に生成できる。これらの塩は、元来化学的に安定な硫黄アニオン種を含有している。したがって、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、およびジチオカルバミン酸の誘導体は、第二実施形態の検出剤の有機硫黄化合物として好ましい。
また、チオ尿素は、分子内のチオカルボニルの炭素を介して、窒素と硫黄との分極により硫黄アニオン種を含有している。したがって、チオ尿素の誘導体は、第二実施形態の検出剤の有機硫黄化合物として好ましい。これらの中でも、安定性や反応性の観点から、ジチオカルバミン酸の誘導体が、第二実施形態の検出剤の有機硫黄化合物として最も好ましい。すなわち、ジチオカルバミン酸の誘導体は安定な化合物であるから、ジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分とする検出剤は、従来の窒素化合物等を有効成分とする検出剤と比べて、耐久性の向上、長寿命化が期待される。
チオールの誘導体としては、ヘテロ原子を含んでもよい置換基を有するアルカンチオール、アルケンチオール、アルキンチオール、およびπ電子結合性の芳香族チオールが挙げられる。チオールは、そのままでは検出対象のフッ化物の検出に使えないが、塩基と混合することによって、フッ化物の検出が可能な硫黄アニオン種(一般式R−S−:Rは置換基)が生成する。
ジスルフィドの誘導体としては、ヘテロ原子を含んでもよいアルカンジスルフィド、アルケンジスルフィド、アルキンジスルフィド、および芳香族ジスルフィドの対称ジスルフィドまたは非対称ジスルフィドが挙げられる。ジスルフィド基に結合する官能基はヘテロ原子であってよく、特に制限がない。ジスルフィドは、そのままでは検出対象のフッ化物の検出に使えないが、還元剤や塩基と混合することによって、フッ化物の検出が可能な硫黄アニオン種(一般式R−S−:Rは置換基)が生成する。
チオエステルの誘導体としては、チオールS−HのHが、脂肪族または芳香族カルボニルで置換された化合物が挙げられる。脂肪族または芳香族カルボニルはヘテロ原子を含んでいてもよい。チオエステルは、そのままでは検出対象のフッ化物の検出に使えないが、塩基と混合することによって、フッ化物の検出が可能な硫黄アニオン種(一般式R−S−:Rは置換基)が生成する。
ジチオエステルの誘導体としては、チオエステルの誘導体のカルボニルの部分がチオカルボニルになった化合物が挙げられる。ジチオエステルはヘテロ原子を含んでいてもよい。ジチオエステルは、そのままでは検出対象のフッ化物の検出に使えないが、塩基と混合することによって、フッ化物の検出が可能な硫黄アニオン種(一般式R−S−:Rは置換基)が生成する。
チオカルボン酸はR−COSHで表され、置換基Rはヘテロ原子を含んでもよい脂肪族または芳香族の誘導体である。例えば、チオカルボン酸の炭素に窒素が結合したチオカルバミン酸は、チオカルボン酸の誘導体である。チオカルボン酸は強い有機硫黄酸であるため、そのままで検出対象のフッ化物の検出に使える。チオカルボン酸は塩基、特に弱塩基と混合して、チオカルボン酸塩の形で使用することが好ましい。
ジチオカルボン酸はR−CSSHで表され、置換基Rはヘテロ原子を含んでもよい脂肪族または芳香族の誘導体である。例えば、ジチオカルボン酸の炭素に酸素が結合したジチオ炭酸の誘導体であるキサントゲン酸は、R−OCSSHで表され、ジチオカルボン酸の誘導体である。キサントゲン酸の誘導体には、アミルキサントゲン酸カリウム、エチルキサントゲン酸ナトリウム、1−ピロリジンカルボジチオ酸アンモニウム等があり、これらは、そのままで検出対象のフッ化物の検出に使える。
ジチオカルボン酸の炭素にさらに硫黄が結合したトリチオ炭酸も、ジチオカルボン酸の誘導体である。ジチオカルボン酸は強い有機硫黄酸であるため、そのままで検出対象のフッ化物の検出に使える。ジチオカルボン酸は塩基、特に弱塩基と混合して、ジチオカルボン酸塩の形で使用することが好ましい。硫黄アニオン種が塩の場合、カウンターカチオンが存在する。カウンターカチオンとしては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属イオン、アンモニウム、またはホスホニウム、ならびにこれらのポリカチオンが挙げられる。
ジチオカルバミン酸の誘導体としては、例えば、ジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、またはホスホニウム塩が挙げられる。ジチオカルバミン酸の誘導体は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、またはホスホニウム塩であることが好ましい。また、ジチオカルバミン酸の誘導体の分子骨格中には、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素の置換基を有していてもよい。ジチオカルバミン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、またはホスホニウムは、ジチオカルボニル部分の硫黄アニオン種を含有している。また、これらの塩は、一般に吸着水が存在し、水が既に混合された状態になっている。
これら塩のカウンターカチオンとしては、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、銅や鉄の遷移金属イオン、アンモニウム、ホスホニウム、またはこれらのポリカチオンが挙げられる。入手が容易なジチオカルバミン酸の誘導体としては、N,N−ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムの水和物、またはN,N−ジエチルジチオカルバミン酸カリウムの水和物が挙げられる。
また、他のジチオカルバミン酸の誘導体として、カウンターカチオンがアンモニウムであるジエチルジチオカルバミン酸ジエチルアンモニウム、ジメチルジチオカルバミン酸ジメチルアンモニウム、およびヘキサメチレンジチオカルバミン酸ヘキサメチレンアンモニウム等、ならびにカウンターカチオンが遷移金属イオンであるジメチルジチオカルバミン酸鉄(III)、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジチオカルバミン酸銅(II)、およびジメチルジチオカルバミン酸銅(II)等が挙げられる。これらの中で、ジチオカルバミン酸の誘導体の安定性、すなわち検出剤の耐久性、フッ化物の検出のためのシグナルの安定性の視点からは、銅や鉄等の遷移金属イオンをカウンターカチオンとして含んでいるジチオカルバミン酸誘導体が好ましい。
チオ尿素は、分子内のチオカルボニルの炭素を介した窒素と硫黄の分極による硫黄アニオン種を含有している。チオ尿素の誘導体は、この窒素に結合している水素が、ヘテロ原子を含んでもよい脂肪族または芳香族の誘導体で置換されている。チオ尿素の誘導体として、チオアミドやN,N−ジメチルチオホルムアミドも挙げられるが、これらは反応性が比較的低い。
有機硫黄化合物は、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素の置換基を有していてもよい。「ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素」とは、炭素と水素からなる炭化水素のほか、酸素、窒素、リン、ホウ素、アルミニウム、シリコン、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、遷移金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属などのヘテロ原子で炭化水素の一部が置換された化合物や組成物をいう。
したがって、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素の置換基として、例えば、メチル基(炭素数1)、エチル基(炭素数2)からステアリル基(炭素数18)まで、トリメチルフェニル(炭素数19)基を含むアルキル基、アルケン基、アルキン基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルデヒド基、ケトン基、エーテル基、クラウンエーエル基、アルコール基、エチレングリコール基、グリセリン基、ポリエチレングリコール基、カルボン酸エステル基、カルボン酸塩、アセタール基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、イミノ基、ニトロ基、シアノ基、イソシアノ基、チオイソシアノ基、アゾ基、アゾキシ基、ポルフィリン基、スルフィン酸エステル基、スルホン酸エステル基、これら酸の塩、ピリジン基、ピロール基、ピロリジン基、ピペリジン基、モルフォリン基、ピペラジン基、キノリン基、チオフェン基、フラン基などが挙げられる。また、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素としては、複素環化合物、遷移金属錯体、有機オリゴマー、有機ポリマー、およびこれらの複合体などが挙げられる。また、有機硫黄化合物は、オリゴマーやポリマーの側鎖として存在してもよいし、配位結合、またはクーロン力やファンデアワールス力による結合によって基材に保持されてもよい。
本実施形態の検出剤が検出するフッ化物は、(1)不飽和炭化水素のフッ化物(以下「第一態様のフッ化物」ということがある)、ならびに(2)水素と結合している第一の炭素と、アニオン性脱離基および第一の炭素と結合している第二の炭素とを備える炭化水素のフッ化物(以下「第二態様のフッ化物」ということがある。また、第一態様のフッ化物と第二態様のフッ化物を併せて、「検出対象のフッ化物」ということがある)、の少なくとも一方である。第一態様のフッ化物と第二態様のフッ化物、すなわち検出対象のフッ化物は、炭素2個以上を有するフッ化物である。第一態様のフッ化物は、不飽和炭化水素の一部または全部の水素がフッ素で置換された構造を有している。
また、第一態様のフッ化物は、炭素とフッ素を含み、炭素−炭素二重結合と炭素−炭素三重結合の少なくとも一方を有する。このフッ化物は、常温で気体であっても、液体であってもよい。不飽和炭化水素の炭素−炭素二重結合や炭素−炭素三重結合にはπ電子結合が存在し、このπ電子結合は、電子、すなわち負の電荷が比較的豊富な場合が多い。しかし、本実施形態の検出剤が検出する第一態様のフッ化物は電気陰性度が高いフッ素原子を有しているため、炭素−炭素間のπ電子結合は、電子密度の低い、すなわち負の電荷が薄くなっている。このため、第一態様のフッ化物の炭素−炭素間のπ電子結合が硫黄アニオン種の求核反応を受け、本実施形態の検出剤で検出される。したがって、π電子結合を有しないパーフルオロアルカンやパーフルオロエーテル等は、本実施形態の検出剤で検出されない。
第一態様のフッ化物は、塩素、臭素、ヨウ素、酸素、硫黄、または窒素などの炭素、水素、およびフッ素以外の原子や、カルボキシル基、アルコキシ基、フォルミル基などを含んでいてもよい。京都議定書で評価した一連のガス状化合物であるフッ化炭化水素の一部が第一態様のフッ化物に含まれる。
第一態様のフッ化物としては、例えばC、C、C、c−C、c−C、c−C、CFOCF=CF、COCF=CF等が挙げられる。なお、「c−」は環状(シクロ)を表している。第一態様のフッ化物の一部は、冷媒、発泡剤、洗浄剤、絶縁液体、またはエッチングガスとして使われることがある。また、第一態様のフッ化物の一部は、PFC(パーフルオロカーボン)の一種で、環境に負荷がある。また、第一態様のフッ化物の中には、エーテル基を有する直鎖状のフッ素化合物もあり、環境負荷や人体への影響が懸念される。本実施形態の検出剤は、第一態様のフッ化物の検出、検出対象のフッ化物の漏れのチェック、検知器、警報、濃度測定、環境測定、環境管理などに応用される。
第二態様のフッ化物と硫黄アニオン種の反応は、第一態様のフッ化物と硫黄アニオン種の反応と類似する。例えば、Cは、塩基を含む検出剤と脱プロトン反応を起こす。その後、アニオン性脱離基が脱離し、第二態様のフッ化物内に不飽和の二重結合が発生し第一態様のフッ化物となる。この第一態様のフッ化物と無機硫黄化合物または有機硫黄化合物が反応する。すなわち、第二態様のフッ化物はπ電子結合を有さないため、そのままでは硫黄アニオン種と反応しづらい。しかし、本実施形態の検出剤に含まれる塩基と反応して第一態様のフッ化物を生成する。
第二態様のフッ化物が含有するアニオン性脱離基としては、例えばフッ素や塩素などのハロゲン基、アルコキシ基、エーテル基、およびスルフィド基などの含カルコゲン基、カルボン酸基、ならびにスルホン酸基等が挙げられる。第二態様のフッ化物は、アニオン性脱離基以外に、塩素、臭素、ヨウ素、酸素、硫黄、窒素などの原子や、カルボキシル基、アルコキシ基、フォルミル基などの官能基を備えていてもよい。京都議定書で評価した一連のガス状化合物であるフッ化炭化水素の一部が第二態様のフッ化物に含まれる。また、第二態様のフッ化物が液体であっても、本実施形態の検出剤で検出できる。
第二態様のフッ化物としては、CFCHF、CHFCHF、CFCHFCF、CFCFCHF、CHFCFCHF、CFOCHFCF、c−Cなどが挙げられる。第二態様のフッ化物は、家庭用、業務用、もしくは車用等の空調機器、冷蔵庫、または冷凍庫の冷媒として、建築現場における断熱材形成のための発泡剤として、ならびに電子機器洗浄剤として使われることがある。また、第二態様のフッ化物は、半導体プロセスでエッチングガス、洗浄剤、または冷却剤として使われることがある。第二態様のフッ化物の中には、環境問題で取り上げられるHFC(ハイドロフルオロカーボン)やHCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)と呼ばれるものがある。
第二態様のフッ化物も、本実施形態の検出剤に接触させることで発色反応を起こし、その光学的な変化を用いて検出を行うことができる。本実施形態の検出剤は、第二態様のフッ化物の検出、検出対象のフッ化物の漏れのチェック、検知器、警報、濃度測定、環境測定、環境管理などに応用される。
本実施形態の検出剤は、有効成分以外の有機物を含んでいてもよい。この有機物としては、エタノール、エチレングリコール、およびグリセリンなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−ピロリドン(NMP)、およびヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)などのアミド類、ジメチルスルホキシド(DMSO)やスルフォラン(sulfolane)などの酸化硫黄溶媒、ならびにテトラヒドロフラン(THF)およびジオキサンなどのエーテル類等の一般的な有機溶媒が挙げられる。また、この有機物としては、ジイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、およびペンタメチルピペリドンなどのアミン類、ならびに1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびN,N−ジメチルプロピレン尿素(DMPU)などのウレア類等の有機液体が挙げられる。
また、この有機物としては、有機アンモニウム塩、有機ホスホニウム塩、セルロース、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリエチレンアクリレート、ポリイミドポリ安息香酸、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)などの有機オリゴマーや有機ポリマー、ピリジニウムイオン、イミダゾールイオン、ポリアミン等の窒素化合物、リン化合物などからなるイオン液体等が挙げられる。高沸点の有機物、有機ポリマー、およびイオン液体は蒸気圧が極めて低いため、これらを含む検出剤は濃度変化や全体の質量変化が抑えられる。さらに、適切な保湿性を有する物質を含む検出剤は、湿度の影響を抑えることができ、第一態様および第二態様のフッ化物の検出を安定して正確に行うことができる。
本実施形態の検出剤は、水と、塩基および還元剤の少なくとも一方を含んでいてもよい。有効成分が無機硫黄化合物の場合、水にこの無機硫黄化合物を溶かすことができる。また、有効成分が無機硫黄化合物および有機硫黄化合物の場合、検出環境の湿度の影響を抑えるため、検出剤に含まれる水が役立つ。有効成分がジチオカルバミン酸の塩の場合、ジチオカルバミン酸の塩に吸着水が存在するために、検出剤に水が含まれているときがある。
塩基としては、一般的な水酸化物、t−ブチトキシカリウム、ナトリウムメトキシドなどのアルコキシドアニオン、弱アルカリ性である酢酸ナトリウムなどの有機酸塩、アミン類等が挙げられる。検出環境に酸性ガス類が存在するとき、検出剤に含まれる塩基が酸性ガス類の影響を緩和する。また、検出剤に含まれる塩基は、無機硫黄化合物(特に硫化物)や有機硫黄化合物(特にチオール)に由来する臭気を抑えるとともに、硫化水素の発生を抑える。また、検出剤に含まれる塩基は、有機硫黄化合物であるチオール、ジスルフィド、チオエステル、ジチオエステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、ジチオカルバミン酸から硫黄アニオン種を生成し、検出するための反応性を高める。
還元剤としては、鉄(II)イオン、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH)、ナトリウムアマルガム、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、スズ(II)イオン、亜硫酸塩、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、ホルムアルデヒド、ヒドラジン、亜鉛アマルガム、水素化ジイソブチルアルミニウム、シュウ酸、ギ酸等が挙げられる。これらの中でも、安全性、利便性から、水素化ホウ素ナトリウムが好ましい。水素化ホウ素ナトリウムは、無機硫黄化合物(特に硫化物)の光学的シグナルの安定化に寄与するからである。また、水素化ホウ素ナトリウムは、有機硫黄化合物の1種であるジスルフィドから還元を行い、塩基と混合することで硫黄アニオン種を生成することができる。塩基と還元剤は、どちらかを先に混合しても、同時に混合してもよい。
また、有効成分の硫黄化合物の種類に応じて、塩基のみ、または還元剤のみを混合してもよい。また、有効成分の硫黄化合物の種類に応じて、塩基および還元剤の少なくとも一方の選択、ならびに水と、塩基および還元剤の少なくとも一方の混合順や混合方法を適切に選ぶことができる。また、検出剤に含まれる還元剤は、硫黄アニオン種を生成させることができる。また、検出剤に含まれる還元剤は、酸化による硫黄アニオン種の劣化や分解を抑えることができる。このため、物性値変化の計測の不安定化を抑えることができる。
検出剤に含まれる有効成分の含有量は、反応性の制御の観点から10質量%〜50質量%が好ましい。検出対象のフッ化物を検出するには、硫黄化合物とこのフッ化物が接触すればよい。本実施形態の検出剤は、有機溶剤に溶解して容器に入れ液体として用いることができる。また、本実施形態の検出剤は、有機溶剤に溶解した液体を基材に塗布したり、多孔質材に含浸させたりして用いることができる。本実施形態の検出剤は、液状、粉状、紐状、棒状、筒状、板状、布状、テープ状、またはカセット状の態様などで用いることができる。本実施形態の検出剤は、有効成分を含有するポリマーを基板に塗布する、有効成分を基材に含浸させる、オリゴマーやポリマーなどから構成される基材の表面に、有効成分をイオン結合、水素結合、ファンデアワールス結合、または配位結合などの化学結合をさせる等によって作製してもよい。
本発明の実施形態に係る検出対象のフッ化物の検出方法は、本実施形態の検出剤と検出対象のフッ化物とを反応工程と、検出剤の反応前後の物性値変化を測定する測定工程とを備えている。この物性値変化としては、光学的変化や質量変化が挙げられる。
反応工程では、例えば、(a)液体である本実施形態の検出剤に検出対象のフッ化物をバブリングする、(b)本実施形態の検出剤を含んだポリマー膜に検出対象のフッ化物を吹き付ける、(c)本実施形態の検出剤を含んだセルロースに検出対象のフッ化物を通過させる、(d)本実施形態の検出剤を含んだテープ状、シート状、または板状の各部材に検出対象のフッ化物を吹き付ける、(e)本実施形態の検出剤を含んだ網目状のテープまたはシートに検出対象のフッ化物を通過させるまたは吹き付ける、(f)本実施形態の検出剤を含んだ粉状、カプセル状、ビーズ状、粒子状、紐状、棒状、または布状の各部材を内面に設けた筒の内部に検出対象のフッ化物を通過させる、(g)粉状、カプセル状、ビーズ状、または粒子状の各部材を固定したテープの表面に検出対象のフッ化物を通過させる、またはこのテープに検出対象のフッ化物を吹き付ける(カプセル状部材の場合は、検出直前に潰してもよい)、(h)液体である本実施形態の検出剤をタンクに入れ、このタンクから検出対象のフッ化物に検出剤を滴下または噴霧する、等の各態様で検出できる。
検出対象のフッ化物を含む検出ガスを、検出剤に吹き付ける、検出剤を含む検出部材を通過させる、または検出剤にバブリングするときの検出ガスの流量は、特に制限がないが、検出反応を促進させる観点から800mL/分以上の流量が好ましく、例えば、1〜10L/分の流量が採用される。また、検出装置の取り扱いや設定の観点からは、200〜2000mL/分が好ましい。また、省エネルギーの観点からは、20〜600mL/分が好ましい。本実施形態の検出剤が、もともと水を含んでいる、または水が混合されている場合、検出を行う環境の湿度の影響を受けにくい。このため、乾燥した空気(湿度0%付近)から湿った空気(湿度約85%)まで、安定した検出が可能である。
測定工程では、反応工程での検出剤の反応前後の物性値変化、例えば室温付近で進行する反応によって生じる光学的変化を測定する。検出するときの温度は、実用化の視点から80℃以下が好ましい。反応温度の安定性、ひいてはシグナル安定化の視点から、検出する環境を温度40℃前後に設定することが好ましい。光学的変化は、吸光度、反射率、赤外振動、発光、燐光、屈折率、液晶状態、およびX線による光電子運動エネルギーの変化の少なくとも一種であってもよい。
吸光度の変化は、紫外可視光領域における波長の光の透過率の変化に起因するもので、紫外可視光領域とは、真空紫外線を含む紫外光領域から紫、青、緑、黄、橙、赤を含む可視光領域までの光の領域を意味する。測定工程で吸光度の変化を測定する場合、測定波長は200〜800nmが好ましい。さらに、測定工程で用いる光源の選択の観点からは、測定波長は300〜700nmが好ましい。光学的変化は、比色法により直接目視して測定してもよいし、機器を用いて測定してもよい。測定工程では、本実施形態の検出剤が影響しない、または本実施形態の検出剤の影響が少ない測定波長を選択することができる。
反射率の変化は、紫外可視光領域における波長の光の透過率の変化や光の散乱の変化に起因し、吸光度の変化と関連がある。硫黄化合物の発色反応の判定しやすさの視点では、測定波長は250〜600nmが好ましい。硫黄化合物の発色反応では、特に300〜450nmに特徴的な反射率変化があるため、測定波長は300〜450nmが好ましい。特に、ジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分として含む検出剤は、空気中に数日置いても検出対象のフッ化物が検出できる。この検出剤は、350nm付近と425nm付近に特徴的な反射スペクトルのピークがあり、少なくとも一方のシグナル変化を測定することにより、検出対象のフッ化物を安定して検出できる。
反射率の変化として、反応前後で反射率が変化しない波長における反射率を基準値とし、反応前後で反射率が変化する波長における反射率の変化値をこの基準値で割った換算値を使用することができる。反射率の変化の測定は、検出する波長を単純な1波長のみとする、検出する波長を複数設定する、ある波長域の積分値を用いる、または反射スペクトル曲線の形状の変化を数値化して用いるなど、反射スペクトルを計測して反射率の変化を測定するのに有用なあらゆる方法が使用できる。
赤外振動の変化は、赤外線領域における分子内の各結合における伸縮や振動の変化に起因するもので、赤外振動とは、近赤外から赤外、さらには遠赤外の領域における振動である。赤外振動の変化の測定は10〜4000cm−1が好ましく、測定しやすさの観点から1000〜1500cm−1が特に好ましい。蛍光発光や燐光発光の変化は、分子の反応に伴って変化する分子の励起状態から基底状態へのエネルギー移動の際放出される光の変化であり、励起状態は励起光により生成される。したがって、使用する光の領域は、吸光度の変化や反射率の変化で用いる領域と同じである。蛍光発光や燐光発光の変化は、その強度が増大する場合と減少する場合がある。
屈折率の変化は、分子の反応に伴って変化する部分の誘電率の変化に起因する。屈折率の変化の測定は空気中で行われることが多く、使用する光は紫外可視光領域のものが好ましく、屈折率が0.1〜3.2で変化することが好ましい。液晶状態の変化は、分子の反応に伴って変化する分子の配向状態の変化に起因するもので、特に等方的液体状態とネマティック液晶またはスメクティック液晶との間の変化を用いる。液晶状態の変化は、偏光した紫外可視光領域の光を用いて測定する。
X線による光電子運動エネルギーの変化は、分子の反応に伴って変化する分子内の原子状態の変化に起因するもので、観測される光電子運動エネルギーの変化を測定する。光源として、MgKaやAlKaのX線を用いるのが好ましい。反応による変化の大きさの観点から、200〜800eVの光電子運動エネルギーの変化を測定することが好ましい。なお、上記を2つ以上組み合わせて光学的変化を測定することで、検出対象のフッ化物を感度よく検出できる。
また、検出剤の反応前後の質量変化は、検出剤が設けられた振動体表面の振動数変化、または検出剤が設けられた水晶天秤用の水晶振動子表面の周波数変化を測定して把握してもよい。すなわち、検出剤の反応前後の質量変化の測定には、QCM(Quarts Crystal Microbalance:水晶天秤)が使用できる。QCMを応用し、本実施形態の検出剤を振動体表面またはQCMの水晶振動子表面に吸着させて、その表面と検出対象のフッ化物との反応による振動体表面の振動数変化や水晶振動子表面の共振周波数変化を測定することで、検出対象のフッ化物を感度よく検出できる。なお、検出剤の反応前後の質量変化は、マススペクトル計測を応用して、反応前後のマススペクトルの質量変化やパターン変化を計測して把握してもよい。
図3は、本発明の実施形態に係る検出キット10を模式的に示している。検出キット10は、検出部材12と、判定部材14とを備えている。検出部材12は、本実施形態の検出剤を含んでいる粉体である。検出部材12は、ガラスフィルター16,18で挟まれるように、ガラス管20に充填されている。ガラス管20には、ガラスフィルター16,22で挟まれるように、塵や水分等を除去する除去剤24が充填されている。検出対象のフッ化物を含むガスは、ガラスフィルター22側からガラス管20に導入されて、ガラスフィルター22、除去剤24、ガラスフィルター16、検出部材12、ガラスフィルター18を通過して、ガラス管20の外に排出される。このとき、検出対象のフッ化物と反応して、検出部材12に含まれる検出剤の色が変化する。
判定部材14は、この検出剤と検出対象のフッ化物を反応させたときの反応後の検出剤の色を、比色により判定するためのもので、例えば図3に示すように、検出対象のフッ化物の濃度に応じた色が表示されているカードである。したがって、検出対象のフッ化物を含むガスが通過した後の検出部材12の色と、判定部材14の色を比べることによって、検出対象のフッ化物の濃度、またはその濃度が基準値を超えているか否かを判断できる。なお、検出部材は、布状、板状、テープ状の部材であってもよく、例えばテープ状の検出部材に検出対象のフッ化物を含むガスを吹き付けて、検出部材の色を判定部材14の色と比べることによって濃度等が判断できる。このように、本発明の検出キットを用いれば、高温処理や高度な分離処理をせずに、検出対象のフッ化物の検出が可能である。
図4は、本発明の実施形態に係る検出装置30を模式的に示している。検出装置30は、検出部32と、導入部34と、光源36と、測定部38とを備えている。検出部32は、本実施形態の検出剤を含む検出部材40を備えている。導入部34は、検出対象のフッ化物を含むガスを検出部32に導く。光源36は、検出部材40に光を照射する。測定部38は、検出部材40の光の反射率を測定する。検出部材は、検出剤が含浸されている多孔質材を備えていてもよい。
この多孔質材として、メッシュ状のセルロース、多孔質ポリマー、または多孔質アルミナが挙げられる。また、検出部材は、検出剤が含有されるポリマーを備えていてもよい。また、検出部材40は、紐状、棒状、筒状、板状、布状、テープ状、またはカセット状の態様で、随時交換または搬送して用いることができる。検出部材40は、有効成分を含有するポリマーを基板に塗布する、有効成分を基材に含浸させる、オリゴマーやポリマーなどから構成される基材の表面に、有効成分をイオン結合、水素結合、ファンデアワールス結合、または配位結合などの化学結合をさせる等によって作製してもよい。
図5は、本発明の実施形態に係る検出装置50を模式的に示している。検出装置50は、検出部52と、導入部54と、測定部56とを備えている。検出部52は、本実施形態の検出剤が表面に設けられた水晶振動子58を備えている。導入部54は、検出対象のフッ化物を含むガスを検出部52に導く。測定部56は、水晶振動子58の共振周波数を測定する。振動体である水晶振動子58は、例えば、金属酸化物や金属シリコン材料などから構成されるカンチレバーや棒状の部材である。検出装置50を用いることで、低濃度の検出対象のフッ化物を感度よく、例えば2ppmの検出対象のフッ化物を1分以内に検出できる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。紫外可視反射スペクトルを用いた検出装置(Ocean Optics社製、反射率計測用の光源:DH−4000、反射率計測用の検出器:USB2000、光を導く反射プローブ(光ファイバー):727−733−2447)を使って、光学的変化を計測した。本発明の検出剤を含む板状のセルロースを、検出部であるフッ素樹脂製のセル内にセットした。検出対象のフッ化物を含むガスは、ポンプで吸引され、除塵フィルター、検出部、流量計、温度湿度計、活性炭、およびアルカリ水を順次通過した後、ドラフト内に排出される。
また、電源と水晶振動子の共振周波数の変化が計測できる検出装置(SEIKO EG&G社製、Quartz Crystal Analyzer QCA922)を使って、質量変化を計測した。本発明の検出剤が設けられた水晶振動子(金蒸着面:QA−A9M(共振周波数9MHz))を、検出部であるフッ素樹脂製のセル内にセットした。検出対象のフッ化物を含むガスは、ポンプで吸引され、除塵フィルターと検出部を順次通過した後、ドラフト内に直接排出される。
(実施例1)
まず、硫化ナトリウム9水和物(メルク社)約1gを水(MilliQ水)約4mLに溶解した後、ジメチルホルムアミド約1mLを加えて混合し検出剤を得た。つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。そして、室内空気中に濃度50ppmでCが含まれる検出ガスを、検出用セルロースに流量600mL/分で吹き付けた。その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が250nm〜600nmで変化した。特に400nm〜450nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測された。
一方、室内空気中にフッ素系化合物(パーフルオロアルカン(3M社のフロリナートFC−72およびフロリナートFC−84))とパーフルオロエーテル(ソルベイスペシャルティポリマーズ社のガルデンHT70およびガルデンHT90))をそれぞれ含む4種類のガスを検出用セルロースに吹き付けても、このようなシグナル変化は観測されなかった。以上より、硫黄アニオン種を含有する無機硫黄化合物を有効成分として含み、水と有機物をさらに含む検出剤を用いて、光学的変化によりCを簡便に選択的に検出できることが確認された。なお、Cは第一態様のフッ化物である。
(実施例2)
まず、硫化ナトリウム9水和物約170mgを水0.1mLに溶解した後、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA、別名:ヘキサメチルリン酸トリアミド)約0.3mLを加え混合した。つぎに、還元剤の水素化ホウ素ナトリウム約100mgをさらに混合して検出剤を得た。そして、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。つぎに、室内空気中に濃度50ppmでCが含まれる検出ガスを、この検出用セルロースに流量600mL/分で吹き付けた。その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が250nm〜550nmで変化した。特に400nm〜450nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測された。
図1は、吹付時間の経過に伴う「反射率の変化」を示している。この「反射率の変化」は、吹付前後の検出用セルロースの425nmにおける反射率の変化の値を、検出用セルロースの550nmにおける反射率(吹付前後で同じ)の値で割った換算値である。図1に示すように、反射率の変化は時間変化に比例し、検出反応が定量的に進行していることが明確になった。また、図1に示すように、吹付開始から1分以内に50ppmの不飽和炭化水素のフッ化物の検出ができる。
なお、室内空気中にパーフルオロアルカン(3M社のフロリナートFC−72とフロリナートFC−84)を含むガスを検出用セルロースに吹き付けても、このようなシグナル変化は観測されず、反射率スペクトルのベースラインが安定していた。また、水素化ホウ素ナトリウムを含まない、すなわち硫化ナトリウム9水和物と、水と、HMPAからなる検出剤を用いた検出の反射率スペクトルには、ベースラインのずれが見られた。したがって、水素化ホウ素ナトリウムが反射率スペクトルのベースライン安定化に効果があると考えられる。
一方、室内空気中にパーフルオロエーテル(ソルベイスペシャルティポリマーズ社のガルデンHT70とガルデンHT90)を含むガスを検出用セルロースに吹き付けると、このフッ素系化合物が影響したと思われる反射率の変化が400nm〜450nmに見られた。しかし、Cの検出に特徴的な400nm〜450nmにおける反射率のシグナル変化は観測されなかった。以上より、硫黄アニオン種を含有する無機硫黄化合物を有効成分として含み、水、有機物、および還元剤をさらに含む検出剤を用いて、光学的変化によりCを簡便に選択的に検出できることが確認された。
(実施例3)
まず、硫化ナトリウム9水和物約190mgを水0.2mLに溶解した後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)約0.5mLを加え混合した。つぎに、還元剤の水素化ホウ素ナトリウム約100mgをさらに混合した。そして、この混合物を約60℃に加熱しながら、テトラオクチルアンモニウムブロミドのNMP溶液(濃度約98mM)1mLをさらに混合した。つぎに、有機物かつ塩基のジシクロヘキシルメチルアミン0.2mLをさらにゆっくり加え混合して検出剤を得た。そして、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。
つぎに、室内空気中に濃度5ppmでCが含まれる検出ガスを、この検出用セルロースに流量600mL/分で吹き付けた。その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が250nm〜600nmで変化した。特に400nm〜450nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測された。一方、室内空気中にフッ素系化合物(3M社のフロリナートFC−72とフロリナートFC−84、およびソルベイスペシャルティポリマーズ社のガルデンHT70とガルデンHT90)を含むガスを検出用セルロースに吹き付けても、反射率スペクトルのベースラインのずれはあるものの、このようなシグナル変化は観測されなかった。以上より、硫黄アニオン種を含有する無機硫黄化合物を有効成分として含み、水、有機物、および還元剤をさらに含む検出剤を用いて、光学的変化によりCを簡便に選択的に検出できることが確認された。
(実施例4)
硫化水素ナトリウム(別名:水硫化ナトリウム)の水和物約40mgを水0.5mLに溶解した後、DMF約0.5mLを加え混合して検出剤を得た。つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。そして、室内空気中にCが飽和状態で含まれる検出ガスを、この検出用セルロースに吹き付けると、検出用セルロースの色が黄色から茶色に変化した。以上より、硫黄アニオン種を含有する無機硫黄化合物を有効成分として含み、水と有機物をさらに含む検出剤を用いて、Cを簡便に検出できることが確認された。
(実施例5)
まず、2−アミノエタンチオール約0.1gを、水を含むDMF0.1mLに混合した。つぎに、有機物かつ塩基のジシクロヘキシルメチルアミン約0.2mLとt−ブトキシカリウム約20mgをさらに加え混合して検出剤を得た。そして、室内空気中にCが飽和状態で含まれる検出ガスを液体である検出剤にバブリングすると、液体の色が黄色から茶色に変化した。この検出剤にパーフルオロアルカンの液体(3M社のフロリナートFC−84)のみを加えても色の変化はなかったが、Cを溶かしたこのフッ素系化合物の液体を加えると黄色から茶色に変化した。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物であるチオールを有効成分として含み、水、有機物、および塩基をさらに含む検出剤を用いて、比色によりCを簡便に選択的に検出できることが確認された。
(実施例6)
まず、2−アミノエタンチオール約0.1gをHMPA約0.1mLに混合した。つぎに、有機物かつ塩基のジシクロヘキシルメチルアミン約1mLをさらに加え混合した。そして、グリセリン約10mgをさらに加え混合して検出剤を得た。つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。そして、室内空気中に濃度5ppmでCが含まれる検出ガスを、検出用セルロースに流量800mL/分で吹き付けた。その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が250nm〜500nmで変化した。特に300nm〜400nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測された。
なお、室内空気中にパーフルオロアルカン(3M社のフロリナートFC−72とフロリナートFC−84)を含むガスを検出用セルロースに吹き付けても、このようなシグナル変化は観測されず、反射率スペクトルのベースラインも安定していた。一方、室内空気中にパーフルオロエーテル(ソルベイスペシャルティポリマーズ社のガルデンHT70とガルデンHT90)を含むガスを検出用セルロースに吹き付けると、300nm〜400nmにこのフッ素系化合物が影響したと思われる反射率の変化がみられたが、大きな変化ではなかった。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物を有効成分として含み、有機物と塩基をさらに含む検出剤を用いて、光学的変化によりCを簡便に選択的に検出できることが確認された。
(実施例7)
まず、4−ブロモベンゼンチオール約40mgを、有機物かつ塩基のジシクロヘキシルメチルアミン約1.5mLに加え混合した。つぎに、無水硫酸マグネシウム約10mgを加え混合して検出剤を得た。そして、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。つぎに、室内空気中に濃度5ppmでCが含まれる検出ガスを、検出用セルロースに流量800mL/分で吹き付けた。
その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が250nm〜500nmで変化した。特に250nm〜400nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測された。なお、室内空気中にパーフルオロエーテル(ソルベイスペシャルティポリマーズ社のガルデンHT70とガルデンHT90)を含むガスを検出用セルロースに吹き付けると、250nm〜350nmにこのフッ素系化合物が影響したと思われる反射率の変化がみられた。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物を有効成分として含み、有機物と塩基をさらに含む検出剤を用いて、光学的変化によりCを簡便に選択的に検出できることが確認された。
(実施例8)
まず、ステアリルメルカプタン(別名:n−オクタデシルチオール、炭素数18)約30mgを、水を含むDMF約0.4mLに混合した。つぎに、塩基のt−ブトキシカリウム約20mgをさらに加え、加熱しながら混合して検出剤を得た。そして、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。つぎに、室内空気中にCが飽和状態で含まれる検出ガスをこの検出用セルロースに吹き付けると、検出用セルロースの色が黄色から茶色に変化した。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物を有効成分として含み、有機物、水、および塩基をさらに含む検出剤を用いて、比色によりCを簡便に検出できることが確認された。
(実施例9)
まず、合成したトリフェニルメタンチオール(別名:トリフェニルメチルメルカプタン、炭素数19)約30mgを、水を含むDMF約0.3mLに混合し溶解した。つぎに、塩基のt−ブトキシカリウム約30mgをさらに加え、加熱しながら混合して検出剤を得た。そして、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。つぎに、室内空気中にCが飽和状態で含まれる検出ガスをこの検出用セルロースに吹き付けると、検出用セルロースの色が黄色から茶色に変化した。以上より、硫黄アニオン種を含有し、かさ高い第3級炭素を有する有機硫黄化合物であるチオールの誘導体を有効成分として含み、有機物、水、および塩基をさらに含む検出剤を用いて、比色によりCを簡便に検出できることが確認された。
(実施例10)
まず、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物約100mgを、水を含むHMPA約0.12mLに混合した。つぎに、テトラオクチルアンモニウムブロミドのNMP溶液(濃度約98mM)0.2mLをさらに加え混合した。そして、塩基のジシクロヘキシルメチルアミン約0.1mLをさらに加え、混合して検出剤を得た。つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。
そして、室内空気中に濃度50ppmでCが含まれる検出ガスを、検出用セルロースに流量600mL/分で吹き付けた。その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が250nm〜500nmで変化した。特に330nm〜450nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測された。また、ジエチルジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分とする検出剤では、350nm付近と425nm付近に特徴的な反射スペクトルのピークがあり、これらの少なくとも一方のシグナル変化を計測することによりCが検出できる。
なお、室内空気中にフッ素系化合物(3M社のフロリナートFC−72とフロリナートFC−84、およびソルベイスペシャルティポリマーズ社のガルデンHT70とガルデンHT90)を含むガスを検出用セルロースに吹き付けても、反射率スペクトルのベースラインのずれはあるものの、330nm〜450nmにおける特徴的な反射率のシグナル変化がなかった。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物であるジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分として含み、有機物、水、および塩基をさらに含む検出剤を用いて、光学的変化によりCを簡便に選択的に検出できることが確認された。
(実施例11)
まず、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物約150mgを、水を含むHMPA約0.12mLに混合した。つぎに、加熱したテトラオクチルアンモニウムブロミドのNMP溶液(濃度約98mM)0.2mLをさらに加え混合した。そして、塩基のジシクロヘキシルメチルアミン約0.1mLをさらに加え、混合して検出剤を得た。つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。
そして、この検出用セルロースを、蛍光灯下、温度20〜24℃、湿度40〜80%の環境で空気中に2日間さらした。その後、室内空気中に濃度50ppmでCが含まれる検出ガスを、この検出用セルロースに流量600mL/分で吹き付けた。その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が250nm〜500nmで変化した。特に330nm〜450nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測された。また、ジエチルジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分とする検出剤では、350nm付近と425nm付近に特徴的な反射スペクトルのピークがあり、これらの少なくとも一方のシグナル変化を計測することによりCが検出できる。
図2は、吹付時間の経過に伴う「反射率の変化」を示している。この「反射率の変化」は、吹付前後の検出用セルロースの430nmにおける反射率の変化の値を、検出用セルロースの550nmにおける反射率(吹付前後で同じ)の値で割った換算値である。図2に示すように、反射率の変化は時間変化に比例し、検出反応が定量的に進行していることが明確になった。また、図2に示すように、吹付開始から1分以内に50ppmの不飽和炭化水素のフッ化物の検出ができる。
従来の酸ガス用の検出剤や、アミジン骨格を中心とした少なくとも2つの環を有する窒素化合物等を有効成分とする検出剤は、本実施例のように蛍光灯下で空気中に2日間さらすとシグナルが観測できない場合が多い。本実施例によれば、ジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分として含む検出剤は、耐久性に優れ、長寿命であると考えられる。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物であるジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分として含み、有機物、水、および塩基をさらに含む検出剤を用いて、光学的変化によりCを簡便に検出できることが確認された。
(実施例12)
まず、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物約150mgを、水を含むHMPA約0.12mLに混合した。つぎに、加熱したテトラオクチルアンモニウムブロミドのNMP溶液(濃度約98mM)0.2mLをさらに加え混合した。そして、塩基のジシクロヘキシルメチルアミン約0.1mLをさらに加え、混合して検出剤を得た。つぎに、ポリアミン化合物を有するポリマー(Araldite硬化剤、ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製、50520)約380mgをNMP約1.5mLに混合・溶解した。
そして、得られた溶液約0.2mLと、検出剤約0.1mLを混合して検出部材を得た。ここで、ポリアミン化合物を有するポリマーのアミン基は、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムの一部と水素結合している。また、ポリアミン化合物を有するポリマーのアミン基は、ナトリウムカチオンを介したクーロン力でN,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムと結合している。つぎに、検出部材をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。この検出用セルロースを、蛍光灯下、温度20〜24℃、湿度40〜80%の環境で空気中に5日間さらした。その後、室内空気中に濃度0.4ppmでCが含まれる検出ガスを、この検出用セルロースに流量600mL/分で吹き付けた。その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が250nm〜500nmで変化した。
特に330nm〜450nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測された。なお、室内空気中にフッ素系化合物(3M社のフロリナートFC−72とフロリナートFC−84、およびソルベイスペシャルティポリマーズ社のガルデンHT70とガルデンHT90)を含むガスを検出用セルロースに吹き付けても、反射率スペクトルのベースラインが安定した状態で、330nm〜450nmにおける特徴的な反射率のシグナル変化がなかった。
したがって、本実施例の検出剤は、化学構造が類似する検出対象ではないフッ化物と検出対象のフッ化物を選別して、検出対象のフッ化物を選択的に検出できることがわかった。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物であるジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分として含み、有機溶剤、有機物、水、および塩基をさらに含む検出剤を備えるポリマーやオリゴマーを用いて、光学的変化によりCを簡便に選択的に検出できることが確認された。
(実施例13)
まず、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物約800mgを、水を含むHMPA約1mLに溶解して検出剤を得た。つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。そして、検出部であるフッ素樹脂製のセル内を約40℃にし、この検出用セルロースをセットした。その後、湿度約73%の室内空気中に濃度40ppmでCが含まれる検出ガスを、この検出用セルロースに流量約1200mL/分で吹き付けた。その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が300nm〜500nmで変化した。特に300nm〜450nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測され、これらのシグナル変化を計測することによりCが検出できる。
(実施例14)
まず、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物約800mgを、水を含むHMPA約1mLに溶解した。つぎに、加熱したテトラオクチルアンモニウムブロミドのNMP溶液(濃度約98mM)0.2mLをさらに加え混合して検出剤を得た。この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、検出用セルロースを得た。そして、検出部であるフッ素樹脂製のセル内を約40℃にし、この検出用セルロースをセットした。その後、湿度約73%の室内空気中に濃度2ppmでCが含まれる検出ガスを、この検出用セルロースに流量約1800mL/分で吹き付けた。その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が300nm〜500nmで変化した。特に300nm〜450nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測され、これらのシグナル変化を計測することによりCが検出できる。
(実施例15)
まず、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物約800mgを、水を含むHMPA約1mLに溶解し、そこへ塩化カルシウム260mgを加え加熱混合した。つぎに、テトラオクチルアンモニウムブロミド40mgと4−ブロモフェニルメチルトリフェニルホスホニウムブロミド60mgを加え、さらに保湿剤であるグリセリンを約10mg加え混合し、粘度が高い半透明のスラリー状の検出剤を得た。この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませ、余分な検出剤を紙製ウエスでふき取り検出用セルロースを得た。そして、検出部であるフッ素樹脂製のセル内を約30℃にし、この検出用セルロースをセットした。その後、湿度約65〜69%の室内空気中に濃度2ppmでCが含まれる検出ガスを、この検出用セルロースに流量約7L/分で吹き付けた。その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が300nm〜500nmで変化した。特に420nm〜430nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測された。
なお、室内空気中にフッ素系化合物(3M社のフロリナートFC−72とフロリナートFC−84、およびソルベイスペシャルティポリマーズ社のガルデンHT70とガルデンHT90、3M社のノベック7100)が飽和状態で含まれるガスを検出用セルロースに吹き付けても、反射率スペクトルのベースラインのずれはあるものの、300nm〜500nmにおける特徴的な反射率のシグナル変化はなかった。以上、ジチオカルバミン酸の誘導体以外の有機物(HMPAグリセリン)と、アンモニウム塩またはホスホニウム塩を含む検出剤を用いることで、フロリナート等の妨害や干渉を受けずに反射率のシグナル変化が計測でき、Cを簡便に安定して検出できる。
(実施例16)
まず、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物約150mgを、水を含むHMPA約0.12mLに混合した。つぎに、加熱したテトラオクチルアンモニウムブロミドのNMP溶液(濃度約98mM)0.2mLをさらに加え混合した。そして、塩化銅(II)約30mgをさらに加え混合して、褐色の溶液である検出剤を得た。溶液が褐色となったのは、ジチオカルバミン酸ナトリウムの一部が銅イオンと結合したためである。つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。そして、室内空気中に濃度1ppmでCが含まれる検出ガスを、この検出用セルロースに流量600mL/分で吹き付けた。
その結果、比較的安定したシグナルで、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が250nm〜500nmで変化した。特に330nm〜450nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測された。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物であるジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分として含み、有機溶剤、有機物、水、および塩基をさらに含む検出剤を用いて、光学的変化によりCを簡便に選択的に検出できることが確認された。
(実施例17)
まず、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA、Mn:4760、Mw:約41万)約800mgをテトラヒドロフラン(THF、脱水、安定剤(2,4,6−トリアルキルフェノール)0.03%含有)約15mLに加え、3時間撹拌して溶解させた。つぎに、エチレンジアミン約1.2gと、触媒であるp−トルエンスルホン酸約3mgをさらに加え、室温で17時間反応させて反応液を得た。この反応により、PMMAの側鎖にアミノエチルアミド基が導入される。そして、得られた反応液に水を加えてポリマーを沈殿させ、上澄みをデカンテーションによって除去した。
つぎに、このポリマーが沈殿した水を含む液体に、THFを加えてポリマーを再度溶解した。そして、ポリマーユニット数の0.1当量に相当する塩化水素を含む36%塩酸80μL、水80μL、およびTHF80μLの混合溶液をさらに加えた。そして、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2水和物約200mgを溶かしたTHF溶液約2mLをさらに加え、50℃で10分間加熱した。つぎに、この溶液に含まれるTHFを蒸発させてポリマーを得た。そして、HMPA約4mLとTHF約4mLの混合溶媒にこのポリマーを溶かして検出剤を得た。この検出剤は、N,N−ジエチルジチオカルバモイル基を側鎖に有する有機硫黄化合物を有効成分として含むポリマーである。
つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。そして、室内空気中にCが飽和状態で含まれる検出ガスをこの検出用セルロースに吹き付けると、検出用セルロースの色が黄色から茶色に変化した。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物を有効成分として含み、有機物と水をさらに含む検出剤を用いて、比色によりCを簡便に検出できることが確認された。なお、このポリマーは、その組成から、ジチオカルバミン酸の誘導体1分子に対して、約10ユニット分のポリマー骨格を有する。これは、ジチオカルバミン酸の誘導体1分子に対して、原子量換算で炭素数約60の炭化水素の置換基を有することに相当する。このように、炭素数約60に相当する大きな炭化水素の置換基が存在しても、検出対象のフッ化物が検出できることがわかった。
(実施例18)
まず、PMMA(Mn:4760、Mw:約41万)約800mgをTHF(脱水、安定剤含有)約15mLに加え、3時間撹拌して溶解させた。つぎに、エチレンジアミン約1.2gと、触媒であるp−トルエンスルホン酸約3mgをさらに加え、室温で17時間反応させて反応液を得た。この反応により、PMMAの側鎖にアミノエチルアミド基が導入される。そして、得られた反応液に水を加えてポリマーを沈殿させ、上澄みをデカンテーションによって除去した。
つぎに、このポリマーが沈殿した水を含む液体に、THFを加えてポリマーを再度溶解した。そして、ポリマーユニット数の0.1当量に相当する塩化水素を含む36%塩酸80μL、水80μL、およびTHF80μLの混合溶液をさらに加えた。そして、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム2水和物約200mgを溶かしたTHF溶液約2mLをさらに加え、50℃で10分間加熱した。つぎに、この溶液に含まれるTHFを蒸発させてポリマーを得た。そして、HMPA約4mLとTHF約4mLの混合溶媒にこのポリマーを溶かした。そして、加熱したテトラオクチルアンモニウムブロミドのNMP溶液(濃度約98mM)0.2mLをさらに加え混合して検出剤を得た。この検出剤は、N,N−ジエチルジチオカルバモイル基を側鎖に有する有機硫黄化合物を有効成分として含むポリマーである。
つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。そして、室内空気中に濃度1ppmでCが含まれる検出ガスを、この検出用セルロースに流量600mL/分で吹き付けた。その結果、吹付前後の検出用セルロースの紫外可視領域の反射率が250nm〜500nmで変化した。特に330nm〜450nmにおいて、Cを検出する特徴的な反射率のシグナル変化が観測された。以上より、炭素数約60に相当する大きな炭化水素の置換基を有するとともに、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物を有効成分として含み、有機物と水をさらに含む検出剤を用いて、光学的変化によりCを簡便に検出できることが確認された。
(実施例19)
まず、N,N−ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム2水和物約80mgを、水を含むHMPA約0.1mLに混合して検出剤を得た。つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。そして、室内空気中にCが飽和状態で含まれる検出ガスをこの検出用セルロースに吹き付けると、検出用セルロースの色が黄色から茶色に変化した。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物であるジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分として含み、有機物と水をさらに含む検出剤を用いて、比色によりCを簡便に検出できることが確認された。
(実施例20)
まず、チオ安息香酸約0.1gを、水を含むDMF約0.3mLに混合して検出剤を得た。つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。そして、室内空気中にCが飽和状態で含まれる検出ガスをこの検出用セルロースに吹き付けると、検出用セルロースの色が黄色から茶色に変化した。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物であるチオ安息香酸を有効成分として含み、有機物、水、および塩基をさらに含む検出剤を用いて、比色によりCを簡便に検出できることが確認された。
(実施例21)
まず、チオ尿素約0.3gを、水を含むDMF約0.5mLに混合して検出剤を得た。つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。そして、室内空気中にCが飽和状態で含まれる検出ガスをこの検出用セルロースに吹き付けると、検出用セルロースの色が黄色から茶色に変化した。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物であるチオ尿素を有効成分として含み、有機物、水、および塩基をさらに含む検出剤を用いて、比色によりCを簡便に検出できることが確認された。
(実施例22)
まず、ジフェニルジスルフィド(二硫化ジフェニル)約190mgを、水を含むHMPA約0.12mLに混合した。つぎに、還元剤の水素化ホウ素ナトリウム約100mgとt−ブトキシカリウム約20mgをさらに加え混合して検出剤を得た。そして、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。つぎに、室内空気中にCが飽和状態で含まれる検出ガスをこの検出用セルロースに吹き付けると、検出用セルロースの色が黄色から茶色に変化した。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物を有効成分として含み、有機物、水、塩基、および還元剤をさらに含む検出剤を用いて、比色によりCを簡便に検出できることが確認された。
(実施例23)
まず、硫化ナトリウム9水和物約190mgを水0.2mLに溶解した。つぎに、NMP約0.5mLをさらに加え混合した。そして、還元剤の水素化ホウ素ナトリウム約100mgをさらに混合した。つぎに、約60℃に加熱しながら、テトラオクチルアンモニウムブロミドのNMP溶液(濃度約98mM)1mLをさらに加え混合した。そして、約60℃に加熱しながら、塩基のジシクロヘキシルメチルアミン0.2mLとt−ブトキシカリウム約30mgをさらにゆっくり加え混合して検出剤を得た。つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。
そして、室内空気中に1,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロシクロペンタン(c−C)が飽和状態で含まれる検出ガスをこの検出用セルロースに吹き付けると、検出用セルロースの色が黄色から茶色に変化した。以上より、硫黄アニオン種を含有する無機硫黄化合物である硫化水素ナトリウムを有効成分として含み、有機物、水、塩基、および還元剤をさらに含む検出剤を用いて、比色によりc−Cを簡便に検出できることが確認された。なお、c−Cは第二態様のフッ化物である。
(実施例24)
まず、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物約100mgを、水を含むHMPA約0.12mLに混合した。つぎに、加熱したテトラオクチルアンモニウムブロミドのNMP溶液(濃度約98mM)0.2mLをさらに加え混合した。そして、塩基のジシクロヘキシルメチルアミン50μLおよびt−ブトキシカリウム約30mgをさらに加え混合して検出剤を得た。つぎに、つぎに、この検出剤をメッシュ径約3μmのセルロースに浸みこませた後、ドライヤーで約1分間乾燥して検出用セルロースを得た。
そして、室内空気中にc−Cが飽和状態で含まれる検出ガスをこの検出用セルロースに吹き付けると、検出用セルロースの色が黄色から茶色に変化した。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物であるジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分として含み、有機物、水、および塩基をさらに含む検出剤を用いて、比色によりc−Cを簡便に検出できることが確認された。
(実施例25)
まず、N,N−ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム3水和物約150mgを、水を含むHMPA約0.12mLに混合した。つぎに、加熱したテトラオクチルアンモニウムブロミドのNMP溶液(濃度約98mM)0.2mLをさらに加え混合した。そして、塩基のジシクロヘキシルメチルアミン約0.1mLをさらに加え混合して検出剤を得た。
つぎに、両面に金を蒸着したQCMの水晶振動子(QA−A9M(共振周波数9MHz))の表面に検出剤5μLを滴下し、エアブローによって検出剤を金表面全体に行き渡らせた。その後、この水晶振動子を約60℃の熱風で5分間乾燥させた。そして、この水晶振動子を検出装置にセットし、室内空気中にフッ素系化合物が飽和状態で含まれる5種類のガスをこの水晶振動子に順次吹き付けた。
ここで、5種類のフッ素系化合物は、パーフルオロアルカン(3M社のフロリナートFC−72およびフロリナートFC−84)、ハイドロフルオロエーテル(3M社のノベック7100)、ならびにパーフルオロエーテル(ソルベイスペシャルティポリマーズ社のガルデンHT70およびガルデンHT90)である。その結果、5種類のガスの全てで、共振周波数の有意な変化が観測されなかった。
つぎに、室内空気中にCが飽和状態で含まれる検出ガスをこの水晶振動子に吹き付けると、QCMの共振周波数9MHzにおいて、QCMに設けた検出剤の質量変化に伴う5000Hz前後の有意な減少が計測された。以上より、硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物であるジチオカルバミン酸の誘導体を有効成分として含み、有機物、水、および塩基をさらに含む検出剤を用いて、質量変化によりCを簡便に選択的に検出できることが確認された。
本発明の検出剤、検出方法、検出キット、および検出装置によれば、5ppm程度の検出対象のフッ化物を、室温付近で、簡便に、迅速に、経済的に検出できる。また、本発明の検出剤、検出方法、検出キット、および検出装置によれば、フッ素系液体から発生する妨害ガスの干渉を受けずに、検出対象のフッ化物を検出することができる。また、本発明の検出剤によれば、湿気や酸性ガスに対する耐久性が向上する。このため、検出剤の長寿命化が図れ、ひいては検出装置のランニングコストが軽減できる。また、本発明の検出方法によれば、比色法等の光学的な変化や質量変化により、簡便に検出対象のフッ化物が検出できる。
10 検出キット
12 検出部材
14 判定部材
30,50 検出装置
32,52 検出部
34,54 導入部
36 光源
38,56 測定部

Claims (24)

  1. 硫黄アニオン種を含有する無機硫黄化合物を有効成分として含み、フッ化物を検出する検出剤であって、
    前記フッ化物が、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、ならびに(2)水素と結合している第一の炭素と、アニオン性脱離基および第一の炭素と結合している第二の炭素とを備える炭化水素のフッ化物、の少なくとも一方である検出剤。
  2. 前記無機硫黄化合物が、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、およびナトリウム以外のカチオンを有する硫化物の少なくとも一種である請求項1記載の検出剤。
  3. 水と、塩基および還元剤の少なくとも一方をさらに含む請求項1または2記載の検出剤。
  4. 硫黄アニオン種を含有する有機硫黄化合物を有効成分として含み、フッ化物を検出する検出剤であって、
    前記フッ化物が、(1)不飽和炭化水素のフッ化物、ならびに(2)水素と結合している第一の炭素と、アニオン性脱離基および第一の炭素と結合している第二の炭素とを備える炭化水素のフッ化物、の少なくとも一方である検出剤。
  5. 前記有機硫黄化合物が、チオール、ジスルフィド、チオエステル、ジチオエステル、チオカルボン酸、ジチオカルボン酸、ジチオカルバミン酸、およびチオ尿素、ならびにこれらの誘導体の少なくとも一種である請求項4記載の検出剤。
  6. 前記有機硫黄化合物が、ヘテロ原子を含んでもよい炭化水素の置換基を有する請求項4または5記載の検出剤。
  7. 前記炭化水素の炭素数が1以上60以下である請求項6記載の検出剤。
  8. 前記有機硫黄化合物がジチオカルバミン酸の誘導体である請求項5記載の検出剤。
  9. 前記ジチオカルバミン酸の誘導体が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、アンモニウム塩、またはホスホニウム塩である請求項8項記載の検出剤。
  10. 水と、塩基、還元剤、および遷移金属イオンの少なくとも一種をさらに含む請求項4から9のいずれか1項記載の検出剤。
  11. 前記フッ化物が、C、C、およびCの少なくとも一種である請求項1から10のいずれか1項記載の検出剤。
  12. 請求項1から11のいずれか1項記載の検出剤と前記フッ化物とを反応させる反応工程と、
    前記検出剤の反応前後の物性値変化を測定する測定工程と、
    を有する前記フッ化物の検出方法。
  13. 前記物性値変化が光学的変化である請求項12に記載の検出方法。
  14. 前記光学的変化が、吸光度、反射率、赤外振動、発光、燐光、屈折率、液晶状態、およびX線による光電子運動エネルギーの変化の少なくとも一種である請求項13記載の検出方法。
  15. 前記光学的変化が、紫外可視光領域の吸光度または反射率の変化であり、
    濃度0.4ppm〜50ppmのCを検出する請求項13に記載の検出方法。
  16. 比色法により前記光学的変化を測定する請求項13に検出方法。
  17. 前記物性値変化が質量変化である請求項12に記載の検出方法。
  18. 前期検出剤が設けられた振動体表面の振動数変化、または前期検出剤が設けられた水晶天秤用の水晶振動子表面の周波数変化により前記質量変化を測定する請求項17記載の検出方法。
  19. 請求項1から11のいずれか1項記載の検出剤を含む検出部材と、
    前記検出剤と前記フッ化物を反応させたときの反応後の前記検出剤の色を、比色により判定するための判定部材と、
    を有する前記フッ化物の検出キット。
  20. 請求項1から11のいずれか1項記載の検出剤を含む検出部材を備える検出部と、
    前記フッ化物を含むガスを前記検出部に導く導入部と、
    前記検出部材に光を照射する光源と、
    前記検出部材の光の反射率を測定する測定部と、
    を有する前記フッ化物の検出装置。
  21. 前記検出部材が、前記検出剤が含浸されている多孔質材を有する請求項20記載の検出装置。
  22. 前記多孔質材が、メッシュ状のセルロース、多孔質ポリマー、または多孔質アルミナである請求項21記載の検出装置。
  23. 前記検出部材が、前記検出剤が含有されるポリマーを有する請求項20記載の検出装置。
  24. 請求項1から11のいずれか1項記載の検出剤が表面に設けられた水晶振動子を備える検出部と、
    前記フッ化物を含むガスを前記検出部に導く導入部と、
    前記水晶振動子の共振周波数を測定する測定部と、
    を有する前記フッ化物の検出装置。
JP2015138900A 2015-07-10 2015-07-10 フッ化物の検出剤、フッ化物の検出方法、フッ化物検出キット、およびフッ化物検出装置 Active JP6643611B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015138900A JP6643611B2 (ja) 2015-07-10 2015-07-10 フッ化物の検出剤、フッ化物の検出方法、フッ化物検出キット、およびフッ化物検出装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015138900A JP6643611B2 (ja) 2015-07-10 2015-07-10 フッ化物の検出剤、フッ化物の検出方法、フッ化物検出キット、およびフッ化物検出装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017020904A true JP2017020904A (ja) 2017-01-26
JP6643611B2 JP6643611B2 (ja) 2020-02-12

Family

ID=57890139

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015138900A Active JP6643611B2 (ja) 2015-07-10 2015-07-10 フッ化物の検出剤、フッ化物の検出方法、フッ化物検出キット、およびフッ化物検出装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6643611B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7426074B2 (ja) 2020-03-04 2024-02-01 国立大学法人山形大学 ビスマス-ジチオカルボキシレート錯体構造を有するポリマーおよびフッ化物イオン検出用剤

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7426074B2 (ja) 2020-03-04 2024-02-01 国立大学法人山形大学 ビスマス-ジチオカルボキシレート錯体構造を有するポリマーおよびフッ化物イオン検出用剤

Also Published As

Publication number Publication date
JP6643611B2 (ja) 2020-02-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Shukla et al. Do anions influence the polarity of protic ionic liquids?
Shamsipur et al. Physical and electrochemical properties of ionic liquids 1-ethyl-3-methylimidazolium tetrafluoroborate, 1-butyl-3-methylimidazolium trifluoromethanesulfonate and 1-butyl-1-methylpyrrolidinium bis (trifluoromethylsulfonyl) imide
Xu et al. Solubility of CO2 in aqueous mixtures of monoethanolamine and dicyanamide-based ionic liquids
JP5867730B2 (ja) ハロゲン化物の検出剤、並びにそれを検出する方法及び検出センサー
Song et al. To form AIE product with the target analyte: A new strategy for excellent fluorescent probes, and convenient detection of hydrazine in seconds with test strips
Caricato et al. From red to blue shift: switching the binding affinity from the acceptor to the donor end by increasing the π-bridge in push–pull chromophores with coordinative ends
Karmakar et al. Intramolecular excimer formation kinetics in room temperature ionic liquids
Vovna et al. Electronic structure and optical properties of boron difluoride dibenzoylmethane F2Bdbm
Kim et al. Effects of carbon dioxide and acidic carbon compounds on the analysis of Boehm titration curves
Kutsuna et al. Preferential solvation of perfluorooctanoic acid (PFOA) by methanol in methanol–water mixtures: A potential overestimation of the dissociation constant of PFOA using a Yasuda–Shedlovsky plot
JP6643611B2 (ja) フッ化物の検出剤、フッ化物の検出方法、フッ化物検出キット、およびフッ化物検出装置
JP5665001B2 (ja) 検出方法及び検出センサー
JP5764798B2 (ja) フッ素化炭化水素の検出方法及び検出センサー
JP5830796B2 (ja) フッ素化炭化水素化合物の検出方法及び検出センサー
Shamsipur et al. 7Li-NMR study of the stoichiometry, stability and exchange kinetics of Li+ ion with 12-Crown-4, 15-Crown-5 and cryptands C222, C221 and C211 in 50% ionic liquid–acetonitrile mixtures
Schwarz et al. A fluorescence method for the measurement of the partition coefficients of naphthalene, 1-methylnaphthalene, and 1-ethylnaphthalene in water
JP5920948B2 (ja) 検出方法及び検出センサー
JP5764799B2 (ja) フッ素化不飽和炭化水素の検出方法及び検出センサー
Gaines Jr On the retention of solvent in monolayers of fatty acids spread on water surfaces
Ahmed et al. Solvatochromic and fluorescence spectroscopic studies on polarity of ionic liquid and ionic liquid-based binary systems
Cometto et al. Electrochemical detection of the thermal stability of n-alkanethiolate monolayers on Au (1 1 1)
Martinez et al. Structural Study at the Gas‐Liquid Interface of 1‐Alkyl‐3‐Methylimidazolium Alkylsulfates Using Surface Potential Measurements
JP2013096751A (ja) ガス状のフッ化物の安定な検出方法及びその検出装置
Cataldo Ozone solvatochromism in selected solvents
Sun et al. Investigation of effects of iron sulfide on corrosion and inhibition of carbon steel in H2S containing conditions

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180621

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190612

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190724

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190909

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191204

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191205

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6643611

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250