JP2012204696A - 磁性材料用粉末の製造方法及び永久磁石 - Google Patents

磁性材料用粉末の製造方法及び永久磁石 Download PDF

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Abstract

【課題】保磁力が向上し製造工程が短縮された磁性材料用粉末の製造方法及び保磁力が向上した永久磁石を提供する。
【解決手段】磁性材料用粉末の製造方法は、磁性材料用粉末の原料及び前記原料に拡散させる拡散材料を反応炉内へ投入する原料投入工程と、前記反応炉内へ水素を供給すると共に前記反応炉内を加熱しつつ、前記原料及び前記拡散材料を撹拌する撹拌工程と、前記撹拌工程で撹拌された前記原料を前記反応炉内で水素化分解させて分解生成物を得る水素化分解工程と、前記反応炉内で前記分解生成物から水素を放出させ、前記分解生成物の水素濃度を低減し磁性材料粉末を得る脱水素再結合工程と、を含む。
【選択図】図3

Description

本発明は、磁性材料用粉末の製造方法及び永久磁石に関する。
磁性材料用粉末を製造する方法として、HDDR法(水素化分解・脱水素再結合法)が知られている。HDDR法とは、水素中で原料(出発合金)を加熱することにより、原料を水素化・分解(HD:Hydrogenation Decomposition)し、その後、脱水素・再結合(DR:Desorption Recombination)させることにより、結晶を微細化させかつ、結晶方位を揃え異方化させるプロセスである。HDDR反応は、水素を反応炉内に閉じ込めながら高温を保つことが要求される。また、HDDR反応は、水素化・分解において原料が水素を吸蔵し、また、脱水素・再結合において原料から水素が放出される。
磁石の磁気特性を表す指標としては、一般に、残留磁束密度(Br)及び保磁力(Hcj)が用いられる。HDDR法により製造された磁性材料用粉末は、さらに保磁力を向上する試みがなされている。
例えば、特許文献1には、HDDR法の脱水素・再結合において原料から水素が放出され、この水素を排気する排気工程後のRFeB系合金に、Dy等からなる拡散材料を混合して混合粉末とする混合工程と、その混合粉末を加熱してRFeB系合金の表面及び内部にDy等を拡散させる拡散熱処理工程とからなる異方性磁石粉末の製造方法が記載されている。
国際公開第2004/064085号 パンフレット
特許文献1に記載された異方性磁石粉末の製造方法は、異方性磁石粉末の保磁力を向上できるが、近年において、異方性磁石粉末はさらに保磁力の向上が求められている。また、異方性磁石粉末の製造方法は、コストの面からより簡易な工程が望まれており、製造工程の短縮が求められている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、保磁力が向上し製造工程が短縮された磁性材料用粉末の製造方法及び保磁力が向上した永久磁石を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために磁性材料粉末の製造方法は、磁性材料用粉末の原料及び前記原料に拡散させる拡散材料を反応炉内へ投入する原料投入工程と、前記反応炉内へ水素を供給すると共に前記反応炉内を加熱しつつ、前記原料及び前記拡散材料を撹拌する撹拌工程と、前記撹拌工程で撹拌された前記原料を前記反応炉内で水素化分解させて分解生成物を得る水素化分解工程と、前記反応炉内で前記分解生成物から水素を放出させ、前記分解生成物の水素濃度を低減し磁性材料粉末を得る脱水素再結合工程と、を含むことを特徴とする。
これにより、HDDR法で製造した磁性材料粉末に拡散材料を混合し、この混合粉末を拡散熱処理する工程が不要となり、製造工程が短縮される。その結果、磁性材料粉末の製造コストを低減することができる。また、HD工程よりも前に、磁性材料粉末の原料に拡散材料が混合されているので、水素吸蔵後の攪拌工程にて粉末となる原料が酸化されること無く拡散材料と混合される。その結果、酸化量が低減した磁性材料粉末表面に拡散材料が付着することで、その後の拡散工程で拡散材の原料への拡散がしやすくなり、拡散材料による保磁力向上の効果が発現しやすい。また、原料と拡散材料とが撹拌されながら加熱されるので、原料と拡散材料との分散が進み、拡散材料の偏りのおそれが低減される。
本発明の望ましい態様として、前記磁性材料粉末は、R−T−B系合金を含み、前記Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Td、Dy、Ho、Er、Tm、Luから選ばれる1種以上の元素であり、前記Tは、1種以上の遷移金属元素であって、少なくともFe又はFe及びCoのいずれかを含む元素であることが好ましい。これにより、所望の残留磁束密度(Br)及び保磁力(Hcj)を得ることができる。
本発明の望ましい態様として、前記拡散材料は、Dy、Tb、Pr、Ndから選ばれる少なくとも1種以上を含む材料であることが好ましい。これにより、磁性材料用粉末の保磁力を向上させることができる。
本発明の望ましい態様として、前記撹拌工程で前記原料が水素吸蔵する又は拡散材料が水素と反応することが好ましい。これにより、拡散材料は、原料に拡散しやすくなる。
本発明の望ましい態様として、前記反応炉内を加熱する温度が多段階で変化することが好ましい。これにより、原料の水素吸蔵工程で、原料同士が衝突し合って粉砕される作用に加え、拡散材料が原料へ衝突して原料を粉砕する。このように、この態様によれば、原料が粉砕されることが促進されるので、磁性材料用粉末の製造に要する時間を短縮することができる。
本発明の望ましい態様として、前記反応炉は、外容器と、前記外容器の内部に配置され、前記原料及び前記拡散材料を収容する内容器と、前記内容器内に収容される前記原料を撹拌する撹拌手段と、を含むことが好ましい。これにより、加熱と撹拌とを同時に行うことができる。
本発明の望ましい態様として、前記撹拌手段は、前記内容器を回転又は揺動させる内容器駆動手段、前記内容器の内部に振動を与える振動発生手段、又は前記外容器の内部に配置され前記内容器内の前記原料を撹拌する撹拌駆動手段のいずれかであることが好ましい。このように、原料及び拡散材料を撹拌するため、大量の原料から磁性材料粉末を製造する場合でも、原料及び拡散材料の温度制御が比較的容易になる。また、HDDR法を用いて磁性材料用の粉末を製造すること及び撹拌して均一な磁性材料粉末を製造することを両立できる。
上述した課題を解決し、目的を達成するために永久磁石は、希土類合金の原料合金及び拡散材料を反応炉内に投入し、前記反応炉内に水素ガスを供給しつつ前記反応炉内で前記原料合金及び前記拡散材料を撹拌して前記原料合金に水素を吸蔵させた後、前記反応炉内が水素雰囲気である状態を維持したまま前記反応炉内で水素化分解脱水素再結合法により製造される希土類合金粉末を成形して得られることを特徴とする。
これにより、原料合金の組織を均一に微細化させかつ拡散材料の磁性粉末への拡散も偏り無く均一にできる。その結果、これらの磁性粉末を用いて作製した永久磁石は、保磁力が向上する。その結果、残留磁束密度を十分維持しつつ保磁力が向上した永久磁石となる。
本発明は、保磁力が向上し製造工程が短縮された磁性材料用粉末の製造方法及び保磁力が向上した永久磁石を提供することができる。
図1は、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法の反応炉の構造を簡略に示す図である。 図2は、図1のII−II矢視図である。 図3は、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法を示す製造工程のフローチャートである。 図4は、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造工程のパターンを示す図である。 図5は、撹拌手段を備えた内容器の一例を示す図である。 図6−1は、撹拌手段を備えた内容器の一例を示す図である。 図6−2は、撹拌手段を備えた内容器の一例を示す図である。 図7は、撹拌手段の他の例を示す模式図である。 図8は、撹拌棒の変形例を示す説明図である。 図9は、反応炉の蓋を閉じた状態で、内容器の内部へ拡散材料を供給する手段の構成を示す説明図である。 図10は、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造工程のパターンを示す図である。 図11は、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造工程のパターンを示す図である。
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(実施形態1)
本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法は、いわゆる水素化分解・脱水素再結合法(HDDR法)によって希土類合金粉末を製造する硬磁性の磁性材料用粉末の製造方法である。ここで、希土類合金にはYを含む。水素化分解脱水素再結合法(HDDR法)とは、水素中で原料(出発合金)を加熱することにより、原料を水素化分解(HD:Hydrogenation Decomposition)し、その後、脱水素再結合(DR:Desorption Recombination)させることにより、結晶を微細化かつ、結晶方位を揃え異方化させるプロセス(HDDR反応)である。本実施形態では、HD工程とは原料を水素化分解する工程をいう。またDR工程は、HD工程後に脱水素再結合させる工程をいう。HDDR反応は、水素を反応炉内に閉じ込めながら高温を保つことが要求される。また、HDDR反応は、水素化・分解において原料が水素を吸蔵し、また、脱水素・再結合において原料から水素が放出される。
本実施形態で用いられる反応炉の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法の反応炉の構造を簡略に示す図である。図2は、図1のII−II矢視図である。図1及び図2に示すように、反応炉10は、外容器12と、内容器13と、内容器駆動装置(内容器駆動手段)14と、加熱器15と、気体導入口16及び気体排出口17とを含んでいる。反応炉10は、HDDR反応によって希土類合金粉末(特に、磁石用の合金粉末、硬磁性を発現する磁性材料用粉末)を製造する際に用いられる。また、反応炉10は、製造しようとする希土類合金粉末の原料を加熱する機能、炉内へ気体を供給する機能、炉内を真空引きする機能を有している。
外容器12は、外殻12aと、外殻12aの内部に配置される外殻12aと同形状かつ外殻12aよりも小さい内殻12bとで構成される二重構造の外容器本体12Aと、蓋12Bとで構成される。外容器本体12Aを構成する外殻12a、内殻12bは、筒状(本実施形態では円筒形状)に構成される容器である。外容器本体12Aには、複数の脚18が取り付けられており、これらの脚18によって反応炉10が支持される。
蓋12Bは、内部に空間Aを有する中空構造であり、空間Aが冷却媒体(本実施形態では水)Wの流通用の通路となる。蓋12Bは、例えば、蝶番によって外容器本体12Aの開口部に開閉自在に取り付けられ、外容器12は、蓋12Bにより外容器本体12Aと開閉可能に構成されている。蓋12Bを閉じると、外容器本体12Aと蓋12Bとで囲まれる空間Bが密封されるように構成される。
外殻12aは、外殻12a内に冷却媒体Wを供給するための本体側冷却媒体供給口21と、外殻12a内に供給された冷却媒体Wを排出するための本体側冷却媒体排出口22とを有する。本体側冷却媒体供給口21は、冷却媒体供給手段である冷却用ポンプ23の吐出口と接続されており、冷却用ポンプ23から供給された冷却媒体Wは、外殻12aと内殻12bとの間に形成される空間Cを流れる過程で外容器本体12Aを冷却して、本体側冷却媒体排出口22から排出される。
蓋12Bは、蓋12B内に冷却媒体Wを供給するための蓋側冷却媒体供給口24と、蓋12B内に供給された冷却媒体Wを排出するための蓋側冷却媒体排出口25とを有する。蓋側冷却媒体供給口24は、冷却用ポンプ23の吐出口と接続されており、冷却用ポンプ23から吐出された冷却媒体Wは蓋側冷却媒体供給口24から空間Aに供給され、蓋12Bの内部の空間Aを流れる過程で蓋12Bを冷却して、蓋側冷却媒体排出口25から排出される。
本実施形態において、外容器本体12A及び蓋12Bは、金属、例えば、ステンレス鋼で構成される。後述する水素吸蔵工程及びHDDR反応の工程において、反応炉10の外容器12の空間Bに水素ガス11が供給されると共に、外容器本体12Aの内部に配置される加熱器15によって空間Bの雰囲気温度が600℃から1000℃程度まで昇温するため、HDDR反応中において、外容器12は高温になる。上述したように、外容器12はステンレス鋼等の金属で構成されるので、外容器12が昇温すると、空間Bに存在する水素が外容器12を透過して外部に漏れてしまう。
本実施形態では、外容器12の外容器本体12A及び蓋12Bにそれぞれ空間A、Cが形成されているため、HDDR反応中に空間A、Cに供給される冷却媒体Wは、外容器本体12A及び蓋12Bを冷却する。このため、HDDR反応中における外容器12の昇温を抑制して、空間Bから外容器12を透過して外部へ漏れる水素の量を低減することができる。
また、外容器12の冷却手段としては、空間A、Cを形成して冷却媒体Wを通過させる方法に限定されるものではない。例えば、外容器12の外容器本体12A及び蓋12Bを2重構造とせず、1層のみとし、外容器本体12A及び蓋12Bに直接冷却媒体Wを噴射するようにしてもよい。このようにすれば、外容器12の構造を簡略化できる。
また、本実施形態では、冷却媒体Wとして水を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、外容器本体12A及び蓋12Bを冷却できるものであればよい。
内容器13は、外容器12の内部、すなわち、空間Bに配置される。内容器13は、筒状(本実施形態では円筒形状)に構成されており、原料合金S及び拡散材料Qを内容器13の内部に保持する筒状の容器である。内容器13はステンレス鋼などの金属材料で構成される。
内容器13は、その側壁13a、13bに第1開口26a及び第2開口26bを有する。内容器13の第1開口26a及び第2開口26bは対向して配置されている。第1開口26a及び第2開口26bを設けることにより、後述する水素吸蔵工程とHDDR反応のHD(水素化・分解)反応とにおいて水素が第1開口26aあるいは第2開口26bを通って内容器13内の原料合金Sへ確実に供給される。また、DR(脱水素・再結合)反応で原料合金Sから放出される水素が第1開口26aあるいは第2開口26bから内容器13の外部へ確実に放出される。
さらに、内容器13は、第1開口26a及び第2開口26bを設けることにより、内容器13の内部へ計測器具や各種の機能を有する器具を挿入し、配置したり、加熱器15を内容器13の内部へ配置したりすることもできる。なお、本実施形態において、第1開口26a及び第2開口26bの形状は、平面視が円形であるが、第1開口26a及び第2開口26bの形状は、これに限定されるものではない。
本実施形態において、内容器13の側壁13aは、内容器側部13cに対して取り外しできるように構成されることが好ましい。これによって、原料合金Sを内容器13の内部へ投入しやすくなり、作業性が向上する。なお、側壁13aは内容器側部13cに固定した場合でも、第1開口26a又は第2開口26bから原料合金S及び拡散材料Qを投入することができる。
内容器13は、第1開口26a及び第2開口26bを円形とすると共に、第1開口26a及び第2開口26bが内容器13の両端面と交差(本実施形態では直交)する軸(内容器回転軸)Zrを含み、かつ内容器回転軸Zr上に第1開口26a及び第2開口26bの中心を配置することが好ましい。このようにすれば、原料合金Sを保持する容積を内容器13内に確保しやすくなるので、大量の希土類合金粉末を製造するのに適する。
内容器13は、内容器回転軸Zrを中心として回転又は揺動できるように、外容器本体12Aの内部に配置される。外容器12を構成する外容器本体12Aの内殻12bには、複数(本実施形態では4本)の内容器支持部材31が設けられる。内容器支持部材31は柱状の部材であって、一端部が内殻12bに取り付けられる。内容器支持部材31は、内容器回転軸Zrと平行な方向に、内容器13に2本ずつ配置される。すなわち、内容器13は、内容器回転軸Zrと平行な方向に、4本の内容器支持部材31が各々対向して配置され、2対の内容器支持部材31によって挟まれる。
内容器回転軸Zrと平行な直線上に配置される2本の内容器支持部材31は、それぞれの他端部、すなわち、内殻12bへの取付側端部とは反対側の端部で、内容器回転軸Zrと平行な軸を中心として支持ローラー32が回転できるように両持ちで支持する。支持ローラー32は、側部32aが内容器13の側部と接触している。これによって、内容器13は、2本の支持ローラー32及び内容器支持部材31を介して外容器12の外容器本体12Aに支持されている。
内容器13は、内容器駆動装置14によって内容器回転軸Zrを中心に回転又は揺動させられる。内容器駆動装置14は、内容器13内に収容される原料合金Sを粉砕する容器駆動手段として機能する。内容器駆動装置14は、支持体14aと、動力伝達部材である回転体14bと、動力発生手段である電動機14cとで構成される。電動機14cは、例えば制御装置によって制御される。回転体14bは、電動機14cからの動力を歯車やチェーン等の動力伝達機構を介して伝達されて、内容器回転軸Zrと平行な軸を中心として回転する。回転体14bの外周部は内容器13の内容器側部13cの外周部と接しているので、回転体14bが回転すると、内容器13は回転体14bが回転する方向とは反対方向に回転する。内容器13は、回転のみならず、内容器13の回転角が360度以内で回転方向を切り替えるように電動機14cを制御することにより、内容器13を揺動させてもよい。
上述のように、反応炉10は、内容器13を外容器12の内部で回転又は揺動させることができる。反応炉10は、後述する水素吸蔵工程やHDDR反応のHD反応中に、内容器駆動装置14を用いて内容器13を回転又は揺動させることによって内容器13内の原料合金S及び拡散材料Qを撹拌し、原料合金S及び拡散材料Qを粉砕することができる。
加熱器15は、内容器13と外容器本体12Aの内殻12bとの間に配置される。加熱器15としては、例えば、電気ヒーターなどが用いられる。
反応炉10は、外容器12の内殻12bの内部に気体を導入する気体導入口16及び外容器12の内部の気体を外容器12の外部へ排出する気体排出口17を有する。気体導入口16を介して空間Bへ供給された気体は空間Bを通過して気体排出口17から外部へ排出される。気体導入口16を介して空間Bに供給される気体は、例えば水素ガス11、Arガスなどの不活性ガスが用いられる。水素ガス11は、後述する水素吸蔵、HDDR反応で用いられ、Arガスは、HDDR反応後における原料合金Sを冷却する際に用いられる。
このように、反応炉10は、反応炉10内を水素雰囲気とした状態で内容器13を回転又は揺動させることにより、内容器13内に投入された原料合金S及び拡散材料Qを撹拌し、粉砕することができる。また、反応炉10は、同一の反応炉10内で水素雰囲気を維持したままの状態で後述のHDDR反応のHD反応を行うことができる。反応炉10は反応炉10内を水素雰囲気として原料合金Sを粉砕しているため、原料合金Sの表面積を増大させると共に、原料合金Sの表面が酸化されるのを防止することができる。反応炉10は、この水素雰囲気の状態のまま原料合金Sを反応炉10内でHDDR反応させているため、原料合金S全体を均一にHD反応させることができる。このため、原料合金Sは酸化されることなく均一に微細化することができる。よって、反応炉10は、HDDR反応によって原料合金Sから希土類合金粉末(特に、磁石用の合金粉末、硬磁性を発現する磁性材料用粉末)を製造する際に好適に用いられる。なお、本実施形態では、反応炉10を用いてHDDR反応により希土類合金粉末を製造するようにしているが、本実施形態はこれに限定されるものではなく、反応炉10以外の炉を用いて本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法を実現することを除外するものではない。
次に、図1から図3を参照し、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法について説明する。図3は、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法は、R14Bの希土類合金を鋳造して原料合金Sを準備し、また拡散材料Qを鋳造して準備する合金準備工程(ステップS11)と、得られた原料合金Sと、拡散材料Qとを反応炉10内に投入し、反応炉10内に水素ガス11を供給し、原料合金に水素を吸蔵させる水素吸蔵工程(ステップS12)と、反応炉10内の温度をさらに昇温させ、反応炉10内に水素ガス11を供給し、拡散材料Qに水素を反応させる水素反応工程(ステップS13)と、反応炉10内で原料合金Sを水素化分解させて分解生成物を得る水素化分解(以下、HD工程という)工程(ステップS14)と、反応炉10内の温度を昇温させ、反応炉10内で分解生成物から水素を放出させ、分解生成物の水素濃度を低減し磁性材料粉末を得る第1の脱水素再結合(以下、第1のDR工程という)工程(ステップS15)と、第2の脱水素再結合(以下、第2のDR工程という)工程(ステップS16)と、希土類合金粉末を室温まで冷却する冷却工程(ステップS17)と、を含み、水素吸蔵工程、水素反応工程、HD工程のいずれか1以上の工程で原料合金Sを粉砕するものである。
原料合金Sは、R14BなどのR−T−B系合金を用いることができる。R−T−B系合金の組成は、Yを含む希土類元素から選ばれる1種のRとすることができる。また、前記Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Td、Dy、Ho、Er、Tm、Luから選ばれる1種以上の元素であることが好ましい。このうち、製造コスト及び磁気特性の観点から、RはNdを含むことが好ましい。前記Tは、1種以上の遷移金属元素であって、Feを少なくとも含む元素である。また、前記Tは、1種以上の遷移金属元素であって、Fe及びCoを少なくとも含む元素でもよい。前記Tは、希土類元素以外、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、WなどのFe及びCo以外の遷移元素の群から選ばれる少なくとも1種の元素をさらに含んでいてもよい。また、R−T−B系合金は、Bを含む。希土類合金粉末は、R−T−B系合金の組成が、R:25質量%以上35質量%以下、T:65.6質量%以上72質量%以下、B:1質量%以上1.4質量%以下であることが好ましい。これにより、磁気特性を向上することができる。
拡散材料Qは、Dy、Tb、Pr、Ndから選ばれる少なくとも1種以上を含む材料を用いることができる。原料合金Sの質量で100としたときに、拡散材料Qは0.1質量%以上5質量%以下を反応炉10内へ投入することが好ましい。なお、拡散材料Qは、予め水素を吸蔵させた水素化物としておいてもよい。
合金準備工程(ステップS11)は、R14Bを鋳造して原料合金Sを得る工程である。R14Bを、通常の鋳造方法、例えばストリップキャスト法、ブックモールド法、又は遠心鋳造法によって鋳造して原料合金Sを得ることができる。原料合金Sの大きさは特に限定されるものでないが、原料合金Sの表面の酸化の影響を最小限にするという観点から、原料合金Sの大きさは、例えば30mm以上500mm以下の大きさに鋳造されたものを用いるのが好ましい。原料合金Sの大きさの測定方法は、特に限定されるものでない。原料合金Sの大きさは各々形状が異なるため、多量の原料合金Sを同じ方法で測定して統計的に原料合金Sの大きさを決めてもよい。また、色々な形状の原料合金Sを球体に換算して原料合金Sの大きさを求めてもよい。また、原料合金Sは、原料金属又は原料化合物や製造工程に由来する不可避な不純物を含んでいてもよい。原料合金Sを生成した後、均質化熱処理を行ってもよい。均質化熱処理は、原料合金Sを加熱して原料合金を均質化させる処理である。均質化熱処理は、真空又はArガスやNガスなどの不活性ガス雰囲気中で、原料合金Sを温度1000℃以上1200℃以下で5時間から100時間保持する。これにより、原料合金Sは均質化される。
合金準備工程(ステップS11)では、さらに、鋳造などにより製造された拡散材料Qを用いる。拡散材料Qの平均粒径は、例えば、1mm以上50mm以下が好ましい。この粒径であれば、後述する原料合金の粉砕が促進される。次に、磁性材料用粉末の製造方法は、原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)に移行する。原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)以降は、図4も用いて参照する。なお、拡散材料Qの大きさの測定方法は、特に限定されるものでない。拡散材料Qの大きさは各々形状が異なるため、多量の拡散材料Qを同じ方法で測定して統計的に拡散材料Qの大きさを決めてもよい。また、色々な形状の拡散材料Qを球体に換算して原料合金Sの大きさを求めてもよい。
図4は、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造工程のパターンを示す図である。図4は、横軸に時間、縦軸に反応炉10内の熱処理温度を示している。また、図4は、磁性材料用粉末の製造方法の工程として、時系列に原料合金の水素吸蔵工程A1、拡散材料の水素反応工程B1、HD工程C1、DR工程D1、DR工程D2を含んでいる。
図3に示す原料合金Sの水素吸蔵工程(ステップS12)は、原料合金S及び拡散材料Qを反応炉10内に投入した後、反応炉10内に水素ガス11を供給し、原料合金Sに水素を吸蔵させる工程である。反応炉10内に水素ガス11を供給し、図4に示すように、原料合金の水素吸蔵工程A1において、反応炉10内を加熱し、昇温させ温度Tとする。原料合金Sは、反応炉10内の水素分圧をPとした水素雰囲気中に、温度Tで所定の時間tの間保持され、原料合金Sは水素を吸蔵する。水素分圧Pとしては、100kPa以上300kPa以下であることが好ましい。温度Tは100℃以上200℃以下であることが好ましい。時間tは、0.5時間以上2時間以下であることが好ましい。反応炉10は、水素分圧P、温度T、時間tを上記範囲内とすることで、原料合金Sの結晶格子中に水素を吸蔵させることができる。
水素分圧Pが100kPa以下であると、原料合金Sの結晶格子中に水素を吸蔵しにくくなるからであり、水素分圧Pが300kPa以上であると、原料合金Sの結晶格子中に水素が吸蔵され、HD反応時に組織を粗大化するおそれがある。温度Tが100℃以上200℃以下であると、原料合金Sの結晶格子中に水素を吸蔵しやすくなり、原料合金Sが脆化しやすくなるからである。時間tが0.5時間未満であると、原料合金Sの結晶格子中に水素を吸蔵させるのに十分では無く時間tが2時間以上になるとHD反応時に組織が粗大化するおそれがある。
上述のように、反応炉10は、内容器13が外容器12の内部で回転又は揺動することができる。反応炉10は、原料合金Sの水素吸蔵工程(ステップS12)中に、内容器駆動装置14によって内容器13を回転又は揺動させることによって内容器13内の原料合金S及び拡散材料Qを撹拌することができる。これにより、図4に示すように、原料合金の水素吸蔵工程A1において、原料合金Sは、温度Tにおいて水素を吸蔵し、脆化する。拡散材料Qは、温度Tにおいて脆化しない。その結果、温度Tでの拡散材料Qの硬さが原料合金Sの硬さより硬い状態で撹拌される。このため、原料合金S同士が衝突し合って粉砕される作用に加え、拡散材料Qが原料合金Sへ衝突して原料合金Sを粉砕する。原料合金Sが粉砕されることが促進され、磁性材料用粉末の製造に要する時間を短縮することができる。なお、内容器13が外容器12の内部で回転又は揺動することによる撹拌は、連続でもよく、間欠でもよい。
また、反応炉10内の空間Bは水素雰囲気下であるため、原料合金Sを粉砕しても原料合金Sの新生面は酸化されることなく原料合金Sの表面積を増大させることができ、内容器13内に投入された原料合金S全体が水素をまんべんなく吸蔵して、不均一な水素吸蔵状態を低減することができる。反応炉10は、所定時間の原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)を行うと、次に拡散材料の水素反応工程(ステップS13)を行う。
図3に示す拡散材料の水素反応工程(ステップS13)は、反応炉10内に水素ガス11を供給した状態で、原料合金S及び拡散材料Qをさらに加熱し、拡散材料Qに水素を反応させる工程である。図4に示すように、拡散材料の水素反応工程B1において、反応炉10内を加熱し、昇温させ温度Tとする。拡散材料Qは、反応炉10内の水素分圧をPとした水素雰囲気中に、温度Tで所定の時間tの間保持され、拡散材料Qは水素と反応する。水素分圧Pとしては、100kPa以上300kPa以下であることが好ましい。温度Tは300℃以上500℃以下であることが好ましい。時間tは、0.5時間以上3時間以下であることが好ましい。反応炉10は、水素分圧P、温度T、時間tを上記範囲内とすることで、拡散材料Qに水素を反応させることができる。
水素分圧Pが100kPa以下であると、拡散材料Qと水素とが反応しにくくなるからであり、水素分圧Pが300kPa以上であると、原料合金Sの結晶格子中に水素が吸蔵され、HD反応時に組織が粗大化するおそれがある。温度Tが300℃以上500℃以下であると、拡散材料Qと水素とが反応しやすくなり、脆化し細かい粉体になるからである。
上述のように、反応炉10は、内容器13が外容器12の内部で回転又は揺動することができる。反応炉10は、拡散材料の水素反応工程(ステップS13)中に、内容器駆動装置14によって内容器13を回転又は揺動させることによって内容器13内の原料合金S及び拡散材料Qを撹拌することができる。これにより、図4に示すように、拡散材料の水素反応工程B1において、拡散材料Qは温度Tにおいて水素と反応する。その結果、温度Tでの拡散材料Qは水素化されると共に原料合金Sとの混合が同時に行われるので、拡散材料QはR−T−B系合金と均一に混合し、拡散材料Qの偏りが低減される。なお、内容器13が外容器12の内部で回転又は揺動することによる撹拌は、連続でもよく、間欠でもよい。反応炉10は、その後、図3に示すHD工程(ステップS14)に移行する。
上述したように、反応炉内へ水素を供給すると共に前記反応炉内を加熱しつつ、原料合金S及び拡散材料Qを撹拌する撹拌工程は、原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)及び拡散材料の水素反応工程(ステップS13)で行われている。なお、この撹拌は、後述のHD工程(ステップS14)においても行うようにしてもよい。本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法は、HD工程(ステップS14)においても連続して反応炉10内の水素雰囲気下で内容器13を回転又は揺動させて内容器13内で原料合金Sを粉砕するので、原料合金Sの新生面は酸化されることなく原料合金S全体は水素をさらに均一に吸蔵して、不均一な水素吸蔵状態をさらに低減することができる。本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法は、HD工程(ステップS14)と同時に反応炉10内の水素雰囲気下で内容器13を回転又は揺動させて内容器13内で原料合金Sを粉砕するので、原料合金Sの新生面は酸化されるおそれが低減される。なお、内容器13が外容器12の内部で回転又は揺動することによる撹拌は、連続でもよく、間欠でもよい。
図3に示すHD工程(ステップS14)は、水素を吸蔵させた原料合金S及び拡散材料Qを、図4に示すHD工程C1のように反応炉10内の水素分圧をPとした水素雰囲気中、温度Tよりも高い温度Tで所定の時間tの間保持する工程である。このようにすることで、原料合金Sは水素を吸蔵しているため、原料合金Sは、自身の異なる相間における水素吸蔵量の相違により自己崩壊的な粉砕を生じ、水素化分解され、分解生成物が生成される。分解生成物は、RHなどの水素化物、α−Fe及びFeBなどの鉄化合物を含んでいる。この段階における分解生成物の組織は、100nmオーダーの微細な組織を形成している。
図4に示すHD工程C1において、反応炉10内の雰囲気の水素分圧Pは10kPa以上100kPa以下であることが好ましい。温度Tは600℃以上850℃以下であることが好ましい。反応炉10内で水素分圧P、温度Tを上記条件として水素化分解を行うことによって、希土類合金粉末を得ることができる。
水素分圧Pが10kPa未満であると、水素化分解が十分に進行しない傾向があり、100kPaを超えると異方性の希土類合金粉末が得難くなる傾向がある。温度Tが600℃以上850℃以下であると、分解生成物が生成される率が向上する。時間tを0.5時間以上100時間以下とすると分解生成物の生成ができると共に、分解生成物の生成が不十分なまま脱水素再結合するおそれを低減できる。時間tを100時間以下とすることで、製造に要する時間が長時間となることを避けることができる。
本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法は、原料合金Sを水素化分解し、分解生成物を得た後、第1のDR工程(ステップS15)に移行する。反応炉10は、反応炉10内の温度を温度Tから温度Tよりも高い温度Tに昇温させることにより、分解生成物の温度を昇温させる。温度Tは、700℃以上950℃以下であることが好ましい。なお、温度Tよりも高い温度Tに昇温させる時間は特に限定されるものではない。本実施形態において、前記昇温の時間は、例えば1分以上10分以下である。反応炉10内の温度を温度Tから温度Tに昇温した後、空間Bへの水素ガス11の供給を停止する。
DR工程は、得られた分解生成物から水素を放出させ、分解生成物の水素濃度を低減させる工程である。本実施形態では、DR工程は、第1のDR工程(ステップS15)と第2のDR工程(ステップS16)とを含む。本実施形態では、DR工程は、第1のDR工程(ステップS15)と第2のDR工程(ステップS16)との2つの工程からなるが、本発明はこれに限定されるものではなく、DR工程は1回のみでもよく、3回以上行うようにしてもよい。
第1のDR工程(ステップS15)は、図4に示すDR工程D1において、温度Tで、所定の時間tの間、反応炉10内の水素分圧を減圧してPとし、分解生成物から水素を放出させ、分解生成物の水素濃度を低減させる工程である。この工程によって、HD工程(ステップS14)で得られた分解生成物のマトリックス中に希土類合金の核が生成すると考えられる。このDR反応において原料合金Sから放出された水素ガス11、すなわち、反応炉10の外容器12の空間Bに存在する水素ガス11は、外容器本体12Aに設けられた気体排出口17から外部へ排出される。
分解生成物からの水素の放出速度は、水素を放出させる前の分解生成物全体の質量を基準として、0.4質量%/分以上13質量%/分以下であることが好ましい。これによって、希土類合金の核をより均一に生成させることができる。
分解生成物からの水素の放出速度は、雰囲気中の水素分圧の降下速度を制御することによって調整することができる。すなわち、水素分圧の降下速度を大きくすることで、分解生成物からの水素の放出速度を大きくすることができる。水素分圧の降下速度は、例えばArガスを導入したり、減圧したりすることによって調整することができる。第1のDR工程(ステップS15)における水素分圧の降下速度は、2kPa/分以上10kPa/分以下とすることが好ましく、4kPa/分程度が最も好ましい。
図4に示すDR工程D1において、反応炉10内の雰囲気の水素分圧Pは6kPa程度であることが好ましい。
図4に示すDR工程D1において、分解生成物の温度Tは、温度Tよりも高いことが好ましい。例えば、温度Tは、700℃以上950℃以下であることが好ましく、800℃以上900℃以下であることがより好ましく、850℃前後がさらに好ましい。DR工程D1における分解生成物の温度Tを、温度Tよりも高くすることによって、分解生成物から水素が放出しやすくなり、希土類合金の核をより均一に生成させることができる。またDR工程において水素の放出とともに拡散材料が再結合した希土類合金へ均一に混合しながら拡散されるため、拡散のばらつきは低減される。
また、DR工程(ステップS15)において、拡散材料Qは、原料合金Sの表面又は内部へ拡散する。例えば、拡散材料QがDyであれば、上述した拡散材料の水素反応工程(ステップS13)によりDyHとなっている。DR工程(ステップS15)において、DyHの水素が放出され、上述した分解生成物の再結合と共に拡散する。また、DR工程(ステップS15)においても、反応炉10内の水素雰囲気下で内容器13を回転又は揺動させ、拡散材料Qが原料合金Sへ均一に混合するようにすれば、拡散材のばらつきは低減される。
温度Tが700℃以上であると、分解生成物からの水素の放出速度を十分に大きくすることができるため、希土類合金の核生成が均一になる傾向がある。一方、温度Tが950℃以下であると、分解生成物からの水素の放出速度を適正に保つことができるので、分解生成物の水素濃度ηを制御できる。
図4に示すDR工程D1において、時間tは、例えば0.1時間以上0.5時間以下であるが、時間tは分解生成物からの水素の放出速度に応じて適宜調整する。反応炉10内の温度を温度Tとして時間tの間、脱水素再結合させた後、第2のDR工程(ステップS16)に移行する。
第2のDR工程(ステップS16)は、図4に示すDR工程D2において、温度Tで、所定の時間tの間、反応炉10内の水素分圧をさらに減圧してPとし、第1のDR工程(ステップS15)よりも分解生成物からの水素の放出速度を小さくして分解生成物から水素を放出させ、分解生成物の水素濃度をさらに低減し磁性材料粉末を得る工程である。このDR反応において分解生成物から放出された水素ガス11も、上記と同様に、外容器本体12Aに設けられた気体排出口17から外部へ排出される。
第2のDR工程(ステップS16)の温度は、第1のDR工程(ステップS15)における温度Tと同じにすることが好ましい。これによって、分解生成物からの水素の放出を円滑に進行させることができる。
第2のDR工程(ステップS16)の時間tとしては、例えば0.3時間以上5時間以下であるが、時間tは分解生成物からの水素の放出速度に応じて適宜調整する。
また、第2のDR工程(ステップS16)における水素分圧の降下速度は、0.01kPa/分以上0.2kPa/分以下とすることが好ましく、0.1kPa/分程度とすることが最も好ましい。第1のDR工程(ステップS15)における水素分圧の降下速度を第2のDR工程(ステップS16)の水素分圧の降下速度よりも大きくすることで、第1のDR工程(ステップS15)における分解生成物からの水素放出速度を第2のDR工程(ステップS16)における分解生成物からの水素放出速度よりも大きくすることができる。これによって、希土類合金の核生成がより均一になると考えられる。
第2のDR工程(ステップS16)における反応炉10内の雰囲気の水素分圧Pは0kPa以上1kPa以下とする。
反応炉10内の温度を温度Tとして時間tの間、脱水素再結合させた後、冷却工程(ステップS17)に移行する。
冷却工程(ステップS17)は、空間Bへ分解生成物を冷却する冷却用の不活性ガスを供給して、分解生成物をHDDR反応で得られた希土類合金粉末とし、室温まで冷却する工程である。反応炉10内の温度を室温まで冷却した後、前記不活性ガスの供給を停止し、反応炉10の蓋12Bを開き、内容器13から希土類合金粉末を取り出す。取り出した希土類合金粉末は、成形後着磁することにより磁石となる。前記不活性ガスとしては、例えば、Arガス、Nガスなどが用いられる。
以上のように、本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は、反応炉10を用いて希土類合金である原料合金SからHDDR反応により希土類合金粉末を製造することに適している。本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は、磁性材料用粉末の原料である原料合金S及び前記原料合金Sに拡散させる拡散材料Qを反応炉10内へ投入する原料投入工程と、前記反応炉10内へ水素を供給すると共に前記反応炉10内を加熱しつつ、前記原料合金S及び前記拡散材料Qを撹拌する撹拌工程と、前記撹拌工程で撹拌された前記原料合金Sを前記反応炉10内で水素化分解させて分解生成物を得る水素化分解工程と、前記反応炉10内で前記分解生成物から水素を放出させ、前記分解生成物の水素濃度を低減し磁性材料粉末を得る脱水素再結合工程と、を含む。
従来の磁性材料用粉末の製造方法では、HDDR法によりできた希土類合金粉末に拡散材料を混合し、この混合粉末を拡散熱処理する工程が必要であった。これに対して、本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法では、HDDR法によりできた希土類合金粉末に拡散材料を混合し、この混合粉末を拡散熱処理する工程が不要となり、製造工程が短縮される。その結果、希土類合金粉末の製造コストを低減することができる。従来の拡散材を用いた磁性材料用粉末の製造方法は、HDDR法によりできた希土類合金粉末に拡散材料を混合していたので、低酸素雰囲気で扱わなければ希土類合金粉末及び拡散材料が酸化されるおそれがある。これに対して、本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は、HD工程よりも前に、希土類合金粉末の原料合金に拡散材料が混合されているので、水素雰囲気中で撹拌され原料合金の酸化のおそれが低減される。このため、拡散材料が原料合金へ拡散しやすい。その結果、希土類合金粉末が酸化するおそれが低減し、拡散材料による保磁力向上の効果が発現しやすい。
また、本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は、原料合金と拡散材料とが撹拌されながら加熱されるので、原料合金と拡散材料との分散が進み、原料合金に対する拡散材料の分布の偏りが低減される。このため、本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法で製造された希土類合金粉末は、振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁化−磁場曲線を測定して磁気特性を求めると磁性材料用粉末のどこをサンプリングしても特性ばらつきがない。
また、反応炉10は、反応炉10内を水素雰囲気とした状態で原料合金Sを予め粉砕しているため、原料合金Sの表面積を増大させつつ原料合金Sの表面が酸化されるのを防止することができる。この反応炉10内を水素雰囲気とした状態を維持したまま反応炉10内でHDDR反応のHD反応を行うため、反応炉10内で原料合金Sはその表面が酸化されることなく原料合金S全体にHD反応を均一に進行させることができる。このため、原料合金Sは酸化されることなく均一に微細化することができるため、磁気特性に優れた希土類合金粉末を製造することができる。
希土類合金粉末である前記磁性材料粉末は、R−T−B系合金を含み、前記Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Td、Dy、Ho、Er、Tm、Luから選ばれる1種以上の元素であり、前記Tは、1種以上の遷移金属元素であって、少なくともFe又はFe及びCoのいずれかを含む元素であることが好ましい。これにより、所望の残留磁束密度(Br)及び保磁力(Hcj)を得ることができる。
拡散材料は、Dy、Tb、Pr、Ndから選ばれる少なくとも1種以上を含む材料であることが好ましい。これにより、原料合金の保磁力を向上させることができる。拡散材料は、水素と反応できることが好ましい。例えば、Dyは、水素と反応して、DyHとなることができる。また、Tbは、水素と反応して、TbHとなることができる。これにより、拡散材料は脆化され、粉砕しやすくなる。拡散材料は、水素化物となると脆化し微粉となりやすくなる。このため、微粉になると、拡散材料と希土類合金粉末との分散性が向上し拡散の効果が向上する。
本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は、前記反応炉内を加熱する温度が多段階で変化することが好ましい。撹拌工程は、原料合金の水素吸蔵工程及び拡散材料の水素反応工程で行われ、温度が多段階で変化する。これにより、原料合金の水素吸蔵工程で、原料合金S同士が衝突し合って粉砕される作用に加え、拡散材料Qが原料合金Sへ衝突し、原料合金Sを粉砕する。原料合金が粉砕されることが促進されるので、磁性材料用粉末の製造に要する時間を短縮することができる。
本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は、撹拌工程で前記原料合金が水素吸蔵するまで前記反応炉内を加熱する熱処理を行い、前記熱処理温度での前記拡散材料の硬さが前記原料合金の硬さより硬いことが好ましい。拡散材料の硬さが原料合金の硬さより硬いことから、拡散材料が原料合金へ衝突し、原料合金を粉砕する。その結果、原料合金が粉砕されることが促進されるので、磁性材料用粉末の製造に要する時間を短縮することができる。
本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は反応炉を用い、前記反応炉は、外容器と、前記外容器の内部に配置され、前記原料合金及び前記拡散材料を収容する内容器と、前記内容器内に収容される前記原料合金を撹拌する撹拌手段と、を含むことが好ましい。これにより、熱処理と撹拌とを同時に行うことができる。
また、本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は、内容器を回転又は揺動させ、内容器内の原料合金は撹拌され、粉砕されているので、原料合金の温度分布を均一に保つこともでき、原料合金の水素吸蔵、HD反応を原料合金全体に均一に反応させることができる。このため、大量の原料合金から希土類合金粉末を製造する場合でも、原料の撹拌により原料の温度制御が比較的容易になる。よって、本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は、HDDR法を用いて磁性材料用の粉末を製造すること、特に高品質の希土類合金粉末を安定して大量に製造することもできる。
本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法によって得られる希土類合金粉末は、原料合金を均一に微細化することができるため、希土類焼結磁石用及び希土類ボンド磁石用の合金粉末として好適に用いることができる。すなわち、上記製造方法によって得られる希土類合金粉末を用いて磁石を作製すれば、保磁力や残留磁束密度などの磁気特性に優れる磁石を得ることができる。
この希土類合金粉末は、成形することで永久磁石の原料として好適に用いられる。また、希土類合金粉末は、磁気的な異方性を有する磁石粉末であることが好ましい。これによって、さらに磁気特性に優れる異方性磁石の原料として好適に用いることができる。
(変形例)
原料合金S及び拡散材料Qを撹拌する撹拌手段は、内容器13を回転又は揺動させる手段に限定されるものではなく、以下の変形例において例示するように撹拌することができるものであればよい。
撹拌手段は、例えば、内容器13の内部に振動を与える超音波発生装置(振動発生手段)であってもよい。前記超音波発生装置は、図1に示す外容器本体12Aの内殻12bの内部に設けられ、内容器13の内部に振動を与える。内容器13に超音波を与え、内容器13内の原料合金Sを振動させることで、原料合金Sを粉砕することができる。これにより、内容器13の原料合金S全体に均等かつ同時に振動を与えることができるため、効率良く原料合金Sを粉砕し、原料合金Sと拡散材料Qとを撹拌することができる。
図5、図6−1、図6−2は、撹拌手段を備えた内容器の一例を示す図である。図5に示す内容器13bは、撹拌手段として、内容器13bの内壁20iwbから突出する部材(内容器突起部)26を有する。この内容器突起部26により、内容器13bが回転又は揺動する過程で、内容器13b内に保持された原料合金S及び拡散材料Qを撹拌する。これによって、より原料合金S及び拡散材料Qが撹拌され、かつ原料合金Sが粉砕されて微細化されるので、原料合金Sの外側のみならず内部まで均一に反応が進行して、磁性材料用粉末の品質が向上する。また、内容器突起部26により、原料合金Sの塊を粉砕することもできる。さらに、内容器突起部26により、内容器13bの伝熱面積が大きくなるので、内容器13bから原料合金S、あるいは原料合金Sから内容器13bへ効率的に熱を伝えることもできる。
図6−1、図6−2に示す内容器13c、13dは、内容器回転軸Zrと直交する断面の内形状を多角形(この例では6角形)として、撹拌手段としている。このようにすると、多角形の角部によって原料が粉砕され、撹拌される効果により、内容器回転軸Zrと直交する断面の内形状が円形である内容器13と比較して、より原料が撹拌され、かつ微細化されるので、より原料の内部まで均一に反応が進行して、磁性材料用粉末の品質が向上する。
図6−2に示す内容器13dは、内容器回転軸Zrと直交する断面の外形状も、内形状と相似形状の多角形としたものである。この場合、内容器13dは、図1に示すように、2本の支持ローラー32及び内容器支持部材31を介して外容器12の外容器本体12Aに支持されるため、内容器13dの一部に、外形状が円形の支持部13dhを設けることにより、内容器13dを滑らかに回転又は揺動させることができる。
図7は、撹拌手段の他の例を示す模式図である。図7に示す撹拌手段は、内容器13の両端面にそれぞれ設けられる2つの開口のうち少なくとも1つの開口(この例では、第2開口23B)から、内容器13の内部へ挿入される部材(撹拌棒)40である。この撹拌棒40を、第2開口23Bから回転又は揺動している内容器13の内部へ挿入する。このとき、撹拌棒40は、内容器回転軸Zrと交差して内容器13の内部へ挿入される。そして、内容器13に保持されている原料合金S及び拡散材料Qに接触させて原料合金S及び拡散材料Qを撹拌する。原料合金Sを撹拌する際には、撹拌棒40を振動させて、撹拌を促進させてもよい。また、撹拌棒40を内容器回転軸Zrと平行な方向に往復させてもよい。このようにすれば、内容器回転軸Zrと平行な方向の全体にわたって原料合金S及び拡散材料Qを撹拌できるので、原料合金Sをより均一に撹拌して、より均一な品質の磁性材料用粉末を製造できる。
図8は、撹拌棒の変形例を示す説明図である。この撹拌棒40aは、第1腕41と第2腕42とを、揺動中心軸となるピン43で揺動できるように連結したリンク機構で構成される。そして、原料合金Sを撹拌する部分(撹拌用具47)が原料合金Sに接するように動くことができるようになっている。第1腕41には、第1腕41と交差するように、かつ前記揺動中心軸と直交するように入力レバー44が取り付けられ、この入力レバー44に連結棒45が揺動できるように連結される。このような構造により、連結棒45を第2腕42と平行な方向に移動させると、第1腕41が前記揺動中心軸を中心として揺動する。すなわち、第1腕41が可動部となる。第1腕41の先端部、すなわち、前記揺動中心軸とは反対側の端部には、撹拌用具47が取り付けられている。
撹拌棒40aを使用する際には、内容器13の両端面にそれぞれ設けられる2つの開口のうち少なくとも1つの開口(例えば、第2開口23B)から、連結棒45と原料合金S及び拡散材料Qとの間に第2腕42が存在する状態で、撹拌棒40aを挿入する。そして、原料合金S及び拡散材料Qを撹拌する際には、内容器13が回転又は揺動しているときに、連結棒45を第2腕42から第1腕41に向かう方向に押し込む。すると、第1腕41は、ピン43の位置で折れ曲がり、撹拌用具47が原料合金S及び拡散材料Qに向かって移動する。撹拌用具47が原料合金S及び拡散材料Qと接触したら、連結棒45をその位置で固定して、原料合金S及び拡散材料Qを撹拌する。原料合金S及び拡散材料Qの撹拌を終了する場合、連結棒45を第1腕41から第2腕42へ向かう方向に引き出す。すると、第1腕41は、ピン43の位置を中心として原料合金Sから離れるように回転し、その結果、撹拌用具47が原料合金Sから離れる。これによって、原料合金S及び拡散材料Qの撹拌が終了する。
この撹拌棒40aは、内容器13の内部に挿入する際に、撹拌棒40aを内容器回転軸Zrと交差させる必要はない。図7に示す例のように、撹拌棒40を内容器回転軸Zrと交差させると、図1に示す外容器本体12Aの内径にある程度の余裕がないと撹拌棒40を内容器13の内部に挿入できない。しかし、図8に示す撹拌棒40aは、撹拌棒40aを内容器回転軸Zrと交差させる必要はないので、図1に示す外容器本体12Aの内径に余裕がない場合であっても、撹拌棒40aを内容器13の内部に挿入して、原料合金Sを撹拌できる。なお、撹拌棒40aに取り付けられる撹拌用具47を交換可能に構成して、撹拌用具47の代わりに反応中の原料合金Sを採集するための治具や各種のセンサ類等を取り付けてもよい。このようにすれば、HDDR反応の進行具合を確認したり、反応雰囲気中の温度の他にも様々な物理量を計測したりすることができる。例えば、温度センサを撹拌用具47の代わりに撹拌棒40aへ取り付け、温度センサを原料合金S及び拡散材料Qに接触させることにより、原料合金Sの温度を直接測定することもできる。これにより、さらに精度よくHDDR反応を制御できる。なお、図7に示す撹拌棒40にも、反応中の原料合金Sを採集するための治具等を取り付けてもよい。
図9は、反応炉の蓋を閉じた状態で、内容器の内部へ拡散材料Qを供給する手段の構成を示す説明図である。上述した本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法では、磁性材料用粉末の原料合金Sを反応炉10内へ投入する原料投入工程と、磁性材料用粉末の原料合金Sに拡散させる拡散材料Qを反応炉10内へ投入する拡散材料投入工程と、を原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)の前に行った。本変形例では、磁性材料用粉末の原料合金Sを反応炉10内へ投入する原料投入工程を原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)の前に行い、原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)の後、磁性材料用粉末の原料合金Sに拡散させる拡散材料Qを反応炉10内へ投入する拡散材料投入工程を行う。つまり拡散材料の水素反応工程の前に、原料合金SへDyやTb等の拡散材料Qを供給する場合がある。このため、図1に示す反応炉10は、内容器13の内部へ拡散材料Qを供給する手段(拡散材料供給手段)60を有していてもよい。拡散材料供給手段60を用いれば、熱処理を中断させることなく原料合金Sへ拡散材料Qを供給できるので、磁性材料用粉末を製造する際の作業効率が向上する。
図9に示すように、拡散材料供給手段60は、内容器13の内部に配置される。より具体的には、拡散材料供給手段60は、内容器13の両端面にそれぞれ設けられる2つの開口のうち少なくとも1つの開口(この例では、第2開口23B)から、内容器13の内部へ挿入されて、内容器13の内部へ配置される。拡散材料供給手段60は、例えば、管で構成される拡散材料通路61と、拡散材料通路61の拡散材料投入口62側に設けられて拡散材料通路61を開閉する第1扉63と、拡散材料通路61の拡散材料投入口64側に設けられて拡散材料通路61を開閉する第2扉65と、第1扉63と第2扉65とで区画される空間66とを含んで構成される。拡散材料通路61は、図1に示す外容器本体12Aから空間Bへ挿入され、拡散材料通路61が第2開口23Bから内容器13の内部へ挿入されて拡散材料投入口64が内容器13の内部に配置されると共に、第1扉63及び第2扉65が外容器本体12Aの外部に配置される。
拡散材料Qを原料合金Sへ供給する場合、第1扉63を開き、第2扉65を閉じた状態で拡散材料投入口62から拡散材料Qを投入する。投入された拡散材料Qは、第1扉63を通って空間66内へ送り込まれる。空間66へ拡散材料Qが送り込まれたら、第1扉63を閉じて第2扉65を開く。すると、空間66内の拡散材料Qは、拡散材料通路61を通って拡散材料投入口64から内容器13内の原料合金Sへ供給される。このようにして、HDDR反応中に、拡散材料Qを原料合金Sへ投入できる。また、拡散材料供給手段60の拡散材料通路61が第2開口23Bから内容器13の内部へ挿入されているので、第2開口23Bが内容器回転軸Zrを含んだ所定の領域に形成されており、かつ拡散材料通路61が第2開口23Bに接しないように挿入されていれば、内容器13が回転又は揺動していても、拡散材料Qを原料合金Sへ供給できる。原料合金Sを反応炉10内に投入する工程と、原料合金Sに拡散させる拡散材料Qを反応炉内へ投入する原料投入工程とは、投入する時期を変えてもよい。また、拡散材料Qの他に、羽根やメディアを入れ粉砕効果を促進してもよい。
(永久磁石)
次に、本実施形態に係る永久磁石の好適な実施形態について説明する。本実施形態に係る永久磁石は、例えば、希土類焼結磁石や希土類ボンド磁石などが挙げられる。希土類焼結磁石は希土類合金粉末を所定の形状に成形して成形体を得た後、前記成形体を焼結して得られる磁石である。希土類ボンド磁石は、樹脂を含む樹脂バインダーと磁石粉末とを混練して得られる希土類ボンド磁石用コンパウンド(組成物)を所定の形状に成形して得られる磁石である。希土類焼結磁石や希土類ボンド磁石は、各々、成形する際、異方性、等方性とすることができる。異方性希土類焼結磁石や異方性希土類ボンド磁石は、成形する際、磁場を印加して希土類合金粉末を一定方向に配向させながら成形することにより得られる。等方性希土類焼結磁石や等方性希土類ボンド磁石は、各々、成形する際、磁場を印加しないで希土類合金粉末を成形することにより得られる。
(希土類ボンド磁石)
希土類ボンド磁石の製造方法の一例について説明する。樹脂を含む樹脂バインダーと希土類合金粉末とを例えば加圧ニーダー等の加圧混練機で混練して樹脂バインダーと希土類合金粉末とを含む希土類ボンド磁石用コンパウンド(組成物)を調製する。この調整は、射出成形の工法で用いられる。または、この調整では気流混練機等を用いることもできる。樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系のエラストマー、アイオノマー、エチレンプロピレン共重合体(EPM)、エチレン−エチルアクリレート共重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、希土類ボンド磁石用コンパウンドには、必要に応じて、カップリング剤やその他の添加材を加えてもよい。
また、希土類ボンド磁石における希土類合金粉末と樹脂との含有比率は、希土類合金粉末100質量部に対して、樹脂を例えば0.5質量部以上20質量部以下含むことが好ましい。希土類合金粉末100質量部に対して、樹脂の含有量が0.5質量部未満であると、保形性が損なわれる傾向があり、樹脂が20質量部を超えると、十分に優れた磁気特性が得られ難くなる傾向がある。
上述の希土類ボンド磁石用コンパウンドを調製した後、この希土類ボンド磁石用コンパウンドを圧縮成形することにより、希土類合金粉末と樹脂とを含む希土類ボンド磁石を得ることができる。圧縮成形は、機械プレスや油圧プレス等の圧縮成形機を用いて行われる。なお、希土類ボンド磁石の製造方法は、上述の圧縮成形による方法に限定されるものではなく、例えば射出成形によって成形してもよい。この場合、希土類ボンド磁石用コンパウンドを、必要に応じてバインダー(熱可塑性樹脂)の溶融温度まで加熱し、流動状態とした後、この希土類ボンド磁石用コンパウンドを所定の形状を有し磁場が印加された金型内に射出して成形を行う。その後、冷却し、金型から所定形状を有する成形品(希土類ボンド磁石)を取り出す。このようにして希土類ボンド磁石が得られる。成形して得られる希土類ボンド磁石の形状は特に限定されるものではなく、上記と同様に、用いる金型の形状に応じて、例えば柱状、平板状、リング状等、所望とする希土類ボンド磁石の形状に応じて変更することができる。
上述したように、本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法により得られる希土類合金粉末は優れた磁気特性を有するため、この希土類合金粉末を用いて得られた希土類ボンド磁石は、残留磁束密度(Br)を十分維持しつつ保磁力(Hcj)を向上させることができるなど優れた磁気特性を有することができる。
(希土類焼結磁石)
希土類焼結磁石の製造方法の一例について説明する。上述のようにして得られた希土類合金粉末を、例えばプレス成形などにより目的とする所定形状に成形する。希土類合金粉末を成形して得られる成形体の形状は特に限定されるものではなく、用いる金型の形状に応じて、例えば柱状、平板状、リング状等、所望とする希土類焼結磁石の形状に応じて変更することができる。
次いで、成形体を、例えば、真空中又は不活性ガスの存在下、800℃以上1200℃以下の温度で、1時間から10時間加熱処理して燒結する。これにより、焼結体(希土類焼結磁石)が得られる。燒結後、得られた希土類焼結磁石を燒結時よりも低い温度で加熱することなどによって、希土類焼結磁石に時効処理を施す。時効処理は、例えば、700℃から900℃の温度で1時間から3時間、さらに500℃から700℃の温度で1時間から3時間加熱する2段階加熱や、600℃付近の温度で1時間から3時間加熱する1段階加熱等、時効処理を施す回数に応じて適宜処理条件を調整する。このような時効処理によって、希土類焼結磁石の磁気特性を向上させることができる。
得られた希土類焼結磁石は、所望のサイズに切断したり、表面を平滑化したりすることで、目的とする所定形状の希土類焼結磁石が得られる。なお、得られた希土類焼結磁石は、その表面上に酸化層や樹脂層等の劣化を防止するための保護層をさらに設けてもよい。
上述したように、本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法により得られる希土類合金粉末は優れた磁気特性を有するため、この希土類合金粉末を用いて得られた希土類焼結磁石は、残留磁束密度(Br)を十分維持しつつ保磁力(Hcj)を向上させることができるなど優れた磁気特性を有することができる。
また、希土類合金粉末を目的とする所定の形状に成形する際、磁場を印加して成形して得られる成形体を一定方向に配向させるようにしてもよい。これにより、希土類焼結磁石が特定方向に配向するので、より磁性の強い異方性希土類焼結磁石が得られる。
以上説明したように、本実施形態の永久磁石は、希土類合金の原料合金及び拡散材料を反応炉内に投入し、前記反応炉内に水素ガスを供給しつつ前記反応炉内で前記原料合金及び前記拡散材料を撹拌して前記原料合金に水素を吸蔵させた後、前記反応炉内が水素雰囲気である状態を維持したまま前記反応炉内で水素化分解脱水素再結合法により製造される希土類合金粉末を成形して得られる。これにより、残留磁束密度を十分維持しつつ保磁力が向上した永久磁石となる。また、永久磁石の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形、種々の組み合わせが可能であり、永久磁石以外についても同様に適用することができる。
(実施形態2)
図10は、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法の工程を示す図である。実施形態2に係る磁性材料用粉末の製造方法の工程は、原料合金及び拡散材料を撹拌する撹拌工程を原料合金の水素吸蔵工程A11の1段階としたことに特徴がある。次の説明においては、実施形態1で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法の工程は、反応炉10が図3に示す原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)を行う。原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)では、図10に示す原料合金の水素吸蔵工程A11において、反応炉10は、反応炉10は内を加熱し、昇温させ温度Tとする。原料合金Sは、反応炉10内の水素分圧をPとした水素雰囲気中に、温度Tで所定の時間tの間保持され、原料合金Sは水素を吸蔵する。水素分圧Pとしては、100kPa以上300kPa以下であることが好ましい。温度Tは100℃以上200℃以下であることが好ましい。時間tは、0.5時間以上2時間以下であることが好ましい。反応炉10は、水素分圧P、温度T、時間tを上記範囲内とすることで、原料合金Sの結晶格子中に水素を吸蔵させることができる。反応炉10は、内容器13が外容器12の内部で回転又は揺動することができる。反応炉10は、原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)中に、内容器駆動装置14によって内容器13を回転又は揺動させることによって内容器13内の原料合金S及び拡散材料Qを撹拌することができる。これにより、原料合金Sは、温度Tにおいて水素を吸蔵し、脆化する。拡散材料Qは、温度Tにおいて脆化しない。その結果、温度Tでの拡散材料Qの硬さが原料合金Sの硬さより硬い状態で、撹拌される。このため、原料合金S同士が衝突し合って粉砕される作用に加え、拡散材料Qが原料合金Sへ衝突し、原料合金Sを粉砕する。原料合金Sが粉砕されることが促進されるので、磁性材料用粉末の製造に要する時間を短縮することができる。
反応炉10は、所定時間の原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)を行うと、次に図3に示す拡散材料の水素反応工程(ステップS13)を行わず、HD工程(ステップS14)を行う。
図3に示すHD工程(ステップS14)は、水素を吸蔵させた原料合金S及び拡散材料Qを、図10に示すHD工程C1のように反応炉10内の水素分圧をPとした水素雰囲気中、温度Tよりも高い温度Tで所定の時間tの間保持する工程である。このようにすることで、原料合金Sは水素を吸蔵しているため、原料合金Sは、自身の異なる相間における水素吸蔵量の相違により自己崩壊的な粉砕を生じ、水素化分解され、分解生成物が生成される。分解生成物は、RHなどの水素化物、α−Fe及びFeBなどの鉄化合物を含んでいる。この段階における分解生成物の組織は、100nmオーダーの微細な組織を形成している。
また、拡散材料Qは、水素雰囲気中で水素と反応する。そこで、図10に示すHD工程C1において、原料合金S及び拡散材料Qが撹拌されることが好ましい。このため、酸化防止雰囲気を新たに形成し、拡散材料を水素化する工程を省くことができる。その結果、製造工程が短縮される。
図10に示すHD工程C1において、反応炉10内の雰囲気の水素分圧Pは10kPa以上100kPa以下であることが好ましい。温度Tは600℃以上850℃以下であることが好ましい。反応炉10内で水素分圧P、温度Tを上記条件として水素化分解を行うことによって、希土類合金粉末を得ることができる。
水素分圧Pが10kPa未満であると、水素化分解が十分に進行しない傾向があり、100kPaを超えると異方性の希土類合金粉末が得難くなる傾向がある。温度Tが600℃以上850℃以下であると、分解生成物が生成される率が向上する。時間tを0.5時間以上100時間以下とすると分解生成物の生成ができると共に、分解生成物の生成が不十分なまま脱水素再結合するおそれを低減できる。時間tを100時間以下とすることで、製造工程に要する時間が長時間となることを避けることができる。
第1のDR工程(ステップS15)は、図10に示すDR工程D1において、温度Tで、所定の時間tの間、反応炉10内の水素分圧を減圧してPとし、分解生成物から水素を放出させ、分解生成物の水素濃度を低減させる工程である。この工程によって、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法は、HD工程において拡散材料Qを水素化し、DR工程において、水素と反応した拡散材料Qが上述した分解生成物の再結合と共に、原料合金Sの表面又は内部へ拡散する。つまり、第1のDR工程(ステップS15)中に、拡散材料Qは水素を放出するとともに、原料合金S中に拡散する。例えば、拡散材料QがDyであれば、HD工程においてDyHとなる。そこで、DyHは、上述した分解生成物の再結合と共に拡散する。水素雰囲気中で拡散するため、拡散材料Qが酸化されるおそれが低減される。以後の工程は、実施形態1と同じであるので、説明を省略する。
本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は、磁性材料用粉末の原料である原料合金S及び前記原料合金Sに拡散させる拡散材料Qを反応炉10内へ投入する原料投入工程と、前記反応炉10内へ水素を供給すると共に前記反応炉10内を加熱しつつ、前記原料合金S及び前記拡散材料Qを撹拌する撹拌工程と、前記撹拌工程で撹拌された前記原料合金Sを前記反応炉10内で水素化分解させて分解生成物を得る水素化分解工程と、前記反応炉10内で前記分解生成物から水素を放出させ、前記分解生成物の水素濃度を低減し磁性材料粉末を得る脱水素再結合工程と、を含む。
これにより、本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法では、HDDR法によりできた希土類合金粉末に拡散材料を混合し、この混合粉末を拡散熱処理する工程が不要となり、製造工程が短縮される。その結果、希土類合金粉末の製造コストを低減することができる。
(実施形態3)
図11は、本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法の工程を示す図である。実施形態3に係る磁性材料用粉末の製造方法の工程は、拡散材料Qを2種類以上含み、原料合金及び拡散材料を撹拌する撹拌工程を原料合金の水素吸蔵工程A1を有し、かつ拡散材料Qの水素反応温度に合わせて、拡散材料の水素反応温度を多段階としたことに特徴がある。次の説明においては、上述した実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は合金準備工程(ステップS11)において、鋳造などにより形成された拡散材料を2種類用意し、拡散材料Q1及び、拡散材料Q2を準備しておく。拡散材料Q1及び拡散材料Q2は、水素と反応する温度が異なることが好ましい。ここで拡散材料Q2は水素と反応しないものでもよい。例えば、拡散材料Q1はDy、Tb、Pr、Ndであり、拡散材料Q2は、例えばCu、Al、Co、Ag、Au、Gaの単体または希土類化合物である。
本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法の工程は、反応炉10が図3に示す原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)を行う。原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)では、図11に示す原料合金の水素吸蔵工程A1において、反応炉10は内を加熱し、昇温させ温度Tとする。原料合金Sは、反応炉10内の水素分圧をPとした水素雰囲気中に、温度Tで所定の時間tの間保持され、原料合金Sは水素を吸蔵する。水素分圧Pとしては、100kPa以上300kPa以下であることが好ましい。温度Tは100℃以上200℃以下であることが好ましい。時間tは、0.5時間以上2時間以下であることが好ましい。反応炉10は、水素分圧P、温度T、時間tを上記範囲内とすることで、原料合金Sの結晶格子中に水素を吸蔵させることができる。反応炉10は、内容器13が外容器12の内部で回転又は揺動することができる。反応炉10は、原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)中に、内容器駆動装置14によって内容器13を回転又は揺動させる。これにより、内容器13内の原料合金S及び拡散材料Q1及び拡散材料Q2を撹拌することができる。また、原料合金Sは、温度Tにおいて水素を吸蔵し、脆化する。拡散材料Q1及び拡散材料Q2は、温度Tにおいて脆化しない。その結果、温度Tでの拡散材料Q1及び拡散材料Q2の硬さが原料合金Sの硬さより硬い状態で、撹拌される。このため、原料合金S同士が衝突し合い粉砕される作用に加え、拡散材料Q1及び拡散材料Q2が原料合金Sへ衝突し、原料合金Sを粉砕する。原料合金Sが粉砕されることが促進されるので、磁性材料用粉末の製造に要する時間を短縮することができる。反応炉10は、所定時間の原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)を行うと、次に拡散材料の水素反応工程(ステップS13)を行う。
図3に示す拡散材料の水素反応工程(ステップS13)は、反応炉10内に水素ガス11を供給した状態で、原料合金S及び拡散材料Q1及び拡散材料Q2をさらに加熱し、拡散材料Q1に水素を反応させる工程である。図11に示すように、拡散材料の水素反応工程B21において、反応炉10は、反応炉10内を加熱し、昇温させ温度T21とする。拡散材料Q1及び拡散材料Q2は、反応炉10内の水素分圧をPとした水素雰囲気中に、温度T21で所定の時間t21の間保持され、拡散材料Q1が主として水素と反応する。水素分圧Pとしては、100kPa以上300kPa以下であることが好ましい。温度T21は300℃以上500℃以下であることが好ましい。時間t21は、0.5時間以上3時間以下であることが好ましい。反応炉10は、水素分圧P、温度T21、時間t21を上記範囲内とすることで、拡散材料Q1に水素を反応させることができる。反応炉10は、内容器駆動装置14によって内容器13を回転又は揺動させることによって、内容器13内の原料合金S及び拡散材料Q1及び拡散材料Q2を撹拌することができる。これにより、拡散材料Q1は、温度T21において水素と反応し、脆化する。拡散材料Q2は、温度T21において脆化しない。その結果、温度T21での拡散材料Q2の硬さが原料合金S及び拡散材料Q1の硬さより硬い状態で、撹拌される。このため、原料合金S同士が衝突し合い粉砕される作用に加え、拡散材料Q2が原料合金Sへ衝突し、原料合金Sを粉砕する。原料合金Sが粉砕されることが促進されるので、磁性材料用粉末の製造に要する時間を短縮することができる。反応炉10は、所定時間の拡散材料の水素反応工程B21を行うと、次に図11に示す拡散材料の水素反応工程B22を行う。
拡散材料の水素反応工程B22は、反応炉10は、水素ガス11を供給した状態で、原料合金S及び拡散材料Q1及び拡散材料Q2をさらに加熱し、拡散材料Q2に水素を反応させる工程である。図11に示すように、拡散材料の水素反応工程B22において、反応炉10は、反応炉10内を加熱し、昇温させ温度T22とする。拡散材料Q1及び拡散材料Q2は、反応炉10内の水素分圧をPとした水素雰囲気中に、温度T22で所定の時間t22の間保持され、拡散材料Q2が主として水素と反応する。水素分圧Pとしては、100kPa以上300kPa以下であることが好ましい。温度T22は300℃以上500℃以下であることが好ましい。時間t22は、0.5時間以上3時間以下であることが好ましい。反応炉10は、水素分圧P、温度T22、時間t22を上記範囲内とすることで、拡散材料Q2に水素を反応させることができる。反応炉10は、内容器駆動装置14によって内容器13を回転又は揺動させる。これにより、内容器13内の原料合金S及び拡散材料Q1及び拡散材料Q2を撹拌することができる。その結果、温度T22での拡散材料Q2は水素化されると共に原料合金Sとの混合が同時に行われるので、拡散材料Q1、Q2はR−T−B系合金と均一に混合し、拡散材料Q1及び拡散材料Q2の偏りが低減される。このため、磁性材料用粉末の製造方法の工程にかかる時間を短縮することができる。反応炉10は、その後、図3に示すHD工程(ステップS14)に移行する。ただし、拡散材料Q2が水素と反応しないものを使用した場合はこの拡散材料の水素反応工程B2を省略することができる。
図3に示すHD工程(ステップS14)は、水素を吸蔵させた原料合金S及び拡散材料Q1、Q2を、図11に示すHD工程C1のように反応炉10内の水素分圧をPとした水素雰囲気中、温度Tよりも高い温度Tで所定の時間tの間保持する工程である。このようにすることで、原料合金Sは水素を吸蔵しているため、原料合金Sは、自身の異なる相間における水素吸蔵量の相違により自己崩壊的な粉砕を生じ、水素化分解され、分解生成物が生成される。分解生成物は、RHなどの水素化物、α−Fe及びFeBなどの鉄化合物を含んでいる。この段階における分解生成物の組織は、100nmオーダーの微細な組織を形成している。
HD工程C1において、反応炉10内の雰囲気の水素分圧Pは10kPa以上100kPa以下であることが好ましい。温度Tは600℃以上850℃以下であることが好ましい。反応炉10内で水素分圧P、温度Tを上記条件として水素化分解を行うことによって、希土類合金粉末を得ることができる。
水素分圧Pが10kPa未満であると、水素化分解が十分に進行しない傾向があり、100kPaを超えると異方性の希土類合金粉末が得難くなる傾向がある。温度Tが600℃以上850℃以下であると、分解生成物が生成される率が向上する。時間tを0.5時間以上100時間以下とすると分解生成物の生成ができると共に、分解生成物の生成が不十分なまま脱水素再結合するおそれを低減できる。時間tを100時間以下とすることで、製造に要する時間が長時間となることを避けることができる。
本実施形態に係る磁性材料用粉末の製造方法は、原料合金Sを水素化分解し、分解生成物を得た後、第1のDR工程(ステップS15)に移行する。第1のDR工程(ステップS15)は、図4に示すDR工程D1において、温度Tで、所定の時間tの間、反応炉10内の水素分圧を減圧してPとし、分解生成物から水素を放出させ、分解生成物の水素濃度を低減させる工程である。この工程によって、拡散材料Q1又は拡散材料Q2は、原料合金Sの表面又は内部へ拡散する。例えば、拡散材料Q1又はQ2が上述した拡散材料の水素反応工程(ステップS13)により水素と反応している。そこで、水素と反応した拡散材料Q1又は拡散材料Q2は上述した分解生成物の再結合と共に拡散する。拡散材料Q1又は拡散材料Q2は水素雰囲気中で拡散するため、拡散材料Q1又は拡散材料Q2が酸化されるおそれが低減される。このため、酸化防止雰囲気を新たに形成する必要はない。その結果、製造工程が短縮される。また、DR工程(ステップS15)においても、反応炉10内の水素雰囲気下で内容器13を回転又は揺動させ、拡散材料Qが原料合金Sへ均一に混合するようにすれば、拡散材のばらつきは低減される。以後の工程は、実施形態1と同じであるので、説明を省略する。
本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法は、磁性材料用粉末の原料である原料合金S及び前記原料合金Sに拡散させる拡散材料Qを反応炉10内へ投入する原料投入工程と、前記反応炉10内へ水素を供給すると共に前記反応炉10内を加熱しつつ、前記原料合金S及び前記拡散材料Qを撹拌する撹拌工程と、前記撹拌工程で撹拌された前記原料合金Sを前記反応炉10内で水素化分解させて分解生成物を得る水素化分解工程と、前記反応炉10内で前記分解生成物から水素を放出させ、前記分解生成物の水素濃度を低減し磁性材料粉末を得る脱水素再結合工程と、を含む。原料合金S及び拡散材料Q1、Q2を撹拌する撹拌工程となり、拡散材料Q1を撹拌する撹拌工程での反応炉10内を加熱する温度と、拡散材料Q2を撹拌する撹拌工程で反応炉10内を加熱する温度とが変化し、反応炉10内を加熱する温度が多段階で変化していることが好ましい。
また、DR工程C1において、原料合金S、拡散材料Q1及び拡散材料Q2が撹拌されることが好ましい。また、拡散材料Q1及び拡散材料Q2は、原料合金Sの表面又は内部へ拡散する。水素雰囲気中で拡散するため、拡散材料Q1及び拡散材料Q2が酸化されるおそれが低減され、酸化防止雰囲気を新たに形成する工程を省くことができる。その結果、製造工程が短縮され、拡散材料Q1及び拡散材料Q2が原料合金Sへ拡散するばらつきが低減される。
これにより、本実施形態の磁性材料用粉末の製造方法では、HDDR法によりできた希土類合金粉末に拡散材料を混合し、この混合粉末を拡散熱処理する工程が不要となり、製造工程が短縮される。その結果、希土類合金粉末の製造コストを低減することができる。
(評価例)
評価例及び比較例を用いて以下に詳細に説明する。ストリップキャスト法によって、以下の組成を有するNdFe14B原料合金(粒径30.0mm程度、以下、「原料合金」という。)を調製した。
Nd:28.00質量%
Fe:70.01質量%
B:1.08質量%
Ga:0.36質量%
Nb:0.30質量%
この原料合金は、上述の元素の他に、微量の不可避不純物(原料合金全体の0.2〜0.3質量%)を含んでいた。この原料合金を、例えばストリップキャスト法など通常用いられる鋳造方法により得た。この原料合金を、真空中、1000℃以上1200℃以下の温度範囲で24時間保持した。
(評価例1及び評価例2の作製)
評価例1及び評価例2の試料は、上述した均質化熱処理後の原料合金及び図1に示す反応炉10に投入した。また、拡散材料としてDyを含む平均粒径30mmの拡散材料を、原料合金の質量を100として、拡散材料が3質量%となるよう計量し、拡散材料を反応炉10に投入した。
評価例1の試料は、鋳造などにより製造された拡散材料を用いる。拡散材料の平均粒径は、30mmであった。評価例2の試料は、鋳造などにより製造された拡散材料を予め粉末に加工して用いている。拡散材料の平均粒径は、5mmであった。
評価例1及び評価例2の試料では上述したように、反応炉10は、水素ガス11を導入し、水素ガス雰囲気下、水素分圧100kPa程度とした。反応炉10は、100℃程度で2時間放置した。このとき、反応炉10内の内容器13を回転又は揺動させて、内容器13内で原料合金と拡散材料を撹拌し、原料合金を粉砕した。
粉砕した原料合金が反応炉10内にそのまま残っている状態で反応炉10は、水素ガス雰囲気下、水素分圧100kPa程度とし、400℃程度で2時間放置した。このとき、反応炉10内の内容器13を回転又は揺動して、内容器13内で原料合金と拡散材料を撹拌し、原料合金を粉砕した。これにより、拡散材料であるDyをDyHとした。次に、反応炉10は、以下の条件でHDDR法による処理(HDDR処理)を施した。HDDR処理のフローチャートは図3のHD工程(ステップS14)からDR工程(ステップS16)に示す通りである。
反応炉10内の水素分圧を下げると共に炉内温度を10℃/分で昇温し、水素ガス11を吸蔵した原料合金を、水素分圧40kPa、温度800℃の条件で3時間保持するHD工程を行った(図3中、HD工程(ステップS14))。これによって、原料合金を水素化分解させて分解生成物を得た。
その後、炉内温度を10℃/分で850℃まで昇温した(図3中、第1のDR工程(ステップS15))。炉内温度を850℃まで昇温した後、真空ポンプを用いて水素ガス11を排気し、炉内の圧力(水素分圧)を4kPa/分の速度で下げて6kPaとし、約10分間、分解生成物に含まれる水素の放出を開始した。
その後、反応炉10内からの水素ガス11の排気速度を変更して、炉内圧力(水素分圧)の降下速度を0.1kPa/分とし、反応炉10内の圧力(水素分圧)が0Pa程度になるまで、水素ガス11の放出を継続して行うことにより、分解生成物から水素をほぼ完全に除去した(図3中の第2のDR工程(ステップS16))。なお、第2のDR工程(ステップS16)に所要した時間は40分以上50分以下であった。
炉内の圧力(水素分圧)が0Paとなった時点で、水素の放出を停止した。その後、炉内を室温(約20℃程度)まで冷却し、HDDR処理された異方性のNdFe14B粉末を得た。以上により、評価例1及び評価例2の試料を作製した。
(比較例1の試料の作製)
比較例1は、拡散材料の投入を行わず、HDDR処理を行い、NdFe14B合金粉末を製造した。HDDR処理後のNdFe14B合金粉末とは別にDyを水素と反応させ、DyHとして平均粒径1μmの拡散材料を作製した。HDDR処理後のNdFe14B合金粉末と拡散材料Ar雰囲気化で混合され、800℃で3時間程度熱処理を施されて比較例1の試料とした。
(比較例2の試料の作製)
比較例2は、Dyを水素と反応させ、DyHとして平均粒径1μmの拡散材料を作製した。この拡散材料を、原料合金の質量を100として、拡散材料が3質量%となるよう計量し、原料合金と拡散材料を予め混合した上、撹拌せずに原料合金の水素吸蔵工程(ステップS12)を行い、撹拌せずにHDDR処理を行い、NdFe14B合金粉末を製造し比較例2の試料とした。
(比較例3の試料の作製)
比較例3は、拡散材料の投入を行わず、HDDR処理を行い、NdFe14B合金粉末を製造した。HDDR処理後の拡散材料の投入も行わず比較例3の試料とした。
(磁気特性の評価)
得られた評価例1から評価例2及び比較例1から比較例3の試料を、不活性雰囲気中で乳鉢を用いて粉砕し、ふるい分けを行って、各々NdFe14Bを含む磁石粉末とした。このNdFe14Bを含む粉末をケースに詰めた後、1テスラの磁場を印加して磁石粉末を配向させた。磁石粉末の配向方向と平行な方向に5テスラのパルス磁場を印加し、振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁化−磁場曲線を測定した。また、磁気特性として残留磁束密度Br、保磁力Hcj及び減磁曲線の角型性Hk/Hcjを測定した。減磁曲線の角型性とは、減磁曲線で磁化が残留磁化の値から10%低下したときの磁場の絶対値をHkとしたとき、磁化が0になる磁場の絶対値である保磁力HcjでHkを除した値Hk/Hcjをいう。Br、Hcj及びHk/Hcjの測定結果を表1に示す。
Figure 2012204696
表1より分かるように、評価例1及び評価例2は比較例1及び比較例2と残留磁束密度Brが同等である。比較例1及び比較例2は、比較例3よりも保磁力Hcj及び磁気異方性Hkが高かった。これは、拡散材料の効果と考えられる。また、評価例1及び評価例2は比較例1及び比較例2より保磁力Hcj及び磁気異方性Hkが高かった。よって、評価例1及び評価例2は、原料合金を拡散材料と撹拌し、粉砕する撹拌工程を有することにより、比較例1及び比較例2よりも磁性材料粉末の磁気特性を向上させることができることが分かった。評価例1は、評価例2よりも保磁力Hcj及び磁気異方性Hkが高かった。これは、評価例1が評価例2よりも酸化の影響が少ないためと考えられる。
また、比較例2について、振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁化−磁場曲線を測定した。比較例2の磁化−磁場曲線は、拡散が不均一だったため、屈曲点が発生してしまった。また、評価例1及び評価例2に比較して磁気異方性Hkが低下している。
10 反応炉
11 水素ガス
12 外容器
12a 外殻
12b 内殻
12A 外容器本体
12B 蓋
13 内容器
13a、13b 側壁
14 内容器駆動装置(内容器駆動手段)
14a 支持体
14b 回転体
14c 電動機
15 加熱器
16 気体導入口
17 気体排出口
18 脚
21 本体側冷却媒体供給口
22 本体側冷却媒体排出口
23 冷却用ポンプ
24 蓋側冷却媒体供給口
25 蓋側冷却媒体排出口
26a 第1開口
26b 第2開口
31 内容器支持部材
32 支持ローラー
32a 側部
A、B、C 空間
Q 拡散材料
S 原料合金
W 冷却媒体

Claims (8)

  1. 磁性材料用粉末の原料及び前記原料に拡散させる拡散材料を反応炉内へ投入する原料投入工程と、
    前記反応炉内へ水素を供給すると共に前記反応炉内を加熱しつつ、前記原料及び前記拡散材料を撹拌する撹拌工程と、
    前記撹拌工程で撹拌された前記原料を前記反応炉内で水素化分解させて分解生成物を得る水素化分解工程と、
    前記反応炉内で前記分解生成物から水素を放出させ、前記分解生成物の水素濃度を低減し磁性材料粉末を得る脱水素再結合工程と、
    を含むことを特徴とする磁性材料用粉末の製造方法。
  2. 前記磁性材料粉末は、R−T−B系合金を含み、
    前記Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Td、Dy、Ho、Er、Tm、Luから選ばれる1種以上の元素であり、
    前記Tは、1種以上の遷移金属元素であって、少なくともFe又はFe及びCoのいずれかを含む元素である請求項1に記載の磁性材料用粉末の製造方法。
  3. 前記拡散材料は、Dy、Tb、Pr、Ndから選ばれる少なくとも1種以上を含む材料である請求項1又は2に記載の磁性材料用粉末の製造方法。
  4. 前記撹拌工程で前記原料が水素吸蔵する又は拡散材料が水素と反応する請求項1から3のいずれか1つに記載の磁性材料用粉末の製造方法。
  5. 前記撹拌工程では、前記反応炉内を加熱する温度が多段階で変化する請求項1から4のいずれか1つに記載の磁性材料用粉末の製造方法。
  6. 前記反応炉は、
    外容器と、
    前記外容器の内部に配置され、前記原料及び前記拡散材料を収容する内容器と、
    前記内容器内に収容される前記原料を撹拌する撹拌手段と、
    を含む請求項1から5のいずれか1つに記載の磁性材料用粉末の製造方法。
  7. 前記撹拌手段は、前記内容器を回転又は揺動させる内容器駆動手段、前記内容器の内部に振動を与える振動発生手段、又は前記外容器の内部に配置され前記内容器内の前記原料を撹拌する撹拌駆動手段のいずれかである請求項6に記載の磁性材料用粉末の製造方法。
  8. 希土類合金の原料合金及び拡散材料を反応炉内に投入し、前記反応炉内に水素ガスを供給しつつ前記反応炉内で前記原料合金及び前記拡散材料を撹拌して前記原料合金に水素を吸蔵させた後、前記反応炉内が水素雰囲気である状態を維持したまま前記反応炉内で水素化分解脱水素再結合法により製造される希土類合金粉末を成形して得られることを特徴とする永久磁石。
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