JP2012207332A - ポリウレタン弾性繊維及びその製法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリウレタン重合体100重量部、該ポリウレタン重合体100重量部に対して、炭素原子数10〜30の脂肪酸金属塩0.01〜3重量部、及びポリカルボン酸系共重合化合物0.00001〜5重量部を含むポリウレタン弾性繊維。
【選択図】なし
Description
しかしながら、これらの分散剤を用いても、調製したポリウレタン弾性繊維紡糸液中に脂肪酸金属塩を十分に安定的に分散させることは未だ達成されていない。
しかしながら、これらの繊維処理剤は、温度分散安定性が低く、特に夏場において繊維処理剤の脂肪酸金属塩の凝集に起因する問題が発生している。また、繊維処理剤を繊維に付着させる工程でも、繊維に一定量のオイルを均一に付着させるためには、オイル粘度を一定に保つ必要がある。そのため、繊維処理剤浴の温度を50℃付近に設定している。その場合も、処理剤浴中の脂肪酸金属塩の凝集はいっそう進みやすいという問題がある。
一般に脂肪酸金属塩は、ポリウレタン重合体を溶解するアミド系溶剤や繊維処理剤のポリアルキルシロキサンに親和性が乏しく、混合前には固体微粒子の平均粒子径が1μm以下の微粒子であっても、アミド溶剤やポリアルキルシロキサン中では、速やかに凝集が進み、数十μmの粒子凝集体になり、工程中各所に存在するフィルターを閉塞する。よって、脂肪酸金属塩をアミド系溶剤やポリアルキルシロキサン中で親和性を向上させる好適な分散剤を見出すことが肝要であった。ポリアルキルシロキサン中では、ミル等で機械的分散して、一時的に微粒子化された脂肪酸金属塩であっても、経時的に凝集が進行するため、30℃以下好ましくは20℃以下の低温保管でないと、脂肪酸金属塩の凝集体が生成し、処理剤ノズル詰まりや繊維に付着すると加工問題を起こす原因になる。
[1]ポリウレタン重合体100重量部、該ポリウレタン重合体100重量部に対して、炭素原子数10〜30の脂肪酸金属塩0.01〜3重量部、及びポリカルボン酸系共重合化合物0.00001〜5重量部を含むポリウレタン弾性繊維。
ポリウレタン重合体100重量部、該ポリウレタン重合体100重量部に対して、炭素原子数10〜30の脂肪酸金属塩0.01〜3重量部、及びポリカルボン酸系共重合化合物0.0001〜5重量部を、アミド系溶剤に溶解・混合して、紡糸原液を作製し、そして
該紡糸原液を乾式紡糸法で紡糸し、得られた糸を巻き取って、ポリウレタン弾性繊維を製造する、
を含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
すなわち、本発明は、ポリウレタン重合体100重量部、該ポリウレタン重合体100重量部に対して、炭素原子数10〜30の脂肪酸金属塩0.01〜3重量部、及びポリカルボン酸系共重合化合物0.00001〜5重量部を含むポリウレタン弾性繊維である。
水酸基(−OH)末端モノメタクリレートで:ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)−モノメタクリレート、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール−モノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)−モノメタクリレート、プロピレングリコール・ポリブチレングリコール−モノメタクリレート等;
水酸基(−OH)末端モノアクリレート:ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート等;
アルキル基又はアリール基末端ポリアルキレングリコールモノアクリレート:メトキシポリエチレングリコール−アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール−アクリレート、ノニルフェノキシ-ポリプロピレングリコール−アクリレート、ノニルフェノキシ−ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)−アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール−アクリレート。
5リットル加圧反応器にアリルアルコール58g(1.0モル)と触媒としてナトリウムメチラート1.0gを入れ、系内の空気を窒素ガスで置換した後、100〜120℃でエチレンオキシド1408g(32.0モル)とプロピレンオキシド116g(2.0モル)とを予め混合しておいた溶液を約0.05〜0.5MPa(ゲージ圧)で徐々に圧入して付加反応を行う。反応終了後60℃まで冷却する。次いで、上記加圧反応器で60℃に保たれている反応溶液中に水1198g、無水マレイン酸176.4g(1.8モル)を加え、35℃で水溶性開始剤として過硫酸アンモニウム38.8g(0.170モル)を加え、系内の空気を窒素ガスで置換した後、60±2℃で10時間反応させる。重合反応終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液225g(水酸化ナトリウムとして2.7モル)を加えて中和し、ポリカルボン酸系共重合体の水溶液を得る。
本発明のポリカルボン酸系重合物の具体的な1例として、日油株式会社製商品名マリアリムAKM−0531、AFB−0561、AFB−1521、AAB−0851、AEM3511,AWS−0851等があげられる。好ましい化合物は、AKM−0851である。
ビーズミル等を用いる場合においては、平均粒子径50〜100μmの、脂肪酸金属塩を用いることができるが、ホモミキサー使用の場合は、溶剤に混合前の状態で平均粒子径10μm以下、好ましくは5μm以下の脂肪酸金属塩を用いることが好ましい。
本発明のポリウレタン弾性繊維を製造しパッケージに巻き取るに際し、25℃における動粘度が5〜50センチストークスであるポリアルキルシロキサンと25℃における動粘度が30〜70センチストークスである鉱物油との比が100/0〜50/50であるオイル成分と、脂肪酸金属塩とポリカルボン酸系共重合物とを含む繊維処理剤で、得られた糸を処理することができる。
本発明に用いるポリウレタン重合体に用いられる高分子ジオールとしては、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール等を挙げることができる。該高分子ジオールは、好ましくはポリエーテルジオールであり、より好ましくは1種又は2種以上の炭素数2〜10の直鎖状又は分岐状のアルキレン基がエーテル結合しているポリアルキレンエーテルジオールである。
実施例で使用した各種測定法を以下に述べる。
[ポリウレタン重合体溶液の製造]
数平均分子量1800のポリテトラメチレンエーテルジオール(PTMG)400gと、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)91.7gとを乾燥窒素雰囲気下、80℃で3時間、攪拌下で反応させて、末端がイソシアネートでキャップされたポリウレタンプレポリマーを得た。これを室温に冷却した後、ジメチルアセトアミド720gを加えて溶解し、ポリウレタンプレポリマー溶液を調製した。一方、エチレンジアミン8.11g及びジエチルアミン1.37gをジメチルアセトアミド390gに溶解し、これを前記プレポリマー溶液に室温高速攪拌下で添加して、粘度4200ポイズ(30℃)のポリウレタン溶液(PUと略す)を得た。
以下の表1に、原料である各モノマー及び重合仕込みモル数を示す。重量平均分子量は、GPCを用いて測定した。
容器に、表1に示すポリカルボン酸系共重合物15g、表2に示す脂肪酸金属塩1500g、ジメチルアセトアミド(DMAcと略す)6000gを加えて、冷却しながら、アシザワ・ファインテック株式会社製湿式ビーズミル(スターミル LMZ2)にて、ジルコニア製0.3mmのビーズを用いて、ローター2000rpm、毎分2リッターで循環させて、1時間処理し、ポリウレタン弾性繊維用の脂肪酸金属塩分散調製液(以下、PUDと略す)を作製した。
以下の表3に、紡糸原液用MB1〜6、及び比較として比較MB−1、比較MB−2で得られたポリウレタン弾性繊維の各種評価結果を、それぞれ、実施例1のA〜F、及び比較例1〜2で示す。
このとき用いた繊維処理剤は、ポリアルキルシロキサン99重量部、ステアリン酸マグネシウム1重量部からなる繊維処理剤であり、これを未付着のポリウレタン弾性繊維100重量部に対して2.5重量部付与した。
以下の表4のFT−1〜FT−5、及び比較FT−1〜比較FT−3に、ポリアルキルシロキサン、鉱物油、脂肪酸金属塩、ポリカルボン酸系共重合物の各配合組成を示す。比較FT−1と2では、ポリカルボン酸系共重合物の代わりに、無水コハク酸、アクリル酸重合物を用い、比較FT−3では、ポリカルボン酸系共重合物成分を無添加とした。
ポリウレタン弾性繊維の各種評価結果を、以下の表5に示す。
実施例3M〜Nに、紡糸原液中と繊維処理剤の両者に脂肪酸金属塩とポリカルボン酸系共重合物を用いて得られたポリウレタン弾性繊維の評価結果を示す。
得られた弾性繊維用紡糸原液(PUMB)を脱泡した後、紡口フィルターとして400メッシュの金網フィルターを用いて、16個の紡糸ノズル(各々の口金は4個の細孔を有す)の細孔から熱風中250℃に押しだして溶剤を蒸発させた。乾燥された糸条をリング仮撚り機に通過する過程で仮撚りし、ゴッデトローラを経てオイリングローラ上でポリアルキルシロキサン、鉱物油を主成分とする表4の油剤成分(ジメチルシロキサンは25℃で10センチストークス品、鉱物油は25℃で50センチストークス品)を表3に記載に従って付着させて、毎分800m/分の速度で、44デシテックス/4フィラメントのポリウレタン弾性繊維500gを紙管に巻き取った。
(1)紡糸安定性
紡糸時の24時間の紡糸中に起こった糸切れ回数で評価した。結果を表3と5に示す。
ポリウレタン弾性繊維を25℃、65%RH及び45℃、65%RHの各雰囲気にて各30日間放置後、紙管を梨地ローラー上に置き、ローラーを回転させながら、ローラー表面速度40m/分で、弾性繊維を送り出す。送り出された弾性繊維を50cm離れた所に設置された同じ径の梨地ローラ上に巻き取る。巻き取るローラー上の表面速度を80m/分から徐々に低下させて、送り出すローラー上の紙管に弾性繊維が紙管にからみついて逆巻きし、弾性繊維が切断されて送り出されなくなった時点の速度Sm/分を測定する。Sm/分の値が小さいほど紙管から弾性糸の糸離れが良いことを示し、これを解じょ性が良好と判断する。
しかし、逆にあまりに糸離れが良すぎると、紙管に巻かれたポリウレタン弾性繊維を運搬する時に、紙管に巻かれた弾性繊維の外層が糸落ちし易く、取り扱い上の問題となるので、適正な範囲が存在する。本測定において、好ましいチーズ外層の弾性繊維のS(以下、SOと表す)は、SO=45〜55m/分、チーズ内層の弾性繊維のS(以下、SIと表す)は、SI=50〜65m/分である。SI、SOのいずれかの値がこの範囲をはずれ、値が小さいと運搬時や整経工程で、糸落ちし易く、逆に値が大きいとチーズへの逆巻きや糸切れが頻発する場合があり、問題となる。結果を表3と5に示す。
44デシテックス/4フィラメントの弾性繊維を、45℃、65%RHの雰囲気で30日間放置後、紙管を梨地ローラー上に置き、ローラーを回転させながら、ローラー表面速度40m/分で、弾性繊維を送り出す。送り出された弾性繊維を50cm離れた所に設置された同じ径の梨地ローラー上に巻き取る。送り出す弾性糸から25cmの中間地点にかみそり刃を糸角115度になるように設定して立てておき、巻き取るローラー上の表面速度を70m/分設定した。かみそり刃上に弾性繊維を1時間走行させた後、かみそり刃(エヌティー(株)製:NT−L型刃品番L−300)上に付着した脂肪酸金属塩の白色スカムの量を目視によって1級から5級の判断をした。結果を表3と5に示す。
5級:かみそり刃に全く付着無し。
4級:かみそり刃にほんのわずか付着あり。
3級:かみそり刃に若干付着あり。
2級:かみそり刃にやや付着量多し。
1級:かみそり刃に多量の付着物あり。
25℃、65%RHの雰囲気で30日間放置後、試験糸を、図1の装置にかけ、送り速度100m/分、巻き取り速度200m/分の延伸倍率2倍で走行させ、編み針通過前後の試験糸の糸条の走行応力とその応力変動を測定した。摩擦係数μdは下記式(5)で与えられる。
μd=Ln(T1/T2)/2.6376・・・式(5)
式中、T1、T2は、それぞれ、編み針通過後の走行応力の中心値(g)、編み針通過前の走行応力の中心値(g)であり、摩擦係数μdは、値が小さい程、摩擦が小さく良好である。結果を表3と5に示す。
44デシテックス/4フィラメントの弾性繊維を、588本をリバー社製の弾性糸用整経機に取り付け、弾性繊維送り出し速度150m/分、ビーム巻き取り速度300m/分にて整経し、1ビームあたり弾性繊維重量で14.7kgを16ビーム整経し、全て完了するまでに発生した弾性繊維の糸切れ回数で評価した。但し、糸切れが発生した場合も切れた糸は結んでつなぎ、588本の状態で再びスタートさせた。また、ほぼ同時に複数本糸切れした場合も糸切れ回数は1回としてカウントした。結果を表3と5に示す。
整経したポリウレタン弾性繊維をバックの試験糸とし、ナイロン66加工糸44デシテックス/34フィラメントをフロントとしドラフト率80%で整経し、下記条件のハーフ生地編成条件で編成した。
<編成条件>
編機:36ゲージ/インチ カールマイヤー社製 トリコット編機
組織:フロント 10/23 バック 12/10
ランナー長:フロント120cm/480コース
バック77.6cm/480コース
機上コース:100コース/インチ
この編成工程で15kg/1反の条件で20反編んだときのポリウレタン弾性繊維の編成糸切れ回数を評価した。結果を表3と5に示す。
得られた経編生機を、90℃で1分間精錬し、プレセットとしてテンター仕上げ機を用いて熱処理条件として温度190℃、時間60秒で処理した。次いで、液流染色機を用いて100℃×60分の条件で染色した。ファイナルセットとして、テンター仕上げ機を用いて、熱処理条件180℃×45秒で処理して、経編地の染上げ反を得た。試験糸とナイロンを交編させて得られた経編地の生地品位を、以下の評価基準に従って5人の目視で総合評価した。結果を表3と5に示す。
○:経筋が目立たず美しい
×:経筋が多く、美しくない
2 送り出しローラー
3 テンションメーター
4 編み針
5 巻き取り部
6 巻き取りローラー
7 試験糸走行糸条
8 編み針にかかる糸条がなす角度=29°
Claims (6)
- ポリウレタン重合体100重量部、該ポリウレタン重合体100重量部に対して、炭素原子数10〜30の脂肪酸金属塩0.01〜3重量部、及びポリカルボン酸系共重合化合物0.00001〜5重量部を含むポリウレタン弾性繊維。
- 前記炭素原子数10〜30の脂肪酸金属塩の脂肪酸は、ステアリン酸及びパルチミン酸からなる群から選ばれ、かつ、金属は、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、及び亜鉛からなる群から選ばれる、請求項1に記載のポリウレタン弾性繊維。
- 前記ポリカルボン酸系共重合化合物は、ポリオキシアルキレン誘導体と不飽和カルボン酸化合物との共重合化合物であり、かつその主鎖にポリカルボン酸基を、そしてそのグラフト鎖にポリオキシアルキレン基を有する、請求項1又は2に記載のポリウレタン弾性繊維。
- 前記ポリカルボン酸系共重合化合物は、以下の式(1):
- 以下の工程:
ポリウレタン重合体100重量部、該ポリウレタン重合体100重量部に対して、炭素原子数10〜30の脂肪酸金属塩0.01〜3重量部、及びポリカルボン酸系共重合化合物0.00001〜5重量部を、アミド系溶剤に溶解・混合して、紡糸原液を作製し、そして
該紡糸原液を乾式紡糸法で紡糸し、得られた糸を巻き取って、ポリウレタン弾性繊維を製造する、
を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。 - 前記紡糸後に得られた糸を巻き取る際に、25℃における動粘度が5〜50センチストークスであるポリアルキルシロキサンと25℃における動粘度が30〜70センチストークスである鉱物油との比が100:0〜50:50であるオイル成分と、該オイル成分100重量部に対して炭素原子数10〜30の脂肪酸金属塩0.1〜10重量部、ポリカルボン酸系共重合物0.001〜0.1重量部を含む繊維処理剤とを、該糸に付着する、請求項5に記載のポリウレタン弾性繊維の製造方法。
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