JP2011190482A - 希土類合金粉末の製造方法および永久磁石 - Google Patents

希土類合金粉末の製造方法および永久磁石 Download PDF

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孝司 田辺
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尚樹 森
Kenichi Suzuki
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Abstract

【課題】HDDR法を用いて優れた磁気特性を有すると共に、減磁曲線の角型性が高い希土類合金粉末を製造することが可能な希土類合金粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】原料合金に水素を吸蔵させる第1の水素吸蔵工程(ステップS13)と、原料合金を水素化分解させて第1の分解生成物を得る第1の水素化分解(HD)工程(ステップS14)と、第1の分解生成物から水素を放出させ、第1の希土類合金粉末を得る第1の脱水素再結合(DR)工程(ステップS16)と、第1の希土類合金粉末を冷却する不活性ガス冷却工程(ステップS17A)と、第1の希土類合金粉末に水素を吸蔵させる第2の水素吸蔵工程(ステップS18)と、第1の希土類合金粉末を水素化分解させて第2の分解生成物を得る第2のHD工程(ステップS19)と、第2の分解生成物から水素を放出させ、第2の希土類合金粉末を得る第2のDR工程(ステップS21)とを含む。
【選択図】図1

Description

本発明は、希土類合金粉末の製造方法および永久磁石に関する。
磁石用の合金粉末を製造する方法として、原料合金を水素化分解・再結合させるHDDR(Hydrogenation Decomposition Desorption Recombination)法(水素化分解・脱水素再結合法)が知られている。HDDR法とは、水素中で原料(出発合金)を加熱することにより、原料を水素化・分解(HD:Hydrogenation Decomposition)し、その後、脱水素・再結合(DR:Desorption Recombination)させることにより、結晶を微細化させるプロセスである。
このHDDR法は、固相−気相反応を伴う方法であるため、その反応機構が複雑であり、製造条件によって、得られる磁石粉末の保磁力などの磁気特性が変動する。このため、HDDR法を用いた磁石粉末の製造において、製造条件を調整することによって磁石粉末の磁気特性を改善することが試みられている。
従来では、例えば、希土類合金を溶解し鋳造して得られた原料合金をHDDR処理する際、脱水素再結合の処理中、雰囲気を制御することによって反応速度を変えて段階的に脱水素処理することで、希土類系合金粉末の磁気特性を改善する希土類系合金粉末の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
特開2001−115220号公報
ここで、磁石の磁気特性を表す指標としては、一般に、残留磁束密度Br及び保磁力HcJが用いられる。また、減磁曲線の角型性が低いものは磁石として実際に発揮できる特性は低くなるため、磁石では減磁曲線の角型性も重要な要素である。減磁曲線の角型性とは、減磁曲線で磁化が残留磁化の値から10%低下したときの磁場の絶対値をHkとしたとき、磁化が0になる磁場の絶対値である保磁力HcJでHkを除した値Hk/HcJをいう。
しかしながら、上記特許文献1のように、脱水素再結合の処理中、雰囲気を制御して段階的に脱水素処理しても、十分に高い保磁力HcJを得ることは困難であると共に、減磁曲線の角型性を高めることは困難である、という問題があった。
そのため、HDDR法を用いて優れた磁気特性を有すると共に、減磁曲線の角型性が高い希土類合金粉末を製造する方法を確立することが求められている。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、HDDR法を用いて優れた磁気特性を有すると共に、減磁曲線の角型性が高い希土類合金粉末を製造することが可能な希土類合金粉末の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る希土類合金粉末の製造方法は、HDDR法によって希土類合金粉末を製造するにあたり、希土類合金の原料合金に水素を吸蔵させる水素吸蔵工程と、水素を吸蔵させた原料合金をHDさせて分解生成物を得るHD工程と、前記分解生成物から水素を放出させ、前記分解生成物の水素濃度を低減し希土類合金粉末を得るDR工程と、を含み、前記水素吸蔵工程と前記HD工程と前記DR工程との工程が複数回行なわれることを特徴とする。
上述の本発明の希土類合金粉末の製造方法によれば、HDDR法を用いて優れた磁気特性を有すると共に、高い角型性を有する希土類合金粉末を製造することができる。即ち、水素吸蔵工程とHD工程とDR工程とからなるHDDR処理が原料合金に1回だけ行なわれた場合、保磁力が高い希土類合金粉末と保磁力が低い希土類合金粉末とが混在し、希土類合金粉末の保磁力HcJの均一性が取れなかった。これに対し、水素吸蔵工程とHD工程とDR工程とからなるHDDR処理が原料合金に複数回行なわれた場合、得られる希土類合金粉末の微細化はHDDR処理を原料合金に1回だけ行なうことにより得られる希土類合金粉末より進行する。このため、単磁区状態となる臨界粒子径(単磁区臨界粒子径)よりも大きな1次粒子の数は減少するので、得られる希土類合金粉末の保磁力HcJは向上する。また、DR工程では、HD工程で得られる分解生成物中に希土類合金の核を生成する工程が1回のみであった。本発明の希土類合金粉末の製造方法は、HD工程で原料合金又は希土類合金粉末から分解生成物を得た後、DR工程でHD工程で得られる分解生成物中に希土類合金の核を生成し、希土類合金粉末を生成する工程を複数回行なっている。このため、本発明の希土類合金粉末の製造方法により得られる希土類合金粉末中における希土類合金の核の生成はHDDR処理を原料合金に1回だけ行なう場合よりも更に均一に析出させることができる。このため、本発明の希土類合金粉末の製造方法により得られる希土類合金粉末はその保磁力HcJを高めることができると共に、複数の希土類合金粉末同士の保磁力HcJの均一性が向上する。また、水素吸蔵工程とHD工程とDR工程とからなるHDDR処理を原料合金に複数回行うことで、希土類合金粉末の微細化は更に進行する。これにより、1次粒子の粒度分布幅は狭くなるため、得られる希土類合金粉末は減磁曲線の角型性Hk/HcJを上昇させることができる。よって、本発明の希土類合金粉末の製造方法を用いれば、HDDR法を用いて優れた磁気特性を有すると共に、高い角型性を有する希土類合金粉末を製造することができる。
また、本発明では、n回目(但し、nは2以上の整数)のHD工程の水素化分解反応時間が、n−1回目のHD工程の水素化分解反応時間より短いことが好ましい。希土類合金粉末はn回目の水素化分解が行なわれる前に、既にn−1回目の水素化分解で希土類合金粉末の微細化はある程度進行している。このため、希土類合金粉末をn回目のHD反応を行なう際、n−1回目までに行なったHDのHD反応時間ほど長くして水素化分解する必要性は低い。そのため、原料合金を、再度HD反応させる際、HD反応時間を短くすることで、HDDR反応全体の時間を短縮することができる。
また、本発明では、第1回目の水素吸蔵工程における温度が100℃以上200℃以下であって水素分圧が100kPa以上300kPa以下であり、第2回目以降の水素吸蔵工程における温度が600℃以上800℃以下であって水素分圧が1kPa以上10kPa以下であることが好ましい。第1回目のHDDR反応における第1回目の水素吸蔵工程は、室温から炉内の温度を上昇させて原料合金の結晶格子内に水素を吸蔵させるため、室温から比較的に近い100℃以上200℃以下の温度で水素吸蔵反応を行なうことで、原料合金の結晶格子内に効率よく水素を吸蔵させることができる。また、第1回目のHDDR反応が終了した後に得られる希土類合金粉末を、再度、HDDR反応させる際、第2回目以降のHDDR反応の水素吸蔵工程における温度は600℃以上800℃以下の範囲内とすることで、DR反応後の炉内の温度を室温又は100℃以上200℃以下の温度にまで下げる必要がないため、HDDR反応全体の時間を短縮することができる。
また、本発明では、前記DR工程の終了後、得られた希土類合金粉末を水素ガスを用いて冷却する水素冷却工程を含むことが好ましい。希土類合金粉末を水素を用いて冷却することで、希土類合金粉末の冷却効果を得ることができると共に、希土類合金粉末の冷却後、希土類合金粉末の結晶格子中に水素を吸蔵させるための条件に簡易に調整することができる。このため、希土類合金粉末を再度HDDR反応させる際、希土類合金粉末の冷却後、直ちに希土類合金粉末に水素を吸蔵させる操作を行なうことができるため、HDDR反応全体の時間を短縮することができる。
また、本発明では、前記水素冷却工程における温度が100℃以上200℃以下であり、水素分圧が100kPa以上300kPa以下であることが好ましい。炉内は水素雰囲気であり低温であるため、希土類合金粉末の冷却後、直ちに希土類合金粉末の結晶格子中に水素を吸蔵させることができる。
また、本発明に係る永久磁石は、希土類合金の原料合金に水素を吸蔵させた後、HDし、分解して得られる分解生成物から水素を放出して希土類合金粉末を得る工程を複数回行ない、得られる希土類合金粉末を成形して得られることを特徴とする。本発明の永久磁石は、HDDR法を用いて優れた磁気特性を有すると共に、減磁曲線の角型性が高い希土類合金粉末を成形して得られるものであるため、優れた磁気特性を有すると共に、減磁曲線の角型性を高くなる。
本発明によれば、HDDR法を用いて優れた磁気特性を有すると共に、減磁曲線の角型性が高い希土類合金粉末を製造することが可能な希土類合金粉末の製造方法を提供することができる。また、上記希土類合金粉末の製造方法を用いて製造された希土類合金粉末を成形することにより、優れた磁気特性を有すると共に、減磁曲線の角型性が高い永久磁石を提供することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法を示すフローチャートである。 図2は、本発明の第2の実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法を示すフローチャートである。 図3は、本発明の第3の実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法を示すフローチャートである。 図4は、実施例1と比較例1の各々得られる磁石粉末を用いて行なった磁気特性を示す図である。 図5は、実施例1と比較例1の各々得られる磁石粉末の角型性を示す図である。
以下、本発明に係る希土類合金粉末の製造方法の実施の形態(以下、実施形態という)及び実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための実施形態及び実施例により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態及び実施例で開示する構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法は、いわゆる水素化分解・脱水素再結合法(HDDR法)を2回行なうことによって希土類合金粉末を製造する希土類合金粉末の製造方法である。図1に示すように、本実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法は、R2Fe14Bの希土類合金を鋳造して原料合金を得る合金準備工程(ステップS11)と、原料合金を融解させて原料合金を均質化させる均質化熱処理工程(ステップS12)と、原料合金に水素を吸蔵させる第1の水素吸蔵工程(ステップS13)と、水素を吸蔵させた原料合金を水素化分解させて第1の分解生成物を得る第1の水素化分解(HD)工程(ステップS14)と、温度を上昇させる第1の昇温工程(ステップS15)と第1の分解生成物から水素を放出させ、第1の分解生成物の水素濃度を低減し、第1の希土類合金粉末を得る第1の脱水素再結合(DR)工程(ステップS16)と、第1の希土類合金粉末を800℃にまで冷却する不活性ガス冷却工程(ステップS17A)と、冷却して得られた第1の希土類合金粉末の結晶中に水素を吸蔵させる第2の水素吸蔵工程(ステップS18)と、水素を吸蔵させた第1の希土類合金粉末を水素化分解させて第2の分解生成物を得る第2のHD工程(ステップS19)と、温度を上昇させる第2の昇温工程(ステップS20)と第2の分解生成物から水素を放出させ、第2の分解生成物の水素濃度を低減し第2の希土類合金粉末を得る第2のDR工程(ステップS21)と、得られた第2の希土類合金粉末を室温にまで冷却する冷却工程(ステップS22)とを含むものである。
原料合金としては、R2Fe14BなどのR−T−B系合金を用いることができる。優れた磁気特性を有する希土類合金粉末を得る観点から、R−T−B系合金の組成は、R:25質量%以上40質量%以下、Fe:58質量%以上72質量%以下、B:1質量%以上2質量%以下、であることが好ましい。Rは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Td、Dy、Ho、Er、Tm、Luなど少なくとも1種の希土類元素を示し、Tは、Fe又はFe及びCoを含む1種以上の遷移金属元素を示す。このうち、製造コスト及び磁気特性の観点から、RはNdを含むことが好ましい。添加元素として、Ga、Al、Si、Cu、Zn、In、Sn、Zr、Nb、Ti、V、Cr、Mo、Hf、Ta、Wなどのうち、1種類以上を含んでもよい。
<合金準備工程:ステップS11>
合金準備工程(ステップS11)は、R2Fe14Bを鋳造して原料合金を得る工程である。R2Fe14Bの希土類合金を鋳造して原料合金を得る。R2Fe14Bの希土類合金を鋳造する鋳造方法は、例えばストリップキャスト法、ブックモールド法又は遠心鋳造法などである。原料合金は、原料金属又は原料化合物や製造工程に由来する不可避な不純物を含んでいてもよい。原料合金を準備した後、均質化熱処理工程(ステップS12)に移行する。
<均質化熱処理工程:ステップS12>
均質化熱処理工程(ステップS12)は、原料合金を融点近傍まで加熱して原料合金を均質化させる工程である。原料合金を真空又はアルゴン(Ar)ガスや窒素(N2)ガスなどの不活性ガス雰囲気中、温度1000℃以上1200℃以下で5時間から48時間保持する。これにより、原料合金は融解されて均質化される。本実施形態では、均質化熱処理工程S12を含んでいるが本発明はこれに限定されるものではなく、原料合金の結晶粒の大きさ等に応じて原料合金は均質化させなくてもよい。
均質化させた原料合金は、スタンプミル又はジョークラッシャーなどの粉砕手段を用いて粉砕した後、篩分けすることが好ましい。これによって、原料合金は粒径が10mm以下の粉末状の原料合金に調製することができる。
原料合金が均質化された後、第1の水素吸蔵工程(ステップS13)に移行する。
<第1の水素吸蔵工程:ステップS13>
第1の水素吸蔵工程(ステップS13)は、原料合金に水素を吸蔵させる工程である。第1の水素吸蔵工程(ステップS13)では、原料合金は水素分圧をP1とした水素雰囲気中に、温度T0で時間t1の間保持され、水素が原料合金に吸蔵される。水素分圧P1は、100kPa以上300kPa以下であることが好ましい。温度T0は、100℃以上200℃以下であることが好ましい。時間t1は、0.5時間から2時間であることが好ましい。水素分圧P1と温度T0と時間t1とを上記範囲内とすることで、原料合金はその結晶格子中に水素を吸蔵することができる。
水素分圧P1が100kPa未満であると、原料合金の結晶格子中に水素は吸蔵され難くなるからであり、水素分圧P1が300kPaを越えると、防爆構造などの点で設備が大掛かりになるからである。
温度T0が200℃を超えると、原料合金の結晶格子中に水素は吸蔵され難くなるからであり、温度T0が100℃未満でも同様に原料合金の結晶格子中に水素は吸蔵され難くなるからである。
時間t1が2時間より長いと原料合金に水素が吸蔵されすぎるからであり、時間t1が0.5時間より短いと原料合金に水素が十分吸蔵されないからである。
第1の水素吸蔵工程(ステップS13)では、原料合金は均質化熱処理された後、水素分圧P1の水素雰囲気中において温度T0で時間t1の間保持することによって、原料合金の結晶格子中に水素が吸蔵される。この第1の水素吸蔵工程(ステップS13)の段階では、原料合金の結晶格子中に水素が吸蔵されているだけで、原料合金は水素を吸蔵したことによって分解していない。
水素雰囲気下で原料合金に水素を吸蔵させた後、第1のHD工程(ステップS14)に移行する。
<第1の水素化分解(HD)工程:ステップS14>
第1のHD工程(ステップS14)は、水素を吸蔵させた原料合金を水素化分解させて第1の分解生成物を得る工程である。第1のHD工程(ステップS14)では、水素を吸蔵させた原料合金は、水素分圧をP2とした水素雰囲気中、温度T0よりも高い温度T1で時間t2の間保持される。これにより、原料合金は水素を吸蔵しているため、原料合金は、自身の異なる相間における水素吸蔵量の相違により自己崩壊し、水素化分解され、第1の分解生成物が生成される。
水素分圧P2は10kPa以上100kPa以下であることが好ましい。温度T1は700℃以上850℃以下であることが好ましい。炉内で水素分圧P2、温度T1を上記条件として水素化分解を行うことによって、第1の希土類合金粉末を得ることができる。
水素分圧P2が10kPa未満であると、原料合金の水素化分解が十分に進行しない虞があり、水素分圧P2が100kPaを超えると、水素化分解の速度が速すぎて第1の希土類合金粉末の異方性が低下するからである。
温度T1が700℃未満であると、原料合金の水素化分解が十分に進行しない虞があり、温度T1が850℃を超えると、第1の分解生成物(水素化物)が得られ難くなるからである。
時間t2は0.5時間以上600時間以下であることが好ましい。時間t2が0.5時間未満であると、原料合金の水素化分解が十分に進行しない虞があり、時間t2が600時間を超えると水素化分解が進行しすぎて第1の希土類合金粉末の異方性が低下するからである。
原料合金がHD反応で分解して得られる第1の分解生成物は、RHxなどの水素化物、α−Fe及びFe2Bなどの鉄化合物を含んでいる。第1の分解生成物は、数百ナノnmの微細なマトリックスを形成している。原料合金を水素化分解し、第1の分解生成物を得た後、第1の昇温工程(ステップS15)に移行する。
<第1の昇温工程:ステップS15>
第1の昇温工程(ステップS15)は、第1のHD工程(ステップS14)における雰囲気の温度を温度T1から温度T1よりも高い温度T2に昇温する工程である。第1の昇温工程(ステップS15)では、第1の分解生成物の温度を温度T1から温度T2に時間t3の間、昇温している。温度T2は、温度T1よりも高く、750℃以上950℃以下であることが好ましい。また、昇温速度は特に制限されるものではない。第1の昇温工程(ステップS15)の時間t3は、例えば1秒以上100秒以下である。温度を温度T1からT2に昇温した後、第1のDR工程(ステップS16)に移行する。
<第1の脱水素再結合(DR)工程:ステップS16>
第1のDR工程(ステップS16)は、得られた第1の分解生成物から水素を放出させ、第1の分解生成物の水素濃度を低減し、第1の希土類合金粉末を得る工程である。本実施形態では、第1のDR工程(ステップS16)は、第1の前段DR工程(ステップS16−1)と第1の後段DR工程(ステップS16−2)とを含む。本実施形態では、第1のDR工程(ステップS16)は、第1の前段DR工程(ステップS16−1)と第1の後段DR工程(ステップS16−2)との2つの工程からなるが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1のDR工程(ステップS16)は1段階のみでもよく、3段階以上行なうようにしてもよい。
(第1の前段脱水素再結合(DR)工程:ステップS16−1)
第1の前段DR工程(ステップS16−1)は、温度T1よりも高い温度T2で、時間t4の間、水素分圧を減圧してP3とし、第1の分解生成物から水素を放出させ、第1の分解生成物の水素濃度を低減させる工程である。この工程によって、第1のHD工程(ステップS14)で得られた第1の分解生成物のマトリックス中に希土類合金の核が生成すると考えられる。
第1の分解生成物からの水素の放出速度は、水素を放出させる前の第1の分解生成物全体の質量を基準として、0.4質量%/分以上13質量%/分以下であることが好ましく、より好ましくは1.3質量%/分程度とする。水素の放出速度が0.4質量%/分未満であると、水素の放出に時間がかかりすぎて得られる希土類合金粉末の保磁力HcJが低下してしまうからである。水素の放出速度が13質量%/分を超えると、第1の分解生成物からの水素の放出速度が大きいため第1の分解生成物の水素濃度を制御することが困難となるからである。水素の放出速度を上記範囲とすることで、希土類合金の核をより均一に生成することができる。
第1の分解生成物からの水素の放出速度は、雰囲気中の水素分圧の降下速度を制御することによって調整することができる。即ち、水素分圧の降下速度を大きくすることで、第1の分解生成物からの水素の放出速度を大きくすることができる。水素分圧の降下速度は、例えばArガスなど不活性ガスを導入したり、バルブの開度を制御しながら真空ポンプで減圧したりすることによって調整することができる。第1の前段DR工程(ステップS16)における水素分圧の降下速度は、2kPa/分以上10kPa/分以下とすることが好ましく、4kPa/分程度が最も好ましい。
第1の前段DR工程(ステップS16−1)における雰囲気の水素分圧P3は、第1の分解生成物から水素を安定して放出し、希土類合金の核をより均一に生成するため、6kPa程度であることが好ましい。
第1の前段DR工程(ステップS16−1)における第1の分解生成物の温度T2は、温度T1よりも高く、750℃以上950℃以下であることが好ましく、800℃以上900℃以下であることがより好ましく、850℃前後が更に好ましい。第1の分解生成物の温度T2を、温度Tよりも高くすることによって、第1の分解生成物から水素が抜けやすくなり、希土類合金の核をより均一に生成させることができる。
温度T2が750℃未満であると、第1の分解生成物からの水素の放出速度を十分に大きくすることができず、水素が残存してしまうからである。一方、温度T2が950℃を超えると、第1の希土類合金粉末の異常粒成長が起こりやすくなるからである。
第1の前段DR工程(ステップS16−1)の時間t4は、例えば0.1時間から0.5時間が好ましいが、時間t4は第1の分解生成物からの水素の放出速度に応じて適宜調整する。炉内の温度を温度T2として時間t4の間、脱水素再結合させた後、第1の後段DR工程(ステップS16−2)に移行する。
(第1の後段脱水素再結合(DR)工程:ステップS16−2)
第1の後段DR工程(ステップS16−2)は、温度T2で、時間t5の間、水素分圧を更に減圧してP4とし、第1の前段DR工程(ステップS16−1)よりも第1の分解生成物からの水素の放出速度を小さくして第1の分解生成物から水素を放出させ、第1の分解生成物の水素濃度を更に低減し、第1の希土類合金粉末を得る工程である。
第1の後段DR工程(ステップS16−2)の温度は、第1の前段DR工程(ステップS16−1)における温度T2と同じにすることが好ましい。これによって、第1の分解生成物からの水素の放出を円滑に進行させることができる。
第1の後段DR工程(ステップS16−2)の時間t5は、例えば0.3時間から5時間とするのが好ましいが、時間t5は第1の分解生成物からの水素の放出速度に応じて適宜調整する。
また、第1の後段DR工程(ステップS16−2)における水素分圧の降下速度は、0.01kPa/分以上0.2kPa/分以下とすることが好ましく、0.1kPa/分程度とすることが最も好ましい。第1の後段DR工程(ステップS16−2)の水素分圧の降下速度は第1の前段DR工程(ステップS16−1)における水素分圧の降下速度よりも小さくすることで、第1の後段DR工程(ステップS16−2)における第1の分解生成物からの水素放出速度は第1の前段DR工程(ステップS16−1)における第1の分解生成物からの水素放出速度をよりも小さくすることができる。これにより、希土類合金の結晶粒がより均一に成長されると考えられる。
第1の後段DR工程(ステップS16−2)における雰囲気の水素分圧P4は1Pa程度とする。これにより、第1の分解生成物の水素量が希土類合金粉末の磁気特性に影響ない程度にまで放出される。
温度を温度T2として時間t5の間、第1の分解生成物は脱水素再結合された後、不活性ガス冷却工程(ステップS17A)に移行する。
<不活性ガス冷却工程:ステップS17A>
不活性ガス冷却工程(ステップS17A)は、冷却用の不活性ガスによりHDDR反応で得られた第1の希土類合金粉末を冷却する工程である。不活性ガスとしては、例えば、Arガス、N2ガスなどが用いられる。不活性ガスによりHDDR反応で得られた第1の希土類合金粉末は水素分圧をP5とした水素雰囲気中に、温度T3で時間t6の間保持され、冷却される。水素分圧P5は1Pa程度であることが好ましい。水素分圧P5を1Pa程度とすることで、第1の希土類合金粉末中に残っている水素が放出する虞はないからである。温度T3は800℃程度であることが好ましい。温度T3を800℃程度とすることで、第1の希土類合金粉末に水素を吸蔵させる条件に短時間ですることができる。時間t6は0.5時間から2時間であることが好ましい。時間t6を上記範囲とすることで、第1の希土類合金粉末全体を十分冷却することができるからである。第1の希土類合金粉末は水素分圧P5とした不活性ガス雰囲気中で温度T3で時間t6の間保持され、冷却された後、前記不活性ガス雰囲気の供給を停止して水素を供給し、第2の水素吸蔵工程(ステップS18)に移行する。
<第2の水素吸蔵工程:ステップS18>
第2の水素吸蔵工程(ステップS18)は、第1の水素吸蔵工程(ステップS13)と同様の処理を行う工程であり、不活性ガス冷却工程(ステップS17A)までで得られた第1の希土類合金粉末に水素を吸蔵させる工程である。第2の水素吸蔵工程(ステップS18)では、第1の希土類合金粉末は、水素分圧をP11とした水素雰囲気中に、温度T10で時間t11の間保持され、水素が第1の希土類合金粉末に吸蔵される。水素分圧P11としては、1kPa以上10kPa以下であることが好ましく、1kPa前後が最も好ましい。温度T10としては、600℃以上800℃以下であることが好ましく、800℃前後がもっとも好ましい。時間t11としては、0.5時間から2時間であることが好ましい。
水素分圧P11が1kPa未満であると、第1の希土類合金粉末の結晶格子中に水素は吸蔵され難くなるからであり、水素分圧P11が10kPaを超えると、第1の希土類合金粉末の結晶格子中に水素が吸蔵される前に水素化分解が始まってしまう虞があるからである。
温度T10が800℃を超えると、第1の希土類合金粉末の結晶格子中に水素を吸蔵し難くなるからであり、温度T10が600℃未満でも同様に、第1の希土類合金粉末の結晶格子中に水素を吸蔵し難くなるからである。
時間t11が2時間より長いと第1の希土類合金粉末に水素が吸蔵されすぎるからであり、時間t11が0.5時間より短いと第1の希土類合金粉末に水素が十分吸蔵されないからである。
水素分圧P11と温度T10と時間t11とを上記範囲内とすることで、第1の希土類合金粉末はその結晶格子中に水素を吸蔵することができる。また、第1回目のHDDR反応が終了した後、第1の希土類合金粉末を、再度、HDDR反応させる際、第2回目以降のHDDR反応の第2の水素吸蔵工程(ステップS18)における温度T10は600℃以上800℃以下の範囲内とすることで、第1のDR工程(ステップS16)後の炉内の温度を室温まで下げる必要がないため、HDDR反応全体の時間を短縮することができる。
第2の水素吸蔵工程(ステップS18)では、第1の希土類合金粉末は水素分圧P11の水素雰囲気中において温度T10で時間t11の間保持することによって、第1の希土類合金粉末の結晶格子中に水素が吸蔵される。
水素雰囲気下で第1の希土類合金粉末が水素を吸蔵した後、第2のHD工程(ステップS19)に移行する。
<第2の水素化分解(HD)工程:ステップS19>
第2のHD工程(ステップS19)は、第1のHD工程(ステップS14)と同様、水素を吸蔵させた第1の希土類合金粉末を、水素分圧をP12とした水素雰囲気中、温度T10と同じかそれよりも高い温度T11で時間t12の間保持する工程である。これにより、第1の希土類合金粉末は水素を吸蔵しているため、第1の希土類合金粉末は水素化分解され、第2の分解生成物が生成される。
第2のHD工程(ステップS19)における雰囲気の水素分圧P12は、第1のHD工程(ステップS14)の水素分圧P2と同様、10kPa以上100kPa以下であることが好ましい。温度T11は、第1のHD工程(ステップS14)の温度T1と同様、700℃以上850℃以下であることが好ましい。炉内で水素分圧P12、温度T11を上記条件として水素化分解を行うことによって、第2の希土類合金粉末を得ることができる。
水素分圧P12が上記範囲が好ましい理由は第1のHD工程(ステップS14)の水素分圧P2と同様である。即ち、水素分圧P12が10kPa未満であると、第1の希土類合金粉末の水素化分解が十分に進行しない虞があり、水素分圧P12が100kPaを超えると、第2の希土類合金粉末の異方性が低下するからである。
温度T11が上記範囲が好ましい理由は第1のHD工程(ステップS14)の温度T1と同様である。即ち、温度T11が700℃未満であると、水素化分解が十分に進行しないからである。また、温度T11が850℃を超えると、第2の分解生成物(水素化物)が得られ難くなるからである。
時間t12は、1分以上600時間以下であることが好ましい。時間t12が1分未満であると、第1の希土類合金粉末の水素化分解が十分に進行しない虞があり、時間t12が600時間を超えるとHD反応時間が長くなるため、第2の希土類合金粉末の異方性が低下する。
時間t12は、第1のHD工程(ステップS14)の時間t2よりも短くするのが好ましい。第2のHD工程(ステップS19)により2回目の水素化分解が行なわれる前に、既に第1のHD工程(ステップS14)で1回目の水素化分解が行なわれているため、第2のHD工程(ステップS19)で第1の希土類合金粉末は2回目の水素化分解が行なわれる前に、既に第1の希土類合金粉末の微細化はある程度進行している。このため、第1の希土類合金粉末を2回目のHD反応を行なう際、第1のHD工程(ステップS14)で1回目に行なったHDのHD反応時間ほど長くして水素化分解する必要性は低い。よって、第1の希土類合金粉末を、第2のHD工程(ステップS19)で再度HD反応させる際、HD反応時間を短くすることで、HDDR反応全体の時間を短縮することができる。
第2のHD工程(ステップS19)で得られる第2の分解生成物は、第1の分解生成物と同様、RHXなどの水素化物、α−Fe及びFeBなどの鉄化合物を含んでいる。第2の分解生成物は、第1の分解生成物と同様、数百ナノnmの微細なマトリックスを形成している。第1の希土類合金粉末を水素化分解して第2の分解生成物を得た後、第2の昇温工程(ステップS20)に移行する。
<第2の昇温工程:ステップS20>
第2の昇温工程(ステップS20)は、第1の昇温工程(ステップS15)と同様の処理を行う工程である。第2の昇温工程(ステップS20)では、第2のHD工程(ステップS19)における雰囲気の温度を温度T11から温度T11よりも高い温度T12に昇温し、分解生成物の温度を温度T11から温度T12に時間t13の間、昇温する。
温度T12は、第1の昇温工程(ステップS15)の温度T2と同様、温度T11よりも高く、850℃以上950℃以下であることが好ましい。また、昇温速度は特に制限されるものではない。第2の昇温工程(ステップS20)の時間t13は、第1の昇温工程(ステップS15)の温度T3と同様、例えば1分以上10分以下とする。温度を温度T11からT12に昇温した後、第2のDR工程(ステップS21)に移行する。
<第2の脱水素再結合(DR)工程:ステップS21>
第2のDR工程(ステップS21)は、第1のDR工程(ステップS16)と同様の処理を行う工程である。第2のDR工程(ステップS21)では、得られる第2の分解生成物から水素を放出させ、第2の分解生成物の水素濃度を低減させる。本実施形態では、第2のDR工程(ステップS21)は、第2の前段DR工程(ステップS21−1)と第2の後段DR工程(ステップS21−2)とを含む。本実施形態では、第2のDR工程(ステップS21)は、第1のDR工程(ステップS16)と同様、第2の前段DR工程(ステップS21−1)と第2の後段DR工程(ステップS21−2)との2つの工程からなるが、本発明はこれに限定されるものではなく、第2のDR工程(ステップS21)は1段階のみでもよく、3段階以上行なうようにしてもよい。
(第2の前段脱水素再結合(DR)工程:ステップS21−1)
第2の前段DR工程(ステップS21−1)は、第1の前段DR工程(ステップS16−1)と同様の処理を行う工程である。第2の前段DR工程(ステップS21−1)では、温度T11よりも高い温度T12で、時間t14の間、水素分圧を減圧してP13とし、第2の分解生成物から水素を放出させ、第2の分解生成物の水素濃度を低減させる。この工程によって、第2のHD工程(ステップS19)で得られた第2の分解生成物のマトリックス中に希土類合金の核が生成される。
第2の分解生成物からの水素の放出速度は、第1の前段DR工程(ステップS16−1)と同様、水素を放出させる前の第2の分解生成物全体の質量を基準として、0.4質量%/分以上13質量%/分以下であることが好ましく、より好ましくは1.3質量%/分程度とする。水素の放出速度が0.4質量%/分未満であると、水素の放出に時間がかかりすぎて得られる希土類合金粉末の保磁力HcJが低下してしまうからである。水素の放出速度が13質量%/分を超えると、第2の分解生成物からの水素の放出速度が大きいため第2の分解生成物の水素濃度を制御することが困難となるからである。水素の放出速度を上記範囲とすることで、希土類合金の核をより均一に生成させることができる。
第2の分解生成物からの水素の放出速度も、第1の前段DR工程(ステップS16−1)と同様、雰囲気中の水素分圧の降下速度を制御することによって調整することができる。第2の前段DR工程(ステップS21−1)における水素分圧の降下速度も、第1の前段DR工程(ステップS16−1)と同様、2kPa/分以上10kPa/分以下とすることが好ましく、4kPa/分程度が最も好ましい。
第2の前段DR工程(ステップS21−1)における雰囲気の水素分圧P13は、第1の前段DR工程(ステップS16−1)と同様、第2の分解生成物から水素を安定して放出し、希土類合金の核をより均一に生成するため、6kPa程度であることが好ましい。
第2の前段DR工程(ステップS21−1)における分解生成物の温度T12は、第1の前段DR工程(ステップS16−1)と同様、温度T11よりも高く、750℃以上950℃以下であることが好ましく、800℃以上900℃以下であることがより好ましく、850℃前後が更に好ましい。第2の分解生成物の温度T12を、温度T11よりも高くすることによって、第2の分解生成物から水素が抜けやすくなり、希土類合金の核をより均一に生成させることができる。
温度T12が750℃未満であると、第1の前段DR工程(ステップS16−1)と同様、第2の分解生成物からの水素の放出速度を十分に大きくすることができず、水素が残存してしまうからである。一方、温度T12が950℃を超えると、第2の希土類合金粉末の異常粒成長が起こりやすくなるからである。
第2の前段DR工程(ステップS21−1)の時間t14も、第1の前段DR工程(ステップS16−1)と同様、例えば0.1時間から0.5時間が好ましいが、時間t14は第2の分解生成物からの水素の放出速度に応じて適宜調整する。炉内の温度を温度T12として時間t14の間、脱水素再結合させた後、第2の後段DR工程(ステップS21−2)に移行する。
(第2の後段脱水素再結合(DR)工程:ステップS21−2)
第2の後段DR工程(ステップS21−2)は、第1の後段DR工程(ステップS16−2)と同様の処理を行う工程である。第2の後段DR工程(ステップS21−2)では、温度T12で、時間t15の間、水素分圧を更に減圧してP14とし、第2の前段DR工程(ステップS21−1)よりも第2の分解生成物からの水素の放出速度を小さくして第2の分解生成物から水素を放出させ、第2の分解生成物の水素濃度を更に低減し、第2の希土類合金粉末を得る。
第2の後段DR工程(ステップS21−2)の温度は、第1の後段DR工程(ステップS16−2)と同様、第1の前段DR工程(ステップS16−1)における温度T2と同じにすることが好ましい。これによって、第2の分解生成物からの水素の放出を円滑に進行させることができる。
第2の後段DR工程(ステップS21−2)の時間t15は、第1の後段DR工程(ステップS16−2)の時間t5と同様、例えば0.3時間から5時間とするのが好ましいが、時間t15は第2の分解生成物からの水素の放出速度に応じて適宜調整する。
また、第2の後段DR工程(ステップS21−2)における水素分圧の降下速度は、第1の後段DR工程(ステップS16−2)と同様、0.01kPa/分以上0.2kPa/分以下とすることが好ましく、0.1kPa/分程度とすることが最も好ましい。第2の後段DR工程(ステップS21−2)の水素分圧の降下速度は第1の後段DR工程(ステップS16−2)と同様、第2の前段DR工程(ステップS21−1)における水素分圧の降下速度よりも小さくすることで、第2の後段DR工程(ステップS21−2)における第2の分解生成物からの水素放出速度は第2の前段DR工程(ステップS21−1)における第2の分解生成物からの水素放出速度よりも小さくすることができる。これにより、希土類合金の結晶粒がより均一に成長されると考えられる。
第2の後段DR工程(ステップS21−2)における雰囲気の水素分圧P14は、第1の後段DR工程(ステップS16−2)と同様、1Pa程度とする。これにより、第2の分解生成物の水素量が希土類合金粉末の磁気特性に影響ない程度にまで放出される。
反応炉内の温度を温度T12として時間t15の間、脱水素再結合させた後、冷却工程(ステップS22)に移行する。
<冷却工程:ステップS22>
冷却工程(ステップS22)は、冷却用の不活性ガスを供給して、HDDR反応で得られた希土類合金粉末を室温にまで冷却する工程である。温度を室温まで冷却した後、前記不活性ガスの供給を停止し、第2の希土類合金粉末を得る。前記不活性ガスとしては、例えば、Arガス、N2ガスなどが用いられる。
得られた第2の希土類合金粉末は、更に粉砕し、50μmから300μm以下の粉末状の希土類合金粉末に調製することができる。希土類合金粉末は、スタンプミル又はジョークラッシャーなどの粉砕手段を用いて粉砕した後、篩分けすることが好ましい。第2の希土類合金粉末を粉砕して得られる原料粉末を用いて成形後着磁することにより永久磁石となる。
以上の工程によって、HDDR法を用いて優れた磁気特性を有すると共に、減磁曲線の角型性が高い希土類合金粉末を得ることができる。
このように、本実施形態の希土類合金粉末の製造方法は、希土類合金である原料合金を第1回目のHDDR処理で第1の希土類合金粉末を得て、得られた第1の希土類合金粉末を第2回目のHDDR処理で第2の希土類合金粉末を得る。得られる第2の希土類合金粉末の微細化は、HDDR処理を原料合金に1回だけ行なうことにより得られる第1の希土類合金粉末よりも進行しており、単磁区状態となる臨界粒子径よりも大きな1次粒子が減少する。このため、得られる第2の希土類合金粉末の保磁力HcJは向上する。また、第2の希土類合金粉末はHDDR処理を1回行って得られる第1の希土類合金粉末を用いて更にHDDR処理を行って得られる希土類合金粉末である。このため、第2の希土類合金粉末中の希土類合金の核の生成は、HDDR処理を原料合金に1回だけ行なうことにより得られる第1の希土類合金粉末よりも更に均一に析出させることができる。よって、得られる第2の希土類合金粉末はその保磁力HcJを高めることができると共に、複数の希土類合金粉末同士の保磁力HcJの均一性を向上させることができる。また、水素吸蔵工程と水素化分解工程と脱水素再結合工程とからなるHDDR処理を原料合金に2回行うことで、第2の希土類合金粉末の微細化は第1の希土類合金粉末より更に進行している。このため、第2の希土類合金粉末の1次粒子の粒度分布幅は狭くなるため、第2の希土類合金粉末は、減磁曲線の角型性Hk/HcJを上昇させることができる。従って、本実施形態の希土類合金粉末の製造方法によれば、HDDR法を用いて優れた磁気特性を有すると共に、高い角型性を有する希土類合金粉末を製造することができる。
また、本実施形態の希土類合金粉末の製造方法に得られる第2の希土類合金粉末は保磁力HcJが向上するため、高温でも使用することができる。このため、第2の希土類合金粉末は自動車のエンジンルームなど高温環境において使用される磁石用の希土類合金粉末として好適に用いることができる。
また、HDDR反応の回数が増えると、結晶軸の方向が変わり、過度にHDDR処理を複数回行うと残留磁束密度Brが低下するため、本実施形態の希土類合金粉末の製造方法においては、HDDR反応を2回としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、HDDR反応は3回以上行なうようにしてもよい。
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法において以下に示す各工程について、図1に示す本発明の第1の実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法の各工程と共通する工程については説明を省略する。
図2に示すように、本実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法は、図1に示す本発明の第1の実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法の不活性ガス冷却工程(ステップS17A)を水素冷却工程(ステップS17B)に代えたこと以外、他の工程は共通する。
<水素冷却工程:ステップS17B>
水素冷却工程(ステップS17B)は、第1のDR工程(ステップS16)の終了後、得られた第1の希土類合金粉末を水素(H2)ガスを用いて冷却する工程である。H2ガスを冷却用ガスとして用いて第1のDR工程(ステップS16)で得られた第1の希土類合金粉末は800℃程度にまで冷却される。第1の希土類合金粉末が800℃程度の温度にまで冷却された後、H2ガスの供給を維持したまま第2の水素吸蔵工程(ステップS18)に移行する。
本実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法によれば、第1の希土類合金粉末を水素ガスを用いて冷却することで、第1の希土類合金粉末の冷却効果を得ることができると共に、第1の希土類合金粉末の冷却後、第1の希土類合金粉末の結晶格子中に水素を吸蔵させるための条件に簡易に調整することができる。このため、第1の希土類合金粉末を用いて2回目のHDDR反応を行なう際、第1の希土類合金粉末の冷却後、直ちに第2の水素吸蔵工程S18に移行することができる。よって、第1の希土類合金粉末を用いて2回目のHDDR反応を行なう際、HDDR反応全体の時間を短縮することができる。
また、水素冷却工程(ステップS17B)は、温度を100℃以上200℃以下としてもよい。このとき、第1の希土類合金粉末は水素分圧を100kPa以上300kPa以下とした水素雰囲気とし、0.5時間から2時間、冷却される。第1の希土類合金粉末の冷却後、炉内は水素雰囲気であり低温であるため、第1の希土類合金粉末が冷却された後、直ちに希土類合金粉末の結晶格子中に水素を吸蔵させることができる。
[第3の実施形態]
図3は、本発明の第3の実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法において以下に示す各工程について、図1に示す本発明の第1の実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法の各工程と共通する工程については説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法は、図1に示す本発明の第1の実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法の不活性ガス冷却工程(ステップS17A)を低温冷却工程(ステップS17C)に代えたこと以外、他の工程は共通する。
<低温冷却工程:ステップS17C>
低温冷却工程(ステップS17C)は、第1のDR工程(ステップS16)の終了後、得られた第1の希土類合金粉末を室温にまで冷却する工程である。第1の希土類合金粉末は、不活性ガスを冷却用ガスとして用いて冷却してもよいし、外気で自然冷却してもよい。HDDR反応で得られた第1の希土類合金粉末が室温まで冷却された後、炉内にH2ガスを供給して水素雰囲気とし、第2の水素吸蔵工程(ステップS18)に移行する。
本実施形態に係る希土類合金粉末の製造方法によれば、第1の希土類合金粉末を室温まで冷却するため、第1の希土類合金粉末を用いて再度、HDDR反応する際、第2の水素吸蔵工程S18における水素吸蔵の条件を第1の水素吸蔵工程S13における水素吸蔵の条件と同様にすることができる。このため、2回目のHDDR反応の条件を1回目のHDDR反応と同じ条件にして行なうことができる。また、炉内の温度は室温近くまで一度冷却されるため、2回目のHDDR反応を行う希土類合金粉末の量を調節することが可能である。
以上のような第1から第3の実施形態の希土類合金粉末の製造方法によって得られる希土類合金粉末はその保磁力HcJが高く、複数の希土類合金粉末同士の保磁力HcJの均一性に優れる上、減磁曲線の角型性Hk/HcJを上昇させることができる。このため、上記第1から第3の実施形態の希土類合金粉末の製造方法によって得られる希土類合金粉末は希土類焼結磁石用や希土類ボンド磁石用の合金粉末として好適に用いることができる。即ち、上記製造方法によって得られる希土類合金粉末を用いて永久磁石を作製すれば、保磁力HcJや減磁曲線の角型性Hk/HcJに優れる永久磁石を得ることができる。また、希土類合金粉末は磁気的な異方性を有することで更に磁気特性に優れる異方性を有する永久磁石の磁石粉末として好適に用いることができる。
[第4の実施形態]
<永久磁石>
次に、永久磁石の好適な実施形態について説明する。永久磁石としては、例えば、希土類ボンド磁石や希土類焼結磁石が挙げられる。希土類ボンド磁石は樹脂を含む樹脂バインダーと磁石粉末とを混練して得られる希土類ボンド磁石用コンパウンド(組成物)を所定の形状に成形して得られる磁石である。希土類焼結磁石は希土類合金粉末を所定の形状に成形した後に焼結して得られる磁石である。希土類ボンド磁石や希土類焼結磁石は、各々、成形する際、等方性、異方性とすることができる。等方性希土類ボンド磁石や等方性希土類焼結磁石は各々成形する際、磁場を印加しないで希土類合金粉末を成形することにより得られる。異方性希土類ボンド磁石や異方性希土類焼結磁石は成形する際、磁場を印加して希土類合金粉末を一定方向に配向させながら成形することにより得られる。
(希土類ボンド磁石)
希土類ボンド磁石の製造方法の一例について説明する。樹脂を含む樹脂バインダーと希土類合金粉末とを例えば加圧ニーダー等の加圧混練機で混練して樹脂バインダーと希土類合金粉末とを含む希土類ボンド磁石用コンパウンド(組成物)を調製する。樹脂は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂や、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系のエラストマー、アイオノマー、エチレンプロピレン共重合体(EPM)、エチレン−エチルアクリレート共重合体等の熱可塑性樹脂がある。なかでも、圧縮成形をする場合に用いる樹脂は、熱硬化性樹脂が好ましく、エポキシ樹脂又はフェノール樹脂がより好ましい。また、射出成形をする場合に用いる樹脂は熱可塑性樹脂が好ましい。また、希土類ボンド磁石用コンパウンドには、必要に応じて、カップリング剤やその他の添加材を加えてもよい。
また、希土類ボンド磁石における希土類合金粉末と樹脂との含有比率は、希土類合金粉末100質量%に対して、樹脂を例えば0.5質量%以上20質量%以下含むことが好ましい。希土類合金粉末100質量%に対して、樹脂の含有量が0.5質量%未満であると、保形性が損なわれる傾向があり、樹脂が20質量%と超えると、十分に優れた磁気特性が得られ難くなる傾向がある。
上述の希土類ボンド磁石用コンパウンドを調製した後、この希土類ボンド磁石用コンパウンドを射出成形することにより、希土類合金粉末と樹脂とを含む希土類ボンド磁石を得ることができる。射出成形により希土類ボンド磁石を作製する場合、希土類ボンド磁石用コンパウンドを、必要に応じてバインダー(熱可塑性樹脂)の溶融温度まで加熱し、流動状態とした後、この希土類ボンド磁石用コンパウンドを所定の形状を有する金型内に射出して成形を行う。その後、冷却し、金型から所定形状を有する成形品(希土類ボンド磁石)を取り出す。このようにして希土類ボンド磁石が得られる。希土類ボンド磁石の製造方法は、上述の射出成形による方法に限定されるものではなく、例えば希土類ボンド磁石用コンパウンドを圧縮成形することにより希土類合金粉末と樹脂とを含む希土類ボンド磁石を得るようにしてもよい。圧縮成形により希土類ボンド磁石を作製する場合、上述の希土類ボンド磁石用コンパウンドを調製した後、この希土類ボンド磁石用コンパウンドを所定の形状を有する金型内に充填し、圧力を加えて金型から所定形状を有する成形品(希土類ボンド磁石)を取り出す。金型から希土類ボンド磁石用コンパウンドを取り出す際には、機械プレスや油圧プレス等の圧縮成形機を用いて行なわれる。その後、加熱炉や真空乾燥炉などの炉に入れて熱をかけることにより硬化させることで、希土類ボンド磁石が得られる。
成形して得られる希土類ボンド磁石の形状は特に限定されるものではなく、用いる金型の形状に応じて、例えば平板状、柱状、短手方向の断面形状がリング状等、希土類ボンド磁石の形状に応じて変更することができる。また、得られた希土類ボンド磁石は、その表面上に酸化層や樹脂層等の劣化を防止するためメッキ処理や塗装処理を施すようにしてもよい。
本実施形態の希土類合金粉末の製造方法により得られる希土類合金粉末は優れた磁気特性を有すると共に、減磁曲線の角型性が高くなるため、この希土類合金粉末を用いて得られた希土類ボンド磁石は、残留磁束密度Brを十分維持しつつ保磁力HcJを向上させることができるなど優れた磁気特性を有すると共に、減磁曲線の角型性を高くすることができる。
希土類ボンド磁石用コンパウンドは目的とする所定の形状に成形する際、磁場を印加して成形して得られる成形体を一定方向に配向させるようにしてもよい。これにより、希土類ボンド磁石が特定方向に配向するので、より磁力の強い異方性希土類ボンド磁石が得られる。
(希土類焼結磁石)
希土類焼結磁石の製造方法の一例について説明する。上述のようにして得られた希土類合金粉末を、例えばプレス成形などにより目的とする所定形状に成形する。希土類合金粉末を成形して得られる成形体の形状は特に限定されるものではなく、用いる金型の形状に応じて、例えば平板状、柱状、短手方向の断面形状がリング状等、希土類焼結磁石の形状に応じて変更することができる。
次いで、成形体を、例えば、真空中又は不活性ガスの存在下、1000℃から1200℃の温度で、1時間から10時間加熱処理して焼成する。これにより、焼結体(希土類焼結磁石)が得られる。焼成後、得られた希土類焼結磁石を焼成時よりも低い温度で加熱することなどによって、希土類焼結磁石に時効処理を施す。時効処理は、例えば、700℃から900℃の温度で1時間から3時間、更に500℃から700℃の温度で1時間から3時間加熱する2段階加熱や、600℃付近の温度で1時間から3時間加熱する1段階加熱等、時効処理を施す回数に応じて適宜処理条件を調整する。このような時効処理によって、希土類焼結磁石の磁気特性を向上させることができる。
得られた希土類焼結磁石は、所望のサイズに切断したり、表面を平滑化することで、所定形状の希土類焼結磁石としてもよい。また、得られた希土類焼結磁石は、その表面上に酸化層や樹脂層等の劣化を防止するためメッキ処理や塗装処理を施すようにしてもよい。
上述したように、本実施形態の希土類合金粉末の製造方法により得られる希土類合金粉末は優れた磁気特性を有すると共に、減磁曲線の角型性が高くなるため、この希土類合金粉末を用いて得られた希土類焼結磁石は、残留磁束密度Brを十分維持しつつ保磁力HcJを向上させることができるなど優れた磁気特性を有することができる。
また、希土類合金粉末を目的とする所定の形状に成形する際、磁場を印加して成形して得られる成形体を一定方向に配向させるようにしてもよい。これにより、希土類焼結磁石が特定方向に配向するので、より磁性の強い異方性希土類焼結磁石が得られる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形、種々の組み合わせが可能であり、永久磁石以外について同様に適用することができる。
本発明の内容を実施例及び比較例を用いて以下に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
ストリップキャスト法によって、以下の組成を有するNd2Fe14B原料合金(粒径30.0mm程度、以下、「原料合金」という。)を調製した。本実施例は図3に示すフローチャートに従って行なったものである。
Nd:28.1質量%
Fe:66.5質量%
Co:3.5質量%
B:1.08質量%
Ga:0.36質量%
Nb:0.30質量%
この原料合金は上述の元素の他に微量の不可避不純物(原料合金全体の0.2〜0.3質量%)を含んでいた。原料合金を、真空中、1000℃から1200℃の温度範囲で24時間保持した(図3中、均質化熱処理工程(ステップS12))。均質化熱処理後の原料合金をスタンプミルを用いて粉砕し、篩分けを行って粉末状(粒径1mmから2mm)の原料合金を得た。
この原料合金をモリブデン製の容器に充填し、赤外線加熱方式を有する管状熱処理炉に装填した。その後、管状熱処理炉内に水素ガスを導入し、水素雰囲気下、水素分圧100kPa程度とし、100℃程度で2時間放置し、原料合金に水素を吸蔵した(図3中、第1の水素吸蔵工程(ステップS13))。その後、原料合金は以下に示す条件でHDDR法による処理(HDDR処理)を2回施した。HDDR処理のフローチャートは図3に示す第1のHD工程(ステップS14)から第2のDR工程(ステップS21)に示す通りである。1回目のHDDR処理は、図3に示す第1のHD工程(ステップS14)から第1のDR工程(ステップS16)に示す通りである。2回目のHDDR処理は、図3に示す第2のHD工程(ステップS19)から第2のDR工程(ステップS21)に示す通りである。
原料合金に水素を吸蔵させた後、1回目のHDDR処理を行った。炉内の水素分圧を下げるとともに炉内温度を10℃/分で昇温し、水素ガスを吸蔵した原料合金を、水素分圧40kPa、温度800℃の条件で6時間保持した(図3中、第1のHD工程(ステップS14))。これによって、原料合金を水素化分解させて第1の分解生成物を得た。
その後、炉内温度を10℃/分で850℃まで昇温した(図3中、第1の昇温工程(ステップS15))。炉内温度を850℃まで昇温した後、真空ポンプを用いて水素ガスを排気し、炉内の圧力(水素分圧)を4kPa/分の速度で下げて6kPaとし、約10分間、第1の分解生成物に含まれる水素の放出を開始した(図3中、第1の前段DR工程(ステップS16−1))。
第1の分解生成物から、水素を放出させる前の第1の分解生成物全体の質量を基準として、1.33質量%/分の水素放出速度で水素を放出させて、第1の分解生成物中の水素濃度を低減した。
その後、炉内からの水素ガスの排気速度を変更して、炉内圧力(水素分圧)の降下速度を0.1kPa/分とした。これによって、第1の分解生成物からの水素放出速度を、水素を放出させる前の第1の分解生成物全体の質量を基準として0.35質量%/分に調整した。その後、炉内の圧力(=水素分圧)が1Pa未満になるまで、水素の放出を40分から50分間継続して行うことにより、第1の分解生成物から水素をほぼ完全に除去した(図3中、第1の後段DR工程(ステップS16−2))。
炉内の圧力(水素分圧)が1Paとなった時点で、水素の放出を停止した。その後、炉内を室温(約20℃程度)まで冷却し、1回目のHDDR処理がされた第1のNdFe14B合金粉末(以下、「第1の合金粉末」という。)を得た。
この第1の粉末を炉内に保持したまま、再度、炉内に水素ガスを導入し、水素雰囲気下、水素分圧100kPa程度とし、100℃程度で2時間放置し、第1の合金粉末に水素を吸蔵した(図3中、第2の水素吸蔵工程(ステップS18))。
第1の合金粉末に水素を吸蔵させた後、2回目のHDDR処理を行った。炉内の水素分圧を下げるとともに炉内温度を10℃/分で昇温し、水素ガスを吸蔵した第1の合金粉末を水素分圧40kPa、温度800℃の条件で6時間保持した(図3中、第2のHD工程(ステップS19))。これによって、第1の合金粉末を水素化分解させて第2の分解生成物を得た。
その後、炉内温度を10℃/分で850℃まで昇温した(図3中、第2の昇温工程(ステップS20))。炉内温度を850℃まで昇温した後、真空ポンプを用いて水素ガスを排気し、炉内の圧力(水素分圧)を4kPa/分の速度で下げて6kPaとし、約10分間、第2の分解生成物に含まれる水素の放出を開始した(図3中、第2の前段DR工程(ステップS21−1))。第2の分解生成物から水素を放出させる前の第2の分解生成物全体の質量を基準として1.33質量%/分の水素放出速度で水素を放出させて、第2の分解生成物中の水素濃度を低減した。
その後、炉内からの水素ガスの排気速度を変更して炉内圧力(水素分圧)の降下速度を0.1kPa/分とした。これによって第2の分解生成物からの水素放出速度は水素を放出させる前の分解生成物全体の質量を基準として0.35質量%/分に調整した。その後、炉内の圧力(水素分圧)が1Pa未満になるまで水素の放出を40分から50分間継続して行うことにより、第2の分解生成物から水素をほぼ完全に除去した(図3中の第2の後段DR工程(ステップS21−2))。
炉内の圧力(水素分圧)が1Paとなった時点で、水素の放出を停止した。その後、炉内を室温(約20℃程度)まで冷却し、HDDR処理された第2のNdFe14B合金粉末を得た。この第2のNdFe14B合金粉末を磁石成形用の磁石粉末として用いた。
(比較例1)
比較例1は、原料合金に1回目のHDDR処理(第1のHD工程(ステップS14)から第1のDR工程S16まで)を実施例1と同様にして行なった後、実施例1と同様に冷却工程(ステップS22)を行なって、NdFe14B粉末を製造した。このNdFe14B粉末を磁石成形用の磁石粉末として用いた。
[磁気特性の評価]
実施例1、比較例1の各々において得られた磁石粉末(NdFe14B粉末)を、不活性雰囲気中で乳鉢を用いて粉砕し、篩い分けを行って、53μmから212μmに篩い分けた。その後、磁石粉末とパラフィンとをケースに詰め、パラフィンを融解させた状態で磁場を1Tesla印加して磁石粉末を配向させて希土類ボンド磁石を成形した。その磁石粉末の配向方向と平行な方向に6Teslaのパルス磁場を印加し、振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁化−磁場曲線を測定して磁気特性を測定した。磁気特性として4πImax、残留磁束密度Br、保磁力HcJ、最大磁気エネルギーBHmax及び減磁曲線の角型性Hk/HcJを測定した。なお、4πImaxは、4πI(磁化の強さ)−H(磁場の強さ)曲線における磁化の強さの最大値である。
図4は、HDDR反応を2回行なった実施例1とHDDR反応を1回行なった比較例1の各々得られる磁石粉末を用いて行なった磁気特性を示す図であり、図5は、実施例1と比較例1の各々得られる磁石粉末の角型性を示す図である。
図4、5に示すように、HDDR反応を2回行なった場合に得られる磁石粉末を用いて成形された希土類ボンド磁石の方がHDDR反応を1回行なった場合に得られる磁石粉末を用いて成形された希土類ボンド磁石より保磁力HcJが高くなり、減磁曲線の角型性Hk/HcJも上がり、優れた磁気特性を有することがわかった。
以上のように、本発明に係る希土類合金粉末の製造方法は、HDDR法を用いて磁石用の希土類合金粉末を製造するのに有用である。

Claims (6)

  1. 水素化分解・脱水素再結合法によって希土類合金粉末を製造するにあたり、
    希土類合金の原料合金に水素を吸蔵させる水素吸蔵工程と、
    水素を吸蔵させた原料合金を水素化分解させて分解生成物を得る水素化分解工程と、
    前記分解生成物から水素を放出させ、前記分解生成物の水素濃度を低減し希土類合金粉末を得る脱水素再結合工程と、を含み、
    前記水素吸蔵工程と前記水素化分解工程と前記脱水素再結合工程との工程が複数回行なわれることを特徴とする希土類合金粉末の製造方法。
  2. n回目(但し、nは2以上の整数)の水素化分解工程の水素化分解反応時間が、n−1回目の水素化分解工程の水素化分解反応時間より短い請求項1に記載の希土類合金粉末の製造方法。
  3. 第1回目の水素吸蔵工程における温度が100℃以上200℃以下であって水素分圧が100kPa以上300kPa以下であり、
    第2回目以降の水素吸蔵工程における温度が600℃以上800℃以下であって水素分圧が1kPa以上10kPa以下である請求項1又は2に記載の希土類合金粉末の製造方法。
  4. 前記脱水素再結合工程の終了後、得られた希土類合金粉末を水素ガスを用いて冷却する水素冷却工程を含む請求項1から3の何れか1つに記載の希土類合金粉末の製造方法。
  5. 前記水素冷却工程における温度が100℃以上200℃以下であり、水素分圧が100kPa以上300kPa以下である請求項4に記載の希土類合金粉末の製造方法。
  6. 希土類合金の原料合金に水素を吸蔵させた後、水素化分解し、分解して得られる分解生成物から水素を放出して希土類合金粉末を得る工程を複数回行ない、得られる希土類合金粉末を成形して得られることを特徴とする永久磁石。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2013003926A1 (pt) * 2011-07-01 2013-01-10 Instituto De Pesquisas Tecnológicas Do Estado De São Paulo Processo de recuperação de liga lantanídeo-metal-metalóide em pó nanoparticulado com recuperação magnética e produto
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