JP2012171843A - 四塩化ケイ素の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、バイオ由来シリカと炭素質物質と少量の金属ケイ素を塩素と反応させる四塩化ケイ素の製造方法において、工業的な実施に適すると同時に、シリカの反応率の高い製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明者らは、バイオ由来シリカと炭素質物質との混合物を、塩素と反応させて、四塩化ケイ素を製造する方法において、篩分粒径が1.0mm以上4.8mm以下の金属ケイ素を、シリカに対して、10〜30wt%加えて塩素化反応を行うことにより、外部からの余分なエネルギー供給の必要がなく、高いシリカ反応率で四塩化ケイ素が製造できることを見出した。
【選択図】なし

Description

本発明は、半導体や太陽電池、各種ケイ素化合物などの原料として、工業的に広く用いられている四塩化ケイ素を、植物等のバイオ由来原料から効率よく製造する方法に関し、省エネルギー,省資源の方法で高純度の四塩化ケイ素を得られるものである。
従来、工業的な四塩化ケイ素の製造方法としては、反応が300℃以上の比較的低温で行えることから、金属ケイ素と塩化水素とを反応させる方法が主流となっているが、その原料となる工業用の金属ケイ素はアーク還元炉中でケイ石を炭素還元して製造されており、製造に多量の電力を消費することから、1960年代より、金属ケイ素の代わりにSiO2(以下シリカと呼ぶ)をケイ素原料として四塩化ケイ素を得る方法が種々検討されてきた。一方、省エネルギー,省資源の観点から、植物原料、特にもみ殻や稲わらには多量のシリカが含まれていることが着目され、もみ殻や稲わらの炭化、または、焼却により得られるシリカを主成分とするバイオ由来シリカを原料として四塩化ケイ素を製造する方法も研究されるようになってきた。
特許文献1には、もみ殻を例示するケイ酸植物の炭化物と炭素質物質の混合物を400〜1100℃で塩素と反応させる方法が開示されている。しかし、特許文献1と同一発明者、出願人により同時期に出願された特許文献2には、ケイ酸質物質と炭素質物質との混合物を塩素と反応させる方法は、1000℃以下では反応速度が遅く、大型装置では熱の供給の問題があることも開示されている。その解決法として特許文献2および3には、バイオ由来シリカと炭素質物質の混合物にエネルギー供給体として、少量の金属ケイ素を加えて塩素と反応させる方法が開示されている。金属ケイ素を塩素化させると四塩化ケイ素が得られるとともに、大きな反応熱が生じる。この熱によって、バイオ由来シリカと炭素質物質の混合物と塩素との反応に必要な昇温顕熱や反応吸熱を補うことで、高温を維持するための電力コストを抑えることが可能である。
例えば特許文献2には、ケイ酸質物質と炭素質物質を塩素と反応させて四塩化ケイ素を製造する際に金属ケイ素を併用する方法が記載されているが、固体原料としてはすべて粒径100μm以下の微粒子であることが好ましいことが開示されている。そして特許文献2のすべての実施例においては、原料に粒径100μm以下のミクロシリカ、金属ケイ素、コークス粉末が用いられて、反応器を外部から加熱保持しながら反応を行ったことが記載されているが、この際に金属ケイ素はいずれも100%反応して消費されたのに対して、ミクロシリカの反応率は12〜28.0%と低いものであった。
すなわち、ケイ酸質物質と炭素質物質とに、塩素と反応させて四塩化ケイ素を製造する際に、金属ケイ素を併用して金属ケイ素の反応熱を利用する方法が知られていたが、実際には相変わらず反応器の加熱を継続しなければならなかったうえ、金属ケイ素の塩素化反応だけが優先して進行してしまい、ケイ酸質物質の反応率が低く、未反応のまま残ってしまうという問題があった。反応器中に微粒子のケイ酸質物質が残ってしまうと、その処理には手間がかかるため、大幅なコスト増となってしまう問題がある。
一方、特許文献3には、特許文献2とほぼ同じ構成でありながら、外部加熱を止めても、反応が自発的に1050℃で継続し、使用したSiO2を基準として、95%未満の反応率が得られた実施例が記載されている。特許文献2の実施例との違いは、100μm以下のミクロシリカの代わりにもみ殻灰を用いたこと、100μm以下のコークスの代わりに比表面積20m2/gの煤を用いたこと、100μm以下の金属ケイ素の代わりに0.8mm未満の金属シリコンダストを用いたことであり、その粒径範囲で最も細かいダストが目的に対して最も好適であることの記載がある。
特許文献3の明細書には、使用される塩素がほぼ無水でなければならない(10ppm未満)との記載があるが、特殊な処理をしない限り、塩素の水分を20ppm以下にすることは難しいことが知られている。また、煤はカーボンブラックとも呼ばれ、一般的に数十nmの粒径を有する超微粒子であって活性が高いことが知られているから、特許文献3の方法は、微粒子で比表面積の大きな原料や、高度に脱水した塩素を用いることによって反応率を高める方法であると考えることができる。しかしながらこのような原料や塩素は高価で入手しにくいものであり、工業的な生産には不向きであった。
すなわち、ケイ酸質物質と炭素質物質を塩素と反応させて四塩化ケイ素を製造する際に金属ケイ素を併用する方法は知られており、高価で特殊な原料を用いて高い反応率を得る方法が知られていたが、通常の工業原料を用いた場合、ケイ酸質物質の反応率は必ずしも良好ではなく、金属ケイ素だけが反応してしまう問題があったため、安価な工業原料を用いても高い反応率の得られる四塩化ケイ素の製造方法が求められていた。
特開昭58−55330 特開昭58−167419 特表2009−542561 特開昭62−252311
本発明の課題は、バイオ由来シリカと炭素質物質と少量の金属ケイ素の混合物を塩素と反応させて四塩化ケイ素を製造する方法において、工業的な実施に適すると同時に、シリカ反応率の高い四塩化ケイ素製造方法を提供することである。
[1]本発明者らは、ケイ素分を含む植物の炭化、または焼却により得られるバイオ由来シリカと炭素質物質との混合物を、塩素と反応させて、四塩化ケイ素を製造する方法において、JIS標準篩の呼び寸法で1.0mm以上4.8mm以下の金属ケイ素を、シリカに対して、10〜30wt%加えて塩素化反応を行うことにより、外部からの余分なエネルギー供給の必要がなく、高いシリカ反応率で四塩化ケイ素が製造できることを見出した。
本発明はまた、以下[2]〜[6]に記載の発明も含む。
[2]バイオ由来シリカと炭素質物質の、電子顕微鏡によって確認できる平均粒径が、いずれも0.1μm〜500μmの範囲内である、[1]に記載の、四塩化ケイ素の製造方法。
[3]バイオ由来シリカの質量に対して、反応触媒としてのカリウム化合物をカリウム量として0.1〜20wt%併用する[1]または[2]に記載の四塩化ケイ素の製造方法。
[4]バイオ由来シリカと炭素質物質と金属ケイ素との混合物を、バインダーを用いて造粒し、JIS標準篩による粒径範囲が1.0mm以上8.0mm以下の造粒物として反応させる、[1]〜[3]のいずれかに記載の四塩化ケイ素の製造方法。
[5]バイオ由来シリカと炭素質物質と金属ケイ素との造粒物を、反応中の反応器に供給することにより、反応を継続して行う、[4]に記載の四塩化ケイ素の製造方法。
[6]バイオ由来シリカと炭素質物質と金属ケイ素との造粒物を、縦型反応器の上部から供給し、下部から反応残さを抜き出しながら、反応を継続して行う、[5]に記載の四塩化ケイ素の製造方法。
本発明の四塩化ケイ素製造方法では、工業的原料を用いることができ、外部加熱を続けなくても反応が継続するため、安価に四塩化ケイ素を製造することができる。
以下、本発明を詳しく説明する
本発明においてバイオ由来シリカとは、ケイ素分を含む植物の炭化、または、焼却により得られる、炭化物および/または焼却灰を意味し、好ましくは、シリカ分を20wt%以上含有する物質を指す。ケイ素分を含む植物としては、稲、麦、トウモロコシ、笹、とくさなどのケイ素集積植物が挙げられ、その葉や茎、もみ殻などを用いるのが好ましく、さらに好ましくは稲、麦のもみ殻と稲わら、麦わらである。
これらのケイ素集積植物の炭化、または、焼却の方法には特に限定はないが、炭化は、好ましくは300℃から1200℃の範囲で、上記のケイ素集積植物を、酸素の少ない雰囲気で加熱することにより得ることができ、一方、焼却では、植物が燃焼可能な酸素を供給しながら、燃焼させたときに得られる灰を用いる。いずれの場合も得られるバイオ由来シリカは非晶質で、炭素分や無機塩分を含む。炭素の含有量を多くするように炭化を行った場合、バイオ由来シリカの2−3割が炭素となるように炭化することができるので、炭素量をコントロールして、本発明で用いる炭素質物質を代替することも可能であるが、好ましくは焼却してその灰を用いることであり、さらに好ましくは、もみ殻および/または稲わらを焼却した、シリカ分が80wt%以上のもみ殻灰であり、より好ましくは、シリカ分が90wt%以上のもみ殻灰である。
本発明において、ケイ素分を含む生物を炭化または焼却してバイオ由来シリカとする方法としては、公知の方法を用いることができ、炭化物や灰はサイクロンやバグフィルター、電気集塵機などの公知の方法で採取でき、焼却の排熱を各種用途に利用することもできる。
本発明で用いる炭素質物質としては、活性炭、石油コークス、石炭などを挙げることができる。炭素質物質の量は、炭素がバイオ由来シリカの還元剤として量論比以上(モル比=2)になるようにするのがよく、好ましくはバイオ由来シリカに対して、10〜60wt%、さらに好ましくは20〜50wt%の範囲である。炭素量が少ない場合は、反応の進行が不十分でシリカが十分に利用されない。一方、この範囲よりも多い場合は、原料の嵩が増えるだけで有利ではない。
本発明においては、バイオ由来シリカと炭素質物質の混合物と塩素との反応性を向上させるために、反応触媒を加えることができる。特許文献3には、背景技術として、シリカと炭素を塩素と反応させる際に、周期表の第V主族及び第III主族並びに第II族の塩化化合物触媒の使用によって、反応温度を500℃〜1200℃に下げることができることが開示されているが、上記触媒の使用により、有害な不純物を生じる場合があることも開示されており、特許文献3に記載された発明では採用されていなかった。
また、特許文献4ではシリカと炭素質物質の混合物を塩素と反応させる際に、混合物にカリウム化合物を加えることによって、シリカの反応性を高くする方法が開示されている。
本発明においては、バイオ由来シリカと炭素質物質と金属ケイ素の混合物と塩素との反応で、より高いバイオ由来シリカの反応率を求めるためには、混合物にカリウム化合物を加え、かつJIS標準篩の呼び寸法で1.0mm以上4.8mm以下の金属ケイ素を用いることが好ましいことを見出した。その際のカリウム化合物としては、炭酸カリウム、塩化カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、シュウ酸カリウム、ギ酸カリウムなどを挙げることができる。この中で特に好ましいのは塩化カリウムである。
カリウム化合物を用いる場合の添加割合は、バイオ由来シリカに対し、カリウム量として0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%の範囲である。添加量が少ない場合は、効果がなく、多すぎる場合は、残渣として残る量が増えるため有利ではない。
本発明においては原料の粒径、特に金属ケイ素の粒径を規定することが特徴であるが、バイオ由来シリカと炭素質物質については、微粒子であればあるほど反応活性が高くなるので好ましいが、あまり細かくすることは困難であるので、好ましくは0.1μ以上500μm以下、さらに好ましくは0.5μ以上100μm以下である。
一般的に微粒子の粒径とは、例えば顕微鏡や電子顕微鏡などの装置で拡大した粒子の径を計測することによる測定する方法や、レーザー式粒度分布計、コールターカウンターなどの各種測定装置で測定することができるが、測定原理によって得られる値には差がある。本発明においては、走査型電子顕微鏡等の拡大手段によって、粒子形状を拡大観察し、コンピュータ画像認識によって粒子径を認識して直径基準の平均粒径を算出した数値を基準とするが、他の方法を用いた場合でも、標準粒子を用いて測定値を関連付けることによって定義することができる。また、バイオ由来シリカと炭素質物質が混合されていても、あるいは金属ケイ素との造粒物となった後からでも、分析電顕やEPMA(電子線マイクロアナライザ)などの装置を用いて、観察している粒子がいずれの成分かを分別して粒径測定をすることができる。
上記の好ましい粒径を有するバイオ由来シリカおよび炭素質物質を得る方法としては、何でもよいが、微粉砕に用いる機器としては特に限定は無く、たとえば、ジェットミル、ピンミル、ボールミル、擂潰機等の粉砕装置を使用し、乾式或いは溶媒共存下の湿式条件により実施できる。バイオ由来シリカと炭素質物質、又はバイオ由来シリカと炭素質物質とカリウム化合物とともに粉砕を行い、微粉化して用いると塩素化反応の効率が向上するため好ましい。
バイオ由来シリカと炭素質物質と、又はバイオ由来シリカと炭素質物質とカリウム化合物とを、金属ケイ素と混合する前にあらかじめ混合しておくのが好ましい理由は、バイオ由来シリカの塩素との反応効率が良くなるからである。混合には、リボンミキサーやヘンシェルミキサーなどのシェアのかかりにくいミキサーでも用いることができるが、さらに好ましくはボールミルやらいかい器などのように粒子にシェアのかかるミキサーであり、混合と共に粒子同士がしっかりと付着して、反応効率が上昇する効果がある。
金属ケイ素は、一般工業用途の金属ケイ素を用いることができる。金属ケイ素には、1.0〜4.8mm、好ましくは2.0〜3.4mmの粒径範囲のものを用いるのが望ましい。一般的に、金属ケイ素は粉砕、分級によって粉体を採取する製造方法がとられており、分級には、気流分級や、粉砕と同時に分級を行う方法など、多くの方法が知られているが、好ましくは過大、過小の粒子をカットする篩分機能を有する分級方法によって粒度が決められたものであり、さらに好ましくは中心粒径から正規分布に近い分布を有する金属ケイ素である。各種分級方法により得られた金属ケイ素の粒度分布は、例えばJIS Z8801−1982に定める標準篩によって篩分することによって、粒径範囲を規定することができ、または、光学顕微鏡などの拡大方法によって粒子の大きさを計測して確かめることができる。本発明では、JIS標準篩の呼び寸法を粒径範囲として用いる。すわわち、呼び寸法2.0mmの篩上で、なおかつ呼び寸法3.4mmの篩下となる粒子を粒径2.0以上3.4mm以下の粒子と呼ぶ。なお、JIS呼び寸法は3.35mm、4.75mmのように小数点以下第2位まで規定されているが、本発明では簡単のために、3.4mm、4.8mm等と呼ぶ。
粒径が1mmより小さい金属ケイ素は、表面積が大きく反応性が高いため、より多くの塩素を消費して、バイオ由来シリカが相対的に少ない塩素しか消費できず、反応率が下がってしまううえ、短期間に消費されてしまうので、その後は反応器内の温度が下降する傾向が表れるので好ましくない。一方、粒径が4.8mmより大きい場合は、表面積が小さく反応性が低いため反応熱のみで十分な反応温度が得られないため好ましくない。
また、本発明で用いる金属ケイ素は、粒径範囲が1mm以上4.8mm以下であることを必須とするが、この数値範囲以外の粒子が少しでも含まれると実施できないわけではなく、好ましくは金属ケイ素全体の10wt%以下、さらに好ましくは5%以下の過大、過小の金属ケイ素粒子が含まれていても実施することはできる。
金属ケイ素の使用量はバイオ由来シリカに対して、10〜30wt%の範囲、好ましくは、12〜25%の範囲である。使用量が少ない場合は、発熱量が小さく反応温度が不足するため、外部加熱が必要となってしまう。一方、多い場合は、発熱量が大きく反応温度が必要以上に高くなるし、金属ケイ素の製造にかけるエネルギーを考えると、金属ケイ素を必要以上に多く用いることは省エネルギーの目的に合致しないため好ましくない。
成型して造粒物にする際には、好ましくはバインダーを使用することができる。その理由は、造粒が効率的にできることと、造粒物が搬送の際の粉化を防ぐことができるためである。バインダーとしては、水、ポリエチレングリコール、でんぷん、ゼラチン、糖蜜、セルロース、水ガラス、シリカゾルなどを挙げることができる。
金属ケイ素を、バイオ由来シリカと炭素質物質、又はバイオ由来シリカと炭素質物質とカリウム化合物と混合する場合には、そのまま混合して用いても良いが、好ましくは、バイオ由来シリカと炭素質物質と金属ケイ素の三成分、又はバイオ由来シリカと炭素質物質とカリウム化合物と金属ケイ素の四成分を、予め混合し粒状に成型して造粒物としたものと混合する方法であり、さらに好ましくは、バイオ由来シリカと炭素質物質、又はバイオ由来シリカと炭素質物質とカリウム化合物を予め、混合したものと、金属ケイ素粒子とを、混合して粒状に成型して造粒する方法である。バイオ由来シリカと炭素質物質、又はバイオ由来シリカと炭素質物質とカリウム化合物は、粉状のまま混合したものでも、いったん成形してから粉砕したものでもよく、好ましくは成形してから粉砕したものである。
金属ケイ素とバイオ由来シリカと炭素質物質とを含み、カリウム化合物を含んでも良い混合物の粒径は、小さい方が塩素と反応しやすくなるが、金属ケイ素の粒径下限を下回ることはできない。そこで、好ましくはJIS標準篩の呼び寸法で1.0mm以上8.0mm以下、すなわち、呼び寸法1.0mmのJIS標準篩の篩上であり、8.0mmの篩下となる粒径範囲を有するものである。さらに好ましくは2.0mm以上4.8mm以下である。
本発明を実施するに当たり原料中に水分が存在すると、四塩化ケイ素の加水分解で生成したシリカによる配管の閉塞や、四塩化ケイ素収率の低下などの問題がある。そのため、金属ケイ素とバイオ由来シリカと炭素質物質を含み、カリウム化合物を含んでも良い原料は、塩素と反応させる前に加熱脱水処理をして使用するのが好ましい。加熱脱水処理法としては、例えば空気中や真空中、あるいはアルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガス雰囲気下に、150〜900℃で0.5〜24時間程度加熱して脱水する方法が例示でき、さらに好ましくは400〜600℃である。
塩素との反応は、バイオ由来シリカと炭素質物質と金属ケイ素、又はバイオ由来シリカと炭素質物質とカリウム化合物と金属ケイ素の混合物と、塩素とを十分に接触させることができればよく、固定床、移動床などで行うことができる。また、塩素は純度98%以上のものをそのまま使用しても、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性ガスで希釈して使用してもよい。反応器内の圧力も任意に設定できる。
原料と塩素との反応を開始させる際の温度は、300〜500℃とするのが好ましい。原料を昇温させる方法として予め加熱してから反応器へ添加するのもよく、また、予め加熱した気体を反応器に流し、昇温させるのもよい。
反応が一旦開始されれば、金属ケイ素の塩素化反応により反応熱が発生し、反応器を断熱材により保温断熱しておけば、外部から反応器への熱供給を必須としないで、反応を継続させることができる。断熱材として、一般的に高温で耐熱できる保温材であれば特に限定は無く、例えば、セラミックスウールやファイバーウールのようなものを利用することができる。
反応はバッチ式運転で行ってもよいが、原料の供給と反応済み残渣の排出とを間欠的に実施する連続運転で行うことが好ましい。その理由は、熱エネルギーの利用効率や、シリカの反応率が高くなるためである。
反応を終えた後には、未反応のバイオ由来シリカと炭素質物質、また触媒であるカリウム化合物が残渣として反応器に残る。それらは、反応器下部に設置される出口から所定時間間隔で開閉できるボール弁等の開閉機構により排出することができる。排出のためには、反応器全体、または一部に振動を加えることができる機構を反応器に備えることが好ましい。排出された残渣は、触媒の代わりにフレッシュなバイオ由来シリカや炭素質物質に混ぜて原料として再利用することが可能である。また、新たな原料は、反応器上部に設置される入口から反応器に供給されることが好ましい。
<作用>
本発明において、最も高い効果が得られるのは、篩分法の粒径が1mm以上4.8mm以下である金属ケイ素を、バイオ由来シリカと炭素質物質とカリウム化合物の混合物が被覆層となって覆い、1.0mm以上8.0mm以下の粒径となった造粒物の形態である。この場合、被覆層を通過した塩素が金属ケイ素表面で発熱反応を起こすため、金属ケイ素と被覆層の界面は高温になり、さらにカリウム化合物の触媒作用によってバイオ由来シリカは迅速に塩素と反応する。そして、造粒物は、ほとんど反応し尽くすまでその形態を保っているので、粒子間のガス流通も良好であるが、ほとんど反応し尽くしたときはわずかな微粉の反応残さとなって造粒物の間からこぼれ落ちる。このため、連続化のための特別な装置を用いなくても、反応器上部から新たな造粒物を追加し、反応器下部から反応残さを抜き出すことにより容易に長時間連続の反応を実施することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、本発明は、この実施例に何ら限定されるものではない。なお、金属ケイ素および金属ケイ素を含む造粒物については、JISZ8801−1982に定める標準ふるいによって篩い分けた粒子を用いた。
また、バイオ由来シリカには国産米のもみ殻を強制エアー供給式焼却装置で燃焼させた際の灰を用いた。TG/DTA分析により、エアー中と窒素中で1000℃まで加熱して減量を調べた結果、もみ殻灰中のシリカは96.0wt%、残留炭素は4.0wt%であった。炭素質物質には石油コークスのうち、生コークスと呼ばれる安価品を用いた。
<実施例1>
もみ殻灰中のシリカに対しコークスが25.2wt%となるようにし、固形分重量に対して2.0倍の脱イオン水を加え、ジルコニアボールを入れてボールミルで60時間粉砕した。粉砕後のスラリーを140℃で1時間乾燥して得られた粉末53.6gに対し、粒径2.0〜3.4mmの金属ケイ素を10.5g(バイオ由来シリカに対し20.8wt%)となるようにして、バインダーとして1.2wt%デンプン水/メタノール混合溶液(水:メタノール=50wt%:50wt%)を加えて、転動造粒機で造粒し、JIS標準篩の呼び寸法2.0mmの篩上で、なおかつ4.8mmの篩下を採取して造粒物とした。過大、過小の造粒物は破砕して再度転動造粒機で造粒物とし、過大、過小の造粒物がほとんどなくなるまでこの操作を繰り返した。仕込みに対する収率は99wt%以上だった。これを窒素流通下500℃で6時間乾燥して脱水処理した。
脱水処理した造粒物64.1gを200mlの石英製反応器に充填し、反応器に断熱材として厚さ1.0cmとなるようにファイバーウールを巻いた。それを断熱性のよい下部開口のルツボ型ヒーター内に挿入し、ヒーターとの隙間にはファーバーウールを詰めた。反応器下部の開口部から窒素を流通させながら、反応器を外部から加熱し、反応器内温を420℃まで昇温させた。
昇温後、外部加熱と窒素を止め、塩素を400ml/分で流通させて反応を行った。内温は1050℃まで上昇した後、徐々に低下した。内温が800℃を下回った時点で塩素の流通を止めた。その際の塩素の流通時間は、0.9時間であった。
反応器上部からの生成ガスを、冷媒により冷却して捕集し96.0gの四塩化ケイ素を得た。また、反応器中の反応済み残渣を水中に入れて撹拌し、比重差によって先に沈降する固形分を金属ケイ素として回収し、それを乾燥して残存金属ケイ素量として重量を測定し、そこから金属ケイ素の反応率を求めた。一方、シリカの反応率は、全四塩化ケイ素量から金属ケイ素由来の四塩化ケイ素の量を差し引き、その差分をシリカ由来の四塩化ケイ素量としてそこから算出した。金属ケイ素の反応率は75.5%で、シリカの反応率は42.5%であった。
<比較例1>
金属ケイ素の粒径を0.3mm以下とした以外は、実施例1と同様の条件で反応を行った。その際の内温は、1080℃まで上昇した。四塩化ケイ素収量は94.8gであり、塩素の流通時間は0.9時間であった。計算により得られた金属ケイ素の反応率は95.6%で、シリカの反応率は30.1%であった。
<実施例2>
バイオ由来シリカに対して塩化カリウムを12.7wt%(カリウム量として7.1wt%)添加する以外は、実施例1と同様にしてボールミルで60時間粉砕した。粉砕乾燥後の粉末59.5gに対し、粒径2.0〜3.4mmの金属ケイ素を10.5g(シリカに対し20.8wt%)となるようにし、バインダーとして1.2wt%デンプン水/メタノール混合溶液(水:メタノール=50wt%:50wt%)を加えて、転動造粒機で粒径2.0〜4.8mmの造粒物とした。これを窒素流通下500℃で6時間乾燥して脱水処理した。
脱水処理した造粒物70.0gを200mlの石英製反応器に充填し、実施例1と同じ条件で反応させた。その際の内温は、1120℃まで上昇した。また、四塩化ケイ素の収量は117gであり、塩素流通時間は1.1時間であった。金属ケイ素の反応率は87.3%で、シリカの反応率は53.4%であった。
<比較例2>
金属ケイ素の粒径を0.3mm以下とした以外は、実施例2と同様の条件で反応を行った。その際の内温は、1090℃まで上昇した。また、四塩化ケイ素の収量は99.5gであり、反応時間は0.9時間であった。金属ケイ素の反応率は95.8%で、シリカの反応率は30.7%であった。
<比較例3>
金属ケイ素の粒径を0.3mm以上1.0mm以下とした以外は、実施例2と同様の条件で反応を行った。その際の内温は、1110℃まで上昇した。また、四塩化ケイ素の収量は104gであり、反応時間は1.0時間であった。金属ケイ素の反応率は92.2%で、シリカの反応率は38.5%であった。
<比較例4>
金属ケイ素の粒径を4.8mm以上とし、造粒物の粒径を4.8〜8.0mmとした以外は、実施例2と同様の条件で反応を行った。その際の内温は、840℃まで上昇した。また、四塩化ケイ素の収量は88.6gであり、反応時間は0.7時間であった。金属ケイ素の反応率は82.1%で、シリカの反応率は32.0%であった。
<実施例3>
粒径1.0〜2.0mmの金属ケイ素を用いた他は実施例2と同じにして、粒径1.0〜3.4mmの造粒物を製造し、実施例2と同じ条件で反応させた。その際の内温は、1080℃まで上昇した。また、四塩化ケイ素の収量は116gであり、塩素流通時間は1.2時間であった。金属ケイ素の反応率は91.3%で、シリカの反応率は48.2%であった。
<実施例4>
粒径3.4〜4.8mmの金属ケイ素を用いた他は実施例2と同じにして、粒径3.4〜5.6mmの造粒物を製造し、実施例2と同じ条件で反応させた。その際の内温は、1000℃まで上昇した。また、四塩化ケイ素の収量は103gであり、塩素流通時間は1.0時間であった。金属ケイ素の反応率は84.9%で、シリカの反応率は43.1%であった。
<実施例5>
実施例2と同様にして得られた粉末を窒素流通下500℃で6時間乾燥して脱水処理した。脱水処理した粒子59.5gと、粒径2.0〜3.4mmの金属ケイ素10.5g(シリカに対し20.8wt%)とを卓上ミキサー(オスターブレンダー)で物理的によく混合し、造粒はしないで粉のまま200mlの石英製反応器に充填し、実施例1と同じ条件で反応させた。その際の内温は、1010℃まで上昇した。また、四塩化ケイ素の収量は97.2gであり、塩素流通時間は1.0時間であった。金属ケイ素の反応率は78.8%で、シリカ分の反応率は42.9%であった。
<実施例6>
実施例2と同様にして調整した造粒物105gを200mlの石英製反応器に充填し、実施例1と同様の条件と方法で反応を開始させた。開始から1.0時間後以降に245g分の造粒物を30分間に23.1gの供給速度で反応器上部から供給し、それに伴い開始から2.0時間後以降に反応済みの残渣を、30分間に6.9gの排出速度で反応器下部から排出した。内温が800℃を下回った時点で塩素の流通を止めた。その際の四塩化ケイ素の収量は673gであり、塩素流通時間は6.3時間であった。また、金属ケイ素の反応率は95.2%で、もみ殻灰中のシリカの反応率は64.7%であった。造粒物を供給しながら行う連続反応では、バッチ反応よりも優れたシリカの反応率が得られた。
<実施例7>
実施例3と同様にして調製した造粒物105gを200mlの石英製反応器に充填し、実施例1と同様の条件と方法で反応を開始させた。開始から1.0時間後以降に245g分の造粒物を30分間に23.1gの供給速度で反応器上部から供給し、それに伴い開始から2.0時間後以降に反応済みの残渣を30分間に6.9gの排出速度で反応器下部から排出した。内温が800℃を下回った時点で塩素の流通を止めた。その際の四塩化ケイ素の収量は656gであり、塩素流通時間は6.1時間であった。また、金属ケイ素の反応率は96.5%で、もみ殻灰中のシリカの反応率は61.7%であった。
<比較例5>
バイオ由来シリカに対する金属ケイ素の添加量を5.0%とした他は実施例1と同じにして、反応を始めたが、反応器内温は830℃までしか上昇せず、0.1時間で800℃を下回ったので反応を終了した。金属ケイ素の反応率は32.1%で、もみ殻灰中のシリカの反応率は3.2%であった。
<比較例6>
バイオ由来シリカに対する金属ケイ素の添加量を40%とした他は実施例1と同じにして、反応を始めたが、反応器内温は急上昇していき、1250℃を超えても上昇が見られたため、塩素の供給を中止して反応を停止した。金属ケイ素と、もみ殻灰中のシリカの反応率は測定しなかった。
比較例5および6の結果は、金属ケイ素が多すぎればコントロールできないほど暴走し、また、少なすぎれば金属ケイ素のみが反応するだけでシリカ分の反応率は予想外に低いという結果をもたらすことを示した。このことから、本願発明の金属ケイ素の使用量には意味があり、適切な範囲で用いれば反応は自律的に進行し、もみ殻灰中のシリカの反応率が高くなるという、予想し得ない効果をもたらすことを示していると思われる。
実施例1〜5及び比較例1〜4の反応結果を表1に示す。
Figure 2012171843
実施例2と実施例4は粒径範囲が同じで、造粒を行った実施例2と比べると、造粒しない実施例4では、金属ケイ素の反応率は低くシリカの反応率も劣る結果となった。これは、造粒されていないと、塩素が流通する際に偏流が生じて金属ケイ素と塩素との接触効率が低下してしまうために、金属ケイ素の反応率が低くなったものと思われる。また、金属ケイ素表面で発生する反応熱も小さくなり、反応時間も短くなったために、シリカの反応率も低くなったものと思われる。
実施例6,7の反応結果を表2に示す。
Figure 2012171843
比較例5,6の反応結果を表3に示す。
Figure 2012171843
本発明の四塩化ケイ素の製造方法は、工業的に実施可能であり、シリカの反応率も高いことから、より安価な四塩化ケイ素を市場に供給することができる。


Claims (6)

  1. ケイ素分を含む植物の炭化、または焼却により得られるバイオ由来シリカと、炭素質物質との混合物を、塩素と反応させて、四塩化ケイ素を製造する方法において、JIS標準篩の呼び寸法で1.0mm以上4.8mm以下の金属ケイ素を、バイオ由来シリカに対して、10〜30wt%加えて塩素化反応を行う、四塩化ケイ素の製造方法。
  2. バイオ由来シリカと炭素質物質の、電子顕微鏡によって確認できる平均粒径が、いずれも0.1μm〜500μmの範囲内である、請求項1に記載の、四塩化ケイ素の製造方法。
  3. バイオ由来シリカの質量に対して、反応触媒としてのカリウム化合物を、カリウム量として0.1〜20wt%用いる請求項1または2に記載の四塩化ケイ素の製造方法。
  4. バイオ由来シリカと炭素質物質と金属ケイ素との混合物を、バインダーを用いて造粒し、JIS標準篩による粒径範囲が1.0mm以上8.0mm以下の造粒物として反応させる、請求項1〜3のいずれかに記載の四塩化ケイ素の製造方法。
  5. バイオ由来シリカと炭素質物質と金属ケイ素との造粒物を、反応中の反応器に供給することにより、反応を継続して行う、請求項4に記載の四塩化ケイ素の製造方法。
  6. バイオ由来シリカと炭素質物質と金属ケイ素との造粒物を、縦型反応器の上部から供給し、下部から反応残さを抜き出しながら、反応を継続して行う、請求項5に記載の四塩化ケイ素の製造方法。
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