JP2012197666A - 桟材並びに遮音パネル及び遮音方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】建築物の構成部材として利用されるパネルの遮音性を向上できる桟材を提供する。
【解決手段】不織繊維層1aと補強層1bとを積層して桟材1を形成する。前記不織繊維層1aは、湿熱接着性繊維を含む繊維が交絡し、かつこの湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された不織繊維構造体で形成されている。本発明の桟材は、不織繊維層を介して第1の補強層と第2の補強層とが積層された三層構造であってもよい。本発明の遮音パネルは、前記桟材を含む桟を介して第1の面材と第2の面材とが積層された遮音パネルであって、前記桟材の不織繊維層及び補強層が面材の面方向と平行になるように配設されていてもよい。桟材と、第1の面材及び/又は第2の面材との間に制振層が介在させてもよい。
【選択図】図1

Description

本発明は、建築物の構成部材(ドア、戸、壁、仕切り材、間仕切り、天井など)として利用されるパネルの遮音性を向上させるための桟材並びにこの桟材を用いた遮音パネル及び遮音方法に関する。
従来から、建築物のドア、戸、壁、仕切り材、間仕切り、天井などの構成部材に使用されるパネル(遮音パネル)は、その音響透過損失を大きくすることによって遮音効果が達成されてきた。そして、音響透過損失は、質量則に従うことが広く知られている。しかし、木造や鉄骨構造等の軽量構造による建築物に使用する遮音パネルにおいて、その質量を大きくすることは、構造面の制約や経済的な制約から限界がある。特に可動間仕切りや建具には操作性を改善するために軽量性が求められる。
軽量で音響透過損失の大きい遮音パネルとしては、一重壁(単板)構造のパネルでは遮音効果を向上させるのが困難であるため、二重壁構造の遮音パネルがよく知られている。二重壁構造の場合、表側の面材と裏側の面材とを間隔を隔てて固着するために木製や金属製の桟材が使用されるが、この桟材により固体伝播音が伝わり、遮音パネルの音響透過損失が低下する。
これに対して、特許第3422903号公報(特許文献1)には、第1の表面板と、第1の表面板との間に補強桟を介して設けられた第2の表面板とを備えているパネル構造において、前記補強桟といずれか一方の表面板との間に、前記補強桟の幅程度の大きさを有する弾性体からなる制振部材を介装し、前記制振部材はステイプラーのみにより前記補強桟に固定されているパネル構造が開示されている。
特開2009−150133号公報(特許文献2)には、内部に複数本の補強下地桟が設けられた周囲枠の両側に面板が設けられ、前記複数本のうちの一部の補強下地桟が、一方の面材の側に偏って位置して他方の面材から離間していると共に、残る一部の補強下地桟が、前記他方の面材の側に偏って位置して前記一方の面材から離間しており、前記一部の補強下地桟と前記他方の面材との間、及び、前記残る一部の補強下地桟と前記一方の面材との間のそれぞれにプレス支持用緩衝材が介設され、前記一部の補強下地桟と前記一方の面材、及び前記残る一部の補強下地桟と前記他方の面材とがプレスされて接合されていることを特徴とする遮音建具が開示されている。この文献でも、プレス支持用緩衝材としては、ゴム状材が記載されている。
しかし、これらの補強(下地)桟に用いられる弾性体やゴム状材は強度が小さいため、面材を押す力に対して十分な強度を確保するのが困難である。さらに、弾性体やゴム状材では吸音性が低いため、遮音性に殆ど寄与しない。
また、特開2010−229809号公報(特許文献3)には、湿熱接着性繊維を含み、この湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された不織繊維構造体と面材とで構成された遮音パネルであって、前記不織繊維構造体の繊維接着率が3〜85%であり、かつ見掛け密度が0.03〜0.7g/cmである遮音パネルが開示されている。この文献には、対向する面材の間に、前記不織繊維構造体で構成した層を介在させる態様や、枠桟(フレーム)及び中桟を前記不織繊維構造体で構成した層を介在させる態様が記載されている。
しかし、この遮音パネルでも、遮音性が充分でない。
特許第3422903号公報(特許請求の範囲) 特開2009−150133号公報(特許請求の範囲、段落[0021]) 特開2010−229809号公報(特許請求の範囲)
従って、本発明の目的は、建築物の構成部材(ドア、戸、壁、仕切り材、間仕切り、天井など)として利用されるパネルの遮音性を向上できる桟材並びにこの桟材を用いた遮音パネル及び遮音方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、低周波域での遮音性を向上できる桟材並びにこの桟材を用いた遮音パネル及び遮音方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、構造が簡単で軽量であるにも拘わらず、高い強度を有し、固体伝搬音及び空気伝搬音のいずれに対しても高い遮音性を有する遮音パネル及び遮音方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、広い周波域に亘り遮音性に優れた遮音パネル及び遮音方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、透過共鳴による遮音効果の低下が抑制された遮音パネル及び遮音方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、換気機能を有するとともに、遮音性も向上できる遮音パネル及び遮音方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、湿熱接着性繊維を固定した特定の不織繊維構造体で形成された不織繊維層と補強層とを含む積層構造を有する桟材が、建築物の構成部材として利用されるパネルの遮音性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の桟材は、不織繊維層と補強層とを含む積層構造を有する桟材であって、前記不織繊維層が、湿熱接着性繊維を含む繊維が交絡し、かつこの湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された不織繊維構造体で形成されている。本発明の桟材は、不織繊維層と補強層との二層構造であってもよい。本発明の桟材は、不織繊維層を介して第1の補強層と第2の補強層とが積層された三層構造であってもよい。本発明の桟材は、断面四角形状の棒状であり、かつ補強層が木質材料又は金属材料で形成されていてもよい。前記不織繊維構造体は、熱収縮率の異なる複数の樹脂が相分離構造を形成した複合繊維をさらに含み、この複合繊維が捲縮して他の繊維と交絡した構造を有していてもよい。
本発明には、第1の面材と第2の面材との間に、前記桟材を含む桟が介在した遮音パネルであって、前記桟材の不織繊維層及び補強層が第1及び第2の面材の面方向と平行に配設されている遮音パネルも含まれる。本発明の遮音パネルにおいて、第1の面材と第2の面材との間に、複数本の桟材が間隔をおいて平行に配設されていてもよい。この遮音パネルにおいて、前記桟材が、不織繊維層と補強層との二層構造であり、かつ複数本の桟材が、第1及び第2の面材に対して、不織繊維層と補強層とが交互に接触して配設されていてもよい。本発明の遮音パネルは、第1の面材と、第1の面材の四周端部に枠状の形態で配設された枠桟と、これらの枠間に配設された中桟と、前記枠桟及び前記中桟を介して第1の面材と積層された第2の面材とを含む遮音パネルであって、前記中桟が前記桟材で形成されていてもよい。
本発明の遮音パネルにおいて、第1及び第2の面材に、それぞれ第1及び第2の開口部が形成され、かつ第1の開口部が第2の開口部と異なる位置に形成されていてもよい。この遮音パネルは、遮音機能に加えてさらに換気機能を有する換気遮音パネルとして適している。本発明の換気遮音パネルにおいて、隣接する桟間に、通気のための空間部を残存させて吸音材が配設されていてもよい。前記隣接する桟間の空間部は、桟材の長手方向に対して垂直な断面において、18cm以下の断面積を有していてもよい。
本発明の遮音パネルにおいて、桟材と、第1の面材及び/又は第2の面材との間に制振層が介在していてもよい。特に、桟材と、第1の面材との間に第1の制振層が介在し、かつ桟材と、第2の面材との間に第2の制振層が介在していてもよい。前記制振層はアスファルトを含有していてもよい。
本発明には、前記遮音パネルを用いた遮音方法も含まれる。
本明細書では、「遮音パネル」とは、ドア、戸、壁、仕切り材、間仕切り、天井など建築物の構成部材や衝立などに用いられる遮音パネルを意味し、桟材を介して面材が積層されていればよく、枠体や枠桟を備えたパネルに限定されない。
本発明では、桟材が湿熱接着性繊維を固定した特定の不織繊維構造体で形成された不織繊維層と補強層とを含む積層構造を有するため、建築物の構成部材(ドア、戸、壁、仕切り材、間仕切り、天井など)や衝立などに利用されるパネルの遮音性(特に低周波域での遮音性)を向上できる。また、この桟材を用いて得られた遮音パネルは、構造が簡単で軽量であるにも拘わらず、高い強度を有し、固体伝搬音及び空気伝搬音のいずれに対しても遮音性を向上できる。また、広い周波域に亘り遮音性を向上できる。さらに、従来の繊維状吸音材を含まないため、透過共鳴による遮音効果の低下を抑制できる。また、開口部を有する面材を配設することにより、換気機能を付与するとともに、遮音性も向上できる。
図1は、本発明の桟材の一例を示す概略斜視図である。 図2は、本発明の桟材の他の例の積層構造を示す概略断面図である。 図3は、本発明の遮音パネルの構造の一例を示す部分切り欠き概略斜視図である。 図4は、図3の遮音パネルのA−A線概略断面図である。 図5は、本発明の換気遮音パネルの構造の一例を示す部分切り欠き概略斜視図である。 図6は、図5の換気遮音パネルのA−A線概略断面図である。 図7は、本発明の換気遮音パネルの他の例を示す概略断面図である。 図8は、実施例における風速及び換気量を測定する方法を説明するための概略模式図である。 図9は、実験例1における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。 図10は、実験例2における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。 図11は、実験例3における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。 図12は、実験例4における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。 図13は、実験例5における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。 図14は、実験例6における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。 図15は、実験例7における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。 図16は、実験例8における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。 図17は、実験例9における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。 図18は、実験例10における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。 図19は、実験例11における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
[桟材]
本発明の桟材は、不織繊維層と補強層とを含む積層構造を有している。
(不織繊維層)
不織繊維層は、湿熱接着性繊維を含み、かつこの湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された不織繊維構造体で形成されている。
(1)不織繊維構造体
不織繊維構造体は、湿熱接着性繊維を含み、かつ不織繊維構造を有する成形体である。さらに、本発明における不織繊維構造体は、前記湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定されており、繊維構造に特有の高い吸音断熱性、衝撃吸収性を有するとともに、不織繊維構造を構成する繊維の配列と、この繊維同士の接着状態を調整することにより、繊維の脱落が抑制され、形態安定性及び軽量性を向上できるとともに、目的に応じて、製造条件の調整や他の繊維と組み合わせることなどにより、機械的強度を調整できる。
このような不織繊維構造体は、前記湿熱接着性繊維を含むウェブに高温(過熱又は加熱)水蒸気を作用させて、湿熱接着性繊維の融点以下の温度で接着作用を発現し、繊維同士を部分的に接着させることにより得られる。すなわち、単繊維及び束状集束繊維同士を湿熱下、適度に小さな空隙を保持しながら、いわば「スクラム」を組むように点接着又は部分接着させて得られる。
湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂で構成されている。湿熱接着性樹脂は、高温水蒸気によって容易に実現可能な温度において、流動又は容易に変形して接着機能を発現可能であればよい。具体的には、熱水(例えば、80〜120℃、特に95〜100℃程度)で軟化して自己接着又は他の繊維に接着可能な熱可塑性樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系重合体、ポリ乳酸などのポリ乳酸系樹脂、(メタ)アクリルアミド単位を含む(メタ)アクリル系共重合体などが挙げられる。さらに、高温水蒸気により容易に流動又は変形して接着可能なエラストマー(例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマーなど)などであってもよい。これらの湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、特に、エチレンやプロピレンなどのα−C2−10オレフィン単位を含むビニルアルコール系重合体、特に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が好ましい。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体において、エチレン単位の含有量(共重合割合)は、例えば、5〜65モル%(例えば、10〜65モル%)、好ましくは20〜55モル%、さらに好ましくは30〜50モル%程度である。エチレン単位がこの範囲にあることにより、湿熱接着性を有するが、熱水溶解性はないという特異な性質が得られる。エチレン単位の割合が少なすぎると、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が、低温の蒸気(水)で容易に膨潤又はゲル化し、水に一度濡れただけで形態が変化し易い。一方、エチレン単位の割合が多すぎると、吸湿性が低下し、湿熱による繊維融着が発現し難くなるため、実用性のある強度の確保が困難となる。エチレン単位の割合が、特に30〜50モル%の範囲にあると、シート又は板状への加工性が特に優れる。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体におけるビニルアルコール単位のケン化度は、例えば、90〜99.99モル%程度であり、好ましくは95〜99.98モル%、さらに好ましくは96〜99.97モル%程度である。ケン化度が小さすぎると、熱安定性が低下し、熱分解やゲル化によって安定性が低下する。一方、ケン化度が大きすぎると、繊維自体の製造が困難となる。
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は、必要に応じて選択できるが、例えば、200〜2500、好ましくは300〜2000、さらに好ましくは400〜1500程度である。重合度がこの範囲にあると、紡糸性と湿熱接着性とのバランスに優れる。
湿熱接着性繊維の断面形状(繊維の長さ方向に対して垂直な断面形状)は、一般的な中実断面形状である丸型断面や異型断面[偏平状、楕円状、多角形状など]に限定されず、中空断面状などであってもよい。湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂を含む複数の樹脂で構成された複合繊維であってもよい。複合繊維は、湿熱接着性樹脂を少なくとも繊維表面の一部に有していればよいが、接着性の点から、繊維表面において長さ方向に連続する湿熱接着性樹脂を有するのが好ましい。湿熱接着性樹脂の被覆率は、例えば、50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
湿熱接着性樹脂が表面を占める複合繊維の横断面構造としては、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型又は多層貼合型、放射状貼合型、ランダム複合型などが挙げられる。これらの横断面構造のうち、接着性が高い構造である点から、湿熱接着性樹脂が繊維の全表面を被覆する構造である芯鞘型構造(すなわち、鞘部が湿熱接着性樹脂で構成された芯鞘型構造)が好ましい。芯鞘型構造は、他の繊維形成性重合体で構成された繊維の表面に湿熱接着性樹脂をコーティングした繊維であってもよい。
複合繊維の場合、湿熱接着性樹脂同士を組み合わせてもよいが、非湿熱接着性樹脂と組み合わせてもよい。非湿熱接着性樹脂としては、非水溶性又は疎水性樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの非湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの非湿熱接着性樹脂のうち、耐熱性及び寸法安定性の点から、融点が湿熱接着性樹脂(特にエチレン−ビニルアルコール系共重合体)よりも高い樹脂、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、特に、耐熱性や繊維形成性などのバランスに優れる点から、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂としては、特開2010−229809号公報(特許文献3)に記載の樹脂などが利用できる。
湿熱接着性樹脂と非湿熱接着性樹脂(繊維形成性重合体)とで構成された複合繊維の場合、両者の割合(質量比)は、構造(例えば、芯鞘型構造)に応じて選択でき、湿熱接着性樹脂が表面に存在すれば特に限定されないが、例えば、湿熱接着性樹脂/非湿熱接着性樹脂=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜15/85、さらに好ましくは60/40〜20/80程度である。湿熱接着性樹脂の割合が多すぎると、繊維の強度を確保し難く、湿熱接着性樹脂の割合が少なすぎると、繊維表面の長さ方向に連続して湿熱接着性樹脂を存在させるのが困難となり、湿熱接着性が低下する。この傾向は、湿熱接着性樹脂を非湿熱接着性繊維の表面にコートする場合においても同様である。
湿熱接着性繊維の平均繊度は、用途に応じて、例えば、0.01〜100dtex程度の範囲から選択でき、好ましくは0.1〜50dtex、さらに好ましくは0.5〜30dtex(特に1〜10dtex)程度である。平均繊度がこの範囲にあると、繊維の強度と湿熱接着性の発現とのバランスに優れる。
湿熱接着性繊維の平均繊維長は、例えば、10〜100mm程度の範囲から選択でき、好ましくは20〜80mm、さらに好ましくは25〜75mm程度である。平均繊維長がこの範囲にあると、繊維が充分に絡み合うため、繊維構造体の機械的強度が向上する。
湿熱接着性繊維の捲縮率は、例えば、1〜50%、好ましくは3〜40%、さらに好ましくは5〜30%程度である。また、捲縮数は、例えば、1〜100個/25mm、好ましくは5〜50個/25mm、さらに好ましくは10〜30個/25mm程度である。
(他の繊維)
不織繊維構造体は、さらに非湿熱接着性繊維を含んでいてもよい。非湿熱接着性繊維には、有機繊維及び無機繊維が含まれる。有機繊維として、例えば、前記複合繊維の非湿熱接着性樹脂で形成された繊維の他、セルロース系繊維(例えば、天然繊維、レーヨン繊維、アセテート繊維など)などが挙げられる。無機繊維としては、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維などが挙げられる。これらの非湿熱接着性繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
これらの非湿熱接着性繊維は、強度を向上させる場合には、吸湿性の高い親水性繊維、例えば、ポリビニル系繊維やセルロース系繊維、特に、セルロース系繊維を使用するのが好ましい。セルロース系繊維には、天然繊維(木綿、羊毛、絹、麻など)、半合成繊維(トリアセテート繊維などのアセテート繊維など)、再生繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル(例えば、登録商標名:「テンセル」など)など)が含まれる。これらのセルロース系繊維のうち、例えば、レーヨンなどの半合成繊維が好適に使用でき、湿熱接着性繊維と組み合わせると、湿熱接着性繊維との親和性が高いため、収縮が進むとともに、接着性も向上し、高密度で機械的特性の高い桟材が得られる。
一方、振動吸収性などをさらに向上させる場合には、吸湿性の低い疎水性繊維、例えば、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、特に、諸特性のバランスに優れるポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維など)を使用するのが好ましい。これらの疎水性繊維を湿熱接着性繊維と組み合わせると、繊維の融着点を減少することができ、吸音性に優れた桟材が得られる。
これらの非湿熱接着性繊維の平均繊度及び平均繊維長は、湿熱接着性繊維と同様である。
さらに、吸音性を向上させるため、疎水性繊維の中でも、特に、熱収縮率(又は熱膨張率)の異なる複数の樹脂で相構造が形成された複合繊維(潜在捲縮性複合繊維)を使用するのが好ましい。
(潜在捲縮性複合繊維)
潜在捲縮性複合繊維は、複数の樹脂の熱収縮率(又は熱膨張率)の違いに起因して、加熱により捲縮を生じる非対称又は層状(いわゆるバイメタル)構造を有する繊維(潜在捲縮繊維)である。複数の樹脂は、通常、軟化点又は融点が異なる。複数の樹脂は、例えば、前記複合繊維や他の繊維と同様の非湿熱接着性樹脂、前記湿熱接着性繊維の湿熱接着性樹脂から選択してもよい。これらの樹脂のうち、高温水蒸気で加熱加湿処理しても溶融又は軟化して繊維が融着しない点から、軟化点又は融点が100℃以上の非湿熱接着性樹脂(又は耐熱性疎水性樹脂又は非水性樹脂)、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましく、特に、耐熱性や繊維形成性などのバランスに優れる点から、芳香族ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。本発明では、高温水蒸気で処理しても複合繊維による融着が起こらないように、複合繊維の表面に露出する樹脂は非湿熱接着性繊維であるのが好ましい。
複合繊維を構成する複数の樹脂は、熱収縮率が異なっていればよく、同系統の樹脂の組み合わせであっても、異種の樹脂の組み合わせであってもよい。
本発明では、密着性の点から、同系統の樹脂の組み合わせで構成されているのが好ましい。同系統の樹脂の組み合わせの場合、通常、単独重合体(必須成分)を形成する成分(A)と、変性重合体(共重合体)を形成する成分(B)との組み合わせが用いられる。すなわち、必須成分である単独重合体に対して、例えば、結晶化度や融点又は軟化点などを低下させる共重合性単量体を共重合させて変性することにより、単独重合体よりも結晶化度を低下させるか、非晶性とし、単独重合体よりも融点又は軟化点などを低下させてもよい。このように、結晶性、融点又は軟化点を変化させることにより、熱収縮率に差異を設けてもよい。融点又は軟化点の差は、例えば、5〜150℃、好ましくは50〜130℃、さらに好ましくは70〜120℃程度であってもよい。変性に用いられる共重合性単量体の割合は、全単量体に対して、例えば、1〜50モル%、好ましくは2〜40モル%、さらに好ましくは3〜30モル%(特に5〜20モル%)程度である。単独重合体を形成する成分と、変性重合体を形成する成分との複合比率(質量比)は、繊維の構造に応じて選択できるが、例えば、単独重合体成分(A)/変性重合体成分(B)=90/10〜10/90、好ましくは70/30〜30/70、さらに好ましくは60/40〜40/60程度である。
本発明では、潜在捲縮性の複合繊維を製造し易い点から、複合繊維は芳香族ポリエステル系樹脂の組み合わせ、特に、ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)と、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)との組み合わせであってもよい。特に、本発明では、ウェブ形成後に捲縮を発現するタイプが好ましく、この点からも前記組み合わせが好ましい。ウェブ形成後に捲縮が発現することにより、効率良く繊維同士が交絡し、より少ない融着点数でウェブの形態保持が可能となるため、適度な柔軟性を実現できる。
ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)は、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸などの対称型芳香族ジカルボン酸など)とアルカンジオール成分(エチレングリコールやブチレングリコールなどC3−6アルカンジオールなど)との単独重合体であってもよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC2−4アルキレンテレフタレート系樹脂などが使用され、通常、固有粘度0.6〜0.7程度の一般的なPET繊維に用いられるPETが使用される。
一方、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)では、必須成分である前記ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)の融点又は軟化点、結晶化度を低下させる共重合成分、例えば、非対称型芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸成分や、ポリアルキレンアリレート系樹脂(a)のアルカンジオールよりも鎖長の長いアルカンジオール成分及び/又はエーテル結合含有ジオール成分が使用できる。これらの共重合成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの成分のうち、ジカルボン酸成分として、非対称型芳香族カルボン酸(イソフタル酸、フタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など)、脂肪族ジカルボン酸(アジピン酸などのC6−12脂肪族ジカルボン酸)などが汎用され、ジオール成分として、アルカンジオール(1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどC3−6アルカンジオールなど)、(ポリ)オキシアルキレングリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシC2−4アルキレングリコールなど)などが汎用される。これらのうち、イソフタル酸などの非対称型芳香族ジカルボン酸、ジエチレングリコールなどのポリオキシC2−4アルキレングリコールなどが好ましい。さらに、変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)は、C2−4アルキレンアリレート(エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレートなど)をハードセグメントとし、(ポリ)オキシアルキレングリコールなどをソフトセグメントとするエラストマーであってもよい。
変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)において、ジカルボン酸成分として、融点又は軟化点を低下させるためのジカルボン酸成分(例えば、イソフタル酸など)の割合は、ジカルボン酸成分の全量に対して、例えば、1〜50モル%、好ましくは5〜50モル%、さらに好ましくは15〜40モル%程度である。ジオール成分として、融点又は軟化点を低下させるためのジオール成分(例えば、ジエチレングリコールなど)の割合は、ジオール成分の全量に対して、例えば、30モル%以下、好ましくは10モル%以下(例えば、0.1〜10モル%程度)である。共重合成分の割合が低すぎると、充分な捲縮が発現せず、捲縮発現後の不織繊維構造体の形態安定性と伸縮性とが低下する。一方、共重合成分の割合が高すぎると、捲縮発現性能は高くなるが、安定に紡糸することが困難となる。
変性ポリアルキレンアリレート系樹脂(b)は、必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸成分、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオール成分などを併用して分岐させてもよい。
潜在捲縮性複合繊維の横断面形状(繊維の長さ方向に対して垂直な断面形状)は、一般的な中実断面形状である丸型断面や異型断面[偏平状、楕円状、多角形状、3〜14葉状、T字状、H字状、V字状、ドッグボーン(I字状)など]に限定されず、中空断面状などであってもよいが、通常、丸型断面である。
複合繊維の横断面構造としては、複数の樹脂に形成された相分離構造、例えば、芯鞘型、海島型、ブレンド型、並列型(サイドバイサイド型又は多層貼合型)、放射型(放射状貼合型)、中空放射型、ブロック型、ランダム複合型などの構造が挙げられる。これらの横断面構造のうち、加熱により自発捲縮を発現させ易い点から、相部分が隣り合う構造(いわゆるバイメタル構造)や、相分離構造が非対称である構造、例えば、偏芯芯鞘型、並列型構造が好ましい。
なお、潜在捲縮性複合繊維が偏芯芯鞘型などの芯鞘型構造である場合、表面に位置する鞘部の非湿熱性接着性樹脂と熱収縮差を有し捲縮可能であれば、芯部は湿熱接着性樹脂(例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコールなどのビニルアルコール系重合体など)や、低い融点又は軟化点を有する熱可塑性樹脂(例えば、ポリスチレンや低密度ポリエチレンなど)で構成されていてもよい。
潜在捲縮性複合繊維の平均繊度は、例えば、0.1〜50dtex程度の範囲から選択でき、好ましくは0.5〜10dtex、さらに好ましくは1〜5dtex(特に1.5〜3dtex)程度である。繊度が細すぎると、繊維そのものが製造し難くなることに加え、繊維強度を確保し難い。また、捲縮を発現させる工程において、綺麗なコイル状捲縮を発現させ難くなる。一方、繊度が太すぎると、繊維が剛直となり、十分な捲縮を発現し難くなる。
潜在捲縮性複合繊維の平均繊維長は、例えば、10〜100mm程度の範囲から選択でき、好ましくは20〜80mm、さらに好ましくは25〜75mm(特に40〜60mm)程度である。繊維長が短すぎると、繊維ウェブの形成が難しくなることに加え、捲縮を発現させる工程において、繊維同士の交絡が不十分となり、強度及び伸縮性の確保が困難となる。また、繊維長が長すぎると、均一な目付の繊維ウェブを形成することが難しくなるばかりか、ウェブ形成時点で繊維同士の交絡が多く発現し、捲縮を発現する際にお互いに妨害し合って吸音性の発現が困難となる。
この潜在捲縮性複合繊維は、熱処理を施すことにより、捲縮が発現(顕在化)し、略コイル状(螺旋状又はつるまきバネ状)の立体捲縮を有する繊維となる。
加熱前の捲縮数(機械捲縮数)は、例えば、0〜30個/25mm、好ましくは1〜25個/25mm、さらに好ましくは5〜20個/25mm程度である。加熱後の捲縮数は、例えば、30個/25mm以上(例えば、30〜200個/25mm)であり、好ましくは35〜150個/25mm、さらに好ましくは40〜120個/25mm程度であり、45〜120個/25mm(特に50〜100個/25mm)程度であってもよい。
潜在捲縮性複合繊維を含む不織繊維構造体は、高温水蒸気で捲縮されているため、複合繊維の捲縮が、構造体の内部において略均一に発現するという特徴を有している。具体的には、例えば、厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域のうち、中央部(内層)において、1周以上のコイルクリンプを形成している繊維の数が、例えば、5〜50本/5mm(面方向の長さ)×0.2mm(厚み)であり、好ましくは8〜45本/5mm(面方向の長さ)×0.2mm(厚み)、さらに好ましくは10〜40本/5mm(面方向の長さ)×0.2mm(厚み)である。本発明では、大部分の捲縮繊維、構造体内部において(構造体の表面付近から中心部に亘り)、捲縮数が均一であるため、高い吸音性を有するとともに、粘着剤を含んでいなくても、実用的な強度を有している。なお、本明細書において、「厚み方向に三等分した領域」とは、不織繊維構造体の厚み方向に対して直交する方向にスライスして三等分した各領域のことを意味する。
さらに、不織繊維構造体の内部における捲縮の均一性は、例えば、厚み方向において、繊維湾曲率の均一性によっても評価できる。繊維湾曲率とは、繊維(捲縮した状態の繊維)の両端の距離(L1)に対する繊維長(L2)の比(L2/L1)であり、繊維湾曲率(特に厚み方向の中央の領域における繊維湾曲率)が、例えば、1.3以上(例えば、1.35〜20)、好ましくは2〜10(例えば、2.1〜9.5)、さらに好ましくは4〜8(特に4.5〜7.5)程度である。なお、本発明では、後述するように、繊維構造体断面の電子顕微鏡写真に基づいて繊維湾曲率を測定するため、前記繊維長(L2)は、三次元的に捲縮した繊維を引き延ばして直線状にした繊維長(実長)ではなく、写真に写った二次元的に捲縮した繊維を引き延ばして直線状にした繊維長(写真上の繊維長)を意味する。すなわち、本発明における繊維長(写真上の繊維長)は、実際の繊維長よりも短く計測される。
さらに、本発明では、構造体の内部において、略均一に捲縮が発現しているため、繊維湾曲率が均一である。本発明では、繊維湾曲率の均一性は、例えば、構造体の厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の層における繊維湾曲率の比較によって評価できる。すなわち、厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維湾曲率はいずれも前記範囲にあり、各領域における繊維湾曲率の最大値に対する最小値の割合(繊維湾曲率が最大の領域に対する最小の領域の比率)が、例えば、75%以上(例えば、75〜100%)、好ましくは80〜99%、さらに好ましくは82〜98%(特に85〜97%)程度である。
繊維湾曲率及びその均一性の具体的な測定方法としては、繊維構造体の断面を電子顕微鏡写真で撮影し、厚み方向に三等分した各領域から選択した領域について繊維湾曲率を測定する方法が用いられる。測定する領域は、三等分した表層(表面域)、内層(中央域)、裏層(裏面域)の各層について、長さ方向2mm以上の領域で測定を行う。また、各測定領域の厚み方向については、各層の中心付近において、それぞれの測定領域が同じ厚み幅を有するように設定する。さらに、各測定領域は、厚み方向において平行で、かつ各測定領域内において繊維湾曲率を測定可能な繊維片が100本以上(好ましくは300本以上、さらに好ましくは500〜1000本程度)含まれるように設定する。これらの各測定領域を設定した後、領域内の全ての繊維の繊維湾曲率を測定し、各測定領域ごとに平均値を算出した後、最大の平均値を示す領域と、最小の平均値を示す領域との比較により繊維湾曲率の均一性を算出する。
不織繊維構造体を構成する捲縮繊維は、前述の如く、捲縮発現後において略コイル状の捲縮を有する。この捲縮繊維のコイルで形成される円の平均曲率半径は、例えば、10〜250μm程度の範囲から選択でき、例えば、20〜200μm(例えば、50〜200μm)、好ましくは20〜160μm(例えば、60〜150μm)、さらに好ましくは25〜130μm程度であってもよく、通常、20〜150μm(例えば、30〜100μm)程度である。ここで、平均曲率半径は、捲縮繊維のコイルにより形成される円の平均的大きさを表す指標であり、この値が大きい場合は、形成されたコイルがルーズな形状を有し、言い換えれば捲縮数の少ない形状を有していることを意味する。また、捲縮数が少ないと、繊維同士の交絡も少なくなるため、十分なクッション性及び柔軟性を発現するためには不利となる。逆に、平均曲率半径が小さすぎるコイル状捲縮を発現させた場合は、繊維同士の交絡が十分行われず、ウェブ強度を確保することが困難となるばかりか、このような捲縮を発現する潜在捲縮性複合繊維の製造も非常に難しくなる。
コイル状に捲縮した複合繊維において、コイルの平均ピッチは、例えば、0.01〜0.5mm、好ましくは0.015〜0.3mm、さらに好ましくは0.02〜0.2mm程度である。
湿熱接着性繊維と他の繊維との割合(質量比)は、パネルの種類や用途に応じて、例えば、前者/後者=100/0〜1/99程度の範囲から選択でき、例えば、100/0〜10/90、好ましくは100/0〜50/50(例えば、95/5〜50/50)、さらに好ましくは100/0〜70/30程度である。湿熱接着性繊維の割合が少なすぎると、硬度が低下し、繊維構造体としての取り扱い性の保持が困難となる。
さらに、他の繊維が潜在捲縮性複合繊維である場合、湿熱接着性繊維と潜在捲縮性複合繊維との割合(質量比)は、例えば、前者/後者=99/1〜1/99程度の範囲から選択でき、例えば、90/10〜5/95、好ましくは70/30〜10/90、さらに好ましくは60/40〜15/85(特に50/50〜20/80)程度である。潜在捲縮性複合繊維の割合が多すぎると、強度が低下し、少なすぎると、吸音性を充分に向上できない。
繊維構造体(又は繊維)は、さらに、慣用の添加剤、例えば、特開2010−229809号公報(特許文献3)に記載の添加剤が、構造体表面に担持されていてもよく、繊維中に含まれていてもよい。
なお、不織繊維構造体は、難燃性が要求される用途に使用される場合、難燃剤を添加するのが効果的である。難燃剤は、慣用の無機系難燃剤や有機系難燃剤を使用でき、汎用され且つ難燃効果の高いハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤であってもよいが、ハロゲン系難燃剤は燃焼時のハロゲンガスの発生に伴う酸性雨の問題を有し、リン系難燃剤は加水分解によるリン化合物流出に伴う湖沼の富栄養化の問題を有している。従って、本発明では、難燃剤としては、これらの問題を回避し、高い難燃性を発揮できる点から、ホウ素系難燃剤及び/又はケイ素系難燃剤を用いるのが好ましい。ホウ素系難燃剤、ケイ素系難燃剤としては、特開2010−229809号公報(特許文献3)に記載の難燃剤などが利用できる。
難燃剤の割合は、不織繊維構造体の用途に応じて選択すればよく、例えば、不織繊維構造体の全質量に対して、例えば、1〜300質量%、好ましくは5〜200質量%、さらに好ましくは10〜150質量%程度である。
難燃化の方法としては、慣用のディップ−ニップ加工と同様にして、繊維構造体に難燃剤を含有する水溶液やエマルジョンを含浸又は噴霧した後に乾燥させる方法、繊維紡糸時に二軸押出機などで難燃剤を混練した樹脂を押出して紡糸し、この繊維を用いる方法などを使用できる。
(2)不織繊維構造体の特性
不織繊維構造体において、繊維構造を有しながら、吸音性と軽量(低密度)性とをバランスよく備えた不織繊維構造を有するためには、前記不織繊維のウェブを構成する繊維の配列状態及び接着状態が適度に調整されている必要がある。
具体的には、不織繊維構造体において、不織繊維構造を構成する繊維が前記湿熱接着性繊維の融着による繊維接着率は1〜85%(例えば、1〜60%)、好ましくは1〜50%(例えば、1〜35%)、さらに好ましくは3〜35%(特に3〜30%)程度である。本発明では、このような範囲で繊維が接着されているため、各繊維の自由度が高く、高い吸音性を発現できる。さらに、遮音パネルに強度が要求される用途の場合には、繊維接着率は、例えば、3〜60%、好ましくは6〜50%、さらに好ましくは8〜50%程度であってもよい。
本発明における繊維接着率は、後述する実施例に記載の方法で測定できるが、不織繊維断面における全繊維の断面数に対して、2本以上接着した繊維の断面数の割合を示す。従って、繊維接着率が低いことは、複数の繊維同士が融着する割合(集束して融着した繊維の割合)が少ないことを意味する。
本発明では、さらに、不織繊維構造を構成する繊維は、各々の繊維の接点で接着しているが、できるだけ少ない接点数で大きな曲げ応力を発現するためには、この接着点が、厚み方向に沿って、繊維構造体表面から内部(中央)、そして裏面に至るまで、均一に分布しているのが好ましい。接着点が表面又は内部などに集中すると、優れた機械的特性及び成形性を確保するのが困難となるだけでなく、接着点の少ない部分における形態安定性が低下する。
従って、繊維構造体の厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維接着率がいずれも前記範囲にあるのが好ましい。さらに、各領域における繊維接着率の最大値に対する最小値の割合(最小値/最大値)(繊維接着率が最大の領域に対する最小の領域の比率)が、例えば、50%以上(例えば、50〜100%)、好ましくは55〜99%、さらに好ましくは60〜98%(特に70〜97%)程度である。本発明では、繊維接着率が、厚み方向において、このような均一性を有しているため、繊維の接着面積が低いにも拘わらず、硬さや曲げ強度、耐折性や靱性も優れている。さらに、繊維の接着面積が低いため、自由に振動可能な繊維が多く、優れた振動吸収性を有している。そのため、面材を通過してきた音波は、不織繊維構造体により吸音され、固体伝播音を軽減することができる。すなわち、本発明における不織繊維構造体は、ボードとしての機械的特性と、繊維構造体としての吸音性とを両立している。
繊維接着率は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織繊維構造体の断面を拡大した写真を撮影し、所定の領域において、接着した繊維断面の数に基づいて簡便に測定できる。しかし、束状に繊維が融着している場合には、各繊維が束状に又は交点で融着しているため、特に密度が高い場合には、繊維単体として観察することが困難になり易い。この場合、例えば、繊維構造体が湿熱接着性繊維で構成された鞘部と繊維形成性重合体で構成された芯部とで形成された芯鞘型複合繊維で接着されている場合には、融解や洗浄除去などの手段で接着部の融着を解除し、解除前の切断面と比較することにより繊維接着率を測定できる。
各繊維の配向については特に限定されないが、例えば、シート状又は板状である場合、不織繊維構造体を構成する繊維の配列状態が適度に調整されていてもよい。すなわち、繊維構造体を構成する繊維(コイル状捲縮繊維の場合、コイルの軸芯方向)が、概ねシート面に対して平行に配列しながら、お互いに交差するように配列されていてもよい。なお、本明細書では、「面方向に対し略平行に配向している」とは、例えば、ニードルパンチによる交絡のように、局部的に多数の繊維が厚み方向に沿って配向している部分が繰り返し存在しない状態を意味する。繊維構造体をニードルパンチで交絡させると、厚み方向に沿った繊維の比率が高くなるため、繊維構造体の面方向への変形が困難となり、大きな荷重をかけて変形させると、元の形状に戻らなくなる。従って、繊維を平行に配列させる点からは、ニードルパンチによる繊維の交絡の程度を低減するか、交絡しないのが好ましい。
さらに、このような不織繊維構造体において、コイル状捲縮繊維を含有する場合、隣接又は交差する繊維は、捲縮コイル部で互いに交絡しているが、繊維構造体の厚み方向(又は斜め方向)でも、軽度に繊維が交絡している。特に、本発明では、繊維構造体において、ウェブ形成後に、コイル状に収縮する過程で繊維が交絡し、交絡したコイル部により繊維が適度に拘束されている。さらに、交絡した繊維は、湿熱接着性繊維によって融着されているため、適度な強度を発現する。
繊維構造体のうち、コイル状捲縮繊維の割合が少ない構造体(特に、湿熱接着性繊維単独で形成された構造体)は、靱性及び曲げ応力が高く、優れた曲げ挙動を示すことも特徴の一つである。本発明では、この曲げ挙動を表すため、JIS K7017「繊維強化プラスチック−曲げ特性の求め方」に準じて、サンプルを徐々に曲げたときに生ずるサンプルの反発力を測定し、最大応力(ピーク応力)を曲げ応力として表し、曲げ挙動の指標として用いた。すなわち、この曲げ応力が大きいほど硬い構造体であり、さらに測定対象物が破壊するまでの曲げ量(変位)が大きい程よく曲がる構造体である。
このような繊維構造体は、少なくとも一方向(好ましくは全ての方向)における最大曲げ応力が0.05MPa以上であり、好ましくは0.05〜30MPa、さらに好ましくは0.05〜20MPa(特に0.06〜10MPa)程度であってもよい。この最大曲げ応力が小さすぎると、板状で使用したときに自重やわずかな荷重により簡単に折れ易い。また、最大曲げ応力が高すぎると、硬くなり過ぎて、応力のピークを過ぎて折り曲げると折れて破損し易くなる。
この曲げ量(変位)とそれによる曲げ応力との相関を見ると、最初、曲げ量の増加とともに応力も増加し、例えば、略直線的に増加する。本発明における繊維構造体において、測定サンプルが固有の曲げ量に到達すると、その後は徐々に応力が低くなる。すなわち、曲げ量と応力とをグラフにすると、上に凸の放物線状にカーブを描く相関関係を示す。本発明における繊維構造体は、最大曲げ応力(曲げ応力のピーク)を超えて、さらに曲げようとした場合においても、急激な応力降下を生じることなく、いわゆる「粘り(又は靱性)」を有することも特徴の一つである。本発明では、このような「粘り」を表す指標として、曲げ応力のピーク時の曲げ量(変位)を超えた状態において残っている曲げ応力を用いることができる。すなわち、本発明における繊維構造体は、最大曲げ応力を示す曲げ量の1.5倍の変位まで曲げた時の応力(以下、「1.5倍変位応力」と称することがある)が、最大曲げ応力(ピーク応力値)の1/20以上を維持しており、好ましくは3/20以上(例えば、3/20〜1)、さらに好ましくは6/20以上(例えば、6/20〜18/20)程度維持していてもよい。
また、繊維構造体は、コイル状捲縮繊維を含有させることにより、圧縮弾性率を調整してもよく、圧縮弾性率は、JIS K7181に準拠した方法(元厚みに対して10〜20%圧縮歪み時の傾き)で、例えば、0.05〜5000kPa、好ましくは0.1〜1000kPa、さらに好ましくは0.1〜800kPa程度に調整してもよい。
不織繊維構造体は、不織繊維構造を有しているため、繊維間に生ずる空隙を有しているため、高い軽量性を有している。さらに、これらの空隙は、スポンジのような樹脂発泡体と異なり各々が独立した空隙ではなく連続しているため、通気性も有している。
すなわち、不織繊維構造体は低密度であり、具体的には、見掛け密度は、例えば、0.03〜0.7g/cm、好ましくは0.035〜0.4g/cm、さらに好ましくは0.04〜0.35g/cm程度である。見かけ密度が低すぎると、吸音性が高く軽量ではあるものの、強度が低下し、逆に高すぎると、強度は確保できるものの、吸音性及び軽量性が低下する。
不織繊維構造体の目付は、例えば、50〜10000g/m程度の範囲から選択でき、好ましくは100〜8000g/m、さらに好ましくは200〜6000g/m程度である。目付が小さすぎると、硬さを確保することが難しく、また、目付が大きすぎると、ウェブが厚すぎて湿熱加工において、高温水蒸気が充分にウェブ内部に入り込めず、厚み方向に均一な構造体とするのが困難になる。
さらに、本発明における構造体は、不織繊維構造を有するため、通気性に優れており、構造体に面材を接着する場合、構造体と面材や補強層との間の空気が構造体を通して抜けることにより、面材や補強層との接合後の面材や補強層の浮き、剥がれを回避できる。また、接着剤を使用した場合、接着剤が表面の構成繊維に貼り付くとともに、繊維空隙に楔の如く入り込むため、強固な接着を実現できる。
具体的にはフラジール形法による通気度が0.1cm/(cm・秒)以上[例えば、0.1〜300cm/(cm・秒)]、好ましくは1〜250cm/(cm・秒)、さらに好ましくは5〜200cm/(cm・秒)程度である。通気度が小さすぎると、構造体に空気を通過させるために外部から圧力を加える必要が生じ、自然な空気の出入が困難となる。一方、通気度が大き過ぎると、通気性は高くなるが、構造体内の繊維空隙が大きくなりすぎ、吸音性及び曲げ応力が低下する。
さらに、本発明における不織繊維構造体(特に湿熱接着性繊維単独で形成された構造体)は、前述の如く、繊維接着点を厚み方向に均一に有するため、良好な形態保持性も有している。すなわち、通常の繊維構造体では、バインダーなどにより必要な強度を確保できたとしても、基本的に繊維同士の接着が少ないため、例えば5mm角程度の小片にカットした場合、わずかな外力により構造体を構成する繊維が離脱し、最終的には繊維毎に細分化されてしまう。これに対し、本発明における繊維構造体は、繊維同士が緻密にかつ均一に接着しているため、小片にカットした場合でも繊維単位に細分化されず、充分に形態を保持できる。これは構造体を切断した際の発塵性が小さいことも意味している。
(3)不織繊維構造体の製造方法
不織繊維構造体の製造方法は、前記湿熱接着性繊維を含む繊維をウェブ化する工程と、生成した繊維ウェブを高温水蒸気で加熱加湿処理して融着する工程とを含む。
不織繊維構造体の製造方法では、まず、前記湿熱接着性繊維を含む繊維をウェブ化する。ウェブの形成方法としては、慣用の方法、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法などの直接法、メルトブロー繊維やステープル繊維などを用いたカード法、エアレイ法などの乾式法などを利用できる。これらの方法のうち、メルトブロー繊維やステープル繊維を用いたカード法、特にステープル繊維を用いたカード法が汎用される。ステープル繊維を用いて得られたウェブとしては、例えば、ランダムウェブ、セミランダムウェブ、パラレルウェブ、クロスラップウェブなどが挙げられる。
次に、得られた繊維ウェブは、ベルトコンベアにより次工程へ送られ、次いで過熱又は高温蒸気(高圧スチーム)流に晒されることにより、不織繊維構造を有する構造体が得られる。すなわち、ベルトコンベアで運搬された繊維ウェブは、蒸気噴射装置のノズルから噴出される高速高温水蒸気流の中を通過する際、吹き付けられた高温水蒸気により繊維同士が三次元的に接着される。特に、本発明における繊維ウェブは通気性を有しているため、高温水蒸気が内部にまで浸透し、略均一な融着状態を有する構造体を得ることができる。
なお、潜在捲縮性複合繊維を含有する場合は、湿熱接着性繊維の融着により、繊維同士が三次元的に接着されるとともに、潜在捲縮性繊維の捲縮の発現により、繊維同士が交絡する。また、繊維集合体の内部では、均一な融着とともに、繊維構造体の表面から内部に亘り、均一な捲縮を発現できる。すなわち、潜在捲縮性繊維の捲縮の発現により、潜在捲縮性複合繊維が特定の曲率半径を有するコイル状に形を変えながら移動し、繊維同士の3次元的交絡が発現する。特に、本発明における繊維ウェブは通気性を有しているため、高温水蒸気が内部にまで浸透し、略均一な組織又は構造(湿熱接着性繊維の接着点及び複合繊維の捲縮、交絡の均一性)を有する繊維構造体を得ることができる。
不織繊維構造体は、具体的には、温度70〜150℃、好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃程度の高温水蒸気を、前記繊維ウェブに対して、圧力0.1〜2MPa、好ましくは0.2〜1.5MPa、さらに好ましくは0.3〜1MPa程度、処理速度200m/分以下、好ましくは0.1〜100m/分、さらに好ましくは1〜50m/分程度で噴射する方法により得られるが、詳細な製造方法については、国際公開WO2007/116676号公報や国際公開WO2009/28564号公報に記載の製造方法を利用できる。
得られた不織繊維構造体は、通常、板状又はシート状成形体として得られ、切断加工などにより利用されるが、必要に応じて慣用の熱成形により二次成形してもよい。熱成形としては、例えば、圧縮成形、圧空成形(押出圧空成形、熱板圧空成形、真空圧空成形など)、自由吹込成形、真空成形、折り曲げ加工、マッチドモールド成形、熱板成形、湿熱プレス成形などが利用できる。
不織繊維構造体(成形体)は、前記繊維で構成されたウェブから得られる不織繊維構造を有しており、通常、得られたシート状構造体を切断又はくり抜き加工することにより、所望の形状に容易に製造できる。
(補強層)
補強層は、遮音性を向上させるとともに、桟材の強度を確保して遮音パネルの強度を向上させるために、前記不織繊維層に積層され、無機系材料、有機系材料のいずれで形成されていてもよい。
無機系材料としては、例えば、金属材料(例えば、アルミニウム、鉄、ステンレススチール、鋼など)、金属化合物材料(例えば、石膏、珪酸カルシウム、ガラスなど)などが挙げられる。これらの無機系材料は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機系材料のうち、鉄やアルミニウムなどの金属材料が好ましい。
有機系材料としては、例えば、木質材料[例えば、天然木、無垢材、合板(積層木質ボード)、木質繊維ボード(中密度繊維板MDF、パーティクルボード、配向性ストランドボード、インシュレーションボードなど)など]、硬質繊維シート(熱セットされたニードルフェルト、紙製ボードなど)、合成樹脂材料(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドなど)などが挙げられる。これらの有機系材料は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの有機系材料のうち、軽量性と強度とを両立できる点などから、MDF、積層合板、天然木、無垢材などの木質材料が好ましい。
さらに、補強層は、前記無機系材料と有機系材料との組み合わせであってもよく、例えば、ガラス繊維含有FRP、塩ビ鋼板(ポリ塩化ビニル被覆金属板)などの無機系と有機系との複合系又は積層系面材であってもよい。
本発明では、補強層の存在により遮音性が向上するメカニズムは明確ではないが、木質材料や金属材料で構成された補強層を不織繊維層と積層させることにより、遮音性能が向上する。
(桟材の構造及び形状)
図1は、本発明の桟材の一例を示す概略斜視図である。この例において、桟材1は、不織繊維層1aと補強層1bとが積層した構造を有し、かつ断面略正方形状(長手方向に対して垂直な断面形状が略正方形状)の棒状(又は長尺状)であり、補強層1bの厚みは、不織繊維層1aの厚みに対して2〜3倍程度の厚みで形成されている。
桟材の積層構造は、不織繊維層と補強層とを含む積層構造であればよく、例えば、図1の二層構造に限定されず、例えば、補強層と補強層よりも厚みの大きい不織繊維層との二層構造、両層が同程度の厚みである二層構造、三層以上の積層構造などであってもよい。桟材は、通常、二〜六層程度の積層構造であり、例えば、二〜五層構造、好ましくは二〜四層構造、さらに好ましくは二〜三層構造である。さらに、三層以上の積層構造では、補強層及び不織繊維層に加えて、他の層を含んでいてもよい。他の層としては、目的に応じて、各種の機能層を利用でき、例えば、後述する制振層などが挙げられる。
桟材の積層構造の具体例として、図1の積層構造以外の積層構造の概略断面図を図2に示す。桟材の積層構造の他の具体例としては、例えば、補強層11bと、この補強層11bの厚みに対して2〜3倍程度の厚みを有する不織繊維層11aとが積層した二層構造(a)、不織繊維層12bの両面に、同程度の厚みを有する第1の補強層12a及び第2の補強層12cを積層した三層構造(b)、補強層13bの両面に、同程度の厚みを有する第1の不織繊維層13a及び第13cを積層した三層構造(c)、不織繊維層14bの両面に、同程度の厚みを有する第1の補強層14a及び第2の補強層14dを積層した構造において、さらに前記不織繊維層14bと補強層14dとの間に制振層14cを介在させた四層構造(d)などが挙げられる。
これらの積層構造のうち、少なくとも一方の面で補強層が面材[又は面材と桟材との間に介在させた層(例えば、後述する制振層など)]と直接接触可能な積層構造、例えば、不織繊維層と補強層との二層構造、不織繊維層の両面に補強層が積層された三層構造などが好ましい。補強層が面材などと接触することにより、遮音性能が向上する理由は明確ではないが、面材と接触する面を不織繊維層のみで形成した積層構造に比べて遮音性能が向上する。
不織繊維層の厚み(複数の場合は合計厚み)と、補強層の種類に応じて補強層の厚み(複数の場合は合計厚み)との厚み比は、不織繊維層/補強層=1/10〜30/1程度の範囲から選択でき、例えば、1/8〜20/1、さらに好ましくは1/5〜15/1程度である。なお、不織繊維層及び補強層は、それぞれ、一体型の層に限定されず、複数枚を積層して、所望の厚みに調整してもよい。
補強層が木質材料の場合、両層の厚み比は、不織繊維層(複数の場合は合計厚み)/補強層(複数の場合は合計厚み)=1/10〜10/1、好ましくは1/6〜5/1、さらに好ましくは1/5〜4/1程度であってもよい。
補強層が金属材料の場合、軽量性の点から、補強層の厚みは不織繊維層の厚みよりも薄いのが好ましく、両層の厚み比は、例えば、不織繊維層(複数の場合は合計厚み)/補強層(複数の場合は合計厚み)=1/1〜30/1、好ましくは1.2/1〜20/1、さらに好ましくは1.5/1〜13/1程度であってもよい。
桟材の形状は、断面略正方形状の棒状(長尺状)に限定されず、面材の縦方向又は横方向の一辺の長さに対応する棒状であればよいが、パネルの安定性や施工性などの点から、対向する平行な辺を有する断面形状を有する長尺状が好ましく、正方形状の他、例えば、長方形状や台形状などの四角形状の断面形状を有する棒状又は長尺状であってもよい。これらの形状のうち、正方形状や長方形状などの四角形状が汎用される。
桟材のサイズは、面材の大きさに応じて適宜選択できるが、厚み(断面形状の厚み)は、固体伝播音に対する遮音性を向上できる点から、2mm以上(例えば、2〜200mm)であればよく、例えば、3〜150mm、好ましくは5〜100mm、さらに好ましくは8〜50mm程度であってもよい。
桟材の幅(断面形状の幅)は、面材の大きさに応じて5mm以上の幅から選択でき、遮音性と強度とを両立できる点から、例えば、10〜100mm、好ましくは15〜50mm、さらに好ましくは20〜40mm程度である。
桟材の層間は、接合していなくてもよいが、パネルの安定性の点から、接合されているのが好ましい。接合方法としては、接着剤又は粘着剤を用いる方法であってもよく、固定具を用いる方法であってもよい。
接着剤又は粘着剤を用いる方法において、接着剤又は粘着剤は、不織構造体及び面材の材質に応じて、慣用の接着剤又は粘着剤の中から選択できる。接着剤としては、デンプンやカゼインなどの天然高分子系接着剤、ポリ酢酸ビニルなどのビニル系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤などの熱可塑性樹脂系接着剤、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂系接着剤などが挙げられる。粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤などの熱可塑性樹脂系粘着剤などが挙げられる。接着剤及び粘着剤は、補強層の種類に応じて、異なる種類の接着剤又は粘着剤を使用してもよい。本発明では、不織繊維層は、繊維構造を有しているため、接着剤や粘着剤が繊維構造に含浸するとともに、接着力の低下の原因となる空気が繊維構造を通して外部に放出されるため、高い密着力を実現できる。接着材又は粘着剤は、層間の全面に塗布してもよく、層間の一部に塗布してもよい。
固定具を用いる方法としては、釘やホッチキス針などのステープル、ビス、ボルトなどを用いて部分的に固定化する方法、粘着テープを用いる方法、面ファスナーを用いる方法などが挙げられる。
これらの固定方法のうち、軽量性及び生産性などの点から、接着剤又は粘着剤を用いた接合方法、ステープルを用いる方法が好ましい。なお、ステープル、ビス、ボルトなどを用いる方法では、面材や制振層とともに(面材や制振層を貫通させて)接合してもよい。
[遮音パネル]
本発明の遮音パネル(吸音パネル又は防音パネル)は、第1の面材と第2の面材との間に、前記桟材を含む桟が介在した遮音パネルであって、前記桟材の不織繊維層及び補強層が第1及び第2の面材の面方向と平行に配設されていることを特徴とする。この遮音パネルにおいて、桟材と、第1の面材及び/又は第2の面材との間に制振層が介在していてもよい。
図3は、中桟として本発明の桟材を用いた遮音パネルの構造の一例を示す部分切り欠き概略斜視図であり、図4は、図3の遮音床パネルのA−A線概略断面図である。
遮音パネル21は、平面形状が四方形状(例えば、略正方形状又は長方形状)であるプレート状の第1の面材22及び第2の面材27と、第1の面材22と第2の面材27との間の四周端部(縦方向の両端部及び横方向の両端部)に枠状の形態で配設された棒状枠桟24と、前記第1及び第2の面材22,27の間のうち、これらの枠間に、枠桟24の縦方向に、平行に等間隔で配設された複数(この例では4本)の棒状中桟25とを備えている。第1及び第2の面材22,27は、建築物のドア、壁、間仕切りなどにおいて、壁面を構成するための面材であり、枠桟24と中桟25とを両面材間に介在させることにより、遮音パネル21の内部に空間が形成され、軽量性を向上できるとともに、固体伝播音を抑制できる。さらに、遮音性能を向上させるために、前記枠桟24及び中桟25と、第1の面材22との間に第1の制振層23が介在し、かつ前記枠桟24及び中桟25と、第2の面材27との間に第2の制振層26が介在している。
(中桟)
複数の中桟25は、いずれも不織繊維層25bと補強層25aとが積層した構造を有し、かつ断面略正方形状(長手方向に対して垂直な断面形状が略正方形状)の棒状(又は長尺状)であり、補強層25aの厚みは、不織繊維層25bの厚みに対して2〜3倍程度の厚みで形成されている。これらの中桟5は、いずれも前記不織繊維層25b及び前記補強層25aが面材の面方向と平行に配設されているが、第1及び第2の面材に対して不織繊維層と補強層とが交互に接触するように配設されている。すなわち、隣り合う中桟は、反転させて配設されている。このように、複数の中桟を交互に反転させて、千鳥構造となるように配設することにより、遮音パネルの遮音性能が第1の面材側と第2の面材側とで等方になり、いずれの方向からの遮音性も向上できる。
本発明では、桟材の積層構造が、厚み方向において非対称形状(又は異方形状)である桟材を複数本平行に配設する場合は、均一な遮音性を発現させる点から、交互に反転させて配設するのが好ましい。なお、非対称構造には、二層構造の他、三層構造であっても、表層及び裏層の厚みが異なる場合は非対称形状であるため、交互に反転させるのが好ましい。例えば、図2に示す桟材の積層構造のうち、三層構造(b)及び(c)は厚み方向において対称形状(又は等方形状)であるが、他の構造は、厚み方向において非対称形状(又は異方形状)である。
本発明の遮音パネルでは、中桟の幅や本数を制御して、第1の面材と第2の面材との間に形成される全空隙の体積に対して、中桟の体積を5〜70%程度の範囲に調整するのが好ましく、例えば、8〜60%、好ましくは10〜50%、さらに好ましくは12〜40%(特に15〜30%)程度に調整してもよい。
中桟を配設する間隔は、等間隔に限定されず、遮音が要求される部位に応じて間隔を変更してもよく、例えば、固体伝播音に対する遮音性が要求される部位において、中桟の間隔を大きくあけてもよい。さらに、複数本の中桟を配設する場合、特開2009−150133号公報(特許文献2)に記載されているように、規則的に間隔を変化させて配設してもよい。これらのうち、均一な遮音特性を発現させる点からは、等間隔で均一に配設するのが好ましい。
中桟は、本発明の桟材と他の桟材と組み合わせてもよい。他の桟材としては、後述する枠桟として利用できる桟材が挙げられる。また、後述する枠桟を本発明の桟材で形成した遮音パネルでは、中桟の全てを他の桟材で形成してもよい。
(枠桟)
枠桟24は、いずれも断面略正方形状の長尺状であり、かつ木質材料(MDF、積層合板、天然木、無垢材など)で形成されている。枠桟は、木質材料に限定されず、前記補強層で例示された無機系材料(金属材料など)、有機系材料(木質材料、合成樹脂材料など)の他、不織繊維層を構成する不織繊維構造体であってもよい。さらに、枠桟として、本発明の桟材を用いてもよい。
枠桟の形状は、中桟と同一の厚みを有する形状であればよく、前記桟材の項で例示された桟材の形状から選択できる。枠桟のサイズや幅も、面材のサイズに応じて選択できるが、前記桟材の項で例示された桟材のサイズや幅から選択できる。
中桟及び枠桟は、第1の面材と第2の面材との間(又は第1の制振層と第2の制振層との間)に介在させればよく、第1の面材又は第2の面材と中桟及び枠桟とは固定されていなくてもよいが、パネルの強度や施工性などの点から、固定されているのが好ましい。固定(接合)方法としては、前記中桟の積層構造を固定する方法と同様の方法を利用でき、接着剤又は粘着剤を用いる方法であってもよく、固定具を用いる方法であってもよい。例えば、中桟と枠桟とで固定方法を変えてもよく、例えば、枠桟をステープルで固定し、中桟を接着剤又は粘着剤で固定してもよい。さらに、中桟を接着剤又は粘着剤で固定する場合、第1の面材及び第2の面材と接触する全ての部分を接着剤又は粘着剤で固定してもよく、部分的に接着剤又は粘着剤で固定してもよい。部分的に接着剤又は粘着剤で固定する方法としては、例えば、中桟が補強層と不織繊維層との二層構造で形成され、かつ複数本の中桟を交互に反転して配設している場合、補強層と第1の面材又は第2の面材とが接触する部分のみ接着剤又は粘着剤で固定する方法、中桟又は枠桟と面材との接触部分のうち、一部の部分に接着剤又は粘着剤を塗布する方法などが挙げられる。
本発明の遮音パネルは、枠桟を備えたパネルに限定されず、枠桟の代わりに枠体で固定した遮音パネル(例えば、枠桟を介在させることなく、枠材を用いてパネルの外側から固定した遮音パネル)、枠桟を備えていない遮音パネルなどであってもよい。
(第1及び第2の面材)
第1の面材22及び第2の面材27は、平面形状が略正方形状でかつ同サイズの面材であり、いずれもMDFで形成されている。
第1の面材及び第2の面材は、MDFに限定されず、前記補強層で例示された無機材料、有機材料を利用できる。これらの面材は、用途に応じて選択できるが、軽量性と強度とを充足する点から、合板やMDFなどの木質系ボード、紙製ボードなどの硬質繊維シートが好ましく、MDFなどの木質系ボードが特に好ましい。さらに、第1の面材と第2の面材とは同一の面材であってもよく、異なる種類の面材であってもよい。例えば、一方の面材として金属板や合板を使用し、反射体のような効果を付与してもよい。
面材の平面形状は正方形状に限定されず、長方形状であってもよい。平面サイズも特に限定されず、要求される遮音パネルに応じて、100mm〜10m程度の範囲から適宜選択できる。建築用途に使用する場合は、幅100〜2000mm程度及び高さ100〜3500mm程度の範囲から選択でき、例えば、910mm×1820mm、1000mm×2000mmなどの平面寸法で使用されることが多い。
面材の厚みも、用途及び材質に応じて0.1〜100mm程度の範囲から選択できるが、軽量性と遮音性とを両立できる点から、例えば、0.2〜50mm、好ましくは0.5〜30mm、さらに好ましくは0.7〜20mm(特に1〜10mm)程度である。本発明では、数mm程度の厚みであっても、高い遮音性を発現できる。なお、第1の面材と第2の面材とは、厚みが異なっていてよく、同一であってもよい。なお、各種の厚みを有する面材が市販されており、所望の遮音性となるように、市販の面材を重ね貼りしてもよい。特に、厚みを調整したり、異種の面材を組み合わせて、単層のパネルで見られるコインシデンス効果による遮音性能の落ち込みを軽減してもよい。
(制振層)
第1の制振層23及び第2の制振層26は、幅広い周波域での遮音性を向上させるために、前記第1の面材22及び第2の面材27に対応したサイズで配設され、アスファルトなどの重量材を含む制振材で形成されている。
制振材は、アスファルトなどの重量材を含んでいればよく、鉄箔などの金属箔、石膏ボードなどであってもよく、バインダー成分とフィラーとの混合物であってもよい。これらのうち、軽量性を確保しながら、効果的に制振性を向上できる点から、バインダー成分とフィラーとの混合物が好ましい。
バインダー成分としては、例えば、アスファルトなどの瀝青質物質、合成樹脂、ゴムやエラストマーなどが挙げられる。バインダー成分が制振効果を発現するためには、通常、単位面積当たりの質量が1kg/m以上であるのが好ましく、このような高比重を有する点から、バインダー成分は、重量材としてアスファルトを含有するのが好ましい。アスファルトとしては、特に限定されず、一般的なアスファルト、例えば、天然アスファルト、ストレートアスファルト、ブローンアスファルトなどの石油アスファルトなどが使用できる。これらのアスファルトは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
さらに、バインダー成分は、制振材に可撓性を付与するために、アスファルトに加えて、軟質樹脂又はエラストマー成分を含んでいてもよい。軟質樹脂又はエラストマー成分としては、例えば、ポリオレフィン、ビニル系重合体(ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体など)、ポリアミド、ポリエステル、合成ゴム(ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体など)、天然ゴム、ロジン系樹脂(天然ロジン、変性ロジンなど)などが挙げられる。これらの軟質樹脂又はエラストマー成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの軟質樹脂又はエラストマー成分のうち、スチレン−ブタジエンブロック共重合体などのスチレン−ジエン系共重合体が好ましい。
アスファルトを含む制振材において、軟質樹脂又はエラストマー成分の割合は、アスファルト100重量部に対して、例えば、0〜100重量部、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは3〜50重量部程度である。
フィラーとしては、有機フィラーであってもよいが、高比重である点から、無機フィラーが好ましい。無機フィラーとしては、例えば、鉄、銅、錫、亜鉛、ニッケル、ステンレス鋼などの金属粒子(粉末)、酸化鉄、三二酸化鉄、四三酸化鉄、フェライト、酸化錫、酸化亜鉛、亜鉛華、酸化銅、酸化アルミニウムなどの金属酸化物粒子、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、炭酸バリウム、水酸化マグネシウムなどの金属塩粒子、製鋼スラグ、マイカ、クレー、タルク、ウォラストナイト、けい藻土、けい砂、軽石粉などの鉱物粒子などが挙げられる。
これらの無機フィラーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの無機フィラーのうち、鉄粒子、各種酸化鉄粒子、製鋼スラグ粒子、(重)炭酸カルシウム粒子などが好ましい。
無機フィラーの形状は、粒子状又は粉末状、不定形状、繊維状などが挙げられるが、粒子状又は粉末状が好ましい。無機フィラーの平均粒径は、例えば、0.5mm以下(例えば、0.01〜0.5mm)、好ましくは0.2mm以下(例えば、0.05〜0.2mm)程度である。このように微粉末化された無機フィラーを使用すると、制振材を製造する際の成形加工性を改善し、アスファルト基材中に多量の無機フィラーを均一に分散配合することができるため、制振材の面密度及び感熱安定性を向上できる。
無機フィラーの割合は、アスファルト100重量部に対して、例えば、100〜2000重量部、好ましくは200〜1800重量部、さらに好ましくは300〜1500重量部程度である。無機フィラーの量が少なすぎると遮音効果が低下し、逆に多すぎると全体が脆くなり成形が困難となり、作業性が低下する。制振材の面密度は1.0kg/m以上(特に5.0kg/m以上)となるように調整するのが好ましい。
このような制振材は、例えば、バインダー成分と無機フィラーとを加熱混合し、板状に成形する方法などにより得ることができる。軟質樹脂又はエラストマー成分を配合する場合は、アスファルトと軟質樹脂又はエラストマー成分を予め混合した混合物に無機フィラーを添加してもよい。
制振層のサイズは、面材に対応したサイズに限定されず、部分的に制振性を発現したい場合には、制振性の要求される領域に形成してもよい。
制振層の厚みは、例えば、0.5〜20mm、好ましくは0.8〜15mm、さらに好ましくは1〜15mm程度である。制振層の比重は、例えば、1.0〜12.1、好ましくは1.0〜10.2、さらに好ましくは1.2〜9.2程度である。
本発明では、制振層の配設は任意であり、用途に応じて枠桟及び中桟と面材との間に介在させればよく、後述するように、面材の上にさらに仕上げ材を積層し、仕上げ材と面材との間に介在させてもよい。また、枠桟及び中桟の両面に介在させる態様に限定されず、一方の面だけに介在させてもよい。例えば、軽量性を重視する用途では、制振層を配設しない遮音パネルであってもよく、遮音性を重視する用途では枠桟及び中桟の少なくとも一方の面に配設したパネル(例えば、両面に制振層を介在させたパネル)であってもよい。
制振層と面材とは固定されていなくてもよいが、パネルの強度や施工性などの点から、固定されているのが好ましい。固定(接合)方法としては、前記中桟の積層構造を固定する方法と同様の方法を利用でき、接着剤又は粘着剤を用いる方法であってもよく、固定具を用いる方法であってもよい。
本発明の遮音パネルは、必要であれば、第1の面材及び/又は第2の面材の上に、さらに反射体、仕上げ材などを積層してもよい。反射体や仕上げ材の固定方法としても、中桟の積層構造を固定する方法と同様の方法を利用できる。
反射体としては、音波の反射効果を有する材質であれば特に限定されないが、軽量性の点から、例えば、塩ビ鋼板(ポリ塩化ビニル被覆金属板)、合板(積層木質ボード)、合成樹脂板、無機繊維不織布などが汎用される。なお、前述のように、面材として反射体の機能を有する材料を使用してもよく、本明細書では、反射体は、面材の上にさらに積層する反射体を意味する。反射体の厚みは、例えば、0.01〜10mm、好ましくは0.02〜5mm、さらに好ましくは0.03〜3mm程度である。
仕上げ材としては、慣用の仕上げ材が利用でき、例えば、布クロス、木質系仕上げ材、フィルム、紙などが利用できる。さらに、遮音パネルを装飾する場合には、通気性を有する化粧クロスであってもよい。仕上げ材の厚みは、例えば、0.1〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2mm程度である。
本発明の遮音パネルを用いると、広い周波数域に亘り優れた吸音性能を実現でき、特に、低周波数域における優れた吸音性能を実現できる。具体的には、本発明の遮音パネルは、音として感知できる周波数の範囲(10〜20000Hz程度)に対して遮音性を示し、通常、100〜10000Hz程度の周波数を有する音に対して用いられる。特に、本発明の遮音パネルは、中桟の補強層を面材(又は制振層)と接触させることにより、低周波域、例えば、100〜500Hz(好ましくは100〜300Hz、さらに好ましくは100〜200Hz程度)の周波域において音響透過損失を大きくできる。さらに、制振層を介在させることにより、100〜2000Hzに亘る幅広い周波数域における遮音性を向上できる。
[換気遮音パネル]
本発明の遮音パネルは、遮音機能に加えて換気機能を有する換気遮音パネルであってもよい。本発明の換気遮音パネルは、前記遮音パネルにおいて、一方の面から他方の面に通気可能な構造であればよく、第1及び第2の面材に、それぞれ第1及び第2の開口部が形成され、かつ第1の開口部が第2の開口部と異なる位置に形成されたパネルが好ましい。本発明では、第1の開口部と第2の開口部とが異なる位置(対向しない位置又はずれた位置)に形成されているため、開口部を介して音波がそのまま通過することなく、パネル内部の遮音機能を有する桟材などで吸音されて遮音機能を保持できる。この換気遮音パネルにおいて、さらに遮音性を向上させるために、隣接する桟間に、吸音材を配設してもよい。さらに、換気遮音パネルにおいても、遮音パネルと同様に、桟材と、第1の面材及び/又は第2の面材との間に制振層が介在していてもよい。制振層が介在する場合には、面材と同様に、制振層の表面においても、面材の開口部と対応する部位に開口部が形成される。
図5は、本発明の換気遮音パネルの構造の一例を示す部分切り欠き概略斜視図であり(第1の面材及び吸音材及び中桟の一部を切り欠いた概略斜視図)、図6は、図5の換気遮音パネルのA−A線概略断面図である。
換気遮音パネル31は、平面形状が四方形状であるプレート状の第1の面材32及び第2の面材37と、第1の面材32と第2の面材37との間の四周端部枠状の形態で配設された棒状枠桟34と、前記第1及び第2の面材32,37の間のうち、これらの枠間に、枠桟34の縦方向に、平行に等間隔で配設され、かつ不織繊維層35bと補強層35aとが積層した構造を有する複数(この例では4本)の棒状中桟35とを備えている点は、前記遮音パネル21と同一の構造を有している。
換気遮音パネル31では、換気するための通気口として、前記構造に加えて、第1の面材32の下端側の表面において、中桟35の長手方向と交差する方向に延びる略長方形状の第1の開口部32aが形成されており、一方で第2の面材37の上端側の表面において、中桟35の長手方向と交差する方向に延びる略長方形状の第2の開口部37aが形成されている。換気遮音パネル31では、第1及び第2の開口部を形成することにより、一方の開口部から流入した空気がパネル内部の空間部を通過して他方の開口部に吐出可能な構造が形成されている。
さらに、換気遮音パネル31では、断面略正方形状で棒状の吸音材33が、隣接する前記枠桟34と中桟35との間及び隣接する中桟35同士の間に、中桟35の長手方向に等間隔で配設されているが、前記吸音材33の幅方向の長さは、隣接する前記枠桟34と中桟35との間隔(距離)及び隣接する中桟35同士の間隔よりも小さいため、吸音材33と中桟35又は枠桟34との間には空間部(隙間)36が形成されている。本発明では、この空間部36を通じて換気可能であるが、空間部の大きさを制御し、かつ吸音材33が配設されているため、前記開口部からパネル内に侵入する音波を効果的に吸収でき、換気機能を有しながら、遮音性を保持できる。さらに、前記吸音材33は、中桟の不織繊維層と同様の不織繊維構造体で形成されているため、形態保持性にも優れ、空間部の調整が容易である。
(開口部)
開口部の形状は、長方形状に限定されず、桟間に跨って桟間の空間部を通じて通気可能な形状であればよく、楕円形状、円形状、正方形状などであってもよいが、桟材の長手方向と交差することにより、小さい開口部面積で複数の桟間に跨ることが可能な点から、略長方形状、楕円形状などが好ましい。
開口部は、桟材の長手方向と交差し、桟材間の空間部(空隙)を通して、通気可能であればよく、桟材の長手方向と略直角に交差する態様に限定されず、斜め方向に交差してもよいが、パネル内を通過する音波を遮音又は吸音するための空間部(空隙)の距離を均一、かつ十分に確保できる点から、略直角に交差するのが好ましい。
開口部の位置は、第1の開口部と第2の対向部とが対向せずに異なった位置に形成され、パネル内を音波が通過する過程において遮音が可能な通路が確保できればよく、それぞれの面材の下端側及び上端側に限定されず、例えば、それぞれ桟材の長手方向と交差する方向に延びる第1及び第2の開口部を形成し、第1の開口部を一方の端部側に形成するとともに、第2の開口部を第1の開口部と対向しない位置に形成してもよい。パネル内を通過する音波を遮音又は吸音するための通路を十分に形成できる点から、第1の開口部と第2の開口部とは、できる限り離れた位置に形成するのが好ましく、第1の開口部を第1の面材を下端側(又は上端側)の表面に形成し、かつ第2の開口部第2の面材の上端側(又は下端側)の表面に形成するのが好ましい。面材の下端(又は上端)から開口部までの間隔(最短距離)は、用途やパネル大きさに応じて選択できるが、例えば、10〜500mm、好ましくは30〜300mm、さらに好ましくは50〜200mm程度である。
開口部の面積は、面材全体の面積に対して、例えば、1〜30%、好ましくは2〜25%、さらに好ましくは3〜20%(特に5〜15%)程度である。
(吸音材)
吸音材は、吸音機能を有していればよく、前記不織繊維構造体に限定されず、慣用の吸音材、例えば、合成繊維(ポリオレフィン系繊維、アクリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、塩化ビニル系繊維、スチレン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリカーボネート系繊維、ポリウレタン系繊維、又はこれらの繊維を含む複合繊維など)で形成された繊維状吸音材(織編物、不織布などで形成された繊維状構造体)や、無機繊維(ガラス繊維や炭素繊維など)で形成された繊維状吸音材などであってもよいが、吸音性と軽量性と形態保持性とを両立できる点から、桟材の不織繊維層の項で記載された不織繊維構造体(湿熱接着性繊維を含み、かつこの湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された不織繊維構造体が好ましい。特に、前記不織繊維構造体で形成された吸音材は、高い形態保持性により、空間部の断面性を精密に制御できるため、微妙な調整が必要となる換気機能と遮音機能とのバランスをとるのが容易となる。
吸音材の形状は、隣接する桟間に、通気のための空間部を残存できれば特に限定されず、例えば、桟間の長さ方向において部分的に形成してもよいが、吸音性の点から、中桟と略同一の長さを有する連続した棒状が好ましい。また、吸音材の断面形状も略正方形状に限定されず、楕円形状、円形状などであってもよいが、パネルに容易に固定できる点から、少なくとも平面形状を有する形状、例えば、正方形状や長方形状などの多角形状(特に四角形状)が好ましい。
吸音材は、隣接する桟間に1個(1本)の吸音材(一体型の吸音材)を配設する態様に限定されず、隣接する桟間に複数の吸音材(分離型の吸音材)を配設してもよい。図7は、分離型の吸音材を配設した本発明の換気遮音パネルの他の例を示す概略断面図である。この換気遮音パネル41では、第1の面材42と第2の面材47との間に、棒状枠桟44と、不織繊維層45bと補強層45aとが積層した構造を有する複数の棒状中桟45とが配設されている点は、前記換気遮音パネル31と同一の構造を有しており、吸音材43が、第1の面材42に固定された断面長方形状で棒状の第1の吸音材43aと、第2の面材47に固定された断面長方形状で棒状の第2の吸音材43bとで形成された分離型の吸音材である点が換気遮音パネル31と異なっている。この吸音材では、吸音材43aと吸音材43bとは、略同一の厚みであり、幅方向の長さは桟間の間隔(距離)と同一であり、かつ両吸音材の合計厚みは第1の面材42と第2の面材47との隙間よりも小さい。すなわち、この換気遮音パネルでは、厚み方向の内部に、吸音材に挟まれた空間として、断面長方形状で棒状の空間部46が形成されており、開口部は吸音材で塞がれているため、空間部が露出していない。そのため、開口部で空間部が露出している図6の換気遮音パネルとは異なり、吸音材がフィルター的な役割を備えているため、例えば、外部からの塵埃などの侵入を抑制できる。この分離型の吸音材のそれぞれの厚みは、同一に限定されず、異なっていてもよい。
また、一体型の吸音材においても、図6の形状に限定されず、図7の分離型の吸音材のように、幅方向の長さは桟間の間隔と同一であり、かつ吸音材の厚みが第1の面材と第2の面材との隙間よりも小さい形状であってもよい。
すなわち、吸音材の形状は、後述するように、遮音性を確保するために、空間部の断面積を所定の面積に形成できればよく、その形状は特に限定されないが、用途に応じて、形状を選択してもよい。例えば、前述のように、吸音材にフィルター的な役割が要求される場合には、開口部が吸音材で塞がれた形状(例えば、図7に示すパネルなど)であってもよく、高い通気性が要求される場合には、開口部が吸音材で塞がれてないパネル(例えば、図6に示すパネルなど)であってもよい。
吸音材は、第1の面材と第2の面材との間(又は第1の制振層と第2の制振層との間)に介在させればよく、第1の面材又は第2の面材と吸音材とは固定されていなくてもよいが、パネルの強度や施工性などの点から、固定されているのが好ましい。固定(接合)方法としては、前記中桟の積層構造を固定する方法と同様の方法を利用でき、接着剤又は粘着剤を用いる方法であってもよく、固定具を用いる方法であってもよい。
(空間部)
換気遮音パネルでは、一方の開口部からパネル内部に侵入した空気は、桟間や桟と吸音材との間に形成された空間部を通過して、他方の開口部に至るが、空間部が大きすぎると、通気とともに、音波も空間部を通過して漏出し易い。そのため、本発明では、隣接する桟間の空間部の大きさを制御するのが好ましい。
具体的には、隣接する桟間の空間部の大きさは、用途やパネルの大きさに応じて選択できるが、例えば、桟材の長手方向に対して垂直な断面積(吸音材を配設する場合は、吸音材の断面積を除した断面積)が18cm以下(例えば、0.01〜18cm)であってもよく、例えば、0.1〜15cm、好ましくは0.5〜12cm、さらに好ましくは1〜10cm(特に3〜8cm)程度である。前記空間部の断面積は、第1の面材と第2の面材との間に形成された全隙間の断面積に対して、例えば、0.1〜50%、好ましくは5〜30%、さらに好ましくは10〜20%程度であってもよい。空間部の断面積が大きすぎると、遮音性が低下し、逆に小さすぎると、通気性が低下する。
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例における各物性値は、以下に示す方法により測定した。なお、実施例中の「部」及び「%」はことわりのない限り、質量基準である。
(1)目付(g/m
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
(2)厚み(mm)、見掛け密度(g/cm
JISL 1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて厚さを測定し、この値と目付けの値とから見かけ密度を算出した。
(3)通気度
JIS L1096に準じ、フラジール形法にて測定した。
(4)圧縮弾性率
JIS K7181に準拠し、元厚みに対して10〜20%圧縮歪み時の傾きを測定した。
(5)曲げ応力
JIS K7017に記載の方法のうちA法(3点曲げ法)に準じて測定した。このとき、測定サンプルは25mm幅×80mm長のサンプルを用い、支点間距離を50mmとし、試験速度を2mm/分として測定を行った。本発明では、この測定結果チャートにおける最大応力(ピーク応力)を最大曲げ応力とした。なお、曲げ応力の測定は、MD方向及びCD方向について測定した。ここで、MD方向とは、測定サンプルの長辺に対しウェブ流れ方向(MD)が平行となるように測定サンプルを採取した状態をいい、一方、CD方向とは、測定サンプルの長辺に対しウェブ幅方向(CD)が平行となるように測定サンプルを採取した状態をいう。
(6)1.5倍変位応力
曲げ応力の測定において、最大曲げ応力(曲げピーク応力)を示す曲げ量(変位)を超え、さらにその変位の1.5倍の変位まで曲げつづけた時の応力を、1.5倍変位応力とした。
(7)繊維接着率
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、構造体断面を100倍に拡大した写真を撮影した。撮影した構造体の厚み方向における断面写真を厚み方向に三等分し、三等分した各領域(表面、内部(中央)、裏面)において、そこに見出せる繊維切断面(繊維端面)の数に対して繊維同士が接着している切断面の数の割合を求めた。各領域に見出せる全繊維断面数のうち、2本以上の繊維が接着した状態の断面の数の占める割合を以下の式に基づいて百分率で表わした。なお、繊維同士が接触する部分には、融着することなく単に接触している部分と、融着により接着している部分とがある。但し、顕微鏡撮影のために構造体を切断することにより、構造体の切断面においては、各繊維が有する応力によって、単に接触している繊維同士は分離する。従って、断面写真において、接触している繊維同士は、接着していると判断できる。
繊維接着率(%)=(2本以上接着した繊維の断面数)/(全繊維断面数)×100
但し、各写真について、断面の見える繊維は全て計数し、繊維断面数100以下の場合は、観察する写真を追加して全繊維断面数が100を超えるようにした。なお、三等分した各領域についてそれぞれ繊維接着率を求め、その最大値に対する最小値の割合(最小値/最大値)も併せて求めた。
(8)音響透過損失
JIS A1416に準じ、音響透過損失を測定した。
(9)風速及び換気量
実施例21〜26、参考例1〜2及び4〜5で得られた換気遮音パネル51において、図8に示すように、一方の開口部に換気扇52aを備えた吸引ダクト52を取り付け、他方の開口部51aで風速計(日本カノマックス(株)製「アネモマスター風速計MODEL6151」)を用いて風速(m/秒)を測定した。また、開口部の断面積(m)と風量から、換気量(m/時間)を算出した。なお、ダクトの開口部付近の風速は15m/秒であり、この風速から計算される換気量は1890m/時間であった。
[実施例に用いた構成部材]
(不織繊維層1)
不織繊維層1は、次のようにして製造した。すなわち、湿熱接着性繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含有量44モル%、鹸化度98.4モル%)である芯鞘型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「ソフィスタ」、繊度3dtex、繊維長51mm、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm、捲縮率13.5%)を準備した。
一方、潜在捲縮性繊維として、固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレート樹脂(A成分)と、イソフタル酸20モル%及びジエチレングリコール5モル%を共重合した変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(B成分)とで構成されたサイドバイサイド型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「PN−780」、1.7dtex×51mm長、機械捲縮数12個/25mm、130℃×1分熱処理後における捲縮数62個/25mm)を準備した。
前記芯鞘型複合ステープル繊維(湿熱接着性繊維)と、前記サイドバイサイド型複合ステープル繊維(潜在捲縮性複合繊維)とを、質量比で、湿熱接着性繊維/潜在捲縮性複合繊維=30/70の割合で混綿した後、カード法により目付約100〜200g/mのカードウェブを作製し、目的の目付に合わせて、このウェブを積層し、合計目付300〜2500g/mのカードウェブとした。
このカードウェブを、50メッシュ、幅500mmのステンレス製エンドレス金網を装備したベルトコンベアに移送した。尚、このベルトコンベアの金網の上部には同じ金網を有するベルトコンベアが装備されており、それぞれが同じ速度で同方向に回転し、これら両金網の間隔を任意に調整可能なベルトコンベアを使用した。
次いで、下側のベルトコンベアに備えられた水蒸気噴射装置ヘカードウェブを導入し、この装置から0.4MPaの高温水蒸気をカードウェブの厚み方向に向けて通過するように(垂直に)噴出して水蒸気処理を施した後、120℃の熱風により1分間乾燥し、不織繊維構造を有する成形体を得た。この水蒸気噴射装置は、下側のコンベア内に、コンベアネットを介して高温水蒸気をウェブに向かって吹き付けるようにノズルが設置され、上側のコンベアにサクション装置が設置されていた。また、この噴射装置のウェブ進行方向における下流側には、ノズルとサクション装置との配置が逆転した組合せである噴射装置がもう一台設置されており、ウェブの表裏両面に対して蒸気処理を施した。
なお、水蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、ノズルがコンベアの幅方向に沿って1mmピッチで1列に並べられた蒸気噴射装置を使用した。加工速度は3m/分であり、ノズル側とサクション側の上下コンベアベルト間の間隔(距離)を、厚み8mmの構造体が得られるように調整した。ノズルはコンベアベルトの裏側にベルトとほぼ接するように配置した。
得られた不織繊維構造体の特性を表1に示す。
Figure 2012197666
この不織繊維構造体を、幅30mm×長さ840mmの長尺状構造体に切断加工し、不織繊維層を作製した。
(不織繊維層2)
不織繊維層2は、次のようにして製造した。すなわち、湿熱接着性繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含有量44モル%、ケン化度98.4モル%)である芯鞘型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「ソフィスタ」、繊度3dtex、繊維長51mm、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm、捲縮率13.5%)を準備した。
この芯鞘型複合ステープル繊維を用いて、カード法により目付約100〜200g/mのカードウェブを作製し、目的の目付に合わせて、このウェブを積層し、合計目付300〜2500g/mのカードウェブとした。
このカードウェブを用いて、不織繊維層1の不織繊維構造体の製造例において、上下コンベアベルト間の間隔を調整することにより、厚み10mmの不織繊維構造体を製造した。
得られた不織繊維構造体の特性を表2に示す。
Figure 2012197666
この不織繊維構造体を、幅30mm×長さ840mmの長尺状構造体に切断加工した。
(不織繊維層3)
不織繊維層1の不織繊維構造体の製造例において、520g/mのカードウェブを用いて、上下コンベアベルト間の間隔を調整することにより、厚み5mmの不織繊維構造体を製造した。
得られた不織繊維構造体の特性を表3に示す。
Figure 2012197666
この不織繊維構造体を、幅30mm×長さ840mmの長尺状構造体に切断加工し、不織繊維層を作製した。
(不織繊維層4)
不織繊維層2の不織繊維構造体の製造例において、2000g/mのカードウェブを用いて、上下コンベアベルト間の間隔を調整することにより、厚み20mmの不織繊維構造体を製造した。
得られた不織繊維構造体の特性を表4に示す。
Figure 2012197666
この不織繊維構造体を、幅30mm×長さ840mmの長尺状構造体に切断加工し、不織繊維層を作製した。
(補強層1)
補強層1として、幅30mm×厚み11mm×長さ840mm木質板(積層合板)を使用した。
(補強層2)
補強層2として、幅30mm×厚み1〜4mm×長さ840mmの鉄板を使用した。
(枠桟)
枠桟として、幅30mm×厚み30mm(又は31.5mm、32mm、24mm、長さ900mm(又は840mm)の木質板(積層合板)を使用した。
(面材1)
面材1として、平面寸法900mm×900mm、厚み2.7mm、密度0.96g/cmのMDFボードを使用した。
(面材2)
面材2として、平面寸法900mm×900mm、厚み3mm、密度1.16g/cmの紙製ボードを使用した。
(面材3)
面材3として、平面寸法900mm×900mm、厚み1.2mm、密度1.75g/cmのガラス繊維含有FRPボードを使用した。
(制振層1)
制振層1としては、平面寸法900mm×900mm(又は840mm×30mm)、厚み2.4mm、密度3.0g/cmのアスファルト基材(七王工業(株)製、商品名「すーぱー静香・かべFK−240」)を使用した。
(制振層2)
制振層2としては、平面寸法900mm×900mm、厚み0.27mmの鉄箔を使用した。
[実験例1]
実験例1として、不織繊維層の両面に補強層を積層した中桟を用いた遮音パネルについて、下記の実施例1〜3を行ない、不織繊維層の厚みによる影響を調べた。
(実施例1)
厚み8mmの不織繊維層1の両面に、厚み11mmの補強層1(木質板)を積層した後、210mm間隔で、ステープルを3箇所打ち込んで不織繊維層1と補強層1とを固定し、中桟を作製した。2枚の面材1(MDFボード)の間に、中桟及び枠桟の本数及び配置に関して、前記中桟と枠桟とを図3に示す配置(図3において、制振層を介在させず、中桟として、厚み方向に対称形状の中桟を用いる態様)で介在させて配設し、質量7.0kgの遮音パネルを作製した。なお、中桟と面材とは、接着剤(コニシ(株)製、商品名「ボンドCH18」)を用いて接合した。
(実施例2)
厚み8mmの不織繊維層1の代わりに、厚み10mmの不織繊維層2を用いる以外は実施例1と同様にして、質量7.0kgの遮音パネルを作製した。
(実施例3)
厚み8mmの不織繊維層1の代わりに、厚み5mmの不織繊維層3を2枚積層した厚み10mmの不織繊維層を用いる以外は実施例1と同様にして、質量7.0kgの遮音パネルを作製した。
実施例1〜3で得られた遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図9に示す。図9の結果から明らかなように、いずれの実施例も同等の優れた遮音性能を示す。
[実験例2]
実験例2として、補強層を鉄板で形成した中桟を用いた遮音パネルについて、下記の実施例4〜7を行い、補強層として金属材料を用いた場合の遮音性を測定した。
(実施例4)
酢酸ビニル系ホットメルト接着剤を用いて、厚み4mmの補強層2(鉄板)の両面に、厚み10mmの不織繊維層2を積層して接合し、中桟を作製した。2枚の面材1(MDFボード)の間に、前記中桟と枠桟とを図3に示す配置で介在させるとともに、さらに一方の側の面材にのみ、酢酸ビニル系ホットメルト接着剤を用いて制振層2(鉄箔)を貼り付け、制振層が面材と枠桟及び中桟との間に介在させて配設し(図3において、一方の側にのみ制振層を介在させ、中桟として、厚み方向に対称形状の中桟を用いる態様)、質量9.9kgの遮音パネルを作製した。
(実施例5)
酢酸ビニル系ホットメルト接着剤を用いて、厚み20mmの不織繊維層4の両面に、厚み2mmの補強層2(鉄板)を積層して接合し、中桟を作製した。2枚の面材1(MDFボード)の間に、前記中桟と枠桟とを図3に示す配置(図3において、制振層を介在させず、中桟として、厚み方向に対称形状の中桟を用いる態様)で介在させて配設し、質量8.2kgの遮音パネルを作製した。
(実施例6)
一方の側の面材にのみ、酢酸ビニル系ホットメルト接着剤を用いて制振層2(鉄箔)を貼り付け、制振層2が面材と枠桟及び中桟との間に介在させる以外は実施例5と同様にして、質量9.9kgの遮音パネルを作製した。
(実施例7)
酢酸ビニル系ホットメルト接着剤を用いて、厚み10mmの不織繊維層2を積層して接合し、得られた厚み20mmの不織繊維層の両面に、厚み1mmの補強層2(鉄板)と厚み3mmの補強層2(鉄板)を積層して接合し、中桟を作製した。2枚の面材1(MDFボード)の間に、前記中桟と枠桟とを図3に示す配置(図3において、制振層を介在させず、中桟として、厚み方向に非対称形状の三層構造の中桟を用いる態様)で介在させて配設し、質量8.2kgの遮音パネルを作製した。なお、中桟は、図3と同様に、交互に反転して配設したが、中桟と面材とは、全ての接触面において、酢酸ビニル系ホットメルト接着剤を用いて接合した。
実施例4〜7で得られた遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図10に示す。図10の結果から明らかなように、鉄箔で形成された制振層2を有する実施例4及び6は、鉄箔で形成された制振層2を有していない実施例5及び7に比べて、遮音性が向上している。さらに、補強層が面材又は制振層と接触しない実施例4と、補強層が面材又は制振層と接触する実施例6との比較から、周波数域250〜300Hzでは、実施例4が高い遮音性を示しているが、全般的に実施例6が優れた遮音性を示している。
[実験例3]
実験例3として、実施例1で用いた中桟に対して積層構造を変えた中桟を用いた遮音パネルについて、下記の実施例8及び9を行い、中桟の積層構造による影響を調べた。
(実施例8)
厚み8mmの不織繊維層1の片面に、厚み11mmの補強層1(木質板)を2枚積層した後、210mm間隔で不織繊維層の上からステープルを3箇所打ち込んで不織繊維層1と補強層1とを固定し、中桟を作製した。2枚の面材1(MDFボード)の間に、前記中桟と枠桟とを図3に示す配置(図3において、制振層を介在させない態様)で介在させて配設し、質量7kgの遮音パネルを作製した。なお、中桟と面材とは、補強層と面材との接触面のみ、接着剤(ボンドCH18)を用いて接合した。
(実施例9)
厚み11mmの補強層1(木質板)の両面に、厚み8mmの不織繊維層1を積層した後、210mm間隔で不織繊維層の上からステープルを3箇所打ち込んで補強層1と不織繊維層1とを固定し、中桟を作製した。この中桟を用いて、実施例1と同様にして質量6.4kgの遮音パネルを作製した。
実施例8及び9で得られた遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図11に示す。なお、図11には、比較のために、実施例1の結果も示す。図11の結果から明らかなように、補強層が面材に接触しない実施例9よりも、補強層が面材に接触する実施例1及び8の方が高い遮音性を示す。さらに、実施例1と実施例8とを比較すると、三層構造の実施例1は100〜300Hz程度の低周波数域で、高い遮音性を示している。
[実験例4]
実験例4として、実施例1で用いた中桟の配設本数を増加した遮音パネルについて、下記の実施例10及び11を行い、中桟の配設本数による影響を調べた。
(実施例10)
中桟の配設本数を6本とし、等間隔に配列する以外は実施例1と同様にして質量7.6kgの遮音パネルを作製した。
(実施例11)
中桟の配設本数を8本とし、等間隔に配列する以外は実施例1と同様にして質量8.3kgの遮音パネルを作製した。
実施例10及び11で得られた遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図12に示す。なお、図12には、比較のために、実施例1の結果も示す。図12の結果から明らかなように、中桟の配設本数を6本に増加すると、1000Hz以上の高周波数域で高い遮音性示し、さらに8本に増加すると、300〜1000Hz程度の周波数域で高い遮音性を示す。
[実験例5]
実験例5として、実施例1で用いた中桟に制振層を積層した遮音パネルについて、下記の実施例12を行い、中桟における制振層の影響を調べた。
(実施例12)
厚み8mmの不織繊維層1と、平面寸法840mm×30mm、厚み2.4mmの制振層1(アスファルト基材)とを積層した後、得られた積層体の両面に、厚み11mmの補強層1(木質板)を積層した後、210mm間隔でステープルを3箇所打ち込んで補強層1と不織繊維層1と制振層1とを固定し、中桟を作製した。2枚の面材1(MDFボード)の間に、前記中桟と枠桟(厚み30mm)とを図3に示す配置(図3において、制振層を介在させず、中桟として、厚み方向に非対称形状で四層構造の中桟を用いる態様)で介在させて配設し、質量7.7kgの遮音パネルを作製した。なお、中桟は、図3と同様に、交互に反転して配設したが、中桟と面材とは、全ての接触面において、接着剤(ボンドCH18)を用いて接合した。
実施例12で得られた遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図13に示す。なお、図13には、比較のために、実施例1の結果も示す。図13の結果から明らかなように、中桟に制振層を積層した実施例12では、遮音性が若干向上するが、共振のピークは変わらない。共振のピークは面材の重量により変化することがわかる。
[実験例6]
実験例6として、実施例8の遮音パネルに対して制振層を積層した遮音パネルについて、下記の実施例13〜14を行ない、制振層による影響を調べた。
(実施例13)
一方の側の面材にのみ、接着剤(ボンドCH18」)を用いて制振層1(アスファルト基材)を貼り付け、制振層が面材と枠桟及び中桟との間に介在させる以外は実施例8と同様にして、質量13.3kgの遮音パネルを作製した。
(実施例14)
両側の面材に、接着剤(ボンドCH18)を用いて制振層をそれぞれ貼り付け、制振層が面材と枠桟及び中桟との間に介在させる以外は実施例8と同様にして、質量19.7kgの遮音パネルを作製した。
実施例13及び14で得られた遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図14に示す。なお、図14には、比較のために、実施例8の結果も示す。図14の結果から明らかなように、制振層を両側に設けた実施例14では、200〜1000Hzの周波数域において優れた遮音性能を示す。
[実験例7]
実験例7として、不織繊維層の両面に補強層を積層した中桟を用いた遮音パネルについて、下記の実施例15〜17を行ない、制振層及び面材による影響を調べた。
(実施例15)
表裏の面材のうち、一方の側の面材として面材1(MDFボード)を用い、他方の側の面材として面材2(紙製ボード)を用いる以外は実施例1と同様にして、質量7.61kgの遮音パネルを作製した。
(実施例16)
面材として面材2(紙製ボード)を用いる以外は実施例1と同様にして、質量8.32kgの遮音パネルを作製した。
(実施例17)
面材として面材3(ガラスボード)を用いる以外は実施例1と同様にして、質量6.2kgの遮音パネルを作製した。
実施例15〜17で得られた遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図15に示す。なお、図15には、比較のために、実施例1の結果も示す。図15の結果から明らかなように、ガラスボードを用いて実施例17よりも、MDFボードを用いた実施例15の方が高い遮音性能を示し、さらに紙製ボードや制振層を積層することにより、約200〜500Hzの周波数域で遮音性能が向上する。
[実験例8]
実験例8として、実施例13及び実施例14の遮音パネルに対して面材として紙製ボードを使用した遮音パネルについて、下記の実施例18及び19を行ない、面材の種類による影響を調べた。
(実施例18)
面材として面材2(紙製ボード)を用いる以外は実施例13と同様にして質量14.68kgの遮音パネルを作製した。
(実施例19)
面材として面材2(紙製ボード)を用いる以外は実施例14と同様にして質量20.93kgの遮音パネルを作製した。
実施例18及び19で得られた遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図16に示す。なお、図16には、比較のために、実施例8及び13の結果も示す。図16の結果から明らかなように、紙製ボードの両面に制振層を積層した実施例19では、広い周波数域において、高い遮音性を示している。
[実験例9]
実験例9として、面材の遮音性について、下記の実施例20を行なった。
(実施例20)
実施例1で得られた遮音パネルの一方の側の面材の上に、両面テープを用いて制振層1(アスファルト基材)を貼り付けて質量9.20kgの遮音パネルを作製した。
実施例20で得られた遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図17に示す。なお、図17には、比較のために、実施例1の結果も示す。図17の結果から明らかなように、制振層を積層することにより、150〜800Hzの周波数域において遮音性能が向上している。
[実験例10]
実験例10として、面材に開口部を形成し、一体型の吸音材を配設した遮音パネルの換気遮音性について、下記の実施例21〜24及び参考例1〜3を行なった。
(実施例21)
厚み10mmの不織繊維層2の片面に、厚み11mmの補強層1(木質板)を積層した後、210mm間隔で不織繊維層の上からステープルを3箇所打ち込んで不織繊維層2と補強層1とを固定し、中桟を作製した。面材1の片面に、接着剤(ボンドCH18」)を用いて制振層1(アスファルト基材)を貼り付け、面材を作製した。さらに、面材の端から100mmの間隔をあけて、幅50mm×長さ700mmの長方形状開口部を形成した。
21mmの厚みに成形した不織繊維層4を吸音材として用いた。すなわち、桟間の断面積から吸音材の断面積を除いた断面積(空間部の断面積)が1cmとなるように、桟間の距離よりも5mm小さい幅に不織繊維層4を切断加工し、図5及び6に示す吸音材を作製した。
前記面材と前記中桟と枠桟とを図3に示す配置(桟間の距離144mm)で介在させて配設し、さらに前記桟間に前記吸音材を図5に示す配置で配設した。また、2枚の面材を図5に示す配置(2枚の面材の開口部の長手方向が中桟の長手方向と交差し、かつ2枚の面材のそれぞれの開口部同士が対向しない配置)で配設した。この換気遮音パネルの質量は21.1kgであった。
(実施例22)
吸音材の幅を桟間の距離よりも30mm小さい幅に切断加工し、空間部の断面積を6cmとする以外は実施例21と同様にして換気遮音パネルを作製した。
(実施例23)
吸音材の幅を桟間の距離よりも60mm小さい幅に切断加工し、空間部の断面積を13cmとする以外は実施例21と同様にして換気遮音パネルを作製した。
(参考例1)
吸音材の幅を桟間の距離よりも95mm小さい幅に切断加工し、空間部の断面積を20cmとする以外は実施例21と同様にして換気遮音パネルを作製した。
(参考例2)
吸音材の幅を桟間の距離よりも120mm小さい幅に切断加工し、空間部の断面積を25cmとする以外は実施例21と同様にして換気遮音パネルを作製した。
(参考例3)
面材に開口部を形成しないこと以外は実施例21と同様にして換気遮音パネルを作製した。
実施例21〜23及び参考例1〜3で得られた換気遮音パネルについて、音響透過損失の測定結果を図18に示し、500Hzにおける音響透過損失を測定した結果を表5に示す。さらに、実施例21〜23及び参考例1〜2で得られた換気遮音パネルについて、風速及び換気量を測定した結果も表5に示す。
Figure 2012197666
図18及び表5の結果から明らかなように、実施例21〜23の換気遮音パネルは、開口部が形成されて通気性を有しながら、開口部が形成されていない参考例3と同程度の遮音性を有している。これに対して、参考例1及び2の換気遮音パネルでは、空間部の断面積が大きいため、遮音性が大きく低下している。
[実験例11]
実験例11として、面材に開口部を形成し、分離型の吸音材を配設した遮音パネルの換気遮音性について、下記の実施例24〜26及び参考例4〜5を行なった。
(実施例24)
不織繊維層4を吸音材として用いた。すなわち、桟間の断面積から吸音材の断面積を除いた断面積(空間部の断面積)が1cmとなるように、桟の厚みよりも0.8mm薄くなるように切断加工し、さらに厚み方向に二等分し、図7に示す吸音材を作製した。
実施例21で得られた面材及び中桟と枠桟とを図3に示す配置(桟間の距離125mm)で介在させて配設し、さらに前記桟間に前記吸音材を図7に示す配置で配設した。また、2枚の面材を図5及び7に示す配置で配設した。なお、吸音材と面材とは接着剤(ボンドCH18」)を用いて接着した。
(実施例25)
吸音材の厚みを桟の厚みよりも4mm薄く切断加工し、空間部の断面積を6cmとする以外は実施例24と同様にして換気遮音パネルを作製した。
(実施例26)
吸音材の厚みを桟の厚みよりも9mm薄く切断加工し、空間部の断面積を13cmとする以外は実施例24と同様にして換気遮音パネルを作製した。
(参考例4)
吸音材の厚みを桟の厚みよりも14mm薄く切断加工し、空間部の断面積を20cmとする以外は実施例24と同様にして換気遮音パネルを作製した。
(参考例5)
吸音材の厚みを桟の厚みよりも18mm薄く切断加工し、空間部の断面積を25cmとする以外は実施例24と同様にして換気遮音パネルを作製した。
実施例24〜26及び参考例4〜5で得られた換気遮音パネルについて、音響透過損失の測定結果を図19に示し、500Hzにおける音響透過損失を測定した結果を表6に示す。さらに、実施例24〜26及び参考例4〜5で得られた換気遮音パネルについて、風速及び換気量を測定した結果も表6に示す。なお、図19及び表6には、比較のために参考例3の結果も示す。
Figure 2012197666
図19及び表6の結果から明らかなように、実施例24〜26の換気遮音パネルは、実施例21〜23の換気遮音パネルに比べると通気性が低下するものの、開口部が形成されて通気性を有しながら、開口部が形成されていない参考例3と同程度の遮音性を有している。これに対して、参考例4及び5の換気遮音パネルでは、空間部の断面積が大きいため、遮音性が大きく低下している。
本発明の桟材は、各種のパネルの遮音性を確保するために有用である。詳しくは、本発明の桟材は、新規のパネルに組み込んだり、既存のパネルに追設することにより、パネルの遮音性を向上するために利用される。
この桟材を用いた本発明の遮音パネルは、高い吸音又は遮音性を有しているので、建築物(例えば、住宅、工場の家屋や設備、ビルディング、病院、学校、体育館、文化会館、公民館、高速道路の防音壁など)やベヒクル(例えば、自動車などの車両、航空機など)などに用いられる遮音パネルとして有効に利用できる。特に、軽量でかつ適度な強度を有し、遮音性にも優れる点から、遮音性と強度とを要求される建築物(住宅など)に使用される間仕切りパネル、可動間仕切りパネル、壁材、天井材、衝立、ドア、雨戸、シャッター、屏風、特に、住宅の壁、扉又は戸などのパネル(特に壁又は間仕切りパネル)に好適である。さらに、高周波数域に対しても高い吸音性を有するため、工事現場、幹線道路又は高速道路、飛行場、パチンコ屋、カラオケルーム、インターネット喫茶などの娯楽施設、飲食店などの大騒音や金属音などが発生する近隣における住宅のパネルとしても有用である。
1…桟材
1a,11a,12b,13a,13c,14b,25b,35b,45b…不織繊維層
1b,11b,12a,12c,13b,14a,14d,35a,45a…補強層
21…遮音パネル
22,32,42…第1の面材
23…第1の制振層
24,34,44…枠桟
25,35,45…中桟
26…第2の制振層
27,37,47…第2の面材
31,41…換気遮音パネル
32a…第1の開口部
37a…第2の開口部
36,46…空間部

Claims (16)

  1. 不織繊維層と補強層とを含む積層構造を有する桟材であって、前記不織繊維層が、湿熱接着性繊維を含む繊維が交絡し、かつこの湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された不織繊維構造体で形成されている桟材。
  2. 不織繊維層と補強層との二層構造である請求項1記載の桟材。
  3. 不織繊維層を介して第1の補強層と第2の補強層とが積層された三層構造である請求項1記載の桟材。
  4. 断面四角形状の棒状であり、かつ補強層が木質材料又は金属材料で形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の桟材。
  5. 不織繊維構造体が、熱収縮率の異なる複数の樹脂が相分離構造を形成した複合繊維をさらに含み、この複合繊維が捲縮して他の繊維と交絡した構造を有している請求項1〜4のいずれかに記載の桟材。
  6. 第1の面材と第2の面材との間に、請求項1〜5のいずれかに記載の桟材を含む桟が介在した遮音パネルであって、前記桟材の不織繊維層及び補強層が第1及び第2の面材の面方向と平行に配設されている遮音パネル。
  7. 第1の面材と第2の面材との間に、複数本の桟材が間隔をおいて平行に配設されている請求項6記載の遮音パネル。
  8. 桟材が不織繊維層と補強層との二層構造であり、かつ複数の桟材が、第1及び第2の面材に対して、不織繊維層と補強層とが交互に接触して配設されている請求項7記載の遮音パネル。
  9. 第1の面材と、第1の面材の四周端部に枠状の形態で配設された枠桟と、これらの枠間に配設された中桟と、前記枠桟及び前記中桟を介して第1の面材と積層された第2の面材とを含む遮音パネルであって、前記中桟が請求項1〜5のいずれかに記載の桟材で形成されている請求項6〜8のいずれかに記載の遮音パネル。
  10. さらに換気機能を有する換気遮音パネルであって、第1及び第2の面材に、それぞれ第1及び第2の開口部が形成され、かつ第1の開口部が第2の開口部と異なる位置に形成されている請求項7〜9のいずれかに記載の遮音パネル。
  11. 隣接する桟間に、通気のための空間部を残存させて吸音材が配設されている請求項10記載の遮音パネル。
  12. 隣接する桟間の空間部が、桟材の長手方向に対して垂直な断面において、18cm以下の断面積を有する請求項10又は11記載の遮音パネル。
  13. 桟材と、第1の面材及び/又は第2の面材との間に制振層が介在している請求項6〜12のいずれかに記載の遮音パネル。
  14. 桟材と、第1の面材との間に第1の制振層が介在し、かつ桟材と、第2の面材との間に第2の制振層が介在している請求項13記載の遮音パネル。
  15. 制振層がアスファルトを含有する請求項13又は14記載の遮音パネル。
  16. 請求項1〜5のいずれかに記載の桟材を用いた遮音方法。
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