具体的な実施形態の説明
本発明は、クラミジア感染の診断、予防及び治療に有用な抗原の組み合わせを含む組成物、かかる抗原をコードするポリヌクレオチド、及びそれらの使用方法に関する。本発明の抗原は、クラミジア抗原のポリペプチド及びその免疫原性フラグメントである。
特に、本発明の組成物は、2以上のクラミジアタンパク質又はその免疫原性フラグメントの組み合わせを含み得る。かかるタンパク質は、Swib(Ct-460としても知られる)、Momp(Ct-681としても知られる主要外膜タンパク質)、Ct-858、Ct-875、Ct-622、Ct-089(CopNとしても知られる)、PmpGのパッセンジャードメイン(Ct-871としても知られるPmpGpd)、及びPmpDのパッセンジャードメイン(Ct-812としても知られるPmpDpd)から選択され得る。
例えば、本発明の組成物は、Ct-089及びCt-858又はそれらの免疫原性フラグメント、及び場合により、例えばMomp、Ct-875、Ct-622、PmpGpd及びPmpDpdから選択し得るさらなる抗原を含み得る。更なる例では、本発明の組成物は、Ct-875及びCt-858又はそれらの免疫原性フラグメント、及び場合により、例えばMomp、Ct-622、Ct-089、PmpGpd及びPmpDpdから選択し得るさらなる抗原を含み得る。
例えば、本発明の組成物は、クラミジアポリペプチド又はその免疫原性フラグメントの以下の組み合わせのうち1つを含み得る:
1. Momp、PmpDpd、Ct-858、Ct-089、Swib
1'. PmpDpd、Ct-858、Ct-089、Swib
2. Momp、PmpDpd、Ct-858、Ct-622、Ct-089、Swib
3. Momp、PmpDpd、Ct-858、PmpGpd、Ct-622、Ct-089
4. Ct-858、Ct-875、Ct-622、Ct-089
5. Ct-858、Ct-875、Ct-089
5'.PmpDpd、Ct-858、Ct-875、Ct-089
6. Momp、PmpD、Ct-858、PmpGpd、Ct-089
上記組み合わせの全てには、Ct-089及びCt-858が含まれる。
さらなるセットの例では、本発明の組成物は、以下の組み合わせのうち1つを含み、但し、該組み合わせは全てCt-089及びCt-858を含む:
1a. Momp、PmpDpd、Ct-858、PmpGpd及びCt-089の5個全て
1'a. PmpDpd、Ct-858、Ct-089、Swibのうち3個
2a. Momp、PmpDpd、Ct-858、Ct-622、Ct-089及びSwibのうち5個
3a. Momp、PmpDpd、Ct-858、PmpGpd、Ct-622及びCt-089のうち5個
4a. Ct-858、Ct-875、Ct-622及びCt-089のうち3個
5a. Ct-858、Ct-875及びCt-089のうち2個
5'a. PmpDpd、Ct-858、Ct-875、Ct-089のうち3個
6a. Momp、PmpD、Ct-858、PmpGpd及びCt-089のうち4個
又はあるいは、
1a”. Swib、Momp、PmpDpd、Ct-858、PmpGpd及びCt-089のうち5個
本発明の組成物の他の例は、クラミジアポリペプチド又はその免疫原性フラグメントの以下の組み合わせのうち1つを含み得る:
1b. Momp、PmpDpd、Ct-858、Ct-875、Swib、Ct-089
1b'. PmpDpd、Ct-858、Ct-875、Swib、Ct-089
2b. Momp、PmpDpd、Ct-858、Ct-622、Ct-875、Swib、Ct-089
3b. Momp、PmpDpd、Ct-858、PmpGpd、Ct-622、Ct-875、Ct-089
4b. Ct-858、Ct-875
5b. Momp、Ct-858、Ct-875、Ct-089
5b'. Momp、Ct-858、Ct-875
6b. Momp、PmpD、Ct-858、PmpGpd、Ct-875、Ct-089
上記組み合わせは全て、Ct-875及びCt-858を含む。
さらなるセットの例では、本発明の組成物は、以下の組み合わせのうち1つを含み、但し、該組み合わせは全てCt-875及びCt-858を含む:
1c. Swib、Momp、PmpDpd、Ct-858、PmpGpd及びCt-875のうち5個
1c'. PmpDpd、Ct-858、Ct-0875、Swibのうち3個
2c. Momp、PmpDpd、Ct-858、Ct-622、Ct-875及びSwibのうち5個
3c. Momp、PmpDpd、Ct-858、PmpGpd、Ct-622及びCt-875のうち5個
4c. Ct-858、Ct-875、Ct-622及びCt-089のうち3個
5c'. PmpDpd、Ct-858、Ct-875、Ct-089のうち3個
6c. Momp、PmpD、Ct-858、PmpGpd及びCt-875のうち4個
本発明の組成物は、2以上のクラミジアタンパク質又はその免疫原性フラグメント、例えば3、4、5、6、7、8、9若しくは10個のタンパク質又は免疫原性フラグメントを含む。番号1〜6、1a〜6a、1b〜6b及び1c〜6c(例えば、1〜6及び1a〜6a)として上記に列挙したそれぞれの組み合わせを含む組成物では、該組み合わせは、さらなるクラミジア抗原、例えば1つのさらなるクラミジア抗原を含み得るか、或いは列挙したもの以外のクラミジア抗原は含み得ない。例えば、組成物1a”は、列挙したそれらのクラミジア抗原の組み合わせである5個の抗原のみを含み、他の抗原を含まず、又は組成物1a”は列挙したクラミジア抗原のうち5個の組み合わせ(例えば、列挙した6個の抗原全て、又は列挙した6個の抗原のうち5個に他のクラミジア抗原1つを加えたもの)、またその他組成物2〜6、2a〜6a、1b〜6b及び1c〜6c(例えば、2〜6及び2a〜6a)を含み得る。
PmpD及びPmpGのパッセンジャードメインの場合には、これらはPmpD若しくはPmpG抗原又はポリヌクレオチドのより大きな部分、例えば完全長のPmpD若しくはPmpG又はそれらのフラグメントと関連して存在しうるが、但し、該フラグメントはパッセンジャードメインを含む。
Momp及びSwibタンパク質又は免疫原性フラグメントは、例えばクラミジア・トラコマチスから得ることができ、又はクラミジアの他の種から得ることができる。「Ct」で表される上記の抗原は、クラミジア・トラコマチスタンパク質又は免疫原性フラグメントであり得、又は場合によっては、それらは異なる種のクラミジア(すなわち、クラミジア・トラコマチス以外のクラミジア種)由来の等価タンパク質であり得る。一例としては、本発明の組成物中の全ての抗原は、クラミジア・トラコマチス由来である。
本発明の組成物は、他に、Swib(Ct-460としても知られる)、Momp(Ct-681としても知られる主要外膜タンパク質)、Ct-858、Ct-875、Ct-622、Ct-089、PmpGのパッセンジャードメイン(Ct-871としても知られるPmpGpd)及びPmpDのパッセンジャードメイン(Ct-812としても知られるPmpDpd)から選択し得る2以上のクラミジアタンパク質又は免疫原性フラグメントの組み合わせ、例えば1〜6、1a〜6a、1b〜6b及び1c〜6c(例えば、1〜6)として上記に列挙した抗原の組み合わせ、をコードするポリヌクレオチドを含み得る。本発明のポリヌクレオチドの組成物は、本明細書に記載の本発明の抗原の組み合わせ(例えば、Ct-858及びCt-875)をコードするものを含む。異なる抗原をコードするポリヌクレオチドは、別々の核酸として存在し得るか、又は単一の核酸、若しくは別々のかつ組み合わせた核酸の組み合わせとして共に存在し得る。
以下のとおり、本発明の組成物中で可能で、上記に列挙した抗原の一部について、ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列を規定する。
配列識別記号の詳細な説明
配列番号:1 クラミジア・トラコマチスLGVII血清型(LGVII血清型はLII血清型とも表される)由来のSwibとしても知られるCt-460のcDNA配列である。
配列番号:2 クラミジア・トラコマチスLGVII血清型由来のCt-460のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:1でコードされる。
配列番号:3 クラミジア・トラコマチスF血清型由来の主要外膜タンパク質(Momp)として知られるクラミジア抗原のcDNA配列である。
配列番号:4 クラミジア・トラコマチスF血清型由来の主要外膜タンパク質(Momp)として知られるクラミジア抗原のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:3で表される。
配列番号:5 クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:6 Ct-858クラミジア・トラコマチスE血清型のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:5でコードされる。
配列番号:7 クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:8 クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質で配列番号:7でコードされる。
配列番号:9 クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-622のcDNA配列である。
配列番号:10 クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-622のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:9でコードされる。
配列番号:11 クラミジア・トラコマチスLGVII血清型由来のCt-871としても知られるPmpGのパッセンジャードメインのcDNA配列である。
配列番号:12 クラミジア・トラコマチスLGVII血清型由来のCt-871としても知られるPmpGのパッセンジャードメインのタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:11でコードされる。
配列番号:13 クラミジア・トラコマチスLGVII血清型由来のCt-812としても知られるPmpDのパッセンジャードメインのcDNA配列である。
配列番号:14 クラミジア・トラコマチスLGVII血清型由来のCt-812としても知られるPmpDのパッセンジャードメインのタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:13でコードされる。
配列番号:15 クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:16 クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:15でコードされる。
配列番号:17 オウム病クラミジア由来の主要外膜タンパク質(Momp)としても知られるクラミジア抗原のcDNA配列である。
配列番号:18 オウム病クラミジア由来の主要外膜タンパク質(Momp)としても知られるクラミジア抗原のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:17でコードされる。
配列番号:19 クラミジア・ニューモニエ由来の主要外膜タンパク質(Momp)としても知られるクラミジア抗原のcDNAである。
配列番号:20 クラミジア・ニューモニエ由来の主要外膜タンパク質(Momp)としても知られるクラミジア抗原のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:19でコードされる。
配列番号:21 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:22 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:21でコードされる。
配列番号:23 クラミジア・ムリダルム由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:24 クラミジア・ムリダルム由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:23でコードされる。
配列番号:25 オウム病クラミジア由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:26 オウム病クラミジア由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:25でコードされる。
配列番号:27 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-871としても知られるPmpGのcDNA配列である。
配列番号:28 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-871としても知られるPmpGのタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:27でコードされる。
配列番号:29 クラミジア・ムリダルム由来のCt-871としても知られるPmpGのcDNA配列である。
配列番号:30 クラミジア・ムリダルム由来のCt-871としても知られるPmpGのタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:29でコードされる。
配列番号:31 オウム病クラミジア由来のCt-871としても知られるPmpGのcDNA配列である。
配列番号:32 オウム病クラミジア由来のCt-871としても知られるPmpGのタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:31でコードされる。
配列番号:33 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:34 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-858のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:33でコードされる。
配列番号:35 クラミジア・ムリダルム由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:36 クラミジア・ムリダルム由来のCt-858のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:35でコードされる。
配列番号:37 オウム病クラミジア由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:38 オウム病クラミジア由来のタンパク質配列であり、該タンパク質配列は配列番号:37でコードされる。
配列番号:39 クラミジア・ニューモニエ由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:40 クラミジア・ニューモニエ由来のCt-858のタンパク質配列であり、該タンパク質で配列番号:39でコードされる。
配列番号:41 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-812としても知られるPmpDのcDNA配列である。
配列番号:42 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-812としても知られるPmpDのタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:41でコードされる。パッセンジャードメインはアミノ酸31〜1203に及ぶ。
配列番号:43 クラミジア・ムリダルム由来のCt-812としても知られるPmpDのcDNA配列である。
配列番号:44 クラミジア・ムリダルム由来のCt-812としても知られるPmpDのタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:43でコードされる。
配列番号:45 オウム病クラミジア由来のCt-812としても知られるPmpDのcDNA配列である。
配列番号:46 オウム病クラミジア由来のCt-812としても知られるPmpDのタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:45でコードされる。
配列番号:47 クラミジア・トラコマチスLGVII血清型由来のCt-681としても知られる主要外膜タンパク質(Momp)として知られるクラミジア抗原のcDNA配列である。
配列番号:48 クラミジア・トラコマチスLGVII血清型由来のCt-681としても知られる主要外膜タンパク質(Momp)として知られるクラミジア抗原のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:47でコードされる。
配列番号:49 クラミジア・トラコマチスJ血清型由来のCt-681としても知られる主要外膜タンパク質(Momp)として知られるクラミジア抗原のcDNA配列である。
配列番号:50 クラミジア・トラコマチスJ血清型由来のCt-681としても知られる主要外膜タンパク質(Momp)としても知られるクラミジア抗原のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:49でコードされる。
配列番号:51 クラミジア・トラコマチスH血清型由来のCt-681としても知られる主要外膜タンパク質(Momp)として知られるクラミジア抗原のcDNA配列である。
配列番号:52 クラミジア・トラコマチスH血清型由来のCt-681としても知られる主要外膜タンパク質(Momp)として知られるクラミジア抗原のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:51でコードされる。
配列番号:53 クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-681としても知られる主要外膜タンパク質(Momp)として知られるクラミジア抗原のcDNA配列である。
配列番号:54 クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-681としても知られる主要外膜タンパク質(Momp)として知られるクラミジア抗原のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:53でコードされる。
配列番号:55 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-681としても知られる主要外膜タンパク質(Momp)として知られるクラミジア抗原のcDNA配列である。
配列番号:56 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-681としても知られる主要外膜タンパク質(Momp)として知られるクラミジア抗原のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:55でコードされる。
配列番号:57 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-622のcDNA配列である。
配列番号:58 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-622のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:57でコードされる。
配列番号:59 オウム病クラミジア由来のCt-622のcDNA配列である。
配列番号:60 オウム病クラミジア由来のCt-622のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:59でコードされる。
配列番号:61 クラミジア・ニューモニエ由来のCt-622のcDNA配列である。
配列番号:62 クラミジア・ニューモニエ由来のCt-622のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:61でコードされる。
配列番号:63 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のSwibとしても知られるCt-460のcDNA配列である。
配列番号:64 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のSwibとしても知られるCt-460のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:63でコードされる。
配列番号:65 クラミジア・ムリダルム由来のSwibとしても知られるCt-460のcDNA配列である。
配列番号:66 クラミジア・ムリダルム由来のSwibとしても知られるCt-460のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:65でコードされる。
配列番号:67 オウム病クラミジア由来のSwibとしても知られるCt-460のcDNA配列である。
配列番号:68 オウム病クラミジア由来のSwibとしても知られるCt-460のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:67でコードされる。
配列番号:69 クラミジア・ニューモニエ由来のSwibとしても知られるCt-460のcDNA配列である。
配列番号:70 クラミジア・ニューモニエ由来のSwibとしても知られるCt-460のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:69でコードされる。
配列番号:71 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:72 クラミジア・トラコマチスD血清型由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:71でコードされる。
配列番号:73 クラミジア・ムリダルム由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:74 クラミジア・ムリダルム由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:73でコードされる。
配列番号:75 オウム病クラミジア由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:76 オウム病クラミジア由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:75でコードされる。
配列番号:77 クラミジア・ニューモニエ由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:78 クラミジア・ニューモニエ由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:77でコードされる。
配列番号:79 クラミジア・トラコマチスA血清型由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:80 クラミジア・トラコマチスA血清型由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:79でコードされる。
配列番号:81 クラミジア・トラコマチスB血清型由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:82 クラミジア・トラコマチスB血清型由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:81でコードされる。
配列番号:83 クラミジア・トラコマチスG血清型由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:84 クラミジア・トラコマチスG血清型由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:83でコードされる。
配列番号:85 クラミジア・トラコマチスH血清型由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:86 クラミジア・トラコマチスH血清型由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:85でコードされる。
配列番号:87 クラミジア・トラコマチスI血清型由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:88 クラミジア・トラコマチスI血清型由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:87でコードされる。
配列番号:89 クラミジア・トラコマチスJ血清型由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:90 クラミジア・トラコマチスJ血清型由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:89でコードされる。
配列番号:91 クラミジア・トラコマチスK血清型由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:92 クラミジア・トラコマチスK血清型由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:91でコードされる。
配列番号:93 クラミジア・トラコマチスL2血清型由来のCt-089のcDNA配列である。
配列番号:94 クラミジア・トラコマチスL2血清型由来のCt-089のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:93でコードされる。
配列番号:95 クラミジア・トラコマチスA血清型由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:96 クラミジア・トラコマチスA血清型由来のCt-858のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:95でコードされる。
配列番号:97 クラミジア・トラコマチスB血清型由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:98 クラミジア・トラコマチスB血清型由来のCt-858のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:97でコードされる。
配列番号:99 クラミジア・トラコマチスG血清型由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:100 クラミジア・トラコマチスG血清型由来のCt-858のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:99でコードされる。
配列番号:101 クラミジア・トラコマチスH血清型由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:102 クラミジア・トラコマチスH血清型由来のCt-858のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:101でコードされる。
配列番号:103 クラミジア・トラコマチスI血清型由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:104 クラミジア・トラコマチスI血清型由来のCt-858のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:103でコードされる。
配列番号:105 クラミジア・トラコマチスJ血清型由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:106 クラミジア・トラコマチスJ血清型由来のCt-858のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:105でコードされる。
配列番号:107 クラミジア・トラコマチスK血清型由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:108 クラミジア・トラコマチスK血清型由来のCt-858のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:107でコードされる。
配列番号:109 クラミジア・トラコマチスL2血清型由来のCt-858のcDNA配列である。
配列番号:110 クラミジア・トラコマチスL2血清型由来のCt-858のタンパク質配列であり、配列番号:109でコードされる。
配列番号:111 クラミジア・トラコマチスA血清型由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:112 クラミジア・トラコマチスA血清型由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:111でコードされる。
配列番号:113 クラミジア・トラコマチスB血清型由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:114 クラミジア・トラコマチスB血清型由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:113でコードされる。
配列番号:115 クラミジア・トラコマチスG血清型由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:116 クラミジア・トラコマチスG血清型由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:115でコードされる。
配列番号:117 クラミジア・トラコマチスH血清型由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:118 クラミジア・トラコマチスH血清型由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:117でコードされる。
配列番号:119 クラミジア・トラコマチスI血清型由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:120 クラミジア・トラコマチスI血清型由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:119でコードされる。
配列番号:121 クラミジア・トラコマチスJ血清型由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:122 クラミジア・トラコマチスJ血清型由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:121でコードされる。
配列番号:123 クラミジア・トラコマチスK血清型由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:124 クラミジア・トラコマチスK血清型由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:123でコードされる。
配列番号:125 クラミジア・トラコマチスL2血清型由来のCt-875のcDNA配列である。
配列番号:126 クラミジア・トラコマチス由来のCt-875のタンパク質配列であり、該タンパク質は配列番号:125でコードされる。
上記配列で特定されるもの及び数多くの血清型由来の他の関連するクラミジアポリペプチド及びポリヌクレオチドが、当技術分野では知られており、入手可能である。さらなる関連配列は、特許された米国特許番号第6,447,779号、第6,166,177号、第6,565,856号、第6,555,115号、第6,432,916号、及び第6,448,234号で知ることができ、また米国特許出願番号第10/197,220号、第10/762,058号、及び第10/872,155号でも開示されており、それぞれが引用により本明細書に組み込まれるものとする。
D血清型由来のCt-089の配列及び抗原としての該タンパク質の潜在的用途は、例えばWO02/08267(Corixa Corporation)に公開されている。L2血清型由来のCt-089の配列はWO99/28475 (Genset)で開示された。3型タンパク質分泌系の推定上のエクスポート制御因子としてのCopN(Ct-089としても知られる)の役割は、Fields, KA and Hackstadt, T Mol. Microbiol. 2000 38(5):1048-1060で検討されている。
D血清型由来のCt-858及びCt-875の配列は、Swiss-Prot databaseより入手することができ、一次受託番号はそれぞれO84866及びO84883である。さらなる情報については、RSら, Science 1998 282:754-759を参照されたい。
抗原としてのCt-858の使用は、例えば、WO02/08267 (Corixa Corporation)に開示されている。
E血清型由来のCt-875の配列(His-tagを組み入れている)及び抗原としてのその使用は、例えば、US 20040137007に開示されている。該文献は、誤って配列139がCt-875であると示しているが、正しくは配列140がCt-875である。
クラミジア・トラコマチスに曝露した経験がある個体は、少なくとも同一の血清型による再感染に対しある程度の自然免疫を発現することが示されているが(Katz, BPら. Sex. Transm. Dis. 1987 14:160-164)、防御の程度は過去の感染が起きてから経過した時間に依存し得る。年齢も感染期間について重要であることが証明されており、高齢の個体では眼のクラミジア・トラコマチスによる感染期間がより短いことが実証されており(Bailey, Rら, Epidemiol. Infect. 1999 123:479-486)、このことは適応可能な免疫学的防御が存在することも表している。抗生物質の使用は、実はクラミジア・トラコマチスに対する自然免疫の発現を妨げ得ることが示唆されてきた(Brunham, RCら, J. Nat. Rev. Immunol. 2005 5:149-161)。
主要外膜タンパク質(Momp)は細菌外膜のタンパク質量の約60%を構成し、また血清型特異性の決定において重要であると信じられている。アミノ酸配列は、外部に露出した4つの領域を含み、該領域内で配列変異の大部分が生じる。Momp配列中の約400アミノ酸のうち、最大で70アミノ酸が他の血清型由来のMompとの間で異なっている。特に驚くべきことは、アミノ酸の配列同一性に基づいた血清型グループ分けは、疾患状態(すなわち、眼、眼生殖器、及びLGV)に基づいたグループ分けとは相関しないという発見である(Stothard, DRら, Infect. Immun. 1998 66(8):3618-3625)。同様に、MompをコードするompA遺伝子についてのヌクレオチド配列同一性比較は、疾患状態と相関しない(Meijer, Aら. J. Bateriol. 1999 181(15):4469-4475; Lysen, Mら. J. Clin. Microbiol. 2004 42(4):1641-1647)。Mompに対するモノクローナル抗体は、培養物下で及び幾つかの動物モデルにおいて有効であるが、防御は限定的であり通常は血清型特異的である。
糖外脂質抗原に対するモノクローナル抗イディオタイプ抗体を用いて皮下又は経口で免疫したマウスは、K血清型を用いたチャレンジに対しては感受性を保持したが、C血清型に対しては防御応答を発現した(Whittum-Hudson, JAら. Nat. Med. 1996 2(10):1116-1121)。
現在までに開示されていて異なる血清型間で高いレベルの配列相同性を示すタンパク質の1つ、すなわちクラスIアクセス可能なタンパク質-1(Cap1又はCt-529で表記される)は、2以上の血清型に対する防御を励起するワクチンの開発において、利用できるかもしれない(Fling, SPら. PNAS 2001 98(3):1160-1165)。しかしながら、血清型間の高いレベルの配列相同性が必要なことに加え、ワクチン中で使用するタンパク質は、十分な免疫応答も誘発しなければならない。
驚くことに、クラミジア・トラコマチスタンパク質Ct-089、Ct-858及び特にCt-875は、いずれも抗原性が高く、異なるクラミジア・トラコマチス血清型において高度の配列同一性を有することがわかっている。予測されるエピトープの領域内では、特に高い保存性が存在する。この知見によれば、広範囲のクラミジア・トラコマチス血清型に対し有効な(すなわち、交差防御で利用可能な)クラミジアワクチンを開発できる可能性がある。
本発明のこの態様では、Ct-089、Ct-858及びCt-875からなるリストから選択されかつ第1のクラミジア・トラコマチス血清型に由来する、1以上のクラミジアタンパク質、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドの、第2のクラミジア・トラコマチス血清型によるクラミジア感染の治療又は予防のためのワクチンの製造における使用が提供される。
本発明のさらなる態様では、Ct-089、Ct-858及びCt-875からなるリストから選択されかつ第1のクラミジア・トラコマチス血清型に由来する、1以上のクラミジアタンパク質、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドを含有するワクチンの投与を含む、第2のクラミジア・トラコマチス血清型によるクラミジア感染の治療又は予防方法が提供される。
本発明の第1の実施形態では、交差防御ワクチンは、Ct-089、Ct-858及びCt-875からなるリストから選択された1つのタンパク質、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。Ct-089、Ct-858及びCt-875からなるリストから選択された1つのタンパク質、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドのみを含むワクチンは好ましくは、少なくとも1つの追加のクラミジア抗原(例えば、1又は2つの追加の抗原)を、さらに含むであろう。
本発明の第2の実施形態では、交差防御ワクチンは、Ct-089、Ct-858及びCt-875からなるリストから選択された2つのタンパク質、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。例えば:Ct-089及びCt-858;Ct-089及びCt-875;又はCt-858及びCt-875である。
本発明の第3の実施形態では、交差防御ワクチンは、Ct-089、Ct-858及びCt-875、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドを含む。
第1のクラミジア・トラコマチス血清型は、任意のクラミジア・トラコマチス血清型であり得る。第2のクラミジア・トラコマチス血清型は、第1のクラミジア・トラコマチス血清型としたものを除いた任意のクラミジア・トラコマチス血清型である。
本発明の1つの実施形態では、第1のクラミジア・トラコマチス血清型は、クラミジア・トラコマチス血清型A、B、Ba、C、D、Da、E、F、G、H、I、Ia、J、Ja、K 、L1、L2及びL3からなるリストから選択される。本発明の第2の実施形態では、第1のクラミジア・トラコマチス血清型は、クラミジア・トラコマチスの眼(ocular)血清型(例えばA、B、Ba及びC)から選択される。本発明の別の実施形態では、第1のクラミジア・トラコマチス血清型は、クラミジア・トラコマチス眼生殖器(oculogenital)血清型(例えばD、Da、E、F、G、H、I、Ia、J、Ja及びK)から選択される。本発明のさらなる実施形態では、第1のクラミジア・トラコマチス血清型は、クラミジア・トラコマチスLGV血清型(例えばL1、L2及びL3)から選択される。
本発明の1つの実施形態では、第2のクラミジア・トラコマチス血清型は、クラミジア・トラコマチス血清型 A、B、Ba、C、D、Da、E、F、G、H、I、Ia、J、Ja、K、L1、L2及びL3からなるリストから選択される。本発明の第2の実施形態では、第2のクラミジア・トラコマチス血清型は、クラミジア・トラコマチスの眼血清型(例えばA、B、Ba及びC)から選択される。本発明の別の実施形態では、第2のクラミジア・トラコマチス血清型は、クラミジア・トラコマチス眼生殖器血清型(例えばD、Da、E、F、G、H、I、Ia、J、Ja及びK)から選択される。本発明のさらなる実施形態では、第2のクラミジア・トラコマチス血清型は、クラミジア・トラコマチスLGV血清型(例えばL1、L2及びL3)から選択される。
本発明の方法及び使用の作用範囲を最大化するために、第1のクラミジア・トラコマチス血清型を、他のクラミジア・トラコマチス血清型の大部分(例えば、他のクラミジア・トラコマチス血清型の少なくとも50%、特別には70%、特に80%、より特には90%)と高いレベルの配列同一性(例えば、少なくとも90%、特別には95%、特に98%、より特には99%の配列同一性)があるように選択することが望ましいであろう。
本発明の方法及び使用の実用的な用途を最大化するためには、第1のクラミジア・トラコマチス血清型を、一般的なクラミジア・トラコマチス血清型(例えば、一般的な眼血清型、一般的な眼生殖器血清型、一般的なLGV血清型、又はこれらの血清型グループのうち任意の2つの組み合わせ、例えば一般的な眼血清型及び眼生殖器血清型)の大部分(例えば、少なくとも50%、特別には70%、特に80%、より特には90%)と高いレベルの配列同一性(例えば、少なくとも90%、特別には95%、特に98%、より特には99%の配列同一性)があるように選択することが望ましいであろう。一般的なクラミジア・トラコマチスの眼血清型には、A及びBが含まれる。一般的なクラミジア・トラコマチスの眼生殖器血清型には、D、E、F及びIが含まれる(Lan, Jら, J. Clin. Microbiol. 1995 33(12):3194-3197; Singh, Vら, J. Clin. Microbiol. 2003 41(6):2700-2702)。一般的なクラミジア・トラコマチスLGV血清型にはL2が含まれる。
本発明の1実施形態では、第1のクラミジア・トラコマチス血清型がクラミジア・トラコマチスE血清型である。本発明の第2の実施形態では、第1のクラミジア・トラコマチス血清型がクラミジア・トラコマチスK血清型である。
本発明の1実施形態では、第2のクラミジア・トラコマチス血清型がクラミジア・トラコマチスD、J及びK血清型(例えば、クラミジア・トラコマチスK又はJ血清型)から選択される。
本発明の別の実施形態では、第1のクラミジア・トラコマチス血清型がクラミジア・トラコマチスE血清型であり、第2のクラミジア・トラコマチス血清型がクラミジア・トラコマチスD、J及びK血清型(例えば、クラミジア・トラコマチスK又はJ血清型)から選択される。
本発明の1つの例では、ワクチンがクラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドを含む場合、該ワクチンをクラミジア・トラコマチスA、B、D、G、H、I、J、K又はL2血清型;特にA、B、D、G、H、I又はK;特別にはA又はBに起因する感染の治療又は予防において使用することができる。
本発明の第2の例では、ワクチンがクラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-858、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドを含む場合、該ワクチンをクラミジア・トラコマチスA、B、D、G、H、I、J、K又はL2血清型;特にJ又はL2に起因する感染の治療又は予防において使用することができる。
本発明のさらなる例では、ワクチンがクラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-875、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドを含む場合、該ワクチンをクラミジア・トラコマチスA、B、D、G、H、I、J、K又はL2血清型; 特にA、B、D、G、H、I又はKに起因する感染の治療又は予防において使用することができる。
第1及び第2のクラミジア・トラコマチス血清型は、同一の疾患状態と関連し得(例えば、両方とも眼血清型であるか、又は両方とも眼生殖器血清型であり得る)、又は第1及び第2のクラミジア・トラコマチス血清型は、異なる疾患状態と関連し得る(例えば、第1のクラミジア・トラコマチス血清型は眼生殖器血清型で、かつ、第2のクラミジア・トラコマチス血清型は眼血清型であり得、又はその逆の組み合わせであり得る)。
本発明で使用するワクチンが、Ct-089、Ct-858及びCt-875からなるリストから選択された2以上のタンパク質、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドを含む場合には、それぞれのタンパク質、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドは、場合により、独立して選択し得る異なる第1のクラミジア・トラコマチス血清型に由来しうることに留意されたい。
本発明で使用する交差防御ワクチンは、追加のクラミジア抗原(すなわち、Ct-089、Ct-858及びCt-875タンパク質、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチド以外の抗原)、例えば1、2、3、4又は5個の他の抗原(例えば、Momp、Ct-622、PmpGpd及びPmpDpdから選択される)も含み得る。交差防御ワクチン中の追加の抗原は、第2の血清型由来のCt-089、Ct-858及びCt-875タンパク質、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドも含み得る。
本発明のさらなる実施形態では、本発明で利用され得るクラミジアポリペプチド及びポリヌクレオチドは、A、B、Ba及びC血清型のようなトラコーマと関連のある血清型由来のものを含む。
したがって、本発明の組成物は、上記のポリペプチド配列若しくはこれらの免疫原性フラグメント、又はこれらをコードするポリヌクレオチド配列(例えば、上記のポリヌクレオチド配列又は該ポリペプチドの免疫原性フラグメントをコードするこれらのフラグメントであり得る)を適用し得る。
特別な実施形態では:
(i)本発明の組成物のCt-089及びCt-858成分は、配列番号16のポリペプチド(C. トラコマチスE血清型)と少なくとも95%の相同性を有するポリペプチド若しくはその免疫原性フラグメント、又は配列番号6のポリペプチド(C. トラコマチスE血清型)と少なくとも95%の相同性をそれぞれ有するポリペプチド若しくはその免疫原性フラグメント又はこれらをコードするポリヌクレオチドであり得る。他に、本発明の組成物のCt-089及びCt-858成分は、本明細書に記載の他のC.トラコマチス血清型由来のCt-089及びCt-858ポリペプチド及びポリヌクレオチド配列のうち任意の1つと、少なくとも95%の相同性を示し得る。
(ii)Ct-875成分は、配列番号8のポリペプチド(C. トラコマチスE血清型)若しくはその免疫原性フラグメント又はこれらをコードするポリヌクレオチドと少なくとも95%の相同性を有するポリペプチドであり得る。
あるいは、本発明の組成物のCt-875成分は、本明細書に記載の他のC.トラコマチス血清型由来のCt-875ポリペプチド及びポリヌクレオチド配列のうち任意の1つと、少なくとも95%の相同性を示し得る。
(iii)PmpDpd成分は、配列番号14のポリペプチド(C. トラコマチスLII血清型)若しくはその免疫原性フラグメント又はこれらをコードするポリヌクレオチドと少なくとも95%の相同性を有するポリペプチドであり得る。
(iv)PmpGpd成分は、配列番号12のポリペプチド(C. トラコマチスLII血清型)若しくはその免疫原性フラグメント又はこれらをコードするポリヌクレオチドと少なくとも95%の相同性を有するポリペプチドであり得る。
(v)Momp成分は、配列番号4のポリペプチド(C. トラコマチスF血清型)若しくはその免疫原性フラグメント又はこれらをコードするポリヌクレオチドと少なくとも95%の相同性を有するポリペプチドであり得る。
(vi)Swib成分は、配列番号8のポリペプチド(C. トラコマチスLII血清型)若しくはその免疫原性フラグメント又はこれらをコードするポリヌクレオチドと少なくとも95%の相同性を有するポリペプチドであり得る。
本明細書に記載の抗原には、多型変異体及び保存的に改変された変種だけでなく、異種株間及び異種間のクラミジア相同体が含まれる。さらに、本明細書に記載の抗原は、サブ配列又は末端切断型(truncated)配列を含む。
本明細書に記載の抗原は、融合タンパク質の形態をとり得る。さらに、該融合タンパク質は追加のポリペプチド、場合により、クラミジア又は他の起源由来の異種ペプチドを含み得る。これらの抗原は、下記のとおり、例えばリンカーペプチド配列を付加することにより改変され得る。これらのリンカーペプチドは、それぞれの融合タンパク質を構成する1以上のポリペプチドの間に挿入され得る。
本明細書に記載の抗原は、化学コンジュゲートの形態もとり得る。
本発明は、さらに、本発明のクラミジア抗原の組成物を、製薬上許容される担体及び任意には免疫賦活剤と共に含む免疫原性の組成物及びワクチン組成物に関する。本発明の組成物は、抗原の抗原性を増強するために又は他の態様でこれらの抗原を改良するために設計された他の成分をさらに含み得、例えば、抗原の片側末端にヒスチジン残基の伸長を付加することにより、これらの抗原を単離できる。本発明の組成物は、追加の抗原のコピー又はクラミジア sp.由来の追加のポリペプチド若しくはポリヌクレオチドを含み得る。本発明の組成物は、他の非クラミジア起源由来の追加の異種ポリペプチド又はポリヌクレオチドも含み得る。例えば、本発明の組成物はポリペプチド又はポリペプチドをコードする核酸を含み得、その場合、該ポリペプチドは、抗原、例えばNS1、インフルエンザウイルスタンパク質、又はその免疫原性部分の発現を増強する(例えば、WO99/40188及びWO93/04175を参照されたい)。本発明の核酸は、選択した種、例えばヒトでのコドン選択に基づいて設計することができる。
本発明の組成物は、アジュバント、例えばMPL、3D-MPL、IFA、ENHANZYN (Detox)、QS21、CWS、TDM、AGP、CPG、Leif、サポニン及びサポニン模倣体及びそれらの誘導体をさらに含み得る。他に又はさらに、本発明の組成物は、アジュバントとしてBCG又はPvacを含み得る。
定義
「融合ポリペプチド」又は「融合タンパク質」は、直接的に又はアミノ酸リンカーを介して共有結合した少なくとも2つのクラミジアポリペプチド(これらは同一であっても、又は異なっていてもよい)を有するタンパク質を意味する。融合タンパク質を形成するポリペプチドでは、C末端をC末端に、N末端をN末端に、又はN末端をC末端にも連結できるが、通常はC末端をN末端に連結する。融合タンパク質のポリペプチドは、任意の順序をとり得る。この用語は、融合タンパク質を構成する抗原の保存的に改変された変異体、多型変異体、対立遺伝子、突然変異体、サブ配列、異種間相同体、及び免疫原性フラグメントも意味する。本発明の融合タンパク質は、追加の成分抗原のコピー又はその免疫原性フラグメントも含み得る。
本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、ストリンジェントな条件下で、少なくとも2つのヌクレオチド配列とハイブリダイズし、該配列はそれぞれCt-681(Momp)又はその免疫原性フラグメント、Ct-871(PmpG)又はその免疫原性フラグメント、Ct-812(PmpD)又はその免疫原性フラグメント、Ct-089又はその免疫原性フラグメント、Ct-858又はその免疫原性フラグメント、Ct-875又はその免疫原性フラグメント、Ct-460(swib)又はその免疫原性フラグメント、及びCt-622又はその免疫原性フラグメントからなる群から選択された抗原ポリペプチドをコードする。したがって、融合ポリペプチドのそれぞれの抗原をコードするポリヌクレオチド配列は、Ct-681(Momp)、Ct-871(PmpG)、Ct-812(PmpD)、Ct-089、Ct-858、Ct-875、Ct-460(swib)、及びCt-622の抗原の保存的に改変された変異体、多型変異体、対立遺伝子、突然変異体、サブ配列、免疫原性フラグメント、及び異種間相同体を含む。融合タンパク質のそれぞれのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、任意の順序をとり得る。
幾つかの実施形態において、該融合タンパク質のそれぞれのポリペプチドは、(N末端からC末端にかけて)大きいものから小さいものへ順に並んでいる。大きい抗原はサイズが約30〜150 kDであり、中程度の抗原はサイズが約10〜30 kDであり、また小さい抗原はサイズが約10 kD未満である。それぞれのポリペプチドをコードする配列は、例えば約8〜9アミノ酸をコードするそれぞれのCTLエピトープ、又は例えばHTL若しくはB細胞のエピトープのような免疫原性フラグメントと同じ位に小さい場合がある。フラグメントは、複数のエピトープも含み得る。
本発明の融合ポリペプチドは、少なくとも2つの抗原ポリペプチドに対する抗体と特異的に結合し、該抗原ポリペプチドはCt-681(Momp)又はその免疫原性フラグメント、Ct-871(PmpG)又はその免疫原性フラグメント、Ct-812(PmpD)又はその免疫原性フラグメント、Ct-089又はその免疫原性フラグメント、Ct-858又はその免疫原性フラグメント、Ct-875又はその免疫原性フラグメント、Ct-460(swib)又はその免疫原性フラグメント、及びCt-622又はその免疫原性フラグメントから選択される。抗体は、ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体であり得る。任意には、融合ポリペプチドは、抗原の当該融合境界部分(fusion junction)に対する抗体と特異的に結合し、すなわち、それらが融合タンパク質の一部となっていない場合には、抗体は抗原とは個別に結合しない。融合ポリペプチドは、任意には追加のポリペプチド(例えば、3、4、5、6以上のポリペプチドで約25以下のポリペプチド)、任意には異種ポリペプチド、又は少なくとも2つの抗原と融合した反復相同性ポリペプチドを含む。融合タンパク質の追加のポリペプチドは、任意にはクラミジアに由来し、同様に、他の細菌、ウイルス、又は無脊椎動物、脊椎動物、若しくは哺乳類動物起源といった他の起源に由来し得る。融合タンパク質のそれぞれのポリペプチドは、任意の順序をとり得る。本明細書に記載のとおり、融合タンパク質を、追加のポリペプチドを含む他の分子とも連結することができる。本発明の組成物は、本発明の融合タンパク質と連結していない追加のポリペプチドも含むことができる。これらの追加のポリペプチドは、異種又は同種ポリペプチドであり得る。
用語「融合した」は、融合タンパク質における2つのポリペプチド間の共有結合を意味する。ポリペプチドは通常、互いに直接に又はアミノ酸リンカーを介してペプチド結合により結合される。任意には、ペプチドは当業者に公知の非ペプチド共有結合を介して結合され得る。
「FL」は完全長の、すなわち野生型ポリペプチドと同一の長さのポリペプチドを意味する。
用語「その免疫原性フラグメント」は、細胞障害性Tリンパ球、ヘルパーTリンパ球又はB細胞で認識されるエピトープを含むポリペプチドを意味する。配列のエピトープ領域を決定する方法は、本明細書の他の箇所に記載されている。好適には、免疫原性フラグメントは、参照配列中のアミノ酸の少なくとも30%、好適には少なくとも50%、特別には少なくとも75%及び特に少なくとも90%(例えば95%又は98%)を含むであろう。免疫原性フラグメントは、好適に参照配列のエピトープ領域の全てを含む。
アジュバントは、抗原に対する特異的な免疫応答を増強するワクチン又は治療組成物中の成分を意味する(例えば、Edelman, AIDS Res. Hum Retroviruses 8:1409-1411 (1992)を参照されたい)。アジュバントは、Th-1型及びTh-2型応答の免疫応答を誘発する。Th-1型のサイトカイン(例えば、IFN-γ、IL-2及びIL-12)は、投与された抗原に対し細胞性免疫応答の誘発を導く傾向があるのに対し、Th-2型サイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、Il-6、IL-10及びTNF-β)は、体液性免疫応答の誘発を導く傾向がある。多様なアジュバントのうち任意のものを本発明のワクチン中に適用することにより、免疫応答を増強することができる。幾つかのアジュバントには、抗原を迅速な異化代謝から防御するために設計された基質(例えば、水酸化アルミニウム又は鉱油)、及び特異的な又は非特異的な免疫応答の刺激因子(例えば、リピドA、百日咳菌(Bortadella pertussis)又は結核菌(Mycobacterium tuberculosis))が含まれる。好適なアジュバントは、商業的に入手することができ、例えば、フロイントの不完全アジュバント及びフロイントの完全アジュバント(Difco Laboratories)及びMerckアジュバント65(Merck and Company, Inc., Rahway, N.J.)が含まれる。他の好適なアジュバントには、ミョウバン、生分解性微粒子、モノホスホリルリピドA、quil A、SBAS1c、SBAS2(Lingら, 1997, Vaccine 15:1562-1567)、SBAS7、Al(OH)3及びCpGオリゴヌクレオチドが含まれる(WO96/02555)。本発明で使用する好適なアジュバントは、後述のとおり、より詳細に検討される。
「核酸」は、一本鎖又は二本鎖形態のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド及びそれらのポリマーを意味する。該用語には、既知のヌクレオチド類縁体又は改良された骨格残基若しくは結合を含む核酸が含まれ、これらは合成性、天然及び非天然であり、参照核酸と類似する結合特性を有し、さらに参照ヌクレオチドと類似する方法で代謝される。かかる類縁体の例には、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、ペプチド-核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
別途規定しない限り、特定の核酸配列には、明示的に規定した配列だけでなく、その保存的に改変された変異体(例えば、縮重コドン置換)及び相補的な配列も含まれる。特別には、縮重コドン置換は、1以上の選択した(又は全ての)コドンの3番目の残基が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換された配列を作製することにより得ることができる(Batzerら, Nucleic Acid Res. 19:5081 (1991); Ohtsukaら, J. Biol. Chem. 260:2605-2608 (1985);Rossoliniら, Mol. Cell. Probes 8:91-98 (1994))。用語「核酸」は、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドと互換的に使用される。
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書ではアミノ酸残基のポリマーを意味するために互換的に使用される。該用語は、天然のアミノ酸ポリマー及び非天然のアミノ酸ポリマーだけでなく、1以上のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の人工化学模倣体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
用語「アミノ酸」は、天然及び合成アミノ酸だけでなく、天然のアミノ酸と同様の方法で機能するアミノ酸類縁体及びアミノ酸模倣体も意味する。天然のアミノ酸には、遺伝コードによりコードされるアミノ酸だけでなく、後で修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキリプロリン、γ-カルボキシグルタメート、及びO-ホスホセリンがある。アミノ酸類縁体は、天然のアミノ酸と同じ基本化学構造を有する、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基と結合したα炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを意味する。かかる類縁体は、改変したR基(例えば、ノルロイシン)又は改変したペプチド骨格を有するが、天然のアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然のアミノ酸と同様の方法で機能する化学化合物を意味する。
アミノ酸は、本明細書では、それらの一般に知られる三文字記号によるか、又はIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionが推奨する1文字記号によるかのいずれかで表される。同様に、ヌクレオチドは、それらの一般に受け入れられた一文字記号によって表される。
「保存的に改変された変異体」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に対して用いられる。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された変異体は、同一の又は本質的に同一のアミノ酸配列をコードするそれらの核酸を意味し、又は該核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には本質的に同一の配列を意味する。遺伝コードの縮重によって、非常に多くの機能的に同一の核酸が、任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全て、アミノ酸のアラニンをコードする。したがって、コドンによってアラニンが規定されている各位置において、コードされたポリペプチドを改変することなく、該コドンを記載された任意の対応するコドンに改変することができる。そのような核酸変異は「サイレント変異」であり、保存的に改変された変異の1種である。本明細書では、ポリペプチドをコードする各核酸配列は、核酸のそれぞれで生じ得るサイレント変異も表す。当業者であれば、核酸中の各コドン(メチオニンの本来的に唯一のコドンであるAUG及びトリプトファンの本来的に唯一のコドンであるTGGを除く)を改変することにより、機能的に同一の分子を生み出せることを理解するだろう。よって、それぞれの記載された配列には、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異が暗に含まれる。
本発明のポリヌクレオチドには、参照配列と比べ、多くのサイレント変異が含まれ得る(例えば、1〜5、特に1又は2、及び特別には1のコドンが改変され得る)。本発明のポリヌクレオチドには、参照配列と比べ、多くの非サイレント保存的変異が含まれ得る(例えば、1〜5、特に1又は2、及び特別には1のコドンが改変され得る)。当業者であれば、特定のポリヌクレオチド配列には、サイレント及び非サイレント保存的変異の両方が含まれ得ることを理解するであろう。
アミノ酸配列に関して、核酸、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質配列に対するそれぞれの置換、欠失又は付加であって、コードされた配列中の1つのアミノ酸又は少ない割合のアミノ酸を改変、付加、欠失するものが、「保存的に改変された変異体」であることを、当業者であれば理解するであろう。機能的に類似するアミノ酸をもたらす保存的な置換の表が、当技術分野ではよく知られている。かかる保存的に改変された変異体には、本発明の多型変異体、種間相同体、及び対立遺伝子がさらに含まれ、またこれらは除外されない。
本発明のポリペプチドには、参照配列と比べ、多くの保存的変異が含まれ得る(例えば、1〜5、特に1又は2、及び特別には1のアミノ酸残基が改変され得る)。一般に、かかる保存的置換は、以下に特定したアミノ酸グループの1範囲内で生じるが、幾つかの場合には、抗原の免疫原性特性に実質的に影響を与えることなく、他の置換が生じ得る。以下の8グループはそれぞれ、互いに保存的な置換体であるアミノ酸を含む:
1) アラニン(A)、グリシン(G);
2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4) アルギニン(R)、リジン(K);
5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);
6) ファニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);
7) セリン(S)、スレオニン(T);及び
8) システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton, Proteins (1984)を参照されたい)。
好適には、アミノ酸置換は抗原の非エピトープ領域に限定される。
ポリペプチド配列変異体には、参照配列と比べ、追加のアミノ酸配列が挿入されたものも含まれ得る。例えば、かかる挿入は1又は2つの位置(好適には1)で生じ得、また、それぞれの位置において50以下のアミノ酸(例えば、20以下、特に10以下、特別には5以下)の付加が関与し得る。好適には、かかる挿入はエピトープ領域では生じないので、抗原の免疫原性特性には重大な影響を及ぼさない。挿入の一例には、問題となる抗原の発現及び/又は単離を促すためのヒスチジン残基の短い伸長(例えば、1〜6残基)が含まれる。
他のポリペプチド配列変異体には、参照配列と比べ、アミノ酸が欠失しているものが含まれ、例えば、かかる欠失は1又は2つの位置(好適には1)で生じ得、また、例えばそれぞれの位置において50以下のアミノ酸(例えば、20以下、特に10以下、特別には5以下)の欠失が関与し得る。好適には、かかる欠失はエピトープ領域では生じないので、抗原の免疫原性特性には重大な影響を及ぼさない。
抗原のエピトープ領域を決定する方法は、本明細書の他の箇所で説明及び例示されている。
用語「異種」は核酸の部分に関して使用される場合、自然界では互いに同一の関係が認められない2以上のサブ配列を含むことを示す。例えば、核酸は通常、組換えにより産生され、新しい機能性核酸を作製するように配列された無関連の遺伝子由来の2以上の配列、例えばある起源由来のプロモーターと別の起源由来のコード領域を有する。同様に、異種タンパク質は、該タンパク質が自然界では互いに同一の関係が認められない2以上のサブ配列を含むこと(例えば、融合タンパク質)を示す。
「選択的に(又は特異的に)ハイブリダイズする」なる語句は、配列が複合混合物(例えば、全細胞の若しくはライブラリーDNA又はRNA)中に存在する場合に、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、特定のヌクレオチド配列とのみ分子が結合、二本鎖化、又はハイブリダイズすることを意味する。
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」なる語句とは、典型的には、核酸の複合混合物において、プローブがその標的サブ配列とハイブリダイズするが、他の配列とはハイブリダイズしないような条件を意味する。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、また様々な環境下で異なるであろう。配列が長くなるほど、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範な説明は、Tijssen, Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes, 「Overview of principles of hybridization and the strategy of Nucleic Acid Assays」(1993)に見られる。一般に、ストリンジェントな条件は、規定のイオン強度pHにおける特定の配列の融解温度(Tm)よりも約5〜10℃低いように選択される。Tmは、(規定のイオン強度、pH、及び核酸濃度下で)標的に相補的なプローブの50%が、平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である(標的配列が過剰に存在する場合は、Tmにおいて、平衡状態でプローブの50%が占有される)。ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0 Mナトリウムイオン未満で、通常pH 7.0〜8.3において約0.01〜1.0 Mナトリウムイオン(又は他の塩)濃度であり、かつ温度は短いプローブ(例えば、10〜50ヌクレオチド)では少なくとも約30℃で、長いプローブ(例えば、50より長いヌクレオチド)では少なくとも約60℃である条件である。ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によっても得ることができる。選択的な又は特異的なハイブリダイゼーションでは、陽性の指標はバックグラウンドの少なくとも2倍、任意にはバックグラウンドの10倍のハイブリダイゼーションである。典型的でストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は以下のものであろう:50%ホルムアミド、5×SSC、1%SDS、42℃でインキュベート又は5×SSC、1%SDS、65℃でインキュベート、0.2×SSC中で洗浄、さらに65℃で0.1%SDS。
ストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズしない核酸であっても、該核酸がコードするポリペプチドが実質的に同一であれば、それらは実質的に同一といえる。これは、例えば、核酸のコピーを、遺伝コードで許容される最大のコドン縮重を用いて作製する場合に起こる。そういった場合、核酸は通常、適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする。典型的な「適度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」には、40%ホルムアミド、1M NaCl、1%SDSを含む緩衝液中37℃でのハイブリダイゼーション及び1×SSC中45℃での洗浄が含まれる。陽性のハイブリダイゼーションは、少なくともバックラウンドの2倍である。当業者であれば、代替のハイブリダイゼーション及び洗浄条件を利用して、同程度にストリンジェントな条件を提供可能であることを容易に理解するであろう。
「抗体」とは、抗原を特異的に結合及び認識する免疫グロブリン遺伝子又はそのフラグメント由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドを示す。認識される免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε及びμ定常領域遺伝子だけでなく、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κ又はλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、又はεに分類され、これらは順に、免疫グロブリン分類IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEをそれぞれ規定する。
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造ユニットは、四量体を含む。それぞれの四量体は、2つの同一対のポリペプチド鎖からなり、各対は1つの「軽鎖」(約25 kDa)及び1つの「重鎖」(約50〜70 kDa)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識の役割を果たす約100〜110以上のアミノ酸からなる可変領域を規定する。用語「可変軽鎖」(VL)及び「可変重鎖」(VH)は、これらの軽鎖及び重鎖をそれぞれ意味する。
抗体は、例えばインタクトな免疫グロブリンとして、又は様々なペプチダーゼを用いた消化によって生成したよく特性付けられた多くのフラグメントとして、存在する。したがって、例えばペプシンは、ヒンジ領域内のジスルフィド結合において抗体を消化し、F(ab)’2、すなわちジスルフィド結合によりVH-CH1と結合した軽鎖であるFabの二量体を生成させる。F(ab)’2は、穏やかな条件下で、ヒンジ領域内のジスルフィド結合を切断して減少し、それによってF(ab)’2二量体はFab’単量体に変換される。Fab’単量体は、本質的にはヒンジ領域の部分をもつFabである(Fundamental Immunology ,(Paul著, 第3版. 1993)を参照されたい)。インタクトな抗体の消化に関連して、様々な抗体フラグメントが規定されるが、そういったフラグメントは、化学的に又は組換えDNA法を用いることにより、新しく合成できることを当業者であれば理解するであろう。したがって、本明細書で使用される用語「抗体」には、全抗体の改変により産生された抗体フラグメント、又は組換えDNA法を用いて新しく合成された抗体フラグメント(例えば、一本鎖Fv)、又はファージディスプレイライブラリーを用いて同定された抗体フラグメントも含まれる(例えば、McCaffertyら, Nature 348:552-554 (1990)を参照されたい)。
モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体の調製では、当技術分野で知られる任意の技術を使用することができる(例えば、Kohler & Milstein, Nature 256:495-497 (1975); Kozborら, Immunology Today 4: 72 (1983); Coleら, pp. 77-96 in monoclonal antibody and Cancer Therapy (1985)を参照されたい)。一本鎖抗体の作製技術(米国特許第4,946,778号)を適用して、本発明のポリペプチドに対する抗体を産生することができる。また、トランスジェニックマウス、又は他の哺乳動物のような他の生物を用いて、ヒト化抗体を発現させることができる。あるいは、ファージディスプレイ技術を用いて、選択した抗原に特異的に結合する抗体及びヘテロマーFabフラグメントを同定することができる(例えば、McCaffertyら, Nature 348:552-554 (1990); Marksら, Biotechnology 10:779-783 (1992)を参照されたい)。
抗体と「特異的に(又は選択的に)結合する」という語句や「特異的に(又は選択的に)免疫応答性がある」という語句は、タンパク質又はペプチドに関する場合、タンパク質及び他の生物製剤の異質集団中でタンパク質の存在を同定できる結合反応を意味する。したがって、指定のイムノアッセイ条件下で、特定された抗体は、特定のタンパク質とバックグラウンドの少なくとも2倍結合し、またサンプル中に存在する他のタンパク質に対しては、実質的に有意な量では結合しない。かかる条件下での抗体への特異的な結合には、特定のタンパク質に対する特異性について選択された抗体が必要であろう。例えば、融合タンパク質に対するポリクローナル抗体は、融合タンパク質に対しては特異的な免疫活性があるが、融合タンパク質の個々の成分に対しては免疫活性がないポリクローナル抗体のみを得るように、選択し得る。この選択は、個々の抗原と交差反応する抗体を除去することにより、達成することができる。様々なイムノアッセイ形式を用いることにより、特定のタンパク質に対し特異的な免疫応答性がある抗体を選択できる。例えば、固相ELISAイムノアッセイを一般的方法で用いて、タンパク質に特異的な免疫応答性を有する抗体を選択する(特異的な免疫応答性を決定するために使用し得るイムノアッセイ形式及び条件の詳細については、例えばHarlow & Lane, Antibody, A Laboratory Manual (1988)を参照されたい)。典型的には、特異的な又は選択的な応答は、バックグラウンドシグナル又はノイズの少なくとも2倍、より一般的にはバックグラウンドの10〜100倍を超えるものである。
ポリヌクレオチドは、天然配列(すなわち、個別の抗原又はその一部分をコードする内因性配列)を含み得、又はかかる配列の変異体を含み得る。ポリヌクレオチド変異体は、コードされた融合ポリペプチドの生物学的活性が、天然抗原を含む融合ポリペプチドと比べ低下しないように、1以上の置換、付加、欠失及び/又は挿入を含有し得る。変異体は、好ましくは、天然のポリペプチド又はその一部分をコードするポリヌクレオチド配列に対し、少なくとも約70%の同一性、より好ましくは少なくとも約80%の同一性、及び最も好ましくは少なくとも約90%の同一性を提示する。
2以上の核酸又はポリペプチド配列に関して、用語「同一」又はパーセント「同一性」とは、比較ウィンドウ又は指定した領域にわたって最大の重なりとなるようアラインして比較した際に、下記の配列比較アルゴリズムの1つを用いるか、又は手作業によるアラインメント検査及び目視による精査による測定で、2以上の配列又はサブ配列が同一であるか、又は特定の割合のアミノ酸残基又はヌクレオチドが同一であること(すなわち、特定の領域において70%の同一性、任意には75%、80%、85%、90%、又は95%(例えば、98%)の同一性))を意味する。したがって、かかる配列は「実質的に同一」ともいわれる。この定義は、試験配列の相補体(complement)も意味する。任意には、長さが少なくとも約25〜約50アミノ酸若しくはヌクレオチドである領域において、又は任意には長さが75〜100アミノ酸若しくはヌクレオチドである領域において、該同一性が存在する。
配列比較では、通常、1つの配列が参照配列として機能し、それに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる際は、試験配列及び参照配列をコンピューターにインプットし、必要であればサブ配列座標を指定し、さらに配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。デフォルトプログラムパラメーターを使用し得るか、又は代替のパラメーターを指定し得る。したがって、配列比較アルゴリズムは、該プログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比べた試験配列のパーセント配列同一性を計算する。
本明細書で用いられる「比較ウィンドウ」には、25〜500、通常約50〜約200、より一般的には約100〜約150からなる群から選択される数多くの参照用配列のうち任意の1つのセグメントとの比較が含まれ、該比較では、2つの配列を最適に整列させた後に、配列を同数の参照用配列のうちの1つの参照配列と比較し得る。比較のための配列のアラインメント方法は、当技術分野ではよく知られている。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えばSmith & Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の相同性アラインメントアルゴリズムにより、Pearson & Lipman, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性探索法により、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WI)、又は手作業によるアラインメント検査及び目視による精査(例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Ausubelら著, 1995 supplement)を参照されたい)により、実施することができる。
有用なアルゴリズムの一例は、PILEUPである。PILEUPは、関連性とパーセント配列同一性を示すので、漸進ペアワイズアラインメントを用いて、一群の関連配列から、多数の配列アラインメントを作製する。PILEUPはまた、該アラインメントを作製するために使用されたクラスター形成(clustering)関係を示す系統樹又は樹上図デンドグラムも作製する。PILEUPは、Feng & Doolittle, J. Mol. Evol. 35:351-360 (1987)の漸進アラインメント法を簡略化させたものを利用する。使用される方法は、Higgins & Sharp, CABIOS 5:151-153 (1989)に記載された方法と類似する。該プログラムは、最大で300配列で、かつ、それぞれの最大の長さが5,000のヌクレオチド又はアミノ酸をアラインすることができる。前記多数のアラインメントの実施手順は、2つの最も類似する配列のペアワイズアラインメントで開始し、アラインされた2つの配列からなるクラスターを作製する。その後、このクラスターをその次に最も関連する配列又はアラインされた配列のクラスターに対して、アラインする。2つの個々の配列のペアワイズアラインメントを単純に伸長させていくことによって、2つの配列クラスターをアラインする。最終的なアラインメントは、一連の漸進ペアワイズアラインメントにより達成される。前記プログラムは、配列比較領域について特定の配列及びそれらのアミノ酸又はヌクレオチド座標を指定することにより、さらにプログラムパラメーターを設計することにより実行される。PILEUPを用いて、以下のパラメーター:デフォルトギャップ加重値(3.00)、デフォルトギャップ長加重値(0.10)、及び加重エンドギャップを用いて参照配列を他の試験配列と比較し、パーセント配列同一性関係を決定できる。PILEUPは、GCG配列解析ソフトウェアパッケージ、例えばversion 7.0 (Devereauxら, Nuc. Acids Res. 12:387-395 (1984))から得ることができる。
パーセント配列同一性及び配列類似性の決定に適した別のアルゴリズムの例はBLAST及びBLAST2.0アルゴリズムであり、これらはAltschulら, Nuc. Acids Res. 25:3389-3402 (1977)及びAltschulら, J. Mol. Biol. 215:403-410 (1990)にそれぞれ報告されている。BLAST分析を実行するソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を介して公に利用可能である。このアルゴリズムは、先ず初めに、データベース配列中の同じ長さのワードとアラインメントを実施したときに、いくつかの正の値をもつ閾値スコアTと適合するか、又はこれを満たし、問題の配列中に存在する長さがWの短いワードを特定することによって、高いスコアをもつ配列対(HSP)を特定することを含む。Tは近縁ワードスコア閾値を意味する(Altschulら, 上掲)。これらの最初の近縁ワードヒットは検索開始のシードとして機能し、前記近縁ワードを含むより長いHSPを発見することができる。続いて前記ワードヒットを各配列の両方向に、累積アラインメントが増加するかぎり伸長することができる。ヌクレオチド配列の場合、パラメーターM(適合残基対に対する褒賞(reward)スコア、常に>0)及びパラメーターN(非適合対に対する罰則スコア、常に<0)を用いて累積スコアを計算する。アミノ酸配列の場合は、累積スコアを計算するためにスコアリングマトリックスを用いる。各方向におけるワードヒットの伸長は以下の時に停止させる:累積アラインメントスコアがその最大達成値から量Xだけ減少したとき;累積スコアが、1つ又は2つ以上の負のスコアをもつ残基のアラインメントのために0又は0未満になったとき;又はいずれかの配列の末端に達したとき。BLASTアルゴリズムパラメーターW、T及びXは前記アルゴリズムの感度及び速度を決定する。ヌクレオチド配列用BLASTNプログラムは、デフォルトとしてワード長(W)に11、期待値(E)に10、M=5、N=−4及び両鎖の比較を用いる。アミノ酸配列用BLASTPプログラムは、デフォルトとしてワード長(W)に3、期待値(E)に10、及びBLOSUM62スコアリングマトリックスを用いる(Henikoff & Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915 (1989)を参照されたい)。
前記BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析も実施する(例えば、Karlin & Altschul, Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 90:5873-5787 (1993)を参照されたい)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の測定値の1つは、最少合計確率(P(N))であり、これは2つのヌクレオチド又はアミノ酸配列間の適合が偶然生じる確率の指標を提供する。例えば、参照核酸と試験核酸の比較で前記最少合計確率が約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは0.001未満ならば、核酸は参照配列と類似であると考えられる。
ポリヌクレオチド組成物
本明細書で用いられる場合、「DNAセグメント」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、特定の種の全ゲノムDNAを含まない単離されたDNA分子を示す。したがって、ポリペプチドをコードするDNAセグメントは、1以上のコード配列を含むが、実質的にはDNAセグメントを得た種の全ゲノムDNAから単離されたか、該全ゲノムDNAを含まないDNAセグメントを意味する。「DNAセグメント」及び「ポリヌクレオチド」という用語には、DNAセグメント及びかかるセグメントのより小さいフラグメントが含まれ、さらに、例えばプラスミド、コスミド、ファージミド、ファージ、ウイルス等を含む組換えベクターも含まれる。
当業者であれば理解するように、本発明のDNAセグメントは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド等を発現させるために、又は発現させるように適用するために設計されたゲノム配列、ゲノム外でプラスミドによりコードされる配列、及びより小さく設計された遺伝子セグメントを含み得る。かかるセグメントは、天然に単離され、又は人工的に合成して改変され得る。
したがって、「単離した」、「精製した」、又は「生物学的に純粋な」という用語は、天然状態で見られるような通常付随する成分を、実質的に又は本質的に含まない物質を示す。勿論、該用語は当初に単離されたDNAセグメントのことを示すが、後に人工的に該組成物に付加された他の単離されたタンパク質、遺伝子、又はコード領域を除外しない。純度及び均質性は、典型的には、分析化学技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動又は高性能液体クロマトグラフィーを使用して決定される。調製物において優勢種であるタンパク質は、実質的に純化されている。単離された核酸は、該遺伝子と隣接し該遺伝子以外のタンパク質をコードする他のオープンリーディングフレームから分離される。
当業者であれば理解するように、ポリヌクレオチドは一本鎖(コード又はアンチセンス)又は二本鎖であり得、またDNA(ゲノム、cDNA又は合成)又はRNA分子であり得る。RNA分子には、HnRNA分子(イントロンを含み、DNA分子と一対一で対応する)及びmRNA分子(イントロンを含まない)が含まれる。さらなるコード配列又は非コード配列が本発明のポリヌクレオチド内に存在し得るが、必ずしもその必要はなく、また、ポリヌクレオチドが、他の分子及び/又は支持物質に結合され得るが、必ずしもその必要はない。
ポリヌクレオチドは、天然の配列(すなわち、クラミジア抗原をコードする内因性配列又はその一部)を含み得るか、或いはかかる配列の変異体、又は生物学的に若しくは抗原機能的に等価な物を含み得る。ポリヌクレオチド変異体には、以下に詳述されるとおり、好ましくは、天然の腫瘍タンパク質と比べ、コードされるポリペプチドの免疫原性が低下しないように1以上の置換、付加、欠失及び/又は挿入を含まれ得る。コードされたポリペプチドの免疫原性の有効性は一般に、本明細書に記載のとおり評価することができる。用語「変異体」には、異種起源の相同性遺伝子も包含され得る。
さらなる実施形態では、本発明は、本明細書に開示された1以上の配列と同一又は相補的な配列に隣接して様々な長さの伸長を含む単離されたポリヌクレオチド及びポリペプチドを提供する。例えば、本発明では、本明細書で開示された1以上の配列に連続する少なくとも約15、20、30、40、50、75、100、150、200、300、400、500又は1000以上のヌクレオチドだけでなく、それらの間にはいる全ての中間の長さのヌクレオチドを含むようにポリヌクレオチドが提供される。この場合、「中間の長さ」には、前記引用した値の間の任意の長さ、例えば16、17、18、19等; 21、22、23等; 30、31、32等; 50、51、52、53等; 100、101、102、103等; 150、151、152、153等を意味し、200〜500; 500〜1,000等の範囲内の全ての整数が含まれることは、容易に理解できるだろう。
本発明のポリヌクレオチド又はそのフラグメントは、コード配列自体の長さとは無関係に、他のDNA配列、例えばプロモーター、ポリアデニル化シグナル、さらなる制限酵素部位、複数のクローニング部位、他のコードセグメント等と結合させることにより、それらの全体の長さが大幅に変更され得る。したがって、任意の殆どの長さの核酸フラグメントを、調製の容易性及び意図した組換えDNAプロトコールでの使用のために、適宜限定された全長で用いることができる。例えば、全長が約10,000、約5000、約3000、約2,000、約1,000、約500、約200、約100、約50塩基対長(全てのその中間の長さを含む)の例示されたDNAセグメント等が、本発明の多くの実施において有用であることが意図される。
さらに、遺伝コードの縮重の結果として、本明細書に記載のポリペプチドをコードする多くのヌクレオチド配列が存在することを当業者は理解するであろう。これらのポリヌクレオチドの幾つかは、任意の天然の遺伝子のヌクレオチド配列に対し最小限の相同性しか有さない。しかしながら、本発明では、コドン使用の多様性に応じて変化するポリヌクレオチド、例えば、ヒト及び/又は霊長類のコドン選択について最適化されたポリヌクレオチドが特に意図される。さらに、本明細書で規定されたポリヌクレオチド配列を含む遺伝子の対立遺伝子が、本発明の範囲には含まれる。対立遺伝子は、ヌクレオチドの1以上の突然変異、例えば欠失、付加及び/又は置換によって、改変された内因性遺伝子である。生じたmRNA及びタンパク質は、必ずしもその必要はないが、改変された構造又は機能を有し得る。対立遺伝子は、標準的技術(例えば、ハイブリダイゼーション、増幅及び/又はデータベース配列比較)を用いて、同定することができる。
ポリヌクレオチドの同定及び特性付け
ポリヌクレオチドは、様々な十分に確立された技術のうち任意のものを用いて、同定、調製及び/又は処理することができる。例えば、ポリヌクレオチドは以下に詳述するとおり、cDNAのマイクロアレイをスクリーニングすることにより同定できる。かかるスクリーニングは、例えばSynteni microarray (Palo Alto, CA)を用いて、製造業者の指示書に従い(さらに、本質的にはSchenaら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10614-10619 (1996)、及びHellerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:2150-2155 (1997)による記載のとおり)実施することができる。あるいは、ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のタンパク質を発現する細胞、例えばC.トラコマチス細胞から調製したcDNAから増幅することができる。かかるポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介して増幅し得る。前記アプローチでは、配列-特異的なプライマーが本明細書に規定の配列に基づいて設計され得るか、又は購入若しくは合成され得る。
本発明のポリヌクレオチドの増幅した部分を利用して、好適なライブラリー(例えば、C.トラコマチスのcDNAライブラリー)由来の完全長の遺伝子を、周知技術を用いて単離することができる。かかる技術では、(cDNA又はゲノム)ライブラリーが、増幅に適した1以上のポリヌクレオチドプローブ又はプライマーを用いてスクリーニングされる。好ましくは、ライブラリーは、より大きな分子を含むようにサイズが選択される。ランダムプライミングされたライブラリーも、遺伝子の5’領域及び上流領域を同定するのに適するであろう。ゲノムライブラリーは、イントロンを入手したり、5’配列を伸長するのに適している。
ハイブリダイゼーション技術では、周知技術を用いて(例えば、32Pを用いてニックトランスレーション法又は末端標識により)、部分配列を標識できる。そして、細菌又はバクテリオファージライブラリーを、変性した細菌コロニーを含む膜(又はファージプラークを含むローン)を使って、標識したプローブとハイブリダイズさせることにより、通常スクリーニングする(Sambrookら, Molecular Cloning: Laboratory Manual (1989)を参照されたい)。その後、ハイブリダイズするコロニー又はプラークを選択及び増殖し、そのDNAをさらなる分析のために単離する。cDNAクローンを、例えば部分配列由来のプライマー及びベクター由来のプライマーを用いるPCRにより、追加の配列の量を決定するために分析し得る。制限地図及び部分配列を作製することにより、1以上の重複するクローンを同定できる。その後、一連の欠失したクローンの作製を含む標準的な技術を用いて、完全な配列を決定し得る。そうして、生じた重複配列を1つの隣接する配列に結合することができる。完全長のcDNA分子は、好適なフラグメントを、周知技術を用いてライゲートすることにより作製できる。
あるいは、完全長のコード配列を部分的cDNA配列から得る数多くの増幅技術が存在する。かかる技術では、増幅は一般的にPCRを介して行われる。様々な商業的に入手可能なキットのうち任意のものを、増幅ステップを実施するのに利用できる。プライマーは例えば、当技術分野で周知のソフトウェアを用いて設計できる。プライマーは好ましくは長さが22〜30ヌクレオチドで、GC含量が少なくとも50%で、かつ標的配列に対し、温度約68℃〜72℃でアニーリングする。増幅された領域を上記のとおり配列決定することができ、また重複配列を連続する配列に結合し得る。
かかる増幅技術の1つは逆PCRであり(Trigliaら, Nucl. Acids Res. 16:8186 (1988)を参照されたい)、該逆PCRは制限酵素を利用することにより、遺伝子の公知領域中でフラグメントを作製する。その後、該フラグメントは、分子内ライゲーションにより環状化され、そして公知領域由来の多岐にわたるプライマーを用いたPCRの鋳型として利用される。代替アプローチでは、部分配列に隣接した配列は、リンカー配列に対するプライマー及び公知領域に特異的なプライマーを用いた増幅により、回収できる。該増幅された配列は、典型的には前記同一のプライマー及び公知領域に特異的な第2のプライマーを用いた第2ラウンドの増幅に供される。この実施手順の変形版は、既知の配列とは逆方向の伸長を誘導する2つのプライマーを適用するものであり、WO 96/38591に記載されている。別のかかる技術は、「cDNA末端の迅速な増幅法」又はRACEとして知られる。この技術は、polyA領域又はベクター配列にハイブリダイズする内部プライマー及び外部プライマーを使用することを含み、既知の配列の5'及び3'末端の配列を同定する。さらなる技術には、キャプチャーPCR(Lagerstromら, PCR Methods Applic. 1:111-19 (1991))及びウォーキングPCR(Parkerら, Nucl. Acids. Res. 19:3055-60 (1991))が含まれる。増幅を利用する他の方法を適用しても、完全長のcDNA配列を入手し得る。
ある場合には、GenBankから入手できるような発現配列タグ(EST)データベースで提供される配列の分析により、完全長のcDNA配列を入手することができる。重複するESTについてのサーチは、一般的に周知のプログラム(例えば、NCBI BLAST searches)を用いて実施することができ、かかるESTを用いることにより、隣接する完全長の配列を生成することができる。完全長のDNA配列は、ゲノムフラグメントの分析によっても入手し得る。
宿主細胞におけるポリヌクレオチド発現
本発明の他の実施形態では、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列若しくはそのフラグメント、又はそれらの融合タンパク質若しくはその機能性等価物を使用することにより、適切な宿主細胞内でポリペプチド発現を導くことができる。固有の遺伝コードの縮重により、実質的に同一又は機能的に等価なアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を作製することができ、これらの配列を所与のポリペプチドをクローニング及び発現するのに利用できる。
当業者が理解するとおり、幾つかの場合には、非天然のコドンを包含するヌクレオチド配列がコードするポリペプチドを作製することが有利なことがある。例えば、特定の原核生物宿主又は真核生物宿主に好適なコドンを選択することにより、タンパク質発現率を向上させることができ、又は所望の特性、例えば、天然の配列から生じた転写産物よりも長い半減期を有する組換えRNA転写産物を産生させることができる。
さらに、本発明のポリヌクレオチド配列を、当技術分野で一般に知られる方法を用いて工学的に作製することにより、様々な理由にあわせてポリペプチドのコード配列を改変することができる。ここで、該改変には遺伝子産物のクローニング、プロセシング及び/又は発現を調整する改変が含まれるが、これに限定されない。例えば、ランダムフラグメント化によるDNAシャッフリング、並びに遺伝子フラグメント及び合成オリゴヌクレオチドのPCR再構築を用いて、ヌクレオチド配列を工学的に作製することができる。さらに、部位特異的突然変異誘発を利用して、新たな制限部位を形成し、グリコシル化パターンを改変し、コドン優先性を変更し、スプライス変異体を生成させ、又は突然変異を導入することなどができる。
本発明の別の実施形態では、天然、修飾、又は組換え核酸配列を異種配列にライゲートして、融合タンパク質をコードさせることができる。例えば、ペプチドライブラリーをポリペプチド活性の阻害剤についてスクリーニングすることは、商業的に入手可能な抗体により認識され得るキメラタンパク質をコードさせるのに有用であり得る。融合タンパク質は、ポリペプチドがコードする配列と異種タンパク質配列との間に配置された切断部位を含むように工学的に作製し、これによりポリペプチドを消化し、異質部分から精製することができる。
当技術分野で周知の化学的方法を用いて、所望のポリペプチドをコードする配列の全体又は一部を合成し得る (Caruthers, M. H.ら, Nucl. Acids Res. Symp. Ser. pp. 215-223 (1980), Hornら, Nucl. Acids Res. Symp. Ser. pp. 225-232 (1980)を参照されたい)。あるいは、ポリペプチドのアミノ酸配列又はその一部を合成する化学的方法を用いて、タンパク質自体を作製することができる。例えば、ペプチド合成は種々の固相法を用いて実施することができる(Robergeら, Science 269:202-204 (1995))。また、例えばABI 431Aペプチド合成装置(Perkin Elmer, Palo Alto, CA)を用いて自動合成を実施し得る。
新規に合成されるペプチドは、分取用高速液体クロマトグラフィー(例えば、Creighton, Proteins, Stractures and Molecular Principles (1983))又は当技術分野で利用可能な他の類似技術により、実質的に精製し得る。合成ペプチドの組成は、アミノ酸分析又は配列決定法(例えば、エドマン分解法)により確認できる。さらに、ポリペプチドのアミノ酸配列又はその任意の部分を、直接合成中に変更し、及び/又は他のタンパク質に由来する配列若しくはその任意の部分に由来する配列を、化学的方法を用いて組み合わせて、変異体ポリペプチドを作製し得る。
所望のポリペプチドを発現させるために、該ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列又は機能性等価物を、適切な発現ベクター、すなわち挿入したコード配列の転写及び翻訳に必要な要素を含むベクターに挿入し得る。当業者に周知の方法を用いて、目的のポリペプチドをコードする配列並びに適切な転写及び翻訳制御要素を含む発現ベクターを構築し得る。これらの方法には、in vitro組換えDNA法、合成法、及びin vivo遺伝子組換えが含まれる。かかる技術は、Sambrookら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual (1989)及びAusubelら, Current Protocols;Molecular Biology (1989)に記載されている。
多様な発現ベクター/宿主系を利用して、ポリヌクレオチド配列を含有及び発現させることができる。これらには、組換えバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換した細菌といった微生物;酵母発現ベクターで形質転換した酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルスCaMV;タバコモザイクウイルスTMV)で形質転換した植物細胞系;又は細菌発現ベクター(例えば、Ti 又はpBR322プラスミド)で形質転換した植物細胞系;又は動物細胞系が含まれるが、これらには限定されない。
発現ベクター中に存在する「制御要素」又は「調節配列」は、ベクターの非翻訳領域のもの、すなわちエンハンサー、プロモーター、並びに5’及び3’側非翻訳領域であり、これらは、宿主細胞のタンパク質を転写及び翻訳するのに関与する。そのような要素は、長さ及び特異性が多様であってよい。利用されるベクター系及び宿主に応じて、任意の数の好適な転写及び翻訳要素(構成性及び誘導可能なプロモーターを含む)を使用し得る。例えば、細菌系でクローニングする際は、PBLUESCRIPTファージミド(Stratagene, La Jolla, Calif.)又はPSPORT1プラスミド(Gibco BRL, Gaithersburg, MD)等のハイブリッドlacZプロモーターのような誘導可能なプロモーターを使用し得る。哺乳動物細胞系では、哺乳動物の遺伝子由来又は哺乳動物のウイルス由来のプロモーターが一般的に好ましい。ポリペプチドをコードする配列の複数コピーを含む細胞系の作製が必要であれば、有利には、SV40又はEBVをベースにしたベクターを、適切な選択性マーカーと共に利用することができる。
細菌系においては、発現させたポリペプチドで意図する用途に応じて、多くの発現ベクターを選択し得る。例えば、抗体誘導のために大量に前記ペプチドが必要な場合には、容易に精製される融合タンパク質の高レベル発現を指令するベクターを使用し得る。かかるベクターには、多機能性大腸菌クローニング及び発現ベクター、例えばBLUESCRIPT (Stratagene):該ベクターでは、目的のポリペプチドをコードする配列を、β-ガラクトシダーゼのアミノ末端Metの配列及びそれに連続する7残基と、該ベクターのフレーム内でライゲートすることにより、ハイブリッドタンパク質を産生させる;pINベクター(Van Heeke & Schuster, J. Biol. Chem. 264:5503-5509 (1989))等が含まれるが、これに限定されない。pGEXベクター(Promega, Madison, Wis.)を利用することにより、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を用いて、外来ポリペプチドを融合タンパク質として発現させることもできる。一般に、かかる融合タンパク質は可溶性であり、グルタチオン-アガロースビーズへの吸着、及びそれに続く遊離のグルタチオンの存在下での溶出により、溶解細胞から容易に精製することができる。かかる系で作製されるタンパク質は、ヘパリン、トロンビン、又はXA因子プロテアーゼ切断部位を含み、目的のクローン化ポリペプチドがGST部分から放出されるように設計し得る。
酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)では、構成性及び誘導可能なプロモーター(例えば、α因子、アルコールオキシダーゼ、及びPGH)を含む多くのベクターが使用できる。構成性又は誘導可能なプロモーターを含む他のベクターは、GAP、PGK、GAL及びADHを含む。レビューに関しては、Ausubelら, (上掲), Grantら, Methods Enzymol. 153:516-544 (1987)及びRomasら, Yeast 8 423-88 (1992)を参照されたい。
植物発現ベクターを使用する場合、多くのプロモーターのうち任意のものを用いて、ポリペプチドをコードする配列を発現させることができる。例えば、CaMVの35S及び19Sプロモーターといったウイルスプロモーターは、単独で又はTMV由来のωリーダー配列と組み合わせて、使用することができる(Takamatsu, EMBO J. 6:307-311 (1987))。あるいは、RUBISCOの小サブユニットのような植物プロモーター又は熱ショックプロモーターを使用し得る(Coruzziら, EMBO J. 3:1671-1680 (1984);Broglieら, Science 224:838-843 (1984);及びWinterら, Results Probl. Cell Differ. 17:85-105 (1991))。これらの構築物は、直接的なDNA形質転換又は病原体介在トランスフェクションにより、植物細胞に導入できる。かかる技術は、一般に入手可能な多くの総説に記載されている(例えば、Hobbs, McGraw Hill Yearbook of Science and Technology pp. 191-196 (1992)を参照されたい)。
昆虫系を用いて、目的のポリペプチドを発現させることもできる。例えば、かかる系の1つでは、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞中又はキンウワバ幼虫(Trichoplusia larvae)中で外来遺伝子を発現させるためのベクターとして、Autographa californica核多角体病ウイルス(AcNPV)が使用される。該ポリペプチドをコードする配列を、ウイルスの非必須領域、例えばポリヘドリン遺伝子にクローニングし、ポリヘドリンプロモーターの制御下で置き換えることができる。ポリペプチドをコードする配列の良好な挿入によって、ポリヘドリン遺伝子を不活化し、被覆タンパク質を有さない組換えウイルスを産生させることができる。その後、該組換えウイルスを用いて、例えばS. フルギペルダ(S. frugiperda)細胞又はキンウワバ幼虫(Trichoplusia larvae)内で目的のポリペプチドを発現させ、感染させることができる(Engelhardら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91 :3224-3227 (1994))。
哺乳動物の宿主細胞では、多数のウイルスベースの発現系を一般に使用できる。例えば、アデノウイルスを発現ベクターとして用いる場合、目的のポリペプチドをコードする配列を、後期プロモーター及び三部分(tripartite)リーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳複合体にライゲートさせることができる。ウイルスゲノムの非必須E1又はE3領域への挿入を利用して、感染した宿主細胞において該ポリペプチドを発現することができる感染性ウイルスを得ることができる(Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:3655-3659 (1984))。さらに、転写エンハンサー、例えばラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーを用いて、哺乳動物の宿主細胞における発現を高めることができる。
特異的な開始シグナルを用いることにより、目的のポリペプチドをコードする配列のより効率的な翻訳を達成することもできる。そのようなシグナルには、ATG開始コドン及び隣接配列が含まれる。該ポリペプチドをコードする配列、その開始コドン及び上流配列を、適切な発現ベクターに挿入する場合、追加の転写又は翻訳制御シグナルは必要ないであろう。しかしながら、コード配列又はその一部のみを挿入する場合、ATG開始コドンを含めた外因性翻訳制御シグナルを供給しなければならない。そのうえ、開始コドンは、全挿入物の翻訳を確保するために、正しいリーディングフレーム内に存在させねばならない。外因性翻訳要素及び開始コドンは、天然及び合成両方の多様な起源のものであってよい。用いられる特定の細胞系に適したエンハンサーの挿入により、発現効率を高めることができ、このことは以下の文献に記載されている(Scharfら, Results Probl. Cell Differ. 20:125-162 (1994))。
さらに、挿入配列の発現を調節する、又は発現タンパク質を目的様式でプロセシングする能力につき、宿主細胞系を選択できる。そのようなポリペプチド修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化及びアシル化が含まれるが、これらに限定されない。「プレプロ」形のタンパク質を開裂する翻訳後プロセシングも、適正な挿入、折りたたみ、及び/又は機能を促すために使用できる。かかる翻訳後活性に関する特異的な細胞機構及び特徴的な機序をもつ種々の宿主細胞(たとえばCHO、HeLa、MDCK、HEK293、及びWI38)を、外来タンパク質の適正な修飾及びプロセシングを確実にするために選択し得る。
長時間、高収率で組換えタンパク質を産生させるには、一般に、安定した発現が好ましい。例えば、ウイルス由来の複製要素及び/又は内因性発現要素並びに選択性マーカー遺伝子を、同一又は別個のベクター上に含む発現ベクターを用いて、目的のポリヌクレオチドを安定して発現する細胞系を形質転換することができる。ベクターの導入後、細胞を富化培地で約1〜2日間増殖させた後に選択培地に切り替える。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在により、導入配列を発現できる細胞を増殖及び回収できる。安定に形質転換した細胞の耐性クローンを、その細胞タイプに適した組織培養法で増殖させることができる。
形質転換細胞系を回収するために、任意数の選択系を使用できる。これらには、それぞれTK-又はAPR-細胞に使用するための単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerら, Cell 11:223-32 (1977))及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyら, Cell 22:817-23 (1990))が含まれるが、これらに限定されない。代謝拮抗薬、抗生物質又は除草剤に対する耐性も、選択の基礎として使用できる;例えば、dhfrはメトトレキセートに対する耐性を付与し(Wiglerら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 77:3567-70 (1980));nptはアミノグリコシドであるネオマイシン及びG-418に対する耐性を付与し;及びals又はpatはそれぞれクロルスルフロン及びホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与する(Murry, 上掲)。さらなる選択遺伝子、例えばtrpBはトリプトファンの代わりにインドールを細胞に利用させ;又はhisDはヒスチジンの代わりにヒスチノールを細胞に利用させる(Hartman & Mulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:8047-51 (1988))。最近、可視マーカー、例えばアントシアニン類、β-グルクロニダーゼ及びその基質GUS、並びにルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリンの使用が話題となっており、これらのマーカーは、形質転換体の同定だけでなく、特定のベクター系による一過性又は安定なタンパク質発現量の定量のためにも使用できる(Rhodesら, Methods Mol. Biol. 55:121-131 (1995))。
マーカー遺伝子発現の有無は目的の遺伝子の存在も示唆するが、その遺伝子の存在及び発現を確認する必要はないかもしれない。例えば、ポリペプチドをコードする配列をマーカー遺伝子配列の内部に挿入すると、配列を含む形質転換細胞はマーカー遺伝子機能の不存在により同定できる。他には、単一プロモーターの制御下でポリペプチドをコードする配列と縦列に、マーカー遺伝子を配置することができる。導入又は選択に応答するマーカー遺伝子の発現は、通常、タンデム遺伝子の発現も示す。
あるいは、所望のポリヌクレオチド配列を含み、該ポリペプチドを発現する宿主細胞は、当業者に公知の多様な方法で同定できる。これらの方法にはDNA-DNA又はDNA-RNAハイブリダイゼーション、及びタンパク質バイオアッセイ又はイムノアッセイ法、例えば核酸若しくはタンパク質の検出及び/又は定量のための膜、溶液若しくはチップに基づく方法が含まれるが、これらに限定されない。
ポリヌクレオチドによりコードされる産物の発現を、該産物に特異的ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を用いて検出及び測定する様々なプロトコールは、当技術分野では公知である。例としては、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)が含まれる。所与のポリペプチド上の相互作用しない2つのエピトープに対して反応性であるモノクローナル抗体を用いる2部位モノクローナルベースの免疫アッセイが好ましいが、競合結合アッセイも使用できる。これら及び他のアッセイ法は、他の文献Hamptonら, Serological Methods, a Laboratory Manual (1990)及びMaddoxら, J. Exp. Med. 158:1211-1216 (1983)にも記載されている。
多様な標識及び結合方法が当業者に公知であり、種々の核酸及びアミノ酸のアッセイに使用できる。ポリヌクレオチドに関連する配列を検出するために標識したハイブリダイゼーションプローブ又はPCRプローブの調製方法には、標識ヌクレオチドを用いるオリゴ標識法、ニックトランスレーション、末端標識法、又はPCR増幅が含まれる。あるいは、該配列又はその任意の部分を、mRNAプローブ調製のためにベクター中へクローニングすることができる。そのようなベクターは当技術分野で公知で、市販されており、in vitroで適したRNAポリメラーゼ、例えばT7、T3、又はSP6、及び標識ヌクレオチドの添加によりRNAプローブを合成するために使用できる。これらの方法は、市販のキットを用いて実施できる。使用できる適切なレポーター分子又は標識には、放射性核種、酵素、蛍光物質、化学発光物質又は色原体、及び基質、補因子、阻害物質、磁性粒子などが含まれる。
目的のポリヌクレオチド配列で形質転換した宿主細胞は、そのタンパク質を発現させて細胞培養物から回収するのに適した条件下で培養できる。組換え細胞により産生されたタンパク質は、用いた配列及び/又はベクターに応じて分泌されるか、又は細胞内に保持される。当業者に理解されるように、本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、原核細胞膜又は真核細胞膜を通して該コードされるポリペプチドを直接分泌するよう指令するシグナル配列を含むように設計できる。他の組換え構築物を用いて、目的のポリペプチドをコードする配列を、可溶性タンパク質の精製を促すことができる該ポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列と結合させることができる。かかる精製を促すドメインには、固定化金属上で精製させるヒスチジン-トリプトファン分子のような金属キレートペプチド、固定化免疫グロブリン上で精製させるプロテインAドメイン、及びFLAGS伸長/アフィニティー精製システム(Immunex Corp., Seattle, Wash.)で利用されるドメインが含まれるが、これに限定されない。XA因子又はエンテロキナーゼ(Invitrogen. San Diego, Calif.)に特異的であるような切断可能なリンカー配列を、精製ドメインと該コードされるポリペプチドの間に挿入することにより、精製を促すことができる。かかる発現ベクターの1つは、目的のポリペプチド及びチオレドキシン又はエンテロキナーゼ切断部位の前にある6個のヒスチジン残基をコードする核酸を含む融合タンパク質を発現させる。Porathら, Prot. Exp. Purif. 3:263-281 (1992)に記載されているように、該ヒスチジン残基は、IMIAC(immobilized metal ion affinity chromatography)上での精製を促す。一方、エンテロキナーゼ切断部位は、融合タンパク質由来の所望のポリペプチドを精製するための手段を提供する。融合タンパク質を含むベクターについては、Krollら, DNA Cell Biol. 12:441-453 (1993))において検討されている。
組換え産生法に加え、本発明のポリペプチド及びそのフラグメントは、固相技術を利用する直接ペプチド合成によっても産生できる(Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154 (1963))。タンパク質合成は、手作業により又は自動的に実施することができる。自動合成は、例えば、Applied Biosystems 431A peptide Synthesizer (Perkin Elmer)を用いて行うことができる。あるいは、様々なフラグメントを別個に化学的に合成し、次いで化学的方法を用いて結合させて完全長の分子を生成させることもできる。
IN VIVOポリヌクレオチド送達法
さらなる実施形態では、本発明のポリヌクレオチドの組成物を含む遺伝子構築物を、in vivoで細胞に導入する。これは、任意の様々な周知アプローチを用いて実施し得、そのうち幾つかの方法を説明の目的で下記に概説する。
1.アデノウイルス
1以上の核酸配列のin vivo送達の好ましい方法の1つは、アデノウイルス発現ベクターの使用を含む。「アデノウイルス発現ベクター」には、(a)構築物のパッケージングを補助し、かつ(b)センス又はアンチセンスの配向でその中にクローニングされているポリヌクレオチドを発現させるのに十分なアデノウイルス配列を含有するそれらの構築物が含まれることが意図される。勿論、アンチセンス構築物では、遺伝子産物が合成されることを要しない。
該発現ベクターには、遺伝子工学的に作製されたアデノウイルス形態が含まれる。アデノウイルスの遺伝的構成、すなわち36 kbの線状二本鎖DNAウイルスであることを知っていれば、アデノウイルスDNAの大きな断片を、7 kb以下の外来配列で置換することができる (Grunhaus & Horwitz, 1992)。レトロウイルスとは対照的に、宿主細胞のアデノウイルス感染は染色体導入を生じさせない。というのも、アデノウイルスのDNAは、潜在的遺伝毒性を含まずにエピソームの形態で複製できるからである。また、アデノウイルスは構造的に安定であるので、伸長増幅の後にゲノム再構成が見られない。アデノウイルスは、その細胞周期と無関係に、事実上全ての上皮細胞に感染することができる。現時点では、アデノウイルス感染は、ヒトでの急性呼吸器疾患のような中等度の疾患にのみ関与すると考えられている。
アデノウイルスは、ゲノムサイズが中程度で、操作し易く、高力価で、標的となる細胞の範囲が広く、かつ高い感染力を有するので、遺伝子導入ベクターとしての使用に特に適している。該ウイルスゲノムの両末端に、100〜200塩基対の逆方向反復(ITR)を含み、該ITRはウイルスのDNA複製及びパッケージングに不可欠なシス要素である。該ゲノムの初期(E)及び後期(L)領域は、ウイルスDNA複製の開始により分割する異なる転写ユニットを含む。E1領域(E1A及びE1B)は、ウイルスゲノム及び幾つかの細胞性ゲノムの転写を調節する役割を担うタンパク質をコードする。E2領域(E2A及びE2B)の発現により、ウイルスのDNA複製に必要なタンパク質が合成される。そして、当該タンパク質がDNA複製、後期遺伝子発現及び宿主細胞のシャットオフに関与する(Renan, 1990)。後期遺伝子の産物は、該ウイルスのキャプシドタンパク質の大部分を含み、主要後期プロモーター(MLP)により単一の一次転写物の重要なプロセシングが行われた後にのみ、発現する。MLP(16.8 m.u.に位置する)は感染の後期において特に有効であり、該プロモーターにより得られた全てのmRNAの産物は、翻訳のためにそれらを好ましいmRNAの産物にする5'-三ツ組リーダー(TPL)配列を包含する。
最新の系では、組換えアデノウイルスは、シャトルベクターとプロウイルスベクター間の相同的組換えにより作製される。2つのプロウイルスベクター間の組換えが実施可能であるので、野生型アデノウイルスをこの方法により作製することができる。したがって、別々のプラークからウイルスの単一クローンを単離して、そのゲノム構造を調べることが非常に重要である。
複製欠陥性である最新のアデノウイルスベクターの作製及び増殖は、固有のヘルパー細胞系に基づいており、該細胞系は293と称され、Ad5 DNAフラグメントによりヒト胚腎臓細胞から形質転換したものであって、E1タンパク質を構成的に発現させる(Grahamら, 1977)。アデノウイルスゲノムにE3領域は不要なので(Jones & Shenk, 1978)、最新のアデノウイルスベクターは、293細胞の助けを得て、E1、D3又は両方のいずれかの領域に外来DNAを保有する(Graham & Prevec, 1991)。もともと、アデノウイルスは野生型ゲノムの約105%をパッケージングすることができ(Ghosh-Choudhuryら, 1987)、DNAで約2 kB余分な収容能力(capacity)を提供する。E1及びE3領域において置換可能な約5.5 kBのDNAと結合させると、最新のアデノウイルスベクターの最大収容能力は7.5 kB未満であり、又はベクターの全長の約15%になる。80%超のアデノウイルス性ウイルスゲノムはベクター骨格内に保持され、該ゲノムがベクター起因性細胞障害の原因となる。また、E1欠損ウイルスの複製欠陥性は不完全である。例えば、高い感染多重度(MOI)では、最近利用可能なべクターでもウイルス遺伝子発現の漏れが観察されている(Mulligan, 1993)。
ヘルパー細胞系は、ヒトの胚性腎臓細胞、筋肉細胞、造血細胞、又は他のヒトの胚性間葉細胞若しくは上皮細胞のようなヒト細胞に由来し得る。あるいは、ヘルパー細胞は、ヒトアデノウイルスを許容する他の哺乳動物種の細胞から誘導することができる。かかる細胞には、例えばベロ細胞又は他のサル胚性間葉細胞若しくは上皮細胞が含まれる。上記のとおり、最新の好ましいヘルパー細胞系は293である。
最近になって、Racherら, (1995)が、293細胞を培養してアデノウイルスを成長させる改良方法を開示した。1つの様式では、それぞれの細胞を、100〜200 mlの培養液を含む1リットルのシリコン処理したスピナーフラスコ(Techne, Cambridge, UK)に接種することにより、天然細胞凝集体を成長させる。40 rpmで撹拌した後、細胞生存能をトリパンブルーで推定する。別様式では、Fibra-Celマイクロタイター(Bibby Sterlin, Stone, UK) (5 g/l)を次のとおり用いる。5 mlの培養液に再懸濁させた細胞接種源を、250 ml三角フラスコ中の担体(50 ml)に加え、時々撹拌しながら1〜4時間静置する。その後、該培養液を50 mlの新鮮培養液と交換し、振盪を開始する。ウイルス産生のために、細胞を約80%のコンフルエンスに達するまで成長させた後、培養液を(最終体積の25%となるように)入れ替えた後、MOIが0.05のアデノウイルスを加える。培養液を一晩静置した後、体積を100%まで増加させ、さらにもう72時間の振盪を開始する。
アデノウイルスベクターが複製欠陥性、又は少なくとも条件付欠陥性であるという要件以外は、アデノウイルスベクターの性質は、本発明の実施を成功させるために極めて重要とは考えられない。アデノウイルスは、42個の異なる既知の血清型又はサブグループA〜Fのいずれかである。サブグループCのアデノウイルス5型は、本発明で使用する条件付複製欠陥性アデノウイルスベクターを得るのに好ましい開始材料である。というのも、アデノウイルス5型は、生物化学的情報及び遺伝的情報と非常に関係があることが知られているヒトアデノウイルスであり、アデノウイルスをベクターとして適用する殆どの構築物において使用されてきた経緯があるからである。
上記のとおり、本発明の典型的なベクターは、複製欠陥性でかつ、アデノウイルスE1領域を有さないものである。したがって、該ベクターは、目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドを、E1コード配列が除去されている部位に導入するのに最も都合がよい。しかしながら、アデノウイルス配列中の構築物の挿入部位は、本発明にはそれほど重要ではない。目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドを、Karlssonら(1986)に記載のとおり、E3置換ベクター中の欠失したE3領域又はヘルパー細胞系若しくはヘルパーウイルスがE4欠損を補填するE4領域の代わりに挿入することもできる。
アデノウイルスは、in vitro及びin vivoで生育し、操作し、及び広い宿主範囲を提示させるのが容易である。このグループのウイルスは、高力価で、例えば1 ml当たり109-1011プラーク形成ユニットで得ることができ、かつ、感染力が強い。アデノウイルスの生活環は、宿主細胞ゲノムへの挿入を必要としない。アデノウイルスベクターによって運ばれる外来遺伝子は、エピソーム性であるので、宿主細胞に対し低い遺伝毒性しかもたない。野生型アデノウイルスを用いたワクチン接種の試験では、副作用は報告されておらず(Couchら, 1963; Topら, 1971)、in vivo遺伝子導入ベクターとしての安全性及び治療有効性が立証されている。
アデノウイルスベクターは、真核細胞遺伝子の発現(Levreroら, 1991; Gomez-Foixら, 1992)及びワクチン開発 (Grunhaus & Horwitz, 1992; Graham & Prevec, 1992)において利用されてきた。最近では、動物試験によって、組換えアデノウイルスが遺伝子治療のために利用可能であることが示唆された(Stratford-Perricaudet & Perricaudet, 1991; Stratford-Perricaudetら, 1990; Richら, 1993)。様々な組織への組換えアデノウイルスの投与試験には、気管点滴(Rosenfeldら, 1991; Rosenfeldら, 1992)、筋肉注射(Ragotら, 1993)、末梢静脈注射(Herz & Gerard, 1993)及び脳への定位的接種(Le Gal La Salleら, 1993)が含まれる。
2.レトロウイルス
レトロウイルスとは、感染した細胞中でそのRNAを逆転写プロセスにより二本鎖DNAに転換する能力を特徴とする一連の一本鎖RNAウイルスである(Coffin, 1990)。したがって、得られたDNAはプロウイルスとして細胞染色体に安定に取り込まれ、ウイルスタンパク質の合成を指令する。該取り込みの結果、レシピエント細胞中でウイルスの遺伝子配列及びその子孫が保持される。レトロウイルスのゲノムは、3つの遺伝子gag、pol、及びenvを含み、それぞれがキャプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素、及びエンベロープ成分をコードする。gag遺伝子より上流にある配列には、ゲノムをビリオンにパッケージングするシグナルが含まれる。2つの長末端反復(LTR)配列が、ウイルスゲノムの5’末端及び3’末端に存在する。該配列は強力なプロモーター配列及びエンハンサー配列を含み、宿主細胞ゲノム中への取り込みにも必要である(Coffin, 1990)。
レトロウイルスベクターを構築するためには、目的のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列のうち1以上をコードする核酸を、所定のウイルス配列の代わりにウイルスゲノムに挿入し、複製欠陥性のウイルスを産生させる。ビリオンを産生させるために、gag、pol、及びenv遺伝子を含むが、LTR及びパッケージング成分を含まないパッケージング細胞系を構築する(Mannら, 1983)。cDNAと共にレトロウイルス性LTR及びパッケージング配列を含む組換えプラスミドを、(例えば、リン酸カルシウム沈降により)この細胞系に導入する場合、該パッケージング配列により、組換えプラスミドのRNA転写物をウイルス粒子にパッケージングした後に、該ウイルス粒子が培地に分泌される(Nicolas & Rubenstein, 1988; Temin, 1986; Mannら, 1983)。その後、組換えレトロウイルスを含む培地を回収し、任意で濃縮し、そして遺伝子導入のために使用する。レトロウイルスベクターは、広範囲の細胞型に感染することができる。しかしながら、取り込み及び安定な発現のためには、宿主細胞の分裂が必要である(Paskindら, 1975)。
レトロウイウイルスベクターに特異的な指向性をもたせるように設計した新しいアプローチが、ラクトース残基のウイルスエンベロープへの化学付加によるレトロウイルスの化学修飾に基づいて最近開発された。この修飾により、シアロ糖タンパク質受容体を介して肝細胞を特異的に感染させることができる。
組換えレトロウイルスに指向性を持たせる様々なアプローチが設計され、該アプローチでは、レトロウイルスエンベロープタンパク質や特定の細胞受容体に対するビオチン化抗体が使用された。抗体は、ストレプトアビジンを用いてビオチン成分を介して結合された(Rouxら, 1989)。主要組織適合性複合体クラスI及びクラスII抗原に対する抗体を用いることにより、表面抗原を産生した様々なヒト細胞が、in vitroで同種指向性ウイルスに感染することを実証した。(Rouxら, 1989)。
3.アデノ随伴ウイルス
AAV (Ridgeway, 1988; Hermonat & Muzycska, 1984)はパロウイルスであり、アデノウイルスストックの混在物として発見された。アデノ随伴ウイルスは、広範に存在するウイルスである(米国人口の85%に、抗体が存在する)が、いかなる疾患とも関係がない。アデノ随伴ウイルスは、アデノウイルスといったヘルパーウイルスの存在に依存して複製されるので、ディペンドウイルス属にも分類される。5種類の血清型が単離されており、そのうちAAV-2が最も特性付けられている。AAVは、キャプシドタンパク質VP1、VP2及びVP3に包膜される一本鎖線状DNAを有し、直径が20〜24 nmの正二十面体のビリオンを形成する(Muzyczka & McLaughlin, 1988)。
AAVのDNAは、約4.7キロ塩基長である。該DNAは、2つのオープンリーディングフレームを含み、2つのITRと隣接する。AAVゲノム内には2つの主要な遺伝子:rep及びcapが存在する。rep遺伝子は、ウイルス複製で働くタンパク質をコードし、一方capは、キャプシドタンパク質VP1-3をコードする。それぞれのITRは、T字型ヘアピン構造を形成する。これらの末端反復は、染色体取り込みにおいて唯一不可欠なAAVのシス成分である。したがって、AVVは、ウイルスをコードする配列を全て除去し、送達用の遺伝子カセットで置換することにより、ベクターとして利用することができる。3つのウイルスプロモーターが同定されており、地図の位置によりそれぞれp5、p19、及びp40と呼ばれている。p5及びp19の転写により、repタンパク質が産生され、p40の転写により、キャプシドタンパク質が産生される(Hermonat & Muzyczka, 1984)。
発現ベクターとしてrAAVを利用できる可能性を研究するように、研究者らを駆り立てた幾つかの要因が存在する。1つは、遺伝子を運び宿主染色体に取り込ませるための要件が、驚くほど僅かなことである。145塩基対のITRを有することが必須だが、これはAAVゲノムのわずか6%にすぎない。このことにより、ベクター中には4.5 kbのDNA挿入物を組み込める空間が残る。この運搬能力では、AAVは大きな遺伝子を運搬することはできないが、本発明のアンチセンス構築物を送達するためには十分に適している。
AAVは安全なので、送達ビヒクルの良好な選択肢にもなる。比較的複雑な救済(rescue)機構が存在しており、野生型アデノウイルスだけでなく、AAV遺伝子もrAAVを可動させるのに必要である。同様に、AAVはいかなる疾患の病原体でもなく、疾患とも全く関係していない。ウイルスコード配列の除去により、ウイルス遺伝子発現に対する免疫応答を最小化すれば、rAAVは免疫応答を惹起しない。
4.発現構築物としての他のウイルスベクター
オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列を宿主細胞に送達するための本発明の発現構築物として、他のウイルスベクターを使用できる。ワクシニアウイルス(Ridgeway, 1988; Couparら, 1988)、レンチウイルス、ポリオウイルス及びヘルペスウイルスのようなウイルス由来のベクターを使用できる。それらは、様々な哺乳動物細胞に対し、幾つかの魅力的な特徴を提供する(Friedmann, 1989; Ridgeway, 1988; Couparら, 1988; Horwichら, 1990)。
欠陥性B型肝炎ウイルスに関する最近の知見によると、様々なウイルス配列の構造-機能関係について新しい見識が得られた。in vitro研究により、該ウイルスはそのゲノムの最大80%を欠失していても、ヘルパー依存性パッケージング及び逆転写の能力を保持できることが証明された(Horwichら, 1990)。このことは、大部分のゲノムを外来遺伝物質で置換できることを示唆した。向肝性及び持続性(取り込み)が、肝-指向性遺伝子導入において特に魅力的な特性であった。Changら(1991)は、ポリメラーゼ、表面及び前表面(pres-surface)コード配列の代わりに、アヒルのB型肝炎ウイルスゲノムに、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を導入した。該CAT遺伝子を、野生型ウイルスと共にトリ肝腫瘍細胞系に同時導入した。高力価の組換えウイルスを含む培養液を用いて、初代ひなアヒル肝細胞に感染させた。安定したCAT遺伝子発現が、トランスフェクション後、少なくとも24日間検出された(Changら, 1991)。
さらなる「ウイルス」ベクターには、粒子(VLP)及びファージのようなウイルスが含まれる。
5.非ウイルスベクター
本発明のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列の効率的な発現のためには、該発現構築物を細胞に送達せねばならない。この送達は、細胞系を形質転換させる実験的方法としてin vitroで、又は特定の疾患状態の治療としてin vivo若しくはex vivoで実施することができる。上記のとおり、送達のための好ましいメカニズムの1つは、ウイルス感染を介するものであり、該メカニズムでは、発現構築物を感染性ウイルス粒子中に封入する。
いったん該発現構築物が細胞に送達されると、所望のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列をコードする核酸が、様々な部位に配置され、発現され得る。ある実施形態では、核酸をコードする該構築物を、細胞のゲノムに安定的に取り込むことができる。この取り込みは、特定の位置及び配向の相同的組換え(遺伝子置換)を介して行うことができ、又はランダムで非特異的な位置に取り込む(遺伝子増強)ことができる。また、さらなる実施形態では、DNAの分離したエピソーム性セグメントとして、核酸を安定して細胞中に保持することができる。かかる核酸セグメント又は「エピソーム」は、宿主細胞周期を維持するのに、及び宿主細胞周期に非依存的な又は同調した複製をさせるのに十分な配列をコードする。該発現構築物の細胞への送達方法及び細胞内のどこで核酸を保持するかは、適用した発現構築物の種類に依る。
本発明のある実施形態では、1以上のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド配列を含む発現構築物は、裸の組換えDNA又はプラスミドのみから構成され得る。該構築物の導入は、物理的又は化学的に細胞膜を透過させる上記方法のいずれかにより実施できる。これは、特にin vitroでの導入に適用可能であるが、in vivoでの使用にも適用できる。Dubenskyら, (1984)は、ポリオーマウイルスのDNAを、リン酸カルシウム沈降法で成体及び新生児マウスの肝臓及び脾臓に注入することにより、活発なウイルスの複製及び急性感染の実証に成功した。Benvenisty & Reshef (1986)もまた、リン酸カルシウム沈降させたプラスミドの直接的な腹腔内投与により、導入した遺伝子の発現がもたらされることを実証した。目的の遺伝子をコードするDNAを同様の方法でin vivoで導入して、遺伝子産物を発現させることができるとも考えられている。
裸のDNA発現構築物を細胞に導入するための本発明の別の実施形態には、粒子照射法が含まれるだろう。この方法は、DNAで被覆したミクロ粒子弾(microprojectiles)を、細胞膜を殺傷することなく、細胞膜を貫通させ細胞に入らせるだけの高速度に加速させる力に基づいている(Kleinら, 1987)。小粒子を加速させる幾つかの装置が開発されている。かかる装置の1つは、電流を生じさせる高圧放電、すなわち原動力に基づく(Yangら, 1990)。使用されるミクロ粒子弾は、タングステン又は金粒子のような生物学上不活性な物質で構成されている。
ラットやマウスの肝臓、皮膚及び筋肉組織を含む選択した臓器に対し、in vivoで衝撃を与えたことは過去にある(Yangら, 1990;Zeleninら, 1991)。しかし、ガンと標的臓器の間の任意の介在組織を取り除くためには、組織又は細胞の外科手術、すなわちex vivo治療を必要とするだろう。反面、特定の遺伝子をコードするDNAを、この方法を介して送達することができるので、該送達も本発明には包含される。
ポリペプチド組成物
本発明は、本明細書に記載のポリペプチド組成物を提供する。通常、本発明のポリペプチド組成物は、単離されたポリペプチド又はその免疫原性フラグメントの組み合わせである。あるいは、発明にかかる組成物のうち幾つか又は全てのポリペプチド抗原は、融合タンパク質内に含まれ得る。例えば、3つの抗原を含む発明にかかる組成物では:(i) 3つの単離されたポリペプチドの形態で抗原が提供され得る(ii) 3つのポリペプチド抗原の全てが、単一の融合タンパク質として提供され得る(iii) 抗原のうち2つの抗原が融合タンパク質として提供され、第3の抗原は単離された形態で提供され得る。該組み合わせのポリペプチドは、本明細書に開示の1若しくは複数のポリヌクレオチド配列により、或いは適度にストリンジェントな条件下で、本明細書に開示の1若しくは複数のポリヌクレオチド配列とハイブリダイズする1又は複数の配列により、コードされ得る。あるいは、ポリペプチドは、本明細書に開示のアミノ酸配列と連続するアミノ酸配列をそれぞれが含むポリペプチドとして、又は本明細書に開示のアミノ酸配列全体をそれぞれが含むポリペプチドとして、定義されるだろう。
免疫原性部分は、通常、Paul, Fundamental Immunology, 第3版, 243-247 (1993)及び本明細書の引用文献に要約されているとおり、周知技術を用いて同定できる。かかる技術には、抗原-特異的抗体、抗血清及び/又はT細胞系若しくはクローンと反応する能力について、ポリペプチドをスクリーニングすることが含まれる。本明細書で用いられる場合、抗血清及び抗体が抗原と特異的に結合する(すなわち、ELISA又は他のイムノアッセイにおいて該タンパク質と反応し、無関係のタンパク質とは検出可能な程度には反応しない)場合には、抗血清及び抗体は「抗原-特異的」といえる。かかる抗血清及び抗体は、本明細書に記載のとおり、周知技術を用いて調製できる。クラミジア sp.タンパク質の免疫原性部分は、(例えば、ELISA及び/又はT細胞応答性アッセイにおいて)完全長のポリペプチドの応答性よりも実質的に低くないレベルで、かかる抗血清及び/又はT細胞と応答する部分である。そういった免疫原性部分は、かかるアッセイにおいて、完全長のポリペプチドの応答性と同等以上のレベルで応答し得る。かかるスクリーニングは通常、Harlow & Lane, Antibodies:A Laboratory Manual (1988)に記載の方法のように、当業者に周知の方法を用いて実施することができる。例えば、ポリペプチドを固相支持体に固定し、患者血清と接触させて、該血清中の抗体を該固定したポリペプチドと結合させることができる。その後、例えば125Iで標識したプロテインAを用いて、非結合血清を除去し、結合抗体を検出することができる。
ポリペプチドは、様々な周知技術のうち任意のものを用いて、調製することができる。上記DNA配列によりコードされる組換えポリペプチドは、当業者に公知の様々な発現ベクターのうち任意のものを用いて、該DNA配列から容易に調製することができる。該組換えポリぺプチドは、組換えポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクターを用いて、適した宿主細胞を形質転換させるか、又はトランスフェクトさせることにより、発現させることができる。好適な宿主細胞には、原核生物、酵母並びに哺乳動物細胞及び植する物細胞のような高等な真核細胞が含まれる。好ましくは、適用される宿主細胞は、大腸菌、酵母又はCOS若しくはCHOのような哺乳動物細胞株である。培養液中で組換えタンパク質又はポリペプチドを分泌する好適な宿主/ベクター系から得た上清液は、初めに、商業的に入手可能なフィルターを用いて濃縮することができる。濃縮に続いて、アフィニティーマトリックス又はイオン交換樹脂のような好適な精製マトリックスに、該濃縮液を適用し得る。最後に、1以上の逆相HPLCステップを適用することにより、組換えポリペプチドをさらに精製することができる。
本発明のポリペプチド、例えば約100未満のアミノ酸、又は約50未満のアミノ酸を有するようなその免疫原性フラグメントは、当業者に周知の技術を用いて、合成的手段によっても作製できる。例えば、かかるポリペプチドは、商業的に入手可能な固相技術のうち任意のもの、例えばMerrifield固相合成方法を用いて、伸長するアミノ酸鎖にアミノ酸を逐次付加することにより、合成することができる。Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2146 (1963)を参照されたい。ポリペプチドの自動合成用の装置は、Perkin Elmer/Applied BioSystems Division (Foster City, CA)のような供給業者より商業的に入手することができ、製造業者の指示書にしたがって操作することができる。
ある特定の実施形態では、ポリペプチドは、本明細書に記載の複数のポリペプチドを含むか、又は本明細書に記載の少なくとも1つのポリペプチド及び既知のタンパク質のような無関係の配列を含む、融合タンパク質であり得る。そういった融合パートナーは、例えば、Tヘルパーエピトープ(免疫学的融合パートナー)、好ましくはヒトにより認識されるTヘルパーエピトープをもたらすのを助けることができ、又は天然組換えタンパク質よりも高い収率でタンパク質(発現エンハンサー)を発現するのを助けることができる。ある好ましい融合パートナーは、免疫学的に増強され、かつ、発現が増強された融合パートナーである。他の融合パートナーは、タンパク質の可溶性を増大させるために、又は所望の細胞内コンパートメントに対しタンパク質を標的化できるようにするために、選択することができる。そして、さらなる融合パートナーには、アフィニティータグが含まれ、タンパク質の精製を容易にする。
融合タンパク質は通常、化学コンジュゲーションも含め、標準技術を用いて調製することができる。したがって、融合タンパク質は、非融合タンパク質と比べ発現系での生産レベルが向上するように、組換えタンパク質として発現され得る。簡潔にいうと、ポリペプチド成分をコードするDNA配列を別々に組み立てて、適切な発現ベクターにライゲートすることができる。1つのポリペプチド成分をコードするDNA配列の3'末端を、ペプチドリンカーを用いて又は用いずに、第2のポリペプチド成分をコードするDNA配列の5'末端にライゲートし、該配列のリーディングフレームを同位相内にあるようにする。これにより、両方のポリペプチド成分の生物学的活性を保持する単一の融合タンパク質に翻訳することができる。典型的には、2以上の抗原を含む融合タンパク質は、第2及びそれに続く抗原から開始コドン(Met)を省略することができる。
ペプチドリンカー配列を用いることにより、各ポリペプチドが確実にその二次及び三次構造にフォールディングするように十分な距離をとって、第1及び第2のポリペプチド成分を隔てることができる。当技術分野で周知の標準技術を用いて、そのようなペプチドリンカー配列は融合タンパク質に挿入される。好適なペプチドリンカー配列は、以下の因子に基づいて選択され得る:(1)フレキシブルな伸長した高次構造をとるその能力;(2)第1及び第2のポリペプチド上の機能性エピトープと相互作用可能な二次構造をとるその能力;及び(3)ポリペプチド機能性エピトープと反応し得る疎水性又は荷電性残基がないこと。好ましいペプチドリンカー配列には、Gly、Asn及びSer残基が含まれる。他の中性付近のアミノ酸、例えばThr及びAlaも、該リンカー配列中で使用され得る。リンカーとして有用に適用され得るアミノ酸配列には、Marateaら, Gene 40:39-46 (1985);Murphyら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8258-8262 (1986);米国特許番号第4,935,233号及び米国特許番号第4,751,180号に開示されているものが含まれる。リンカー配列は通常、長さが1〜約50アミノ酸であり得る。第1及び第2のポリペプチドが、機能性ドメインを隔てさせ、立体障害を防ぐために使用できる非必須N-末端アミノ酸領域を有する場合には、リンカー配列は必要ない。
ライゲートしたDNA配列は、好適な転写又は翻訳調節要素に機能し得るように連結される。DNAの発現において役割を果たす調節要素は、第1のポリペプチドをコードするDNA配列に対し5'側にのみ配置される。同様に、翻訳を終了させるのに必要な終止コドン及び転写終結シグナルは、第2のポリペプチドをコードするDNA配列の3'側にのみ存在する。
したがって、本発明の組成物は1以上の融合タンパク質を含み得る。かかるタンパク質には、本明細書に記載した組成物のポリペプチド成分が、無関係の免疫原性タンパク質と共に含まれる。免疫原性タンパク質は例えば、呼び戻し応答を誘発できるものであろう。かかるタンパク質の例には、破傷風タンパク質、結核タンパク質及び肝炎タンパク質が含まれる(例えば、Stouteら, New Engl. J. Med. 336:86-91 (1997)を参照されたい)。
ある実施形態では、免疫学的融合パートナーが、プロテインD、グラム陰性菌インフルエンザB型菌(Haemophilus influenza B)の表面タンパク質から誘導される(WO 91/18926)。プロテインD誘導体には、約1/3のタンパク質(例えば、N-末端の最初の100〜110アミノ酸)が含まれ得、及びプロテインD誘導体は脂質化され得る。ある実施形態では、リポタンパクD融合パートナーの最初の109残基が、さらなる外因性T細胞エピトープを含むポリペプチドを提供し、また大腸菌内での発現レベルを向上させる(したがって、発現エンハンサーとして機能する)ために、N末端に組み込まれる。脂質の末尾は、抗原提示細胞に対して、抗原の最適な提示を保証する。他の融合パートナーには、インフルエンザウイルスNS1(赤血球凝集素)由来の非構造タンパク質が含まれる。T-ヘルパーエピトープを含む様々なフラグメントを使用できるが、典型的にはN-末端の81アミノ酸が使用される。
別の実施形態では、免疫学的融合パートナーは、LYTAとして知られるタンパク質又はその一部(好ましくは、C-末端部分)である。LYTAは肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)に由来し、アミダーゼLYTAとして知られるN-アセチル-L-アラニンアミダーゼ(LytA遺伝子でコードされる; Gene 43:265-292 (1986))を合成する。LYTAは、ペプチドグリカン骨格中の特定の結合を特異的に分解する自己融解素である。LYTAタンパク質のC-末端ドメインは、コリン又はDEAEのようなコリン類縁体の幾つかに対し親和性を提示する。この特性は、融合タンパク質の発現に有用な大腸菌C-LYTAを発現させるプラスミドの開発に利用されてきた。アミノ末端にC-LYTAフラグメントを含むハイブリッドタンパク質の精製が、報告されている(Biotechnology 10:795-798 (1992)を参照されたい)。好ましい実施形態では、LYTAの反復部分が融合タンパク質に組み込まれるだろう。反復部分は、178番目の残基から始まるC末端領域中に見られる。特に好ましい反復部分には、残基188-305が含まれる。
通常、本明細書に記載のポリペプチド(融合タンパク質を含む)及びポリヌクレオチドは単離されたものである。「単離された」ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、それらの本来の環境から取り出されたものである。例えば、天然系では共存する物質の幾つか又は全てから分離されている場合、天然のタンパク質は単離されたものである。好ましくは、かかるポリペプチドは、少なくとも約90%の純度、より好ましくは少なくとも約95%の純度、及び最も好ましくは少なくとも約99%の純度である。例えば、自然環境の一部でないベクターにクローニングされている場合、ポリヌクレオチドは単離されているとみなされる。
T細胞
免疫療法用組成物は、クラミジア抗原に対し特異的なT細胞も含み、又は代替として含むことがある。かかる細胞は通常、標準的実施手順を用いて、in vitro又はex vivoで調製し得る。例えば、T細胞は商業的に入手可能な細胞分離システム、例えばNexell Therapeutics, Inc.から購入可能なIsolexTM Systemを用いて、患者の骨髄、末梢血、又は骨髄若しくは末梢血分画から単離することができる(Irvine, CA;米国特許番号第5,240,856号;米国特許番号第5,215,926号;WO 89/06280;WO 91/16116及びWO 92/07243も参照されたい)。あるいは、T細胞は、関係する又は無関係のヒト、非ヒト哺乳類動物、細胞株又は培養物から得ることができる。
T細胞は、本発明のポリペプチド、かかるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、及び/又はかかるポリペプチドを発現する抗原提示細胞(APC)により、刺激され得る。かかる刺激は、該ポリペプチドに特異的なT細胞を生じさせるのに十分な条件下で、かつ十分な時間をかけて行われる。好ましくは、ポリペプチド又はポリヌクレオチドは、特定のT細胞の生成を促すように送達ビヒクル(例えば、微粒子)内におかれる。
T細胞が特異的にサイトカインを増殖、分泌させ、又は該ポリペプチドで被覆された標的細胞を殺傷するか、該ポリペプチドをコードする遺伝子を発現させる場合には、該T細胞は本発明のポリペプチドに特異的であるとみなされる。T細胞の特異性は、様々な標準技術のうち任意のものを用いて評価することができる。例えば、クロミウム放出アッセイ又は増殖アッセイで、刺激指数が融解及び/又は増殖において陰性対照の2倍より多く増加する場合には、T細胞が特異的であることを示す。かかるアッセイは、例えばChenら, Cancer Res. 54:1065-1070 (1994)に記載のとおり、実施することができる。あるいは、T細胞の増殖の検出は、様々な既知技術により達成できる。例えば、T細胞の増殖は、DNA合成の増加率を測定することにより(例えば、T細胞培養物をトリチウム化チミジンでパルス標識して、DNAに取り込まれたトリチウム化チミジンの量を測定することにより)、検出することができる。本発明のポリペプチド(100 ng/ml〜100μg/ml、好ましくは200 ng/ml〜25μg/ml)との3〜7時間の接触により、T細胞の増殖を少なくとも2倍増加させるべきである。2〜3時間の上記接触により、T細胞を活性化させるべきであり、標準的サイトカインアッセイを用いて測定した際に、サイトカイン(例えば、TNF又はIFN-γ)放出レベルが2倍増加することは、T細胞の活性化を表す(Coliganら、Immunology, vol. 1 (1998)の最新プロトコールを参照されたい)。ポリペプチド、ポリヌクレオチド又はAPCを発現させるポリペプチドに応答して活性化されるT細胞は、CD4+及び/又はCD8+であり得る。タンパク質-特異的なT細胞は、標準技術を用いて増やすことができる。好ましい実施形態では、T細胞を患者、関連するドナー、又は無関係のドナーから得て、刺激及び増殖後に該患者に投与する。
治療目的では、ポリペプチド、ポリヌクレオチド又はAPCに応答して増殖するCD4+若しくはCD8+ T細胞を、in vitro又はin vivoのいずれかで数を増やすことができる。かかるT細胞のin vitro増殖は、様々な方法で達成し得る。例えば、T細胞増殖因子(例えばインターロイキン-2)及び/又は該ポリペプチドを合成する刺激細胞を添加して、又は添加せずに、T細胞をポリペプチド、又はかかるポリペプチドの免疫原性部分に相当する短いペプチドに再度曝露させることができる。あるいは、該タンパク質の存在下で増殖する1以上のT細胞は、クローニングにより数を増やすことができる。細胞をクローニングする方法は、当技術分野では周知であり、該方法には限外希釈法が含まれる。
診断方法
クラミジアによる個体の先の感染は、ELISAにより検出できることが多い。クラミジア特異抗体を保有する(「血清陽性の」)個体は、過去に感染した経験がある。しかしながら、過去にクラミジア感染した経験がある個体であっても、検査で血清陰性であると判断されること、すなわちクラミジア特異抗体が検出できないことは、珍しくはない。先の感染の結果として検査では血清陰性にも関わらず、かかる個体はクラミジア抗原、特に上述の様々なクラミジア抗原の組み合わせによる再刺激に対し(過去に感染した経験のない血清陰性の個体と比べ)、強力に反応する。
したがって、本発明のさらなる態様では、個体における先のクラミジア感染を確認する方法であって、以下:
(i)個体からサンプルを入手すること;
(ii)該サンプルを、2以上のクラミジアタンパク質若しくはその免疫原性フラグメント、又はそれらをコードする1若しくは複数のポリヌクレオチドの組み合わせと接触させること、ここで2以上のタンパク質又は免疫原性フラグメントはSwib、Momp、Ct-858、Ct-875、Ct-622、Ct-089、PmpGのパッセンジャードメイン(PmpGpd)及びPmpDのパッセンジャードメイン(PmpDpd)から選択され;
(iii)該サンプルの応答を定量すること
を含む、前記方法が提供される。
サンプルは、例えば全血又は精製した細胞である。好適には、サンプルは末梢血単核細胞(PBMC)を含む。本発明の1実施形態では、個体は血清陽性である。本発明の第2の実施形態では、個体は血清陰性である。
サンプルの応答は、クラミジア抗原の組み合わせの存在下で、リンパ球増殖又は特異的なサイトカインや抗体の産生をモニターすることを含む当業者に既知の方法の範囲で定量される。例えば、T細胞ELISPOT法を用いて、インターフェロンγ(IFNγ)、インターロイキン2(IL2)及びインターロイキン5(IL5)といったサイトカインをモニターできる。B細胞ELLISPOT法を用いて、クラミジアに特異抗原の刺激をモニターできる。
サンプルの応答を定量する方法を、本明細書の実施例で例示する(特に、実施例9)。かかる方法を用いる場合、抗原に対する陽性応答は、シグナル対ノイズ比(S/N比)が少なくとも2:1(例えば、少なくとも3:1)と定義できる。
本発明のさらなる態様では、上記の1以上の抗原の組み合わせ(若しくはその免疫原性フラグメント又はそれらをコードするヌクレオチド)を用いて、皮膚検査により過去のクラミジア感染を診断する方法が提供される。本明細書で使用される場合、「皮膚検査」は、上記抗原の組み合わせ(若しくはその免疫原性フラグメント又はそれらをコードするヌクレオチド)の皮内注射後に、遅延型過敏(DTH)反応(例えば、浮腫、発赤又は皮膚炎)を測定することにより患者で直接的に実施される任意のアッセイである。かかる注射は、抗原の組み合わせを患者の皮膚細胞と接触させるのに十分な任意の好適なデバイス、例えば、ツベルクリンシリンジ又は1 mLシリンジを用いて、実施できる。反応は、一定期間経過後に、例えば、注射から少なくとも48時間後、特に48〜72時間後に測定する。
DTH反応は、過去に試験抗原に曝露した経験がある患者において、より増強される細胞性免疫応答である。該反応は、定規を用いて視覚的に測定できる。一般に、直径が約0.5 cmを超える反応、特に直径が約1.0 cmを超える反応は陽性反応であり、活動性疾患として顕在化するか否かを問わず、過去のクラミジア感染を示す。
皮膚検査での使用のために、本発明の組み合わせは、好適には、生理学的に許容される担体を含む医薬組成物として製剤化される。好適には、かかる医薬組成物中で適用される担体は、適切な保存剤、例えばフェノール及び/又はTween 80TMを含む生理食塩水溶液である。
医薬組成物
さらなる実施形態では、本発明は、本明細書に開示のポリヌクレオチド、ポリペプチド、T-細胞及び/又は抗体組成物を単独で、又は1以上の他の各種療法と組み合わせるかのいずれかで細胞や動物に投与するために、製薬上許容される溶液又は生理学的に許容される溶液中に製剤化することに関する。かかる組成物は、診断用途でも有用である。
必要であれば、本明細書に開示のポリペプチドの組成物を発現する核酸セグメント、RNA、DNA又はPNA組成物を、例えば、他のタンパク質又はポリペプチド又は様々な薬学的に活性な剤のような他の剤と組み合わせて、投与できることもわかるだろう。実際には、さらに含有させることができる他の成分は、標的細胞又は宿主組織との接触で顕著な有害作用を引き起こさないものである限り、実質上制限されない。したがって、特定の場合には、必要とされる様々な他の剤と共に、組成物を送達することができる。かかる組成物は、宿主細胞又は他の生物組織から精製することができ、又は他には本明細書に記載のとおり、化学的に合成することができる。同様に、かかる組成物は、置換した又は誘導したRNAやDNA組成物をさらに含むことがある。
製薬上許容される賦形剤及び担体溶液の製剤は当業者には周知であるが、本明細書に記載の特定の組成物を用いた好適な投与及び治療レジメンの開発品であり、例えば、経口投与、非経口投与、静脈内投与及び筋肉内投与を含む様々な治療レジメン及び製剤が含まれる。他の投与経路には、粘膜表面を介するもの、例えば膣内投与が含まれる。
1.経口送達
ある適用では、本明細書に開示の医薬組成物は、経口投与により動物に送達され得る。そのような場合、当該組成物は挿入希釈剤と共に、又は同化可能な食用担体と共に製剤することができる。あるいは、それらは硬質-若しくは軟質-シェルゼラチンカプセル内に包含され得るか、又は錠剤に圧縮され得るか、又は食餌用食物に直接混入され得る。
活性化合物はさらに、賦形剤と共に包含させることもでき、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー等の形態で利用できる(Mathiowitzら, 1997;Hwangら, 1998;米国特許番号第5,641,515号;米国特許番号第5,580,579号及び米国特許番号第5,792,451号;それぞれは、参照によりその全体が本明細書に特別に包含されているものとする)。錠剤、トローチ、丸剤、カプセル等は、次のものも含有し得る:結合剤、例えばトラガカントゴム、アラビアゴム、コーンスターチ又はゼラチン;賦形剤、例えばリン酸二カルシウム;崩壊剤、例えばコーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸等;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム;並びに甘味剤、例えば庶糖、乳糖又はサッカリンを添加することができ、又は着香剤、例えばペパーミント、ウィンターグリーン油、又はサクランボ香料。投与単位形態がカプセルの場合、上記のタイプの物質に加え液体担体を含めることができる。コーティング剤として、又はそうでなければ投与単位の物理形状を調整するために、様々な他の物質を存在させることができる。例えば、錠剤、丸剤、又はカプセルは、セラック、糖、又はその両方でコーティングすることができる。エリキシル剤のシロップは、活性化合物、甘味剤としてスクロース、保存剤としてメチル及びプロピルパラベン、着色料、並びにサクランボ又はオレンジ香料のような着香剤を含み得る。勿論、任意の投与単位形態に調製するのに使用される任意の物質は、製薬上純粋で、かつ、適用される量では実質的に非毒性でなければならない。さらに、活性化合物を、持続性放出調製物及び製剤中に含ませることができる。
典型的には、当該製剤は少なくとも約0.1%以上の活性化合物などを含み得るが、活性成分の割合はもちろん変更することができ、必要であれば全製剤の約1又は2%〜約60%又は70%以上の範囲内の重量又は容量とすることができる。当然のことながら、それぞれの治療上有用な組成での活性化合物の量は、化合物の任意の所与の単位用量で好適な投与量が得られるように、調製することができる。溶解度、バイオアベイラビリティー、生物学的半減期、投与経路、製品の有効寿命といったファクターだけでなく、他の薬学的配慮が、かかる医薬製剤を調製する上で当業者により検討されるだろう。そして、その場合、様々な投与量及び治療レジメンが望ましいだろう。
経口投与のためには、本発明の組成物は他に、1以上の賦形剤と共に、含そう薬、磨歯剤、バッカル錠、口腔スプレー、又は舌下の経口投与用製剤の形態中に包含され得る。例えば、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)のような適切な溶媒中に必要量の活性成分を含ませることにより、含そう薬を調製することができる。あるいは、活性成分は、ホウ酸ナトリウム、グリセリン、及び重炭酸カリウムのうち1つを含むような経口用溶液中に含ませるか、又は磨歯剤中に分散させるか、又は水、結合剤、研磨剤、着香剤、気泡剤及び湿潤剤を含むような組成物に対し治療上有効量で包含され得る。あるいは、組成物は、舌下に設置するか、さもなければ口腔内で溶解される錠剤又は溶液形態に成形することができる。
2.注射による送達
ある状況下では、米国特許第5,543,158号;米国特許第5,641,515号及び米国特許第5,399,363号に記載のとおり(それぞれは、参照によりその全体が本明細書に特別に包含されているものとする)、本明細書に開示の医薬組成物を非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、又はさらに腹腔内投与により送達することが望ましいであろう。遊離塩基又は製薬上許容される塩としての活性化合物の溶液は、好適には、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と混合して水中で調製することができる。分散系製剤は、グリセロール、液状ポリエチレングリコール及びその混合液中において、並びに油中において調製することもできる。通常の保管及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐための保存剤を含む。
注射剤に適した医薬剤形は、無菌の水溶液又は分散液、並びに無菌の注射可能な溶液又は分散液を用時調剤するための無菌粉末である(米国特許第5,466,468号、参照によりその全体が本明細書に特別に包含されているものとする)。すべての場合において、該剤形は無菌でなければならず、かつ、注射が容易に可能な程度に流動的でなければならない。該剤形は、製造及び保管条件下で安定でなければならず、かつ、細菌及び真菌のような微生物の混入を防がなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、ポリピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコール等)を含有する溶媒若しくは分散媒体であり得る。適正な流動性は、例えばレシチンようなコーティング剤の利用により、分散媒体の場合には必要な粒径の維持により、及び界面活性剤の利用により、維持することができる。微生物作用の防止は、種々の抗細菌剤及び抗菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によって促すことができる。多くの場合には、等張剤、例えば糖類又は塩化ナトリウムを含有するのが好ましいであろう。注射可能な組成物の長時間吸収は、その組成物中での吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。
水溶液での非経口投与のためには、例えば、その溶液は必要ならば適当に緩衝されるべきであり、そして液体希釈剤がまず十分な生理食塩液又はグルコースにより等張にされるべきである。当該特定の水溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、及び腹腔内投与に特に適している。これに関して、適用され得る無菌水溶液は、本明細書の開示に照らせば、当業者には理解されるであろう。例えば、ある用量を、1 mlの生理食塩水中に溶解させることができ、及び1000 mlの皮下注入液に添加することができ、又は候補となる注入部位に注射することができる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第15版, pp. 1035-1038及び1570-1580を参照されたい)。治療対象となる被験体の症状に応じて、用量の変更が必然的に行われるであろう。投与責任者は、どんな場合にあっても、それぞれの被験体に適した用量を決定するであろう。そのうえ、ヒトに対する投与では、FDA事務局により求められる生物製剤基準の無菌性、発熱原性、及び一般的な安全性並びに純度基準を満たさなければならない。
無菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、上記に挙げた様々な他の成分を含む適当な溶媒中に含ませ、必要に応じて、その後滅菌濾過することにより調製される。一般的に、分散液は、基本的な分散媒体及び上記に挙げたものから選択した必要な他の成分を含む無菌ビヒクル中に、様々な無菌の活性成分を配合することにより調製される。滅菌注射溶液を調製するために使用される無菌粉末では、好適な調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、それらによって、活性成分に加え先に滅菌濾過した溶液から追加の所望の成分の粉末が得られる。
本明細書に開示の組成物は、中性形又は塩の形で製剤化できる。製薬的に許容される塩には(タンパク質の遊離アミノ基で形成された)酸付加塩が含まれ、例えば塩化水素酸若しくはリン酸のような無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等の有機酸を用いて形成される。遊離カルボキシル基で形成された塩も、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、あるいは水酸化第二鉄等の無機塩基、あるいはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基からも誘導することができる。処方に基づいて、用量処方に適用可能な方法で、治療上有効量の溶液が投与されるだろう。そのような処方物は、注射溶液、薬剤放出カプセル等の様々な投与剤形で容易に投与される。
本明細書で用いる場合、「担体」には、溶媒、分散媒体、ビヒクル、コーティング剤、希釈剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張性剤及び吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイド等のいずれか並びに全てが包含される。製薬上活性な物質に対するかかる媒体及び剤の使用は、当技術分野では周知である。いかなる慣用の媒体又は剤も活性成分と不適合でない限りは、治療用組成物に使用することが意図される。補助的な活性成分も、該組成物に包含され得る。
「製薬上許容される」という語句は、ヒトに投与された場合に、アレルギー反応又はこれに類似する反応を生じさせない分子単位及び組成物を表す。活性成分としてタンパク質を含む水性組成物の調製法は、当技術分野ではよく知られている。典型的には、かかる組成物は、液体の溶液又は懸濁液のいずれかの注射液として調製され;注射に先立ち液体に溶解、又は懸濁させるのに適した固体の形態としても調製される。該調製物を、乳化することもできる。
3.粘膜送達
(i)鼻腔内送達
ある実施形態では、医薬組成物は、鼻腔内スプレー剤、吸入剤、及び/又は他のエアロゾル送達ビヒクルにより送達することができる。遺伝子、核酸、及びペプチド組成物を、鼻腔のエアロゾルスプレー剤を介して肺へ直接的に送達する方法は、例えば、米国特許第5,756,353号及び米国特許第5,804,212号に記載されている(それぞれは、参照によりその全体が本明細書に特別に包含されているものとする)。同様に、鼻腔内マイクロ粒子樹脂(Takenagaら, 1998)及びリソホスファチジル-グリセロール化合物(米国特許第5,725,871号、参照によりその全体が本明細書に特別に包含されているものとする)を用いた薬物送達も、医薬分野ではよく知られている。また同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持体マトリックスの形態での経粘膜薬物送達は、米国特許第5,780,045号に記載されている(参照によりその全体が本明細書に特別に包含されているものとする)。
(ii)膣内送達
本発明の他の実施形態では、医薬組成物を膣内送達のために製剤化することができる。かかる製剤は、液体、半固体若しくは固体(例えば、クリーム、軟膏、ジェル等を含む)に調製することができ、又は膣坐剤、膣内スポンジ、膣リング若しくは膣フィルムのような物理的送達システム中に含ませることができる。
(iii)眼への送達
本発明のさらなる実施形態では、医薬組成物を眼への送達のために製剤化することができる。かかる製剤は、望ましくは透明かつ無色である。
5.リポソーム-、ナノカプセル-、及びマイクロ粒子-媒介送達系
ある実施形態では、本発明者らは、本発明の組成物を好適な宿主細胞に導入するために、リポソーム、ナノカプセル、マイクロ粒子、微粒子、脂質粒子、ベシクル等を使用することを意図する。特に、本発明の組成物は、脂質粒子、リポソーム、ベシクル、ナノ球体、又はナノ粒子等のいずれかの中に閉じ込めて送達するために、製剤化することができる。
かかる製剤は、本明細書に開示した核酸又は構築物の製薬上許容される製剤の導入において、好ましいであろう。リポソームの製剤化及び使用は、当業者に広く知られている(例えば、Couvreurら, 1977;Couvreur, 1988;Lasic, 1998を参照されたい;該文献は、細胞内細菌感染症及び疾患に対する標的化した抗体治療法における、リポソーム及びナノカプセルの使用を記載している)。最近、血清安定性及び循環半減期が改善されたリポソームが開発された(Gabizon & Papahadjopoulos, 1988;Allen及びChoun, 1987;米国特許第5,741,516号、参照によりその全体が本明細書に特別に包含されているものとする)。さらに、リポソーム及びリポソーム様調製物を候補薬剤担体として使用する様々な方法がレビューされてきた(Takakura, 1998;Chandranら, 1997;Margalit, 1995; 米国特許第5,567,434号;米国特許第5,552,157号;米国特許第5,565,213号;米国特許第5,738,868号及び米国特許第5,795,587号、それぞれが参照によりその全体が本明細書に特別に包含されているものとする)。
リポソームは、他の実施方法(T細胞懸濁液、肝初代培養細胞及びPC12細胞を含む)によるトランスフェクションには通常抵抗性である多くの細胞型に対し、効果的に使用されてきた(Renneisenら, 1990;Mullerら, 1990)。さらに、リポソームは、ウイルスベースの送達系では一般的なDNAの制限長がない。リポソームは、遺伝子、薬剤(Heath & Martin, 1986;Heathら, 1986;Balazsovitsら, 1989;Fresta & Puglisi, 1996)、放射療法剤(Pikulら, 1987)、酵素(Imaizumiら, 1990a;Imaizumiら, 1990b)、ウイルス(Faller & Baltimore, 1984)、転写因子及びアロステリックエフェクター(Nicolau & Gersonde, 1979)を、様々な培養細胞株及び動物に効率的に導入するために使用されてきた。さらに、リポソーム-媒介薬物送達の有効性を確認する幾つかの良好な臨床試験が、完了している(Lopez-Beresteinら, 1985a;1985b;Coune, 1988;Sculierら, 1988)。そのうえ、幾つかの試験は、リポソームの使用は全身送達後の自己免疫応答、毒性又は性腺への局在化とは関係しないことを、示唆している(Mori & Fukatsu, 1992)。
リポソームは水性溶媒中に分散されたリン脂質から形成され、自然と多重膜同心性二重層小胞体(多層膜小胞体(MLV)とも呼ばれる)を形成する。MLVは通常、直径が25 nm〜4μmである。MLVの超音波処理により、直径が200〜500Åの範囲にあり、コアに水溶液を含む小型単層膜小胞体(SUV)が形成される。
リポソームは細胞膜の類似物を有するので、ペプチド組成物用の担体として、本発明に関連して使用することが意図される。それらは、水溶性及び脂溶性物質の両方を閉じ込めるのに、すなわち、水性空間内に及び二重層膜そのものの中にそれぞれを閉じ込めるのに、広く適している。リポソームの製剤化を選択的に調整することにより、リポソームを有する薬剤を、活性剤の部位特異的な送達のためにも利用できるかもしれない。
Couvreurら, (1977;1988)の教示に加え、以下の情報を、リポソーム製剤を作製するために利用することができる。リン脂質は、水中に分散させた際の、水に対する脂質のモル比に応じて、リポソーム以外の多様な構造を形成し得る。低い比のリポソームが、好ましい構造である。リポソームの物理的特性は、pH、イオン強度及び二価カチオンの存在に依存的である。リポソームは、イオン性及び極性物質に対し低い透過性を示すことがあるが、温度が上昇すると相転移をうけて、透過性が顕著に変化する。相転移は、ゲル状態として知られるぎっしりと充填された規則的な構造から、流体状態として知られるゆるく充填された、より規則的でない構造への変化を伴う。相転移は、固有の相転移温度で生じ、イオン、糖、及び薬剤に対する透過性の向上をもたらす。
温度に加え、タンパク質への曝露もリポソームの透過性を変更し得る。ある可溶性タンパク質、例えばシトクロームCは、二重層を結合、変形、及び貫通させることにより、透過性に変化をもたらす。コレステロールは、リン脂質をより強固に詰め込むことから明らかなように、タンパク質の当該貫通を阻止する。抗生物質及び阻害剤の送達に最も有用なリポソーム製剤は、コレステロールを含有することが意図される。
溶質を閉じ込める能力は、様々な種類のリポソーム間で異なる。例えば、MLVは溶質を閉じ込めるために中程度に効率的であるが、SUVは非常に効率が悪い。SUVは均質性及びサイズ分布の再現性において有利であるが、サイズ及び閉じ込め効率との妥協ラインは大型単層膜小胞体(LUV)によって得られる。これらは、エーテルエバポレーションにより調製され、溶質を閉じ込める点ではMLVよりも3〜4倍効率的である。
リポソームの特性に加え、化合物を閉じ込める上で重要な決定要素は、化合物自体の物理化学的特性である。極性化合物は水性空間中に閉じ込められ、また、非極性化合物はベシクルの脂質二重層と結合する。極性化合物は、透過により又は二重層が崩壊した場合に放出されるが、非極性化合物は、温度又はリポタンパク質への曝露により二重層が破壊されない限り、二重層との関係が維持される。いずれのタイプの化合物も、相転移温度で、最大の流出速度を示す。
リポソームは、4つの異なるメカニズムを介して細胞と相互作用する:マクロファージ及び好中球のような細網内皮系の貪食細胞によるエンドサイトーシス;非特異的な弱疎水性若しくは静電気力によるか、又は細胞表面成分との特異的な相互作用によるかのどちらかによる細胞表面への吸着;リポソームの脂質二重層を形質膜に挿入すると同時に、リポソーム含有物を細胞質へ同時放出することによる細胞形質膜との融合;及びリポソーム成分とは無関係に、リポソーム脂質を細胞膜若しくは亜細胞膜へ導入すること又はその逆による。どのメカニズムが有効であるか決定するのは難しい場合が多く、2以上が同時に作用することがある。
静脈内注射したリポソームの運命及び性質は、サイズ、流動性、及び表面電荷のようなそれらの物理的特性に依存する。それらは、組成物によっては何時間又は何日も組織中に維持され、血中半減期は数分〜数時間におよぶ。大きい方のリポソーム、例えばMLV及びLUVは、細網内皮系の貪食細胞により迅速に取り込まれるが、そのような大きな粒子種の流出は、循環系の生理機能により殆どの部位において制限される。それらは、大きな開口又は穴が血管内皮細胞中に存在するような場所、例えば肝臓又は脾臓のシヌソイド(洞)でのみ、流出し得る。したがって、これらの臓器は取り込みの優勢部位である。一方、SUVはより広い組織分布を示すが、肝臓及び脾臓中ではなおも非常に抑制されている。一般に、当該in vivo挙動は、リポソームの標的化可能性を、大きなサイズと接触可能なそれらの臓器及び組織のみに限定する。これらには、血液、肝臓、脾臓、骨髄、及びリンパ器官が含まれる。
標的指向化は通常、本発明では限定されない。しかしながら、特異的な標的指向化が望ましいはずであり、この目的を成し遂げるための方法が利用可能である。抗体を用いてリポソーム表面と結合させて、抗体及びその薬剤含有物を特定の細胞型表面に位置する特異的な抗原性受容体に、指向させることができる。糖の決定基(細胞-細胞認識、相互作用及び接着において役割を果たす糖タンパク質又は糖脂質細胞-表面成分)が、特定の細胞型に対しリポソームを標的指向させる能力を有する場合には、認識部位として利用することもできる。主として、リポソーム調製物の静脈内注射が使用されるだろうが、他の投与経路も想定される。
あるいは、本発明は、本発明の組成物の製薬上許容されるナノカプセル製剤を提供する。ナノカプセルは通常、安定かつ再生産可能な方法で化合物を閉じ込めることができる(Henry-Michellandら, 1987;Quintanar-Guerreroら, 1998;Douglasら, 1987)。細胞内ポリマーの過剰負荷による副作用を避けるために、かかる超微細粒子(サイズが0.1μm付近)は、in vivoで分解され得るポリマーを用いて設計しなければならない。当該要件を満たす生分解性ポリアルキル-シアノアクリレートナノ粒子が、本発明の使用では意図される。開示のとおり(Couvreurら, 1980;1988;zur Muhlenら, 1998;Zambauxら. 1998; Pinto-Andryら, 1995及び米国特許第5,145,684号、参照によりその全体が本明細書に特別に包含されているものとする)、かかる粒子は容易に作製することができる。
ワクチン
本発明のある好ましい実施形態では、ワクチンが提供される。ワクチンは通常、1以上の医薬組成物、例えば上記のものを、免疫賦活剤と組み合わせて含有するであろう。免疫賦活剤は、外因性抗原に対する免疫応答(抗体及び/又は細胞-媒介性のものを含む)を増感又は増強する任意の物質であり得る。免疫賦活剤の例には、アジュバント、生分解性微粒子(例えば、ポリ酪酸ガラクタイド)及び(化合物が挿入される)リポソーム(例えば、Fullerton, 米国特許第4,235,877号を参照されたい)が含まれる。ワクチン調製物は一般に、例えば、Powell & Newman, eds., Vaccine Design (the subunit and adjuvant approach) (1995)に記載されている。本発明の範囲にある医薬組成物及びワクチンは、生物学的に活性又は不活性である他の化合物も含み得る。組成物又はワクチン中には、例えば、他の腫瘍抗原の1以上の免疫原性部分が、融合ポリペプチドに挿入されるか又は分離化合物として存在し得る。
例示したワクチンは、ポリペプチドがin situで生成するように、2以上の上記ポリペプチドをコードするDNAを包含し得る。上記のとおり、DNAは、当業者に公知の多様な送達系(核酸発現系、細菌及びウイルス発現系を含む)のうち任意のものの中に配置できる。非常に多くの遺伝子送達法が当技術分野では周知であり、例えばRolland, Crit. Rev. Therap. Drug Delivery Systems 15:143-198 (1998)、及び本明細書の引用文献に記載されているものがある。適切な核酸発現系には、患者での発現に必要なDNA配列(例えば、好適なプロモーター及び終止シグナル)が含まれる。細菌送達系では、ポリペプチドの免疫原性部分をその細胞表面で発現する又はかかるエピトープを分泌する細菌(例えば、Bacillus-Calmette-Guerrin)の投与が関与する。好ましい実施形態では、DNAはウイルス発現系(例えば、ワクシニア若しくは他のポックスウイルス、レトロウイルス、又はアデノウイルス)を用いて導入することができ、非病原性(欠陥性)自己複製型ウイルスの使用を含み得る。好適な系は、例えばFisher-Hochら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:317-321 (1989);Flexnerら, Ann. N.Y. Acad. Sci. 569:86-103 (1989);Flexnerら, Vaccine 8:17-21 (1990);米国特許番号第4,603,112号, 第4,769,330号及び第5,017,487号;WO 89/01973;米国特許番号第4,777,127号;GB 2,200,651;EP 0,345,242;WO 91/02805;Berkner, Biotechniques 6:616-627 (1988);Rosenfeldら, Science 252:431-434 (1991);Kollsら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:215-219 (1994);Kass-Eislerら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:11498-11502 (1993);Guzmanら, Circulation 88:2838-2848 (1993);及びGuzmanら, Cir. Res. 73:1202-1207 (1993)に開示されている。DNAをかかる発現系に取り込むための技術は、当業者には周知である。例えば、Ulmerら, Science 259:1745-1749 (1993)に記載のとおり、またCohen, Science 259:1691-1692 (1993)でレビューされるとおり、DNAは「裸」でもあり得る。裸のDNAの取り込みは、細胞へ効率的に輸送される生分解性ビーズ上にDNAを被覆することにより、増加させることができる。ワクチンが、ポリヌクレオチド及びポリペプチド成分の両方を含み得ることは、明らかであろう。かかるワクチンは、免疫応答を増強するために提供され得る。
ワクチンが、本明細書で提供されるポリヌクレオチド及びポリペプチドの製薬上許容される塩を含み得ることは明らかでろう。かかる塩は、製薬上許容される非毒性塩基から調製することができ、該塩基には有機塩基(例えば、第一、第二及び第三アミン並びに塩基性アミノ酸の塩)及び無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム及びマグネシウム塩)が含まれる。
当業者に公知の好適な担体のうち任意のものを、本発明のワクチン組成物中で適用し得るが、担体の種類は投与形態に応じて変更される。本発明の組成物は、例えば、局所投与、経口投与、鼻腔投与、静脈内投与、頭蓋内投与、腹腔内投与、皮下投与又は筋肉内投与を含む適切な投与形態で、製剤化することができる。皮下注射のような非経口投与用には、担体は好ましくは、水、生理食塩水、アルコール、油脂、ワックス又は緩衝液を含む。経口投与用には、任意の上記担体又は固体担体、例えばマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、及び炭酸マグネシウムを適用することができる。担体として、生分解性微粒子(例えば、ポリアクテートポリグリコレート)を本発明の医薬組成物のために適用することもできる。好適な生分解性微粒子は、例えば、米国特許番号第4,897,268号;第5,075,109号;第5,928,647号;第5,811,128号;第5,820,883号;第5,853,763号;第5,814,344号及び第5,942,252号に開示されている。米国特許番号第5,928,647号に記載の微粒子-タンパク質複合体を含む担体を適用することもでき、該複合体は宿主内でクラスI-限定細胞障害性Tリンパ球応答を誘導することができる。
かかる組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水)、糖質(例えば、グルコース、マンノース、スクロース又はデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチド若しくはグリシンのようなアミノ酸、抗酸化剤、制菌剤、EDTA若しくはグルタチオンのようなキレート化剤、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)、該製剤をレシピエントの血液と等張性、低張性又は弱高張性にする溶質、懸濁化剤、増粘剤及び/又は保存剤も含み得る。あるいは、本発明の組成物は、凍結乾燥物として製剤化できる。周知技術を用いて、リポソーム内に化合物を閉じ込めることもできる。
任意の様々な免疫賦活剤を、本発明のワクチンで適用することができる。例えば、アジュバントが包含され得る。ほとんどのアジュバントには、迅速な異化作用から抗原を保護するように設計された物質、例えば、水酸化アルミニウム又は鉱油、及び免疫応答の刺激因子、例えばリピドA、百日咳菌(Bortadella pertussis)又はミコバクテリウム(Mycobacterium)属の菌種又はミコバクテリア属から誘導されたタンパク質が含まれる。例えば、脱脂した、脱糖脂質化したM. vaccae (「pVac」)が使用できる。別の実施形態では、BCGがアジュバントとして使用される。さらに、過去にBCGに曝露した被験体に対し、ワクチンを投与することができる。好適なアジュバントは、例えば、フロイントの不完全アジュバント及び完全アジュバント(Difco Laboratories, Detroit, MI);Merckアジュバント65(Merck and Company, Inc., Rahway, NJ);CWS、TDM、Leif、アルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウムゲル(ミョウバン)又はリン酸アルミニウム;カルシウム、鉄、亜鉛の塩;アシル化チロシンの不溶性懸濁液;アシル化糖;カチオン性又はアニオン性に誘導した多糖;ポリホスファゼン;生分解性微粒子;モノホスホリルリピドA及びquil Aとして、商業的に入手することができる。サイトカイン、例えばGM-CSF又はインターロイキン-2、-7、若しくは-12も、アジュバントとして使用することができる。
本発明で提供されるワクチンでは、Th1型優位に免疫応答を誘発するように、アジュバント組成物を設計することができる。高レベルのTh1型サイトカイン(例えば、IFN-γ、TNFα、IL-2及びIL-12)は、投与した抗原に対し細胞性免疫応答を誘発しやすい傾向にある。対照的に、高レベルのTh2-型サイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、IL-6及びIL-10)は、体液性免疫応答の誘発をもたらす傾向がある。本発明で提供されるワクチンの適用後に、患者はTh1-及びTh2-型応答を含む免疫応答を支持するであろう。応答がTh1-型優位である1つの実施形態では、Th1-型サイトカインのレベルは、Th2-型サイトカインのレベルよりも、大幅に増加する。これらのサイトカインのレベルは、標準的なアッセイを用いて、容易に評価することができる。サイトカインファミリーのレビューについては、Mosmann & Coffman, Ann. Rev. Immunol. 7:145-173 (1989)を参照されたい。
Th1型応答を優位に誘発するのに使用される好適なアジュバントには、例えば、モノホスホリルリピドAとの組み合わせ、例えば3-デ-O-アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL))とアルミニウム塩との組み合わせが含まれる。MPLアジュバントは、Corixa Corporationから入手することができる(Seattle, WA;米国特許番号第4,436,727号;第4,877,611号;第4,866,034号及び第4,912,094号を参照されたい)。CpG-含有オリゴヌクレオチド(メチル化されていないCpGジヌクレオチド)も、Th1応答を優位に誘発する。かかるオリゴヌクレオチドは周知であり、例えば、WO 96/02555、WO 99/33488及び米国特許番号第6,008,200号及び第5,856,462号に記載されている。免疫刺激性のDNA配列も、例えばSatoら, Science 273:352 (1996)により開示されている。別の好適なアジュバントには、Quil Aのようなサポニン又はその誘導体(QS21及びQS7を含む)(Aquila Biopharmaceuticals Inc., Framingham, MA);エスシン;ジギトニン;又はカスミソウ(Gypsophila)若しくはアカザキノア(Chenopodium quinoa)サポニンが含まれる。他の好適な製剤は、本発明のアジュバント組み合わせ中に2以上のサポニン、例えばQS21、QS7、Quil A、β-エスシン、又はジギトニンを含む群のうち少なくとも2つの組み合わせを含む。
あるいは、サポニン製剤は、キトサン又は他のポリカチオン性ポリマー、ポリラクチド及びポリラクチド/グリコリド粒子、ポリ-N-アセチルグルコサミンベースのポリマーマトリックス、多糖からなる粒子又は化学的に改変した多糖、リポソーム及び脂質ベースの粒子、グリセロールモノエステルからなる粒子等からなるワクチンビヒクルと結合され得る。サポニンをコレステロール存在下で製剤化することにより、リポソーム又はISCOMのような粒子状構造を形成させることもできる。さらに、サポニンは、非粒子状の溶液若しくは懸濁液中で、又は少膜(paucilamelar)リポソーム若しくはISCOMといった粒子状構造中で、ポリオキシエチレンエーテル又はエステルと共に製剤化することができる。サポニンをCarbopol(登録商標)のような賦形剤と共に製剤化することにより、粘度を増加させることができ、又はラクトースのような粉末賦形剤を用いて、乾燥粉末形態に製剤化することができる。
1つの実施形態では、アジュバント系には、モノホスホリルリピドA及びサポニン誘導体の組み合わせ、例えばWO 94/00153に記載のQS21及び3D-MPL(登録商標)アジュバントの組み合わせ、又はWO 96/33739に記載のコレステロール含有リポソームでQS21をクエンチングした低反応性組成物が含まれる。他の好適な製剤には、水中油型エマルジョン及びトコフェロールが含まれる。QS21、3D-MPL(登録商標)アジュバント及びトコフェロールを水中油型エマルジョン中に適用する別の好適なアジュバント製剤が、WO 95/17210に記載されている。
別の増強アジュバント系には、CpG含有オリゴヌクレオチドとサポニン誘導体の組み合わせ、特別にはWO 00/09159に開示のとおりCpGとQS21の特定の組み合わせが含まれる。好ましくは、該製剤は水中油型エマルジョン及びトコフェロールをさらに含む。
あるいは好適なアジュバントには、Montanide ISA 720 (Seppic, France)、SAF (Chiron, California, United States)、ISCOMS (CSL)、MF-59 (Chiron)、アジュバントのSBASシリーズ(SmithKline Beecham, Rixensart, Belgium)、Detox (Corixa, Hamilton, MT)、RC-529 (Corixa, Hamilton, MT)、及び他のアミノアルキルグルコサミド4-ホスフェート(AGP)、例えば暫定米国特許出願番号第08/853,826号及び第09/074,720号に記載のものがあり、該開示内容は参照によりその全体が本明細書に取り込まれるものとし、さらにWO 99/52549A1に記載のポリオキシエチレンエーテルアジュバントが含まれる。
他の好適なアジュバントには、一般式(I)で表されるアジュバント分子が含まれる:
[式中、nは1〜50であり、Aは結合又は-C(O)-であり、RはC1-50アルキル又はフェニルC1-50アルキルである]
目的のさらなるアジュバントは志賀毒素b鎖であり、例えばWO2005/112991に記載のとおり使用される。
本発明の1つの実施形態は、一般式(I)で表されるポリオキシエチレンエーテルを含むワクチン製剤から構成され、ここでnは1〜50、好ましくは4〜24、最も好ましくは9であり; R成分はC1-50、好ましくはC4-C20アルキルであり、最も好ましくはC12アルキルであり、さらにAは結合を表す。ポリオキシエチレンエーテルの濃度は、0.1〜20%の範囲であり、好ましくは0.1〜10%であり、及び最も好ましくは0.1〜1%の範囲内でなければならない。好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群より選択される:
ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-9-ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン-8-ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン-4-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-35-ラウリルエーテル、及びポリオキシエチレン-23-ラウリルエーテル。ポリオキシエチレンラウリルエーテルのようなポリオキシエチレンエーテルは、Merck index(第12版:7717項目)に記載されている。これらのアジュバント分子は、WO 99/52549に記載されている。
本発明で提供される任意のワクチンは、抗原、免疫応答増強剤、及び好適な担体又は賦形剤の組み合わせをもたらす周知の方法を用いて調製することができる。本明細書に記載の組成物は、持続性徐放性製剤(すなわち、投与後の化合物の徐放性に効果があるカプセル、スポンジ又はジェルのような製剤(例えば、多糖から構成される))の一部として、投与することができる。かかる製剤は通常、周知技術を用いて調製することができ(例えば、Coombesら, Vaccine 14:1429-1438 (1996)を参照されたい)、また、例えば、経口、直腸、若しくは皮下注入により、又は所望の標的部位への注入により投与することができる。持続性徐放性製剤は、担体マトリックス中に分散させて及び/又は速度制御膜により囲まれたリザーバ中に含有させて、ポリペプチド、ポリヌクレオチド又は抗体を含むことができる。
かかる製剤中で使用される担体は生体適合性であり、また生分解性でもあり得;好ましくは、該製剤は比較的一定レベルで活性成分の放出をもたらす。かかる担体には、ポリ(ラクチド/グリコリド共重合体)ポリアクリレート、ラテックス、スターチ、セルロース、デキストラン等のマイクロ粒子が含まれる。他の遅延性放出担体には、非液体親水性コア部分(例えば、架橋した多糖又はオリゴ糖)を含む超分子バイオベクター、及び任意には、リン脂質のような両親媒性化合物を含む外膜が含まれる(例えば、米国特許第5,151,254号及びPCT出願WO 94/20078、WO/94/23701及びWO 96/06638を参照されたい)。持続性徐放性製剤中に含まれる活性化合物の量は、注入部位、速度及び予測される放出時間並びに治療又は予防したい症状の性質によって決まる。
任意の多様な送達ビヒクルを医薬組成物及びワクチン中に適用することにより、腫瘍細胞を標的とする抗原特異的な免疫応答を生じさせることができる。送達ビヒクルには、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、単球のような抗原提示細胞(APC)及び有効なAPCにするために工学的に作製可能な他の細胞が含まれる。かかる細胞は、遺伝的に改変することにより、抗原を提示する能力を向上させ、T細胞応答の活性化及び/若しくは維持を増強し、それ自体に抗癌作用をもたせ、並びに/又はレシーバーに対し免疫学的適合性があるように(すなわち、適合したHLAハプロタイプに)することができるが、必ずしもその必要はない。APCは通常、様々な生体液及び臓器(腫瘍及び腫瘍周囲組織を含む)のうち任意のものから単離することができ、該APCは自己由来の、同系、同種、又は異種の細胞であり得る。
本発明のある実施形態では、樹状細胞又はその前駆細胞を抗原提示細胞として使用する。樹状細胞は、APCとなる可能性が高く(Banchereau & Steinman, Nature 392:245-251 (1998))、また予防的又は治療的な抗腫瘍性免疫を誘発するために生理学的アジュバントとして有効であることが示されている(Timmerman & Levy, Ann. Rev. Med. 50:507-529 (1999)を参照されたい)。一般に、樹状細胞はその典型的な形状(in situでは星状であり、in vitroでは視覚的に目立つ細胞質突起(樹状突起)を有する)、抗原を高効率で取り込み、処理し、提示する能力、及びもとのT細胞応答を活性化する能力に基づいて同定することができる。樹状細胞は勿論、in vivo又はex vivoの樹状細胞では通常見られない特異的な細胞-表面受容体又はリガンドを発現するように、工学的に作製することができ、そのような改変した樹状細胞が本発明では意図される。樹状細胞の代わりに、分泌されたベシクル、すなわち抗原負荷-樹状細胞(エキソソームと呼ばれる)を、ワクチン中で利用することができる(Zitvogelら, Nature Med. 4:594-600 (1998)を参照されたい)。
樹状細胞及び前駆細胞は、末梢血、骨髄、腫瘍浸潤細胞、腫瘍周囲組織-浸潤細胞、リンパ節、脾臓、皮膚、臍帯血又は任意のほかの好適な組織や体液から得ることができる。例えば、樹状細胞は、GM-CSF、IL-4、IL-13及び/又はTNFαのようなサイトカインの組み合わせを、末梢血から採取した単球の培養物に加えることにより、ex vivoで分化させることができる。あるいは、末梢血、臍帯血又は骨髄から採取したCD34陽性細胞は、樹状細胞の分化、成熟及び増殖を誘発するGM-CSF、IL-3、TNFα、CD40リガンド、LPS、flt3リガンド及び/又はその他の1又は複数の化合物の組み合わせを培養液に加えることにより、樹状細胞に分化させることができる。
樹状細胞は、「未成熟」及び「成熟」細胞に便宜上分類することにより、単純な方法で2つの十分に特性付けられた表現型を区別することができる。しかしながら、この専門用語が、分化の中間段階でとりうるあらゆるものを排除すると解釈してはならない。未成熟な樹状細胞は、APCとして抗原の取り込み及びプロセシングについて高い能力をもつことを特徴とし、該能力はFcγ受容体及びマンノース受容体の高発現と相関する。成熟した表現型は、典型的には、これらのマーカーの低発現を特徴とするが、T細胞の活性化に関与する細胞表面分子、例えば、クラスI及びクラスII MHC、接着分子(例えば、CD54及びCD11)及び共刺激分子(例えば、CD40、CD80、CD86及び4-1BB)の高発現を特徴とする。
APCは一般的に、ポリペプチド又はその免疫原性部分が細胞表面上で発現するように、タンパク質(又はその一部若しくは他の変異体)をコードするポリヌクレオチドに導入することができる。かかるトランスフェクションは、ex vivoで行うことができ、その後、当該導入された細胞を含む組成物又はワクチンを、本明細書に記載のとおり治療目的で使用することができる。あるいは、樹状細胞又は他の抗原提示細胞を標的とする遺伝子送達ビヒクルを患者に投与することができ、その結果、in vivoでトランスフェクションを行うことができる。樹状細胞のin vivo及びex vivoトランスフェクションは、例えば一般に、当技術分野で公知の任意の方法を用いてWO 97/24447に記載の方法のように、又はMahviら, Immunology and Cell Biology 75:456-460 (1997)に記載の遺伝子ガンアプローチにより、実施することができる。樹状細胞の抗原負荷は、樹状細胞又は前駆細胞を、ポリペプチド、DNA(裸のDNA又はプラスミドベクター中のDNA)やRNAと共に;又は組換え細菌若しくはウイルス(例えば、ワクシニア、鶏痘、アデノウイルス又はレンチウイルスベクター)を発現する抗原と共にインキュベートすることにより、実施できる。負荷の前に、ポリペプチドを、T細胞を援助する免疫学的パートナー(例えば、担体分子)と共有結合させることができる。あるいは、樹状細胞を非共有結合した免疫学的パートナーと共に、別々に、又はポリペプチドの存在下でパルスできる。
ワクチン及び医薬組成物は、単位用量又は複数回投与用容器中に、例えば密封したアンプル又はバイアル中に、存在させることができる。かかる容器は、好ましくは、製剤の保存性のために使用するまで気密密封される。一般に、製剤は、懸濁液、溶液又はエマルジョンとして、油性又は水性ビヒクル中に保存できる。あるいは、ワクチン又は医薬組成物は、使用する直前に無菌液体担体を加えることのみを必要とする凍結乾燥状態で、保存することができる。
診断キット
本発明は、任意の上記診断方法において使用するためのキットをさらに提供する。かかるキットは、典型的には診断アッセイを実施するのに必要な2以上の成分を含む。成分は、化合物、試薬、容器及び/又は装置であり得る。例えば、キット内の1つの容器は、タンパク質に特異的に結合するモノクローナル抗体又はそのフラグメントを含み得る。かかる抗体又はフラグメントは、上記のように支持物質と結合させることができる。1以上の追加の容器に、部材、例えば試薬又は緩衝液を包含させることにより、アッセイで利用することができる。かかるキットはさらに又は他に、抗体結合の直接的又は間接的な検出に適したレポーター基を含む上記検出試薬を、含むことがある。
あるいは、生物学的サンプル中のタンパク質をコードするmRNAのレベルを検出できるように、キットを設計し得る。かかるキットは通常、タンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズする上記オリゴヌクレオチドプローブ又はプライマーを少なくとも1つ含む。かかるオリゴヌクレオチドは、例えばPCR又はハイブリダイゼーションアッセイで利用できる。かかるキット中に存在させることができる追加成分には、第2のオリゴヌクレオチド及び/若しくは診断用試薬、又は本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドの検出を促す容器が含まれる。
他の診断用キットには、細胞媒介性応答の検出のために設計したもの(例えば、本発明の診断方法で使用されるものであり得る)が含まれる。かかるキットは典型的には、以下:
(i)被験体から適切な細胞サンプルを入手するための器具;
(ii)該細胞サンプルを、本発明のクラミジア抗原(若しくはその免疫原性フラグメント、又はかかる抗原をコードするDNA若しくはフラグメント)の組み合わせで刺激するための手段;
(iii)刺激に対する細胞応答を検出又は定量するための手段を含むであろう。
細胞応答を定量するのに好適な手段には、当業者に公知のB細胞ELISPOTキット又は、他にT細胞ELISPOTキットが含まれる。
本明細書に引用される全ての刊行物及び特許出願は、それぞれの個別の刊行物又は特許出願が、特別に及び個別に本明細書で示されているかのように、参照により本明細書に取り込まれているものとする。
上記発明は、明確な理解を目的とした例示及び実施例によって詳述されるが、ある変更及び修正が添付の特許請求の範囲の精神又は範囲を逸脱せずになされ得ることは、本発明の教示に照らせば、当業者には容易にわかるであろう。
次の実施例は例示のみを目的して提供され、これに限定されるものではない。当業者であれば、本質的に同様の結果を得るために変更又は変形され得る種々の非決定的パラメーターを、容易に認識するであろう。
実施例1
クラミジア・トラコマチス組換えタンパク質の発現及び精製
組換えタンパク質を発現及び精製するために、N末端に6×ヒスチジンタグを取り込んで、幾つかのクラミジア・トラコマチス遺伝子をプラスミド中にクローニングした。
2つの完全長の組換えタンパク質Ct-622及びCt-875を、大腸菌中で発現させた。両方の当該遺伝子をCtL2及びCtE発現スクリーニングを用いて同定したところ、E血清型相同体が発現した。これらの遺伝子を増幅するのに使用したプライマーは、L2/E血清型の配列をもとにした。E血清型のゲノムDNAを鋳型として用いて、遺伝子を増幅した。一度増幅したら、N末端に6×Hisタグをつけて、フラグメントをpET-17b中にクローニングした。該組み換えプラスミドによりXL-Iブルー細胞を形質転換させた後、DNAをつくらせ、該クローンを完全に配列決定した。その後、組換えタンパク質の生産のために、該DNAを発現宿主BL21-pLysS(Novagen)に入れ形質転換させた。該タンパク質をIPTGで誘導し、標準的方法を用いてNi-NTAアガロース上で精製した。CTE622及びCTE875のDNA配列はそれぞれ配列番号:9及び7に開示され、それらのアミノ酸配列はそれぞれ配列番号:10及び8に開示される。
1つの完全長の組換えタンパク質Ct-089が、大腸菌中で発現した。該遺伝子を、CtL2発現スクリーニングを用いて同定したところ、E血清型相同体が発現した。これらの遺伝子を増幅するのに使用したプライマーは、L2血清型配列をもとにした。E血清型のゲノムDNAを鋳型として用いて、遺伝子を増幅した。一度増幅したら、N末端に6×Hisタグをつけて、フラグメントをpET-17b中にクローニングした。該組み換えプラスミドによりXL-Iブルー細胞を形質転換させた後、DNAをつくらせ、該クローンを完全に配列決定した。その後、組換えタンパク質の生産のために、該DNAを発現宿主BL21-pLysS細胞(Novagen)に入れ形質転換させた。該タンパク質をIPTGで誘導し、標準的方法を用いてNi-NTAアガロース上で精製した。
1つの完全長の組換えタンパク質Ct-460が、大腸菌中で発現した。該遺伝子を、CtL2及びCTE発現スクリーニングを用いて同定したところ、L2血清型相同体が発現した。この遺伝子を増幅するのに使用したプライマーは、L2血清型配列をもとにした。L2血清型のゲノムDNAを鋳型として用いて、遺伝子を増幅した。一度増幅したら、N末端に6×Hisタグをつけて、フラグメントをpET-17b中にクローニングした。該組み換えプラスミドによりXL-Iブルー細胞を形質転換させた後、DNAをつくらせ、該クローンを完全に配列決定した。その後、組換えタンパク質の生産のために、該DNAを発現宿主BL21-pLysE細胞(Novagen)に入れ形質転換させた。該タンパク質をIPTGで誘導し、標準的方法を用いてNi-NTAアガロース上で精製した。
1つの完全長の組換えタンパク質Ct-858が、大腸菌中で発現した。該遺伝子を、CtL2及びCTE発現スクリーニングを用いて同定したところ、E血清型相同体が発現した。この遺伝子を増幅するのに使用したプライマーは、L2/E血清型配列をもとにした。E血清型のゲノムDNAを鋳型として用いて、遺伝子を増幅した。一度増幅したら、N末端に6×Hisタグをつけて、フラグメントをpCRX2中にクローニングした。該組み換えプラスミドによりXL-Iブルー細胞を形質転換させた後、DNAをつくらせ、該クローンを完全に配列決定した。その後、組換えタンパク質の生産のために、該DNAを発現宿主Tuner DE3細胞(Novagen)に入れ形質転換させた。該タンパク質をIPTGで誘導し、標準的方法を用いてNi-NTAアガロース上で精製した。
1つの完全長の組換えタンパク質Ct-681が、大腸菌中で発現した。該遺伝子を、CtL2及びCTE発現スクリーニングを用いて同定したところ、F血清型相同体が発現した。クローン/pET-15-構築物はGSK (MompF)から入手した。一度増幅したら、N末端に6×Hisタグをつけて、フラグメントをpET-15b中にクローニングした。該組み換えプラスミドによりXL-Iブルー細胞を形質転換させた後、DNAをつくらせ、該クローンを完全に配列決定した。その後、組換えタンパク質の生産のために、該DNAを発現宿主BL21-pLysS 細胞に入れ形質転換させた。該タンパク質をIPTGで誘導し、標準的方法を用いてNi-NTAアガロース上で精製した。
2つの組換えタンパク質Ct-812及びCt-871のパッセンジャードメインを、大腸菌中で発現させた。Ct-812はCtL2及びCtE発現スクリーニングを用いて同定し、Ct-871はCtE発現スクリーニングを用いて同定した。両方の遺伝子について、L2血清型相同体が発現した。これらの遺伝子を増幅するのに使用したプライマーは、L2血清型の配列をもとにした。L2血清型のゲノムDNAを鋳型として用いて、遺伝子を増幅した。一度増幅したら、N末端に6×Hisタグをつけて、フラグメントをpET-17b中にクローニングした。該組み換えプラスミドによりXL-Iブルー細胞を形質転換させた後、DNAをつくらせ、該クローンを完全に配列決定した。その後、組換えタンパク質の生産のために、該DNAを発現宿主BL21-pLysS細胞(Novagen)に入れ形質転換させた。該タンパク質をIPTGで誘導し、標準的方法を用いてNi-NTAアガロース上で精製した。
実施例2
クラミジア・トラコマチス抗原の5つの異なる組み合わせとアジュバントを含む製剤
下表の抗原の組み合わせを次のとおり準備した。5μgの各抗原を50μlのPBS中で混合した後、リポソームを含むコレステロールで製剤化した3D-MPL及びQS21を含むAS01Bアジュバント50μlと混合し、投与当たりの全容量を100μlにした。
該抗原を混合した後、アジュバントの最終組成は次のとおりとした:
3D-MPL 100μg/ml
QS21 100μg/ml
DOPC 2 mg/ml
コレステロール 0.5 mg/ml
実施例3
マウスモデルにおけるクラミジア・トラコマチス抗原の組み合わせの試験-クラミジア生殖管感染に対する免疫方法
この実施例は、実施例2に記載のクラミジア抗原の組み合わせを用いた予防接種により、マウスにおいてクラミジア感染を顕著に防御できることを実証する。
ヒトでの感染病理と極めて類似するように、クラミジア・トラコマチス(Ct)のヒトK血清型株による生殖管感染のマウスモデルを開発した。このモデルを、異なる血清型由来のCt-特異抗原の数多くの組み合わせでマウスを免疫した時の有効性を評価するために使用した。特に、実施例2に記載のアジュバントの組み合わせ製剤を用いて、Balb/cマウス及びC57Bl/6マウスに予防接種した。このモデルを第3のマウス株DBAでも攻撃したが、該モデルでは、陽性対照(ASO1B中に製剤されたUV照射クラミジア基本小体(UVEB))においても、又は抗原の組み合わせで予防接種したマウスにおいても、Ctチャレンジに対する防御が立証されることはなかった。
2つの注射液を、3週間の間隔を隔ててマウスの尾の根元に投与した。最後の予防接種の4週間後に、5×105封入形成単位(IFU)の精製されたクラミジア・トラコマチスE血清型で、膣内に感染させる前に、1.25 mgのプロゲステロンで動物を処置した。陽性対照であるASO1B中に製剤した10μgのUVEBで、及び陰性対照であるアジュバントAS01B単独で、マウスを免疫した。感染から7日後、下部生殖管をスワブして、McCoy細胞を用いてIFUを測定することにより、細菌排出量を定量した。幾つかの実験では、感染から10日後にマウスを犠牲にし、UGTをホモジナイズし、McCoy細胞を用いてIFUを測定することにより、上部生殖管における細菌負荷量を定量した。
図1及び2に示すとおり、組み合わせ1、1'、2、3、4、5、5'又は6によるマウスの予防接種は、Balb/cマウスモデルにおいて、クラミジア感染に対し有意な防御(p<0.01〜p<0.001)をもたらすという驚くべき結果を示す。さらに、図3及び5で示すとおり、組み合わせ1、1'、5及び5'で予防接種し、K血清型でチャレンジした第2のマウス防御モデルC57Bl/6中で、防御効果が確認される(p<0.001 Dunnetの多重比較検定)。
より優れた統計解析のために、Balb/cマウスにおける3つの実験から得た7日目の菌排出データを集めた(図1)。UVEBで免疫した群での細菌排出量の平均値は、AS01B対照群の平均値と比べ1.8対数 (log) 分少ない。UVEBで免疫した群での細菌排出量の平均値は、全てのほかの試験した群と比べ、有意に少ない(両側t検定 p<0.05)。全ての抗原の組み合わせは、AS01B対照群と比べた場合、約1対数分(0.8〜1.1)細菌排出量の平均値を有意に減少させた(p<0.01; Dunnetの多重比較検定)。統計解析では、6つの抗原の組み合わせによって誘発される防御における差異は検出されなかった(Tukey-検定及びt-検定)。したがって、試験抗原の組み合わせを用いたBalb/cマウスの免疫方法により、細菌排出に対する有意な防御が、K血清型による膣のチャレンジモデルで誘導された。
次に、本発明者らは、Balb/c及びC57Bl/6マウスにおいて、一連の折り返し(back to back)確認実験を開始し、組み合わせ1及び5と、組み合わせ1及び5の2つの改変版、すなわち組み合わせ5'(組み合わせ5にPmpD-pdを加えたもの)及び組み合わせ1’(組み合わせ1からMompFを除いたもの)とを、比較した。第2の免疫方法の4週間後に、プロゲステロンで処置したBalb/c又はC57Bl/6マウス8匹の群を、膣内用量5×105IFUのK血清型でチャレンジした。Balb/cマウスでの実験データを図2に示す。細菌排出量は、クラミジアによるチャレンジ後7日目に採取したスワブから定量した。UGT中のクラミジア負荷を定量するために、10日目にマウスを犠牲にした。これらの実験のデータを、統計解析のために一緒に集めた(図2)。UVEB免疫方法は、下部生殖管における細菌排出に対し、16匹のマウスのうち12匹を完全に保護した(チャレンジ後7日目)。さらに、チャレンジ後10日目には、16匹のマウスのうち11匹のUGTで、クラミジアが検出されなかった。LGT中の細菌排出量及びUGT中の細菌負荷量の平均値はいずれも、ASO1B単独の対照群と比べ、組み合わせ1又は組み合わせ5で免疫したマウス中で少なくとも1対数分減少した。組み合わせ1及び組み合わせ5の組成物の改変版(抗原の数を増加又は減少させたもの)、すなわち組み合わせ1’及び組み合わせ5'は、防御を改善しなかった。Dunnetの多重比較検定を用いると、AS01B対照群の平均値と比べた場合、全ての群の細菌排出量の平均値間で、統計学的に有意な差が以下のp値で認められた。
AS01B 対 UVEB p<0.001
AS01B 対 組み合わせ5 p<0.001
AS01B 対 組み合わせ5’ p<0.001
AS01B 対 組み合わせ1 p<0.001
AS01B 対 組み合わせ1’ p<0.05
Balb/cマウスにおける前述の確認実験と同様に、統計解析では抗原の組み合わせ間を区別できなかった。UGT中の細菌負荷量の統計解析では、UVEBで免疫した群の平均値のみが、AS01B対照群の平均値よりも、有意に低いことを確認した。
C57Bl/6マウスにおける、組み合わせ1及び5を用いた折り返し(back to back)確認実験での細菌排出量を、図3に示す。折り返し実験で得たデータを、統計解析のために集めた。実験は、Balb/cのプロトコールどおりに実施した。細菌排出量は、クラミジアによるチャレンジ後7日目に採取したスワブから定量した。抗原の組み合わせ1、1’、5及び5’を用いた免疫方法は、それぞれ1〜2対数分、細菌排出に対し有意な防御を誘導した(p<0.001;Dunnetの多重比較検定)。統計解析では、該組み合わせで免疫したマウスの細菌排出量の平均値の間で、なんら統計学的な差を認めなかった。
最終統計解析では、Balb/c(1群あたり31匹のマウス)における5つの確認実験及びC57Bl/6マウス(1群あたり21匹のマウス)における3つの確認実験から得たデータを集め、図4及び5に示した。確認実験では、選択した組み合わせ1及び5が、Balb/c(p<0.001)及びC57Bl/6マウス(p<0.001)の両方において、細菌排出に対し有意な防御を誘導することが実証された。該データは、Balb/cマウスにおける実験的設計試験で同定された抗原の組み合わせも、C57Bl/6マウスにおいて防御を誘導することを裏付けた。該データはまた、これらの組み合わせを用いた免疫方法が、UVEBを用いた免疫方法と同様に、Balb/cマウスよりも、C57Bl/6マウスにおいて一層高い防御レベルを誘導することを示す。
実施例4
Ct-089、Ct-858及びCt-875の配列比較
方法
クラミジア・トラコマチスE血清型は、一般的な眼の血清型であり、他の配列と比較される対照として選択した。
アミノ酸配列比較のための多重アラインメントは、Lasergeneソフトウェアパッケージ、バージョン5.0(DNASTAR, Inc., Madison, WIが販売)において利用可能なCLUSTAL W プログラムを用いて、実施した。基本となる多重アラインメントアルゴリズムは3ステップの実施手順を含む:配列のペア毎の相違をもたらす距離行列を計算するために、全ての配列のペアを分離してアラインし、次に距離行列からガイドツリーを計算し、そして最後にガイドツリーの順番に漸進的にアラインメントを行う。CLUSTAL Wアルゴリズムは、Thompsonら, Nuc. Acids Res. 22:4673-4680 (1994)に記載されている。該アラインメントを、図6、7a/7b及び8a/8bに示す。
T-ヘルパー細胞エピトープは、HLAクラスII分子と結合したペプチドであり、T-ヘルパー細胞により認識される。E血清型由来のCT089、CT858及びCT875クラミジア・トラコマチスポリペプチド上に存在すると予測されるT-ヘルパー細胞エピトープは、Sturnioloら, Nature Biotech. 17:555-561 (1999)に記載のTEPITOPE方法に基づいて、予測した。良好な候補となるT細胞エピトープを含むペプチドを、図6、7a/7b及び8a/8bにおいて(灰色のボックスで)明らかにした。
結果
図9は、Ct-089配列の比較結果を示す。図10は、Ct-858配列の比較結果を示す。図11は、Ct-875配列の比較結果を示す。
クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089は、クラミジア・トラコマチスA、B、D、G、H、I、J、K及びL2血清型由来のCt-089と高いレベルの配列同一性を示す。同一性の最低レベルは97.4%であり、10個の血清型のうち8個は少なくとも98%の同一性を有する。眼のA及びB血清型は、E血清型に対し特に高い同一性を示し、その値はそれぞれ99.5%及び99.8%である。
クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-858は、クラミジア・トラコマチスA、B、D、G、H、I、J、K及びL2血清型由来のCt-858と非常に高いレベルの配列同一性を示す。同一性の最低レベルは99.7%であり、眼のJ血清型及びLGV血清型L2は完全同一性を示す。
クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-875は、クラミジア・トラコマチスA、B、D、G、H、I、J、K及びL2血清由来のCt-089と高いレベルの配列同一性を示す。同一性の最低レベルは94.9%であり、10個の血清型のうち8個は少なくとも98%の同一性を有する。
3つのタンパク質Ct-089、Ct-858及びCt-875のそれぞれについて、HLA DRB1で予測される(E血清型に対する)エピトープの割合は、試験した全ての血清型において完全に保存されており、非常に高く、それぞれ77%、95%及び80%であると予想される。
比較目的で、図12、13及び14は、他のクラミジア・トラコマチス血清型及び他のクラミジア種由来の等価物と共に、E血清型由来のCt-089、Ct-858及びCt-875に関する配列アラインメントをそれぞれ示す。Cpnはクラミジア・ニューモニエ由来の対応配列を示し、MoPnはクラミジア・ムリダルム由来の対応配列を示す。
結論
要約すると、3つのタンパク質Ct-089、Ct-858及びCt-875はそれぞれ、試験した全てのクラミジア・トラコマチス血清型において高度に保存された配列を有する。
さらに、データは配列変異の程度と特定の血清型が関与する疾患状態との間には、関連がないことを示す。例えば、Ct-089では、眼生殖器E血清型は眼のA及びB血清型と最も高い相同性を示すが、Ct-858では、E血清型は眼生殖器J血清型及びLGV血清型L2と最も高い相同性を示す。
Ct-089、Ct-858及びCt-875と、他のクラミジア種中の等価性タンパク質との配列相同性は、比較的低い。
Ct-089、Ct-858及びCt-875の抗原特性については、先行技術で既に報告されている。しかしながら、当業者の予測とは裏腹に、低い配列変異が見られることから、Ct-089、Ct-858及びCt-875、その免疫原性フラグメント又はそれらをコードするポリヌクレオチドを含み、第1のクラミジア・トラコマチス血清型由来のワクチンは、第2のクラミジア・トラコマチス血清型によるクラミジア感染の治療又は予防において、利用可能であると予測される。
実施例5
D、E、J及びK血清型由来のクラミジア・トラコマチス基本小体の精製
精製した基本小体が、ワクチン試験被験体のチャレンジのために、及び後述の実施例で陽性対照ワクチンとして使用するUV照射基本小体(UVEB)の調製のために、必要であった。
方法
それぞれのクラミジア・トラコマチス血清型由来のEBを調製した。簡単にいうと、全ての血清型をコンフルエントなMcCoy細胞単層中で別々に成長させ、その後、接種の直前に1μg/mlのシクロヘキシミドを補充したRPMI培地(75cm2培養フラスコ)で培養した。フラスコに、感染した細胞から得た精製していないライゼートであって106〜107感染形成単位(IFU)を含むものを、スクロースリン酸グルタミン酸(SPG)中で接種した。フラスコを、2000 rpmで1時間、卓上細胞培養物遠心分離機内で回転させ、その後、48又は72時間、37℃、CO2雰囲気下でインキュベートした。精製目的で準備される少なくとも20フラスコ分の高度に感染した(80%を超える細胞が感染した)細胞集団となるまで、このプロセスを繰り返した。クラミジア基本小体を、一連のHypaque勾配(30%、52%、44%及び40%)を介した超遠心分離法により、途中、SPG中で洗浄して精製した。
結果
各クラミジア・トラコマチス血清型について精製したEBの力価を、クラミジア力価感染性アッセイ及び免疫蛍光顕微鏡法を用いて(FITCと結合した抗-C.トラコマチス抗体及びPBSに溶解したエバンスブルーを用いて)評価し、1 ml当たりのIFUの数を計算した。得られた精製EBの力価は、1.2×106〜2.6×109 IFU/mlの範囲にあることがわかった。
実施例6
Ct-089、Ct-858及びCt-875タンパク質の発現及び精製
試験ワクチンを調製するために、後述の実施例で利用する精製したクラミジア・トラコマチスE血清型、Ct-089、Ct-858及びCt-875タンパク質のストックを、大腸菌中でそれらの遺伝子を発現させることにより作製した。
方法
コンピテントな大腸菌株BL21 plys E、Tuner(DE3)及びBL21 plys Sを、それぞれCt-089、Ct-858及びCt-875発現プラスミドで形質転換し、適切な抗菌選択培地上で生育した。得られた発現クローンを小型誘導プロトコールで使用し、タンパク質収率をSDS-PAGEで分析した。この過程で細胞が十分に成長し、イソプロピル-β-D−チオガラクトピラノシド(IPTG)によってタンパク質が誘導され、クーマシーブルー染色SDSゲル上で検出するのに十分量となった場合には、該クローンを大規模誘導実験(IPTG, 1 mM)で使用した。
CHAPS溶液中での細胞の溶解及び遠心分離後に、可溶性及びペレット状の分画の一定分量(アリコート)をSDS-PAGEで解析して、目的のタンパク質の大部分が、該ペレット又は可溶性の分画中に存在するかどうかを決定した。各抗原の大部分を含む分画を(タンパク質の適切な可溶化の後で)、Ni-NTAカラム精製に供した。調製物の一定分量(Ni-NTAと結合させる前に得た物質、カラム素通り画分、カラム洗浄画分、及びカラム溶出画分を含む)を、SDS-PAGEで分析した。溶出したタンパク質を含む画分を合わせ、10 mM Tris(pH 8又はpH 10)に対して透析し、滅菌濾過し、さらに濃縮した。該濃縮したCTタンパク質画分についてBCAタンパク質アッセイを行い、SDS-PAGEで純度を評価した。
実施例7
クラミジア・トラコマチスD、K及びJ血清型を用いたチャレンジに対し、クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089、Ct-858及びCt-875を含むワクチンによって誘導された防御の評価
クラミジア・トラコマチスE血清型抗原由来のCt-089、Ct-858及びCt-875を含むワクチンによってもたらされる防御を、異種(すなわち、非E血清型)のクラミジア・トラコマチス血清型由来のEBを用いた膣におけるチャレンジ実験で調べた。
方法
本試験は、63匹の6週令の雌のC57Bl/6マウスを用いて実施した。これらのマウスを、21匹のマウスからなる3グループに分け、各グループを異なる血清型(クラミジア・トラコマチスD、K、又はJ血清型)でチャレンジした。そして、該グループをそれぞれ7匹のマウスからなるサブグループにさらに分けた。これらの3つのサブグループは、50μlの異なるワクチン調製物をそれぞれの前頸骨に筋肉内注射して免疫し、3週間後に再度免疫した(総量100μl)。マウスのサイクルを同調させるために、チャレンジの10日及び3日前に、プロゲステロン1.25 mg(容量100μl)の皮下注射によりマウスをさらに処置した。3つの試験調製物は次のとおりとした:
(i)アジュバント対照(AS01B)
利用したアジュバントは、3D-MPL、QS21及びコレステロールを含むリポソーム製剤をベースにした。アジュバント溶液の最終組成は次のとおりとした:
3D-MPL 100μg/ml
QS21 100μg/ml
DOPC 2 mg/ml
コレステロール0.5 mg/ml
リン酸緩衝生理食塩水は、9 mM Na2HPO4、48 mM KH2PO4及び100 mM NaCl(pH 6.1)から調製した。
脂質、コレステロール及び3D-MPLの混合物を有機溶媒中で調製した後、これを真空下で乾燥させた。その後PBSを加え、容器を懸濁液ができるまで撹拌した。そして、この懸濁液をリポソームサイズが約100 nmになるまで(小型単層小胞体又はSUVを意味する)微小流体化した。続いて、SUVを0.2μmのフィルターを通過させて滅菌した。
滅菌したSUVを、適量の水性QS21(濃度2 mg/ml)と混合し、最終的に所望の濃度を得るために、リン酸緩衝生理食塩水を加えた。その後、必要であれば水酸化ナトリウム又は塩酸を用いて、pHを6.1(+/- 0.1)に調整した。
(ii)AS01Bアジュバントを含むUVで弱毒化したクラミジア・トラコマチス基本小体
10μgのUV処理したE血清型由来のクラミジア・トラコマチス基本小体(UVEB)とアジュバントを含む調製物(上記のとおり)。
(iii)AS01Bアジュバントを含むCt-089、Ct-858及びCt-875
クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089(5μg)、Ct-858(5μg)及びCt-875(5μg)を含有し、アジュバントを含む調製物(上記のとおり)。
マウスを、麻酔下で(Ketaject及びXylajectを1:1)、最後の増強(boost)から4週間後に、20μlのスクロースホスフェートグルタミン酸(SPG)に懸濁させた1×106 IFUのD、K又はJ血清型を用いてチャレンジした。
10日間継続して感染させ、生殖器のスワブを麻酔下で4日目及び7日目に採取した。マウスは10日目に安楽死させ、病理検査及び力価測定のために子宮角を取り出した。力価測定のために、UGTの半分をホモジナイズし、McCoy細胞を用いてIFUを定量した。
チャレンジ後4、7、及び10日目に収集したサンプル(膣のスワブ)を、37℃で融解させた。少量のガラスビーズ(Sigma)を各サンプルへ加えた後、1 mlのSPG中で5分間攪拌した。100μlの各サンプルを、24-ウェルプレート内で1μg/mlのシクロヘキサミドを含む培地中のMcCoy細胞の単層上に接種した。37℃インキュベーターに移す前に、プレートを2000 rpmで1時間回転させた。インキュベーション時間は、固定前に48〜72時間である。
インキュベーション後、-20℃で前冷却したメタノールを用いて細胞を固定した。各ウェルにメタノールを充填し、少なくとも10分間-20℃で放置した。その後、ヤギ抗クラミジア・トラコマチスFITC-結合ポリクローナル抗体(Chemicon)で染色する前に、プレートをPBSで3回洗浄した。該染色溶液は、エバンスブルー染色液(Sigma)、FITC-結合抗C.トラコマチス抗体、及びPBSで構成した。エバンスブルー染色液はPBSで1:200に希釈し、FITC-結合抗C.トラコマチス抗体は1:100に希釈した。500μlの染色溶液を各ウェルに加えた。その後、プレートを37℃で1.5〜2時間インキュベートした。
インキュベーション期間後、該染色液を吸引した。また、振とうプラットホーム上でPBSを用いてプレートを1回につき少なくとも5分かけて5回洗浄した。最終洗浄の後、1 mlのPBSを各ウェルに加え、プレートを力価測定のために準備した。
3つの方法を、スワブ当たりのIFU数を計算するのに使用した。第1の方法は、蛍光顕微鏡下で10個の無作為領域をカウントした後、次式を用いるものである:
n×10×190(対物レンズ10×を用いる)
n×10×283(対物レンズ20×を用いる)
n×10×1180(対物レンズ40×を用いる)
ここで、nは10個の無作為領域中でカウントした封入体の平均値であり、10は希釈倍率で、また190、283及び1180はそれぞれの焦点変換係数である。
全ウェル中で少ない封入体しか観察されない場合には、次の方法を使用した:
s×10
ここで、sはウェル中でカウントした封入体の数であり、10は希釈倍率である。
最終的に封入体が全く観察されなかった場合には、IFU/スワブを表すものとして、任意の値である7を選択した。これは、スワブの10分の1で封入体が検出されなかったとしても、封入体が全スワブ中に存在しないとは必ずしもいえないという仮説に基づいた。
結果
図15〜17は、実施例7の結果を示す。
図15は、チャレンジ後4日目を表す。本発明のCt-089、Ct-858及びCt-875で免疫したマウスは、アジュバント対照と比べ低レベルの排出量を示す。そのうえ、排出量レベルはUVEBによる免疫により得たものと通常、類似している(K血清型でチャレンジした場合には低いレベルが得られ、D血清型でチャレンジした場合には高レベルが得られる)。
チャレンジから7日後、アジュバント対照の投与を受けたマウスは、UVEBで又はCt-089、Ct-858及びCt-875で免疫したマウスよりも、高レベルの排出量を示す(図16を参照されたい)。UVEB及びCt-089、Ct-858及びCt-875で免疫したマウスは両方とも、非常に低いレベルの排出量を示す。
図17は、チャレンジから10日後、アジュバント対照の投与を受けたマウスのUGTは、細菌によって高度にコロニー形成されていることを示す。UVEB及びCt-089、Ct-0858及びCt-875で免疫したマウスは両方とも、UGTにおいて低度のコロニー形成を示し、本発明の処置は通常、UVEBによる処置よりもわずかに低いレベルのコロニー形成を示す。
統計解析は、クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089、Ct-0858及びCt-875抗原を用いる処置は、陰性対照(アジュバント単独)と比べ、クラミジア・トラコマチスJ血清型でチャレンジしたマウスにおいて有意な防御をもたらすことを示す(p<0.01 Dunnetの多重比較検定)。抗原処置とUVEB処置の間には有意な差は見られない(p>0.05)。
クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089、Ct-858及びCt-875抗原を用いた処置は、4日目及び7日目にクラミジア・トラコマチスD血清型でチャレンジしたマウスにおいて、陰性対照(アジュバント単独)と比べ有意な防御をもたらした(p<0.05)。抗原処置とUVEB処置の間には有意な差は見られない(p>0.05)。
クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089、Ct-858及びCt-875抗原を用いた処置は、陰性対照(アジュバント単独)と比べ、4日目及び10日目にクラミジア・トラコマチスK血清型でチャレンジしたマウスにおいて、それぞれp<0.05及びp<0.01で有意な防御をもたらす。抗原処置とUVEB処置の間には有意な差は見られない(p>0.05)。
結論
実施例7で行った実験は、クラミジア・トラコマチスE血清型由来の3つのタンパク質Ct-089、Ct-858及びCt-875の組み合わせが、実質的な防御応答を誘発できることを確認し、統計学的に有意であることを示している。この防御応答は、他の血清型によるチャレンジに対しても広い防御をもたらすことができる応答である。特に、E及びK血清型は、もっとも広く多様なクラミジア・トラコマチス血清型であり、当該2つのクラミジア・トラコマチス血清型間で観察される交差防御は、Ct-089、Ct-858及びCt-875抗原の組み合わせが、クラミジア感染の治療又は予防において広い用途を有することが期待できることを示唆する。
Ct-089、Ct-858及びCt-875を含むワクチン製剤により与えられる防御のレベルは、UVEBを使用した場合と類似していることがわかっているが、基本小体全体の使用に伴うリスクを考慮すれば、精製したタンパク質の使用が明らかに望ましい。
実施例8
高感受性マウス系統C3H/HeNにおけるクラミジア・トラコマチスK及びJ血清型を用いたチャレンジに対し、クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089、Ct-858及びCt-875を含むワクチンによって誘導された防御の評価
Ct-089、Ct-858及びCt-875E血清型抗原を含むワクチンによってもたらされる防御を、異種(すなわち、非E血清型)のクラミジア・トラコマチスK及びJ血清型由来のEBを用いた膣におけるチャレンジ実験で調べた。
方法
本試験は、41匹の15週令の雌のC3H/HeNマウス(クラミジア感染に対し高感受性であることが既知の系統)を用いて実施した。これらのマウスを2つのグループにわけ、1つはクラミジア・トラコマチスK血清型でチャレンジし、もう一方はJ血清型でチャレンジした。そして、該グループを3つのサブグループにさらに分け、当該サブグループは、50μlの異なるワクチン調製物をそれぞれの前頸骨に筋肉内注射して免疫し、4週間後に再度免疫した(総量100μl)。各サブグループは7匹のマウスを含み、アジュバント対照で免疫したものとK血清型でチャレンジした6匹のマウスを含むグループを確保する。マウスのサイクルを同調させるために、チャレンジの10日及び3日前に、プロゲステロン1.25 mg(容量100μl)の皮下注射によりマウスをさらに処置した。3つの試験調製物は次のとおりとした:
(i)アジュバント対照(AS01B)
利用したアジュバントは、3D-MPL、QS21及びコレステロールを含むリポソーム製剤をベースにした。アジュバント溶液の最終組成は次のとおりとした:
3D-MPL 100μg/ml
QS21 100μg/ml
DOPC 2 mg/ml
コレステロール0.5 mg/ml
アジュバントは、実施例7において上記したとおり調製した。
(ii)AS01Bアジュバントを含むUVで弱毒化したクラミジア・トラコマチス基本小体
10μgのUV処理したE血清型由来のクラミジア・トラコマチス基本小体(UVEB)とアジュバントを含む調製物(上記のとおり)。
(iii)AS01Bアジュバントを含むCt-089、Ct-858及びCt-875
クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089(5μg)、Ct-858(5μg)及びCt-875(5μg)を含有し、アジュバントを含む調製物(上記のとおり)。
マウスを、麻酔下で(Ketaject:Xylajectは1:1、マウスあたり30μl IP、20μlをそれぞれの大腿部に注射)、最後の増強(boost)から4週間後に、20μlのスクロースホスフェートグルタミン酸(SPG)に懸濁させた1×106 IFUのK又はJ血清型を用いてチャレンジした。
10日間継続して感染させ、生殖器のスワブを麻酔下で4日目及び7日目に採取した。マウスは10日目に安楽死させ、病理検査及び力価測定のために子宮角を取り出した。力価測定のために、UGTの半分をホモジナイズし、実施例7に記載のとおりMcCoy細胞を用いてIFUを定量した。
力価測定の検出限界は10 IFUであるから、ウェル当たり1封入は10 IFUとしてプロットした。封入数が1未満の場合には、任意の値として7を割り当てた。
結果
図18〜20は、実施例8の結果を示す。
図18は、クラミジア・トラコマチスK又はJ血清型のいずれかを用いたチャレンジの4日後に、クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089、Ct-858及びCt-875で免疫したマウスが、アジュバント対照と比べ低いレベルの排出量を示すことを表す。さらに、該排出量のレベルは、UVEBによる免疫で得たレベルに匹敵している。
チャレンジから7日後、アジュバント対照の投与を受けたマウスは、UVEBで又はCt-089、Ct-858及びCt-875で免疫したマウスよりも、高レベルの排出量を示す(図19を参照されたい)。UVEB及びCt-089、Ct-858及びCt-875で免疫したマウスは両方とも、非常に低いレベルの排出量を示す。
図20は、クラミジア・トラコマチスK又はJ血清型のいずれかを用いたチャレンジから10日後に、アジュバント対照の投与を受けたマウスのUGTが、細菌によって高度にコロニー形成されていることを示す。UVEB及びCt-089、Ct-0858及びCt-875で免疫したマウスは両方とも、UGTにおいて低度のコロニー形成を示す。
統計解析は、クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089、Ct-0858及びCt-875抗原を用いる処置は、陰性対照(アジュバント単独)と比べ、クラミジア・トラコマチスJ血清型でチャレンジしたマウスにおいて有意な防御をもたらすことを示す(p<0.01)。抗原処置とUVEB処置の間に有意差は見られない(p>0.05)。
クラミジア・トラコマチスE血清型由来のCt-089、Ct-858及びCt-875抗原を用いた処置は、7日目及び10日目にK血清型でチャレンジしたマウスにおいて、陰性対照(アジュバント単独)と比べ、それぞれp<0.05及びp<0.01で有意な防御をもたらした。抗原処置とUVEB処置との間には有意差は見られない(p>0.05)。
結論
実施例8で行った実験は、クラミジア・トラコマチスE血清型由来の3つのタンパク質Ct-089、Ct-858及びCt-875が、実質的な防御的免疫応答を誘発できることを確認するものであり、統計学的に有意であることを示す。該防御は、他の血清型によるチャレンジに対しても広い防御をもたらす応答である。
Ct-089、Ct-858及びCt-875を含むワクチン製剤により与えられる防御のレベルは、UVEBを使用した場合に匹敵していることがわかったが、基本小体全体の使用に伴うリスクを考慮すれば、精製したタンパク質の使用が明らかに望ましい。
実施例9
クラミジア抗原による刺激に対する血清陽性の個体の応答
多くのクラミジア抗原に対する血清陽性の被験体の応答を調べることにより、クラミジア・トラコマチス抗原が、クラミジア・トラコマチス感染に対するヒトの通常免疫応答において特に重要であるかどうかを調査した。
方法
異なる場所から得た3つの被験体グループを、本試験で用いた:
(i)クラミジア・トラコマチスに対しIgG陽性である25人の妊娠女性(BRで表す)
(ii)クラミジア・トラコマチスに対しIgG又はPCR陽性である19人の女性(ANで表す)
(iii)混合した性別の16個体(CRで表す)-
(a)生殖器のクラミジア・トラコマチス感染症を治療した7名の親であって、リガーゼ連鎖反応及び血清力価により同定された者。
(b)クラミジア疾患歴のない9名であって、非排出(non-shedding)ドナー、すなわち、クラミジア抗原に対するT細胞応答で同定され、本試験への組み入れ時には細菌排出していなかった者。クラミジア・トラコマチスIFN-γ及びクラミジア・ニューモニエIFN-γ応答は、0.3×106 PBMCを、1μg/mlの各クラミジア基本小体で刺激することにより調べた。72時間後に上澄液を採取し、IFN-γ特異的なELISAで解析した。
血清学的検査は、Virion-Serionにより供給されるIgG及びIgM補体結合試験を用いて、BRの被験体及びグループに対し実施し、ANで表される被験体は、同一の検査を用いるか、又はPCR-技術(Cobas Amplicor(登録商標))を用いるかのいずれかによって、膣からのサンプルをスクリーニングした。
in vitroアッセイを実施することにより、様々なクラミジア・トラコマチス抗原及びその組み合わせに対する該被験体のT細胞応答を評価した。末梢血単核細胞(PBMC)サンプルは、へパリンを加えた全血から、標準的実施手順に従いFicoll-Hypaque濃度勾配遠心分離により得た。細胞を洗浄し、検査まで液体窒素中で凍結保存する(詳細については、Lalvani A, Moris Pら. J. Infect. Dis. 1999 180:1656-1664を参照されたい)。
CRグループの被験体では、各クラミジア・トラコマチス抗原に対し特異的な免疫応答を、トリチウム化チミジンを用いてリンパ球増殖分析を行うことにより特性付けた。この技術は、抗原に対するin vitro刺激による細胞増殖を評価した。実際には、細胞増殖は、トリチウム化チミジンのDNAへの取り込み、すなわちそれによる細胞数における変化と密接に関連したプロセスを予測することにより、定量した。
AN及びBRグループの被験体では、各クラミジア・トラコマチス抗原に対し特異的な免疫応答を、カルボキシ蛍光ジアセテートのスクシンイミジルエステル(CFSE)を用いて、リンパ球増殖分析を行うことにより特性付けた。CFSEは、自然に及び不可逆的に、リジン側鎖及び他の利用可能なアミン基との反応により、細胞内タンパク質及び細胞表面タンパク質の両方と結合する。リンパ球細胞が分裂すると、CFSE標識は娘細胞の間で等しく分布されるので、親の蛍光性の半分となる。その結果、細胞の蛍光強度の半減は、増殖細胞集団での成功した発生をそれぞれ意味し、フローサイトメトリーにより容易に追跡される(さらなる詳細については、Hodgkins, PDら J. Exp. Med. 1996 184:277-281を参照されたい)。
実際、融解後にPMBCを洗浄し、72時間、10μg/mlの抗原を用いて培養液(グルタミン、非必須アミノ酸、ピルビン酸及び熱不活性化ヒトAB血清でを補充したRPMI-1640)中で培養する前に(2×105細胞)、CFSEで染色した。その後、細胞を採取し、それらの表現型を、表面染色法を用いて特性付けることにより、記憶CD8及びCD4+T細胞を同定した。続いて、フローサイトメトリー解析は、各抗原に応じたリンパ球増殖の強度(in vitro刺激に応じてCFSE密度が減少した細胞部分)を示した。
結果
図21は、特異抗原に対する試験被験体のCD4応答を示し、この場合、BR及びANグループにおけるレスポンダーは、シグナル対ノイズ比が少なくとも2:1を示すものと定義する。CRグループにおけるレスポンダーは、S/N>10の増殖性及びドナー被験体から生じたT細胞由来の500μg/mlのIFN-γ応答と定義する。レスポンダーの割合は、試験される特定の抗原及び被験体グループの両方により変化が見られる。ANグループが通常、最も多いレスポンダー数(8例中5例)を示し、CRグループが通常、最も少ないレスポンダー数(8例中6例)を示すが、特異的な細胞応答については、別の技術基準で評価した。BR及びANグループの被験体はいずれも、Ct-875抗原に対し最大の応答を示す。図22では、BR及びANグループにおいて、シグナル対ノイズ比が少なくとも3:1である場合のCD4応答をプロットした。
図23は、ある抗原に対する被験体のCD4応答を示し、それらの抗原の組み合わせに対する応答も示す(該組み合わせに対する応答は、表記NEで示したCR被験体グループについては調べなかった)。個別の抗原で観察された応答と比べ、Ct-875+Ct-858又はCt-858+Ct-089の組み合わせは、両方の被験体グループにおいてレスポンダーの割合を高くする。Ct-875+Ct-089の組み合わせは、Ct-875単独と比べレスポンダー数の改善をもたらさず、Ct-875+Ct-858+Ct-089の組み合わせもCt-875+Ct-858の組み合わせと比べレスポンダー数の改善をもたらさらないことがわかる。Ct-875+Ct-858+Ct-089+PmpDの4つの抗原の組み合わせは、BR被験体グループにおいて最大のレスポンダー数をもたらす(ANグループでは、Ct-875+Ct-858及びCt-875+Ct-858+Ct-089の組み合わせの両方について100%の応答が既に観察されている)。
結論
レスポンダーの発生頻度は、おそらくサンプルサイズ又は集団の相違が原因で、3つの被験体グループ間で一貫しなかったが、3つのグループ全てにおいてCt-858及びCt-875でよく認識された。
試験したヒトの血清陽性被験体では、2つの抗原の組み合わせに対する最適な応答は、Ct-875+Ct-858により与えられる。Ct-875が既在しない場合には、Ct-089のみが改善した応答もたらすようだが、一方でCt-089は、他の集団グループではCt-875+Ct-858以上の効果を有する。最大の応答は、Ct-875+Ct-858+Ct-089+PmpDの4つの抗原の組み合わせで観察した。
実施例9の結果に照らせば、本発明の抗原の組み合わせは、タンパク質全体、その免疫原性フラグメント又はこのどちらかをコードするポリヌクレオチドの形態で、ヒトのクラミジアワクチン及び関連する診断方法において特に価値があると予測するのが妥当である。