JP2012187054A - 核酸増幅反応装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 核酸増幅装置おいて反応容器内における試料溶液位置を制御し、高い計測効率を実現すると同時に、熱的追従性の高い反応容器の構造とその使用法を提供する。
【解決手段】 反応容器を有するプレートと、反応容器に保持される溶液の温度を調節する温度調節部とを有する反応装置において、反応容器は、第1の金属材料で形成された底面と、側壁とで形成され、底面には、溶液が側壁に接しないように配置されるように設けられた凹又は凸部を有し、温度調節部は、第1の金属材料の溶液の保持側とは反対側の面と接触する第2の金属材料とを備えることを特徴とする。また、凹又は凸部の形成位置に、凹又は凸部の代わりに周囲よりも親水性の高い領域が形成されていてもよい。
【選択図】 図1
【解決手段】 反応容器を有するプレートと、反応容器に保持される溶液の温度を調節する温度調節部とを有する反応装置において、反応容器は、第1の金属材料で形成された底面と、側壁とで形成され、底面には、溶液が側壁に接しないように配置されるように設けられた凹又は凸部を有し、温度調節部は、第1の金属材料の溶液の保持側とは反対側の面と接触する第2の金属材料とを備えることを特徴とする。また、凹又は凸部の形成位置に、凹又は凸部の代わりに周囲よりも親水性の高い領域が形成されていてもよい。
【選択図】 図1
Description
本発明は、核酸増幅装置及び核酸増幅方法に関し、検出の高感度化と増幅反応の高速化を実現する反応容器の構造と、これを使った核酸増幅装置の構成を提供するものである。
核酸増幅による核酸計測装置として広く利用されているPCR (Polymerase Chain Reaction)装置では試料の微量化を進めながら、蛍光信号の高感度検出と増幅反応の高速化の実現が求められている。
特許文献1には、基板にウェル状反応検出部を有する反応チップにおいて、反応液のズレがないように、その底面の中央部に表面粗さが周囲よりも高い保持部を設けることが記載されている。また、非特許文献1には、表面粗さを増すと親水性の表面は親水性の程度を増し、疎水性の表面は疎水性の表面を増すこと(Fig.1.17)、そして親水性の程度に勾配のある表面におかれた液滴は親水性の程度が高くなる方向に移動すること(Fig.10.5)が記載されている。
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PCR増幅産物のモニタリングには蛍光色素が広く利用されているが、微量溶液について励起光の照射と蛍光検出を低損失かつ高精度で実行するには、溶液の正確な位置制御が必要である。さらに高速化にあたっては温調器の熱サイクルを遅滞なく反応溶液に伝達するためにやはり溶液位置の正確な制御が必要である。
発明が解決しようとする第一の課題は、PCR装置では検体採取における被験者の負担低減、多項目計測のための試料分割、試薬量の低減の観点から、高い計測感度と精度を維持したまま1テストあたりの試料溶液を微量化することである。微量化を進めることによって反応容器内の溶液位置が計測感度に与える影響が大きくなる。すなわち、反応容器の開口部には溶液分注機構や溶液分注作業の容易性の制約から一定以上の面積を与える必要があり、溶液容量が減少すると反応容器底面上で溶液位置がばらつき、光学系の焦点位置との関係あるいは容器側壁による遮蔽効果によって計測値が変動する。したがって反応容量を微量化した場合に安定した計測値を得ることのできる装置構成の実現が課題となる。
第二の課題は増幅反応の高速化である。特許文献1の記載にあるように、従来のPCR装置で利用される反応容器には例えばポリプロピレンなどの樹脂材料が広く用いられてきた。樹脂は安価、軽量でPCR反応を阻害しない材料選択や表面処理の技術が確立されているが、一般に熱伝導率が低い。PCR反応の高速化を実現するには、安価、軽量、PCR反応非阻害の特性を維持しながら高い熱応答特性を有する反応容器の構造の実現が課題となる。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、反応容器内における試料溶液位置を制御して高い計測効率を実現すると同時に熱的追従性の高い反応容器の構造とその使用法を提案するものである。
上記課題を解決するための本発明の代表的な一例として、反応容器を有するプレートと、反応容器に保持される溶液の温度を調節する温度調節部とを有する反応装置において、反応容器は、第1の金属材料で形成された底面と、側壁とで形成され、底面には、溶液が側壁に接しないように配置されるように設けられた凹又は凸部を有し、温度調節部は、第1の金属材料の溶液の保持側とは反対側の面と接触する第2の金属材料とを備えることを特徴とする。また、凹又は凸部の形成位置に、凹又は凸部の代わりに周囲よりも親水性の高い領域が形成されていてもよい。
本発明によれば、反応溶液を反応容器側壁に接触させることなく容器底部の中心付近に配置できるので、容器側壁の励起光の吸収、あるいは反応溶液からの蛍光が容器側壁によって散乱されることがなくなり、高感度の信号検出が可能になる。また、反応容器の底面を熱伝導率の高い金属とすることで、増幅反応の高速化と、温度サイクルの正確な制御により増幅効率の向上が可能になる。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明における第1の実施形態を示す図であって、本発明を適用した反応容器を示す。ここでは、反応容器の側壁3をPP(polypropylene)、底面2をアルミニウムで構成し、反応溶液4が反応容器側壁3に接しないように、反応容器の底面に一個あるいは複数の凸部5を形成した例(図1(A))を、凹部5を形成した例(図1(B))を示す。凸部5は、反応容器の底面と同じ材料を用いて形成してもよいし、圧着等で凸部を付加することによって形成してもよい。また、凹部5は底面のアルミを加工して凹ませるようにすればよい。
ここで側壁に用いる樹脂材料としてPPの他、PMMA(Poly Methyl Methacrylate)、PC((Poly Carbonate), COC (Cyclic Olefin Copolymer), PDMS(poly(dimethyl siloxane)などを利用することができる。側壁に樹脂材料を用いることにより金属を用いた場合に比べて材料コストを低減することができる。また、実施例7で後述するようにヒートリッドを適用した場合、側壁を比較的熱伝導率が低い樹脂材料にすることでヒートリッドを安定して高温に保持することが容易になる。底面2に用いる金属材料は、アルミニウムの他、SUS (stainless steel)を使うことも可能である。反応容器に入れられる反応溶液としては、増幅対象の核酸テンプレート、dNTP、プライマー、ポリメラーゼ、蛍光標識プローブが例えば TE(Tris EDTA: ethyl- enediamine tetraacetate)バッファ溶液に添加した溶液が用いられる。反応溶液量としては多くのPCR装置(例えばABI7900、Roche LightCycler 480など)が利用する標準サンプルプレートの標準的な溶液量は10μlから100μlである。さらに、PCR反応の高速化、試薬量の低減を目的として反応液量100nlの装置が市販されている。また、市販の精密ピペットによる分注下限が10nl程度であることを考慮して10nlから100μlを典型的な反応液量とした。
概算のため反応溶液の形状を半球とすると10nlの反応溶液の直径は約340μm、100μlは約7mmに対応する。したがって反応容器の直径は10nlの反応溶液を側壁に触れることなく収容できるように340μmが必要である。また、100μlの反応溶液については、側壁に触れることなく収容できるようにするためには約7mm必要となるが、余裕をもたせるために10mm程度の直径としてもよい。反応容器側壁を構成するPP板の厚さは反応溶液の半径以上とするため、厚さとしては170μm以上は必要である。反応溶液の量にあわせ、溶液100μlの場合には3.5mm以上とする。底面金属板の厚さは機械的強度と材料コストを考慮して10μmから1mmの間に設定することが溶液の保持に適しているといえる。
反応溶液4は、図1上では2カ所に配置した凸部又は凹部5により、反応溶液4は側壁3と金属底面2によって規定される溶液保持部の内部において、底面2に接しつつ、側壁3に接しないような形で保持される。それは、この凸部又は凹部5の存在により、反応溶液4の表面エネルギーが安定するからである。これにより温調器に付随する金属ブロック1の温度変化が金属製底面2を介して熱抵抗の低い経路で反応溶液4に伝達され、高速のPCR反応が可能になる。
また、蛍光による増幅産物の計測の観点からみると、反応溶液4は溶液容器底面2において側壁3に接触せず、側壁3から離れた位置あるため、励起光の入射において側壁3が障害になることはなく、蛍光の集光においても側壁3が障害となることはない。これにより高感度・高精度の蛍光計測が可能になる。
本発明において反応溶液の量は特に限定されるものではないが、試料採取負担の軽減、試薬量低減、PCR高速化の条件を満たしながら簡便な分注器による分注制御が可能な量として10nLから100μLが適当である。こうした範囲の液量の液滴に対して凸部の高さ又は凹部の深さは、実施例6で述べる表面自由エネルギーを十分に大きくする寸法として、100μmより大きいことが望ましい。また、凹部・凸部の形状については、柱状のものでもよいし、球状のものを用いてもよい。
アルミニウムやSUSのなどの金属は核酸増幅における酵素反応を阻害する場合があり、そのような場合には、金属表面については例えばPDMS材料などの樹脂材料あるいはSiO2膜などの酸化膜により、コーティングあるいは表面処理するとよい。反応容器の溶液保持部の底面にコーティング18を施した例を図2(A)に示す。コーティング剤としてPDMS、表面処理としてはPEG(polyethylene glycol)、BSA(bovine serum albumin)溶液処理を使うことができる。
反応容器を作成するには、溶液保持部の構成する貫通穴を設けたPP板とアルミニウム箔を接着材によって結合する。ここで接着材としてはたとえばデグサ社製ヒートシール剤(Degalan PM666)あるいはHoechst社製PDMS(Celgard)などを利用できる。
図2(B)に示すように、こうした接着材を利用する場合、接着剤をあらかじめ底面2を構成するアルミニウムに塗布し、側壁3を構成するPP板と結合して熱処理することによって反応容器を作成することができる。このとき、接着剤による層19が反応容器底面にできる。このとき接着剤は、接着材としての機能の他にコーティング剤としての機能を有する。
図3は反応溶液の蒸発を防止する手段を適用した例である。100nlの反応溶液を側壁3と底面2で規定された溶液保持部に分注し、続いてオイル6(mineral oil)を2μl程度分注することにより反応溶液4の蒸発を防ぐことができる。あるいは、反応容器側壁3の上面に透明なシール材7を配置することによっても反応溶液4の蒸発による散逸を防止することができる。図3には、このオイル6を用いた場合とシール材7を配置した場合の両方を示している。
図4は反応容器底部の凸部5を反応容器底部の中心位置(図4は反応容器底部形状を円としているので凸部の位置は円の中心)に配置した場合の反応溶液4位置を示す。ここで中心位置の定義として望ましい一例として、“反応容器底部の平面形状おける内接円の中心”として定めることができる。この定義によって中心位置を決めることにより溶液は反応容器の特定の壁面に接近することなく、前記した不具合の発生を減少することができる。
凸部5によって溶液4は側壁3と接することはないが、溶液4は凸部5を内部に取り込む条件を満たす範囲で表面エネルギーを考慮した場合の安定位置は一定の自由度を有する。溶液4が底面2と接する面の半径をr1とすると、溶液4の中心の位置は、凸部5の位置を中心とする半径r1の円内に位置することになる。このとき反応容器の底面2の半径をr0とすると、溶液4が側壁3に接しないための条件はr1<r0となる。溶液4の容量は底面2との接触角を考慮した上で少なくともr1<r0となるように設定する必要がある。また、図4のように、凸部5を溶液4の端に取り込んでしまう場合も考慮すると、2r1<r0であることが望ましい。
図5(A)は凸部5を底面2の中心に1個、(B)は凸部5を底面の中心に対して対象に2個配置した場合の実施例を示したものである。1個の場合と2個の場合について溶液安定化位置の考察は以下の実施例6で行う。励起光スポットが小さく絞られているか、検出器の受光部面積が小さい場合の様に、蛍光測定時の信号検出感度が溶液位置に対して敏感である場合には、図5(B)の様に凸部5を底面中心の周辺に配置することが検出感度を安定させる上で有効である。またさらに、図9に示すように多数の凸部を配置することにより、反応溶液の位置を安定して規定することが可能になる。
ここで凸部は凹部とした場合も、同様の効果が得られる。したがって、各実施例において、凸部としているところは凹部としてもよい。
図6(A)に示すようにオイル中の液体の表面自由エネルギー(表面張力)をγL 、オイル中の固体の表面自由エネルギーをγS 、溶液と固体(容器底面)の表面自由エネルギーをγSL とすると浸漬仕事(work of immersion) WIは(数1)の様に表すことができる(非特許文献3)。
ここに次のヤングの(数2)を(数1)に代入すると(数3)式が得られる。
(数3)は単位長さあたりの浸漬張力、あるいは単面積あたりの浸漬仕事を表わす。
ここで接触角θが0<θ≦90°であればWI≧0となって外部に対して仕事がなされる(エネルギーが放出される)ことになり浸漬面積(溶液−固体の界面面積)は増加する方向に動く。図6(B)における凸部と溶液の接触角θが固体基板2と同じとすれば、(B)の凸部の表面積がAのとき(C)のように凸部を取り込むことにより図6に示す溶液、固体、オイルの全体の表面自由エネルギーの増分はAγL cosθとなる(凸部の体積は十分に小さく溶液と固体の接触面積は不変と仮定)。溶液4と凸部5の位置と表面自由エネルギーの関係を図7に示す。
ここで接触角θが0<θ≦90°であればWI≧0となって外部に対して仕事がなされる(エネルギーが放出される)ことになり浸漬面積(溶液−固体の界面面積)は増加する方向に動く。図6(B)における凸部と溶液の接触角θが固体基板2と同じとすれば、(B)の凸部の表面積がAのとき(C)のように凸部を取り込むことにより図6に示す溶液、固体、オイルの全体の表面自由エネルギーの増分はAγL cosθとなる(凸部の体積は十分に小さく溶液と固体の接触面積は不変と仮定)。溶液4と凸部5の位置と表面自由エネルギーの関係を図7に示す。
図7の(a)、(e)は溶液4が凸部5を含まない状態、(b)、(d)は凸部が溶液周辺部にある場合、(c)は凸部が溶液の中心部付近にある場合である。浸漬仕事による表面自由エネルギーの変化を図7のグラフの点線35に示す。表面自由エネルギーは凸部5が溶液4に含まれる位置範囲において最小を示し、溶液位置は溶液直径に相当する自由度を持つが安定位置はこの範囲内に限定される。次に凸部が2個の場合の溶液4と凸部5の位置と表面自由エネルギーの関係を図8に示す。図7と同様に浸漬仕事による表面自由エネルギーの変化を点線37に示す。この場合は2つの凸部の設置距離を溶液の直径程度に設定することにより、溶液位置により凸部が含まれない場合、1つだけ含まれる場合、2つとも含まれる場合が想定でき、各場合に応じて表面自由エネルギーは3段階の値をとる。溶液位置は凸部が2つとも含まれる場合が最小となり、凸部が1個の場合に比較してより正確に溶液位置を定めることが可能になる。
以上の実施例では溶液と凸部を有する固体表面(容器底面)の表面自由エネルギーを浸漬仕事の観点から考察した。これは溶液内に導入された粒子が溶液内に一様に分布する場合に対応している。一般には溶液内に粒子が導入されると粒子はオイル-溶液の界面に正の吸着(positive adhesion)によって集まったり、負の吸着(negative adhesion)によって界面から排除される場合があることが知られており、非特許文献4にあるように表面に集まる正の吸着の場合が多い。こうした現象のメカニズムは表面張力や静電気力など種々あるが、一般には非特許文献5にあるように界面において粒子の表面自由エネルギーが最小になることによって界面に粒子が集まる。
本発明においては、粒子を凸部5に対応させて考える。粒子は溶液の中を移動することができるが凸部は底面に固定されているため、溶液は自らが移動して凸部を溶液―オイル界面に位置させることで表面自由エネルギーを最小化する。正の吸着の条件下で凸部が一個のとき、図7のグラフ中の実線36で示すように凸部が溶液周辺に位置するところで表面自由エネルギーが最小になる。この場合、溶液は中心から溶液半径だけ外れた位置で安定化する。凸部が2つの場合、図8の実線38で示すように溶液は凸部の中間位置で最も安定化する。溶液の安定位置は正の吸着を考慮しない場合と同様であるが、吸着のエネルギー分だけ表面自由エネルギーは減少して溶液位置の安定性は向上する。
図9(A)は、底面の中心位置を囲むように複数(4個)の凸部を設けた反応容器の実施例を示す。この場合、図5 (B)の凸部2個の場合に比較して溶液位置の安定性が増す。図9(B)は多数個の凸部5を溶液4の溶液周囲あたる場所に配置した例である。これにより(A)に比べてさらに溶液位置の安定性が向上する。
図10は、図9(A)の凸部の代わりに周囲に比べて親水性の高い部分を設けた実施例である。図では、底面の中心位置を囲むように複数(4個)の親水性の高い部分34を設けている。このように、周囲よりも親水性の高い部位を設けることにより、凹凸部を設ける場合と同様に、溶液位置の安定性が向上する。尚、周囲に比べて親水性の高い部分を設ける方法については非特許文献1のFig10.4からFig10.5に記述されている。あるいは、非特許文献2の様に酸素プラズマ照射を用いることも可能である。すなわち、反応容器の側壁および底面に疎水性のPDMS(polydimethylsiloxane)層をコーティングする。次に、上記の凹/凸部の代わりとなる部位を配置させる部分に、酸素プラズマ処理によりPDMS表面のC-HをO-Hに変化させることにより、所望の部位を親水化することができる。図では、4つの親水部位34を設けた場合を示しているが、同様な方法で、図1〜5、9の部位に親水部位を設けてもよい。
図11は1個の温調器金属ブロックの上に複数の反応容器を設けたプレートの実施例を示す。複数の反応容器内の微量な試料について、同じ条件で反応を行うことができる。
図12はヒートリッド9を用いることで、上面のシール材7への液滴付着を抑制する構造を示す。反応容器10が底面2から加熱されたとき、反応容器内の蒸気がシール材に結露して反応溶液が失われる。そこでヒートリッドを設け、これを専用ヒーターによりたとえば100℃に加熱することでシール材への結露を防止する。(A)は反応容器が一個の場合、(B)は複数の反応容器が設けられた場合の例である。
図13は、金属ブロック12の温度を、核酸試料の変性温度Tdnと伸長・アニール温度Texの温度に交互に設定することよって、(B)に示すPCRの温度サイクルを実現するシステムの構成である。反応容器は高い熱伝特性を持った金属底を有しており、PCRの高速化が可能になる。
図14は、変性温度Tdnに設定した金属ブロック12と伸長・アニール温度Texに設定した金属ブロック13を隣接して配置し、反応容器11をそれぞれの金属ブロックの上部を移動させることで、PCRの温度サイクルを実現するシステムの構成である。各金属ブロックの温度は一定であるため、金属ブロック自身の温度の昇降に要する時間が不要となり、PCR時間の大幅な短縮が可能になる。金属ブロック12と金属ブロック13との間には、断熱材14を設けることにより、異なるブロック同士で互いの温度の影響を防ぐことができる。
図15は、変性温度Tdnに設定した金属ブロック17と伸長・アニール温度Texに設定した金属ブロック16を円周上に交互に配置した温調系33を設け、反応容器11をこの円周上を移動させることで、PCRの温度サイクルを実現するシステムの構成である。温調系は過熱、冷却の両機能を備えたペルチェ素子で構成することができる。あるいは加熱系のための電熱ヒーター、冷却のための空気ファンの組み合わせた温調系を構成することも可能である。金属ブロック自身の温度の昇降に要する時間が不要となる上に、すでに投入済み反応容器の増幅プロセスを妨げることなく、時系列的に持ち込まれる新たな反応容器について、即座にシステムに投入し増幅反応に取り掛かることが可能になる。
図16に本発明により反応容器10と励起光源21、ダイクロイックミラー23、レンズ24、フィルタ26、レンズ27、検出器28、からなる検出系32によって構成されるリアルタイムPCR計測装置の一部を示す。反応溶液4には励起光源21から励起光22が照射される。励起光22で励起された色素からの蛍光25は検出器28で計測される。
図16(A)には反応溶液4が容器中央に位置している場合、図16 (B)には反応溶液4が容器の側面に位置している場合を示す。図16(B)のように反応溶液が容器側壁に接していると、励起光22や蛍光25の光路の一部が遮られて信号の強度が低下する。また、反応溶液が底面とは熱伝導率の異なる側壁に接触することで反応溶液の温度サイクルが最適の温度サイクルに追従しなくなる場合がある。本発明により反応溶液を底面中央に位置させることによって、安定した反応を行うことができ、また蛍光検出精度も向上する。
図17(A)は、反応容器の底部の側壁部を同一の材料によって構成した例である。また、(B)は複数の反応容器を並べた場合である。材料には高い熱伝導係数を有するアルミニウムなどの金属を適用することが望ましい。これにより反応溶液の温度が温調器金属ブロック1の温度に高速で追従するようにすることができる。容器の製造にあたり、図1の構成に比較して異種材料の接合の工程を省略することが可能になる利点がある。底部に凸部5を形成する場合は20と同一の材料でこれを加工してもよいし、異種の材料で用いることもできる。また、底部の凹部は材料20をその部分だけ切削することで形成できる。
図18は、反応溶液31の分注器30、温調系33、検出系32を組み合わせたPCR装置の構成例を示す図である。複数の反応容器を有するプレートに対し、順番に分注器30から反応溶液31を滴下する。反応容器の底面に凸部又は凹部を有することにより、容易に反応溶液を底部の中央に位置させることができ、反応を安定に実行することができる。
1: 温調器金属ブロック、2: 反応容器の底面、3: 反応容器の側壁、4: 反応溶液、5: 反応容器の底面に形成された凸部又は凹部、6: オイル、7: 反応容器上面のシール材、9: ヒートリッド、10: 反応容器、11: 複数サンプルに対応する反応容器を備えたプレート、12:温調器金属ブロック、13:温調器金属ブロック、14: 断熱材、15: ペルチェ素子、16: 温度を固定した温調器金属ブロック、17: 温度を固定した温調器金属ブロック, 18:底面コーティング剤、19:接着材による層、20: 反応容器の容器側壁と容器底面を構成する材料、21: 励起光源、22: 励起光、23: ダイクロイックミラー、24: レンズ、25: 蛍光、26: フィルタ、27: レンズ、28: 検出器、29: 反応溶液、30:分注器、31: 反応溶液、32: 検出系、33: 円周上にそれぞれ複数の温度に設定された複数の金属ブロックを有する温調系、34: 反応容器の底面に形成された親水性の高い部分、35: 浸漬仕事を考慮した表面エネルギーの溶液位置依存性、36: 界面への吸着を考慮した表面エネルギーの溶液位置依存性、37: 浸漬仕事を考慮した表面エネルギーの溶液位置依存性、38: 界面への吸着を考慮した表面エネルギーの溶液位置依存性
Claims (13)
- 反応容器を有するプレートと、前記反応容器に保持される溶液の温度を調節する温度調節部とを有する反応装置であって、
前記反応容器は、第1の金属材料で形成された底面と、側壁とで形成され、
前記底面には、前記溶液が前記側壁に接しないように配置されるように設けられた凹又は凸部を有し、
前記温度調節部は、前記第1の金属材料の前記溶液の保持側とは反対側の面と接触する第2の金属材料とを備えること、
を特徴とする核酸増幅用の反応装置。 - 前記反応容器の側壁は樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
- 前記反応容器の側壁は、前記第1の金属材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の反応装置。
- 前記第1,2の金属材料は、アルミ、SUSのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の反応装置。
- 前記凹又は凸部が、前記底面の中心位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の反応装置。
- 前記凹又は凸部が複数個あり、前記底面の中心位置を囲むように配置されていることを特徴とする請求項1記載の反応装置。
- 前記凹又は凸部が、前記第1の金属材料をエンボス加工することにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の反応装置。
- 前記第1の金属材料は表面コーティングされていることを特徴とする請求項1記載の反応装置。
- 前記前記反応容器に保持される溶液量が10nl以上100μl以下であることを特徴とする請求項1記載の反応装置。
- 前記凹又は凸部が底面平坦部と交わる面に外接する円の直径が340μm以上であって、底面平坦部から凹部の最深部までの深さあるいは凸部の最高部までの高さが100μmより大きいことを特徴とする請求項1記載の反応装置。
- 前記凹又は凸部の形成位置に凹または凸部の代わりに周囲よりも親水性の高い領域を形成することを特徴とする請求項1記載の反応装置。
- 前記溶液を第1の温度に調節する第1の温度調節部と、第1の温度とは異なる第2の温度に調節する第2の温度調節部が水平面上に並べて配置され、
前記プレートを、前記第1の温度調節部と前記第2の温度調節部との間で移動させる駆動部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の反応装置。 - 前記反応容器に保持される溶液に光を照射する光源と、前記溶液からの光を検出する検出器とをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の反応装置。
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