JP2012207295A - 表面処理二相ステンレス鋼及びその製造方法 - Google Patents

表面処理二相ステンレス鋼及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】塩化物イオンを含む、弱酸性から弱アルカリ性(pH5.0〜9.0)の水溶液環境において、二相ステンレス鋼の耐食性を高め、腐食損傷を未然に防止又は回避若しくは遅延することが可能な、表面処理二相ステンレス鋼及びその製造方法を提供する。
【解決手段】二相ステンレス鋼の表面に、オーステナイト相1を凸部4とする凹凸を有し、該オーステナイト相間の凹部3深さが10μm以上であり、且つ凹部3に亜鉛末を含む塗膜8が存在することを特徴とする表面処理二相ステンレス鋼である。更に、前記オーステナイト相の表面が亜鉛末を含む塗膜8で被覆されている。二相ステンレス鋼を、塩化物イオン濃度が1〜5%、硫酸濃度が20〜40%であり、温度が40〜60℃である溶液に、30〜60分間浸漬し、フェライト相を優先溶解させた後、水洗及び乾燥して、亜鉛末を含む塗料を塗布又は散布することにより、製造することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば、海水、塩水など、塩化物イオンを含む、弱酸性から弱アルカリ性の水溶液環境で使用される、耐食性に優れた表面処理二相ステンレス鋼及びその製造方法に関する。
塩化物イオンを含む、弱酸性から弱アルカリ性(pH5.0〜9.0)の水溶液環境、例えば、海水、塩水、河川水などの自然水に接するゲート、堰、配管類や、醤油、味噌などの食品製造設備に使用される機器には耐食性が要求される。従来から、腐食環境の塩濃度や温度、pHなどの条件に合わせて、炭素鋼、低合金鋼、ステンレス鋼、Ni基合金およびTiなどが使い分けられている。
通常、機器類は、例えば、配管の締結部のすきま部や溶接欠陥あるいは付着物など、少なからず潜在的なすきま構造を有しており、機器類にステンレス鋼を使用した場合は、すきま構造が塩化物によって腐食損傷を受けることが懸念される。そのため、塩化物イオンを含む、弱酸性から弱アルカリ性、特に、pH5.0〜9.0の水溶液環境で使用される機器類には、一般的に、NiやMoを多量に含んだオーステナイト系ステンレス鋼、高Cr含有、更には高Mo含有のフェライト系ステンレス鋼が適用されている。
しかし、近年、Ni資源、Mo資源の枯渇化、鋼材価格の高騰を背景に、省資源化への要求が高まっている。そのため、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて、Niの含有量が少なく、金属組織がフェライト相とオーステナイト相とからなる二相ステンレス鋼の適用が検討されつつある。しかし、機器類が使用される環境によっては、耐食性が不十分な場合もある。
通常、厳しい腐食環境では、ステンレス鋼は裸材で使用されるか、電気防食が施されている。しかし、ステンレス鋼の表面にジンクリッチプライマーなどを塗布し、犠牲防食を施すことは少なく、これまでに、通常よりも亜鉛量を減少させて、剥離を防止する方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2005−54074号公報
本発明は、塩化物イオンを含む、弱酸性から弱アルカリ性(pH5.0〜9.0)の水溶液環境において、二相ステンレス鋼の耐食性を高め、腐食損傷を未然に防止又は回避若しくは遅延することが可能な、表面処理二相ステンレス鋼及びその製造方法を提供するものである。
本発明者は、塩化物イオンを含む、弱酸性から弱アルカリ性(pH5.0〜9.0)の水溶液環境として、代表的な人工海水を用いて、亜鉛末を含む塗膜を形成するためにジンクリッチプライマーを塗布した二相ステンレス鋼の腐食試験を行った。その結果、通常の二相ステンレス鋼の表面に、そのまま、ジンクリッチプライマーを塗布した場合に比べて、予め表面に凹部を形成させてジンクリッチプライマーを塗布すると、犠牲防食の効果が持続する期間が長くなることがわかった。
これは、凹部の内部に存在する亜鉛末を含む塗膜が、人工海水に曝された際に剥離し難くなったためであると考えられる。本発明者は、更に検討を進め、二相ステンレス鋼の表面に加工歪みを付与せずに凹部を形成すると耐食性が向上することを見出した。そして、本発明者は、化学的な方法でフェライト相を優先溶解させて、表面から突出するオーステナイト相を残し、その間に凹部を形成させることに成功した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものであって、その要旨は以下の通りである。
(1)二相ステンレス鋼の表面に、オーステナイト相を凸部とする凹凸を有し、該オーステナイト相間の凹部深さが10μm以上であり、且つ凹部に亜鉛末を含む塗膜が存在することを特徴とする表面処理二相ステンレス鋼。
(2)更に、前記オーステナイト相の表面が亜鉛末を含む塗膜で被覆されていることを特徴とする上記(1)に記載の表面処理二相ステンレス鋼。
(3)二相ステンレス鋼を、塩化物イオン濃度が1〜5%、硫酸濃度が20〜40%であり、温度が40〜60℃である溶液に、30〜60分間浸漬し、フェライト相を優先溶解させた後、水洗及び乾燥して、亜鉛末を含む塗料を塗布又は散布することを特徴とする表面処理二相ステンレス鋼の製造方法。
本発明によれば、塩化物イオンを含む、弱酸性から弱アルカリ性(pH5.0〜9.0)の水溶液環境で使用される二相ステンレス鋼の耐食性維持を高め、腐食損傷を未然に防止あるいは回避若しくは遅延することができる。そして、本発明によれば、多量のNi、更にはMoを含むオーステナイト系ステンレス鋼や、多量のCr、更にはMoを含むフェライト系ステンレス鋼に比べて、安価な二相ステンレス鋼の適用が可能になり、機器類の製造コストを削減することができる。また、二相ステンレス鋼を裸材で使用する場合に比べて、腐食損傷の発生を大幅に遅らせることができ、かつ、一定の耐食性を持続し、定期的に補修を施すことで腐食損傷を回避できることから、メンテナンスの費用を従来よりも削減することができる。このように、本発明は、産業上の貢献が極めて顕著である。
本発明の表面処理二相ステンレス鋼の表面の形態を説明する図であり、(a)は表面が亜鉛末を含む塗料で被覆された例であり、(b)は表面にオーステナイト相凸部を露出させた例である。 フェライトが優先溶解された二相ステンレス鋼の表面の形態を説明する図であり、(a)は圧延面を優先溶解させた例、(b)は圧延方向に垂直な面を優先溶解させた例である。 光学深さの測定方法を説明する図である。 試験片の形状を説明する図である。
二相ステンレス鋼の表面に亜鉛末を含む塗料、例えば、ジンクリッチプライマーなどの犠牲防食塗料を塗布する場合、剥離を防ぐために、表面に凹凸を形成することが好ましい。しかし、一般に、ブラスト処理では表層に加工歪が導入され、また、ブラスト材が残留することがあり、耐食性や加工性などの劣化が懸念される。そこで、本発明者は、二相ステンレス鋼の耐食性や加工性などを損なわないように、化学的な処理によって表面に凹凸を形成する方法を検討した。
二相ステンレス鋼の金属組織は、CrやMoなどのフェライト安定化元素が濃化したフェライト相(以下、α相と表記することがある。)と、Niなどのオーステナイト安定化元素が濃化したオーステナイト相(以下、γ相と表記することがある。)とからなる。本発明者は、種々の組成の二相ステンレス鋼から、試験片を作製して、種々の酸溶液に浸漬し、表面の状態を観察した。
その結果、1〜5%の塩化物イオンを含み、硫酸濃度が20〜40%、温度が40〜60℃の硫酸溶液に二相ステンレス鋼を30〜60分間浸漬すると、α相がγ相よりも顕著に優先溶解することがわかった。図2(a)に、圧延面9のα相2を優先溶解させ、γ相1からなる凸部4を形成した二相ステンレス鋼の断面の形態を模式的に示す。図の上側が圧延面9(表面5)である。
図2(a)に示したように、α相2が優先溶解した二相ステンレス鋼の表面では、残存するγ相1が突出して凸部4となり凹凸を形成している。凹部3の深さは、塩化物イオン濃度、硫酸濃度、温度によって制御することができる。また、凹部3の形態は、三次元的なα相組織とγ相組織の平均分布状態に依存するため、優先溶解させる面によって変化する。例えば、図2(b)に示すように、圧延方向と垂直な面(C断面10)を優先溶解させると、γ相1からなる凸部4は、幅方向に比べて深さ方向に長い形状となる。
次に、α相を優先溶解させた二相ステンレス鋼の表面に亜鉛末を含む塗料(含亜鉛末塗料とも称する。)を塗布したところ、図1(a)に示すように、内部に亜鉛末を含む塗膜(含亜鉛末塗膜8)が存在する凹部4を有する表面処理二相ステンレス鋼が得られることがわかった。なお、含亜鉛末塗料を塗布しただけでは、必ずしも全ての凹部に含亜鉛末塗膜が入らないものの、α相を優先溶解させない場合に比べて、犠牲防食の効果が失われるまでの時間を延長することができた。
また、含亜鉛末塗料を塗布し、乾燥させた後、研磨を施すと、図1(b)に示すように、表面にγ相1が露出して表面に金属光沢が見られ、該塗料を塗布しない通常の二相ステンレス鋼に比べると、防食効果が優れていることがわかった。一方、含亜鉛末塗料を塗布した後、冷間圧延を施すと、凹部に該塗料が押し込まれ、内部に含亜鉛末塗膜が存在する凹部が増加し、長期に亘って犠牲防食の効果が持続することがわかった。
以下、本発明について詳細に説明する。鋼成分における%は質量%を意味する。
二相ステンレス鋼は、20〜30%のCr、1〜10%のNi、必要に応じて、1〜5%のMoを含有し、金属組織がフェライト相(α相)及びオーステナイト相(γ相)からなり、オーステナイト・フェライト系とも称される。本発明では、フェライト相を優先的に溶解させ、残存したオーステナイト相との間に凹凸部を形成させることが特徴であるため、二相ステンレス鋼であれば、市販されているものを始めとして、何れも使用することが可能である。例えば、JIS規格の鋼材であるSUS329J1(C≦0.08%、Si≦1.00%、Mn≦1.50%、P≦0.040%、S≦0.030%、Ni:3.00〜6.00%、Cr:23.00〜28.00%、Mo:1.00〜3.00%)、SUS329J3L(C≦0.030%、Si≦1.00%、Mn≦2.00%、P≦0.040%、S≦0.030%、Ni:4.50〜6.50%、Cr:21.00〜24.00%、Mo:2.50〜3.50%、N:0.08〜0.20%)、SUS329J4L(C≦0.030%、Si≦1.00%、Mn≦1.50%、P≦0.040%、S≦0.030%、Ni:5.50〜7.50%、Cr:24.00〜26.00%、Mo:2.50〜3.50%、N:0.08〜0.30%)は、何れも好適に使用することができる。
同様にASTM規格のUNS S31803(C≦0.030%、Si≦1.00%、Mn≦2.00%、P≦0.030%、S≦0.020%、Ni:4.5〜6.5%、Cr:21.0〜23.0%、Mo:2.5〜3.5%、N:0.08〜0.20%)、UNS S32304(C≦0.030%、Si≦1.00%、Mn≦2.50%、P≦0.040%、S≦0.030%、Ni:3.0〜5.5%、Cr:21.5〜24.5%、Mo:0.05〜0.60%、N:0.05〜0.20%、Cu:0.05〜060%)、UNS S32750(C≦0.030%、Si≦0.80%、Mn≦1.20%、P≦0.035%、S≦0.020%、Ni:6.0〜8.0%、Cr:24.0〜26.0%、Mo:3.0〜5.0%、N:0.24〜0.32%、Cu≦0.50%)、UNS S32301(C≦0.040%、Si≦1.00%、Mn:4.00〜6.00%、P≦0.040%、S≦0.030%、Ni:1.35〜1.70%、Cr:21.0〜22.0%、Mo:0.10〜0.80%、N:0.20〜0.25%、Cu:0.10〜080%)、その他の二相ステンレス鋼も好適に使用することができる。
また、耐食性、密着性のために十分な凹部面積を確保する目的から、フェライト相とオーステナイト相の割合をそれぞれ30〜70体積%に調整することが望ましい。
二相ステンレス鋼は、金属組織がα相2及びγ相1からなり、本発明の表面処理二相ステンレス鋼では、図1、2に示したように、凸部4をγ相1とする凹凸が形成され、γ相1の間に凹部3が形成されている。凹部3は、二相ステンレス鋼のフェライト相2を優先溶解させて、形成することができる。また、凹部3の深さは、フェライト相2を優先溶解させる条件、即ち、塩化物イオン濃度、硫酸濃度、温度、浸漬時間によって調整することが可能である。
図1に示すような、二相ステンレス鋼の表面の凹部3の内部に入り込んだ含亜鉛末塗膜8は、流出し難いため、凹凸がない場合に比べて長期間、犠牲防食の効果を発現させることができる。耐食性を向上させるには、オーステナイト相の表面にも含亜鉛末塗膜を形成させ、二相ステンレス鋼の表面全体を該塗膜で被覆することが好ましい(図1(a))。また、二相ステンレス鋼の表面の全面を含亜鉛末塗膜で被覆する際には、凹部の内部に含亜鉛末塗膜が入り込んで、密着性が向上し、耐食性が向上する。
一方、二相ステンレス鋼の表面に凸部4として突出したγ相1を露出させる場合(図1(b))、凹部3内に存在する含亜鉛塗膜8によって、犠牲防食効果を得ることができる。例えば、含亜鉛末塗料を塗布した後、研磨すると、二相ステンレス鋼の表面に突出したγ相が露出し、金属光沢を有する表面を得ることができる。
亜鉛末を含む塗料は、ジンクリッチプライマー、ジンクリッチペイント、機能性プライマー等、犠牲防食の効果が得られるように十分な量、具体的には50%以上、好ましくは70%以上の亜鉛粉末を配合した塗料である。本発明では、防錆顔料として亜鉛末を50%以上、好ましくは70%以上を含み、塗膜形成要素として、アルキルシリケート系展色材を用いた無機系の含亜鉛末塗料、エポキシ樹脂系展色剤を用いた有機系の含亜鉛末塗料を用いることができる。例えば、JIS K 5552に準拠した市販のジンクリッチプライマー、JIS K 5553に準拠した市販のジンクリッチペイントの他、亜鉛末を50%以上含む機能性プライマーなどを使用することが可能である。
なお、二相ステンレス鋼の表面に形成された全ての凹部の内部に亜鉛末を含む塗膜が存在している必要はない。しかし、密着性や犠牲防食の効果を高めるには、含亜鉛末塗膜が内部に存在する凹部を増加させることが好ましい。そのため、二相ステンレス鋼の凹部を深くすること、含亜鉛末塗料に含まれる亜鉛粒子の平均粒径が小さいことが好ましい。
凹部の深さは、内部に含亜鉛末塗膜を入り込ませるため、10μm以上であることが好ましく、更に好ましくは、15μm以上である。凹部は深いほど好ましいが、凹部の深さの上限はフェライト相の深さ方向の長さによって決まる。これは、上記の溶液に浸漬してフェライト相を優先溶解させて、フェライト相が完全に溶解してオーステナイト相に到達すると、優先溶解が進展しなくなるためである。
図2(a)に示すように圧延面9を優先溶解させる場合、フェライト相の板厚方向の長さ、即ちフェライト相の厚みが深さ方向の長さの上限となる。市販の二相ステンレス鋼を使用する場合、フェライト相の厚みは30μm程度である。また、フェライト相の優先溶解が進みすぎると、オーステナイト相の周囲が溶解して表面から脱落することがあるため、凹部の深さの上限は30μm以下が好ましい。
凹部の深さは、光学顕微鏡を用いて焦点深度法により測定する。図3に示すように、凹部3の深さDは、鋼表面において、何ら腐食の痕跡が観られない面(表面5)を基準にして測定する。即ち、光学顕微鏡で、α相が優先的に溶解した部位の底6の部分に焦点を合わせ、焦点深度の平均値から求めた光学深さを、凹部深さDとする。
本発明者は、種々の二相ステンレス鋼のα相とγ相の相間隔を板厚方向(Z方向)、圧延方向(L方向)および幅方向(C方向)について調査した。その結果、いずれの二相ステンレス鋼もγ相の間隔が凹部の深さと同等であり、10〜30μmであるという知見を得た。含亜鉛末塗料を塗布する場合、亜鉛粒子の平均粒径がγ相の間隔と同等以下であると、凹部の内部に入り込み易くなる。したがって、含亜鉛末塗料中に含まれる亜鉛粒子の平均粒径は、30μm以下が好ましい。
なお、含亜鉛末塗料に含まれる亜鉛粒子の平均粒径が大きい場合は、凹部の内部に含亜鉛末塗膜を入り込ませるために、含亜鉛末塗料を塗布した後、冷間加工を施してもよい。ただし、表面に過剰な加工歪みが導入されないように、冷間圧延を施すことが好ましい。含亜鉛末塗膜が存在するγ相間の凹部を増加させるには、冷間圧延の圧下率を0.5%以上にすることが好ましい。一方、加工性などを確保するためには、冷間圧延の圧下率を5%以下にすることが好ましい。
次に、二相ステンレス鋼のフェライト相を優先溶解させる方法について説明する。本発明者は塩化物イオンを含む硫酸に種々の二相ステンレス鋼を浸漬し、腐食形態を検討し、以下の条件を決定した。溶液含有量の%は質量%を意味する。
硫酸濃度が20%未満であると、腐食速度が非常に緩慢になり、実質的に表面に凹凸が発生しない。一方、硫酸濃度が40%を超えると、腐食の進展が速くなり、二相ステンレス鋼の表面が著しく荒れる。また、溶液の温度が40℃未満であると、硫酸濃度が低すぎる場合と同様、腐食速度が遅くなる。一方、溶液の温度が60℃を超えると、硫酸濃度が高すぎる場合と同様、二相ステンレス鋼の表面が著しく荒れる。
また、硫酸濃度が20〜40%であっても、塩化物イオンを含まない場合や、硫酸に含まれる塩化物イオンが1%未満であると、α相の優先溶解が生じない。一方、硫酸に含まれる塩化物イオンが5%を超えると、α相の優先溶解が局部的に進展し過ぎて、γ相の脱落が発生する。したがって、二相ステンレス鋼のフェライト相の優先溶解に使用する溶液は、塩化物イオンを1〜5%、硫酸濃度を20〜40%、温度を40〜60℃とする。塩化物イオン濃度を調整するために使用する塩化物の種類は、特に限定されるものではなく、例えばNaCl,KCl,LiCl,CaCl2,MgCl2,SrCl2などを用いることができる。
フェライト相の優先溶解によって二相ステンレス鋼の表面に形成される凹部の深さは、上記の溶液中に二相ステンレス鋼を浸漬する時間を長くすることによって増大する。浸漬時間を30分以上にすると、十分な凹凸を有する表面を確保することができ、凹部の深さを10μm以上にすることができる。一方、浸漬時間が長くなると、γ相の脱落が生じる。均質な凹凸表面を維持するには、浸漬時間を60分以下にすることが好ましい。
上記の溶液に浸漬した後、フェライト相の優先溶解を停止し、汚れを除去するために、水洗する。含亜鉛末塗料を塗布する際に、二相ステンレス鋼の表面が水に濡れていると、含亜鉛末塗膜の密着性が低下することがあるため、水洗後は、乾燥させる。含亜鉛末塗料は、刷毛塗り等で塗布してもよく、スプレー等で散布してもよい。
次に、本発明を実施例によって、更に説明する。以下に示す実施例は、本発明の実施可能性、適用性及び効果を明確にするものであり、本発明の適用範囲は、以下の条件例に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、本発明は種々適用可能である。
表1に示す市販の二相ステンレス鋼の鋼板から、図4に示すように、幅W、長さL、厚みtが、25W×25L×4tmmの試験片7を採取した。試験片7の全面を湿式エメリー研磨紙にて400番まで研磨し、脱脂洗浄後、乾燥させて、種々の塩化物イオン濃度、硫酸濃度、温度の溶液に浸漬した。塩化物としてNaClを用いた。その後、図3に示したように、鋼表面の腐食の痕跡が観られない面(表面5)を基準にして、α相が優先的に溶解した部位の底6との焦点深度を光学顕微鏡によって測定し、20箇所の測定値の平均値を凹部深さとして求めた。ただし、γ相の脱落が認められた試験片、表面が著しく荒れる試験片では、凹部深さを求めていない。
Figure 2012207295
更に、二相ステンレス鋼の表面にJIS K 5552に準拠した、80%の亜鉛末を含むジンクリッチプライマー(日本ペイント株式会社製、ニッペジンキー1000P:登録商標)を塗布し、一部の試験片には、1%の冷間圧延を施した。また、同様に、55%の亜鉛末を含む機能性プライマー(日本ペイント株式会社製、ニッペセラモSW:登録商標)を塗布した試験片も作成した。その後、各条件の試験片を、半分はそのまま、残りは表面を研磨してγ相を露出させ、複合サイクル試験による発銹性試験を実施した。表2の「耐食性の評価」欄に「全面被覆」と記載したものがそのままの試験片であり、「研磨」と記載したものが表面を研磨してγ相を露出させたものである。
複合サイクル試験の1サイクルは、始め35℃で4時間、鋼表面に人工海水を噴霧後、60℃、相対湿度30%以下の雰囲気で2時間放置後、50℃で相対湿度95%に2時間の条件とした。裸鋼において発銹するまでのサイクル数を「基準サイクル数」とした。耐食性の評価は、全面を湿式エメリー研磨紙にて400番まで研磨し、脱脂洗浄後、乾燥させて、そのままジンクリッチプライマー、機能性プライマーで被覆した試験片(全面被覆)、及び、γ相が露出するまで研磨した試験片(研磨)において、発銹するまでのサイクル数を評価し、それぞれ、基準サイクル数と比較として相対的に評価した。
即ち、基準サイクル数に対して、1.5倍未満のサイクル数は「×」、1.5倍〜2倍未満のサイクル数は「△」、2倍以上のサイクル数は「○」とした。表2に、ジンクリッチプライマーを使用した結果を「ジンクリッチ」と記載した欄に示し、機能性プライマーを使用した結果を「機能性」と記載した欄に示す。両者において同等の結果が得られた。
Figure 2012207295
本発明の表面処理二相ステンレス鋼は、通常の二相ステンレス鋼に亜鉛末を含む塗料を塗布したものに比べて、良好な耐食性を示す。一方、二相ステンレス鋼のフェライト相を優先溶解させた溶液の、塩化物イオン又は硫酸濃度が低すぎる場合、温度が低すぎる場合、溶液に浸漬する時間が短すぎる場合は、十分な凹部が形成されず、耐食性の向上効果が小さい。また、二相ステンレス鋼のフェライト相を優先溶解させた溶液の、硫酸濃度が高すぎる場合、温度が高すぎる場合は二相ステンレス鋼表面が著しく荒れ、また、塩化物イオン濃度が高過ぎる場合、溶液に浸漬する時間が長すぎる場合は、γ相が脱落し、耐食性の向上効果が小さい。
本発明は、従来の二相ステンレス鋼よりも優れた耐食性を有する表面処理二相ステンレス鋼であり、塩化物イオンを含む、弱酸性から弱アルカリ性の水溶液環境で使用される機器類、例えば、貯蔵、製造タンク類、輸送パイプ、配管類、バルブ類などの材料に好適である。
1 オーステナイト相(γ相)
2 フェライト相(α相)
3 凹部
4 凸部
5 表面
6 底
7 試験片
8 含亜鉛末塗膜
9 圧延面
10 C断面

Claims (3)

  1. 二相ステンレス鋼の表面に、オーステナイト相を凸部とする凹凸を有し、該オーステナイト相間の凹部深さが10μm以上であり、且つ凹部に亜鉛末を含む塗膜が存在することを特徴とする表面処理二相ステンレス鋼。
  2. 更に、前記オーステナイト相の表面が亜鉛末を含む塗膜で被覆されていることを特徴とする請求項1に記載の表面処理二相ステンレス鋼。
  3. 二相ステンレス鋼を、塩化物イオン濃度が1〜5%、硫酸濃度が20〜40%であり、温度が40〜60℃である溶液に、30〜60分間浸漬し、フェライト相を優先溶解させた後、水洗及び乾燥して、亜鉛末を含む塗料を塗布又は散布することを特徴とする表面処理二相ステンレス鋼の製造方法。
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