JP2012174849A - 熱電材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】材料コストや環境負荷が低く、低温域での使用に適した熱電特性の高い熱電材料を提供する。
【解決手段】Al−Mn−Si系の六方晶系結晶構造を有する単一合金であり、Alを20〜40at%、Mnを20〜40at%、Siを30〜50at%含むことを特徴とする。原子比としては、AlxMnSiy(0.6≦x≦0.9、1.12≦y≦1.42)である。本発明の熱電材料によれば、無次元性能指数(ZT)が0.01以上となる。
【選択図】なし
【解決手段】Al−Mn−Si系の六方晶系結晶構造を有する単一合金であり、Alを20〜40at%、Mnを20〜40at%、Siを30〜50at%含むことを特徴とする。原子比としては、AlxMnSiy(0.6≦x≦0.9、1.12≦y≦1.42)である。本発明の熱電材料によれば、無次元性能指数(ZT)が0.01以上となる。
【選択図】なし
Description
本発明は熱電材料に関し、詳しくはAl−Mn−Si系合金からなる熱電材料に関する。
熱電変換とは、ゼーベック効果やペルチェ効果を利用して、熱エネルギーと電気エネルギーとを相互に変換することをいう。熱電変換を利用すれば、ゼーベック効果を用いて熱流から電力を取り出したり、ペルチェ効果を用いて材料に電流を流すことで、吸熱現象や発熱現象を起こしたりすることが可能である。また、熱電変換は直接変換であるため、エネルギー変換の際に余分な廃棄物を排出しない、排熱の有効利用が可能である、及びモータやタービンのような可動部がないためメンテナンスフリーであるなどの特徴を有しており、エネルギーの高効率利用技術として注目されている。
このような熱電変換用の材料としては、Bi−Te系、Mg−Si系、Fe−Si系、Si−Ge系、Pb−Te系、Fe−V−Al系、カルコゲナイド系、スクッテルダイト系、フィルドスクッテルダイト系、炭化ホウ素系などの金属や半導体の開発が進められているが、現在実用化されている熱電材料としては、凡そ200℃以下の低温域での使用に適した六方晶系構造のBi−Te系熱電材料が一般的である。
しかし、Bi−Te系の熱電材料は、希少金属であるTeを使用しているため材料コストが高く、且つTeは毒性も有するという問題がある。そこで、Teを使用していないMn−Si系の熱電材料が下記特許文献1に開示されている。具体的には、MnSix(1.6≦x≦1.85)を主成分とする正方晶系の熱電材料が開示されている。また、当該熱電材料において、Si元素の20at%以下をAlで置換することで、熱電特性の向上を図っている。すなわち、特許文献1ではAlをドーパントとして添加(ドーピング)している。この場合の組成式は、Mn(Si1−z[Al2]z)x(1.6≦x≦1.85、0≦z≦0.20)で表される。
しかしながら、特許文献1ではSiの一部をAlで置換しているだけなので、熱電特性の向上には限界がある。また、Mn−Si系の熱電材料は300〜600℃程度の中高温域での使用に適しており、Bi−Te系の熱電材料と同じ低温域で使用することはできない。
そこで、本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、材料コストや環境負荷が低く、Bi−Te系の熱電材料と同様に低温域での使用に適した熱電特性の高い熱電材料を提供することを目的とする。
そのための手段として、本発明の熱電材料は、Mn−Al−Si系の合金であり、Mnを20〜40at%、Alを20〜40at%、Siを30〜50at%、好ましくはMnを28〜38at%、Alを20〜30at%、Siを37〜47at%含むことを特徴とする。なお、Mn,Al,Siの合計は100at%である。このとき、MnAlxSiy(0.6≦x≦0.9、1.12≦y≦1.42)の組成式で表されるような原子比(モル比)とする。
このように、Siの一部をAlで置換するのではなくAlもメイン元素として含み、且つMn,Al,Siを所定の割合で配合することで、得られる合金は複数の結晶相が形成されていない六方晶系の単一の結晶相で構成されるので、無次元性能指数(ZT)が0.01以上の優れた熱電特性を得ることができる。
本発明によれば、希少金属を使用していないことで材料コストが安く、且つ毒性を有しないことから環境にも優しい。また、熱電特性も高い。さらに、Bi−Te系の熱電材料と同様に低温域での使用に適している。
以下に、本発明について詳細に説明する。本発明の熱電材料は、Mn−Al−Si系の合金からなる。各元素の配合割合(含有量)としては、合計を100at%として少なくともMnを20〜40at%、Alを20〜40at%、Siを30〜50at%とする。また、Siは35〜50%とするのがさらに好ましい。最も好ましい配合割合としては、Mnが33at%、Alが25at%、Siが42at%であり、各元素の含有量は上記最も好ましい配合割合に対して、それぞれ±5at%程度が好ましい範囲である。具体的には、各元素の含有量は、Mnが28〜38at%、Alが20〜30at%、Siが37〜47at%の範囲が好ましい。また、各元素の原子比としては、Mn=33at%の場合を基準(原子比1)とすると、Al=20〜30at%の範囲が好ましいことからAlの原子比は0.6〜0.9が好ましく、Si=37〜47at%の範囲が好ましいことからSiの原子比は1.12〜1.42が好ましい。すなわち、MnAlxSiy(0.6≦x≦0.9、1.12≦y≦1.42)の組成式で表されるような原子比とする。
このような組成(配合割合)とすることで、得られる熱電材料は複数の結晶相が形成されていない単一な結晶相となる。換言すれば、上記組成範囲から外れた組成では、主となる結晶相のほかに、これとは異なる結晶相が析出してしまい、熱電特性の低下につながる。
具体的な結晶構造としては、六方晶系CrSi2(C40)型の結晶構造となる。CrSi2は空間群P6222に属し、室温でa=4.43Å、C=6.37Åの格子定数を持つ。CrはSiによって10配位されており、その内個々のCrは同一c面内の6個のSiと2.55Åの結合を持ってCrSi6の六角形を形成するとともに、上下のCrSi6六角形とそれぞれ2本のCr−Si結合(2.48Å)を形成している。そして、上記組成のMn−Al−Si系熱電材料では、MnがCrサイトを占め、AlおよびSiがSiサイトをランダムに占有する。この3元系化合物はAlとSiの間に主に固溶域が存在し、合金効果によって格子熱伝導度が低減する。このような六方晶系の結晶構造を有する本発明の熱電材料は、ゼーベック係数(S)が負となるN型の熱電材料となり、室温〜200℃程度の低温域での使用に適している。
CrSi2との対応から、本発明の熱電材料はMn(Al1−dSid)2なる化学式で表現することができる。dの値を本請求の範囲内で細かく調整することにより、N型材料だけではなく、P型材料(つまり正のゼーベック係数を持つ)として用いることもできる。なぜなら、AlはSiより1個価電子数が少ないため、dの減少はN型材料に正孔を多く導入することに対応する。従って、dの小さい材料では、P型特性を示すようになる。このように、同一の結晶構造からなる材料系で、組成の変化によってP型およびN型の両方の材料を作製できることは、素子化した場合に好都合である。なぜなら材料の熱膨張率が大きく異なると、その部分から破壊が進行しがちであるが、熱膨張率が同等であれば破壊しにくいからである。
CrSi2は金属比が1:2の定比化合物である。Mn(Al1−dSid)2の場合、Mn:(Al,Si)の比が定比からずれて、MnサイトをAlやSiが置換する等のサイト間固溶や、特定のサイトに空孔が生じることがあり、これに伴って変調構造が生じる場合もあり得るが、これらは基本構造のCrSi2型構造から派生したものであり、CrSi2構造として捉えて良い。
熱電材料の特性評価には、性能指数Z(K−1)や無次元性能指数ZTが使用される。性能指数Zは、Z=S2σ/kの式により求められる。なお、Sはゼーベック係数を、σは電気伝導率(電気伝導度)を、kは熱伝導率をそれぞれ示す。無次元性能指数ZTは、性能指数Zに絶対温度Tを掛けた値である。性能指数又は無限性能指数が高いほど、熱電特性が高いことになる。
そのうえで、本発明によれば、無次元性能指数ZTが少なくとも0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上という高い熱電特性が得られる。ゼーベック係数は−60(μV/K)以下(絶対値では60以上)、好ましくは−70(μV/K)以下(絶対値では70以上)である。また、電気伝導率は0.18(MS/m)以上、好ましくは0.20(MS/m)以上であり、熱伝導率は5.0(W/m・K)以下、好ましくは4.95(W/m・K)以下である。
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、Al、Mn、及び/又はSiの一部を、Fe,Cr,Mo,Ga,Sn,Zn,P,Sb,Biなどで置換することもできる。これにより、熱電特性のさらなる向上や、N型のAl−Mn−SiをP型にドープすることができる。
本発明のMn−Al−Si系合金からなる熱電材料の製造方法は特に限定されることはなく、公知の熱電材料製造方法を広く使用できる。例えば上記組成となるように各材料を混合してから、アーク溶解、ボールミル、又はメカニカルアロイング(MA)などによって合金を作成した後に粉砕し、必要に応じて分級してから所定形状に焼結すればよい。または、反応性焼結によって製造することもできる。
なお、溶解等によって合金化した場合は、合金化した後にアニール処理を行う。アニール処理によって結晶構造が六方晶系となり、組織が均一になるからである。反応性焼結の場合は、アニール処理は不要である。粉砕する際は、できるだけ細かく粉砕する。例えば100μm以下、好ましくは50μm以下に粉砕する。できるだけ細かく粉砕することで熱電材料が緻密となり、熱電特性が向上するからである。分級は必須ではないが、分級により粒径を整えておくと、熱電材料が緻密となり熱電特性が向上する。また、本発明の熱電材料は六方晶系の結晶構造なので、焼結する前又は後に、押圧や振動等によって各微粒子を配向しておくことが好ましい。各微粒子を配向しておくこと、熱電特性をより向上することができる。
以下に、本発明の具体的な実施例について説明するが、これに限られることはない。
(実施例1)
原子比がMn1Al0.75Si1.25となるように、Mn33at%、Al25at%、Si42at%の割合で混合し、アーク溶解炉にて混合溶解した。その後950℃、48hでアニール処理した後、乳鉢にて粉砕し篩にて100μm以下の粉を採取した。得られた粉をSPSプラズマ焼結機で750℃、50Mpa、10分間焼結して実施例1の熱電材料を得た。
原子比がMn1Al0.75Si1.25となるように、Mn33at%、Al25at%、Si42at%の割合で混合し、アーク溶解炉にて混合溶解した。その後950℃、48hでアニール処理した後、乳鉢にて粉砕し篩にて100μm以下の粉を採取した。得られた粉をSPSプラズマ焼結機で750℃、50Mpa、10分間焼結して実施例1の熱電材料を得た。
(比較例1)
原子比がMn1Al1Si1となるように、Mn33.3at%、Al33.3at%、Si33.3at%の割合で混合し、実施例1と同様にして比較例1の熱電材料を得た。
原子比がMn1Al1Si1となるように、Mn33.3at%、Al33.3at%、Si33.3at%の割合で混合し、実施例1と同様にして比較例1の熱電材料を得た。
(比較例2)
原子比がMn1Al1.3Si0.7となるように、Mn33.3at%、Al43.3at%、Si23.3at%の割合で混合し、実施例1と同様にして比較例2の熱電材料を得た。
原子比がMn1Al1.3Si0.7となるように、Mn33.3at%、Al43.3at%、Si23.3at%の割合で混合し、実施例1と同様にして比較例2の熱電材料を得た。
(比較例3)
原子比がMn1Al0.75Si1.25となるように、Mn16.6at%、Al41.7at%、Si41.7at%の割合で混合し、実施例1と同様にして比較例3の熱電材料を得た。
原子比がMn1Al0.75Si1.25となるように、Mn16.6at%、Al41.7at%、Si41.7at%の割合で混合し、実施例1と同様にして比較例3の熱電材料を得た。
得られた各実施例及び比較例について、ゼーベック係数(S)、電気伝導度(σ)、熱伝導度(k)、無次元性能指数(ZT)を求めた。その結果を表1に示す。なお、ゼーベック係数及び電気伝導度は、アルバック理工社製 熱電評価装置ZEM−2を用いて50℃において求めた。また、熱伝導度は、レーザーフラッシュ法によりアルバック理工社製 TC−7000によって求めた。
表1の結果から、同じMn−Al−Si系の熱電材料でも、所定の組成とすることで熱電特性を飛躍的に向上できることがわかった。
Claims (6)
- Mn−Al−Si系の合金であり、
Mnを20〜40at%、Alを20〜40at%、Siを30〜50at%含む(Mn,Al,Siの合計は100at%)ことを特徴とする、熱電材料。 - MnAlxSiy(0.6≦x≦0.9、1.12≦y≦1.42)の組成式で表される、請求項1に記載の熱電材料。
- Mnを28〜38at%、Alを20〜30at%、Siを37〜47at%含む(Al,Mn,Siの合計は100at%)、請求項2に記載の熱電材料。
- 単一な結晶相からなる単一合金である、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の熱電材料。
- 無次元性能指数(ZT)が0.01以上である、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の熱電材料。
- 結晶構造が六方晶系である、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の熱電材料。
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