JP2012099520A - R−t−b系磁性粉末の製造方法 - Google Patents

R−t−b系磁性粉末の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】R−T−B系磁性粉末を製造する装置のスケールアップに伴って反応炉内における水素化分解反応の発熱量及び脱水素再結合反応の吸熱量が増大しても、優れた磁気特性を有する磁性粉末を十分に効率的且つ安定的に製造できる方法を提供する。
【解決手段】水素化分解・脱水素再結合法によってR−T−B系磁性粉末を製造するためのものであり、被処理物と耐水素脆性を有するメディアとを混合する混合工程と、反応炉内において、メディアの存在下、被処理物に対する水素化分解・脱水素再結合法による処理を行う処理工程とを備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、希土類系合金粉末の製造方法に関し、より詳細には異方性ボンド磁石の製造に用いられるR−T−B系磁性粉末の製造方法に関する。
R−T−B系磁石は希土類磁石の一種であり、Rは1種以上の希土類元素;Tは鉄を主成分とする遷移金属;Bはホウ素をそれぞれ示す。希土類磁石用の磁性粉末を製造する方法として、HDDR法(水素化分解・脱水素再結合法)が知られている。HDDR法とは、水素化(Hydrogenation)、不均化(Disproportionation)、脱水素化(Desorption)、および再結合(Recombination)を順次実行するプロセスである。
原料合金をHDDR処理して磁性粉末を得る場合、磁性粉末をなす粒子(二次粒子)中に含まれる微細な結晶(一次粒子)の方位が一方向に高度に揃っている状態が望ましい。このような高度に異方化した状態の磁性粉末は高い残留磁束密度及び優れた角型性を有する。
二次粒子における一次粒子の異方化度が高い磁性粉末を得るには、できるだけ大きな結晶粒子を有する原料合金を準備し、その結晶方位を維持したままHDDR法によって微細化を行う必要がある。HDDR法による処理過程において、原料合金の結晶方位を維持するには、適切な反応速度にて水素化分解及び再結合反応が進行することが重要であり、反応時の温度や圧力は反応速度を支配する重要な要素である。例えば、特許文献1では、脱水素再結合の処理中に、雰囲気を制御することによって反応速度を変えて希土類系合金粉末の磁気特性を改善することが提案されている。
特開2001−115220号公報
しかしながら、HDDR法における水素化分解反応は大きな発熱を伴う反応であり、他方、再結合反応は大きな吸熱を伴う反応である。このため、反応炉内の雰囲気温度を所定の温度に設定しても、その温度と被処理物の温度に大きな差があったり、被処理物の温度が反応炉内の位置によって異なったりして被処理物の温度制御が困難であった。被処理物の温度制御が不十分な処理工程を経て得られた磁性粉末は、特性にバラつきが生じやすく、磁気特性のうち残留磁束密度及び角型性が不十分となりやすい。特に、磁性粉末を製造する装置のスケールアップに伴って反応炉内における処理量が増大すると、このような問題が顕著となる。
なお、水素化分解反応及び再結合反応は、原料合金の表面における反応が律速となりやすいため、原料合金を予め粉砕するなどして表面積を大きくすれば、原料合金全体にわたってこれらの反応を一様に進行させることができる。しかし、本発明者らの試験によると、予め原料合金を粉砕して作製した磁性粉末は、原料合金を予め粉砕をすることなくHDDR法によって微細化して作製したものと比較し、粉砕処理に起因して酸素の含有量が増加する傾向にあり、磁気特性が不十分となりやすい。原料合金の粉砕からHDDR法による微細化処理までの工程を非酸化性雰囲気中で行えば、酸素量の増加に起因する問題は生じないが、かかる工程はコスト増を招来する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、R−T−B系磁性粉末を製造する装置のスケールアップに伴って反応炉内における水素化分解反応の発熱量及び再結合反応の吸熱量が増大しても、高い残留磁束密度及び優れた角型性を有する磁性粉末を十分に効率的且つ安定的に製造できる方法を提供することを目的とする。
本発明は、水素化分解・脱水素再結合法によるR−T−B系磁性粉末の製造方法であって、被処理物と耐水素脆性を有するメディアとを混合する混合工程と、反応炉内において、メディアの存在下、被処理物に対する水素化分解・脱水素再結合法による処理を行う処理工程とを備えるR−T−B系磁性粉末の製造方法を提供する。
上記製造方法においては、被処理物中にメディアが分散した状態で被処理物に対して水素化分解・脱水素再結合法(HDDR法)による処理を実施する。該製造方法によれば、水素化分解反応及び脱水素再結合反応に伴う発熱及び吸熱がメディアによって緩和され、反応速度を十分に制御できる。反応速度を緻密に制御することで、原料合金の結晶方位を十分に維持したまま微細化がなされるため、特性のバラつきが小さく、高い残留磁束密度及び優れた角型性の両方が十分に高水準であるR−T−B系磁性粉末を製造できる。
上記処理工程において、反応炉内のメディア及び被処理物を攪拌しながら、処理を行うことが好ましい。反応炉内を攪拌することで、被処理物の温度の均一化をより一層高度に達成できる。これに加え、メディアと被処理物の衝突及び被処理物同士の衝突によって被処理物が粉砕されて被処理物の表面積が増大し、水素化分解反応及び再結合反応をより一層均一に生じさせることができる。なお、処理工程において攪拌を行うことができる反応炉を使用する場合、メディアと被処理物の混合(混合工程)を反応炉内で実施してもよい。
上記メディアは、耐水素脆性を有するものであれば、特に制限はないが、熱伝導性等の点から金属材料(希土類金属材料を除く。)からなることが好ましい。
本発明によれば、R−T−B系磁性粉末を製造する装置のスケールアップに伴って反応炉内における水素化分解反応の発熱量及び再結合反応の吸熱量が増大しても、高い残留磁束密度及び優れた角型性を有する磁性粉末を十分に効率的且つ安定的に製造できる。このため、HDDR法によって、従来と比較して一度に大量の磁性粉末を製造することが可能となり、生産性が向上する。生産性の向上は製品コストの低下につながる。
(a)はHDDR処理の温度プロファイル(反応炉の温度設定)の一例を示すグラフであり、(b)は原料合金にメディアを混合することなくHDDR処理を実施した場合の被処理物の温度変化を示すグラフである。 内容器が回転又は遥動する機構を有する反応炉の構造を示す説明図である。 図2のA−A矢視図である。 内容器が有する軸部材を示す斜視図である。 内容器の他の例を示す斜視図である。 (a)及び(b)は、導風体の変形例をそれぞれ示す模式図である。 攪拌手段を備えた内容器の一例を示す図である。 (a)及び(b)は、攪拌手段を備えた内容器の他の例を示すそれぞれ図である。 (a)は実施例1の温度条件及び圧力条件を示すグラフであり、(b)は比較例1の温度条件及び圧力条件を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態で開示する構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
<R−T−B系磁性粉末の製造方法>
本実施形態に係るR−T−B系磁性粉末の製造方法は、原料合金(被処理物)であるR−T−B系合金と耐水素脆性を有するメディアとを混合する混合工程と、後述の反応炉1内において、メディアの存在下、原料合金に対する水素化分解・脱水素再結合法(HDDR法)による処理を行う処理工程とを備える。
原料合金としては、本実施形態の製造方法によって得られる磁性粉末が磁気特性を発揮し得るような組成を有するものを適用する。その製法としては、通常の鋳造方法、例えばストリップキャスト法、ブックモールド法や遠心鋳造法を適用できる。また、これらの方法によって得られた合金に、均質化熱処理を施したものであってもよい。
なお、本明細書における希土類元素(場合により、「R」で表す。)は、長周期型周期表の第3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタノイド元素のことをいう。ランタノイド元素には、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビニウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)等が含まれる。希土類元素は、軽希土類元素及び重希土類元素に分類することができる。「重希土類元素」とはGd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luをいい、「軽希土類元素」とはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Euをいう。
原料合金は、希土類元素として、軽希土類元素を含むものであると好ましい。これにより、高いBrを有する希土類ボンド磁石が得られ易くなる。軽希土類元素は、Nd及び/又はPrであると好ましい。
より具体的には、原料合金の好適な組成としては、希土類元素(R)として軽希土類元素であるNd及びPrの少なくとも一方を含み、Bを0.5〜4.5質量%含み、残部がT(TはFe及び/又はCoを示す。)であるR−T−B系の組成を有するものが挙げられる。また、原料合金は、必要に応じて、Co、Ni、Mn、Al、Cu、Nb、Zr、Ti、W、Mo、V、Ga、Zn、Si等の他の元素を更に含んでもよい。なお、原料合金には、その原料等に含まれていたものや、該合金の製造過程で混入したもの等の不可避的不純物が、磁気特性に大きく影響しない程度に含まれていてもよい。
原料合金の平均粒径は、好ましくは1.0〜30.0mm程度であり、より好ましくは1.0〜2.0mm程度である。平均粒径が1.0mm未満の原料合金を得るには、通常のプロセスによって製造されたインゴットを粉砕する必要があり、粉砕によって酸化が進行しやすく、また粉砕を非酸化性雰囲気下で行えばコストが増大しやすい。他方、原料合金の平均粒径が30.0mmを超えると原料合金の表面積が小さいことに起因して、HDDR処理における水素化分解及び再結合反応の進行が不十分となりやすく、これに加えて原料合金とメディアの間の熱の移動が十分効率的になされず、本発明の効果が不十分となりやすい。ただし、雰囲気の酸素濃度を調整可能な粉砕機を利用できる場合は、混合工程に先立ち、非酸化性雰囲気下において原料合金の粉砕を行ってもよい。
[混合工程]
この工程は、塊状又は粒状の原料合金とメディアとを混合し、原料合金中にメディアを分散させるためのものである。原料合金とメディアを混合する方法としては、公知の混合装置を使用する方法や棒などを使用して手動で行う方法が挙げられる。上記のとおり、混合工程は、原料合金中にメディアを分散させるためのものであり、原料合金の粉砕を目的としたものではない。従って、混合工程は必ずしも非酸化性雰囲気下で行う必要はない。
反応炉1は回転軸Zrを中心として回転又は揺動する内容器20を備え、収容物を攪拌又は粉砕する機能を有する(図2,3参照)。このような反応炉を使用する場合は、所定量の原料合金及びメディアを反応炉内に投入した後、処理工程を先立ち、又は、処理工程の初期段階において混合工程を実施してもよい。
メディアは、後段の処理工程において水素化分解反応及び再結合反応に伴う発熱及び吸熱を緩和して反応速度の緻密な制御を可能にするためのものである。すなわち、メディアは、処理工程における水素化分解反応(発熱反応)によって生じる熱を蓄えるとともに、その後の再結合反応(吸熱反応)に必要な熱を供給する役割を担うものである。
メディアは、耐水素脆性を有する材質からなる。メディアの材質としては、原料合金との反応性が低いものが好ましく、銅、鉄及びこれらの合金などの金属、及び、ジルコニア、アルミナ及びこれらの複合材料などのセラミックスが挙げられる。熱伝導性及び熱容量の点から、メディアの材質としては金属が好ましく、これらの金属のなかでも銅が特に好ましい。なお、反応炉1のような粉砕機能を有する反応炉を使用する場合は、メディアによる被処理物の粉砕効果を高める観点から、メディアの材質としてセラミックスよりも比重が大きい金属を採用することが好ましい。ただし、原料合金との反応性及びコストの点から、メディアの材質として希土類金属は好ましくない。
メディアのサイズは、処理工程後に磁性粉末とメディアとの分離を容易に行う観点から、処理工程によって得られる磁性粉末のサイズよりも大きいことが好ましい。メディアの形状は特に制限はなく、球形や円柱形などが挙げられる。
原料合金とメディアの混合比率は、処理工程における反応条件や使用するメディアの種類にもよるが、例えば、金属材料からなるメディアを使用する場合、原料合金100質量部に対してメディア20〜70質量部を加えることが好ましく、30〜60質量部を加えることがより好ましい。
[処理工程]
この工程は、反応炉1内において、メディアの存在下、原料合金に対してHDDR処理を施し、原料合金を微細化してR−T−B系磁性粉末を得るためのものである。反応炉1の内容器20が回転又は遥動する機能を利用し(図2,3参照)、反応炉1内のメディア及び原料合金を攪拌しながら、処理を行うことが好ましい。内容器20を回転又は遥動させることで、被処理物の温度の均一化をより一層高度に達成できる。これに加え、メディアと被処理物の衝突及び被処理物同士の衝突によって被処理物が粉砕されて被処理物の表面積が増大し、水素化分解反応及び脱水素再結合反応をより一層均一に生じさせることができる。
図1の(a)に示すグラフは処理工程の温度プロファイル(反応炉の温度設定)の一例であり、図1の(b)に示すグラフは原料合金にメディアを混合することなく、処理工程を実施した場合の被処理物の測定温度である。図1の(b)に示すとおり、水素化分解反応が生じる時間帯においては、当該反応に起因する発熱により、目標の温度よりも被処理物の温度が高い方向に外れる。他方、脱水素・再結合反応が生じる時間帯においては、当該反応に起因する吸熱により、目標の温度よりも被処理物の温度が低い方向に外れる。HDDR法による処理の各プロセスについて、以下に詳細に説明する。
(水素化)
反応炉内の原料合金に対し、必要に応じて水素吸蔵処理を行う。具体的には、原料合金を、水素分圧が100〜300kPaである水素雰囲気中、100〜200℃の温度で0.5〜2時間保持する。これによって、原料合金の結晶格子中に水素が吸蔵される。
(不均化)
水素を吸蔵させた合金を、水素雰囲気中、所定の温度で保持することにより、水素化分解して分解生成物を得る。水素化分解時の水素分圧は10〜100kPa、温度は700〜850℃とすることが好ましい。このような条件で水素化分解を行うことによって、磁気的な異方性を有する粒子からなる磁性粉末を得ることができる。
水素化分解によって得られる分解生成物は、RHなどの水素化物、α−Fe及びFeBなどの鉄化合物を含んでいる。この段階における分解生成物は、100nmオーダーの微細なマトリックスを形成している。
(脱水素化、再結合)
その後、水素分圧を低減することによって、分解生成物から水素を放出させ、希土類元素を含む組成を有する異方性の磁性粉末を得る。この磁性粉末は、上述の合金と同等の組成を有する。
上記製造方法によれば、メディアの存在下、被処理物に対してHDDR処理を施すことで、水素化分解反応及び脱水素再結合反応に伴う発熱及び吸熱がメディアによって緩和され、反応速度を十分に制御できる。反応速度を緻密に制御することで、原料合金の結晶方位を十分に維持したまま微細化がなされる。このため、特性のバラつきが小さく、高い残留磁束密度及び優れた角型性の両方が十分に高水準であるR−T−B系磁性粉末を製造できる。
HDDR法によって得られた磁性粉末は、必要に応じて、例えば、ジェットミル、ボールミル、振動ミル、湿式アトライター等の微粉砕機を用いて粉砕することができる。この段階における磁性粉末の粒径は、好ましくは350μm以下であり、より好ましくは250μm以下であり、さらに好ましくは212μm以下である。磁性粉末の粒径の下限に特に制限はないが、実用上、例えば1μm以上とすることが好ましい。R−T−B系磁性粉末の有する磁気特性を十分に活用することで、優れた磁気特性を有する希土類ボンド磁石を得ることができる。
<反応炉>
次に、上記方法を実施するのに好適な反応炉1の構成について説明する。反応炉1は、HDDR法によって磁性材料用粉末(特に、磁石用の合金粉末)を製造する際に用いるものであり、製造しようとする磁性体材料用粉末の原料を加熱する機能、炉内へ気体を供給する機能、炉内を真空引きする機能を有している。なお、上述の製造方法は反応炉1と異なる構成の反応炉を用いて実施してもよいが、反応炉1は収容物を攪拌又は粉砕する機能を更に有する点において、上記方法の実施に適している。
図2は、本実施形態に係る反応炉の構造を示す説明図である。図3は、図2のA−A矢視図である。反応炉1は、HDDR反応により磁性材料用粉末を製造するものであり、炉内を真空引き及び加熱できる。反応炉1は、外容器10と、外容器冷却手段である本体側冷却媒体通路10Bc及び蓋側冷却媒体通路10Ccと、内容器20と、内容器駆動手段である内容器駆動装置18と、加熱器2と、気体導入口12I及び気体排出口12Eと、気体流れ制御手段である導風体15と、を含んで構成される。
外容器10は、外殻10oと、外殻10oの内部に配置される外殻10oと同形状かつ外殻10oよりも小さい内殻10iとで構成される二重構造の外容器本体10Bと、蓋10Cとで構成される。外容器本体10Bには、複数の脚19が取り付けられており、これらの脚19によって反応炉1が支持される。外容器本体10Bを構成する外殻10oは、筒状(本実施形態では円筒形状)の外殻側部10osと、その一端部に設けられる外殻底部10obとで構成される底付きの容器である。また、内殻10iは、筒状(本実施形態では円筒形状)の内殻側部10isと、その一端部に設けられる内殻底部10ibとで構成される底付きの容器である。外殻底部10ob及び内殻底部10ibは、本実施形態においては外殻側部10os及び内殻側部10isが円筒形状であるため、いずれも平面視が円形の板材であるが、外殻側部10os及び内殻側部10isの形状に合わせて形状を異ならせる。
外容器本体10Bは、外殻10oの内側に内殻10iを配置するとともに、外殻10oの他方の端部(開口部側)と内殻10iの他方の端部(開口部側)とを環状かつ板状の端部封止部材10tで連結して構成される。このように構成することにより、外容器本体10Bは、外殻側部10osと外殻底部10obと内殻側部10isと内殻底部10ibと端部封止部材10tとで囲まれる空間を有する二重構造の容器となる。そして、外容器本体10Bが有する前記空間が、本体側冷却媒体通路10Bcとなる。また、外容器本体10Bは、一端部が底部10Bbによって閉じられ、他端部が開口したコップ状の容器となる。
蓋10Cは、筒状(本実施形態では円筒形状)の蓋側部10Csと、蓋側部10Csの両端部にそれぞれ取り付けられる端版10Ctとで構成される。これによって、蓋10Cは、蓋側部10Csとそれぞれの端版10Ctとで囲まれる空間を有する中空構造の構造体となる。そして、前記空間が、蓋側冷却媒体通路10Ccとなる。蓋10Cは、例えば、蝶番によって、外容器本体10Bの開口部に開閉自在に取り付けられる。蓋10Cと外容器本体10Bの端部封止部材10tとの間には、例えば、耐熱性のシール部材が配置されており、蓋10Cを閉じると、外容器本体10Bと蓋10Cとで囲まれる空間が密封されるように構成される。
外容器本体10Bを構成する外殻10oには、外殻10oの外側と本体側冷却媒体通路10Bcとを連通する本体側冷却媒体供給口13IB、及び本体側冷却媒体通路10Bcと外殻10oの外側とを連通する本体側冷却媒体排出口13EBとが設けられる。本体側冷却媒体供給口13IBには、冷却媒体供給手段である冷却用ポンプ5の吐出口が接続されており、冷却用ポンプ5から吐出された冷却媒体(本実施形態では水)Wが供給される。本体側冷却媒体供給口13IBへ供給された冷却媒体Wは、本体側冷却媒体通路10Bc全体を流れる過程で外容器本体10Bを冷却して、本体側冷却媒体排出口13EBから排出される。
蓋10Cには、蓋10Cの外側と蓋側冷却媒体通路10Ccとを連通する蓋側冷却媒体供給口13IC、蓋側冷却媒体通路10Ccと蓋10Cの外側とを連通する蓋側冷却媒体排出口13ECとが設けられる。蓋側冷却媒体供給口13ICには、冷却用ポンプ5の吐出口が接続されており、冷却用ポンプ5から吐出された冷却媒体Wが供給される。この冷却媒体Wは、蓋側冷却媒体通路10Cc全体を流れる過程で蓋10Cを冷却して、蓋側冷却媒体排出口13ECから排出される。
本体側冷却媒体排出口13EB及び蓋側冷却媒体排出口13ECから排出された冷却媒体Wは、冷却媒体冷却器4によって冷却された後、冷却用ポンプ5の吸入口から吸入される。そして、冷却用ポンプ5によって再び本体側冷却媒体通路10Bc及び蓋側冷却媒体通路10Ccへ供給される。このように、本実施形態において、冷却媒体Wは、冷却用ポンプ5によって、本体側冷却媒体通路10Bc及び蓋側冷却媒体通路10Ccと冷却媒体冷却器4との間を循環する。
本実施形態において、外容器本体10B及び蓋10Cは、金属、例えば、ステンレス鋼で構成される。HDDR反応中において、反応炉1の外容器10の内部空間10I、すなわち、外容器本体10Bと蓋10Cとで囲まれる空間に水素が供給されるとともに、外容器本体10Bの内部に配置される加熱器2によって内部空間10Iの雰囲気温度が600℃〜1000℃程度まで昇温する。このため、HDDR反応中において、外容器10は高温になる。上述したように、外容器10はステンレス鋼等の金属で構成されるので、外容器10が昇温すると、内部空間10Iに存在する水素が外容器10を透過して外部に漏れてしまう。
このため、本実施形態では、外容器10の外容器本体10B及び蓋10Cにそれぞれ本体側冷却媒体通路10Bc及び蓋側冷却媒体通路10Ccを設け、HDDR反応中に冷却媒体Wを本体側冷却媒体通路10Bc及び蓋側冷却媒体通路10Ccへ流すことにより、外容器本体10B及び蓋10Cを冷却する。これによって、HDDR反応中における外容器10の昇温を抑制して、内部空間10Iから外容器10を透過して外部へ漏れる水素の量を低減する。また、本体側冷却媒体通路10Bc及び蓋側冷却媒体通路10Ccを設けることにより、直接冷却媒体Wを外容器本体10B等へ噴射する場合と比較して、冷却に供されない冷却媒体Wの量を低減できるので、冷却媒体Wを有効に利用できる。
なお、水素透過率の低い材料(例えば、ガラス)で本体側冷却媒体通路10Bc及び蓋側冷却媒体通路10Cc側における外容器本体10B及び蓋10Cの表面を被覆してもよい。このようにすれば、水素透過率の低い材料が水素の透過を抑えるので、内部空間10Iから外容器10を透過して外部へ漏れる水素の量をさらに低減できる。なお、水素透過率の低い材料とステンレス鋼とで線膨張係数が異なる場合、HDDR反応中に外容器10が昇温すると、線膨張係数の相違に起因して水素透過率の低い材料が割れたり外容器10から剥離したりするおそれがある。しかし、本実施形態では、冷却媒体Wによって外容器10を冷却するので、ステンレス鋼で構成される外容器10の昇温を抑制できる。その結果、水素透過率の低い材料とステンレス鋼とで線膨張係数が異なる場合でも、外容器10の膨張を抑制できるので、水素透過率の低い材料の割れや剥離を抑制できる。
また、本体側冷却媒体通路10Bc及び蓋側冷却媒体通路10Cc側における外容器本体10B及び蓋10Cの表面に、伝熱性能を向上させる部材、例えば、フィンを設けてもよい。これによって、本体側冷却媒体通路10Bc及び蓋側冷却媒体通路10Cc内の伝熱面積を増加させることができるので、より効率的に外容器本体10Bや蓋10Cを冷却することができる。なお、外容器冷却手段は、本体側冷却媒体通路10Bc及び蓋側冷却媒体通路10Ccに限定されるものではない。例えば、本体側冷却媒体通路10Bc及び蓋側冷却媒体通路10Ccを設けず、直接外容器に冷却媒体を噴射してもよい。このようにすれば、外容器の構造を簡略化できる。また、冷却媒体Wは水以外でもよい。
内容器20は、外容器10の内部、すなわち、内部空間10Iに配置される。内容器20は、筒状(本実施形態では円筒形状)の内容器側部21と、その一端部に設けられる内容器蓋部材22Tと、他端部に設けられる内容器底部材22Bとで構成されており、HDDR反応中に、内部に磁性材料粉末の原料(磁性粉原料)Sを保持する筒状の容器である。内容器側部21と、内容器底部材22Bと、内容器蓋部材22Tとは金属材料(本実施形態ではステンレス鋼)で構成される。
内容器蓋部材22T及び内容器底部材22Bは、開口としてそれぞれ第1開口23T及び第2開口23Bを有する。第1開口23T及び第2開口23Bを設けることにより、HDDR反応においては、HD(水素化・分解)反応で水素が第1開口23Tあるいは第2開口23Bを通って内容器20内に保持された原料Sへ確実に供給される。また、DR(脱水素・再結合)反応で原料Sから放出される水素が第1開口23Tあるいは第2開口23Bから内容器20の外部へ確実に放出される。これによって、HDDR反応を確実に実現できるとともに、内容器20が膨張して変形することもない。
さらに、第1開口23T及び第2開口23Bを設けることにより、内容器20の内部へ計測器具や各種の機能を有する器具を挿入し、配置したり、加熱器2を内容器20の内部へ配置したりすることもできる。なお、本実施形態において、第1開口23T及び第2開口23Bの形状は、平面視が円形であるが、第1開口23T及び第2開口23Bの形状は、これに限定されるものではない。また、第1開口23T及び第2開口23Bは、それぞれ複数設けてもよい。
本実施形態においては、第1開口23T及び第2開口23Bが円形であり、また内容器側部21が円筒形状なので、内容器底部材22B及び内容器蓋部材22Tの形状は、それぞれ環状である。また、内容器底部材22B及び内容器蓋部材22Tは板状の部材である。そして、内容器底部材22B及び内容器蓋部材22Tは、それぞれ内容器20の両方の端面となる。内容器底部材22Bと内容器蓋部材22Tとは、対向して配置されるとともに、両者の板面が平行になるように配置される。なお、内容器底部材22B及び内容器蓋部材22Tは、内容器側部21の形状に合わせて形状を異ならせる。
本実施形態において、内容器蓋部材22Tは、内容器側部21に対して取り外しできるように構成されることが好ましい。これによって、原料Sを内容器20の内部へ投入しやすくなるので、作業性が向上する。なお、内容器蓋部材22Tを内容器側部21に固定した場合でも、第1開口23T又は第2開口23Bから原料Sを投入することができる。内容器20の第2開口23Bから内容器20の内部へは、温度センサ支持体3が差し込まれている。温度センサ支持体3は、内容器20の内部に差し込まれた先端部に温度検出手段である温度センサ8が取り付けられている。温度センサ8は、例えば、熱電対等が用いられる。温度センサ8によって、内容器20の内部に保持されている原料Sの反応雰囲気温度が計測される。このように、温度センサ8は、内容器20の内部に差し込まれて、原料Sの近傍に配置されるので、反応雰囲気温度をより正確に計測できる。これによって、HDDR反応を高精度で制御できる。
図4は、内容器が有する軸部材を示す斜視図である。本実施形態において、内容器20は、両端が開口した筒状(本実施形態では円筒形状)の軸部材24を有する。軸部材24は、金属材料(本実施形態ではステンレス鋼)で構成されており、図2に示すように、内容器蓋部材22Tと内容器底部材22Bとを、それぞれ第1開口23Tの部分と第2開口23Bの部分とで接続している。これによって、軸部材24は、内容器20とともに回転又は揺動する。
また、軸部材24は、側面に複数の孔25を有する。この孔25から、水素やアルゴンが内容器20の内部へ流入し、内容器20の内部に保持されている原料Sに供給される。軸部材24を設けることで、原料Sの飛散(特に、HDDR反応終了後における原料Sの冷却時)を抑制できる。また、内容器20の内部へ供給される水素やアルゴンは、軸部材24が有する複数の孔25を通過する際に整流されるので、乱れた流れが原料に流れる場合と比較して、原料の飛散を抑制できる。なお、本実施形態において、内容器20は、第1開口23T及び第2開口23Bを備えていればよく、軸部材24を必ずしも設ける必要はない。
内容器20は、内容器20の両端面、すなわち、内容器底部材22B及び内容器蓋部材22Tと交差(本実施形態では直交)する軸(内容器回転軸)Zrを中心として回転又は揺動できるように、外容器本体10Bの内部に配置される。次に、この構造を説明する。外容器10を構成する外容器本体10Bの内殻10iには、複数(本実施形態では4本)の内容器支持部材16が設けられる。内容器支持部材16は柱状の部材であって、一端部が内殻10iに取り付けられる。内容器支持部材16は、内容器回転軸Zrと平行な方向において、内容器20のそれぞれの端面よりも外側に2本ずつ配置される。すなわち、内容器回転軸Zrと平行な方向において、内容器20は、それぞれ2本の内容器支持部材16によって挟まれることになる。
内容器回転軸Zrと平行な方向において、内容器蓋部材22Tの外側に配置された2本の内容器支持部材16、及び内容器底部材22Bの外側に配置された2本の内容器支持部材16は、それぞれ対向して配置される。そして、内容器20のそれぞれの端面よりも外側において対向して配置される内容器支持部材16同士の間隔は、内容器20の外径よりも小さい。また、内容器回転軸Zrと平行な方向においては、内容器回転軸Zrを挟んでそれぞれ2本の内容器支持部材16が内容器回転軸Zrと平行な直線上に配置される。
内容器回転軸Zrと平行な直線上に配置される2本の内容器支持部材16は、それぞれの他端部、すなわち、内殻10iへの取付側端部とは反対側の端部で、内容器回転軸Zrと平行な軸を中心として支持ローラー17が回転できるように両持ちで支持する。支持ローラー17は、側部17Sが内容器側部21と接触している。これによって、内容器20は、2本の支持ローラー17及び内容器支持部材16を介して外容器10の外容器本体10Bに支持されており、内容器支持部材16及び支持ローラー17が内容器支持手段として機能する。
内容器20は、内容器駆動手段である内容器駆動装置18によって、内容器回転軸Zrを中心に回転又は揺動させられる。内容器駆動装置18は、支持体18Sと、動力伝達部材である回転体18Rと、動力発生手段である電動機18Mとで構成される。電動機18Mは、制御装置50によって制御される。回転体18Rは、電動機18Mからの動力を歯車やチェーン等の動力伝達機構を介して伝達されて、内容器回転軸Zrと平行な軸を中心として回転する。回転体18Rの外周部は内容器20の内容器側部21の外周部と接しているので、回転体18Rが回転すると、内容器20は回転体18Rが回転する方向とは反対方向に回転する。内容器20は、回転のみならず、制御装置50によって、内容器20の回転角が360度以内で回転方向を切り替えるように電動機18Mを制御することにより、内容器20を揺動させてもよい。
図5は、内容器の他の例を示す斜視図である。図5に示す内容器20aは、上述した内容器20と同様に、内容器側部21aと、内容器側部21aの一端部に設けられる内容器蓋部材22Taと、内容器側部21aの他端部に設けられる内容器底部材22Baとで構成される。内容器側部21aは、筒状の構造体の一部を切り取った形状であり、側部開口21Haを有する。内容器20aは、この側部開口21Haから内容器20a内に原料を供給したり、取り出したりすることができる。また、側部開口21Haから内容器20aの内部へ水素やアルゴンが流入し、原料から放出される水素は、側部開口21Haから流出する。なお、原料の飛散を抑制するため、側部開口21Haに複数の孔を有する蓋を取り付け及び取り外し可能に設けてもよい。
内容器20aは、側部開口21Haを有するので、回転させることはできない。このため、内容器20aは揺動のみ可能である。内容器20aは、側部開口21Haを有するので、上述した第1開口23T及び第2開口23Bを、それぞれ内容器蓋部材22Ta及び内容器底部材22Baに設けなくてもよい(設けてもよい)。このため、内容器蓋部材22Ta及び内容器底部材22Baの加工が容易になるとともに、第1開口23T及び第2開口23Bを設けない分、内容器20a内において、原料Sを保持する容積を大きくすることができる。これによって、大量の磁性材料用粉末を製造しやすくなる。さらに、側部開口21Haから温度センサ8を先端部に有する温度センサ支持体3を内容器20a内に差し込めばよいので、温度センサ支持体3を必ずしも内容器回転軸Zr上に設ける必要はない。これによって、反応炉1の設計の自由度が向上する。
反応炉1は、HDDR反応中に、内容器駆動手段によって原料Sが内部に保持された内容器20を回転又は揺動させることによって、原料Sを攪拌したり粉砕したりすることができる。なお、内容器駆動手段は、このような構造に限定されるものではなく、例えば、回転体18Rの外周部に歯車を設けるとともに、内容器側部21の外周部に前記歯車と噛み合う歯車を設けて、両方の歯車を噛み合わせることにより、回転体18Rの回転力を内容器側部21へ伝達するようにしてもよい。また、内容器駆動手段は、支持ローラー17を動力発生手段によって回転させることにより、内容器20を回転させるものであってもよい。
このように、内容器20は外容器10の内部で回転又は揺動する。このため、第2開口23Bから内容器20の内部へ差し込まれた温度センサ支持体3は、前記回転や揺動によって内容器底部材22Bと干渉しないように構成する必要がある。したがって、温度センサ支持体3が差し込まれる第2開口23Bは、少なくとも内容器回転軸Zrを含んで形成されることが好ましい。このようにすれば、内容器20が1回転した場合に第2開口23Bと内容器回転軸Zrとが接触しない部分を形成できる。このため、第2開口23Bと内容器回転軸Zrとが最も接近する部分よりも内容器回転軸Zrの領域(例えば、前記回転軸上)に温度センサ支持体3を配置すれば、内容器20が回転又は揺動しても、温度センサ支持体3と内容器底部材22Bとが干渉しないようにすることができる。本実施形態では、内容器回転軸Zr上に第2開口23Bの中心を配置するとともに、内容器回転軸Zr上に温度センサ支持体3を配置する。これによって、内容器20が回転又は揺動した場合に、温度センサ支持体3と内容器底部材22Bとが干渉しないようにしている。
反応炉1は、筒状の内容器20を横置き、すなわち、内容器回転軸Zrが鉛直方向(重力の作用方向)と直交するように配置して、原料Sを内容器20の内部に保持させる。したがって、原料Sは、内容器20の内部であって、第1開口23T及び第2開口23Bよりも下(鉛直方向側)の領域に保持されることになる。このため、第1開口23T及び第2開口23Bが内容器回転軸Zrから離れた位置に配置されていたり、第1開口23T及び第2開口23Bが内容器回転軸Zrを含むが、これよりも偏心して配置されていたりすると、内容器20内において、原料Sを保持する容積は小さくなる。したがって、第1開口23T及び第2開口23Bを円形とするとともに、第1開口23T及び第2開口23Bが内容器回転軸Zrを含み、かつ内容器回転軸Zr上に第1開口23T及び第2開口23Bの中心を配置することが好ましい。このようにすれば、原料Sを保持する容積を内容器20内に確保しやすくなるので、大量の磁性材料用粉末を製造するのに適した構造を構成しやすくなる。
反応炉1は、内容器20の外側かつ外容器10の内側、すなわち、内容器20を構成する内容器側部21と外容器10を構成する外容器本体10Bの内殻10iとの間に、加熱器2が配置される。加熱器2を内容器20の外側に配置することにより、加熱器2の配置の自由度が向上するという利点がある。加熱器2は、例えば、電気ヒーターであり、制御装置50によって制御される。HDDR反応においては、加熱器2によって、内容器20を介して内容器20内に保持された原料Sを加熱する。なお、後述するように、加熱器2は、内容器20の内側に配置してもよい。また、加熱器2と外容器10を構成する外容器本体10Bの内殻10iとの間には、断熱材を配置することが好ましい。このようにすることで、加熱器2から放出される熱やHDDR反応時に発生する熱が外容器本体10Bへ伝わることを断熱材によって抑制できるので、外容器本体10Bの昇温をより効果的に抑制できる。
反応炉1は、外容器10の内部に気体を導入する気体導入口12I、及び外容器10の内部の気体を外容器10の外部へ排出する気体排出口12Eを有する。気体導入口12I及び気体排出口12Eは、外容器10を構成する外容器本体10Bの外殻10oと内殻10iとを貫通して、外容器本体10Bの外側と内側とを連通する。気体導入口12Iには外容器10の内部空間10Iの圧力を検出する圧力検出手段として、圧力センサ9が設けられる。これによって、例えば、磁性材料用粉末の製造時において、内部空間10Iの圧力を検出し、必要な圧力に制御する。なお、圧力センサ9は、内部空間10Iの圧力が検出できればよいので、その取付箇所は気体導入口12Iに限定されるものではない。
気体導入口12Iには、気体供給通路30が接続されている。気体供給通路30には、気体供給手段である気体供給ポンプ6が設けられている。気体供給ポンプ6の吐出口は気体供給通路30を介して気体導入口12Iと接続され、吸入口は気体供給通路30を介して開閉弁32、33と接続される。また、気体供給ポンプ6の吐出口と気体導入口12Iとの間には、開閉弁36が設けられる。開閉弁32の気体供給ポンプ6とは反対側には水素を貯蔵する水素タンク34が接続され、開閉弁33の気体供給ポンプ6とは反対側には不活性ガスであるアルゴンを貯蔵するアルゴンタンク35が接続される。このような構成により、気体供給ポンプ6は、気体供給通路30及び気体導入口12Iを介して内部空間10Iへ気体(本実施形態では水素又はアルゴン)を供給する。なお、水素は、HDDR反応に用いられ、アルゴンは、HDDR反応後における原料Sを冷却する際に用いられる。水素及びアルゴンは、いずれも気体の状態で内部空間10Iへ供給される。
気体排出口12Eには、気体排出通路31が接続されている。気体排出通路31には、気体排出手段である排気ポンプ7が設けられている。排気ポンプ7は、制御装置50によって制御される。排気ポンプ7の吸入口と気体排出口12Eとの間には、開閉弁37が接続される。このような構成により、排気ポンプ7は、気体排出口12E及び気体排出通路31を介して内部空間10Iの気体を外容器10の外部へ排出する。なお、本実施形態において、気体供給ポンプ6、排気ポンプ7、開閉弁32、33、36、37は、制御装置50によって制御される。
外容器10の内部空間10Iへ水素を供給する場合には、開閉弁32及び開閉弁36を開き、開閉弁33及び開閉弁37を閉じて気体供給ポンプ6を駆動する。また、内部空間10Iへアルゴンを供給する場合には、開閉弁33及び開閉弁36を開き、開閉弁32及び開閉弁37を閉じて気体供給ポンプ6を駆動する。内部空間10Iの気体を排出する場合には、開閉弁37を開き、開閉弁36を閉じて排気ポンプ7を駆動する。
反応炉1は、気体導入口12Iから供給された気体を、内容器20の内部へ導く気体流れ制御手段として、導風体15を有する。導風体15は、内容器20の第1開口23Tと対向する位置に開口(以下、導入口)15Hが設けられた、環状の板状部材である。本実施形態において、導風体15は、気体導入口12Iと気体排出口12Eとの間、かつ内容器20の第1開口23Tと気体導入口12Iとの間に設けられており、導入口15Hを介して気体導入口12Iから流入した気体を内容器20の内部へ導入する。なお、本実施形態においては、導風体15と第1開口23Tとの距離が離れているため、導入口15Hに筒状の構造体である導入筒15Sを取り付けているが、導風体15と第1開口23Tとの距離が近い場合、導入口15Hは単なる孔であってもよい。
この導風体15によって、気体導入口12Iと気体排出口12Eとを仕切り、気体導入口12Iから流入した水素やアルゴンが内容器20の外部を通って気体排出口12Eから排出される現象を抑制する。これによって、磁性材料用粉末の製造時においては、気体導入口12Iから流入した水素やアルゴンが、内容器20の内部に保持されている原料Sへ効率よく供給される。また、内容器20の第1開口23Tと気体導入口12Iとの間に導風体15を設けることにより、導入口15Hと第1開口23Tとの距離を小さくでき、また、気体導入口12I側における外容器10の内部空間10Iの容積を気体排出口12E側よりも小さくできる。これによって、水素やアルゴンを効率よく内容器20の内部に保持されている原料Sへ供給できる。
本実施形態において、導入口15Hの形状は円形であるが、これに限定されるものではない。なお、導入口15Hが第1開口23Tよりも大きいと、第1開口23Tから流入せず内容器20の外部へ流れる水素やアルゴンが増加し、また、導入口15Hが第1開口23Tよりも小さいと、導入口15Hを通過する水素やアルゴンの流量が低減する結果、内容器20の内部への水素やアルゴンの流入効率が低下することが考えられる。このため、導入口15Hの形状及び大きさを内容器20の第1開口23Tと同じとすることにより、内容器20の外部へ流れる水素やアルゴンの量を抑制しつつ、前記流入効率の低下を抑制できる。
内容器支持部材16や支持ローラー17と導風体15とが干渉する場合には、これらと導風体15とが干渉しないように、導入口15H以外の開口を導風体15に設けてもよい。本実施形態において、導風体15は、外容器10の蓋10Cに取り付けられており、蓋10Cを開くと蓋10Cとともに移動する。これによって、蓋10Cを開き、内容器20を外容器10の内部空間10Iに配置したり、内容器20を内部空間10Iから取り出したりする際の作業効率の低下を抑制できる。なお、導風体15は、外容器本体10Bの内殻10iの内側に、取り付け及び取り外し自在に設けてもよい。
図6の(a)及び(b)は、導風体の変形例を示す模式図である。導風体15は、気体導入口12Iと気体排出口12Eとの間に配置されていればよく、内容器20の第1開口23Tと気体導入口12Iとの間に配置される構成に限定されるものではない。例えば、図6の(a)に示すように、内容器20の周囲に導風体15aを設けてもよい。この場合、貫通口15Haを導風体15aに設け、内容器20をこの貫通口15Haに貫通させる。
このようにしても、導風体15aによって気体導入口12Iと気体排出口12Eとが仕切られるので、内容器20の外部を通って気体排出口12Eから排出される水素やアルゴンの量を低減できる。その結果、磁性材料用粉末の製造時においては、気体導入口12Iから流入した水素やアルゴンが、内容器20の内部に保持されている原料Sへ効率よく供給される。また、図6の(a)に示す導風体15aは、外容器本体10Bの内殻10iに固定してよいので、内殻10iに対して取り付け及び取り外しできる構造にする必要はない。これによって、前記取り付け、取り外しできる構造が不要になるので、反応炉1の構成を簡単にすることができる。
さらに、図6の(b)に示す導風体15bのように、筒状の構造体である導入筒15Sを導入口15Hに取り付けるとともに、導入口15Hに取り付けられる端部とは反対側の端部が内容器20の第1開口23T内に配置される。このようにすれば、導入口15Hを通過した水素やアルゴンを、内容器20の内部に保持されている原料Sへ効率よく供給できる。なお、気体流れ制御手段は、導風体15、15a、15bに限定されるものではない。例えば、気体導入口12Iに第1開口23Tへ導くダクトを取り付けたり、気体導入口12Iから流出した水素やアルゴンを、送風手段(例えば、ファン)で第1開口23Tへ導いたりしてもよい。
なお、本実施形態において、反応炉1は、磁性材料用粉末の原料Sを攪拌する攪拌手段を有していてもよい。HDDR反応中に、内容器20の回転又は揺動に加えて、攪拌手段によって原料Sを攪拌すると、原料Sがさらに均一になり、磁性材料用粉末の品質がより向上する。次に、攪拌手段について説明する。
図7,8は、攪拌手段を備えた内容器の一例を示す図である。図7に示す内容器20bは、攪拌手段として、内容器20bの内壁20iwbから突出する部材(内容器突起部)26を有する。この内容器突起部26により、内容器20bが回転又は揺動する過程で、内容器20b内に保持された原料Sを攪拌する。これによって、より原料Sが攪拌され、かつ粉砕されて微細化されるので、原料Sの外側のみならず内部まで均一に反応が進行して、磁性材料用粉末の品質が向上する。また、内容器突起部26により、原料Sの塊を粉砕することもできる。さらに、内容器突起部26により、内容器20bの伝熱面積が大きくなるので、内容器20bから原料S、あるいは原料Sから内容器20bへ効率的に熱を伝えることもできる。
図8の(a)及び(b)に示す内容器20c、20dは、内容器回転軸Zrと直交する断面の内形状を多角形(この例では六角形)として、攪拌手段としている。このようにすると、多角形の角部によって原料が粉砕され、攪拌される効果により、内容器回転軸Zrと直交する断面の内形状が円形である内容器20と比較して、より原料が攪拌され、かつ微細化されるので、より原料の内部まで均一に反応が進行して、磁性材料用粉末の品質が向上する。
図8の(b)に示す内容器20dは、内容器回転軸Zrと直交する断面の外形状も、内形状と相似形状の多角形としたものである。この場合、内容器20dは、図2に示すように、2本の支持ローラー17及び内容器支持部材16を介して外容器10の外容器本体10Bに支持されるため、内容器20dの一部に、外形状が円形の支持部20dhを設けることにより、内容器20dを滑らかに回転又は揺動させることができる。
<希土類ボンド磁石の製造方法>
希土類ボンド磁石の製造に用いる原料粉末は、HDDR法によって得られた磁性粉末を含むものであるが、この磁性粉末のみを含むものであってもよく、必要に応じて他の成分が添加されたものであってもよい。
例えば、磁性粉末が、希土類元素として軽希土類元素を含む組成を有する合金からなる場合、原料粉末には、重希土類元素の化合物を添加することが好ましい。これにより、希土類ボンド磁石において、高いBrが得られるとともに、HcJを向上させることが可能となる。
重希土類元素としては、Dy又はTbが好ましい。重希土類元素の化合物としては、重希土類元素の水素化物、酸化物、ハロゲン化物及び水酸化物から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。また、重希土類元素の化合物は、重希土類金属元素以外の元素を有していてもよく、例えば、重希土類金属と希土類金属以外の金属との合金であってもよい。
優れた磁気特性を有する希土類ボンド磁石を得る観点からは、重希土類元素の化合物は、重希土類元素の水素化物又はフッ化物を含むものであると好ましく、水素化物を含むものであるとより好ましい。このような重希土類元素の化合物を用いると、希土類ボンド磁石中に残存する不純物の量を十分に低くすることができる。また、重希土類元素の水素化物及びフッ化物は容易に分解することから、HDDR法による処理によって得られた、組織が微細である磁性粉末に対しても、十分に均一に重希土類元素を拡散させることができる。重希土類元素の化合物の例としては、DyH、DyF及びTbHが挙げられる。
重希土類元素の化合物は、粉末の状態で原料粉末に添加されると好ましい。粉末は、市販の又は通常の方法によって得られた重希土類元素の化合物を、ジェットミル等を用いて乾式粉砕する方法や、有機溶媒と混合してスラリーとした後に、ボールミル等を用いて湿式粉砕することによって調製することができる。
軽希土類元素を含む組成を有する合金から得られた磁性粉末と、重希土類元素の化合物とを混合する場合、重希土類元素の化合物の好適な添加量は、磁性粉末に対して、0.5〜10質量%であると好ましく、1〜5質量%であるとより好ましい。このような割合で重希土類元素の化合物を添加することで、Br及びHcJの両方が高められる傾向にある。
また、原料粉末は、磁性粉末や重希土類元素の化合物のほかに、潤滑剤を含んでいてもよい。適切な潤滑剤を含むことで、磁場中成形時にさらに良好に磁性粉末の配向を生じさせることができる。潤滑剤は、磁性粉末にコーティングされて摩擦を少なくすることにより、磁性粉末を動き易くすることが可能な成分であり、少なくとも樹脂ではない。潤滑剤は、200℃以下では揮発しないものが好ましく、250℃以下では揮発しないものがより好ましい。これにより、成形時に潤滑剤が揮発することなく十分に機能することができ、配向性の向上効果が得られ易くなる。
潤滑剤としては、例えば、カルボキシル基、水酸基又はエステル基を有する化合物を用いることができる。具体的には、脂肪族基の末端にカルボキシル基が結合した脂肪族カルボン酸(脂肪酸)、脂肪族基の末端に水酸基が結合した脂肪族アルコール、又は、前述した脂肪酸のアルキルエステルが好適である。脂肪族基としては、直鎖状の脂肪族基が好ましく、直鎖状の飽和脂肪族基がより好ましい。
また、これらの化合物としては、カルボキシル基やエステル基を除いた炭素数が、好ましくは6〜18、より好ましくは8〜12であるものがより好ましく、例えばオクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、オクタデカン酸が好ましい。このような化合物は、磁性粉末との混合性が特に良好であり、磁性粉末のコーティングに適している。
潤滑剤の添加量は、磁性粉末や潤滑剤の種類によっても異なるが、例えば、磁性粉末の質量に対して、好ましくは0.01〜1.0質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%、更に好ましくは0.01〜0.2質量%である。潤滑剤の添加量が好適な範囲よりも少なすぎると、好適範囲内である場合に比べて、磁性粉末のコーティングが不十分となると考えられ、そのため潤滑剤としての作用が小さく配向度の改善が見られなくなる傾向にある。またコーティング剤としての働きも小さくなり、成形時に磁性粉末が大気に触れて酸化することによる劣化や、有機溶媒と混合した際の磁性粉末の酸化による劣化が生じ易くなる。一方、多すぎる場合、好適範囲内である場合に比べて、熱処理後の磁石中に残存する非磁性の成分が多くなり、磁気特性の劣化につながるおそれがある。また重希土類金属を混合する場合は、重希土類元素の拡散が阻害され、所望とする保磁力の向上効果が得られ難くなる傾向にある。
原料粉末は、磁性粉末に、必要に応じて重希土類元素の化合物や潤滑剤を加えて混合することにより得ることができる。この際、溶媒を加えて混錬するようにしてもよい。溶媒は、成形工程前や成形工程後に除去することが好ましい。溶媒としては、原料粉末や成形体からの除去が容易となるように、揮発性の高いものが好ましく、例えばアルコール類が好適である。なお、原料粉末には、原料粉末や成形体からの除去が困難な樹脂は添加しない。
(成形工程)
成形工程では、上記のようにして準備した原料粉末を磁場中、80〜200℃で加熱しながら成形して、所望の形状を有する成形体を作製する。成形は、例えば、機械プレスや油圧プレス等の圧縮成形機を用いた圧縮成形により行うことができる。具体的には、原料粉末を金型キャビティ内に充填した後、充填された粉末を上パンチと下パンチとの間で挟むようにして加圧することにより、原料粉末を所定形状に成形することができる。成形によって得られる成形体の形状は特に制限されず、C型、柱型、平板型、リング型等、所望とする希土類ボンド磁石の形状に応じて決定する。
成形工程では、80〜200℃、好ましくは100〜180℃の加熱を行う。このような好適な温度範囲で加熱しながら磁場中成形を行うことで、原料粉末中の磁性粉末が有しているHcJを一時的に低下させることができ、磁場による磁性粉末の配向を生じさせ易くすることができる。
加熱温度が80℃以下であると、成形中の磁性粉末のHcJが十分に低下せず、配向が良好に生じなくなる。一方、200℃を超えるような高い温度にすると、潤滑剤を添加した場合には、成形体中の潤滑剤が揮発し易くなって、潤滑剤による配向性の向上効果が得られ難くなる。また、成形に用いる金型に熱膨張が生じ、所望とする形状の成形体が得られ難くなる場合があるほか、温度が高すぎる場合は成形時に金型が破壊されるおそれもある。さらに、そのような高温では、磁性粉末の酸化が生じ易くなるため、それを制御するための雰囲気処理が必要となってコストアップの要因となる。
磁場中成形時の加圧圧力は、好ましくは200〜1200MPaであり、磁界は、好ましくは800〜2000kA/mである。なお、成形方法としては、上述のように混合粉末をそのまま成形する乾式成形のほか、混合粉末を溶媒に分散させたスラリーを成形する湿式成形を適用することもできる。この場合、溶媒としては油等を適用できる。
(熱処理工程)
成形工程によって得られた成形体には、必要に応じて熱処理を施してもよい。熱処理は、例えば、成形体を減圧下又はアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気下、好ましくは600〜950℃、より好ましくは700〜950℃、さらに好ましくは750〜900℃で、1〜12時間保持することにより行うことができる。
熱処理工程は、特に、原料粉末が、軽希土類元素を含む組成を有する合金からなる磁性粉末と、重希土類元素の化合物とを含むものである場合に実施することが好ましい。これにより、重希土類元素を、磁性粉末の粒内に良好に拡散させることができ、希土類ボンド磁石のHcJを良好に向上させることが可能となる。
また、磁性粉末は、HDDR処理が施されたものであるため、粒子に微細なクラックが存在するが、熱処理工程を行うことによって、このクラックに重希土類元素の化合物を侵入させて、クラックを埋めることも可能となる。このため、最終的に得られる希土類ボンド磁石の耐酸化性及び強度も向上させることができる。
(含浸工程)
含浸工程では、成形体、好ましくは熱処理後の成形体に樹脂を含浸させる。樹脂としては、通常希土類ボンド磁石において磁性粉末の結着に用いられるものを特に制限なく適用することができる。樹脂としては、熱硬化性樹脂を適用することができ、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が好ましい。
成形体に対する樹脂の含浸は、例えば、次のようにして行うことができる。すなわち、まず、成形体を、予め調製しておいた樹脂を含有する溶液に浸漬した状態で密閉容器に入れ、容器内を減圧することによって脱泡させた後、大気圧に戻すことによって溶液を成形体の空隙内に浸透させる。その後、成形体を溶液から取り出し、成形体の表面に付着した余剰の溶液を取り除く。余剰の溶液を取り除く方法としては、遠心分離機などを用いて溶液を振り払う方法が挙げられる。
成形体は、樹脂を含有する溶液に浸漬する前に、トルエン等の溶剤に浸漬してもよい。これによって、成形体中の磁性粉末の濡れ性が改善されて、樹脂の含浸量を増やすことが可能となり、成形体中の空隙を減らすことができる。
樹脂を含有する溶液は、樹脂を溶媒に溶解させることによって調製することができる。溶媒としては、トルエン、アセトン、エチルアルコールなどの一般的な有機溶媒を用いることができる。溶媒は、樹脂を十分に溶解させるために、樹脂の種類に応じて選択することが好ましい。樹脂を含有する溶液における樹脂の含有率に特に制限はないが、空隙の少ない希土類ボンド磁石を得るためには、樹脂の含有率は高いほど好ましい。空隙を少なくすることで、樹脂の硬化後に磁石の強度が増すとともに、耐食性が向上することも期待できる。なお、樹脂自体の粘性がそれほど高くなければ、樹脂を含有する溶液に代えて、樹脂そのものを用いることもできる。
(硬化工程)
硬化工程では、成形体に含浸された樹脂を硬化させる。これにより、希土類ボンド磁石が得られる。樹脂の硬化は、例えば、樹脂を含有する溶液が浸透された成形体を、恒温槽に入れ、減圧雰囲気(1kPa以下)又はアルゴンガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下、120〜230℃で1〜10時間保持することにより行うことができる。このような処理により、樹脂を含有する溶液に含まれる溶媒を蒸発させるとともに、樹脂を硬化させる。この硬化工程は大気中で処理を行っても良い。
希土類ボンド磁石における樹脂の含有率は、優れた磁気特性と優れた形状保持性とを両立させる観点から、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%である。同様の観点から、希土類ボンド磁石における磁性粉末の含有率は、好ましくは90〜99質量%であり、より好ましくは94〜98質量%である。希土類ボンド磁石における樹脂の含有率や磁性粉末の含有率は、樹脂を含有する溶液における樹脂成分の濃度や、成形体を作製する際の成形圧力を変えることによって調整することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(原料合金の調製)
本発明の内容を実施例及び比較例を用いて以下に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ストリップキャスト法によって、以下の組成を有するNdFe14B原料合金を調製した。
Nd:28.00質量%
Fe:70.01質量%
B:1.08質量%
Ga:0.36質量%
Nb:0.30質量%
この原料合金は、上述の元素の他に、微量の不可避不純物(原料合金全体の0.2〜0.3質量%)を含んでいた。この原料合金を、真空中、1000〜1200℃の温度範囲で24時間保持した(均質化熱処理工程)。均質化熱処理後のNdFe14B原料合金を篩分けして、平均粒径30mmの原料合金を得た。
この原料合金7.0kgとメディア3.0kgとを図2に示す構成の反応炉に投入した。反応炉の内容器を回転させて、原料合金中にメディアを分散させた(混合工程)。なお、メディアとして銅からなる円柱体(直径15mm、長さ20mm)を使用した。
上記反応炉内において、以下の条件で水素化分解・脱水素再結合法による処理(HDDR処理)を施した。まず、内容器に水素ガスを導入し、水素ガス雰囲気下、水素分圧100kPa、温度100℃の条件で原料合金粉末を2時間保持する水素吸蔵工程を行った。これによって、原料合金に水素を吸蔵させて、水素吸蔵合金を得た。
続いて、炉内の水素分圧を下げるとともに炉内温度を10℃/分で昇温し、水素吸蔵合金を、水素分圧40kPa、温度800℃の条件で6.0時間保持する水素化分解工程を行った。これによって、水素吸蔵合金を水素化分解させて分解生成物を得た。
その後、炉内温度を10℃/分で温度850℃まで昇温した後、真空ポンプを用いて水素ガスを排気し、炉内の圧力(水素分圧)を1kPa/分の速度で下げることによって、分解生成物に含まれる水素の放出を開始した。炉内の圧力(水素分圧)が1Pa未満となった時点で、水素の放出を停止した。その後、炉内を室温(約20℃)まで冷却し、HDDR処理された異方性のNdFe14B粉末を得た。
[磁気特性の評価]
得られたNdFe14B粉末を、不活性雰囲気中で乳鉢を用いて粉砕し、篩い分けを行って、粒径が53〜212μmのNdFe14B粉末とした。この粉末とパラフィンとをケースに詰めて、パラフィンを融解させた状態で1テスラの磁場を印加して磁石粉末を配向させた。磁石粉末の配向方向と平行な方向に6テスラのパルス磁場を印加し、振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁化−磁場曲線を測定して磁気特性を求めた。
表1に本実施例に係る磁性粉末の残留磁束密度(Br)、保持力(HcJ)及び角型性(Hk/HcJ)を示す。図9の(a)に実施例1における炉内温度、炉内圧力及び被処理物の温度の変化を示す。
(比較例1)
原料合金にメディアを加えず、原料合金のみを反応炉内に収容し、HDDR法による処理を実施したことの他は実施例1と同様にして磁性粉末を製造した。図9の(b)に比較例1における炉内温度、炉内圧力及び被処理物の温度の変化を示す。表1に本比較例に係る磁性粉末の残留磁束密度(Br)、保持力(HcJ)及び角型性(Hk/HcJ)を示す。
(実施例2)
反応炉の攪拌機能を利用し、処理工程において被処理物及びメディアを攪拌して被処理物の粉砕を行ったことの他は実施例1と同様にして磁性粉末を製造した。表2に本実施例に係る磁性粉末の残留磁束密度(Br)、保持力(HcJ)及び角型性(Hk/HcJ)を示す。
原料合金にメディアを加えず、原料合金のみを反応炉内に収容し、HDDR法による処理及び攪拌・粉砕処理を実施したことの他は実施例2と同様にして磁性粉末を製造した。表2に本比較例に係る磁性粉末の残留磁束密度(Br)、保持力(HcJ)及び角型性(Hk/HcJ)を示す。
(比較例3)
HDDR処理を実施するに先立ち、粉砕機(吉田製作所製の横型ブラウン粉砕機)を使用し、原料合金(平均粒径30mm)を粉砕したことの他は比較例1と同様にして磁性粉末を製造した。当該粉砕処理後の原料合金の平均粒径は0.3mmであった。表3に本比較例に係る磁性粉末の残留磁束密度(Br)、保持力(HcJ)及び角型性(Hk/HcJ)を示す。
(比較例4)
HDDR処理を実施するに先立ち、粉砕機(吉田製作所製のジョークラッシャー)を使用し、原料合金(平均粒径30mm)を粉砕したことの他は比較例1と同様にして磁性粉末を製造した。当該粉砕処理後の原料合金の平均粒径は3mmであった。表3に本比較例に係る磁性粉末の残留磁束密度(Br)、保持力(HcJ)及び角型性(Hk/HcJ)を示す。
1…反応炉、8…温度センサ、20…内容器、S…原料合金、Zr…回転軸。

Claims (3)

  1. 水素化分解・脱水素再結合法によるR−T−B系磁性粉末の製造方法であって、
    被処理物と耐水素脆性を有するメディアとを混合する混合工程と、
    反応炉内において、前記メディアの存在下、前記被処理物に対する水素化分解・脱水素再結合法による処理を行う処理工程と、
    を備えるR−T−B系磁性粉末の製造方法。
  2. 前記処理工程において、前記反応炉内の前記メディア及び前記被処理物を攪拌しながら、処理を行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記メディアは、希土類金属を除く金属材料からなる、請求項1又は2に記載の製造方法。
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