JP2012184467A - ボイラ給水系の防食方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ボイラ給水に、ホスホノ基を有する化合物をPO4 3-換算で15〜100mg/Lの濃度になるように添加することを特徴とするボイラ給水系の防食方法である。
【選択図】なし
Description
この際、ボイラ缶内での濃縮を考慮して薬剤を注入するために、給水配管やエコノマイザのような非濃縮部においては、pHが低く、かつ薬剤濃度が低いため、防食皮膜の形成が不充分となる。また、給水配管やエコノマイザでは滞留時間が短く、ボイラ缶内と比較して、低温のために、脱酸素剤による脱酸素も返応速度が遅く、脱酸素が不充分となる。このため、特にエコノマイザのような水温が上昇するにもかかわらず、溶存酸素濃度の高い箇所においては、腐食性が高いため、腐食・孔食発生が生じ、ボイラ稼動の障害の原因となる。
また、給水配管やエコノマイザは、製造後、稼動までの期間は適切な水処理がなされていないことが多く、この間に鋼材表面に発錆が起こるため、新設ボイラの稼動時から腐食が生じているのが実態である。鋼材表面の発錆面は平滑な健全面に比べて、薬剤が均一に作用できないため、より腐食しやすい環境である。
特許文献2には、ビスホスフィノカルボン酸又はその塩を添加するボイラの腐食防止方法が開示されている。
特許文献3には、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、ヒドロキシホスホノ酢酸等のヒドロキシホスホノカルボン酸又はその塩を添加する腐食防止方法が開示されている。
特許文献2も、既に腐食が生じた鋼材表面に対する防食効果については何ら示唆されておらず、これらについても防食効果が低いという問題がある。
特許文献3は、カルシウムを含む水系を対象としており、硬度成分を含まない軟水又は純水を用いるボイラ給水系に対する効果については何ら示唆されておらず、既に腐食が生じた鋼材表面に対する防食効果についても何ら示唆されていない。
本発明は、このような状況下になされたものであり、実質的にカルシウムやマグネシウムの硬度成分を含まないボイラ給水系において、既に腐食が生じている発錆面に対して、給水配管やエコノマイザ等の非濃縮部における防食効果を発揮する防食方法を提供することを課題とする。
[1]ボイラ給水に、ホスホノ基を有する化合物をPO4 3-換算で15〜100mg/Lの濃度になるように添加することを特徴とするボイラ給水系の防食方法。
[2]ホスホノ基を有する化合物が、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物、並びに正リン酸及びその誘導体から選ばれる少なくとも一種の化合物である、上記[1]のボイラ給水系の防食方法。
[3]ホスホノ基を有する化合物が、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、及び正リン酸から選ばれる少なくとも一種である、上記[2]のボイラ給水系の防食方法。
本発明の防食方法における対象水系は、ボイラ水系システムであって、給水種としては、純水給水、逆浸透(RO)給水、軟水給水のいずれも適用可能である。
ボイラの形式は特に制限されず、特殊循環ボイラ、水管ボイラ、丸ボイラ、排熱回収ボイラ等のボイラにおいて広範に使用することができる。
適用するボイラの圧力に特に制限はないが、圧力が高くなりすぎるとホスホノ基を有する化合物が熱分解し易くなるため、好ましくは3.0MPa以下、より好ましくは2.0MPa以下の圧力下で使用することが好ましい。
本発明の防食方法においては、ボイラ給水に対して、ホスホノ基を有する化合物が添加される。ホスホノ基は、下記一般式(3)で表される基である。
一般式(3)におけるR2及びR3であるアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、各種ペンチル基及び各種ヘキシル基等が挙げられる。
一般式(1)におけるR1である、置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、置換基を有していてもよいアルケニル基としては、炭素数2〜12の直鎖状又は分岐状のアルケニル基が挙げられる。
また、置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜12のアリール基、例えばフェニル基、ナフチル基が挙げられ、置換基を有していてもよいアラルキル基としては、炭素数7〜12のアラルキル基、例えばベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。前記置換基としては、例えばカルボキシル基が好適であり、置換基の数については特に制限はない。
一般式(2)におけるAはアルキレン基又はアルキリデン基であり、アルキレン基としては炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が挙げられる。具体的には、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、1−メチルエチレン基、テトラメチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基等が挙げられる。
一方、アルキリデン基としては、炭素数2〜4のアルキリデン基が挙げられ、具体的にはエチリデン基、1,1−プロピリデン基、2,2−プロピリデン基、1,1−ブチリデン基、2,2−ブチリデン基等が挙げられる。
ボイラ給水に対する当該ホスホノ基を有する化合物の添加量は、PO4 3-換算で15〜100mg/Lの濃度になるような量である。ホスホノ基を有する化合物のボイラ給水中の濃度が15mg/L未満であると防食効果が不充分であり、100mg/Lを超えても添加量に相当する効果を得ることができず不経済となる。該濃度が前記範囲にあると、給水配管やエコノマイザ等を効果的に防食することができる。該濃度は30〜100mg/Lの範囲にあることがより好ましい。
ホスホノ基を有する化合物の使用方法は、予め調合した水溶液として添加してもよいし、別々に同一水系に添加してもよいが、系内で均一濃度となるように、エコノマイザの上流より、ボイラ給水に対して流量比例で添加することが好ましい。これにより実質的にカルシウムやマグネシウムの硬度成分を含まない給水配管、エコノマイザ及びボイラ缶内の軟水給水系を併せて効果的に防食することができる。
本発明の防食方法においては、他の添加成分として、既存のアルカリ剤、スケール防止剤、スケール除去剤、脱酸素剤、防食剤、中和性アミン等を併用することができる。これらの他の添加成分は、本発明の目的を阻害しない範囲において、任意に混合してボイラ水系に添加してもよく、また別々に添加してボイラ水系内で混合してもよい。
アルカリ剤は、ボイラ水のpHを一定範囲(例えば、JIS B 8223に示される特殊循環ボイラのボイラ水の管理基準であるpH11.0〜11.8)に維持し、それにより金属腐食を抑制するために用いることができる。
アルカリ剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩等が挙げられる。これらの中では、pH調整効果及び熱分解により二酸化炭素を発生させない観点から、アルカリ金属水酸化物が好ましく、経済性の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等がより好ましい。
上記アルカリ剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
また、水系のpHは8.5以上がよく、好適範囲内でもpHは高い方が防食効果は高いが、ボイラ水系では後段で濃縮が起こるため、pHを高くしすぎると後段の装置の運転に影響を与えることから、好ましくはpH8.5〜10.5、より好ましくは、pH8.5〜10.0、さらに好ましくはpH8.5〜9.5である。
スケール防止剤、スケール除去剤としては、例えば各種リン酸塩や、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、及びそれらのナトリウム塩等の水溶性高分子化合物、ホスホン酸塩,キレート剤等が挙げられる。
脱酸素剤としては、例えばヒドラジン、カルボヒドラジド、1−アミノピロリジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、タンニン(酸)及びその塩、エルソルビン酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩等が挙げられる。
上記脱酸素剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
また、窒素置換式、膜式、真空式等の酸素除去装置と併用してもよい。
中和性アミンとしては、例えばモノエタノールアミン(MEA)、シクロへキシルアミン(CHA)、モルホリン(MOR)、ジエチルエタノールアミン(DEEA)、モノイソプロパノールアミン(MIPA)、3−メトキシプロピルアミン(MOPA)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)等を用いることができる。
上記中和性アミンは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
ボイラ給水のM−アルカリ度やシリカが不足する場合には、アルカリ剤及びケイ酸塩(Na2SiO2等)を、ホスホノ基を有する化合物と併せて添加することで、防食効果がさらに改善される。
アルカリ剤及びケイ酸塩の添加濃度は、給水のM−アルカリ度が5mgCaCO3/L以上、かつシリカが5mgSiO2/L以上、好ましくはM−アルカリ度が10mgCaCO3/L以上、かつシリカが10mgSiO2/L以上、より好ましくはM−アルカリ度が15mgCaCO3/L以上、かつシリカが15mgSiO2/L以上となるように、薬注量を調節するのがよい。
(1)試験例1
図1に示す容量約1.2Lの蓋付き半密閉容器1内に、合成水を1L満たし、pH9となるように調整したのち、支持棒3の両端に固定したテストピース[「SPCC−SB」、エメリー紙#400研磨]4を浸漬し、その後、容器を60℃に加温した湯浴に設置し、1分間に100回転させながら、24時間試験を実施し発錆テストピースを作製した。次にpH9となるように調整した試験液2を1L予め準備し、取り出した発錆テストピースを試験液2に浸漬し、60℃、1分間に100回転の同条件で、46時間試験を実施し、テストピースを引き上げた。その後、JIS K 100に準じてテストピースの後処理を行い、腐食速度を算出した。腐食速度は始めの24時間での発錆テストピースの腐食減量平均値(N=20)を、試験終了後の腐食減量結果から引いて、46時間の結果として算出した。その結果を第1表に示す。
<試験液>
下記の合成水に、第1表に示す濃度となるように、薬剤を添加した液
《合成水の組成》
ベース : 超純水
NaHCO3 :CaCO3として40mg/L
NaCl :Cl-として40mg/L
Na2SO4 :SO4 2-として40mg/L
Na2SiO3 :SiO2として30mg/L
*1:ビスホスフィノカルボン酸:下記式(7)で、m+n=4の場合の濃度換算
*3:HEDP:1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(化学式[5])
*4:ヒドロキシホスホノ酢酸(化学式[6])
また、ホスホノ基を有する化合物を用いた実施例1〜10においては、PO4 3-換算濃度が高いほど、防食効果は高い傾向にあった。
2 試験液
3 支持棒
4 テストピース
Claims (3)
- ボイラ給水に、ホスホノ基を有する化合物をPO4 3-換算で15〜100mg/Lの濃度になるように添加することを特徴とするボイラ給水系の防食方法。
- ホスホノ基を有する化合物が、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、及び正リン酸から選ばれる少なくとも一種である、請求項2に記載のボイラ給水系の防食方法。
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