JP2012180330A - 口腔用組成物及び歯肉繊維芽細胞の活性酸素傷害抑制剤 - Google Patents

口腔用組成物及び歯肉繊維芽細胞の活性酸素傷害抑制剤 Download PDF

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Abstract

【課題】歯肉を構成する線維芽細胞が活性酸素により受ける細胞傷害を顕著に抑制でき、優れた歯周病予防効果を発揮する、アスコルビン酸リン酸エステル塩含有の口腔用組成物及び歯肉繊維芽細胞の活性酸素傷害抑制剤を提供する。
【解決手段】(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩と(B)アラビトールとを配合してなることを特徴とする口腔用組成物、及び(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩と(B)アラビトールとからなる歯肉繊維芽細胞の活性酸素傷害抑制剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、アスコルビン酸リン酸エステル塩に由来する歯肉繊維芽細胞における酸化ストレス傷害抑制効果が顕著に向上し、優れた歯周病予防効果を発揮する口腔用組成物及び歯肉繊維芽細胞の活性酸素傷害抑制剤に関する。
歯周病は、ポルフィロモナス ジンジバリス(P.gingivalis)等の嫌気性グラム陰性菌を主とした細菌による感染症であり、菌が産生する外毒素(ロイコトキシン等)や内毒素(リポ多糖等)によって炎症が誘発され、組織が損傷する。一方、生体では、好中球やリンパ球等が歯周ポケットや歯肉組織へ浸潤し、細菌を貪食するとともに、特異的な抗体を作ってこれら異物を排除する免疫応答が起こる。しかしながら、近年、貪食時に過剰に発生した活性酸素が、生体組織を更に損傷することが指摘されている。
例えば、歯肉を構成する繊維芽細胞が活性酸素によって傷害を受けると、コラーゲン繊維の破壊や細胞増殖能低下を招くため、歯肉が退縮して歯周病が進行する。このような中、アスコルビン酸の誘導体であるアスコルビン酸リン酸エステル塩は、アスコルビン酸塩に比べて安定性が高く、生体内に産生された過剰な活性酸素を消去して生体組織を酸化ストレス障害から保護する(非特許文献1;Journal of Dental Research(2001)、80巻、p536)とともに、炎症を抑制する効果(非特許文献2;ビタミン誌、82巻、2号、p127−130、2008)が報告されている。
一方、アスコルビン酸リン酸エステル塩は歯肉炎、歯周炎の予防・改善効果を期待されており、練歯磨剤やトローチなどの口腔用組成物への応用(特許文献1;特開平2−292211号公報、特許文献2;特開平3−294227号公報)が検討されてきた。これまでに、歯肉炎抑制効果(特許文献3;特開平9−175967号公報、特許文献4;特開平11−012142号公報)や活性酸素消去効果(特許文献5;特開平10−182390号公報、特許文献6;特開平11−021218号公報)等が報告されているとともに、カチオン性ポリマー併用による粘膜吸収性の向上技術(特許文献7;特開2004−83543号公報)や活性剤を併用した滞留性の向上技術(特許文献8;特開2009−149537号公報)等、歯周病予防のための更なる効果向上が検討されている。
歯科疾患実態調査によると、歯周病は罹患者が国民の8割と高いことが指摘されており、歯周病予防効果の更なる向上を可能にする口腔用組成物の開発が望まれる。
Journal of Dental Research(2001)、80巻、p536 ビタミン誌、82巻、2号、p127−130、2008
特開平2−292211号公報 特開平3−294227号公報 特開平9−175967号公報 特開平11−012142号公報 特開平10−182390号公報 特開平11−021218号公報 特開2004−83543号公報 特開2009−149537号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、歯肉を構成する線維芽細胞が活性酸素により受ける細胞傷害を顕著に抑制でき、優れた歯周病予防効果を発揮する、アスコルビン酸リン酸エステル塩含有の口腔用組成物及び歯肉繊維芽細胞の活性酸素傷害抑制剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩に(B)アラビトールを併用することで、両成分が相乗的に作用して、アスコルビン酸リン酸エステル塩が有する歯肉繊維芽細胞の活性酸素傷害抑制効果が増強して顕著に高まり、更にその傷害抑制効果が長時間継続することを見出し、本発明をなすに至った。
更に詳述すると、アスコルビン酸リン酸エステル塩は、生体環境中のフォスファターゼ酵素によりリン酸エステルが分解されてアスコルビン酸になり抗酸化力を発揮するが、アスコルビン酸は水存在下で直ちに分解して抗酸化力のないシュウ酸やスレオン酸に代謝されるため、一般的に製剤中ではリン酸エステル塩として安定化しておく必要がある。一方、歯肉繊維芽細胞に活性酸素が付加される際にはアスコルビン酸リン酸エステル塩がフォスファターゼ酵素によりアスコルビン酸に分解されて細胞内に取り込まれていることが好ましいが、より長時間アスコルビン酸が抗酸化作用を発揮するには、アスコルビン酸リン酸エステル塩が緩やかにアスコルビン酸に分解されることが重要である。本発明では、アスコルビン酸リン酸エステル塩に糖アルコールの1種であるアラビトールを併用することで、その詳細なメカニズムは不明であるが、アスコルビン酸リン酸エステル塩の分解が緩やかになり高い抗酸化力が長時間継続すると推測される。
本発明において、アスコルビン酸リン酸エステル塩へのアラビトールの併用効果は、細胞培養液のような生体内を模した環境下においても発揮されるが、アラビトールに特有の効果であり、同じ糖アルコールであってもソルビトール、エリスリトール、パラチニット、キシリトールなどでは達成できない、格別なものである。
従って、本発明は、(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩と(B)アラビトールとを配合してなることを特徴とする口腔用組成物、及び(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩と(B)アラビトールとからなる歯肉繊維芽細胞の活性酸素傷害抑制剤を提供する。
本発明によれば、アスコルビン酸リン酸エステル塩に由来する歯肉繊維芽細胞における酸化ストレス傷害抑制効果が顕著に向上し、活性酸素を付与された歯肉線維芽細胞の傷害抑制効果が高く、かつ長時間継続して発揮される口腔用組成物を提供できる。
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明は、(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩と(B)アラビトールとを配合することを特徴とする。
(A)成分のアスコルビン酸リン酸エステル塩は、アスコルビン酸の2、3、5、6位のいずれかの水酸基の1つ又は2つ以上がリン酸、ポリリン酸等の化合物のエステルとなったものであり、例えば、アスコルビン酸−2−リン酸エステル、アスコルビン酸−3−リン酸エステル、アスコルビン酸−6−リン酸エステル、アスコルビン酸−2−ポリリン酸エステル等が挙げられ、その塩類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられる。特に口腔用として用いるものであり、歯肉炎予防効果の点からアスコルビン酸リン酸エステルのマグネシウム塩やナトリウム塩が好適に用いられる。
(A)成分のアスコルビン酸リン酸エステル塩は、市販品、例えばアスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウムは昭和電工社製、和光純薬工業社製等、アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウムは和光純薬工業社製、DSMニュートリションジャパン社製、BASFジャパン社製等を使用できる。
(A)成分のアスコルビン酸リン酸エステル塩の配合量は、細胞傷害抑制効果及び経時での細胞傷害抑制効果の点で、組成物全体の0.15〜14mmol/100g(含有アスコルビン酸のモル濃度換算)、特に0.35〜7.0mmol/100g(含有アスコルビン酸のモル濃度換算)が好適である。配合量が0.15mmol/100g未満では、細胞傷害抑制効果が十分でなく、14mmol/100gを超えると経時での細胞傷害抑制効果が低下することがある。
本発明では、(B)アラビトールを配合することで、(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩由来の肉繊維芽細胞の活性酸素傷害抑制効果を増強することができる。
(B)成分のアラビトールは、D−アラビノース及びL−リキソースを還元して得られる糖アルコールである。アラビトールには、D(+)−アラビトール及びL(−)−アラビトールがあるが、それぞれを単独で使用しても、2種を組み合わせて使用してもよい。アラビトールとしては市販品、例えば和光純薬工業社製、関東化学社製、シグマ社製のD(+)−アラビトール及びL(−)−アラビトールを使用できる。
(B)成分のアラビトールの配合量は、細胞傷害抑制効果及び経時での細胞傷害抑制効果の点で、組成物全体の20〜280mmol/100gであり、好ましくは65〜200mmol/100gである。アラビトールの配合量が20mmol/100g未満では、経時での細胞傷害抑制効果の低下が生じ、280mmol/100gを超えると、細胞傷害抑制効果が低下する場合がある。なお、アラビトールには、D(+)−アラビトール及びL(−)−アラビトールがあるが、それぞれ単独で、又は2種を組み合わせて使用することができる。
(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩と(B)アラビトールの配合割合((B)成分/(A成分))は、細胞傷害抑制効果及び経時での細胞傷害抑制効果の点で、モル比で10〜300、特に20〜200が好ましい。モル比が10未満では、アスコルビン酸リン酸エステル塩の経時での細胞傷害抑制効果の低下が生じ、300を超えると、細胞傷害抑制効果が低下する場合がある。
なお、本発明で使用するモル数は、一般的な周期表に準じ、例えば、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウムの分子量を289.54、アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウムの分子量を322.05、アラビトールの分子量を152.15として算出するものとする。
本発明の口腔用組成物は、各種形態や剤型に調製でき、例えば液体、液状、ペースト状などの形態として調製され、練歯磨、液体歯磨、液状歯磨、潤製歯磨等の歯磨剤、洗口剤などに調製できる。
本発明組成物は、剤型に応じて、本発明の効果を妨げない範囲で公知の任意成分を適宜配合できる。具体的には、上記各成分に加えて、歯磨剤の場合は、例えば研磨剤、粘結剤、(B)アラビトール以外の粘稠剤、界面活性剤、甘味剤、防腐剤、香料、(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩以外の有効成分、水等の溶媒、pH調整剤などを安定性及び有効性を損なわない範囲で配合し得る。また、洗口剤の場合は、例えば、(B)アラビトール以外の湿潤剤、界面活性剤、溶剤、緩衝剤、防腐剤、殺菌剤、香料、甘味剤、色素、(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩以外の有効成分などを配合できる。
以下に任意成分の具体例を示すが、本発明の組成物に配合可能な成分はこれらに制限されるものではない。
研磨剤としては、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、ゼオライト、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。
これらの研磨剤の配合量は、歯磨剤では組成物全体の2〜40%(質量%、以下同様。)、特に5〜20%とすることが好ましい。洗口剤では、配合しなくてもよく、組成物全体の0〜10%、特に0〜5%が好ましい。
粘結剤としては、例えば、プルラン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ポリアクリル酸ナトリウム、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。これら粘結剤は、1種を単独で、もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、通常、組成物全体に対して0.01〜3%配合することができる。
粘稠剤(湿潤剤)としては、例えば、ソルビトール等のアラビトール以外の糖アルコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、本発明の効果を妨げない範囲で配合することができ、通常、アラビトールとの合計で組成物全体に対して10〜60%がよい。
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の界面活性剤を配合することができる。界面活性剤としては、例えば、N−アシルアミノ酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、グリセリン脂肪酸エステルの硫酸塩などのアニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキロールアミドなどのノニオン界面活性剤などを使用できる。これら界面活性剤は、1種を単独でもしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、通常、組成物全体に対して0〜10%、特に0.01〜5%配合することができる。
甘味剤としては、例えば、サッカリンナトリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジンヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、p−メトキシシンナミックアルデヒド、ソーマチン等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン等のパラオキシ安息香酸エステル、エチレンジアミン四酢酸塩、塩化ベンザルコニウムなどが配合できる。
香料としては、ペパーミント油、スペアミント油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、オリガナム油、パインニードル油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油、グレープフルーツ油、スウィーティー油、柚油、イリスコンクリート、アブソリュートペパーミント、アブソリュートローズ、オレンジフラワー等の天然香料、及び、これら天然香料の加工処理(前溜部カット、後溜部カット、分留、液液抽出、エッセンス化、粉末香料化等)した香料、及び、l−メントール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3−l−メントキシプロパン−1,2−ジオール、チモール、リナロール、リナリールアセテート、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N−置換−パラメンタン−3−カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビールアセテート、アニスアルデヒド、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブタノール、イソアミルアルコール、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料、更に、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を組み合わせて使用することができる。
有効成分(薬用成分)として、クロロヘキシジン、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、塩化セチルピリジニウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸亜鉛等の殺菌又は抗菌剤、縮合リン酸塩、エタンヒドロキシジホスフォネート等の歯石予防剤、トラネキサム酸、グリチルリチン2カリウム塩等の抗炎症剤、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド等のコーティング剤、デキストラナーゼ、ムタナーゼ等の酵素剤、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アスコルビン酸、塩化リゾチーム、グリチルリチン酸及びその塩類、塩化ナトリウム、乳酸アルミニウム等の収斂剤、塩化ストロンチウム、硝酸カリウム等の知覚過敏抑制剤などを、薬剤学的に許容できる範囲で使用することができる。
また、溶剤としてエタノール、水等を配合し得る。
本発明組成物のpHは、口腔粘膜刺激等の使用感や歯牙の脱灰への影響を考慮すると通常はpH5〜10、より好ましくは6〜9の範囲が汎用的である。pH調整剤としては、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸、リン酸、リンゴ酸、グルコン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタミン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等の酸やアルカリ、緩衝剤を適量配合し得る。
なお、これら任意成分の配合量は本発明の効果を損なわない範囲で通常量とすることができる。
以下、実験例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記例中の%はいずれも質量百分率を示す。
使用した主原料の詳細は、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム(昭和電工社製)、アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム(和光純薬工業社製)、アスコルビン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、D(+)−アラビトール(シグマ社製)、L(−)−アラビトール(関東化学社製)、キシリトール(ロケット・フルーレ社製)、パラチニット(三井製糖社製)、エリスリトール(三菱化学フーズ社製)、ソルビトール(東和化成工業社製)である。
〔実験例1〕 細胞傷害抑制評価
表1〜5に示す組成の口腔用組成物(実施例1〜26、比較例1〜10)を調製した。調製は、アスコルビン酸リン酸エステル塩又は比較品のアスコルビン酸塩を溶解した精製水中に、アラビトール又は比較品の糖アルコールを常温で添加し、スリーワンモーターと回転羽根を有する撹拌機で撹拌して均一液とした。その後、pHメーター(HM−26S、東亜電波工業株式会社)を用いて、pH調整剤によりpHを6〜9に調整して、口腔用組成物を得た。
次に、市販の歯肉線維芽細胞Gin−1(DSファーマバイオメディカル社製)を10%牛胎児血清(FBS)含有Dullbecco’s Modified Eagle Medium(D−MEM)中で、37℃、5%CO2の条件下で前培養した。5×104cells/mLに調製したGin−1を48ウェルプレートに400μL播種し、更に24時間培養した。培養液を除去後、調製した口腔用組成物をそれぞれ添加(10%FBS含有D−MEMで100倍希釈)して24時間、薬剤処置した。処置終了後、1mMの過酸化水素を含むD−MEM(活性酸素を想定)を60分間添加した。但し、過酸化水素無処置の場合は、D−MEMのみを添加した。D−MEMを除去後、細胞活性試薬(Calcein AM;インビトロジェン社製)を200μL添加し、37℃、5%CO2条件下で30分間インキュベートした。その後、プレートリーダー(Fluoroskan Ascent;Labsystems社製)を用いて、Ex/Em=485nm/538nmの条件下で蛍光強度を測定した。下記式から算出した結果を細胞傷害抑制率とした。細胞傷害抑制評価はn=10で実施し、平均値を算出した。これらの結果を表1〜5に示す。
細胞傷害抑制率(%)=(過酸化水素処置した場合の蛍光強度)/(過酸化水素無処置の場合の蛍光強度)×100
〔実験例2〕 細胞傷害抑制効果の経時評価
〔実験例1〕において、調製した口腔用組成物を添加して薬剤処置する時間を48時間まで延長する以外は同様にして、経時での細胞傷害抑制効果を評価した。実験方法及び細胞傷害抑制率の算出方法は〔実験例1〕と同様である。これらの結果を表1〜5に示す。
Figure 2012180330
Figure 2012180330
Figure 2012180330
Figure 2012180330
Figure 2012180330
表1〜5に示した実験例1,2の結果から、(A)及び(B)成分を適切に配合した口腔用組成物(実施例)は、細胞傷害抑制率及び経時での細胞傷害抑制率の高さに優れることが確認された。
これに対して、本発明の必須要件のいずれかを欠く場合(比較例)、即ち、(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩が配合されていない場合、(B)アラビトールが配合されていない場合、(A)アスコルビン酸リン酸エステル塩の代わりにアスコルビン酸塩を配合した場合、(B)アラビトールの代わりにソルビトール等の他の糖アルコールを配合した場合は、細胞傷害抑制率が低かったり、(A)及び(B)成分の相乗効果が認められず、特に経時での細胞傷害抑制率が低いことが分かった。
下記に更なる実施例を示す。それぞれの口腔用組成物は下記方法で調製した。
なお、使用した主原料の詳細は、アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム(昭和電工社製)、アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム(和光純薬工業社製)、D(+)−アラビトール(シグマ社製)、L(−)−アラビトール(関東化学社製)である。
歯磨剤の調製方法は、以下の通りである。まず、アラビトール等の湿潤剤を含む精製水中にアスコルビン酸リン酸エステル塩やpH調整剤などの水溶性成分を常温で混合後、更に粘結剤、保存料、着色剤などを混合し、ディスパーで分散させた。ニーダー中に分散液、香味剤、研磨剤などを入れて混合後、界面活性剤を加えた。ニーダー内を4kPaまで減圧して脱泡を行い、更に混合を続けて歯磨剤を得た。
洗口剤の調製方法は、以下の通りである。アラビトール等の湿潤剤を含む精製水中にアスコルビン酸リン酸エステル塩やpH調整剤などの水溶性成分を常温で完全に溶解させた。更に粘結剤、界面活性剤、保存料、着色剤、エタノールなどを混合し、スリーワンモーターと回転羽根を有する撹拌機で撹拌し、均一液として洗口剤を得た。
〔実施例27〕 (歯磨剤)
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム 0.3
(1.0mmol/100g)
D(+)−アラビトール 20.0
(131mmol/100g)
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.72
無水ケイ酸 20.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 0.5
プロピレングリコール 5.0
ポリアクリル酸ナトリウム(レオジック250H;日本純薬株式会社製)0.4
キサンタンガム(モナートガムDA;CPケルコ社製) 0.6
サッカリンナトリウム 0.1
香料 0.8
安息香酸ナトリウム 0.2
リン酸水素二カリウム(pH調整剤) 適量
精製水 残
計 100.0%
pH;8.4
アラビトール/アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩のモル比; 127
〔実施例28〕 (歯磨剤)
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム 1.0
(3.5mmol/100g)
L(−)−アラビトール 30.0
(197mmol/100g)
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.72
無水ケイ酸 15.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
プロピレングリコール 3.0
ポリエチレングリコール 1.5
アルギン酸ナトリウム(I−1;株式会社キミカ製) 0.5
カラギーナン(GENUVISCO PJ−JPE;CPケルコ社製) 0.8
デキストラナーゼ 0.2
サッカリンナトリウム 0.3
香料 1.2
メチルパラベン 0.1
リン酸水素二ナトリウム(pH調整剤) 適量
精製水 残
計 100.0%
pH8.4
アラビトール/アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩のモル比; 57
〔実施例29〕 (歯磨剤)
アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム 0.3
(0.9mmol/100g)
D(+)−アラビトール 20.0
(131mmol/100g)
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.72
無水ケイ酸 15.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
プロピレングリコール 4.0
キサンタンガム(サンエースB−S;三栄源エフエフアイ株式会社製) 0.2
ポリアクリル酸ナトリウム(レオジック250H;日本純薬株式会社製)0.15
85%グリセリン 5.0
トリクロサン 0.1
サッカリンナトリウム 0.15
香料 0.6
メチルパラベン 0.1
水酸化ナトリウム(pH調整剤) 適量
精製水 残
計 100.0%
pH8.8
アラビトール/アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩のモル比; 141
〔実施例30〕 (歯磨剤)
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム 0.14
(0.5mmol/100g)
D(+)−アラビトール 10.0
(66mmol/100g)
モノフルオロリン酸ナトリウム 3.5
無水ケイ酸 20.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
プロピレングリコール 2.0
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.2
(1220;ダイセル化学工業株式会社製)
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.5
(サンローズF10LC;日本製紙株式会社製)
塩化セチルピリジニウム 0.02
サッカリンナトリウム 0.2
香料 0.5
安息香酸ナトリウム 0.4
リン酸水素二カリウム(pH調整剤) 適量
精製水 残
計 100.0%
pH6.3
アラビトール/アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩のモル比; 136
〔実施例31〕 (歯磨剤)
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム 0.3
(1.0mmol/100g)
D(+)−アラビトール 20.0
(131mmol/100g)
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.72
無水ケイ酸 20.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.5
ポリオキシエチレン(平均付加EO 20モル)硬化ヒマシ油 0.5
プロピレングリコール 3.0
アルギン酸ナトリウム(I−1;株式会社キミカ製) 0.5
カラギーナン(GENUVISCO PJ−JPE;CPケルコ社製) 0.2
サッカリンナトリウム 0.2
香料 0.8
安息香酸ナトリウム 0.5
リン酸水素二ナトリウム(pH調整剤) 適量
精製水 残
計 100.0%
pH7.0
アラビトール/アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩のモル比; 127
〔実施例32〕 (歯磨剤)
アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム 0.3
(0.9mmol/100g)
D(+)−アラビトール 20.0
(131mmol/100g)
モノフルオロリン酸ナトリウム 1.14
無水ケイ酸 20.0
ラウリル硫酸ナトリウム 0.3
ポリオキシエチレン(平均付加EO 20モル)硬化ヒマシ油 1.2
プロピレングリコール 2.0
アルギン酸ナトリウム(ULV−3;株式会社キミカ製) 0.2
ポリアクリル酸ナトリウム(レオジック250H;日本純薬株式会社製)0.4
キサンタンガム(モナートガムDA;CPケルコ社製) 0.6
デキストラナーゼ 0.3
サッカリンナトリウム 0.15
香料 0.8
安息香酸ナトリウム 0.5
リン酸水素二ナトリウム 適量
精製水 残
計 100.0%
pH7.2
アラビトール/アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩のモル比; 141
〔実施例33〕 (歯磨剤)
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム 1.0
(3.5mmol/100g)
D(+)−アラビトール 20.0
(131mmol/100g)
モノフルオロリン酸ナトリウム 0.72
無水ケイ酸 15.0
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
プロピレングリコール 4.0
キサンタンガム(サンエースB−S;三栄源エフエフアイ株式会社製) 0.2
ポリアクリル酸ナトリウム(レオジック250H;日本純薬株式会社製)0.15
85%グリセリン 5.0
トリクロサン 0.1
サッカリンナトリウム 0.15
香料 0.6
メチルパラベン 0.1
水酸化ナトリウム(pH調整剤) 適量
精製水 残
計 100.0%
pH6.7
アラビトール/アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩のモル比; 38
〔実施例34〕 (洗口剤)
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム 0.3
(1.0mmol/100g)
D(+)−アラビトール 30.0
(197mmol/100g)
カラギーナン(GENUVISCO PJ−JPE;CPケルコ社製) 0.4
ポリオキシエチレン(平均付加EO 60モル)硬化ヒマシ油 0.4
塩化ベンザルコニウム 0.02
サッカリンナトリウム 0.1
85%グリセリン 7.0
エタノール 2.0
安息香酸ナトリウム 0.3
香料 0.3
水酸化ナトリウム(pH調整剤) 適量
精製水 残
計 100.0%
pH8.3
アラビトール/アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩のモル比; 190
〔実施例35〕 (洗口剤)
アスコルビン酸−2−リン酸エステルナトリウム 0.3
(0.9mmol/100g)
D(+)−アラビトール 20.0
(131mmol/100g)
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
(サンローズF10LC;日本製紙株式会社製)
ポリオキシエチレン(平均付加EO 60モル)硬化ヒマシ油 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
プロピレングリコール 5.0
デキストラナーゼ 0.2
安息香酸ナトリウム 0.3
香料 0.3
リン酸水素二ナトリウム(pH調整剤) 適量
精製水 残
計 100.0%
pH8.7
アラビトール/アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩のモル比; 141
〔実施例36〕 (洗口剤)
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム 0.3
(1.0mmol/100g)
D(+)−アラビトール 10.0
(66mmol/100g)
ポリアクリル酸ナトリウム(レオジック250H;日本純薬株式会社製)0.05
ポリオキシエチレン(平均付加EO 60モル)硬化ヒマシ油 0.4
リン酸水素二ナトリウム 0.3
グリチルリチン酸 0.2
サッカリンナトリウム 0.1
85%グリセリン 4.0
エタノール 5.0
安息香酸ナトリウム 0.4
香料 0.3
精製水 残
計 100.0%
pH7.0
アラビトール/アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩のモル比; 63
〔実施例37〕 (洗口剤)
アスコルビン酸−2−リン酸エステルマグネシウム 0.3
(1.0mmol/100g)
D(+)−アラビトール 30.0
(197mmol/100g)
アルギン酸ナトリウム(ULV−3;株式会社キミカ製) 0.3
ポリオキシエチレン(平均付加EO 60モル)硬化ヒマシ油 0.3
サッカリンナトリウム 0.05
イソプロピルメチルフェノール 0.05
プロピレングリコール 3.0
デキストラナーゼ 0.2
安息香酸ナトリウム 0.3
香料 0.3
リン酸水素二カリウム(pH調整剤) 適量
精製水 残
計 100.0%
pH7.3
アラビトール/アスコルビン酸−2−リン酸エステル塩のモル比; 190

Claims (4)

  1. (A)アスコルビン酸リン酸エステル塩と(B)アラビトールとを配合してなることを特徴とする口腔用組成物。
  2. (B)成分/(A)成分のモル比が20〜200である請求項1記載の口腔用組成物。
  3. (B)アラビトールの配合量が20〜280mmol/100gである請求項1又は2記載の口腔用組成物。
  4. (A)アスコルビン酸リン酸エステル塩と(B)アラビトールとからなる歯肉繊維芽細胞の活性酸素傷害抑制剤。
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