JP2012188326A - アパタイトセラミックスの製造方法および該セラミックスを電解質とする燃料電池 - Google Patents

アパタイトセラミックスの製造方法および該セラミックスを電解質とする燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】イオン導電性を向上させ、長期間の使用に耐え得る化学的安定性を賦与させることが可能なアパタイトセラミックスの製造方法と、このアパタイトセラミックス用いた燃料電池を提供する。
【解決手段】ランタノイドとSi(ケイ素)とを含む原料を反応させてランタノイドシリケートからなるアパタイトセラミックスを合成する際に、下記組成式(1)のアパタイトセラミックスが生成されるようAl又はMgの少なくとも一方をドープすると共に、遷移金属を添加することを特徴とするアパタイトセラミックスの製造方法。(1−α){Ln9.333+x(Si6-yu+ y)O26+1.5x-(2-0.5u)y}−α(MOγ)…(1)(但し、Ln;ランタノイド、T;Al又はMgの少なくとも一方の元素、M;遷移金属、0.3<x<0.867、0.1≦y≦0.4、0.002≦α<0.05、γ;遷移金属Mの価数に応じて決定される変数)
【選択図】図3

Description

本発明は、高性能燃料電池を提供するためのイオン導電性ならびに安定性の高いアパタイトセラミックスの製造方法と、そのセラミックスを固体電解質として用いる燃料電池に関する。
現代の資源・エネルギー問題、環境問題を背景に、固体電解質(イオン導電性固体)を用いた燃料電池が注目されており、その実用化が期待されている。中でも、酸化物系セラミックスを電解質として用いる固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」と云う)は、他の固体電解質を用いた燃料電池に比べて発電の効率が最も高く、普及が期待されている。
このSOFCは、図5に示すように、固体電解質10と正極12、負極14の両電極から構成されるサンドイッチ型構造をとり、水素などの燃料の電極反応を通して電気エネルギーを得るデバイスである。これまでにSOFCの効率向上と実用化をめざした種々の取り組み〔具体的には、電解質・電極材料の開発、電極特性の改善、劣化機構解明の研究・開発など〕が盛んに行なわれている。しかし現状では、高性能且つ高耐久性を有する実用レベルのSOFCが開発されているとは云い難い。これは、SOFCが酸素などの酸化剤と水素などの燃料とを用いて高温で作動するため、電解質及び電極を構成する材料には十分な耐熱性と機械的強度とが必要であるのに加え、これらの材料は高温酸化雰囲気、高温還元雰囲気で安定に特性を示すものでなければならず、電解質及び電極として使用可能な材料が限られていることが大きな要因である。これまでのSOFCの研究開発では、電解質、電極材料は数種類のものに限定されており、材料はほぼ出尽くした感があった。
しかしながら、近年、SOFC用の電解質材料として、既存材料とは結晶構造もイオン導電機構も全く異なる新しいタイプの酸化物イオン(O2-)導電体であるアパタイト型ランタンシリケート(組成式La9.333+xSi626+1.5x;以下、「LSO」とも云う。)が注目されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
このLSOは、対称性の低い(つまり異方性の高い)アパタイト構造を有する新しいタイプのセラミックス電解質(アパタイトセラミックス)で、材料中でケイ素はSiO4四面体独立構造を採っており、アパタイト構造を保持する為の役割を担っている。そして、その四面体とランタン(La)との隙間にある、結晶構造のc軸方向に延びているトンネル状のイオン伝導パスを介して酸化物イオン(O2-)が高速に移動できるようになっている。更に、イオン導電率の活性化エネルギーが低いことから、SOFCの固体電解質とした場合、低温作動化に有利であると云った特徴を有する。
このLSOについては、イオン導電特性の大きな向上を図るべく、様々な技術開発が行なわれるようになってきており(例えば、特許文献3参照。)、現在では、電解質材料としてLSOを用いて試作したSOFCにおいて、ほぼ実用レベルの発電特性を有するものも出始めている。
特開平8−208333号公報 特開平11−71169号公報 特開2005−126269号公報
ここで、LSO(La9.333+xSi626+1.5x)のイオン導電性には、当該酸化物内の過剰酸素量(組成式中の1.5x)が大きく影響している。すなわち、LSOに導電キャリアである酸素をより多く導入するにあたり、その電荷補償となるLa(ランタン)をなるべく多くLSO相に詰め込む必要がある。つまり、Laの活量をなるべく高くすることが有利である(具体的には過剰仕込み量(上記組成式中の)x〜0.67が最高導電率を与える)。しかしながら、x〜0.67のようなLa過剰組成の取扱いには、以下に述べるような問題のあることが分かった。
すなわち、イオン導電性を高めるために上記組成式中のxを増加させるに従い、材料中のLa量はかなり過剰となるが、その際に材料が化学的に不安定となり、ついにはペレット形状すら保てなくなって材料が自己崩壊(ダスティング)するという問題が顕在化する。つまり、導電率を高めるための手段であるxの増加によって、LSOが化学的に不安定化する傾向があると云った大きな問題が明らかとなった。従って、このような問題を解消できなければ、信頼できるデバイスの開発は到底不可能である。換言すれば、LSOの導電率向上を達成するには、同時に化学的な安定性を賦与することが必要となっており、上記組成式中のxを高めつつ化学的安定性を高める技術の確立が必要とされている。
なお、上記課題は、Laに換えてアパタイトを形成する他のランタノイド(Ln)、例えばNd(ネオジム)やSm(サマリウム)などを用いてアパタイトセラミックスを合成した場合にも起こり得る問題である。
それゆえに、本発明の主たる課題は、内部に多くの酸素を導入することによってイオン導電性を向上させたアパタイトセラミックスに対して、さらにイオン導電性を高めると共に、長期間の使用に耐え得る化学的安定性を賦与させることが可能なアパタイトセラミックスの製造方法を提供することであり、更なる課題は、かかる製造方法で製造されたアパタイトセラミックスをイオン導電体として固体電解質に使用した中温領域で作動する燃料電池を提供することである。
発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ランタノイドシリケートからなるアパタイトセラミックスに微量の遷移金属を添加することによってアパタイトセラミックスの安定性が極めて良くなることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明における第1の発明は、「ランタノイドとSi(ケイ素)とを含む原料を反応させてランタノイドシリケートからなるアパタイトセラミックスを合成する際に、下記組成式(1)のアパタイトセラミックスが生成されるようAl又はMgの少なくとも一方をドープすると共に、遷移金属を添加することを特徴とするアパタイトセラミックスの製造方法」である。
(1−α){Ln9.333+x(Si6-yu+ y)O26+1.5x-(2-0.5u)y}−α(MOγ) …(1)
(但し、Ln;ランタノイド、T;Al又はMgの少なくとも一方の元素、M;遷移金属、0.3<x<0.867、0.1≦y≦0.4、0.002≦α<0.05、γ;遷移金属Mの価数に応じて決定される変数)
この発明では、ランタノイドシリケートからなるアパタイトセラミックスを合成する際に、過剰量のLnを配合するのに加え、上記組成式(1)に示すような所定量のAl(アルミニウム)又はMg(マグネシウム)の少なくとも一方がドープ(置換固溶)されているので、アパタイトセラミックスに対して高いイオン導電性を賦与することができる。そして、ランタノイドシリケートに対して所定量の遷移金属を更に添加しているので、アパタイトセラミックスの化学的安定性を著しく向上させることができる。
なお、ランタノイド(Ln)とは、原子番号57から71、即ちランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15の元素の総称である。このうち、アパタイトを作るものとしては、一般的にランタン(La)、ネオジム(Nd)及びサマリウム(Sm)などを挙げることができる。
本発明における第2の発明は、「前記遷移金属(M)が、Fe(鉄),Nb(ニオブ),V(バナジウム),Cr(クロム)及びNi(ニッケル)の群から選ばれる少なくとも1種である」ことを特徴とするアパタイトセラミックスの製造方法である。
ランタノイドシリケートに添加する遷移金属として、Fe,Nb,V,Cr及びNiの群から選ばれる少なくとも1種を用いることにより、後で詳述するように、アパタイトセラミックスのイオン導電特性を低下させることなく、その化学的安定性を向上させることができるようになる。
さらに、本発明における第3の発明は、「請求項1又は2に記載の方法で製造されたアパタイトセラミックスをイオン導電体として固体電解質に用いた」ことを特徴とする燃料電池で、これにより300〜800℃程度の中温領域で作動可能な燃料電池を提供することができる。
本発明によれば、材料中に過剰な量のLnを配合することによって高いイオン導電性を示すが化学的安定性の乏しくなったランタノイドシリケートに対して、100ppm程度の極僅かな量のFe等の遷移金属元素を添加することにより、イオン導電性を損なわず、化学的安定性、特に室温などの低温、大気下における安定性を劇的に向上させることができるようになる。換言すれば、材料中に過剰な量のLnを配合し、内部に多くの酸素を導入することによってイオン導電性を極大化させたアパタイトセラミックスに対して、長期間の使用に耐え得る化学的安定性を賦与させることが可能なアパタイトセラミックスの製造方法を提供することができる。
更に、かかる製造方法で製造されたアパタイトセラミックスをイオン導電体として固体電解質に使用すれば、作動温度300〜800℃程度の中温領域で作動する燃料電池を提供することができる。
0.995{La10(Si5.8Al0.2)O26.9}−0.005(MOγ)の導電率の温度依存性(大気中)を示すグラフである。 0.995{La10(Si5.8Al0.2)O26.9}−0.005(MOγ)の800℃(1073K)における導電率の元素依存性(大気中)を示すグラフである。 0.995{La10(Si5.8Al0.2)O26.9}−0.005(MOγ)の室温大気中放置日数と800℃(1073K)における導電率との関係を示すグラフである。 La10(Si5.8Al0.2)O26.9並びに0.995{La10(Si5.8Al0.2)O26.9}−0.005(FeOγ)の室温大気中放置日数と800℃(1073K)における導電率の関係を示すグラフである。 固体酸化物形燃料電池(SOFC)の概略を示す模式図である。
以下、本発明のアパタイトセラミックスの製造方法について詳述する。
本発明のアパタイトセラミックスの製造方法は、ランタノイドシリケートの組成制御、具体的には下に示す組成式(1)の組成となるように、ランタノイドシリケートに対してAl又はMgの少なくとも一方をドープすると共に、鉄などの遷移金属元素を100ppm程度の極僅かな量添加することによって、イオン導電性を損なわず、化学的安定性、特に室温などの低温、大気下における安定性を劇的に向上させるものである。
(1−α){Ln9.333+x(Si6-yu+ y)O26+1.5x-(2-0.5u)y}−α(MOγ) …(1)
(但し、Ln;ランタノイド、T;Al又はMgの少なくとも一方の元素[uはTの価数]、M;遷移金属、0.3<x<0.867、0.1≦y≦0.4、0.002≦α<0.05、γ;遷移金属Mの価数に応じて決定される変数)
ここで、アパタイトセラミックスの基本骨格であるランタノイドシリケートに対して上記組成式(1)に示すような所定量(0.1≦y≦0.4)のAl(アルミニウム)又はMg(マグネシウム)の少なくとも一方をドープすることによって、例えば800℃において最大で73mS・cm-1というような良好な導電率を示し、このアパタイトセラミックスを用いて電解質厚み0.7mmの固体電解質を作成し、これをSOFCに組み込んだ場合、作動温度800℃において最大出力密度0.25Wcm-2と云うほぼ実用レベルの特性を達成することができるようになる。
また、本発明のアパタイトセラミックスの製造方法では、上記組成式(1)に示すような割合でランタノイドシリケートに対して遷移金属を添加している。
「遷移金属」とは、周期表で第3族元素から第11族元素の間に存在する元素の総称であり、最外殻より内側の電子の軌道(通常d軌道)が途中まで埋まった電子配置をもつ元素のことを云う。
このような遷移金属をランタノイドシリケートに極僅かな量添加することにより、ランタノイドシリケートと大気中の水や二酸化炭素とが反応してランタノイドシリケートが不安定化するのを阻止することができる。なお、このメカニズムについては明らかとなっていないが、過剰となったLnを含むランタノイドシリケート以外の析出相が、遷移金属の共存によって何らかの化学的に安定な酸化物に変化する結果、アパタイトセラミックスが自己崩壊を起こすことなく、長期に亘って安定に存在できるようになるものと推測される。
このようにランタノイドシリケートに対して極微量の遷移金属を添加する本発明の方法で製造されたアパタイトセラミックスでは、これをSOFCの固体電解質として使用した際に、電解質や電極界面でのイオン移動を阻害することはない。又、化学的安定性改善のために多量に特定の元素を添加する必要がないのでイオン導電性の妨げにもならない。更に、添加するのが遷移金属なので高温で焼成した場合でも材料内にとどまることができ、アパタイトセラミックスを合成(焼成)した後も遷移金属の添加効果を期待することができる。
上記組成式(1)において、遷移金属の添加割合であるαは、0.002≦α<0.05の範囲内であるのが好ましく、より好ましくは0.005≦α<0.05の範囲である。この遷移金属の添加割合αが0.002未満の場合には、遷移金属の添加によるアパタイトセラミックスの化学的安定性向上効果が認められず、逆に、添加割合αが0.05以上の場合には、アパタイトセラミックスの化学的安定性は向上するが、電子導電性が発現するようになり固体電解質として適さなくなるからである。
また、ランタノイドシリケートに添加する遷移金属として、「Fe(鉄),Nb(ニオブ),V(バナジウム),Cr(クロム)及びNi(ニッケル)の群から選ばれる少なくとも1種」を用いるのが好ましく、中でもFeを用いるのが特に好適である。遷移金属として係る元素を用いることによって、アパタイトセラミックスのイオン導電特性を低下させることなく、その化学的安定性をより一層効果的に向上させることができるからである。
なお、Ln(ランタノイド)とSi(ケイ素)とを含む原料を反応させてランタノイドシリケートからなるアパタイトセラミックスを合成する方法としては、公知の固相法やゾル・ゲル法或いは単結晶育成法など如何なる方法であってもよい。また、ランタノイドシリケートに遷移金属を添加するタイミングについても、予め出発原料の段階で極微量の遷移金属を添加しておくようにしても良いし、例えば固相法でランタノイドシリケートからなるアパタイトセラミックスを合成する場合には、か焼(calcination)工程の前後いずれであってもよい。
以下、本発明のアパタイトセラミックスの製造方法と、当該方法によって得られたアパタイトセラミックスをイオン導電体として固体電解質に採用したSOFCについて、ランタノイド(Ln)としてLa(ランタン)を用いた実施例を中心に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.遷移金属の添加が導電性ならびに化学的安定性に及ぼす効果
出発原料としてLa23(キシダ化学株式会社,99.99%)、SiO2(株式会社高純度化学研究所,99.9%)及びAl(OH)3(キシダ化学株式会社,99.0%)を用い、これに少量の遷移金属(M;Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu)の各酸化物を添加し、0.995{La10(Si5.8Al0.2)O26.9}−0.005(MOγ)を目的の組成として固相法により合成した(Mは約100ppmに相当)。
具体的には、上記出発原料をそれぞれ所定の組成となるよう秤量した後、ジルコニア製の遊星式ボールミル(ボール直径5mm)を用いて400rpmで3時間、エタノール中で湿式混合粉砕を行った。その後、混合粉末をバットに移し、約100℃の乾燥機で乾燥させた後、アルミナの蓋をかぶせたアルミナ坩堝に投入し、大気中、1200℃で10時間か焼した。
続いて、得られたか焼物を再度上記遊星式ボールミルを用いて400rpmで3時間、エタノール中で湿式粉砕した後、約100℃の乾燥機で乾燥させてか焼物の粉末を得た。そしてこのか焼物の粉末を本焼成した。本焼成は、か焼物の粉末を57MPaで直径21mmのディスク状に一軸加圧成型した後、大気中、1700℃で10時間本焼を行った。
得られた0.995{La10(Si5.8Al0.2)O26.9}−0.005(MOγ)試料の導電率を図1に示す。なお、図1中の実線は、遷移金属を添加していないLSO試料の導電率を示すものである。この図から、通常イオン導電特性を低下させる遷移金属の極微量添加が、ある元素の場合(例えば、FeやCr)には、イオン導電性を向上させるという事実が見出された。又、800℃の導電率を添加元素の原子番号順にプロットしたのが図2であるが、中間遷移元素で特性向上効果があることが分かった。特に効果のあるのはFeであった。なお、図2における破線は、遷移金属を添加していないLSO試料の導電率を示すものであり、実線は単なるガイドである。
次に、各微量元素を添加したLSO試料の室温大気下保持時間(横軸)と800℃の導電率(縦軸)の関係を図3に示す。これは室温・大気下に試料を静置して保管し、ある日数経過後に試料を昇温させ、導電率測定の間だけ800℃に保持して導電率を測定したものである。ほとんどの試料は日数の経過とともに導電率の低下が見られた。なお、図中で×印をつけたのは試料が粉末状に自己崩壊し、それ以降導電率が計測できなかったことを示すものである。又、図中の元素記号に近接する数字は測定終了時における初期導電率に対する比率を示したものである。
この図から、先ほど導電性を高めた添加元素は、導電率の経時劣化を抑制する傾向にあることが窺える。
なお、上述した各傾向はLnとしてLaを使用した場合のみならず、NdやSmなどを用いてアパタイトセラミックスを合成した場合でも同様の傾向を示すことが分かっている。
2.同一条件で合成したFe添加有無試料の比較
Feを含まないLSO試料(上記組成式(1)におけるα=0.000の物)のか焼粉末(本焼成する前の粉末)を上記実施例と同様にして合成した後、これを二等分し、一方はそのままとし、他方には組成が0.995{La10(Si5.8Al0.2)O26.9}-0.005(FeOγ)となるようにFe23(関東化学株式会社,99.0%)を微量添加したものを準備した。
そして、これらを同一条件、同一バッチで本焼して作製した各試料について800℃の導電率を測定し、上記と同様に室温大気保持時間(横軸)に対する導電率(縦軸)の変化をプロットしたものが図4である。この実験は、導電率や導電率の経時変化における変化(図1乃至3)が本当に極微量の遷移金属添加によるものであったかどうかを確認するために行った。なお、図中、黒塗り円(●)はFe23を添加してFeを添加したLSO試料の導電率測定結果を示し、白抜き四角(□)はFeを添加していないLSO試料の導電率測定結果を示している。
図4の導電率測定結果から、多少導電率の増減は見られるが、全体的にFeを添加していない試料では時間の経過に伴う導電率の低下が見られ、40日程度で導電率は初期導電率の90%以下になった。一方、Feを添加した試料では大きな導電率の低下は見られず、ほぼ一定の導電率を示した。また、初期導電率もFeを添加していない試料よりもFeを添加した試料の方が高い値を示した。
以上より、Feの添加は確かに導電率低下抑制効果があると結論付けられ、これは以下述べるように、試料の化学的安定性が向上したためであるということが分かった。
すなわち、Fe添加の有無で導電率の変化を比較したLSO試料について、本焼成後6カ月間、室温大気下で静置・保持し、時間経過に伴う試料表面の変化を定期的に目視観察した。その結果、Feを添加していない試料では、本焼成から数日の段階でディスク状に成形した試料の中心部分がわずかに白く見え始め、時間経過と共に中央付近全体が白変し、係る白変が次第に広がって試料表面全体へと及ぶ様子が確認された。そして最終的には自己崩壊して試料が完全に粉末化してしまった。なお、係る白変に伴って試料の機械的強度は明らかに低下した。
一方、Feを添加した試料では本焼成後約6カ月経過した時点においても上記白変のような試料の外観の変化や機械的強度の低下は見られなかった。つまり、Feを添加した試料では試料の粉末化が抑制されていた。
以上のように、Feの添加が、LSOの導電性維持(安定性向上)に効果を発揮するということが分かった。上述の通り、化学的に不安定になるにつれ、導電率は次第に低下していることから、図1及び2でFeを添加した場合に導電率が向上したように見えたのも、実は「導電率が経時劣化していなかった」ことを示していた(他の試料の導電率が既に低下していた)ものとも考えられる。よって上記実施例の全ての結果を総合すると、0.995{La10(Si5.8Al0.2)O26.9}-0.005(FeOγ)で表される組成は、高い化学的安定性と高導電性とを併せ持ち、LSOの中で最も価値のある組成であると結論付けることができる。
なお、この例ではFeの添加をか焼後に行ったが、上述のようなFeの添加に伴う化学的安定性の向上効果は、か焼前にFeの添加を行っても得られる。又、予め不純物としてFeを含有した原料酸化物(例えば汎用で用いられる酸化ケイ素原料など)を用いた場合にも同様の効果が得られる。つまり、LSO中にFe元素が入ってさえすれば化学的安定性の向上効果を期待することができるが、とりわけ上記実施例のようにか焼粉末生成後であって本焼成前の時点でFeの添加を行うのが最も効果的である。
以下、この点について説明すると、LSO原料のか焼粉末を1600℃よりも低温で本焼成した場合には(前記か焼粉末が)高La材料であっても酸化ランタンなどの化学的安定性の乏しい化合物は析出せず、Feの添加が無くても自己崩壊は見られないが、SOFCの固体電解質に必要な導電特性は得られない。このため、LSOをSOFCの固体電解質に好適なイオン導電体とするためには、1600℃以上の温度で本焼成する必要が有り、係る温度で本焼成することによってアパタイトがより高導電性を示す相に変わるのと同時に、酸化ランタンなどの化学的安定性の乏しい化合物が粒界に析出し、これがLSOを不安定にする。
そこで、LSOに対して極微量のFeを添加するのであるが、1200乃至1400℃程度で行うか焼の段階では、原料中に入れたFeは粒界に行くのではなくアパタイト母相のSi位置に置換すると考えられ、その後の本焼成時に粒界の酸化ランタンと反応させるためには、一度アパタイト母相内で安定化した状態のFeがアパタイト母相内から粒界に出ないといけない。一方、か焼粉末生成後であって酸化ランタンが生成する本焼成の直前にFeを添加した場合、添加したFeが酸化ランタンとの反応に直接使われ易くなり、Feを添加した効果がよりダイレクトに現れる。したがって上述のように、か焼粉末生成後であって本焼成前の時点でFeの添加を行うのが最も効果的である。
3.燃料電池(SOFC)の作製
厚さ0.72mmのイオン導電性アパタイトセラミックスをイオン導電体として固体電解質に採用すると共に、正極として(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3-δを、負極としてNi-(Ce0.9Gd0.1)O1.9-δを用いて、図5に示すようなSOFC単セルを組み立てて発電特性の評価を行った。その結果、作動温度800℃において最大出力密度0.25Wcm-2と云うほぼ実用レベルの発電特性を達成した。
上述の例では、本発明の製造方法で製造されるアパタイトセラミックスを燃料電池用の固体電解質として使用する場合を中心に説明してきたが、このアパタイトセラミックスは、燃料電池用の固体電解質以外にも酸化物イオン導電体としての様々な用途、例えば、酸素センサや酸素分離・貯蔵膜、触媒担体などにも利用することができる。
10…固体電解質
12…正極
14…負極

Claims (3)

  1. ランタノイドとSiとを含む原料を反応させてランタノイドシリケートからなるアパタイトセラミックスを合成する際に、下記組成式(1)のアパタイトセラミックスが生成されるようAl又はMgの少なくとも一方をドープすると共に、遷移金属を添加することを特徴とするアパタイトセラミックスの製造方法。
    (1−α){Ln9.333+x(Si6-yu+ y)O26+1.5x-(2-0.5u)y}−α(MOγ) …(1)
    (但し、Ln;ランタノイド、T;Al又はMgの少なくとも一方の元素、M;遷移金属、0.3<x<0.867、0.1≦y≦0.4、0.002≦α<0.05、γ;遷移金属Mの価数に応じて決定される変数)
  2. 前記遷移金属が、Fe,Nb,V,Cr及びNiの群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とするアパタイトセラミックスの製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方法で製造されたアパタイトセラミックスをイオン導電体として固体電解質に用いたことを特徴とする燃料電池。



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