JP2012190549A - 有機el素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】高分子型の有機EL素子において、素子特性と輝度寿命をともに向上すること。
【解決手段】有機EL素子100は、陽極20と陰極50との間に、LUMO値が2.6eV未満の有機層40を少なくとも1層配置してなる。陰極50は、有機層40に接するとともに、有機層40側から、電子注入層51、第1金属層52、第2金属層53の3層構造をなしている。そして、電子注入層51は、フッ化リチウムからなり、第1金属層52は、カルシウムとアルミニウムを混合してなり、第2金属層53は、アルミニウムからなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、高分子型の有機EL素子に関する。
従来、低分子型の有機EL素子と高分子型の有機EL素子とが知られている。低分子型の有機EL素子は、陽極と陰極の間に位置する有機層が、低分子材料、換言すればLUMO値2.6eV以上を示す材料を用いて構成される。このような低分子有機層は、真空蒸着法により形成することができるため、高温耐久性が高く、長寿命な有機EL素子の形成が可能である。その反面、真空蒸着装置(真空蒸着チャンバー)が何台も連なった大型の装置が必要となるため、製造コストが非常に高くなるという問題がある。
一方、高分子型の有機EL素子は、有機層が、高分子材料、換言すればLUMO値2.6eV未満を示す材料を用いて構成される。このような高分子有機層は、分子量が大きいため、真空蒸着ではなく、スピンコート法、インクジェット法などの塗布法を用いて形成される。このため、低分子型の有機EL素子に較べて、製造プロセス中における真空蒸着工程を低減し、ひいては製造コストを低くすることができる。
ところで、高分子型有機EL素子では、上記のごとく、有機層を構成する材料のLUMO値が小さいため、有機層と陰極が接する構成において、有機層と陰極との界面に非常に大きな電子注入障壁が形成されやすい。そこで、高分子型有機EL素子においては、陰極の構成材料として、有機層を構成する高分子材料のLUMO値に近い低仕事関数を有する金属、具体的にはアルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイドなどが用いられる。このような金属材料かなる陰極を備えた高分子型有機EL素子が、例えば特許文献1に開示されている。
特許文献1に記載の高分子発光素子は、高分子蛍光体を含む発光層を有しており、陰極がアルカリ金属、アルカリ土類金属、及びランタノイドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の金属を含んでいる。このように、陰極の構成材料として、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイドを採用すると、高分子蛍光体を含む発光層と陰極界面での電子注入障壁を低減することができる。
また、特許文献1では、発光層と陰極の間に、アルカリ金属のフッ化物及び酸化物、アルカリ土類金属のフッ化物及び酸化物、並びにランタノイドのフッ化物及び酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種類の化合物を含む平均膜厚2nm以下のバッファー層を設けている。このバッファー層は、低分子型有機EL素子においても多用されているものと同様の効果を意図するものと考えられる。すなわち、発光層と陰極の界面での電気2重層形成による、電子注入特性の効果向上を目的とするものと考えられる。
特開2000−299189号公報
ところで、陰極の構成材料として、仕事関数が2.6eV以下の金属材料は非常に少ない。また、金属は、仕事関数が低いほど大気中での安定性が低下し、その取り扱いが難しくなる。このため、LUMO値が2.6eV未満の有機層と陰極が接する構成において、界面状態を安定としつつ、非常に大きな電子注入障壁を無くすことは困難である。
このような理由から、特許文献1に記載ように、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及びランタノイドから選択される陰極と発光層の間に、陰極を構成する金属材料のフッ化物や酸化物からなるバッファー層を設け、電気2重層の効果によって、電子注入障壁の低減を図ることは、素子特性(電子注入特性)向上の面で好ましい。
しかしながら、本発明者が鋭意検討を行ったところ、特許文献1に記載の構成において、輝度寿命の低下が確認された。すなわち、特許文献1に記載の構成では、電子注入障壁を低減して素子特性を向上することはできるものの、輝度寿命の点で問題がある。
本発明は上記問題点に鑑み、高分子型の有機EL素子において、素子特性と輝度寿命をともに向上することを目的とする。
本発明者は、陽極と陰極との間に、LUMO値が2.6eV未満の有機層を少なくとも1層配置してなる有機EL素子について、鋭意検討を行った。その結果、陰極として、フッ化リチウムからなり、有機層に隣接する電子注入層と、カルシウムからなり、電子注入層に有機層と反対側で隣接する金属層を設けた構成において、輝度低下とともに、有機層内にリチウムが拡散するという知見を得た。また、輝度低下により、界面近傍にフッ化カルシウムが形成されるという知見を得た。
そして、これら知見から、フッ化リチウムとカルシウムとの間で置換反応が生じ、フッ化リチウムよりも分極の弱いフッ化カルシウムが生成されることで、電気2重層形成の効果が弱まって電子注入特性が劣化する。この電子注入特性の劣化により、正孔と電子の再結合中心が、初期状態よりも陰極側に近づき、発光効率が低下する(すなわち、輝度が低下する)との結論に至った。なお、再結合中心は、陽極からの正孔注入と陰極からの電子注入のバランスがとれるように設定され、通常は初期状態で有機層の中心(特に発光層の中心)に設定される。
以下の発明は、この知見に基づくものである。なお、本発明者による鋭意検討の結果については、後述する実施形態の冒頭において説明する。
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、
陽極と陰極との間に、LUMO値が2.6eV未満の有機層を少なくとも1層配置してなる有機EL素子であって、
陰極は、有機層に接するとともに、有機層側から、電子注入層、第1金属層、第2金属層の3層構造をなし、
電子注入層は、フッ化リチウムからなり、
第1金属層は、カルシウムとアルミニウムを混合してなり、
第2金属層は、アルミニウムからなることを特徴とする。
これによれば、第1金属層として、仕事関数の低いカルシウム(2.87eV)を含むので、有機層と陰極界面での電子注入障壁を低減することができる。
また、第1金属層と有機層の間に、フッ化リチウムからなる電子注入層を有するので、電気2重層の効果によって、電子注入障壁をより一層低減することができる。
また、第1金属層は、カルシウムのみを含むのではなく、第2金属層の構成材料と同じアルミニウムも含んでいる。これにより、カルシウム単体に較べて、第1金属層中におけるカルシウムの体積密度を低減することができる。また、カルシウムとアルミニウムは原子半径の差が大きく、ヒューム・ロザリーの法則からもわかるように非常に固溶しにくい(換言すれば、合金を形成しにくい)。このため、カルシウムは少なからず金属単体で存在し、第1金属層中で分散している。したがって、これら効果により、カルシウムとフッ化リチウムの反応確率を低減させる、すなわち置換反応を抑制することができる。また、第1金属層中において、カルシウムは少なからず金属単体で存在するため、カルシウム本来の特性(低仕事関数)を示す。
以上から、本発明によれば、素子特性と輝度寿命をともに向上することができる。この点については、本発明者によって実際に確認されている。
請求項2に記載のように、
第1金属層には、カルシウムが25vol%以上40vol%以下の範囲で含まれることが好ましい。
これによれば、カルシウムが25vol%未満の構成、40vol%を超える構成に較べて、より一層輝度寿命を向上することができる。この点については、本発明者によって実際に確認されている。
なお、カルシウムが25vol%未満の場合、第1金属層中におけるカルシウムが少ないため、カルシウムの高電子注入特性の効果が低下する。その分、高駆動電圧となり、素子発熱等が影響するためと考えられる。一方、カルシウムが40vol%を超える場合、カルシウムを分散させてフッ化リチウムとの反応確率を低減させる効果が弱まるためと考えられる。
請求項3に記載のように、
第1金属層の膜厚が、1nm以上4nm以下の範囲で設定されると良い。なかでも、請求項4に記載のように、第1金属層の膜厚が、2nmで設定されることが好ましい。
これによれば、第1金属層の膜厚が1nm未満の構成、4nmを超える構成に較べて、より一層輝度寿命を向上することができる。特に2nmとすると、輝度寿命を最も向上することができる。この点については、本発明者によって実際に確認されている。
なお、膜厚が4nmを超える場合、非固溶系の第1合金層においてカルシウムの偏析等が生じやすくなり、カルシウムを分散させてフッ化リチウムとの反応確率を低減させる効果が弱まるためと考えられる。
請求項5に記載のように、
陽極と有機層の間に、ドナー性又はアクセプター性を有するドーパントを含有しない正孔輸送層を、陽極に接して有すると良い。
ドナー性又はアクセプター性を有するドーパントを含有した正孔輸送材料(具体的には導電性ポリマー)の場合、ドナー性又はアクセプター性を有するドーパントを、ホスト材料であるポリマーに添加することで、導電性が発現するようになっている。このため、隣接する有機層との間に電荷移動錯体などを形成して、輝度が低下する恐れがある。これに対し、本発明では、正孔輸送層が、ドナー性又はアクセプター性を有するドーパントを含有しないため、輝度寿命をさらに向上することができる。
特に請求項6に記載のように、
正孔輸送層の構成材料として、化学式2に示す構造を有するものを採用することが好ましい。
Figure 2012190549
これによれば、塗布法によって、正孔輸送層上に高分子型の有機層を形成する際に、正孔輸送層が溶媒に溶けない。このため、有機層の構成材料の選択自由度を向上することができる。
本発明者が検討に用いた有機EL素子の概略構成を示す断面図である。 TOF−SIMSによるリチウム分布の分析結果を示す図である。 TOF−SIMSによるカルシウム分布の分析結果を示す図である。 TOF−SIMSによるカルシウム化合物分布の分析結果を示す図である。 各実施例及び各比較例で形成した有機EL素子の構成と、初期輝度に対する耐久試験100hでの相対輝度の試験結果をまとめた図である。 第1金属層におけるカルシウムのvol%と相対輝度との関係を示す図である。 第1金属層の膜厚と相対輝度との関係を示す図である。 実施例1において、TOF−SIMSによるリチウム分布の分析結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。
(本発明を創作するに至った経緯)
先ず、本発明者が本発明を創作するに至った経緯について説明する。
本発明者は、陽極と陰極との間に、LUMO値が2.6eV未満の有機層を少なくとも1層配置してなる高分子型の有機EL素子について、鋭意検討を行った。
図1は、本発明者が検討に用いた有機EL素子100の概略構成を示している。この有機EL素子100は、透明な基板10の一面に配置された陽極20、陽極20における基板10と反対の面に配置された正孔輸送層30、正孔輸送層30における陽極20と反対の面に配置された、発光層を含む有機層40、有機層40における正孔輸送層30と反対の面に配置された陰極50を有する。また、陰極50は、有機層40側から、電子注入層51、第1金属層52、第2金属層53の3層構造をなしている。
具体的には、陽極20としてITOを用い、正孔輸送層30の材料として、化学式3に示す化合物1、N,N,N',N',N'',N''-Hexakis-(4'-methyl-biphenyl-4-yl)-benzene-1,3,5-triamineを用いた。
Figure 2012190549
また、有機層40の材料として化合物2、詳しくはアメリカンダイソース社製Poly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl)-co-(1,4-benzo-{2,1’,3}-thiadiazole)](ADS233YE)を用いた。さらに、陰極50を構成する電子注入層51としてフッ化リチウム(以下、LiFと示す)、第1金属層52としてカルシウム(以下、Caと示す)、第2金属層53としてアルミニウム(以下、Alと示す)を用いた。
そして、このような構成の有機EL素子100を、以下に示す方法で形成した。
先ず、ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、上記化学式3に示す化合物1を真空蒸着法により60nmの厚さで形成して、正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51としてLiFを厚さ1nm、第1金属層52としてCaを厚さ2nm、第2金属層53としてAlを厚さ100nmとなるように、順に形成した。また、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
そして、このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。輝度が初期輝度に対して40%低下したサンプル(−40%)を作成し、有機EL素子100の状態分析を行った。
なお、分析方法及び条件は以下の通りである。
分析手法:時間飛行型2次イオン質量分析(TOF−SIMS)
分析方法:陰極表面からの深さ方向質量分析
条件:スパッタ源(Cs)、分析1次イオン(Bi)
図2は、深さ方向においてLiの分布の分析結果を、図3は、深さ方向においてCaの分布の分析結果を示す。また、図4は、初期輝度に対して40%低下したサンプル(−40%)において、深さ方向におけるCa化合物の分布の分析結果を示す。なお、図2では、初期状態のサンプルのLiを実線、40%低下したサンプルのLiを破線で示している。また、図3では、初期状態のサンプルのCaを実線、40%低下したサンプルのCaを破線で示している。なお、図2、図3に示す一点鎖線はIn、二点鎖線はAlを示している。また、図4では、フッ化カルシウム(以下、CaFと示す)を実線、炭化カルシウム(CaC)を破線、酸化カルシウム(CaO)を一点鎖線、水酸化カルシウム(CaOH)を二点鎖線で示している。また、In、Alをともに点線で示している。なお、図2〜図4において縦軸のカウント数は、検出されたイオン種の数を示す。
図2、図3では、それぞれ初期状態のサンプルにおいても分布(Li又はCa)に幅が存在するが、深さ方向分析時のスパッタ源イオンによる打ち込み(ノックオン)による影響であるため、実際の拡散を示すものではない。
図3に示すように、Caは、初期状態と輝度低下とで、深さ方向における分布の変化は殆ど見られない。すなわち、Caが拡散していないことがわかる。一方、図2に示すように、Liは、初期状態に較べ、輝度低下により有機層40側に分布が広がっている。すなわち、輝度低下とともに有機層40内にLiが拡散することが判明した。
また、図4に示すように、輝度が低下した状態で、陰極50と有機層40の界面付近には、CaFが顕著に存在することが確認された。
以上の分析結果から、耐久中には、陰極50と有機層40の界面において、下記に示す置換反応が進行するものと考えられる。
(耐久中の反応式)2LiF+Ca2+⇒CaF+2Li
この反応により、界面のLiFの少なくとも一部がCaと反応して、CaFに置換される。LiとCaの電気陰性度は、それぞれ0.98と1.00であり、このLi<Caという関係からCaFのほうがLiFに比べて分極が弱い。
このため、界面のフッ化物が、分極の弱いCaFに変化すると、電気2重層形成の効果が弱くなり、電子注入特性が悪化する。そして、電子注入特性の悪化によって電子注入量が低下し、正孔と電子の再結合中心が陰極50側にずれることにより、発光効率が低下する(すなわち、輝度が低下する)ものと考えられる。
なお、再結合中心は、陽極20からの正孔注入と陰極50からの電子注入のバランスがとれるように設定され、通常は初期状態で有機層40の中心(特に発光層の中心)に設定される。
このように、本発明者は、陰極50と有機層40との界面において、フッ化物(LiF)の置換反応が進行することにより、電子注入特性が悪化し、ひいては輝度寿命が低下するとの結論に至った。そして、電子注入特性の悪化を抑制するために、LiFとCaの反応確率を低減させることを着想した。
なお、電子注入特性の悪化を抑制するために、反応後のフッ化物のほうが分極が大きくなるような金属を第1金属層52に用いることも考えられる。しかしながら、この場合、2つの問題が生じるため、現実的ではない。
1つ目の問題点として、電子注入層51に用いるフッ化物の金属元素よりも電気陰性度の小さい元素を第1金属層52に選択しなければならない点にある。このため、第1金属層52の材料として、仕事関数が非常に小さい元素を採用する可能性が高い。仕事関数が低いとその安定性も低いため、取り扱いが非常に難しい。
2つ目の問題点として、第1金属層52に比較的安定な、すなわち仕事関数が大きい材料を選択した場合、電子注入層51に用いるフッ化物の金属は、第1金属層52の材料の仕事関数よりも大きいものを採用することとなる。この場合、フッ化物の金属元素の電気陰性度が大きくなる可能性が高い。電気陰性度が大きいと、フッ化物の分極が小さくなり、電気2重層形成の効果が低下してしまう。すなわち、素子特性(電子注入特性)が低下する。
以下に示す実施形態は、これら知見に基づくものである。以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本実施形態に係る有機EL素子100の概略構成(構成要素)は、上記図1に示した試作品と同じである。したがって、図示は省略する。該試作品と異なる点は、主として、有機層40側から、電子注入層51、第1金属層52、第2金属層53の3層構造をなす陰極50の構成材料にある。
有機EL素子10において、ガラス等からなる透明な基板10の一面に、透明又は半透明の陽極20が形成されている。この陽極20の構成材料としては、透明又は半透明であり、電極を形成することのできる周知の導電性物質を採用することができる。本実施形態では、酸化インジウム錫(ITO)からなる陽極20を採用している。
陽極20における基板10と反対の面には、正孔輸送層30が配置されている。この正孔輸送層30の材料としては、特に限定されるものではないが、好ましくはドナー性又はアクセプター性を有するドーパントを含有しない材料を採用すると良い。ドナー性又はアクセプター性を有するドーパントを含有した正孔輸送材料(具体的には導電性ポリマー)の場合、ドナー性又はアクセプター性を有するドーパントを、ホスト材料であるポリマーに添加することで、導電性が発現するようになっている。このような導電性ポリマーでは、ドーパントが有機層40に拡散して、有機層40を構成する高分子との間に電荷移動錯体などを形成し、これにより輝度が低下する恐れがあるからである。
また、ドナー性又はアクセプター性を有するドーパントを含有しない材料としては、比較的分子量が小さく、ホール輸送性も高いトリフェニルアミン誘導体材料を採用することができる。本実施形態では、上記した化学式3に示す化合物1からなる正孔輸送層30を採用している。この化合物1は、低分子であるため、例えば、真空蒸着法により形成することができる。また、塗布法によって、正孔輸送層30上に高分子型の有機層40を形成する際に、正孔輸送層30が溶媒に溶けない。このため、有機層40の構成材料の選択自由度を向上することができる。なお、化合物1については、本出願人による先願(特開2010−192587号公報、特開2005−276802号公報、その他多数)に示されているため、詳細な説明は割愛する。
有機層40は、発光層を含む。また、例えばポリフルオレン系などの、LUMO値が2.6eV未満の高分子材料からなる。この有機層40は、単層(発光層のみ)、複数層を積層してなる構成のいずれも採用することができる。一般的にLUMO値2.6eV未満を示す材料は、LUMO値が2.6eV以上の材料よりも分子量が大きく、高分子であるため、真空蒸着法により形成することができない。このため、スピンコート法、インクジェット法、印刷法、ディップコート法、スプレー法等を用いて形成される。この結果、低分子材料からなる有機層40を採用する構成に較べて、有機EL素子100の製造プロセス中における真空蒸着工程を低減し、ひいては製造コストを低くすることができる。
陰極50は、有機層40に接するとともに、有機層40側から、電子注入層51、第1金属層52、第2金属層53の3層構造をなす。
電子注入層51は、有機層40との界面で電気2重層を形成し、これにより電子注入障壁を低減できる材料を採用することができる。このような材料としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物がある。本実施形態では、電子注入層51が、アルカリ金属のフッ化物であるLiFからなる。
第1金属層52は、高分子材料(LUMO値が2.6eV未満の材料)からなる有機層40との界面で、電子注入障壁を低減できる材料を採用することができる。このような材料としては、仕事関数が小さい金属(換言すれば有機層40の高分子のLUMO値に近い仕事関数をもつ金属)、具体的にはアルカリ金属又はアルカリ土類金属がある。本実施形態では、第1金属層52が、アルカリ土類金属であるCa(仕事関数2.87eV)を含んでいる。
また、本実施形態では、マトリクス中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を分散させて、電子注入層51を形成するアルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物との反応確率を低減させるため、第1金属層52がマトリクスを含む。
このマトリクスに用いる材料としては、安定的にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を分散維持でき、且つ、電極材料としての導電性を有するものであれば特に限定されるものではない。この点を考慮すると、金属材料及び導電性ポリマーなどが考えられる。
導電性ポリマーの場合、一般的にはホスト材料(ポリマー)に対し、ドナーやアクセプターに相当するゲスト物質を添加する。このようにゲスト物質を添加すると、ホスト材料にキャリアーが生じ、導電性が発現する。しかしながら、ドナーやアクセプターが有機層40内に拡散することで、有機層40の高分子と電荷移動錯体分子を形成し、これにより輝度寿命が低下する恐れがある。したがって、マトリクスとしては、金属材料が好ましく、なかでも、仕事関数が比較的大きいことで大気中での安定性を有しており、且つ、良好な導電性を有するものが良い。
また、金属の混合物は、多くの金属の組み合わせにおいて固溶体をなす。この固溶体とは、マトリクスの金属原子位置に、添加した金属原子が置換した構造をなしたものである。このように固溶体を形成した場合に問題となるのが、合金としての性質に変化する点である。上記した第1金属層52において、固溶体が形成されると、アルカリ金属やアルカリ土類金属単独の特性、すなわち低仕事関数を活かすことができなくなる。この点を考慮すると、マトリクスとして用いる金属材料と、アルカリ金属又はアルカリ土類金属との組み合わせを、固溶体を形成しない組み合わせとすることが好ましい。
ここで、固溶体を形成する条件は、ヒューム・ロザリーの法則で示される。この法則は、マトリクスを構成する金属元素の原子半径をR0、添加されるアルカリ金属又はアルカリ土類金属元素の原子半径をR1とすると、次式(数式1)で示される。
(数1){|R0−R1|/R0}×100≦15
そして、2つの金属元素が数式1の関係を満たすと、固溶体を形成しやすいことを示している。例えば、AgとMgの場合、数式1の左辺の値が6%程度となり、固溶体を形成しやすい組み合わせであることがわかる。また、CrとMgの場合、数式1の左辺が7%程度となり、この組み合わせも固溶体を形成しやすいことがわかる。また、AlとLiの場合、数式1の左辺の値が21%であり、固溶体を形成しにくいことがわかる。数式1から、2つの金属元素の原子半径の差が大きいと、固溶体を形成しにくい。
本実施形態では、以上の点を踏まえて、マトリクスを構成する金属元素をAlとしている。Alの場合、仕事関数が大きく(4.28eV)、大気中で安定であるので、取り扱いも容易である。また、良好な導電性も有する。さらには、Au、Ag、Ptなどに較べて安価である。また、AlとCaの組み合わせでは、数式1の左辺の値が44%程度と非常に大きな値を示す。このため、非常に固溶しにくいため、第1金属層52中において、Caを金属単体で保持するとともに、Caを分散させることができる。このように、本実施形態では、第1金属層52が、CaとAlを混合してなる。
また、本実施形態では、第1金属層52に、Caが25vol%以上40vol%以下の範囲で含まれている。また、第1金属層52の膜厚が、1nm以上4nm以下の範囲内、より好ましくは2nmで設定されている。
第2金属層53の構成材料としては、陰極50を構成する下層(第1金属層52及び電子注入層51)を保護できるように大きな仕事関数を有し、且つ、導電性に優れた材料を用いることができる。このような材料としては、例えばAl、Au、Ag、Ptなどがある。なかでも、Alは、コストの点でも好ましい。本実施形態では、第2金属層53が、Alからなる。
次に、本実施形態に係る有機EL素子100の作用及び効果について説明する。
本実施形態では、陰極50を構成する第1金属層52が、Ca(仕事関数2.87eV)を有している。このため、高分子材料(LUMO値2.6eV未満)からなる有機層40の界面での電子注入障壁を低減することができる。
また、第1金属層52と有機層40の間に、LiFからなる電子注入層51を有する。したがって、電気2重層形成の効果により、有機層40との界面での電子注入障壁をより一層低減することができる。
また、第1金属層52は、Caのみを含むのではなく、第2金属層53の構成材料と同じAlも含んでいる。このため、Ca単体に較べて、第1金属層52中におけるCaの体積密度(第1金属層52においてCaが占める割合)が小さい。したがって、Caのみからなる第1金属層52に較べて、CaとLiFの反応確率を低減する、すなわち置換反応を抑制することができる。
また、CaとAlは原子半径の差が大きく、上記した数式1(ヒューム・ロザリーの法則)からもわかるように、非常に固溶しにくい。このため、第1金属層52中において、Caは少なからず金属単体で存在し、Al中で分散している。したがって、第1金属層52中において、金属単体で存在するCaにより、有機層40の界面での電子注入障壁を低減することができる。
以上から、本実施形態によれば、素子特性(電子注入特性)と輝度寿命をともに向上することができる。
なお、第1金属層52を構成する金属の組み合わせとして、固溶体を形成しにくい組み合わせを採用するため、マトリクスに添加されるアルカリ金属又はアルカリ土類金属元素の析出や、層分離等が生じることも考えられる。
このため、より好ましい形態として、第1金属層52が、Caを25vol%以上40vol%以下の範囲で含むと良い。これによれば、Caが25vol%未満の構成、40vol%を超える構成に較べて、より一層輝度寿命を向上することができる。
なお、Caが25vol%未満の場合、第1金属層52中にCaが少ないため、低仕事関数を有するCaの高電子注入特性の効果が低下し、その分高駆動電圧となり、素子発熱等が影響するためと考えられる。一方、Caが40vol%を超える場合、Caが多く、Caを分散させてLiFとの反応確率を低減させる効果が弱まるためと考えられる。
また、第1金属層52の厚さを1nm以上4nm以下の範囲内とすると良い。これによれば、厚さが1nm未満、4nmを超える構成に較べて、より一層輝度寿命を向上することができる。特に第1金属層52の厚さを2nmとすると、輝度寿命を最も向上することができる。
なお、膜厚が4nmを超えると、厚膜とすることで非固溶系の第1金属層52においてCaの偏析等が生じやすくなり、Caを分散させてLiFとの反応確率を低減させる効果が弱まるためと考えられる。
次に、上記構成を採用した根拠について、実施例1〜4及び比較例1〜7を参照して説明する。
(比較例1)
この比較例1は、本発明を創作するに至った経緯の説明で示した試作品と同じ構成である。具体的には、ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、上記化学式3に示す化合物1を真空蒸着法により60nmの厚さで形成して、正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2、すなわちアメリカンダイソース社製Poly[(9,9-dioctylfluorenyl-2,7-diyl)-co-(1,4-benzo-{2,1’,3}-thiadiazole)](ADS233YE)、を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51としてLiFを厚さ1nm、第1金属層52としてCaを厚さ2nm、第2金属層53としてAlを厚さ100nmとなるように、順に形成した。そして、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。
(実施例1)
ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、上記化学式3に示す化合物1を真空蒸着法により60nmの厚さで形成して、正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51として厚さ1nmのLiFを形成した後、CaとAlを1:3の蒸着速度比でともに蒸着することにより、CaとAlを含む厚さ2nmの第1金属層52を形成した。次いで、真空蒸着法により、第2金属層53として厚さ100nmのAlを形成した。そして、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。
(比較例2)
ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、上記化学式3に示す化合物1を真空蒸着法により60nmの厚さで形成して、正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51として厚さ1nmのLiFを形成した後、真空蒸着法により、第2金属層53として厚さ100nmのAlを形成した。そして、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。
(比較例3)
ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、上記化学式3に示す化合物1を真空蒸着法により60nmの厚さで形成して、正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51として厚さ1nmのLiFを形成した後、CaとAlを1:6の蒸着速度比でともに蒸着することにより、CaとAlを含む厚さ2nmの第1金属層52を形成した。次いで、真空蒸着法により、第2金属層53として厚さ100nmのAlを形成した。そして、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。
(実施例2)
ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、上記化学式3に示す化合物1を真空蒸着法により60nmの厚さで形成して、正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51として厚さ1nmのLiFを形成した後、CaとAlを2:3の蒸着速度比でともに蒸着することにより、CaとAlを含む厚さ2nmの第1金属層52を形成した。次いで、真空蒸着法により、第2金属層53として厚さ100nmのAlを形成した。そして、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。
(実施例3)
ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、上記化学式3に示す化合物1を真空蒸着法により60nmの厚さで形成して、正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51として厚さ1nmのLiFを形成した後、CaとAlを1:3の蒸着速度比でともに蒸着することにより、CaとAlを含む厚さ1nmの第1金属層52を形成した。次いで、真空蒸着法により、第2金属層53として厚さ100nmのAlを形成した。そして、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。
(実施例4)
ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、上記化学式3に示す化合物1を真空蒸着法により60nmの厚さで形成して、正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51として厚さ1nmのLiFを形成した後、CaとAlを1:3の蒸着速度比でともに蒸着することにより、CaとAlを含む厚さ4nmの第1金属層52を形成した。次いで、真空蒸着法により、第2金属層53として厚さ100nmのAlを形成した。そして、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。
(比較例4)
ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、上記化学式3に示す化合物1を真空蒸着法により60nmの厚さで形成して、正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51として厚さ1nmのLiFを形成した後、CaとAlを1:3の蒸着速度比でともに蒸着することにより、CaとAlを含む厚さ10nmの第1金属層52を形成した。次いで、真空蒸着法により、第2金属層53として厚さ100nmのAlを形成した。そして、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。
(比較例5)
ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、上記化学式3に示す化合物1を真空蒸着法により60nmの厚さで形成して、正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51として厚さ1nmのLiFを形成した後、CaとAlを1:3の蒸着速度比でともに蒸着することにより、CaとAlを含む厚さ20nmの第1金属層52を形成した。次いで、真空蒸着法により、第2金属層53として厚さ100nmのAlを形成した。そして、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。
(比較例6)
ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、上記化学式3に示す化合物1を真空蒸着法により60nmの厚さで形成して、正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51として厚さ1nmのLiFを形成した後、CaとAlを7:3の蒸着速度比でともに蒸着することにより、CaとAlを含む厚さ2nmの第1金属層52を形成した。次いで、真空蒸着法により、第2金属層53として厚さ100nmのAlを形成した。そして、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。
(比較例7)
ガラス等からなる透明な基板10の一面上に陽極20としてのITOを150nmの厚さで形成した後、PEDOT/PSSを水に分散させた塗布液を用いて、スピンコート法により陽極20上に塗布し、120℃で乾燥させることにより厚さ60nmの正孔輸送層30とした。次に、上記した化合物2を精製して重量平均分子量40000とした高分子発光材料を、キシレン溶媒に溶解させて塗布液を形成し、この塗布液を正孔輸送層30の上にスピンコート法で塗布する。そして、120℃で乾燥させることにより、厚さ100nmの有機層40(発光層)とした。次に、真空蒸着法により、電子注入層51として厚さ1nmのLiFを形成した後、CaとAlを1:3の蒸着速度比でともに蒸着することにより、CaとAlを含む厚さ2nmの第1金属層52を形成した。次いで、真空蒸着法により、第2金属層53として厚さ100nmのAlを形成した。そして、最後にグローブボックス中で金属缶(図示略)と素子が形成された基板10とを光硬化樹脂で貼り合わせることで、作製素子を封止した。
このようにして形成した有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を実施した。
図5は、実施例1〜4及び比較例1〜7の各構成と、耐久試験の評価結果をまとめたものである。なお、評価結果は、初期状態の輝度に対する耐久試験100h後の相対輝度を表したものである。
また、図6は、正孔輸送層30として上記化学式3に示す化合物1を用い、且つ、第1金属層52の厚さを2nmとしたときの、第1金属層52の組成、すなわちCaのvol%(体積%)と、相対輝度との関係を示している。具体的には、実施例1,2と比較例1,3,6の結果を示している。また、第1金属層52を有さない、すなわちCaが0vol%の状態を示す比較例2の結果もあわせて示している。
図6から明らかなように、第1金属層52のうち、Caを25vol%以上40vol%以下(Alを60vol%以上75vol%以下)の範囲内とすると、相対輝度、すなわち輝度寿命をより一層向上できる。具体的には相対輝度を0.8以上とすることができる。
なお、Caが25vol%未満の場合、第1金属層52中にCaが少ないため、低仕事関数を有するCaの高電子注入特性の効果が低下し、その分高駆動電圧となり、素子発熱等が影響するためと考えられる。一方、Caが40vol%を超える場合、Caを分散させてLiFとの反応確率を低減させる効果が弱まるためと考えられる。
また、図7は、正孔輸送層30として上記化学式3に示す化合物1を用い、且つ、第1金属層5の組成を、Ca:25vol%、Al:75vol%としたときの、第1金属層52の厚さと相対輝度(輝度寿命)との関係を示している。具体的には、実施例1,3,4と比較例4,5の結果を示している。また、第1金属層52を有さない、すなわち膜厚0nmの状態を示す比較例2の結果もあわせて示している。
図7から明らかなように、第1金属層52の厚さを1nm以上4nm以下の範囲内とすると、相対輝度(輝度寿命)を、より一層向上できる。具体的には、相対輝度を0.8以上とすることができる。特に第1金属層52の厚さを2nmとすると、輝度寿命を最も向上することができるので好ましい。
なお、膜厚が4nmを超えると相対輝度が低下するのは、厚膜とすることで非固溶系の第1金属層52においてCaの偏析等が生じやすくなり、Caを分散させてLiFとの反応確率を低減させる効果が弱まるためと考えられる。
また、図5に示すように、実施例1と比較例7の評価結果から、正孔輸送層30として、ドナー性又はアクセプター性を有するドーパントを含有しない材料を用いたほうが、輝度寿命を向上できる点も明らかである。
なお、比較例7のように、ドナー性又はアクセプター性を有するドーパント(比較例7ではPSS)を含有した正孔輸送材料(具体的には導電性ポリマー)を用いると、ドーパントが有機層40に拡散して、有機層40を構成する高分子との間に電荷移動錯体などを形成し、これにより輝度が低下するものと考えられる。これに対し、実施例1のように、ドナー性又はアクセプター性を有するドーパントを含有しない材料を用いて正孔輸送層30を構成すると、輝度寿命を向上することができる。
図8は、上記した実施例1に示す有機EL素子100を、85℃環境下でのDC駆動による800cd/mの初期輝度にて耐久試験を100h実施し、初期状態と耐久試験後(相対輝度0.85)について状態分析を行った結果を示している。具体的には、深さ方向においてLiの分布の分析結果を示している。なお、分析方法及び条件は、上記した図2と同じである。
図8では、初期状態のサンプルのLiを実線、40%低下したサンプルのLiを破線で示している。なお、一点鎖線はIn、二点鎖線はAlを示している。図8から明らかなように、図2と比較して、有機層40側へのLiの拡散が顕著に抑制されていることがわかる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
20・・・陽極
30・・・正孔輸送層
40・・・有機層
50・・・陰極
51・・・電子注入層
52・・・第1金属層
53・・・第2金属層
100・・・有機EL素子

Claims (6)

  1. 陽極と陰極との間に、LUMO値が2.6eV未満の有機層を少なくとも1層配置してなる有機EL素子であって、
    前記陰極は、前記有機層に接するとともに、前記有機層側から、電子注入層、第1金属層、第2金属層の3層構造をなし、
    前記電子注入層は、フッ化リチウムからなり、
    前記第1金属層は、カルシウムとアルミニウムを混合してなり、
    前記第2金属層は、アルミニウムからなることを特徴とする有機EL素子。
  2. 前記第1金属層には、カルシウムが25vol%以上40vol%以下の範囲で含まれていることを特徴とする請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 前記第1金属層の膜厚が、1nm以上4nm以下の範囲で設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機EL素子。
  4. 前記第1金属層の膜厚が、2nmで設定されていることを特徴とする請求項3に記載の有機EL素子。
  5. 前記陽極と前記有機層の間に、ドナー性又はアクセプター性を有するドーパントを含有しない正孔輸送層を、前記陽極に接して有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の有機EL素子。
  6. 前記正孔輸送層の構成材料は、化学式1に示す構造を有することを特徴とする請求項5に記載の有機EL素子。
    Figure 2012190549
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