JP5849409B2 - ボイラ水処理剤及びボイラの水処理方法 - Google Patents
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Description
また、長期間ボイラを停止させる際、防食の観点からボイラ缶内のpHを高く維持することが行われるが、固形アルカリを使用すると、ボイラの運転時に上述のようなアルカリ腐食等のリスクが増すという問題が生じる。
なお、特許文献3には、アミノジオール系化合物を含む蒸気又は凝縮水系用防食剤が開示されているが、これは軟水を補給水とするボイラの蒸気系又は凝縮水系を防食することを目的としており、純水を補給水とする蒸気発生器の缶内の腐食防止を目的とするものではない。
さらに、(2)揮発性アミン等を添加する場合であってボイラの発停を頻繁に行う運転パターンの場合、ボイラ缶体が冷却した際に、防食のために十分なpHを維持できず、ボイラ缶内で腐食が発生、進行するという問題がある。その他、運転準備としてボイラ缶内に水を張ったまま運転開始を待つ期間等においても同様の腐食が懸念される。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
(1)補給水の電気伝導率が1mS/m以下のボイラの水処理剤であって、ジオールアミン類を含有することを特徴とするボイラ水処理剤(以下「ボイラ水処理剤I」ともいう)。
(2)補給水の電気伝導率が1mS/m以下で、かつ電極棒方式で水位を制御するボイラの水処理剤であって、ジオールアミン類及びホウ素系化合物を含有することを特徴とするボイラ水処理剤(以下「ボイラ水処理剤II」ともいう)。
(3)ホウ素系化合物がホウ砂である、上記(2)のボイラ水処理剤。
(4)ジオールアミン類が、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン及び3−アミノ−1,2−プロパンジオールの中から選ばれる少なくとも一種である、上記(1)〜(3)のいずれかのボイラ水処理剤。
(5)補給水の電気伝導率が1mS/m以下のボイラの水処理方法であって、ジオールアミン類を該ボイラ缶内に存在させることを特徴とするボイラの水処理方法(以下「ボイラの水処理方法I」ともいう)。
(6)補給水の電気伝導率が1mS/m以下で、かつ電極棒方式で水位を制御するボイラの水処理方法であって、ジオールアミン類、及びホウ素系化合物を該ボイラ缶内に存在させることを特徴とするボイラの水処理方法(以下「ボイラの水処理方法II」ともいう)。
(7)ホウ素系化合物がホウ砂である、上記(6)のボイラの水処理方法。
(8)ジオールアミン類が、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン及び3−アミノ−1,2−プロパンジオールの中から選ばれる少なくとも一種である、上記(5)〜(7)のいずれかのボイラの水処理方法。
まず、本発明のボイラ水処理剤について説明する。本発明のボイラ水処理剤には、ボイラ水処理剤I及びボイラ水処理剤IIの2つの態様がある。
[ボイラ水処理剤I]
本発明のボイラ水処理剤Iは、補給水の電気伝導率が1mS/m以下のボイラの水処理剤であって、ジオールアミン類を含有することを特徴とする。
本発明のボイラ水処理剤Iは、補給水の電気伝導率が1mS/m以下のボイラ、特に純水給水ボイラに適用される。この補給水としては、脱気したイオン交換水等を用いることができる。また、該補給水の溶存酸素は、0.5mg/L以下であることが好ましい。
本発明のボイラ水処理剤Iに含有されるジオールアミン類においては、水酸基は分子内のいずれかの位置に二つ以上導入されている。
このようなジオールアミン類の具体例としては、1−アミノ−1,2−エタンジオール、2−ジメチルアミノ−1,4−ブタンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ジメチルアミノ−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,4−ブタンジオール、ジエタノールアミン(DEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)、3−アミノ−1,2−プロパンジオール(APD)等が挙げられる。
これらの中では、ジエタノールアミン(DEA)、メチルジエタノールアミン(MDEA)及び3−アミノ−1,2−プロパンジオール(APD)が好ましい。
本発明のボイラ水処理剤Iにおいては、前記ジオールアミン類の一種を単独で含有していてもよく、二種以上を含有していてもよい。
本発明のボイラ水処理剤IIは、補給水の電気伝導率が1mS/m以下で、かつ電極棒方式で水位を制御するボイラの水処理剤であって、ジオールアミン類及びホウ素系化合物を含有することを特徴とする。
ボイラ水処理剤IIは、前述したジオールアミン類と共に、さらにホウ素系化合物を含むことにより、前記問題の解決を図るものである。ホウ素系化合物としては、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸、ホウ酸アンモニウム等が挙げられるが、ホウ砂(四ホウ酸ナトリウムの5水和物及び10水和物)がより好ましい。
ボイラ水処理剤IIは、前述したボイラ水処理剤Iと同様に、缶水中のジオールアミン類の濃度が50mg/L以上、好ましくは100〜2000mg/Lになるように補給水に添加することが望ましい。
また、ボイラ水処理剤IIは、缶水中のホウ素系化合物の濃度が、電気伝導率の観点から、1mg/L以上、好ましくは3〜100mg/Lになるように添加することが望ましい。ジオール類及びホウ素系化合物は、補給水ライン、給水ライン、ボイラ系内、復水ライン等、系内のどこに添加してもよいが、復水〜給水ライン中に注入するのが好ましい。
なお、上記補給水については、前述したボイラ水処理剤Iにおいて説明したとおりである。
[ボイラの水処理方法I]
本発明のボイラの水処理方法Iは、補給水の電気伝導率が1mS/m以下のボイラの水処理方法であって、ジオールアミン類を該ボイラ缶内に存在させることを特徴とする。
当該ボイラの水処理方法Iにおける、ジオールアミン類の種類及び缶水中の存在量については、前述した本発明のボイラ水処理剤Iの説明において示したとおりである。
本発明のボイラの水処理方法IIは、補給水の電気伝導率が1mS/m以下で、かつ電極棒方式で水位を制御するボイラの水処理方法であって、ジオールアミン類及びホウ素系化合物を該ボイラ缶内に存在させることを特徴とする。
当該ボイラの水処理方法IIは、電極棒方式で水位制御を行っている3MPa以下の低圧ボイラに適用される方法であり、前記電極棒方式で水位制御を行っている低圧ボイラの問題点については、前述したボイラ水処理剤IIの説明において示したとおりであり、当該ボイラの水処理方法IIは、この問題点の解決を図るものである。
また、ホウ素系化合物とジオールアミン類とを併用して使用した場合のメリットについては、前述した本発明のボイラ水処理剤IIの説明において示したとおりである。
本発明のボイラの水処理方法において併用される他の水処理剤としては、例えば、pH調整剤、スケール防止剤、スケール除去剤、脱酸素剤(防食剤)、中和性アミン等を挙げることができる。これらの他の水処理剤は、任意に混合して系内に添加してもよく、また別々に添加してボイラ缶内で混合してもよい。
pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、リン酸3ナトリウム、リン酸2ナトリウム、リン酸3ナトリウムとリン酸2ナトリウムを所定の比率で混合したアルカリ金属りん酸塩等が挙げられる。
(スケール防止剤、スケール除去剤)
スケール防止剤、スケール除去剤としては、例えば各種リン酸塩や、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、及びそれらのナトリウム塩等の水溶性高分子化合物、ホスホン酸塩,キレート剤等が挙げられる。
脱酸素剤(防食剤)としては、例えばヒドラジン、カルボヒドラジド、1−アミノピロリジン、1−アミノ−4−メチルピペラジン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン、タンニン(酸)及びその塩、エルソルビン酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩等が挙げられる。
上記脱酸素剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
また、窒素置換式、膜式、真空式等の酸素除去装置と併用してもよい。
中和性アミンとしては、例えばモノエタノールアミン(MEA)、シクロへキシルアミン(CHA)、モルホリン(MOR)、ジエチルエタノールアミン(DEEA)、モノイソプロパノールアミン(MIPA)、3−メトキシプロピルアミン(MOPA)、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)等を用いることができる。
上記中和性アミンは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
(1)停止からの立上げ時に高濃度のアミンが揮発して、復水器のpHが上昇しすぎることがない。
(2)アルカリを添加しすぎることによる弊害(アルカリ腐食)、リン酸を添加しすぎることによる弊害(酸性リン酸腐食やハイドアウト)の可能性を回避や低減ができる。
(3)停止時においても、缶水中に高濃度のジオールアミン類が存在することで腐食を防止できるので、特別に薬品を追加投入する必要がなく、長期の発停においても通常の停止と同じ操作数となる。
試験に用いた装置及び条件は以下に示す通りである。また、ボイラ缶内及び復水系の防食状況を確認するため、ボイラ缶内には炭素鋼製テストピース、復水ラインには銅製テストピースを設置した。
評価装置 :試験用テストボイラ(差圧発信型水位制御方式)
給水 :脱気したイオン交換水(電気伝導率1mS/m以下、溶存酸素0.5mg/L以下)
圧力 :0.8MPa
ブロー率 :2%
運転パターン:(4日運転/3日停止)×3セットの計21日間
復水のpHが9.3となるように、第1表に示す種類のアミンの添加量を調整した際の缶水のpH及び缶内テストピース(炭素鋼製)の腐食速度を測定した。その結果を第1表に示す。
ボイラ缶水のpHが10.3となるように、第2表に示す種類のアミンの添加量を調整
した際の復水のpH及び復水ラインに設置したテストピース(銅製)の腐食速度を測定し
た。その結果を第2表に示す。
試験に用いた装置及び条件は以下に示す通りである。
評価装置 :小型貫流ボイラ(電極棒方式による水位制御)
給水 :脱気したイオン交換水(電気伝導率1mS/m以下、溶存酸素0.5mg/L以下)
圧力 :0.8MPa
ブロー率 :2%
第3表に、実施例1及び比較例5で用いたpH調整剤の種類、及び該pH調整剤のボイラ水濃度を示すと共に、ボイラ水のpH及びボイラ水の電気伝導率を示す。
実施例1では、電気伝導率が上昇し、電極棒が十分作動し、運転水位が安定した。また、缶水のpHもやや上昇した。
Claims (6)
- 補給水の電気伝導率が1mS/m以下で、かつ電極棒方式で水位を制御するボイラの水処理剤であって、ジオールアミン類及びホウ素系化合物を含有し、前記ホウ素系化合物がホウ砂のみであることを特徴とするボイラ水処理剤。
- ジオールアミン類が、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン及び3−アミノ−1,2−プロパンジオールの中から選ばれる少なくとも一種である、請求項1に記載のボイラ水処理剤。
- 補給水の電気伝導率が1mS/m以下で、かつ電極棒方式で水位を制御するボイラの水処理方法であって、ジオールアミン類、及びホウ素系化合物を該ボイラ缶内に存在させ、前記ホウ素系化合物がホウ砂のみであることを特徴とするボイラの水処理方法。
- 補給水の電気伝導率が1mS/m以下で、かつ電極棒方式で水位を制御する3MPa以下の低圧ボイラの水処理方法であって、50mg/L以上のジオールアミン類、及び1〜100mg/Lのホウ素系化合物を該ボイラ缶内に存在させることを特徴とするボイラの水処理方法。
- ジオールアミン類が、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン及び3−アミノ−1,2−プロパンジオールの中から選ばれる少なくとも一種である、請求項3又は4に記載のボイラの水処理方法。
- ホウ素系化合物がホウ砂である、請求項4又は5に記載のボイラの水処理方法。
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