JP2012207214A - 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の組成物は、〔A〕ゴム質重合体の存在下、重合性不飽和単量体を重合して得られた、ゴム質重合体強化グラフト樹脂、〔B〕ポリカーボネート樹脂、〔C〕シアン化ビニル化合物に由来する構造単位cx及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位cyを含む重合体を含み、重合体〔C〕は、単位cxを5%以上r1%以下で含む重合体C1と、単位cxをr1%を超えてr2%以下で含む重合体C2と、単位cxをr2%を超えて60%で含む重合体C)とからなり、r2−r1≧3であり、重合体C1、C2及びC3の含有割合は、5〜70%、10〜80%及び10〜80%である。
【選択図】なし
Description
また、特許文献5には、特定の粒子径を有するアクリル系ゴムの存在下、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を含む単量体をグラフト重合させてなる耐衝撃性改良剤が開示されており、AS樹脂、ポリエステル樹脂等と併用した例が記載されている。
1.〔A〕ゴム質重合体の存在下、重合性不飽和単量体を重合して得られた、ゴム質重合体強化グラフト樹脂と、〔B〕ポリカーボネート樹脂と、〔C〕シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(cx)、及び、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(cy)を含む重合体と、を含有する熱可塑性樹脂組成物において、上記重合体〔C〕は、上記構造単位(cx)を、5質量%以上r1質量%以下で含む重合体(C−1)と、上記構造単位(cx)を、r1質量%を超えてr2質量%以下で含む重合体(C−2)と、上記構造単位(cx)を、r2質量%を超えて60質量%以下で含む重合体(C−3)とからなり、且つ、(r2−r1)≧3(質量%)であり、上記重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜70質量%、10〜80質量%及び10〜80質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
2.r2が15〜45質量%である上記1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
3.上記重合体〔C〕が、構造単位(cx)及び構造単位(cy)からなる共重合体であり、上記シアン化ビニル化合物及び上記芳香族ビニル化合物を、質量比で、5〜25:95〜75から25〜60:75〜40へ、又は、25〜60:75〜40から5〜25:95〜75へと、仕込み量を変化させつつ、重合して得られた重合体を含む上記1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
4.上記重合体〔C〕に含まれる上記構造単位(cx)の含有割合は、上記重合体〔C〕を構成する構造単位の合計を100質量%とした場合に、15〜40質量%である上記1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
5.上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕、上記ポリカーボネート樹脂〔B〕及び上記重合体〔C〕の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、3〜70質量%、3〜90質量%及び5〜80質量%である上記1乃至4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
6.上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕の形成に用いた上記重合性不飽和単量体がシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を含み、上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕に含まれる、上記シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(gx)及び上記芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(gy)の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜40質量%及び60〜95質量%である上記1乃至5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
7.r1が10〜30質量%であり、r2が20〜40質量%であり、上記重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜55質量%、20〜70質量%及び20〜70質量%である上記1乃至6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
8.上記1乃至7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基又はメタクリロイル基を、「(共)重合体」は、単独重合体及び共重合体を意味する。
尚、グラフト重合により得られたゴム強化樹脂は、通常、ゴム質重合体強化グラフト樹脂のほかに、ゴム質重合体にグラフトしていない(共)重合体(以下、「未グラフト重合体」という。)を含む。この未グラフト重合体の構成は、使用した重合性不飽和単量体の種類に依存し、通常、未グラフト重合体は、本発明の組成物において、成分〔C〕に含まれる。
エステル部が炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
また、エステル部がヒドロキシアルキル基を含む化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルにε−カプロラクトンを付加して得られた化合物等が挙げられる。
上記カルボキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
(1)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなる重合性不飽和単量体を重合して得られたグラフト樹脂
(2)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びマレイミド系化合物からなる重合性不飽和単量体を重合して得られたグラフト樹脂
(3)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物からなる重合性不飽和単量体を重合して得られたグラフト樹脂
また、レドックス型重合開始剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、クメンハイドロパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたものを用いることができる。
尚、上記重合開始剤は、反応系に一括して、又は、連続的に供給することができる。
尚、上記連鎖移動剤は、反応系に一括して、又は、連続的に供給することができる。
グラフト率(%)={(S−T)/T}×100
式中、Sは、グラフト重合により得られたゴム強化樹脂1グラムを、アセトン(ゴム質重合体がアクリル系ゴムの場合、アセトニトリルを使用)20mlに投入し、振とう機を用いて、振とう(温度25℃、2時間)した後、遠心分離機を用いて、遠心分離(温度5℃、回転数23,000rpm、1時間)し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tは、ゴム強化樹脂1グラムに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。このゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
上記成分〔A〕におけるグラフト率を求める際に、遠心分離後に回収されたアセトン可溶分(又はアセトニトリル可溶分)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点調製し、ウベローデ粘度管を用いて、30℃で各濃度の還元粘度を測定することにより、極限粘度[η]が求められる。
本発明において好ましい成分〔A〕は、ゴム質重合体の存在下に、シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を含む重合性不飽和単量体を重合して得られたグラフト樹脂であって、このグラフト樹脂を構成するグラフト部における、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(gx)及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(gy)の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは5〜40質量%及び60〜95質量%、より好ましくは10〜38質量%及び62〜90質量%、更に好ましくは10〜35質量%及び65〜90質量%、より更に好ましくは18〜35質量%及び65〜82質量%、特に好ましくは23〜32質量%及び68〜77質量%の樹脂である。上記範囲にある成分〔A〕を含む組成物を用いることにより、耐衝撃性、耐熱性及び耐面衝撃性のバランスに優れた成形品を得ることができる。
上記構造単位(gx)及び(gy)の含有量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)、核磁気共鳴スペクトル等により求める方法、更には、グラフト樹脂をオゾン分解した後、CHN元素分析、液体クロマトグラフ分析等に供する方法等により得ることができる。
上記成分〔C〕に含まれる構造単位(cx)の含有量は、上記成分〔C〕を構成する構造単位の合計を100質量%とすると、好ましくは15〜40質量%、より好ましくは18〜37質量%、更に好ましくは21〜35質量%である。上記構造単位(cx)の含有量が15〜40質量%であると、組成物の成形加工性(流動性)に優れ、耐熱性に優れた成形品を得ることができる。
上記成分〔C〕に含まれる構造単位(cy)の含有量は、上記成分〔C〕を構成する構造単位の合計を100質量%とすると、好ましくは60〜85質量%、より好ましくは63〜82質量%、更に好ましくは65〜79質量%である。上記構造単位(cy)の含有量が60〜85質量%であると、組成物の成形加工性(流動性)に優れ、耐熱性に優れた成形品を得ることができる。
上記成分〔C〕が、構造単位(cz)を含む場合、その含有量の上限は、上記成分〔C〕を構成する構造単位の合計、即ち、構造単位(cx)、(cy)及び(cz)の合計を100質量%とすると、好ましくは30質量%、より好ましくは15質量%である。
尚、この構造単位(cz)は、重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)のすべてに含まれてよいし、一部に含まれてもよい。
上記成分〔C〕が、上記構成を有する重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)からなることにより、成分〔A〕及び〔B〕のあいだの相溶性の向上効果が高く、耐衝撃性、耐熱性及び耐面衝撃性のバランスに優れた成形品を効率よく製造することができる。特に、構造単位(cx)の含有割合が、上記のように、好ましくは15〜40質量%の範囲にある共重合体の集合体からなる成分〔C〕を用いると、上記効果が顕著である。
r1は、好ましくは10〜30質量%、より好ましくは15〜30質量%、更に好ましくは17〜28質量%、特に好ましくは22〜27質量%である。構造単位(cx)の含有量が5質量%以上r1質量%以下である重合体を2種以上含む場合、「重合体(C−1)に含まれる構造単位(cx)の含有量」として示す値は、各重合体に含まれる構造単位(cx)の含有量から算出された平均値である。
上記重合体(C−2)は、構造単位(cx)を、r1質量%を超えてr2質量%以下で含む、構造単位(cx)及び(cy)を含む共重合体であり、上記のように、構造単位(cx)及び(cy)からなる共重合体であってよいし、構造単位(cx)、(cy)及び(cz)からなる共重合体であってもよい。また、上記のように、この重合体(C−2)は、構造単位(cx)の所定量を含む重合体の少なくとも1種からなるものとすることができる。例えば、2種の共重合体からなる場合であって、r1<r21<r22≦r2とした場合、構造単位(cx)をr21質量%含む重合体と、構造単位(cx)をr22質量%含む重合体と、からなる重合体(C−2)を用いることができる。
r2は、好ましくは15〜45質量%、より好ましくは20〜42質量%、更に好ましくは22〜40質量%、より更に好ましくは25〜35質量%、特に好ましくは27〜33質量%である。構造単位(cx)の含有量がr1質量%を超えてr2質量%以下である重合体を2種以上含む場合、「重合体(C−2)に含まれる構造単位(cx)の含有量」として示す値は、各重合体に含まれる構造単位(cx)の含有量から算出された平均値である。
本発明において、r2が15〜45質量%であると、本発明の組成物において、特に、成分〔A〕と、重合体(C−2)との相溶性が向上し、更に、成分〔B〕と、重合体(C−1)及び(C−3)との相溶性も向上するため、結果として、成分〔A〕及び〔B〕のあいだの相溶性に優れたものとなり、得られる成形品において、耐衝撃性、耐熱性及び耐面衝撃性のバランスが優れる。
また、本発明において、耐衝撃性、耐熱性及び耐面衝撃性のバランスの効果が顕著となるr1及びr2の関係は、(r2−r1)≧3(質量%)であり、好ましくは(r2−r1)≧4(質量%)、より好ましくは(r2−r1)≧4.5(質量%)である。但し、通常、(r2−r1)≦10(質量%)、好ましくは(r2−r1)≦9(質量%)、更に好ましくは(r2−r1)≦7(質量%)である。(r2−r1)<3(質量%)では、本発明の効果が十分に得られない。
上記重合体(C−3)は、構造単位(cx)を、r2質量%を超えて60質量%以下で含む重合体であり、上記のように、構造単位(cx)及び(cy)からなる共重合体であってよいし、構造単位(cx)、(cy)及び(cz)からなる共重合体であってもよい。また、上記のように、この重合体(C−3)は、構造単位(cx)の所定量を含む重合体の少なくとも1種からなるものとすることができる。例えば、2種の共重合体からなる場合であって、r2<r31<r32≦60とした場合、構造単位(cx)をr31質量%含む重合体と、構造単位(cx)をr32質量%含む重合体と、からなる重合体(C−3)を用いることができる。
構造単位(cx)の含有量がr2質量%を超えて60質量%以下である重合体を2種以上含む場合、「重合体(C−3)に含まれる構造単位(cx)の含有量」として示す値は、各重合体に含まれる構造単位(cx)の含有量から算出された平均値である。
また、組成物の流動性、並びに、得られる成形品の耐衝撃性、耐熱性及び耐面衝撃性のバランス、の効果が顕著となるのは、r1が10〜30質量%であり、r2が20〜40質量%であり、上記重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、好ましくは5〜55質量%、20〜70質量%及び20〜70質量%、より好ましくは5〜55質量%、20〜70質量%及び20〜70質量%、更に好ましくは7〜30質量%、25〜50質量%及び30〜60質量%、特に好ましくは10〜25質量%、30〜50質量%及び35〜60質量%である。
上記重合体(C−2)は、好ましくは、構造単位(cx)及び(cy)からなる共重合体であり、この共重合体は、構造単位(cx)、(cy)及び(cz)からなる共重合体と併用してもよい。構造単位(cz)を形成する単量体としては、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系化合物、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
また、上記重合体(C−3)は、好ましくは、構造単位(cx)及び(cy)からなる共重合体であり、この共重合体は、構造単位(cx)、(cy)及び(cz)からなる共重合体と併用してもよい。構造単位(cz)を形成する単量体としては、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系化合物、メタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましい。
図1は、上記シアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の仕込み量を、質量比で25〜60:75〜40から5〜25:95〜75へと変化させつつ重合して得られた共重合体(成分〔C〕)の分布の一例を示すグラフである。このように、パワーフィード法では、単量体の仕込み量(供給量、供給速度)を、反応の途中において変化させる等により、例えば、重合体(C−1)の生成量を多くしたり、重合体(C−3)の生成量を多くしたり、多態様の分布を有する、成分〔C〕用の共重合体を製造することができる。
他の重合体としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
本発明の組成物が、他の重合体(他の樹脂)を含有する場合、その含有量は、上記成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部である。
また、反応系難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモフェノールグリシジルエーテル、臭素化芳香族トリアジン、トリブロモフェノール、テトラブロモフタレート、テトラクロロ無水フタル酸、ジブロモネオペンチルグリコール、ポリ(ペンタブロモベンジルポリアクリレート)、クロレンド酸(ヘット酸)、無水クロレンド酸(無水ヘット酸)、臭素化フェノールグリシジルエーテル、ジブロモクレジルグリシジルエーテル等が挙げられる。
例えば、上記成分〔A〕が、ジエン系ゴムを用いてなるゴム質重合体強化グラフト樹脂を含有する場合には、成形時のシリンダー温度は、通常、230℃〜280℃である。また、金型温度は、通常、20℃〜90℃である。
尚、上記のいずれの場合にも、成形品が大型である場合には、一般に、シリンダー温度は、上記温度より高めに設定される。
熱可塑性樹脂組成物の製造に用いた原料(樹脂成分及び重合体成分)は、以下の通りである。尚、グラフト率、極限粘度[η]等の測定は、上記記載の方法に準じて行った。
1−1.原料〔P〕
この原料〔P〕は、下記の合成例1及び2により得られたゴム強化芳香族ビニル系樹脂であり、ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕と、未グラフトの(共)重合体(重合体〔C〕を含む場合がある。)とからなる樹脂である。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水42部、ロジン酸カリウム0.35部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、平均粒子径300nmのポリブタジエンゴム(ゲル含有率80%)32部を含むラテックス80部、平均粒子径600nmのスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(スチレン単位量30%)8部を含むラテックス19部、スチレン14部及びアクリロニトリル6部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達したところで、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.3部を、イオン交換水8部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。
30分間重合させた後、イオン交換水45部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部及びクメンハイドロパーオキサイド0.1部を、3時間かけて連続的に添加した。その後、更に1時間重合を継続し、反応系に、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を完結させた。
次いで、反応生成物を含むラテックスに、硫酸水溶液を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗した。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて、洗浄・中和し、更に、水洗した後、乾燥し、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(P1)を得た。この樹脂(P1)に含まれるグラフト樹脂(成分〔A〕)におけるグラフト率は55%、グラフト部における、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(gx)及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(gy)の割合が、両者の合計を100%とした場合に、26%及び74%であり、未グラフトの(共)重合体(以下、「アセトン可溶分」という。)の含有率は38%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.45dl/gであった。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水42部、ロジン酸カリウム0.35部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、平均粒子径300nmのポリブタジエンゴム(ゲル含有率80%)32部を含むラテックス80部、平均粒子径600nmのスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(スチレン単位量30%)8部を含むラテックス19部、スチレン16部及びアクリロニトリル4部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達したところで、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.3部を、イオン交換水8部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。
30分間重合させた後、イオン交換水45部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン32部、アクリロニトリル8部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部及びクメンハイドロパーオキサイド0.1部を、3時間かけて連続的に添加した。その後、更に1時間重合を継続し、反応系に、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を完結させた。
次いで、反応生成物を含むラテックスに、硫酸水溶液を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗した。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて、洗浄・中和し、更に、水洗した後、乾燥し、ゴム強化芳香族ビニル系樹脂(P2)を得た。この樹脂(P2)に含まれるグラフト樹脂(成分〔A〕)におけるグラフト率は48%、グラフト部における、シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(gx)及び芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(gy)の割合が、両者の合計を100%とした場合に、20%及び80%であり、未グラフトの(共)重合体(アセトン可溶分)の含有率は41%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.42dl/gであった。
下記の市販品を用いた。
原料Q1として、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート「NOVAREX 7022PJ」(商品名)を用いた。MFR(温度240℃、荷重10kg)は、9g/10分である。
原料Q2として、三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート「NOVAREX 7022PJ−LH1」(商品名)を用いた。MFR(温度240℃、荷重10kg)は、35g/10分である。
下記の合成例3〜13により得られた共重合体を用いた。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、反応系に、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部、tert−ドデシルメルカプタン0.26部及び、スチレン73部及びアクリロニトリル27部を3時間かけて連続的に滴下し、重合を行った。滴下の終了と同時に重合を完結させ、ラテックス(L5−1)を得た。
一方、攪拌機を備えた別のガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、反応系に、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部、tert−ドデシルメルカプタン0.26部、スチレン20部及びアクリロニトリル80部の混合物を3時間かけて滴下し、重合を行った。滴下の終了と同時に重合を完結させ、ラテックス(L5−2)を得た。
次に、上記で得られたラテックス(L5−1)及び(L5−2)を、重合体の含有割合(質量比)が50:50となるように混合した。そして、硫酸マグネシウム溶液を用いて、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R1として用いた。尚、この原料R1において、成分〔C〕に相当する重合体は、上記で得られたラテックス(L5−1)及び(L5−2)に含まれる重合体である。
この原料R1のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.51dl/gであった。
本合成例では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部、スチレン36.5部及びアクリロニトリル13.5部の混合物からなる第1単量体(合成開始時には、第1供給源に収容)と、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部、スチレン40部及びアクリロニトリル10部の混合物からなる第2単量体(合成開始時には、第2供給源に収容)と、を用いて、以下の要領で重合を行い、原料R2を得た。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、第1供給源から反応系に対して、1時間あたり33.3部の速度で、第1単量体の連続的な供給を開始し、重合を行った。そして、この第1単量体の供給と同時に、第2単量体を、第2供給源から第1供給源に、1時間あたり16.7部の速度で連続的に供給した。その結果、経時とともに、第1供給源における単量体の組成が変化し、この第1供給源から反応系に供給される単量体の組成も、逐次的に変化するようにした。すべての単量体の供給に要した時間は、約3時間である。
上記単量体の供給終了と同時に、重合を完結させ、組成の異なる複数のスチレン・アクリロニトリル共重合体を主とした重合体混合物を含むラテックスを得た。
その後、上記ラテックスに、硫酸マグネシウム溶液を添加して、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R2として用いた。
この原料R2のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.51dl/gであった。
本合成例では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.10部、スチレン36.5部及びアクリロニトリル13.5部の混合物からなる第1単量体(合成開始時には、第1供給源に収容)と、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.10部、スチレン40部及びアクリロニトリル10部の混合物からなる第2単量体(合成開始時には、第2供給源に収容)と、を用いて、以下の要領で重合を行い、原料R3を得た。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、第1供給源から反応系に対して、1時間あたり33.3部の速度で、第1単量体の連続的な供給を開始し、重合を行った。そして、この第1単量体の供給と同時に、第2単量体を、第2供給源から第1供給源に、1時間あたり16.7部の速度で連続的に供給した。その結果、経時とともに、第1供給源における単量体の組成が変化し、この第1供給源から反応系に供給される単量体の組成も、逐次的に変化するようにした。すべての単量体の供給に要した時間は、約3時間である。
上記単量体の供給終了と同時に、重合を完結させ、組成の異なる複数のスチレン・アクリロニトリル共重合体を主とした重合体混合物を含むラテックスを得た。
その後、上記ラテックスに、硫酸マグネシウム溶液を添加して、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R3として用いた。
この原料R3のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.60dl/gであった。
本合成例では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、スチレン36.5部及びアクリロニトリル13.5部の混合物からなる第1単量体(合成開始時には、第1供給源に収容)と、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、スチレン38.5部及びアクリロニトリル11.5部の混合物からなる第2単量体(合成開始時には、第2供給源に収容)と、を用いて、以下の要領で重合を行い、原料R4を得た。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、第1供給源から反応系に対して、1時間あたり33.3部の速度で、第1単量体の連続的な供給を開始し、重合を行った。そして、この第1単量体の供給と同時に、第2単量体を、第2供給源から第1供給源に、1時間あたり16.7部の速度で連続的に供給した。その結果、経時とともに、第1供給源における単量体の組成が変化し、この第1供給源から反応系に供給される単量体の組成も、逐次的に変化するようにした。すべての単量体の供給に要した時間は、約3時間である。
上記単量体の供給終了と同時に、重合を完結させ、組成の異なる複数のスチレン・アクリロニトリル共重合体を主とした重合体混合物を含むラテックスを得た。
その後、上記ラテックスに、硫酸マグネシウム溶液を添加して、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R4として用いた。
この原料R4のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.41dl/gであった。
本合成例では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、スチレン36.5部及びアクリロニトリル13.5部の混合物からなる第1単量体(合成開始時には、第1供給源に収容)と、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、スチレン41.5部及びアクリロニトリル8.5部の混合物からなる第2単量体(合成開始時には、第2供給源に収容)と、を用いて、以下の要領で重合を行い、原料R5を得た。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、第1供給源から反応系に対して、1時間あたり33.3部の速度で、第1単量体の連続的な供給を開始し、重合を行った。そして、この第1単量体の供給と同時に、第2単量体を、第2供給源から第1供給源に、1時間あたり16.7部の速度で連続的に供給した。その結果、経時とともに、第1供給源における単量体の組成が変化し、この第1供給源から反応系に供給される単量体の組成も、逐次的に変化するようにした。すべての単量体の供給に要した時間は、約3時間である。
上記単量体の供給終了と同時に、重合を完結させ、組成の異なる複数のスチレン・アクリロニトリル共重合体を主とした重合体混合物を含むラテックスを得た。
その後、上記ラテックスに、硫酸マグネシウム溶液を添加して、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R5として用いた。
この原料R5のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.40dl/gであった。
本合成例では、スチレン76.5部とジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド
0.15部、tert−ドデシルメルカプタン0.20部の混合物からなる第1単量体(合成開始時には、第1供給源に収容)と、アクリロニトリル23.5部とジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.05部、tert−ドデシルメルカプタン0.06部の混合物からなる第2単量体(合成開始時には、第2供給源に収容)と、を用いて、以下の要領で重合を行い、原料R6を得た。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を加え、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.062部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.124部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、第1及び第2供給源から、反応系に単量体を連続的に供給し、3時間かけて重合を行った。尚、供給される単量体の合計量は、逐次、一定(100部)とし、各供給源からの単量体の供給量を、供給開始時において、第1供給源:第2供給源=73:27とし、供給終了時(3時間後)において、第1供給源:第2供給源=80:20となるようにした。
上記単量体の供給終了(3時間供給終了後)と同時に、重合を完結させ、組成の異なる複数のスチレン・アクリロニトリル共重合体を主とした重合体混合物を含むラテックスを得た。
その後、上記ラテックスに、硫酸マグネシウム溶液を添加して、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R6として用いた。
この原料R6のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.51dl/gであった。
本合成例では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、スチレン36.5部及びアクリロニトリル13.5部の混合物からなる第1単量体(合成開始時には、第1供給源に収容)と、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、スチレン30部及びアクリロニトリル20部の混合物からなる第2単量体(合成開始時には、第2供給源に収容)と、を用いて、以下の要領で重合を行い、原料R2を得た。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、第1供給源から反応系に対して、1時間あたり33.3部の速度で、第1単量体の連続的な供給を開始し、重合を行った。そして、この第1単量体の供給と同時に、第2単量体を、第2供給源から第1供給源に、1時間あたり16.7部の速度で連続的に供給した。その結果、経時とともに、第1供給源における単量体の組成が変化し、この第1供給源から反応系に供給される単量体の組成も、逐次的に変化するようにした。すべての単量体の供給に要した時間は、約3時間である。
上記単量体の供給終了と同時に、重合を完結させ、組成の異なる複数のスチレン・アクリロニトリル共重合体を主とした重合体混合物を含むラテックスを得た。
その後、上記ラテックスに、硫酸マグネシウム溶液を添加して、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R7として用いた。
この原料R7のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.41dl/gであった。
本合成例では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部、tert−ドデシルメルカプタン0.23部、スチレン83部及びアクリロニトリル17部の混合物からなる第1単量体(合成開始時には、第1供給源に収容)を用いて、以下の要領で重合を行い、原料R8を得た。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、第1供給源から反応系に対して、1時間あたり33.3部の速度で、第1単量体の連続的な供給を開始し、重合を行った。すべての単量体の供給に要した時間は、約3時間である。
上記単量体の供給終了と同時に、重合を完結させ、組成の異なる複数のスチレン・アクリロニトリル共重合体を主とした重合体混合物を含むラテックスを得た。
その後、上記ラテックスに、硫酸マグネシウム溶液を添加して、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R8として用いた。
この原料R8のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.59dl/gであった。
リボン翼を備えたジャケット付き重合用反応器を、2基連結した合成装置を用いた。各反応器内に、窒素ガスをパージした後、1基目の反応器に、スチレン75部、アクリロニトリル25部及びトルエン20部からなる混合物と、分子量調節剤であるtert−ドデシルメルカプタン0.15部をトルエン5部に溶解した溶液と、重合開始剤である1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)0.1部をトルエン5部に溶解した溶液とを連続的に供給し、110℃で重合を行った。供給した単量体等の平均滞留時間は2時間であり、2時間後の重合転化率は56%であった。
次いで、得られた重合体溶液を、1基目の反応器の外部に設けられたポンプにより、連続的に取り出して、2基目の反応器に供給した。連続的に取り出す量は、1基目の反応器に供給する量と同じである。尚、2基目の反応器においては、130℃で2時間重合を行い、2時間後の重合転化率は74%であった。
その後、2基目の反応器から、重合体溶液を回収し、これを、2軸3段ベント付き押出機に導入した。そして、直接、未反応単量体及びトルエン(重合用溶媒)を脱揮し、スチレン・アクリロニトリル共重合体を回収した。このスチレン・アクリロニトリル共重合体を、原料R9として用いた。
この原料R9の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.51dl/gであった。
リボン翼を備えたジャケット付き重合用反応器を、2基連結した合成装置を用いた。各反応器内に、窒素ガスをパージした後、1基目の反応器に、スチレン65部、アクリロニトリル35部及びトルエン20部からなる混合物と、分子量調節剤であるtert−ドデシルメルカプタン0.15部をトルエン5部に溶解した溶液と、重合開始剤である1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)0.1部をトルエン5部に溶解した溶液とを連続的に供給し、110℃で重合を行った。供給した単量体等の平均滞留時間は2時間であり、2時間後の重合転化率は56%であった。
次いで、得られた重合体溶液を、1基目の反応器の外部に設けられたポンプにより、連続的に取り出して、2基目の反応器に供給した。連続的に取り出す量は、1基目の反応器に供給する量と同じである。尚、2基目の反応器においては、130℃で2時間重合を行い、2時間後の重合転化率は74%であった。
その後、2基目の反応器から、重合体溶液を回収し、これを、2軸3段ベント付き押出機に導入した。そして、直接、未反応単量体及びトルエン(重合用溶媒)を脱揮し、スチレン・アクリロニトリル共重合体を回収した。このスチレン・アクリロニトリル共重合体を、原料R10として用いた。この原料R10の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.46dl/gであった。
本合成例では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.2部、tert−ドデシルメルカプタン0.23部、スチレン60部及びアクリロニトリル40部の混合物からなる第1単量体(合成開始時には、第1供給源に収容)を用いて、以下の要領で重合を行い、原料R11を得た。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水184部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム2.0部及び炭酸水素ナトリウム0.5部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達したところで、エチレンジアミン四酢酸・四ナトリウム・二水塩0.06部、硫酸第一鉄7水和物0.002部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.12部を、イオン交換水16部に溶解した溶液を添加した。その後、更に昇温し、内温が50℃に達したところで、第1供給源から反応系に対して、1時間あたり33.3部の速度で、第1単量体の連続的な供給を開始し、重合を行った。すべての単量体の供給に要した時間は、約3時間である。
上記単量体の供給終了と同時に、重合を完結させ、組成の異なる複数のスチレン・アクリロニトリル共重合体を主とした重合体混合物を含むラテックスを得た。
その後、上記ラテックスに、硫酸マグネシウム溶液を添加して、重合体を凝固し、水洗した。その後、乾燥し、重合体混合物を回収した。この重合体混合物を、原料R11として用いた。
この原料R11のアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.51dl/gであった。
実施例1〜11及び比較例1〜5
原料〔P〕、〔Q〕及び〔R〕を、表1〜表3に記載の割合で用いて熱可塑性樹脂組成物を得た。尚、組成物の評価に際しては、予め、評価項目に応じた添加剤を含む物性評価用組成物を調製し、これを利用した。
また、原料〔P〕は、その合成方法によって、本発明に係る成分〔A〕と、成分〔C〕とからなる混合物である場合がある。そこで、原料〔P〕におけるグラフト率、アセトン可溶分の組成等を用いて、本発明の成分〔A〕、〔B〕及び〔C〕の合計量に対する、成分〔C〕に相当する重合体の含有割合を算出し、その値を各表に示した。そして、この成分〔C〕は、重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)により構成されることから、r1=25及びr2=30を選択し、これらの合計を100%とした場合の各割合を下記の方法により分析した。また、成分〔C〕に含まれる構造単位(cx)の含有量、について各表に示した。
熱可塑性樹脂組成物に含まれる成分〔C〕10mgを、アセトニトリル・1,2−ジクロロエタン混合液(体積比6:4)10mlに投入し、振とう機により、25℃で2〜3時間、振とうを行った。その後、不溶分(夾雑物)を除去し、可溶分を液体クロマトグラフィーに供した。装置は、東ソー社製スーパーシステムコントローラ「SC8020」(型式名)であり、カラムとして、東ソー社製「TSK Silica−60」(商品名)を用いた。n−ヘプタン・1,2−ジクロロエタン混合液(体積比7:3)からアセトニトリル・1,2−ジクロロエタン混合液(体積比6:4)へ勾配をかけた移動相により、試料を展開し、UV検出器で波長260nmの吸収値から組成の分布を測定した。カラム温度は35℃である。尚、試料中の重合体組成及び分布の決定は、予め、種類及び含有量が既知の構造単位を含む、スチレン・アクリロニトリル共重合体を用いて検量線を作製しておき、それを利用した。
原料〔P〕、〔Q〕及び〔R〕の所定量を、ヘンシェルミキサーに供給した後、これらの合計100部に対して、酸化防止剤であるトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(商品名「アデカスタブ2112」、ADEKA社製)0.2部と、安定剤である2[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート(商品名「スミライザーGS(F)」、住友化学社製)0.2部とを添加し、25℃で混合した。次いで、この混合物を、プラスチック工学研究所社製2軸押出機「BT40」(型式名)に供給して溶融混練し、ペレット(物性評価用組成物)を得た。尚、溶融混練の際のシリンダー設定温度は、240℃〜260℃とした。
その後、上記ペレットを十分に乾燥した後、シリンダーの設定温度を240℃〜260℃、金型温度を60℃とした東芝機械社製射出成形機「EC60」(型式名)又は「J35AD」(型式名)を用いて、評価項目に適した試験片を作製し、評価に供した。
(1)耐衝撃性
ISO 179に準じて、シャルピー衝撃強さを、温度23℃及び−30℃で測定した。単位は「kJ/m2」である。
(2)耐熱性
ISO 75に準じて、荷重たわみ温度を、曲げ応力1.8MPaで測定した。単位は「℃」である。
(3)流動性
ISO 1133に準じて、メルトフローレートを、温度240℃、荷重98Nで測定した。単位は「g/10分」である。
大きさが80mm×55mm×2.4mmの試験片を、島津製作所社製高速衝撃試験機「HITS−P10」(型式名)にセットし、落錘試験(重錘のポンチ先端直径:12.7mm、受け台穴径:43mm、試験速度:6.7m/秒、試験温度:−30℃)に供し、試験片の衝撃部を目視観察した。試験を5回行い、観察結果から点数の合計を算出した。
「3点」:延性破壊し、陥没した。
「2点」:延性破壊し、配向割れを起こした(樹脂の流れ方向にひびが入った)。
「1点」:脆性破壊し、尖った破片が飛散した。
合計点から平均点を算出し、耐面衝撃性を、下記基準で判定した。
「A」:平均点が2.8点以上である。
「B」:平均点が2.0〜2.7点である。
「C」:平均点が1.9点以下である。
一方、表1、表2及び表4から、本発明に係る成分〔C〕を含有する組成物である実施例1〜11においては、耐衝撃性、耐熱性及び耐面衝撃性のバランスに優れていることが明らかである。
Claims (8)
- 〔A〕ゴム質重合体の存在下、重合性不飽和単量体を重合して得られた、ゴム質重合体強化グラフト樹脂と、
〔B〕ポリカーボネート樹脂と、
〔C〕シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(cx)、及び、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(cy)を含む重合体と、
を含有する熱可塑性樹脂組成物において、
上記重合体〔C〕は、上記構造単位(cx)を、5質量%以上r1質量%以下で含む重合体(C−1)と、上記構造単位(cx)を、r1質量%を超えてr2質量%以下で含む重合体(C−2)と、上記構造単位(cx)を、r2質量%を超えて60質量%以下で含む重合体(C−3)とからなり、且つ、(r2−r1)≧3(質量%)であり、
上記重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜70質量%、10〜80質量%及び10〜80質量%であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - r2が15〜45質量%である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記重合体〔C〕が、構造単位(cx)及び構造単位(cy)からなる共重合体であり、上記シアン化ビニル化合物及び上記芳香族ビニル化合物を、質量比で、5〜25:95〜75から25〜60:75〜40へ、又は、25〜60:75〜40から5〜25:95〜75へと、仕込み量を変化させつつ、重合して得られた重合体を含む請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記重合体〔C〕に含まれる上記構造単位(cx)の含有割合は、上記重合体〔C〕を構成する構造単位の合計を100質量%とした場合に、15〜40質量%である請求項1乃至3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕、上記ポリカーボネート樹脂〔B〕及び上記重合体〔C〕の含有割合は、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、3〜70質量%、3〜90質量%及び5〜80質量%である請求項1乃至4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕の形成に用いた上記重合性不飽和単量体がシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を含み、上記ゴム質重合体強化グラフト樹脂〔A〕に含まれる、上記シアン化ビニル化合物に由来する構造単位(gx)及び上記芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(gy)の割合が、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜40質量%及び60〜95質量%である請求項1乃至5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
- r1が10〜30質量%であり、r2が20〜40質量%であり、
上記重合体(C−1)、(C−2)及び(C−3)の含有割合が、これらの合計を100質量%とした場合に、それぞれ、5〜55質量%、20〜70質量%及び20〜70質量%である請求項1乃至6のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。 - 請求項1乃至7のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
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