JP2012183048A - 4−ヒドロキシ安息香酸関連物質の製造法 - Google Patents

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哲朗 氏原
Koichiro Miyake
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Abstract

【課題】発酵法による4−ヒドロキシ安息香酸または4−ヒドロキシ安息香酸を前駆体として該微生物が生成する物質の効率的な製造法の提供。
【解決手段】親株の微生物に比べロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物由来のコリスミ酸リアーゼ活性が増強された微生物を培地に培養し、該培地中に4−ヒドロキシ安息香酸または4−ヒドロキシ安息香酸を前駆体として該微生物が生成する物質を生成、蓄積させ、該培地中から4−ヒドロキシ安息香酸または4−ヒドロキシ安息香酸を前駆体として該微生物が生成する物質を採取することを特徴とする4−ヒドロキシ安息香酸または4−ヒドロキシ安息香酸を前駆体として該微生物が生成する物質の製造法。
【選択図】なし

Description

本発明は、抗菌剤であるパラベンの合成原料や液晶のポリマー原料として産業界で広く使われている4−ヒドロキシ安息香酸(p−ヒドロキシ安息香酸)および4−ヒドロキシ安息香酸を前駆体として微生物が生成する物質(以下、4−ヒドロキシ安息香酸関連物質という)の微生物による製造法に関する。
4−ヒドロキシ安息香酸は抗菌剤であるパラベンの合成原料として広く用いられている他、液晶のポリマー原料としても利用されている重要な化学物質である。また、ユビキノンは循環器官用医薬品、健康食品として利用されている重要な化学物質である。
4−ヒドロキシ安息香酸は芳香族アミノ酸などを合成するシキミ酸経路の中間体であるコリスミ酸からubiCによってコードされるコリスミ酸リアーゼによって合成されることが大腸菌を用いた実験により明らかになっている (非特許文献1、2、3)。
また、ユビキノンは大腸菌を初めとする微生物で、4−ヒドロキシ安息香酸を前駆体として生合成されることが明らかになっている(非特許文献4)。
これまでに、大腸菌のコリスミ酸リアーゼ遺伝子 (以下ubiCと略記)を導入することで、Klebsiella pneumoniaeNicotiana tabacumで4−ヒドロキシ安息香酸を生産する試みがなされている(非特許文献5、非特許文献6)他、シキミ酸経路を増強した大腸菌での発酵生産が試みられている (非特許文献7)。このように多数の検討が見られるが、4−ヒドロキシ安息香酸を合成する遺伝子は大腸菌のubiCのみが用いられており他の生物の遺伝子が用いられている例はない。
一方で4−ヒドロキシ安息香酸を前駆体として生産されるユビキノンは多くの生物が有していることが知られており、4−ヒドロキシ安息香酸を生産するミクロバルビファー属細菌の報告があるなど(特許文献1)、他の生物にも4−ヒドロキシ安息香酸の合成遺伝子は存在すると考えられる。そこで、多くの有用微生物で適切に4−ヒドロキシ安息香酸を生産するために、これらの生物における新しいコリスミ酸リアーゼ遺伝子を同定する必要性がある。なぜならば、大腸菌のubiC遺伝子は系統的に異なる種類の微生物では適切に機能しないことが考えられるからである。
そのため、大腸菌以外のubiCを用いた4−ヒドロキシ安息香酸の合成酵素を利用した生産に注目が集まっているが、大腸菌のubiCに類似の配列構造をもつ遺伝子が大腸菌の近縁の生物にしか存在せず、他の生物でのコリスミ酸リアーゼの同定が困難であったことから、そのような報告はまったくなかった。
特開2007−222118
Nichols BP and Green JN (1992) Journal of Bacteriology 174:5309-5316 Siebert M et.al. (1992) FEBS letters 307:347-350 Siebert M et. al. (1994) Microbiology 140:897-904 Meganathan R. (2001) FEMS Microbiology Letters 203:131-139 Mullar et.al. (1995) Appl. Microbiol. Biotechnol. 43:985-988 Siebert M et. al. (1996) Plant Physiology 112:811-819 Baker JA and Frost JW (2001) Biotechnol. Bioeng. 76:376-390
本発明の課題は、コリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAを新規に同定し、該DNAを用いて該コリスミ酸リアーゼ活性が増強された微生物を造成し、該微生物を用いて4−ヒドロキシ安息香酸関連物質をバイオプロセスにより効率的に生産する手段を提供することである。
本発明は、以下の(1)〜(4)に関する。
(1)親株の微生物に比べロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物由来のコリスミ酸リアーゼ活性が増強された微生物を培地に培養し、該培地中に4−ヒドロキシ安息香酸関連物質を生成、蓄積させ、該培地中から4−ヒドロキシ安息香酸関連物質を採取することを特徴とする4−ヒドロキシ安息香酸関連物質の製造法。
(2)親株の微生物に比べロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物由来のコリスミ酸リアーゼ活性が増強された微生物が、親株を下記の[1]〜[6]のいずれかに記載のDNAで形質転換して得られる微生物である、上記(1)記載の製造法。
[1]配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA
[2]配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
[3]配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
[4]配列番号1で表される塩基配列からなるDNA
[5]配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
[6]配列番号1で表される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
(3)親株の微生物がエシェリヒア(Escherichia)属またはロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物である、上記(1)または(2)に記載の製造法。
(4)4−ヒドロキシ安息香酸関連物質が、4−ヒドロキシ安息香酸、ユビキノン8およびユビキノン10から選ばれる物質である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造法。
本発明の製造法に係る蛋白質をコードするDNAを用いることにより、4−ヒドロキシ安息香酸関連物質を効率的に生産する微生物を得ることができ、また、該微生物を用いて4−ヒドロキシ安息香酸関連物質を効率的に製造することができる。
1.本発明の製造法に用いられるDNA
本発明の製造法に用いられるDNAは、ロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物由来のコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAである。
本明細書において、コリスミ酸リアーゼ活性とは、コリスミ酸を4−ヒドロキシ安息香酸に変換する活性を意味する。
また、本明細書において、コリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質とは、具体的には、
[1]配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質、
[2]配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質、および、
[3]配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質、
などをあげることができる。
上記において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質は、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409(1982) 、Gene, 34, 315 (1985) 、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985) 、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985) 等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、例えば配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNAに部位特異的変異を導入することにより、取得することができる。
欠失、置換または付加されるアミノ酸の数は特に限定されないが、上記の部位特異的変異法等の周知の方法により欠失、置換または付加できる程度の数であり、1個から数十個、好ましくは1〜20個、より好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個である。
配列番号2で表されるアミノ酸配列において1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたとは、同一配列中の任意の位置において、1または複数のアミノ酸が欠失、置換または付加されていてもよい。
アミノ酸の欠失または付加が可能なアミノ酸の位置としては、例えば配列番号2で表されるアミノ酸配列のN末端側およびC末端側の1〜数個のアミノ酸をあげることができる。
欠失、置換または付加は同時に生じてもよく、置換または付加されるアミノ酸は天然型と非天然型とを問わない。天然型アミノ酸としては、L−アラニン、L−アスパラギン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン、L−グルタミン酸、グリシン、L−ヒスチジン、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−アルギニン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−プロリン、L−セリン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−チロシン、L−バリン、L−システインなどがあげられる。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸は相互に置換可能である。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2−アミノブタン酸、メチオニン、O-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2−アミノアジピン酸、2−アミノスベリン酸
C群:アスパラギン、グルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸
E群:プロリン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン、ホモセリン
G群:フェニルアラニン、チロシン
また、本発明で用いる微生物が有する蛋白質が、コリスミ酸リアーゼ活性を有するためには、配列番号2で表されるアミノ酸配列との同一性が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有していることが望ましい。
アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、Karlin and AltschulによるアルゴリズムBLAST[Pro. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873(1993)]やFASTA[Methods Enzymol., 183, 63 (1990)]を用いて決定することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTNやBLASTXとよばれるプログラムが開発されている[J. Mol. Biol., 215, 403(1990)]。BLASTに基づいてBLASTNによって塩基配列を解析する場合には、パラメータは例えばScore=100、wordlength=12とする。また、BLASTに基づいてBLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメータは例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合には、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)。

また、本明細書において、ロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物由来のコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAとは、具体的には、
[4][1]〜[3]のいずれかに記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA、
[5]配列番号1で表される塩基配列からなるDNA、
[6]配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA、および、
[7]配列番号1で表される塩基配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA、
などをあげることができる。
上記において「ハイブリダイズする」とは、特定の塩基配列を有するDNAまたは該DNAの一部にDNAがハイブリダイズすることである。したがって、該特定の塩基配列を有するDNAまたはその一部は、ノーザンまたはサザンブロット解析のプローブとして用いることができ、またPCR解析のオリゴヌクレオチドプライマーとして使用できるDNAである。プローブとして用いられるDNAとしては、少なくとも100塩基以上、好ましくは200塩基以上、より好ましくは500塩基以上のDNAをあげることができ、プライマーとして用いられるDNAとしては、少なくとも10塩基以上、好ましくは15塩基以上のDNAをあげることができる。
DNAのハイブリダイゼーション実験の方法はよく知られており、例えば当業者であれば本願明細書に従い、ハイブリダイゼーションの条件を決定することができる。該ハイブリダイゼーションの条件は、モレキュラー・クローニング第2版、第3版(2001年)、Methods for General and Molecular Bacteriology, ASM Press(1994)、Immunology methods manual, Academic press(1996)に記載の他、多数の他の標準的な教科書に従っておこなうことができる。
また、市販のハイブリダイゼーションキットに付属した説明書に従うことによっても、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを取得することができる。市販のハイブリダイゼーションキットとしては、例えば、ランダムプライム法によりプローブを作製し、ストリンジェントな条件でハイブリダイゼーションを行うランダムプライムドDNAラベリングキット(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)などをあげることができる。
上記のストリンジェントな条件とは、DNAを固定化したフィルターとプローブDNAとを50%ホルムアミド、5×SSC(750mmol/lの塩化ナトリウム、75mmol/lのクエン酸ナトリウム)、50mmol/lのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%の硫酸デキストラン、および20μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で42℃で一晩、インキュベートした後、例えば約65℃の0.2×SSC溶液中で該フィルターを洗浄する条件が好ましいが、より低いストリンジェント条件を用いることもできる。ストリンジェンな条件の変更は、ホルムアミドの濃度調整(ホルムアミドの濃度を下げるほど低ストリンジェントになる)、塩濃度および温度条件の変更により可能である。低ストリンジェント条件としては、例えば6×SSCE(20×SSCEは、3mol/lの塩化ナトリウム、0.2mol/lのリン酸二水素ナトリウム、0.02mol/lのEDTA、pH7.4)、0.5%のSDS、30%のホルムアミド、100μg/lの変性させたサケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベートした後、50℃の1×SSC、0.1%SDS溶液を用いて洗浄する条件をあげることができる。また、さらに低いストリンジェントな条件としては、上記した低ストリンジェント条件において、高塩濃度(例えば5×SSC)の溶液を用いてハイブリダイゼーションを行った後、洗浄する条件をあげることができる。
上記した様々な条件は、ハイブリダイゼーション実験のバックグラウンドを抑えるために用いるブロッキング試薬を添加、または変更することにより設定することもできる。上記したブロッキング試薬の添加は、条件を適合させるために、ハイブリダイゼーション条件の変更を伴ってもよい。
上記したストリンジェントな条件下でハイブリダイズ可能なDNAとしては、例えばBLASTやFASTA等を用いて上記したパラメータ等に基づいて計算したときに、配列番号1で表される塩基配列と少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNAをあげることができる。
上記したDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAが、コリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNAであることは、該DNAを発現する組換え体DNAを作製し、該組換え体DNAをコリスミ酸リアーゼ活性を欠損させた宿主細胞に導入して得られる微生物を培養し、(a)得られる培養物から該蛋白質を含む細胞抽出液もしくは膜画分を調整し、該画分を基質であるコリスミ酸と混合し、結果として生成する4−ヒドロキシ安息香酸を検出するNicholsらの方法(Nichols, BP and Green JM, Journal of Bacteriology, 174, 5309-5316(1992))、または、(b)得られる培養物から菌体を破砕しつつ、イソプレノイド化合物の溶媒抽出を行った後、遠心分離により2−ブタノール層を採取し、該ブタノール層のCoQ8を、高速液体クロマトグラフィー(LC-10A 島津製作所製)で、カラムにDevelosil ODS-HG-5(野村化学)を用い、メタノール:n−ヘキサン=8:2の溶液を移動相とし、流速1ml/min、測定波長275nmの条件でCoQ8の生産量を定量分析する方法、
などによって確認できる。
2.本発明の製造法に用いられるDNAの調整
本発明の製造法に用いられる、コリスミ酸リアーゼをコードするDNAはロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物より調製することができる。ロドバクター属に属する微生物としては、具体的には、RhodobactersphaeroidesRhodobacter capsulatus等をあげることができ、より具体的には、Rhodobactersphaeroides ATCC17023、Rhodobactersphaeroides ATCC17029、Rhodobactersphaeroides 2.4.1やRhodobacter sphaeroidesFERM BP−4675をあげることができる。公知の方法(例えば、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー)に従って、ロドバクター属に属する微生物を培養し、該微生物の染色体DNAを単離・精製する。
Rhodobacter sphaeroidesにおいては、染色体DNAの塩基配列は決定されており、Rhodobacter sphaeroides 2.4.1の2種類のゲノムDNA及び5つのプラスミドの塩基配列がNCBIに登録されている(NCBI accession no. NC_007488 and NC_007494)他、Rhodobacter sphaeroides ATCC 17029とATCC 17025のゲノムDNAの塩基配列がORNL(http://genome.ornl.gov)から入手できる。
上記で得られる塩基配列を基に、Rhodobacter sphaeroidesのRsp0662付近の塩基配列に基づいたプライマーを調製し、ゲノムDNAを鋳型として、PCR(PCR Protocols,Academic Press(1990)〕を行うことにより、Rhodobacter属に属する微生物由来のコリスミ酸リアーゼをコードするDNAを含む断片を取得することができる。
また、ゲノムの塩基配列に基づいて設計された合成DNAをプローブとしたハイブリダイゼーション法等により、該DNAを取得することもできる。
取得したDNAをそのまま、あるいは適当な制限酵素等で切断後常法によりベクターに組み込み、通常用いられる塩基配列解析方法、例えば373A・DNAシークエンサー(パーキン・エルマー社製)等を用いたジデオキシ法〔Proc.Natl,Acad.Sci.USA,74,5463(1977)〕により該DNAの塩基配列を決定する。
該DNAを組み込むベクターとしては、pBluescript KS+(ストラタジーン社製)、pDIRECT〔Nucleic Acids Research,18,6069(1990)〕、pCR−Script Amp SK+(ストラタジーン社製)、pT7Blue(ノバジェン社製)、pCR II(インビトロジェン社製)、pCR−TRAP(ジーンハンター社製)およびpNoTAT7(5プライム→3プライム社製)等をあげることができる。
上記のようにして取得された塩基配列を有するDNAとして、例えば、配列番号1で表される塩基配列を有するDNA等をあげることができる。
配列番号1で表される塩基配列を有するDNAとしては、蛋白質のコーディング領域に加え、転写調節領域およびプロモーター領域などを含んでもよいDNAである。
転写調節領域としては、染色体DNA上におけるコーディング領域の5’末端より上流側100塩基、好ましくは50塩基からなるDNAをあげることができ、プロモーター領域としては、−10および−35領域に相当する領域をあげることができる。
3.本発明の製造法に用いられる微生物の造成
本発明の製造法に用いられる、親株の微生物に比べロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物由来のコリスミ酸リアーゼ活性が増強された微生物は、例えば、上記2の方法で得られるDNAを、微生物の染色体DNA上に1以上導入する方法、または、上記2の方法で得られるDNAを含有する自律複製型の組換え体DNAで微生物を形質転換する方法、などにより造成することができる。
上記2の方法で得られるDNAを、微生物の染色体DNA上に1以上導入する方法としては、相同組換えを利用した方法をあげることができる。一般的な相同組換えを利用した方法としては、コリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA断片を、当該DNA断片を導入したい宿主細胞内では自律複製できない薬剤耐性遺伝子を有するプラスミドDNAと連結して作製できる相同組換え用プラスミドを用いる方法をあげることができる。
相同組換えを利用した方法としては、i)該相同組換え用プラスミドを常法により微生物細胞に導入した後、薬剤耐性を指標にして相同組換えによって染色体DNA上に相同組換え用プラスミドが組込まれた形質転換株を選択し、ii)得られた形質転換株を該薬剤を含有しない培地で数時間〜1日培養した後、該薬剤含有寒天培地、および該薬剤非含有寒天培地に塗布し、iii)前者の培地で生育せず、後者の培地で生育できる株を選択する、ことで染色体DNA上において2回目の相同組換えが生じた株を取得する方法をあげることができる。
微生物の細胞内で自律複製できない薬剤耐性遺伝子を有するプラスミドとして、薬剤耐性遺伝子および枯草菌のレバンシュークラーゼ遺伝子sacB(Mol. Microbiol., 6, 1195(1992)) を有するプラスミドを用いて、レバンシュークラーゼが宿主細胞に有害な物質を生産することを利用した選択法 (J.Bacteriol., 174, 5462(1992))を利用して上記2回目の相同組換えが生じた株を取得することもできる。
相同組換え用プラスミドを微生物の細胞に導入する方法としては、微生物の細胞へDNAを導入できる方法であればいずれも用いることができ、例えば、電気穿孔法(Appl. Microbiol. Biotech., 52,541(1999))やプロトプラスト法(J. Bacteriol., 159,306(1984))等をあげることができる。
微生物の染色体DNA上への、上記2の方法で得られるDNAの導入は、例えば、染色体DNA上に多コピー存在する配列を標的として利用して行うことができる。染色体DNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートが利用できる。
微生物としては、コリスミ酸リアーゼを発現することができる微生物であればいずれの微生物でもよいが、好ましくは原核生物、より好ましくはロドバクター属、コリネバクテリウム属、エシェリヒア属またはサルモネラ属に属する微生物、さらに好ましくはロドバクター属またはエシェリヒア属に属する微生物、最も好ましくはロドバクター・スフェロイズまたはエシェリヒア・コリをあげることができる。
また、上記2の方法で得られるDNAを微生物の染色体DNA上に挿入することは、上記2の方法で得られるDNAをトランスポゾンに連結してこれを転移させて染色体DNA上に挿入することによっても得ることができる(特開平2-109985号公報)。
染色体DNA上の、上記2の方法で得られるDNA断片を導入した周辺の領域の塩基配列を決定することや、該DNA断片の一部をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション等により、染色体DNA上の目的の位置に当該DNA断片が導入されたことを確認することができる。
また、上記2の方法で得られるDNAを含有する自律複製型の組換え体DNAで微生物を形質転換する方法は、例えば、宿主となる微生物細胞内で自律複製可能であり、連結するDNAを転写できるプロモーターを有する発現ベクターと、上記2の方法で得られるDNA断片とを連結して作製した組換え体DNAを、宿主微生物細胞内に導入することにより取得することができる。
発現ベクターとしては、エシェリヒア・コリを宿主とする場合、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもロシュ・ダイアグノスティックス社より市販)、pKK233−2(GEヘルスケア社製)、pKK223−3(GEヘルスケア社製)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX−1〔プロメガ(Promega)社製〕、pQE−8(キアゲン(QIAGEN)社製)、pQE−30(QIAGEN社製)、pKYP10(特開昭58−110600)、pKYP200〔Agric.Biol.Chem.,48,669(1984)〕、pLSA1〔Agric.Biol.Chem.,53,277(1989)〕、pGEL1〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82,4306(1985)〕、pBluescript II SK+(ストラタジーン社製)、pBluescript II SK−(ストラタジーン社製)、pTrs30(FERM BP−5407)、pTrs32(FERM BP−5408)、pGHA2(FERM BP−400)、pGKA2(FERM BP−6798)、pTerm2(特開平3−22979、US4686191、US4939094、US5160735)、pEG400〔J.Bacteriol.,172,2392(1990)〕、pGEX(GEヘルスケア社製)、pETシステム(ノバジェン社製)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194、pTrxFus(インビトロジェン社製)、pMAL−c2(New England Biolabs社製)、pUC18〔gene,33,103(1985)〕、pUC19〔Gene,33,103(1985)〕、pSTV29(タカラバイオ社製)、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUC118(タカラバイオ社製)、pPA1(特開昭63−233798)等を例示することができる。
また、ロドバクター・スフェロイズを宿主とする場合は、pEG400、pBBR 〔Gene,166,177(1995)〕、pBBR122(MoBiTec社製)などを例示することができる。
プロモーターとしては、宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、エシェリヒア・コリを宿主とする場合、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SP01プロモーター、SP02プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrpx2)、tacプロモーター、letIプロモーター、lacT7プロモーター、letIプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
ロドバクター属細菌を宿主にする場合、リボソームRNA遺伝子に存在するプロモーターを用いることが好ましい。また、リボソーム結合配列であるシャイン−ダルガノ(Shine−Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミドを用いることが好ましい。
目的とするDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、構造遺伝子直下に転写終結配列を配置することが望ましい。
上記のように調製した組換え体DNAの微生物への導入は、これまでに報告されている形質転換法に従って行うことができる。そのような方法としては例えば、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))や、増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法(Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E., Gene, 1, 153(1977))などがある。あるいは、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang,S.and Choen,S.N.,Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979); Bibb, M.J., Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature, 274, 398 (1978); Hinnen, A., Hicks, J. B. and Fink, G. R., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 1929 (1978))も応用できる。ロドバクター属細菌へのDNA断片導入法としては、接合伝達による方法、例えば、Bio/Technology,1,784−791(1983)やGene,118,145−146(1992)等に記載の方法をあげることができる。また、エレクトロポレーション法を用いることもできる。エレクトロポレーションは市販の装置、たとえば、Gene Pulser II(バイオラッド社製)を用いることができる。
4.本発明の4−ヒドロキシ安息香酸関連物質の製造法
本明細書において、4−ヒドロキシ安息香酸関連物質とは、4−ヒドロキシ安息香酸、ユビキノン8およびユビキノン10から選ばれる物質、好ましくは、4−ヒドロキシ安息香酸またはユビキノン8、さらに好ましくは、4−ヒドロキシ安息香酸をあげることができる。
本発明の4−ヒドロキシ安息香酸関連物質の製造法は、上記3記載の方法で造成される微生物を培地で培養して、4−ヒドロキシ安息香酸関連物質を培養物中に生成蓄積させ、該培養物から4−ヒドロキシ安息香酸関連物質を採取することを特徴とする製造法である。
使用する培地は、微生物を用いた有用物質発酵生産において従来より用いられてきた培地を用いることができる。すなわち、炭素源、窒素源、無機イオンおよび必要に応じその他の有機成分を含有する通常の培地を用いることができる。
炭素源としては、グルコース、シュクロース、ラクトース、ガラクトース、フラクトースやでんぷんの加水分解物などの糖類、グリセロールやソルビトールなどのアルコール類、フマール酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸類を用いることができる。
窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有機窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を用いることができる。
有機微量栄養源としては、ビタミンB1、L−ホモセリンなどの要求物質または酵母エキス等を適量含有させることが望ましい。これらの他に、必要に応じて、リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加される。
なお、本発明で用いる培地は、炭素源、窒素源、無機イオン及び必要に応じてその他の有機微量成分を含む培地であれば、天然培地、合成培地のいずれでもよい。
培養は好気的条件下で1〜10日間実施するのが好ましく、培養温度は24℃〜37℃、培養中のpHは5〜9とするのが好ましい。
尚、pH調整には無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ性物質、更にアンモニアガス等を使用することができる。
培養物からの4−ヒドロキシ安息香酸関連物質の採取は通常イオン交換樹脂法、沈殿法その他の公知の方法を組み合わせることにより実施できる。なお、菌体内に4−ヒドロキシ安息香酸関連物質が蓄積する場合には、例えば菌体を超音波などにより破砕し、遠心分離によって菌体を除去して得られる上清からイオン交換樹脂法などによって、4−ヒドロキシ安息香酸関連物質を採取することができる。
以下に、本願発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物由来のコリスミ酸リアーゼをコードするDNAを発現するプラスミドの造成
Rhodobacter sphaeroides KY4113株(FERM BP-4675)を常法により培養し、フェノール・クロロホルム抽出にて染色体DNAを抽出した後、エタノール沈殿にて該染色体DNAを精製した。
該染色体DNAを鋳型に、配列番号3および4で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとし、Takara LA-Taq(タカラバイオ社製)および添付のバッファーを用いてPCRを行った。該PCRにより増幅された約0.3kbのDNA断片と、プラスミドベクターpKK223-3をEcoRI、HindIIIで処理したのち、タカラライゲーションキット (タカラバイオ社製)を用いて連結し、プラスミドpKKRsp0662を得た。
また、該染色体DNAを鋳型に、配列番号5および6で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとし、Takara LA-Taq(タカラバイオ社製)および添付のバッファーを用いてPCRを行った。該PCRにより増幅された約0.3kbのDNA断片と、プラスミドベクターpBBR122をEcoRI、HindIIIで処理したのち、タカラライゲーションキット (タカラバイオ社製)を用いて連結し、プラスミドpBBRsp0662を得た。
同様に、常法により調製したエシェリヒア・コリ W3110株のゲノムDNAを鋳型に、配列番号7および8で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとし、Takara LA-Taq(タカラバイオ社製)および添付のバッファーを用いてPCRを行った。該PCRにより増幅された約0.3kbのDNA断片と、プラスミドベクターpBBR122をEcoRI、HindIIIで処理したのち、タカラライゲーションキット (タカラバイオ社製)を用いて連結し、プラスミドpBBREcUbiCを得た。
大腸菌ubiC破壊株の造成
実施例1で取得したDNAが実際にコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードしているか否かを調べるために、大腸菌のubiC遺伝子を欠損させた大腸菌株を以下に記載の方法により造成した。
配列番号9および10で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとし、常法により得られたエシェリヒア・コリW3110株のゲノムDNAを鋳型にPCRを行い、ubiC遺伝子の開始コドン付近から、その上流約1500bpの領域を増幅した。
次に、配列番号11および12で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとし、常法により得られたエシェリヒア・コリ W3110株のゲノムDNAを鋳型にPCRを行い、ubiC遺伝子の終止コドン付近から、その下流約1500bpの領域を増幅した。
同様に、配列番号13および14で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとし、クローニングベクターpHSG396のDNAを鋳型にPCRを行い、cat遺伝子の上流約200bpから下流約100bpまでを増幅した。
上記のDNA断片の増幅に用いられたプライマー配列のうち、配列番号10と13, 11と14はそれぞれの5'末端に相補的な配列を有しており、得られる増幅産物がマーカー遺伝子であるcat遺伝子を挟み込んだ形で連結できるように設計されている。
上記のPCRにより増幅された、ubiC遺伝子の上流約1500bpのDNA断片、ubiC遺伝子の下流約1500bpのDNA断片およびcat遺伝子を含むDNA断片を等モルの比率で混合したものを鋳型とし、配列番号9および12で表される塩基配列からなるDNAをプライマーセットとし、PCRを行った。反応液をアガロースゲル電気泳動して約4kbのDNA断片をQiaquick Gel Extraction Kitを用いて分離し、cat断片が挿入されたubiC周辺領域を含むDNA断片を得た。
次にλリコンビナーゼをコードする遺伝子を含むプラスミドpKD46[Datsenko, K.A., Warner, B.L., Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America, Vol. 97. 6640-6645(2000)]を保持するエシェリヒア・コリ W3110株に、上記で取得したcat断片の挿入されたubiC周辺領域を含むDNA断片をエレクトロポレーションにより導入した。
得られた形質転換体を、25μg/mlのクロラムフェニコールを含むLB寒天プレートに塗布して培養し、クロラムフェニコール耐性コロニーを選択することで、ubiC遺伝子がcat遺伝子に置換された構造をもつW3110ΔubiC株を取得した。
大腸菌ubiC破壊株の相補実験
実施例1で取得したRhodobacter sphaeroidesのコリスミ酸リアーゼをコードするDNAを含むプラスミドが実際に大腸菌のubiC破壊株を相補できるか否かを以下の方法にて調べた。
コントロールとしてのエシェリヒア・コリW3110株を、実施例1で造成したpKKRsp0662および空ベクターpKK223-3で形質転換し、それぞれ、W3110/pKKRsp0662株およびW3110/pKK223-3株を得た。同様に、実施例2で得られたW3110ΔubiC株を、pKKRsp0662および空ベクターpKK223-3で形質転換し、それぞれ、W3110ΔubiC/pKK223-3株およびW3110ΔubiC/pKKRsp0662株を得た。
これらの株を30mlのM9最小培地を入れた300ml三角フラスコで30℃、220rpmで24時間培養した。
培養終了後、各々の培養液を10倍濃縮し、各々の濃縮液300μlに2−ブタノール300μlおよびガラスビーズ300μlを加え、マルチビーズショッカーMB−200(安井器械社製)で5分間菌体破砕しつつ、イソプレノイド化合物の溶媒抽出を行った後、遠心分離により2−ブタノール層を採取した。該ブタノール層中のCoQ8を、高速液体クロマトグラフィー(LC-10A 島津製作所製)で定量分析することにより、形質転換体によるCoQ8の生産量を算定した。カラムはDevelosil ODS-HG-5(野村化学)を用い、メタノール:n−ヘキサン=8:2の溶液を移動相とし、流速1ml/min、測定波長275nmの条件で分析した。結果を第1表に示す。
Figure 2012183048
以上の結果より、pKKRsp0662で形質転換したW3110 ΔubiC株のCoQ8生産量が、空ベクターで形質転換したW3110 ΔubiC株のCoQ8生産量よりも多かったことから、Rhodobacter sphaeroidesのコリスミ酸リアーゼをコードするDNAが大腸菌のubiC遺伝子を相補できることが確認された。
大腸菌を用いた4−ヒドロキシ安息香酸の生産
エシェリヒア・コリW3110、実施例3で造成したW3110ΔubiC/pKK223-3およびW3110ΔubiC/pKKRsp0662を、30mlのM9最小培地を入れた300ml三角フラスコで30℃、220rpmで24時間培養した。培養終了後培養液を遠心し、上清を得た。得た上清を高速液体クロマトグラフィーLC-10A 島津製作所製)で定量分析することにより、形質転換体による4−ヒドロキシ安息香酸の生産量を算定した。
カラムはDevelosil ODS-HG-5(野村化学)を用い 水:アセトニトリル:酢酸 = 85:10:5の溶液を移動相とし、流速1ml/L, 測定波長250nmの条件で分析した。結果を第2表に示す。
Figure 2012183048
以上の結果から、Rhodobacter sphaeroidesのコリスミ酸リアーゼをコードするDNAを含有する組換え体DNAを大腸菌に発現させることにより、該培養液中に4-ヒドロキシ安息香酸を蓄積させることができることが示された。
ロドバクターを用いた4−ヒドロキシ安息香酸の生産
Rhodobacter sphaeroides由来のコリスミ酸リアーゼ活性の増強による4−ヒドロキシ安息香酸の生産が、ロドバクター属でも行えるかどうかを調べた。
まず、Rhodobacter sphaeroides KY4113株を、実施例1で造成したpBBRsp0662、pBBREcUbiC及び空ベクターpBBR122で形質転換し、それぞれKY4113/pBBR122株、KY4113/pBBREcUbiC株およびKY4113/pBBRsp0662株を得た。
グルコース40g/l, コーンスティープリカー 40ml/l、硫酸アンモニウム 6g/l, リン酸二水素カリウム 2g/l, 硫酸マグネシウム 0.5 g/L, 炭酸カルシウム 10g/L, pH7.2 に調整した培地に20ug/mlのカナマイシンを添加し、これを試験管に8ml入れた。この培地で上記の株を30℃、300rpmで72時間培養した。培養終了後培養液を遠心し、上清を得た。得た上清を高速液体クロマトグラフィーLC-10A 島津製作所製)で定量分析することにより、形質転換体による4−ヒドロキシ安息香酸の生産量を算定した。
Figure 2012183048
以上の結果から、Rhodobacter sphaeroidesのコリスミ酸リアーゼをコードするDNAを含有する組換え体DNAで形質転換したRhodobacter sphaeroides KY4113株を培養することにより、該培養液中の4−ヒドロキシ安息香酸の生産量が増大することが確認された。
また、その増加量は大腸菌のubiC遺伝子を用いたときよりも多く、安定していた。ロドバクター属における4−ヒドロキシ安息香酸の生産量は大腸菌のそれよりも有意に多く、ロドバクター属を用いた4−ヒドロキシ安息香酸生産においてRhodobacter sphaeroidesのコリスミ酸リアーゼの優位性が示された。
配列番号3−人工配列の説明:合成DNA
配列番号4−人工配列の説明:合成DNA
配列番号5−人工配列の説明:合成DNA
配列番号6−人工配列の説明:合成DNA
配列番号7−人工配列の説明:合成DNA
配列番号8−人工配列の説明:合成DNA
配列番号9−人工配列の説明:合成DNA
配列番号10−人工配列の説明:合成DNA
配列番号11−人工配列の説明:合成DNA
配列番号12−人工配列の説明:合成DNA
配列番号13−人工配列の説明:合成DNA
配列番号14−人工配列の説明:合成DNA

Claims (4)

  1. 親株の微生物に比べロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物由来のコリスミ酸リアーゼ活性が増強された微生物を培地に培養し、該培地中に4−ヒドロキシ安息香酸または4−ヒドロキシ安息香酸を前駆体として該微生物が生成する物質(以下、4−ヒドロキシ安息香酸関連物質という)を生成、蓄積させ、該培地中から4−ヒドロキシ安息香酸関連物質を採取することを特徴とする4−ヒドロキシ安息香酸関連物質の製造法。
  2. 親株の微生物に比べロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物由来のコリスミ酸リアーゼ活性が増強された微生物が、親株を下記の[1]〜[6]のいずれかに記載のDNAで形質転換して得られる微生物である、請求項1記載の製造法。
    [1]配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる蛋白質をコードするDNA
    [2]配列番号2で表されるアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が欠失、置換または付加されたアミノ酸配列からなり、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
    [3]配列番号2で表されるアミノ酸配列と80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
    [4]配列番号1で表される塩基配列からなるDNA
    [5]配列番号1で表される塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
    [6]配列番号1で表される塩基配列と80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつコリスミ酸リアーゼ活性を有する蛋白質をコードするDNA
  3. 親株の微生物がエシェリヒア(Escherichia)属またはロドバクター(Rhodobacter)属に属する微生物である、請求項1または2に記載の製造法。
  4. 4−ヒドロキシ安息香酸関連物質が、4−ヒドロキシ安息香酸、ユビキノン8およびユビキノン10から選ばれる物質である請求項1〜3のいずれかに記載の製造法。

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