従来の回転電機として、例えばタービン発電機では、軸方向に伸び、かつ、周方向に所定の間隔をもって複数のスロットが設けられた電機子鉄心に、巻線回路が形成されている電機子巻線を備えている。巻線回路は、スロット内に収められたコイルを直列に接続することで構成される極と、線路側端子及び中性点側端子とコイルを接続する亘り線とにより構成される。コイルと亘り線は、コイルエンド部において接続され、亘り線は、コイルとの接続部から電機子鉄心のコレクタリング側軸方向端部の空間を周方向に亘って、線路側端子及び中性点側端子と接続されている。
このような構成のタービン発電機を、図30に示す。
該図に示す如く、タービン発電機98は、2極3相の電機子巻線99を有しており、この電機子巻線99は、電機子鉄心201に設けられた36個のスロットに収容されており、電機子巻線99と電機子鉄心201により固定子203が構成されている。また、固定子203と略同軸に空隙を介して固定子203の内周に界磁発生装置を有する回転子204が配置されて、タービン発電機98が構成される。タービン発電機98の軸方向端部にはコレクタリングとブラシからなる給電装置が設けられ、他方の軸方向端部にはタービンが設けられ、回転子204に機械出力を伝達している。コレクタリング側には、電機子巻線99の各相の口出し線が配置され、それに伴ってブッシング及びターミナルボックスが配置され、電機子巻線99が、線路側端子及び中性点側端子と接続されている。
次に、図19乃至図24を用いて従来技術による電機子巻線の構成を説明する。
図19には、従来技術による36個のスロットに、3つの並列回路を有する2極3相のタービン発電機用の電機子巻線の展開図を示し、102はスロット部、103及び104はコイルエンド部である。尚、36スロットの例を説明するのは、説明を簡略化するためである。スロット数が増加しても、以下に説明する課題を同様に有する。例えば54スロット、72スロットなどでも同様である。
図19において、実線はU相、破線はV相、一点鎖線はW相をそれぞれ示している。図20にはそのU相分を、図21にはそのV相分を、図22にはそのW相分をそれぞれ示す。
図19乃至図22に記載されている1から36の番号は、スロット番号を示しており、1から順に周方向へ1、2・・・、36、1・・・と番号付けされている。それぞれのスロットには、スロット頭部側に収容される上コイルと、底部側に収容される底コイルの2つのコイルが収められている。図19乃至図22においては、スロット番号左側に上コイル、右側に底コイルが描かれており、例えば、スロット番号35において上コイルT35及び底コイルB35が図19に示されている。以下に示す巻線の展開図も同様である。
各相の電機子巻線は、3つの並列回路を有しており、これを3Y結線と言う。
それぞれの並列回路は、線路側端子から亘り線101を経由して各スロット内のコイルと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第一の極110U、110V、110Wを形成し、亘り線101を介して第一の極110U、110V、110Wと対となる第二の極111U、111V、111Wと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第二の極111U、111V、111Wを形成した後,亘り線101を経由して中性点側端子と接続されている。
ここで、各相の第一の極110U、110V、110Wと第二の極111U、111V、111Wは、周方向に180度ずれて配置される。また、U相の第一の極110U、V相の第一の極110V、W相の第一の極110Wは、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、同様にU相の第二の極111U、V相の第二の極111V、W相の第二の極111Wは、周方向にそれぞれ120度ずれて配置される。
また、亘り線101は、線路側端子U1〜U3、V1〜V3、W1〜W3とスロット内コイルを接続する亘り線UL1〜UL3、VL1〜VL3、WL1〜WL3と、第一の極と第二の極を構成するコイルを接続する極間亘り線UP1〜UP3、VP1〜VP3、WP1〜WP3、中性点側端子X1〜X3、Y1〜Y3、Z1〜Z3とスロット内コイルを接続する亘り線UN1〜UN3、VN1〜VN3、WN1〜WN3とにわけられる。
従来技術による、それぞれの並列回路の構成を以下に説明する。
U相回路は、U相回路1、U相回路2、U相回路3が並列接続されることで構成される。以下、U相回路1、U相回路2、U相回路3の構成を説明する。
U相回路1は、線路側端子U1から亘り線UL1を経由して、接続箇所TU1にて上コイルT1と接続される。U相回路1における第一の極110Uは、上コイルT1、底コイルB16、上コイルT4、底コイルB19を順次直列に接続することで構成され、第二の極111Uは、底コイルB3、上コイルT24、底コイルB36、上コイルT21を順次直列に接続することで構成される。第一の極110Uと第二の極111Uは、亘り線UP1で接続されており、亘り線UP1と第一の極110Uは、底コイルB19と接続箇所TUp11にて接続され、亘り線UP1と第二の極111Uは、底コイルB3と接続箇所TUp21にて接続される。第二の極と中性点側端子X1は、亘り線UN1で接続されており、亘り線UN1と第二の極111Uは、上コイルT21と接続箇所TX1にて接続される。
U相回路2は、線路側端子U2から亘り線UL2を経由して、接続箇所TU2にて上コイルT2と接続される。U相回路2における第一の極110Uは、上コイルT2、底コイルB17、上コイルT5、底コイルB20を順次直列に接続することで構成され、第二の極111Uは、底コイルB2、上コイルT23、底コイルB35、上コイルT20を順次直列に接続することで構成される。第一の極110Uと第二の極111Uは、亘り線UP2で接続されており、亘り線UP2と第一の極110Uは、底コイルB20と接続箇所TUp12にて接続され、亘り線UP2と第二の極111Uは、底コイルB2と接続箇所TUp22にて接続される。第二の極と中性点側端子X2は、亘り線UN2で接続されており、亘り線UN2と第二の極111Uは、上コイルT20と接続箇所TX2にて接続される。
U相回路3は、線路側端子U3から亘り線UL3を経由して、接続箇所TU3にて上コイルT3と接続される。U相回路3における第一の極110Uは、上コイルT3、底コイルB18、上コイルT6、底コイルB21を順次直列に接続することで構成され、第二の極111Uは、底コイルB1、上コイルT22、底コイルB34、上コイルT19を順次直列に接続することで構成される。第一の極110Uと第二の極111Uは、亘り線UP3で接続されており、亘り線UP3と第一の極110Uは、底コイルB21と接続箇所TUp13にて接続され、亘り線UP3と第二の極111Uは、底コイルB1と接続箇所TUp23にて接続される。第二の極と中性点側端子X3は、亘り線UN3で接続されており、亘り線UN3と第二の極111Uは、上コイルT19と接続箇所TX3にて接続される。
V相回路とW相回路は、U相回路をそれぞれ周方向に120度、240度ずらした配置となっており、V相回路1とW相回路1がU相回路1、V相回路2とW相回路2がU相回路2、V相回路3とW相回路3がU相回路3と対応している。図21及び図22におけるV相回路とW相回路を構成するコイル、亘り線、接続箇所の記号は、図20に示したU相の記号の「U」を「V」又は「W」、「X」を「Y」又は「Z」に変えることで対応する。
図23に従来例の各亘り線とコイルの接続箇所を軸方向から見た図を示す。これより、コイルと亘り線のそれぞれの接続箇所は、3相間で120度ずつずれて周期的に配置されていることが確認される。
具体的には、接続箇所(TU1、TU2、TU3)、(TV1、TV2、TV3)、(TW1、TW2、TW3)は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、接続箇所(TX1、TX2、TX3)、(TY1、TY2、TY3)、(TZ1、TZ2、TZ3)は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、接続箇所(TUp11、TUp12、TUp13)、(TVp11、TVp12、TVp13)、(TWp11、TWp12、TWp13)は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、接続箇所(TUp21、TUp22、TUp23)、(TVp21、TVp22、TVp23)、(TWp21、TWp22、TWp23)は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置される。
後述する特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載の構成と比較すると、各並列回路の詳細な構成は異なるものの、特許文献2、特許文献3及び特許文献4に記載の構成は、3相を120度ずつ周期的に各相を配置する構成であるため、コイルと亘り線のそれぞれの接続箇所は上記と同様の構成となる。
以上のように構成することで、それぞれの並列回路に備えられた亘り線101は、亘り線列C1からC12まで12列に、コレクタリング側に軸方向に並んで、それぞれの亘り線101が互いに干渉を避けるよう配置される。亘り線101は、径方向へ並べて配置することも可能であるが、フレームなどの構造物と干渉する恐れがあるため、軸方向に配置することが望ましい。
ここで、図19に示した従来例の電機子巻線の展開図に着目すると、線路側端子V1〜V3、W1〜W3及び中性点側端子Y1〜Y3、Z1〜Z3付近において、V相線路側端子V1〜V3とコイルとを繋ぐ亘り線VL1〜VL3と、W相中性点側端子Z1〜Z3とコイルとを繋ぐ亘り線WN1〜WN3とが複数平行に配置されており、これが亘り線列数の多い一因であることわかる。即ち、図21において示される亘り線VL1〜VL3の周方向位置と、図22において示される亘り線WN1〜WN3の周方向位置が略同一であることから、それぞれの亘り線の干渉を避けるために亘り線列数が増加している。線路側端子及び中性点側端子付近は、これら端子との接続のため亘り線の本数が増加することから、これら端子付近での亘り線列数が増加により、全体の亘り線列数が増加している。これより、本構成では、これ以上の亘り線列数の低減は困難である。
図24に電機子巻線のコレクタリング側のコイルエンド付近の構成を示す。上コイルのコイルエンド部103T、又は底コイルのコイルエンド部103Bのコレクタリング側端部において、亘り線101とコイルが接続される。更に亘り線101は、発電機フレーム200と電機子鉄心201の端部に設けられた鉄心押板202との間の空間に12列に並んで配置され、周方向に亘った後、線路側亘り線及び中性点側亘り線は、線路側端子及び中性点側端子付近にてそれぞれの端子へ接続される。通常、発電機のフレーム200と鉄心押板202は、金属系の材料で構成されている。従って、各亘り線間、及び亘り線列C1と鉄心押板202、亘り線列C12と発電機フレーム200の間は、十分に絶縁距離を確保する必要がある。
しかしながら、亘り線101を12列で構成し、絶縁距離を確保しようとすると、発電機フレーム200を軸方向に長くする他になく、発電機全体が大型化することになる。また、発電機フレーム200の大きさを大型化せずに、各亘り線間、及び亘り線列C1と鉄心押板202、亘り線列C12と発電機フレーム200の距離を縮めて構成する場合、十分な絶縁距離を確保できずに絶縁破壊を起こす可能性が高まり、信頼性が低下することになる。また、亘り線間の距離が短くなることで、近接効果が大きくなり亘り線で発生する損失が大きくなる。
これにより、亘り線における局所的な温度上昇、発電機の効率の低下などが生ずる。また、亘り線列数が増加することにより、亘り線の支持が困難になり、その作業性が低下するなどの課題がある。
このような亘り線の構成例が、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1では、亘り線間の近接効果による損失を低減する構成が提案されている。亘り線間の近接効果とは、複数並んだ亘り線において、ある亘り線に着目した際に、他の亘り線に流れる電流による影響で、着目する亘り線の電流密度分布に偏りが起き、局所的な損失の増加を引き起こすことをいうが、特許文献1では、亘り線間の近接効果の低減のため、隣接する亘り線に流れる電流の位相差を180度、即ち、逆向きに電流が流れるよう亘り線を配置している。これにより、亘り線間の相互作用が小さくなり、近接効果が低減されることが記載されている。
また、大容量の発電機では、固定子巻線を複数の並列回路により構成することで巻線1本当りの電流を減らし、電磁力や温度上昇を緩和している。例えば、並列回路数が3以上となる場合の構成例として、各並列回路間の不平衡率を低減する事を目的としたものがあり、特許文献2、特許文献3、特許文献4などが挙げられる。
以下、図示した実施例に基づき、本発明の回転電機を詳細に説明する。尚、符号は、従来と同一のものは同符号を使用し、その説明は省略する。
図1に、本発明による36個のスロットに3つの並列回路を有する2極3相のタービン発電機用の電機子巻線の展開図を示し、102はスロット部、103及び104はコイルエンド部である。図2にはそのU相分を、図3にはそのV相分を、図4にはそのW相分をそれぞれ示す。
図1乃至図4に示すように、本実施例における電機子巻線は2種類の巻線回路を有する。第一の巻線回路は、線路側端子から亘り線101を経由してコイルと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第一の極110U,110V、110Wを形成し、亘り線101を介して第一の極110U、110V、110Wと対となる第二の極111U、111V、111Wを構成するコイルと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第二の極111U、111V、111Wを形成した後、亘り線101を経由して中性点側端子と接続される。第二の巻線回路は、線路側端子から亘り線101を経由してコイルと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第二の極111U、111V、111Wを形成し、亘り線101を介して第二の極111U、111V、111Wと対となる第一の極110U、110V、110Wを構成するコイルと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第一の極110U、110V、110Wを形成した後、亘り線101を経由して中性点側端子と接続される。
本発明では、3相のうち2相が第一の巻線回路で構成され、残りの1相が第二の巻線回路で構成されるか、若しくは2相が第二の巻線回路で構成され、残りの1相が第一の巻線回路で構成される。
本実施例では、U相回路とV相回路は、従来例と同様に3つの第一の巻線回路を並列接続することで構成され、W相回路は、3つの第二の巻線回路を並列接続することで構成されている。
また、各相の第一の極110と第二の極111は、周方向に180度ずれて配置され、U相の第一の極110U、V相の第一の極110V、W相の第一の極110Wは、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、同様にU相の第二の極111U、V相の第二の極111V、W相の第二の極111Wは、周方向にそれぞれ120度ずれて配置される。
ここで、亘り線101は、線路側端子U1〜U3、V1〜V3、W1〜W3とスロット内コイルを接続する亘り線UL1〜UL3、VL1〜VL3、WL1〜WL3と、第一の極と第二の極を構成するコイルを接続する極間亘り線UP1〜UP3、VP1〜VP3、WP1〜WP3、中性点側端子X1〜X3、Y1〜Y3、Z1〜Z3とコイルを接続する亘り線UN1〜UN3、VN1〜VN3、WN1〜WN3とに分けられる。
それぞれの並列回路の構成を以下に説明する。
U相回路は、U相回路1、U相回路2、U相回路3が並列接続されることで構成される。U相の各並列回路の構成は、亘り線の配置を除いて、図20に示した従来例と同様である。即ち、U相の各並列回路において、並列回路を構成するコイルの接続順、亘り線と各コイルとの接続箇所は、従来技術による構成と同様であり、亘り線の接続先の列番が、図2に示すように異なっている。
V相に関しても、U相と同様に、並列回路を構成するコイルの接続順、亘り線と各コイルとの接続箇所は、図21に示した従来技術による構成と同一であるが、亘り線の接続先の列番が、図3に示すように異なっている。V相を構成する各コイルは、U相を構成する各コイルを120度周方向にずらした配置となっている。
W相に関しては、各並列回路を構成する各スロット内コイルの組み合わせは、図22に示した従来技術による構成と同一であるが、亘り線とコイルの接続箇所、亘り線の配置が異なっている。以下に、その詳細を示す。
W相回路1は、線路側端子W1から亘り線WL1を経由して、接続箇所TW1にて底コイルB25と接続される。このとき、亘り線WL1は、線路側端子W1からC9列の亘り線のない空間を通り、周方向に亘ることなく接続箇所TW1に直接接続される。W相回路1は、第二の極111W、第一の極110Wの順で接続され、第二の極111Wは、底コイルB25、上コイルT10、底コイルB22、上コイルT7を順次直列に接続することで構成され、第一の極110Wは、上コイルT27、底コイルB6、上コイルT30、底コイルB9を順次直列に接続することで構成される。第二の極111Wと第一の極110Wは、亘り線WP1で接続されており、亘り線WP1と第二の極111Wは、上コイルT7と接続箇所TWp11にて接続され、亘り線WP1と第一の極110Wは、上コイルT27と接続箇所TWp21にて接続される。第一の極110Wと中性点側端子Z1は、亘り線WN1で接続されており、亘り線WN1と第一の極110Wは、底コイルB9と接続箇所TZ1にて接続される。
W相回路2は、線路側端子W2から亘り線WL2を経由して、接続箇所TW2にて底コイルB26と接続される。このとき、亘り線WL2は、線路側端子W2からC9列の亘り線のない空間を通り、周方向に亘ることなく接続箇所TW2に直接接続される。W相回路2は、第二の極111W、第一の極110Wの順で接続され、第二の極111Wは、底コイルB26、上コイルT11、底コイルB23、上コイルT8を順次直列に接続することで構成され、第一の極110Wは、上コイルT26、底コイルB5、上コイルT29、底コイルB8を順次直列に接続することで構成される。第二の極111Wと第一の極110Wは、亘り線WP2で接続されており、亘り線WP2と第二の極111Wは、上コイルT8と接続箇所TWp12にて接続され、亘り線WP2と第一の極110Wは、上コイルT26と接続箇所TWp22にて接続される。第一の極110Wと中性点側端子Z2は、亘り線WN2で接続されており、亘り線WN2と第一の極110Wは、底コイルB8と接続箇所TZ2にて接続される。
W相回路3は、線路側端子W3から亘り線WL3を経由して、接続箇所TW3にて底コイルB27と接続される。W相回路3は、第二の極111W、第一の極110Wの順で接続され、第二の極111Wは、底コイルB27、上コイルT12、底コイルB24、上コイルT9を順次直列に接続することで構成され、第一の極110Wは、上コイルT25、底コイルB4、上コイルT28、底コイルB7を順次直列に接続することで構成される。第二の極111Wと第一の極110Wは、亘り線WP3で接続されており、亘り線WP3と第二の極111Wは上コイルT9と接続箇所TWp13にて接続され、亘り線Wp3と第一の極110Wは、上コイルT25と接続箇所TWp23にて接続される。第一の極110Wと中性点側端子Z3は、亘り線WN3で接続されており、亘り線WN3と第一の極110Wは、底コイルB7と接続箇所TZ3にて接続される。
ここで、W相回路の構成において、図22に示した従来技術と異なる点は、亘り線とコイルの接続箇所及び亘り線の配置である。亘り線とコイルの接続箇所に関しては、次のように従来技術から本実施例で替わっている。即ち、従来技術で(TW1、TW2、TW3)であった接続箇所が、本実施例では(TWp23、TWp22、TWp21)と替わり、従来技術で(TWp11、TWp12、Tp13)であった接続箇所が、本実施例では(TZ3、TZ2mTZ3)と替わり、従来技術で(TWp21、TWp22、TWp23)であった接続箇所が、本実施例では(TW3、TW2、TW1)と替わり、従来技術で(TZ1、TZ2、TZ3)であった接続箇所が、本実施例では(TWp13、TWp12、TWp11)と替わっている。この接続箇所の替わりにおいて、W相回路を構成するコイルの電流の流入流出の向きは、従来技術と同じであるため、W相回路が作る起磁力分布も従来技術と同一であり、即ち、電気的な特性も従来技術と同一である。
図5に各亘り線とコイルの接続箇所を軸方向から見た図を示す。図5から明らかな如く、U相とV相のコイルと亘り線のそれぞれの接続箇所は、周方向に120度ずれて配置されているものの、W相は、他の相と120度ずつずれた配置ではない。つまり、コイルと亘り線のそれぞれの接続箇所は、3相間で120度ずつずれて配置される周期性を有していない。
具体的には、接続箇所(TU1、TU2、TU3)と(TV1、TV2、TV3)は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、(TV1、TV2、TV3)と(TW1、TW2、TW3)は、周方向に略同一の位置に配置される。この際に、(TV1、TV2、TV3)は上コイル側、(TW1、TW2、TW3)は底コイル側に配置される。また、接続箇所(TX1、TX2、TX3)と(TY1、TY2、TY3)は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、(TY1、TY2、TY3)と(TZ1、TZ2、TZ3)は、周方向に略同一の位置に配置される。この際に、(TY1、TY2、TY3)は上コイル側、(TZ1、TZ2、TZ3)は底コイル側に配置される。また、接続箇所(TUp11、TUp12、TUp13)と(TVp11、TVp12、TVp13)は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、(TUp11、TUp12、TUp13)と(TWp11、TWp12、TWp13)は、周方向に略同一の位置に配置される。この際に、(TUp11、TUp12、TUp13)は底コイル側、(TWp11、TWp12、TWp13)は上コイル側に配置される。また、接続箇所(TUp21、TUp22、TUp23)と(TVp21、TVp22、TVp23)は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、(TUp21、TUp22、TUp23)と(TWp21、TWp22、TWp23)は、周方向に略同一の位置に配置される。この際に、(TUp21、TUp22、TUp23)は底コイル側、(TWp21、TWp22、TWp23)は上コイル側に配置される。
以上のように、各相の電機子巻線を構成することで、それぞれの並列回路に備えられた亘り線101は、亘り線列C1からC10まで10列に、コレクタリング側に軸方向に並んで、それぞれの亘り線が互いに干渉を避けるよう配置される。即ち、従来技術と比較して、亘り線列数を2列低減できる。
ここで、図1に示した亘り線の配置は、亘り線列数を低減できる構成の1例であり、亘り線列を入れ替えるなどして、様々な配置が可能であり、本発明は図に示した形態に限定されるものではない。
以下に,本実施例により亘り線列数が低減される理由を説明する。
先に示した様に、従来例においては線路側端子V1〜V3、W1〜W3及び中性点側端子Y1〜Y3、Z1〜Z3付近において、V相線路側端子V1〜V3とスロット内コイルとを繋ぐ亘り線VL1〜VL3と、W相中性点側端子Z1〜Z3とスロット内コイルとを繋ぐ亘り線WN1〜WN3とが複数並列に並んでおり、これが亘り線列数の多い一因である。即ち、図21において示される亘り線VL1〜VL3の周方向位置と、図22において示される亘り線WN1〜WN3の周方向位置が略同一であることから、それぞれの亘り線の干渉を避けるために亘り線列数が増加している。線路側端子及び中性点側端子付近は、これら端子との接続のため亘り線の本数が増加することから、これら端子付近での亘り線列数の増加により、全体の亘り線列数が増加している。
本実施例は、上記の問題を解決することで、亘り線列数の低減を図った構成である。即ち、図4に示したW相電機子巻線の展開図に着目すると、従来例においてV相亘り線VL1〜VL3と略同一の周方向位置に配置されていたW相亘り線WN1〜WN3が、従来例と異なる位置に配置されていることがわかる。つまり、W相において、線路側端子及び中性点側端子とコイルを繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置と、極間を繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置を、他の相と120度ずつ周期的に配置される場合から替えている。これにより、従来例で亘り線列数増加の要因となっていた干渉が緩和される。
また、図4においてW相亘り線WL1、WL2が、周方向に亘ることなく、直接線路側端子W1、W2とコイルとが接続されることも、線路側端子及び中性点側端子付近での亘り線列数低減に寄与している。従来例では、線路側端子若しくは中性点側端子へ接続するためには周方向に亘ることが必須であり、直接線路側端子若しくは中性点側端子へ接続することは不可能であった。
これに対して、本実施例では、W相において、線路側端子及び中性点側端子とコイルを繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置と、極間を繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置を、他の相と120度ずつ周期的に配置される場合から替えたことで、接続箇所TW1、TW2が線路側端子W1、W2付近に配置され、直接線路側端子若しくは中性点側端子へ接続することを可能としている。
図6に、本実施例における電機子巻線のコレクタリング側のコイルエンド付近の構成を示す。従来例と同様に、亘り線101は、発電機フレーム200と電機子鉄心201の端部に設けられた鉄心押板202の間の空間に10列に並んで配置される。発電機フレーム200と鉄心押板202は、金属系の材料で構成されている。ここで、各亘り線間、亘り線と鉄心押板202、亘り線と発電機フレーム200の間は、十分に絶縁距離を確保する必要がある。
図6では、各亘り線間、亘り線と鉄心押板202、亘り線と発電機フレーム200の距離は、図24に示した従来例と同等としている。従来例では、亘り線101を12列で構成されるため、絶縁距離を十分に確保しようとすると、発電機フレーム200を軸方向に長くするほかになく、発電機全体が大型化する問題があった。
これに対して本実施例では、従来例と同等の絶縁距離を確保しているにも関わらず、亘り線列数が2列低減されることから、その分だけ発電機フレーム200が小型に構成されている。これにより、発電機全体が小型になり、材料費の削減などによりコストが低減される。
また、従来例と同等の大きさの発電機フレーム200を用いた場合、従来例よりも各亘り線間、及び亘り線と鉄心押板202、亘り線と発電機フレーム200の間の絶縁距離を大きくすることが可能となる。これにより、絶縁性における信頼性が向上する。
更に、従来例よりも各亘り線間の距離を大きくした場合、各亘り線間の近接効果が低減されることにより、各亘り線で発生する損失が低減される。これにより、タービン発電機の高効率化、各亘り線の温度上昇が低減されることによる信頼性の向上が達成される。
また、本実施例では、亘り線列数が低減されることにより、亘り線を支持するための構造及び作業が減少する。これにより、亘り線の組み立てでの作業性が向上する。
尚、本実施例では、説明を容易にするため電機子のスロット数を36個としたが、本実施例の構成は、スロット数に関わらず成立するものである。例えば、54スロット、72スロットなどにも同様の構成を適用することで、本実施例と同様の効果が得られる。
また、本実施例では、W相の3つの並列回路全てにおいて、線路側端子及び中性点側端子とコイルを繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置と、極間を繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置を、他の相と120度ずつ周期的に配置される場合から替えている。当然ながら、03つの並列回路のうち1つ又は2つの並列回路において、線路側端子及び中性点側端子とコイルを繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置と、極間を繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置を、他の相に対して120度ずつ周期的に配置される場合から替えることも可能であり、この場合でも本実施例と同様の効果が得られるが、その効果は小さくなる。
また、特許文献2、4に記載の構成にも本発明の技術を適用することが可能であり、亘り線列数の低減により種々の課題の解決が可能となる。
本実施例によれば、回転電機の電機子巻線において亘り線の列数が低減されることにより、亘り線間の絶縁性が確保され、小型の発電機が提供される。更には、亘り線の列数が低減されることで、近接効果の低減による亘り線における損失の低減、局所的な温度上昇の抑制、効率向上、亘り線の支持などの作業が容易になることによる作業性の向上が達成される。
以下に、本発明による第二の実施の形態について図面を参照して説明する。尚、第一の実施の形態と同様の構成の部分に関しては、説明を省略する。また、同一又は対応する部分に同一の符号を付して対応させている。
図7に、本発明の第二の実施例である3相分の電機子巻線の展開図を示す。本実施例は、第一の実施例と同様に、2極36スロット3Y結線である。図7において、実線はU相、破線はV相、一点鎖線はW相をそれぞれ示している。図8にはそのU相分を、図9にはそのV相分を、図10にはそのW相分をそれぞれ示す。
それぞれの相の電機子巻線は、第一の並列回路、第二の並列回路、第三の並列回路の3つの並列回路を有している。
第一の並列回路は、線路側端子から亘り線101を経由してスロット内のコイルと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第一の極110U、110V、110Wを形成し、亘り線101を介して、再度第一の極110U、110V、110Wを構成するコイルと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第一の極110U、110V、110Wを形成した後、亘り線101を経由して中性点側端子と接続されている。
また、第二の並列回路は、線路側端子から亘り線101を経由してスロット内のコイルと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第一の極110U、110V、110W(若しくは第二の極111U、111V、111W)を形成し、亘り線101を介して第一の極110U、110V、110W(若しくは第二の極111U、111V、111W)と対となる第二の極111U、111V、111W(若しくは第一の極110U、110V、110W)を構成するコイルと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第二の極111U、111V、111W(若しくは第一の極110U、110V、110W)を形成した後,亘り線を経由して中性点側端子と接続されている。
また、第三の並列回路は、線路側端子から亘り線101を経由してスロット内のコイルと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第二の極111U、111V、111Wを形成し、亘り線101を介して、再度、第二の極111U、111V、111Wを構成するコイルと接続され、複数の上コイル及び底コイルを順次直列に接続することで第二の極111U、111V、111Wを形成した後、亘り線101を経由して中性点側端子と接続されている。
ここで、亘り線101は、線路側端子U1〜U3、V1〜V3、W1〜W3とスロット内コイルを接続する亘り線UL1〜UL3、VL1〜Vl3、WL1〜WL3と、中性点側端子X1〜X3、Y1〜Y3、Z1〜Z3とスロット内コイルを接続する亘り線UN1〜UN3、VN1〜VN3、WN1〜WN3、並列回路1において第一の極から再度、第一の極へ亘る亘り線US1、VS1、WS1、並列回路2において第一の極と第二の極を構成するコイルを接続する極間亘り線UP2、VP2、WP2、並列回路3において第二の極から再度、第二の極へ亘る亘り線US3、VS3、WS3にわけられる。
それぞれの並列回路の構成を以下に説明する。
U相回路は、U相回路1、U相回路2、U相回路3が並列接続されることで構成される。以下、U相回路1、U相回路2、U相回路3の構成を説明する。
U相回路1は、線路側端子U1から亘り線UL1を経由して、接続箇所TU1にて上コイルT1と接続される。更に、上コイルT1、底コイルB16、上コイルT4、底コイルB19を順次直列に接続して第一の極を構成し、亘り線US1を介し、上コイルT3、底コイルB18、上コイルT6、底コイルB21を順次直列に接続することで再度、第一の極110Uを構成する。亘り線US1は、接続箇所TUS11にて底コイルB19と接続され、接続箇所TSU21において上コイルT3と接続される。更に、中性点側端子X1とは亘り線UN1で接続されており、亘り線UN1は、接続箇所TX1にて底コイルB21と接続される。
U相回路2は、線路側端子U2から亘り線UL2を経由して、接続箇所TU2にて底コイルB2と接続される。U相回路2は、第二の極、第一の極の順に直列に接続され、第二の極111Uは、底コイルB2、上コイルT23、底コイルB35、上コイルT20を順次直列に接続することで構成され、第一の極110Uは、上コイルT2、底コイルB17、上コイルT5、底コイルB20を順次直列に接続することで構成される。第二の極111Uと第一の極110Uは、亘り線UP2で接続されており、亘り線UP2と第二の極111Uは、上コイルT20と接続箇所TUp12にて接続され、亘り線UP2と第一の極110Uは、上コイルT2と接続箇所TUp22にて接続される。第一の極と中性点側端子X2は、亘り線UN2で接続されており、亘り線UN2と第一の極110Uは、底コイルB20と接続箇所TX2にて接続される。
U相回路3は、線路側端子U3から亘り線UL3を経由して、接続箇所TU3にて底コイルB3と接続される。更に、底コイルB3、上コイルT24、底コイルB36、上コイルT21を順次直列に接続して第二の極111Uを構成し、亘り線US3を介し、底コイルB1、上コイルT22、底コイルB34、上コイルT19を順次直列に接続することで再度、第二の極111Uを構成する。亘り線US3は、接続箇所TUS13にて上コイルT21と接続され、接続箇所TUS23において底コイルB1と接続される。更に、中性点側端子X3とは亘り線UN3で接続されており、亘り線UN3は、接続箇所TX3にて上コイルT19と接続される。
V相回路は、V相回路1、V相回路2、V相回路3が並列接続されることで構成される。以下、V相回路1、V相回路2、V相回路3の構成を説明する。
V相回路1は、コイル構成及び亘り線とコイルの接続箇所が、U相回路1を周方向に120度ずらした構成となっているため、詳細説明は省略する。
V相回路2は、線路側端子V2から亘り線VL2を経由して、接続箇所TV2にて上コイルT14と接続される。V相回路2は、第一の極110V、第二の極111Vの順に直列に接続され、第一の極110Vは、上コイルT14、底コイルB29、上コイルT17、底コイルB32を順次直列に接続することで構成され、第二の極111Uは、底コイルB14、上コイルT35、底コイルB11、上コイルT32を順次直列に接続することで構成される。第一の極110Vと第二の極111Vは、亘り線VP2で接続されており、亘り線VP2と第一の極110Vは、底コイルB32と接続箇所TVp12にて接続され、亘り線VP2と第二の極111Vは、底コイルB14と接続箇所TVp22にて接続される。第二の極111Vと中性点側端子Y2は亘り線VN2で接続されており、亘り線VN2と第二の極111Vは、上コイルT32と接続箇所TY2にて接続される。
V相回路3は、コイル構成及び亘り線とコイルの接続箇所が、U相回路3を周方向に120度ずらした構成となっているため、詳細説明は省略する。
W相回路は、W相回路1、W相回路2、W相回路3が並列接続されることで構成される。W相回路1、W相回路2、W相回路3は、コイル構成及び亘り線とコイルの接続箇所が、V相回路1、V相回路2、V相回路3からそれぞれ120度ずらした構成となっているため、詳細説明は省略する。
図11に、各亘り線とコイルの接続箇所を軸方向から見た図を示す。並列回路1と並列回路3におけるコイルと亘り線の接続箇所は、3相間で周方向にそれぞれ120度ずらした周期的な構成となっている。即ち、並列回路1を例にとると、接続箇所TU1、TV1、TW1は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、接続箇所TX1、TY1、TZ1は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、接続箇所TUS11、TVS11、TWS11は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、接続箇所TUs21、TVS21、TWS21は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置される。
各相の並列回路2については、各並列回路を構成するコイルは、3相間で周方向にそれぞれ120度ずらした構成である。
しかしながら、コイルと亘り線の接続箇所に関しては、V相とW相で周方向に120度ずれて配置されるものの、U相のコイルと亘り線の接続箇所は他の相と120度ずつずれた配置ではない。即ち、接続箇所TV2とTW2は、周方向に120度ずれて配置され、TU2とTW2は、周方向に略同一の位置に配置される。また、接続箇所TY2とTZ2は、周方向には120度ずれて配置され、TX2とTZ2は、周方向に略同一の位置に配置される。また、接続箇所TVp12とTWp12は、周方向に120度ずれて配置され、TUp12とTVp12は、周方向に略同一の位置に配置される。また、接続箇所TVp22とTWp22は、周方向に120度ずれて配置され、TUp22とTvp22は、周方向に略同一の位置に配置される。
以上のように各相の電機子巻線を構成することで,図12に示すように各並列回路に備えられた亘り線101は,亘り線列C1からC8まで8列に,コレクタリング側に軸方向に並んで,それぞれの亘り線が互いに干渉を避けるよう配置される。すなわち,従来技術と比較して,亘り線列数を4列低減できる。ここで,図7に示した亘り線の配置は,亘り線列数を低減できる構成の1例であり,亘り線列を入れ替えるなどして,様々な配置が可能であり,本発明は図に示した形態に限定されるものではない。
以下に、本実施例により亘り線列数が低減される理由を説明する。
実施例1と比較して、本実施例では、実施例1において、各相の並列回路1と並列回路3に有する第一の極と第二の極を繋ぐ極間亘り線(U相の場合:亘り線UP1、UP3)がなくなり、同じ極を構成するコイルを繋ぐ短い亘り線(U相の場合:亘り線US1、US3)が追加されている。これにより、亘り線の距離が短くなることで、亘り線列数が低減される。
更に、並列回路2に関しては、実施例1と同様にU相(実施例1ではW相)において、端子とコイルを繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置と、極間亘り線のコイルとの接続位置を、3相間で120度ずつずれて周期的に配置される場合から入れ替えている。
以上の理由で,本実施例によれば,実施例1から亘り線列数がさらに低減される。これより,実施例2においても、実施例1と同様の効果が得られる。
また、本実施例は特許文献3に記載の構成に、本発明を適用したものである。特許文献3の記載の構成では、亘り線の列数の低減が困難であったが、本実施例の構成により、亘り線列数の低減が可能となる。
以下に、本発明による第三の実施の形態について図面を参照して説明する。尚、他の実施の形態と同様の構成の部分に関しては、説明を省略する。また、同一または対応する部分に同一の符号を付して対応させている。
図13に、本発明の一実施例の回転電機の3相分電機子巻線の展開図を示す。図13において、実線はU相を、破線はV相を、一点鎖線はW相をそれぞれ示している。図14には、そのU相分を、図15にはそのV相分を、図16にはそのW相分をそれぞれ示す。
本実施例は、回転電機の電機子鉄心201に設けられた24個のスロットに収容された、2極3相の電機子巻線である。各相の電機子巻線は、スロット内のコイルを直列に接続した直列回路を1つ有しており、それぞれの直列回路には、第一の極110とそれと対となる第二の極111が構成されている。更に、各相の電機子巻線は、線路側端子と直列回路を接続する亘り線と、中性点側端子の直列回路を接続する亘り線、第一の極110と第二の極111を接続する亘り線を有している。即ち、実施例1及び2において、各相の電機子巻線は、3つの並列回路を有していたが、本実施例では、各相の電機子巻線は、1つの回路のみを有する。これを1Y結線という。
それぞれの回路に備えられた亘り線101は、亘り線列C1からC4まで4列に、コレクタリング側に軸方向に並んで、それぞれの亘り線が互いに干渉を避けるよう配置される。また、亘り線101は、線路側端子U1、V1、W1とスロット内コイルを接続する亘り線UL1、VL1、WL1と、第一の極と第二の極を構成するコイルを接続する極間亘り線UP1、VP1、WP1、中性点側端子X1、Y1、Z1とスロット内コイルを接続する亘り線UN1、VN1,WN1とに分けられる。
各相の構成を以下に説明する。
U相回路は、線路側端子U1から亘り線UL1を経由して、接続箇所TUにて、底コイルB1と接続される。U相回路は、第二の極111U、第一の極110Uの順で接続され、第二の極111Uは、底コイルB1、上コイルT16、底コイルB24、上コイルT15、底コイルB23、上コイルT14、底コイルB22、上コイルT13を順次直列に接続することで構成され、第一の極110Uは、上コイルT1、底コイルB10、上コイルT2、底コイルB11、上コイルT3、底コイルB12、上コイルT4、底コイルB13を順次直列に接続することで構成される。第二の極111Uと第一の極110Uは、亘り線UP1で接続されており、亘り線UP1と第二の極111Uは、上コイルT13と接続箇所TUp1にて接続され、亘り線UP1と第一の極110Uは、上コイルT1と接続箇所TUp2にて接続される。第一の極と中性点側端子X1は、亘り線UN1で接続されており、亘り線UN1と第一の極110Uは、底コイルB13と接続箇所TXにて接続される。
V相回路は、線路側端子V1から亘り線VL1を経由して、接続箇所TVにて上コイルT9と接続される。V相回路は、第一の極110V、第二の極111Vの順で接続され、第一の極110Vは、上コイルT9、底コイルB18、上コイルT10、底コイルB19、上コイルT11、底コイルB20、上コイルT12、底コイルB21を順次直列に接続することで構成され、第二の極111Vは、底コイルB9、上コイルT24、底コイルB8、上コイルT23、底コイルB7、上コイルT22、底コイルB6、上コイルT21を順次直列に接続することで構成される。第一の極110Vと第二の極111Vは、亘り線VP1で接続されており、亘り線VP1と第一の極110Vは、底コイルB21と接続箇所TVp1にて接続され、亘り線VP1と第二の極111Vは、底コイルB9と接続箇所TVp2にて接続される。第二の極と中性点側端子Y1は、亘り線VN1で接続されており、亘り線VN1と第二の極111Vは、上コイルT21と接続箇所TYにて接続される。
W相回路は、線路側端子W1から亘り線WL1を経由して、接続箇所TWにて上コイルT17と接続される。W相回路は、第一の極110W、第二の極111Wの順で接続され、第一の極110Wは、上コイルT17、底コイルB2、上コイルT18、底コイルB3、上コイルT19、底コイルB4、上コイルT20、底コイルB5を順次直列に接続することで構成され、第二の極111Wは、底コイルB17、上コイルT8、底コイルB16、上コイルT7、底コイルB15、上コイルT6、底コイルB14、上コイルT5を順次直列に接続することで構成される。第一の極110Wと第二の極111Wは、亘り線WP1で接続されており、亘り線WP1と第一の極110Wは、底コイルB5と接続箇所TWp1にて接続され、亘り線WP1と第二の極111Wは、底コイルB17と接続箇所TWp2にて接続される。第二の極と中性点側端子Z1は、亘り線WN1で接続されており、亘り線WN1と第二の極111Wは、上コイルT5と接続箇所TZにて接続される。
図17に、各亘り線とコイルの接続箇所を軸方向から見た図を示す。これより、V相とW相のコイルと亘り線の接続箇所は、周方向に120度ずれて配置されているものの、U相のコイルと亘り線の接続箇所は、他の相と120度ずつずれた配置ではない。つまり、コイルと亘り線のそれぞれの接続箇所は、3相間で120度ずつずれて周期的に配置されない。具体的には、接続箇所TVとTWは、周方向に120度ずれて配置され、接続箇所TUとTWは、周方向に略同一の位置に配置される。また、接続箇所TYとTZは、周方向に120度ずれて配置され、接続箇所TXとTZは、周方向に略同一の位置に配置される。また、接続箇所TVp1とTWp1は、周方向に120度ずれて配置され、接続箇所TUp1とTVp1は、周方向に略同一の位置に配置される。また、接続箇所TVp2とTWp2は、周方向にそれぞれ120度ずれて配置され、接続箇所TUp2とTVp2は、周方向に略同一の位置に配置される。
以上のように、各相の電機子巻線を構成することで、図18に示すように、亘り線101を、4列で構成することが可能となる。
ここで、従来技術による2極24スロット1Y結線の3相分の電機子巻線の展開図の一例を図25に、図26にはそのU相分を、図27にはそのV相分を、図28にはそのW相分をそれぞれ示す。また、図29に、従来技術を適用した場合の各亘り線とコイルの接続箇所を軸方向から見た図を示す。
従来例によれば、コイルと亘り線のそれぞれの接続箇所は、3相間で120度ずつずれて周期的に配置される。また、亘り線は、5列で構成される。
これより、従来技術では、U相回路において、亘り線UL1、UP1、UN1が干渉する箇所があり、これにより、亘り線列数が増えていることが確認される。
本実施例は、亘り線UL1、UP1、UN1の干渉を低減することを目的になされたものである。
本実施例によれば、U相において、線路側端子及び中性点側端子とコイルを繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置と、極間を繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置を、他の相と周期的に配置される場合から入れ替えている。これにより、亘り線UL1、UP1、UN1の位置が従来例から変わることで、その干渉が緩和され、亘り線列数は、4列に低減される。
以上から本実施例では、従来技術と比較して、亘り線列数を1列低減できる。ここで、図18に示した亘り線の配置は、亘り線列数を低減できる構成の1例であり、亘り線列を入れ替えるなどして、様々な配置が可能であり、本発明は、図に示した形態に限定されるものではない。
これより、実施例3においても、実施例1及び2と同様の効果が得られる。
以上、各実施例を用いて説明したように、本発明を適用することにより、回転電機の電機子巻線において、亘り線の列数が低減される。亘り線の列数の低減は、異なる2極を有する巻線回路において、線路側端子及び中性点側端子とコイルを繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置と、極間を繋ぐ亘り線のコイルとの接続位置を、他の相と周期的に配置される場合から入れ替えて、亘り線の干渉を低減することで実現している。
これにより、亘り線間の絶縁性が確保され、小型の発電機が提供される。また、亘り線の列数が低減されることで、近接効果の低減による亘り線における損失の低減、亘り線の支持などの作業が容易になることによる作業性の向上が達成される。
本明細書で示した実施形態は、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または改良をすることが可能であり、これらもまた本発明の技術の範囲内にある。例えば、本明細書内では、ある特定の極数、スロット数、並列回路数、巻線ピッチに関して発明の詳細を述べたが、本発明は、それらの要素に限定されるものではない。
具体的には、2極で構成される実施例のみを述べたが、4極以上でも本発明による構成が可能である。また、各実施例において、上コイルと底コイルの接続順を入れ替えて構成してもよい。また、図12などにおいて、亘り線を径方向に1つの段に並べて構成したが、径方向に複数の段にわたって構成することを可能である。また、各実施例において、線路側端子及び中性点側端子、亘り線をコレクタリング側に配置したが、タービン側に配置してもよい。この場合も亘り線を限られた空間に配置する必要があるため、本発明により各実施例と同様の効果が得られる。また、複数の同相の亘り線を、1つの亘り線に置き換えるなどしてもよい。