JP2012207327A - 難燃性モノフィラメント及びその製造方法 - Google Patents

難燃性モノフィラメント及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】十分な耐熱性、難燃性を有し、さらに燃焼時に発生する有毒ガスが少なく、且つ高温での乾熱収縮率の小さいモノフィラメントを効率よく提供する。
【解決手段】非晶性ポリエーテルイミド系ポリマーからなる繊維であって、180℃雰囲気下での乾熱収縮率が2%以下、且つ200℃雰囲気下での乾熱収縮率が5%以下であり、延伸をしていない、繊度が100〜10000dtexであることを特徴とする難燃性モノフィラメント。
【選択図】なし

Description

本発明は、優れた耐熱性、難燃性、寸法安定性を有する非晶性ポリエーテルイミド系ポリマーからなるモノフィラメントに関するものであり、産業資材分野、電気電子分野、農業資材分野、光化学材料分野、航空機・自動車・船舶・鉄道分野等において、特に難燃性が要求される用途に対して極めて有効に使用することが可能である。
汎用熱可塑性樹脂からなるモノフィラメントは、該繊維が持つ力学物性、加工性、風合い、価格等の通常のマルチフィラメントにはない特徴を数多く有することから、産業資材、水産・農業資材、土木資材、生活資材等の広い分野で用いられる。又、近年ではモノフィラメントの用途は更に広がりを見せ、それに伴いそれぞれの分野に合わせた特性が求められるようになった。特に、航空機・自動車・船舶等の車両分野や電気電子分野におけるフィルター、ケーブル保護スリーブ等は、高温環境下或いは高電圧下で使用されることが多く、それに伴いこれら用途の素材であるモノフィラメントは耐熱性、難燃性、耐ガソリン性、耐薬品性が強く求められる。
モノフィラメントに限らず、難燃性を特徴とする繊維に関しては、これまでに数多くの提案がなされている。例えば、汎用熱可塑性樹脂からなる繊維を難燃化する手法として、ハロゲン系難燃剤やアンチモン系難燃剤を添加する方法が提案されている。これら難燃剤添加による難燃化手法は、燃焼時にハロゲン化ガス等の有毒ガスが発生するために安全性に問題がある。同様に、難燃剤を添加する方法としては、リン系難燃剤が用いられる例も数多く提案されている。該難燃剤は、ハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤と比較してやや難燃性能が劣る他、有毒ガスの発生を完全には抑制することはできないため、上記安全上の問題を解決するものではない。
又、耐熱性、難燃性を特徴とするポリマーを繊維化することで、耐熱性、難燃性に優れた繊維を得る方法もいくつか提案されている。これらの例としては、例えばポリフェニレンサルファイド(以下、PPSと称す)が知られており、特にモノフィラメントとしては特許文献1及び2にて提案されている。しかしながら、該繊維はこれら繊維を構成するPPSポリマー自体が持つ化学構造や重合する際に使用される有機溶剤のために、燃焼時に幾分有害物質を発し、異臭がすることが知られており、上記難燃剤添加において問題となっている有毒ガス発生を抑制するとの観点からは、何ら解決が得られていない。
更に同様の耐熱性、難燃性を特徴とするポリマーからなる繊維の例としては、ポリエーテルエーテルケトンからなるモノフィラメントが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。該ポリマーは280℃以上と非常に高い融点を持つことから高い耐熱性を有し、更には高い難燃性を有し、燃焼時の発煙も比較的少ないことが知られている。しかし、該ポリマーは非常に高価であるため、その繊維の使用分野は非常に限られた範囲内に限定されてしまう。
一方で、耐熱性、難燃性を特徴とする繊維としては、非晶性ポリエーテリイミド系ポリマーからなる繊維、特にモノフィラメントに関するものが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。該繊維はガラス転移温度が215℃と高いため耐熱性が高く、更には高い難燃性、燃焼時の有毒ガスの発生も極めて少ないため、モノフィラメントに限らず、マルチフィラメントにおいても耐熱性、難燃性が要求される分野において広く用いられている。
特許文献4では、ポリエーテルイミド系ポリマーからなるモノフィラメントを溶融紡糸した後、基本的に1〜3倍程度延伸を施すことを示唆されている。このように延伸されたポリエーテルイミド繊維は、ガラス転移温度よりも低い温度領域、例えば煮沸温度(100℃)における収縮率が7%程度以上となり、ガラス転移温度が215℃である非晶性ポリエーテルイミドが持つ本来の耐熱性を十分に発揮できているとは言えない。
一般的に、紡糸した繊維を延伸することにより、高強度化及び低伸度化させる方法が広く知られているが、非晶性PEIポリマーの場合、延伸或いはその後の熱処理による配向結晶化が起こらないため、延伸すると分子は不安定に伸びきった状態となり、分子運動性の低い室温ではその構造が保たれるために強度の向上は見られても、100℃を超えるような高温域では徐々に分子運動の増大に起因するエントロピー収縮が起こり、ガラス転移温度付近である200℃では更に大きな収縮を伴うこととなり、実使用において耐熱性に優れるとは言いえない。
このような問題を解決すべく、紡糸後延伸せずに好適に用いることのできる非晶性ポリエーテルイミド繊維及びその製造方法に関する提案が特許文献5に記載されている。特許文献5によると、繊維を構成するポリマーとして特定の分子量を有する非晶性ポリエーテルイミド系ポリマーを選択し、且つ紡糸後延伸しないことを特徴としており、紡糸後の製織、製編、染色、捲縮加工等の加工条件において十分な力学物性を有し、且つ200℃における乾熱収縮率の非常に低い、耐熱性、難燃性、低発煙性に優れたポリエーテルイミド系繊維が提案されている。
特許文献5で提案されている非晶性ポリエーテルイミド系繊維は、専らマルチフィラメントに関するものであり、その中でも特に単糸繊度3dtex以下の細繊度領域の繊維に関するものである。従って、特許文献5では単糸繊度が太いモノフィラメントに関する記述は一切されておらず、延伸しないことを特徴とする、且つ高温での乾熱収縮率の小さい非晶性ポリエーテルイミド系ポリマーからなるモノフィラメントに関する提案はこれまでなされていないと言える。
特開2009−068149号公報 特開2010−126838号公報 特開2001−279522号公報 特開昭63−303115号公報 国際公開第2010/109962号パンフレット
上述したように、益々広がりをみせるモノフィラメントの用途において、耐熱性や難燃性は同繊維素材に強く求められる性能の1つとなっている。従来技術においては、モノフィラメントへ難燃性能を付与する手法としては、難燃剤等の添加が提案されている。これら難燃剤等の添加は、燃焼した際に同剤が有害ガスを発することから、その安全性に問題があった。
モノフィラメントを構成する素材を難燃化する手法として、繊維を構成する素材としてPPSやPEEK等を選択することが提案されているが、前記難燃剤を用いる例と同様に燃焼の際に発生するガスの問題や素材自体の価格が非常に高価であるとの理由から使用できる用途が限られるとの問題点を有している。又、耐熱性、難燃性を有する、且つ燃焼時の発煙が少ない素材として非晶性ポリエーテルイミドを用いた例も提案されているが、ここで提案されている繊維は紡糸後延伸することが示唆されており、同繊維は100℃程度の温度域においても収縮率が大きいため十分な耐熱性を有しているとは言えず、実使用上において問題が生じていた。
本発明の目的は、高い耐熱性、難燃性を有するモノフィラメントにおいて、十分な耐熱性、難燃性を有し、さらに燃焼時に発生する有毒ガスが少なく、且つ高温での乾熱収縮率の小さいモノフィラメントを効率よく提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、非晶性ポリエーテルイミド系ポリマーが難燃性モノフィラメントを構成する難燃素材として有効、且つ入手のし易さの観点からも効率的であることを見出した。更に、非晶性であるポリエーテルイミド繊維を紡糸後延伸した場合、繊維内分子鎖が配向結晶することなく不安定に引き伸ばすこととなり、結果として100℃を超えるような温度域では収縮が開始し、実使用に耐えないことを見出した。
更に、上記乾熱収縮が大きくなるとの理由から延伸を用いることができないため、紡糸原糸においてその後の種々の加工条件や消費性能が求める物性に十分耐えうるだけの力学物性を持たせる必要があり、その方法としては紡糸原糸の製造方法、特に紡出から巻取りまでにポリマーが引き伸ばされる倍率、紡糸速度等を制御する必要があることを見出した。
すなわち、本発明は、非晶性ポリエーテルイミド系ポリマーからなり、繊度が100〜10000dtexであることを特徴とするモノフィラメントであって、延伸を施していないことを特徴としており、且つ180℃における乾熱収縮率が2%以下、200℃における乾熱収縮率が5%以下である難燃性モノフィラメントに関するものである。
本発明によれば、難燃性と耐熱性に優れ、且つ燃焼時の発煙が少なく、更にPEEK繊維等と比較して汎用品として用いることができるモノフィラメントを提供することが可能である。また、本発明のモノフィラメントは、上記した特徴を兼ね備えることから、特に耐熱性、難燃性、耐ガソリン性、耐薬品性が強く求められる自動車・航空機分野や電気・電子分野において極めて有効に用いることが可能である。
以下、本発明について詳細に説明する。まず、本発明の難燃性モノフィラメントを構成するポリエーテルイミド(以下、PEIと称す)系ポリマーについて説明する。本発明で用いるPEI系ポリマーとは、脂肪族、脂環族または芳香族系のエーテル単位と環状イミドを繰り返し単位として含有するポリマーであり、非晶性、溶融成形性を有すものであれば特に限定されない。また、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、PEI系ポリマーの主鎖に環状イミド、エーテル結合以外の構造単位、例えば脂肪族、脂環族または芳香族エステル単位、オキシカルボニル単位などが含有されていてもよい。
具体的なPEI系ポリマーとしては、下記一般式で示されるポリマーが好適に使用される。但し、式中R1は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、R2は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。
Figure 2012207327
上記R1、R2としては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を有するものが好ましく使用される。
Figure 2012207327
本発明では、非晶性、溶融成形性、コストの観点から、下記式で示される構造単位を主として有する、2,2一ビス[4一(2,3一ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパンニ無水物とm一フェニレンジアミンとの縮合物が好ましく使用される。このようなポリエーテルイミドは、「ウルテム」の商標でサービックイノベイティブプラスチックス社から市販されている。
Figure 2012207327
本発明に用いる非晶性PEI系ポリマーは、本発明の効果を損なわない範囲で、熱安定剤、酸化防止剤ラジカル抑制剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、無機物、他ポリマーを含んでいてもよい。
溶融紡糸性を向上する観点から、例えば、熱安定剤を含むのが好ましく、熱安定剤としては、ヒンダードフェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ヒドロキシルアミン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤などが挙げられ、これらのうち、リン系熱安定剤が好まし<、特にトリス(2、4一ジーtert一ブチルフェニル)フォスファイトなどのアリールフォスファイト系化合物が好ましい。
また、かかる無機物の具体例としては、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンブラック、黒鉛などの炭化物1タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、シリカ、ベントナイト、アルミナシリケートなどの珪酸塩1酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物1炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩1硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩1水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物1ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などが用いられる。これらの無機物のうち、工程通過性を向上させる観点から、金属酸化物などが好ましく、特に酸化チタンが好ましく用いられる。
また、かかるポリマーの具体例としては、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルスルホン、ポリアリルサルフォン、ポリケトン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミドイミド、四フッ化ポリエチレン、ポリカーボネート等が用いられる。
本発明で用いる非晶性PEI系ポリマーの分子量は特に限定されるものではないが、得られる繊維の機械的特性や寸法安定性、工程通過性を考慮すると、3900C、せん断速度1200sec−1での溶融粘度が5000poise以下を満たすものが望まし<、その観点からは、重量平均分子量(Mw)が1000〜80000程度のものが望ましい。高分子量のものを用いると、繊維強度、耐熱性等の点で優れるので好ましいが、樹脂製造コストや繊維化コストなどの観点からMwが10000〜50000であることが、より好ましい。
本発明の非晶性PEI系モノフィラメントは、200℃等の高温条件下で耐熱性を保持することが必要である。このような耐熱性は、200℃における乾熱収縮率により判断することが可能であり、本発明の非晶性ポリエーテルイミド系モノフィラメントは、200℃における乾熱収縮率が5.0%以下であり、具体的には、乾熱収縮率が−1.0〜5.0%であることが好ましい。
かかる乾熱収縮率が5.0%を超えると加工時や使用時の製品の寸法変化が大きくなり、耐熱性を有しているとはいえない。また、−1.0%未満であっても、同様な理由で好ましくない。より好ましくは乾熱収縮率が−1.0〜4.5%、更に好ましくは0〜4.0%である。尚、ここでいう乾熱収縮率とは後述する方法により測定した値をいう。また、耐熱性は100〜200℃までの全ての温度域において示すのが好ましく、この場合、乾熱収縮率は、100〜200℃までのそれぞれの温度について、上述した値を示してもよい。
また、本発明の非晶性ポリエーテルイミド系モノフィラメントは、ポリマーに由来して難燃性にも優れており、例えば、限界酸素指数値(LOI値)が25以上であってもよく、好ましくは28以上、より好ましくは30以上であってもよい。また、限界酸素指数値は、高いほど好ましいが、40以下である場合が多い。なお、ここでいう限界酸素指数値とは、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
更に本発明の非晶性ポリエーテルイミド系モノフィラメントは、繊度が100〜10000dtexであることが必要である。繊度が100dtexよりも小さくなると、モノフィラメントとしての強度、風合いが得られず、実使用において用途が限定されてしまう。また、繊度が10000dtexを超えると、製造することが難しくなる他、繊維として必要な強度を得ることが難しくなる等の問題が生じる。
本発明の非晶性ポリエーテルイミド系モノフィラメントの製造においては、公知の溶融紡糸装置を用いることができる。すなわち、溶融押出し機で非晶性ポリエーテルイミド系ポリマーのペレットを溶融混練し、溶融ポリマーを紡糸頭に導きギヤポンプで計量し、紡糸ノズルから吐出させた糸条を巻き取ることで本発明のポリエーテルイミド系モノフィラメントが得られる。先述したように、非晶性ポリマーに延伸を施すと、高温時の収縮が大きくなることから、本発明のポリエーテルイミド系モノフィラメントは、紡糸ノズルから吐出された糸条は延伸せずにそのまま巻き取ることが好ましい。
溶融混練した非晶性ポリエーテルイミド系ポリマーの溶融粘度は、例えば、390℃、せん断速度1200sec−1での溶融粘度が1000〜5000poiseであってもよく、より好ましくは1500〜4000poiseであってもよい。
その際の引取り速度は特に限定されるものではないが、引取り速度は得られる繊維の分子配向に大きく影響を与えることが一般的に知られている。その観点から、本発明のモノフィラメントを製造する際の引取り速度としては、100〜4000m/分の範囲で引き取ることが好ましい。4000m/分を超えるような高速では、高温時の収縮を引き起こすような分子配向が進むばかりでなく、繊維の断糸が起こりやすくなるので好ましくない。一方で、100m/分未満では生産性の点からは好ましくない他、モノフィラメントとして用いるために十分な強度が得られないため好ましくない。
また、本発明の非晶性ポリエーテルイミド系モノフィラメントを製造する際の紡糸ドラフトは20〜500倍であることが望ましい。紡糸ドラフトが20倍を下回る場合には、繊維の分子配向が十分に進まずに、モノフィラメントとしての強度が十分得られない他、該モノフィラメントの繊度均整度が損なわれる等の問題点が生じる。一方で、紡糸ドラフトが500倍を超える場合には、実質的には延伸した場合と同等程度の分子配向が進むこととなり、製糸安定性が損なわれる他、高温時の収縮を引き起こすため好ましくない。好ましくは、30〜400倍、より好ましくは50〜200倍である。ここでいう紡糸ドラフトとは、紡糸ノズル孔出口のポリマー線速度と巻取り速度との比を表す。
特筆すべき点は、本発明の非晶性PEI繊維の製造においては、繊維の細繊度と高温での収縮抑制とを両立させるために、特許文献4で記載されたポリエーテルイミド系モノフィラメントの紡糸法とは異なる方法が採用されることである。すなわち、従来のポリエーテルイミド系モノフィラメントの紡糸法においては、溶融紡糸したポリエーテルイミド系繊維に対して、2倍程度の延伸倍率で延伸することによって、繊維の細繊度と室温における繊維強度を付与していた。しかしながら、このような高い延伸処理を施すと、高温下では、分子運動の増大に起因するエントロピー収縮が起こり、ガラス転移温度付近である200℃では大きな収縮を伴うことになり、実使用に耐えうる耐熱性を達成することは不可能である。
その一方で、本発明におけるポリエーテルイミド系モノフィラメントは、紡糸ノズルから吐出された糸条に対して、延伸せずにそのまま、または延伸倍率を限りなく低く(例えば、延伸倍率1.0〜1.1程度)設定して延伸することにより、高い耐熱性を有するポリエーテルイミドモノフィラメントが製造できる。
本発明のポリエーテルイミド系モノフィラメントは、例えば編物、織物或いは組紐等として用いることができる。これらの製織・製編方法としては、公知或いは慣用の方法を用いて製造することができ、特に何ら限定されるものではない。また、その際には、本発明のポリエーテルイミド系モノフィラメントの効果を損なわない範囲内において、公知の他の繊維と組み合わせてもよい。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例において、繊維強度、乾熱収縮率、限界酸素指数は下記の方法により測定した値を示す。
[繊維強度 cN/dtex]
JIS L1O13試験法に準拠して、予め調湿されたヤーンを、室温(250C)において試長20cm、初荷重O.25cN/dtex及び弓1張速度50%/分の条件で測定し、n=20の平均値を採用した。また繊維繊度(dtex)は質量法により求めた。
[乾熱収縮率 %]
10cmに切り出した繊維、あるいは10cm角に切り出した該繊維からなる布帛を、末端を固定しない状態で200℃に保たれた空気恒温槽中で10分間保持した後の繊維長あるいは布帛長(Xcm)から、次式を用いて算出した。
乾熱収縮率(%)=<X/10>×100
[限界酸素指数値(LOI値)]
JISK7201試験法に準拠して、繊維を三つ編みにした試長18cmの試料を作り、試料の上端に着火したとき、試料の燃焼時間が3分以上継続して燃焼するか、又は着火後の燃焼長さが5cm以上燃えつづけるのに必要な最低の酸素濃度を測定し、n=3の平均値を採用した。
[繊維化工程性評価]
1000kgの樹脂を紡糸・繊維化する工程において、何回断糸するかによって、次のように評価した。
○:3回以内/1000kg
△:4回〜7回/1000kg
×:8回以上/1000kg
[実施例1]
(1)390℃、剪断速度1200sec−1における溶融粘度が2500poiseである非晶性ポリエーテルイミド系ポリマー(サービックイノベイティブプラスチックス社製「ウルテム9011」)を140℃で6時間乾燥させた。
(2)上記(1)のポリマーを混練溶融し、紡糸頭温度390℃、紡糸速度1500m/分、吐出量45g/分の条件で丸孔ノズルより吐出し、300dtexのモノフィラメントを得た。得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
(3)得られた繊維の外観は毛羽等なく良好で、強度は1.8cN/dtex、200℃における乾熱収縮率は1.3%、LOI値は34であり、力学物性、耐熱性共に優れるものであった。また、1000kgの紡糸試験において、圧力変動等もなく断糸回数は1回であり、紡糸安定性は良好であった。
[実施例2]
(1)実施例1において、吐出量を90g/分とし、紡糸速度を3000m/分としたこと以外は、実施例1と同じ方法で紡糸してモノフィラメントを得た。得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
(2)得られた繊維の概観は毛羽なく良好で、強度は2.3cN/dtex、200℃における乾熱収縮率は2.8%、LOI値は34であり、強度はやや向上する一方で、収縮率が若干増大した。また、1000kgの紡糸試験において、圧力変動等もなく断糸回数は7回であり、紡糸安定性はやや不良であった。
[実施例3]
(1)実施例1において、使用したノズル孔径を2倍とし、かかるドラフトを2倍としたこと以外は、実施例1と同じ方法で紡糸してモノフィラメントを得た。得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
(2)得られた繊維の概観は毛羽なく良好で、強度は2.1cN/dtex、200℃における乾熱収縮率は1.9%、LOI値は34であり、強度はやや向上する一方で、収縮率が若干増大した。また、1000kgの紡糸試験において、圧力変動等もなく断糸回数は2回であり、紡糸安定性は良好であった。
[実施例4]
(1)実施例1において、吐出量を3倍の125g/分とし、得られる繊維の繊度を3倍の900dtexとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で紡糸してモノフィラメントを得た。得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
(2)得られた繊維の概観は毛羽なく良好で、強度は1.6cN/dtex、200℃における乾熱収縮率は1.1%、LOI値は34であり、強度はやや低下し、収縮率が減少した。また、1000kgの紡糸試験において、圧力変動等もなく断糸回数は0回であり、紡糸安定性は良好であった。
[実施例5]
(1)実施例1において、吐出量を1/3倍の15g/分とし、得られる繊維の繊度を1/3倍の100dtexとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で紡糸してモノフィラメントを得た。得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
(2)得られた繊維の概観は毛羽なく良好で、強度は2.2cN/dtex、200℃における乾熱収縮率は2.0%、LOI値は33であった。また、1000kgの紡糸試験において、圧力変動等もなく断糸回数は1回であり、紡糸安定性は良好であった。
[比較例1]
(1)PPS樹脂(ポリプラスチック社製「フォートロン」)を120℃で6時間熱風乾燥させた。
(2)上記(1)のポリマーを混練溶融し、紡糸頭温度310℃、紡糸速度500m/分、吐出量45g/分の条件で丸孔ノズルより吐出し、900dtexのモノフィラメントを得た。さらに120℃の熱風炉を通して上記紡糸原糸を3倍に延伸し、300dtexとした後、得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
(3)得られた繊維の強度は4.7cN/dtex、200℃における乾熱収縮率は7.1%、LOI値は32であった。また、1000kgの紡糸試験において、圧力変動等もなく断糸回数は1回であり、紡糸安定性は良好であったが、刺激臭が発生した。
[比較例2]
(1)280℃、剪断速度1200sec−1での溶融粘度が1200poiseであるPET樹脂(クラレ社製「HV」)を150℃で6時間熱風乾燥させた。
(2)上記(1)のポリマーを混練溶融し、紡糸頭温度350℃、紡糸速度500m/分、吐出量45g/分の条件で丸孔ノズルより吐出し、900dtexのモノフィラメントを得た。さらに150℃の熱風炉を通して上記紡糸原糸を3倍に延伸し、300dtexとした後、得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
(3)得られた繊維の外観は毛羽等なく良好で、強度は4.4cN/dtex、200℃における乾熱収縮率は11.5%、LOI値は23であり、力学物性に優れるものの、耐熱性、難燃性が大きく劣っていた。
[比較例3]
(1)実施例1において、吐出量を3倍の125g/分とし、得られる繊維の繊度を3倍の900dtexとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で紡糸してモノフィラメントを得た。さらに、200℃の温度にて上記紡糸原糸を3倍に延伸し、300dtexとした後、得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
(2)得られた繊維の概観は毛羽なく良好で、強度は2.4cN/dtex、200℃における乾熱収縮率は15%、LOI値は34であった。また、1000kgの紡糸試験において、圧力変動等もなく断糸回数は1回であり、紡糸安定性は良好であった。強度はやや向上するものの、延伸することによる熱安定性が失われ、ガラス転移点以下の温度である200℃においても大きく収縮する結果となった。
[比較例4]
(1)実施例1において、吐出量を1/6倍の7.5g/分とし、得られる繊維の繊度を1/6倍の50dtexとしたこと以外は、実施例1と同じ方法で紡糸してモノフィラメントを得た。得られた繊維の性能評価結果を表1に示す。
(2)得られた繊維の概観は毛羽なく良好で、強度は2.5cN/dtex、200℃における乾熱収縮率は2.8%、LOI値は33であった。また、1000kgの紡糸試験において、圧力変動等もなく断糸回数は1回であり、紡糸安定性は良好であった。強度はやや向上するものの、繊度が細いため繊維の剛性が得られず、モノフィラメントとしての特徴が損なわれる他、吐出量が少なくなるため生産量が低下する等の問題が生じた。
Figure 2012207327
本発明のポリエーテルイミド系モノフィラメントは、難燃性と耐熱性に優れ、且つ燃焼時の発煙が少なく、更に比較的汎用品として用いることができる。上記した特徴を兼ね備えることから、特に耐熱性、難燃性、耐ガソリン性、耐薬品性が強く求められる自動車・航空機分野や電気・電子分野において極めて有効に用いることが可能である。

Claims (3)

  1. 非晶性ポリエーテルイミド系ポリマーからなる繊維であって、繊度が100〜10000dtexであることを特徴とする難燃性モノフィラメント。
  2. 180℃雰囲気下での乾熱収縮率が2%以下、且つ200℃雰囲気下での乾熱収縮率が5%以下である請求項1記載の難燃性モノフィラメント。
  3. 前記モノフィラメント製造工程において、延伸していないことを特徴とする請求項1または請求項2記載の難燃性モノフィラメント。
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