JP2012170853A - 高分子凝集剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 低添加量で、より強固なフロックを形成し、脱水後のケーキ含水率を低減することができる高分子凝集剤を提供すること。
【解決手段】 下記の関係式を満足する水溶性重合体(A)を含有してなる高分子凝集剤。
0.1≦CE2/CE1≦0.9

[式中、CE1は純水中でのコロイド当量(カチオンコロイド当量および/またはアニオンコロイド当量)測定値、CE2は0.05重量%のNa2SO4水溶液中のコロイド当量測定値を表す。]
【選択図】 なし

Description

本発明は、高分子凝集剤に関する。さらに詳しくは、下水または工場廃水等の有機性または無機性の汚泥または廃水の処理に優れる高分子凝集剤に関する。
従来、下水の処理で生じた有機性汚泥や工場廃水等の処理で生じた無機性汚泥の脱水に用いられる高分子凝集剤としては、カチオン性高分子凝集剤が広く使用されてきた。しかし、汚泥処理の効率化を目的とした汚泥集約処理や、汚泥の減容化を目的とした消化処理が行われるようになり、汚泥の腐敗が進むこと等から、難脱水化が生じている。そのため、汚泥の脱水性改善のために無機凝集剤と両性高分子凝集剤を併用する方法(例えば特許文献1、2参照)が提案され、広く用いられるようになっている。但し、該方法は、カチオン性高分子凝集剤を用いる方法と比較すると薬剤コストが高く、無機凝集剤の使用で発生する汚泥ケーキの増大や、焼却後の灰の増大などの問題があり、併用する無機凝集剤の低減が求められている。しかし、無機凝集剤量を低減すると汚泥凝集フロック(以下フロックと略記)の強度が低下して壊れやすくなり、含水率が上がる等の問題が生じる。
そこで、これらを解決すべく疎水性モノマーを共重合させた両性高分子凝集剤が提案されている。(例えば特許文献2参照)。しかし、アニオン性、カチオン性および疎水性モノマーの共重合は、溶解性の違いから、疎水性モノマーを均一重合させることが難しく、疎水性モノマーの導入量が限られることから、強固なフロックを形成させる効果は不十分であった。
特開平2−180700号公報 特開平11−156400号公報
上記のとおり、従来の高分子凝集剤は、高分子凝集剤単独で、強固なフロックを形成し、脱水後のケーキ含水率を低減するという性能が満足できていない問題があった。また、強固なフロックを形成する目的で導入した疎水性モノマーが均一に重合できないという問題もあり改善が望まれていた。
本発明の目的は、低添加量で、より強固なフロックを形成し、脱水後のケーキ含水率を低減することができる高分子凝集剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記の関係式を満足する水溶性重合体(A)を含有してなる高分子凝集剤;並びに上記高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ固液分離する汚泥または廃水の処理方法;である。
0.1≦CE2/CE1≦0.9
[式中、CE1は純水中でのコロイド当量測定値、CE2は0.05重量%のNa2SO4水溶液中のコロイド当量測定値を表す。]
また、ここで水溶性とは、20℃の水への溶解度が1g以上/水100gであることを意味する。
本発明の高分子凝集剤は下記の効果を奏する。
(1)汚泥に少量添加、混合することにより、強固な粗大フロックを形成する。
(2)形成されたフロックは破壊、再分散されにくいため、凝集処理の安定性や処理速度を著しく高めることができる。
(3)汚泥脱水工程後のケーキ含水率が低く、廃棄物量および焼却処理コストを低減できる。
本発明における水溶性重合体(A)の、純水中と0.05重量%のNa2SO4水溶液中のカチオンおよび/またはアニオンコロイド当量測定値の比(CE2/CE1:以下、「カチオンおよび/またはアニオンコロイド当量測定値の比」を「コロイド当量測定値の比」と記載する。)は、いずれも0.1以上0.9以下(0.1≦CE2/CE1≦0.9)である。CE2/CE1の値が0.1未満であると、汚泥を凝集させることができず、フロックが容易に破壊され含水率が高くなる。また、CE2/CE1の値が0.9を越えると、形成されたフロックの再分散が起きやすくなり、含水率が高くなる。
ここで、CE1は純水中でのコロイド当量測定値、CE2は0.05重量%のNa2SO4水溶液中のコロイド当量測定値を表す。
CE2/CE1の値は、含水率を低減させるという観点から、好ましくは、0.15以上0.87以下(0.15≦CE2/CE1≦0.87)、さらに好ましくは、0.2以上0.85以下(0.2≦CE2/CE1≦0.85)である。
コロイド当量値は、以下に示すコロイド滴定法により求めることができる。なお、以降の測定は室温(約20℃)下で行う。
(1)測定試料(50ppm水溶液)の調製
試料0.2g(固形分含量換算したもの)を精秤し、200mlのガラス製三角フラスコにとり、全体の重量(試料とイオン交換水の合計重量)が100gとなるようにイオン交換水を加えた後、マグネチックスターラー(1,000rpm)で、3時間撹拌して完全に溶解し、0.2重量%の水溶性重合体(A)溶液を調製する。さらに500mlのガラス製ビーカーに上記調製した溶液10.00gを小数点第2位まで計ることができる天秤を用いて正確に秤りとり、全体の重量(溶液10mlとイオン交換水の合計重量)が400.00gとなるようにイオン交換水を加え、再度マグネチックスターラー(1,000〜1,200rpm)で、30分間撹拌して、均一な測定試料とする。
なお、水溶性重合体(A)の固形分含量は、試料約1.0gをシャーレに秤量(W1)して、循風乾燥機中105±5℃で90分間乾燥させた後の残存重量を(W2)として、次式から算出した値である。
固形分含量(重量%)=(W2)×100/(W1)
(2)カチオンコロイド当量値の測定
測定試料100.0gを200mlのガラス製コニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら徐々に0.5重量%硫酸水溶液を加え、pH3に調整する。次にトルイジンブルー指示薬(TB指示薬)を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム(N/400PVSK)試薬で滴定する。滴定速度は2ml/分とし、測定試料が青から赤紫色に変色し、30秒間保持する時点を終点とする。
(3)アニオンコロイド当量値の測定
測定試料100gを200mlのガラス製コニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら、N/10水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを加え、さらにN/200メチルグリコールキトサン水溶液5mlを加えた後、5分間撹拌する(その時のpH約10.5)。TB指示薬を2〜3滴加え、上記(2)と同様にして滴定する。
(4)空試験
測定試料の代わりにイオン交換水100.0gを用いる以外(2)および(3)と同様の操作を行う。
(5)計算方法
カチオンまたはアニオンコロイド当量値(meq/g)=1/2×(試料の滴定量−空試験の滴定量)×(N/400PVSKの力価)
本発明における水溶性重合体(A)の、純水中と0.05重量%のNa2SO4水溶液中のコロイド当量測定値の比(CE2/CE1)を0.1以上0.9以下に調整する方法としては、例えば、疎水性モノマーを(A)を構成するモノマーの一部として適量用いて共重合する方法や、水溶性重合体(A)の電荷を中和するための添加剤(電解質など)を加える方法がある。
CE2/CE1の値を0.1以上0.9以下とするためには、凝集に関わる有効成分の観点から、疎水性モノマー〔特に、後述する疎水性モノマー(b)〕を共重合する方法が好ましい。
本発明における水溶性重合体(A)の純水中でのカチオンコロイド当量値(meq/g)は、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1、さらに好ましくは0.5、とくに好ましくは1、最も好ましくは1.5、また、同様の観点から好ましい上限は20、さらに好ましくは12、とくに好ましくは8、最も好ましくは6である。
本発明における水溶性重合体(A)は、1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(a)と、特定の疎水性モノマー(b)とを、両親媒性化合物(c)の存在下で重合させて得られる水溶性共重合体であることが、CE2/CE1の値を上記範囲に調整して凝集性能に優れた高分子凝集剤を得るのが容易であり好ましい。(A)を構成するモノマーとしては、本発明の効果を阻害しない範囲で(a)と(b)の他に、必要により架橋性モノマー(x)を併用してもよい。
前記1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(a)には、下記のノニオン性モノマー(a1)、カチオン性モノマー(a2)、アニオン性モノマー(a3)およびこれらのうちの2種またはそれ以上の混合物が含まれる。
(a1)ノニオン性モノマー
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a11)(メタ)アクリレート
炭素数(以下、Cと略記)4〜重量平均分子量[以下、Mwと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。基準物質:ポリスチレン]5,000、例えば水酸基含有(メタ)アクリレート[例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度3〜50)モノ(メタ)アクリレート、ポリグリセロール(重合度1〜10)モノ(メタ)アクリレート]およびアクリル酸アルキル(C1〜2)エステル(C4〜5、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル等);
上記(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタアクリレートを意味し、以下同様の記載法を用いる。
(a12)(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜3)(メタ)アクリルアミド[N−メチルおよび−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等];
(a13) 上記以外の窒素原子含有エチレン性不飽和化合物
C3〜30のもの、例えばアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルカルバゾールおよび2−シアノエチル(メタ)アクリレート等。
(a2)カチオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a21) 窒素原子含有(メタ)アクリレート
C5〜30のもの、例えばアミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[N−モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]等;
(a22) 窒素原子含有(メタ)アクリルアミド誘導体
C5〜30のもの、例えばN,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等]等;
(a23) アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物
C5〜30のもの、例えばビニルアミン、ビニルアニリン、(メタ)アリルアミン、p−アミノスチレン等];
(a24) アミンイミド基を有する化合物
C5〜30のもの、例えば1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド等;
(a25) 上記以外の窒素原子含有ビニルモノマー
C5〜30のもの、例えば2−ビニルピリジン、3−ビニルピペリジン、ビニルピラジン、ビニルモルホリン等。
(a3)アニオン性モノマー
下記の酸、これらの塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等、以下同じ。)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等、以下同じ。)塩、アンモニウム塩およびアミン(C1〜20)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(a31) 不飽和カルボン酸
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、ビニル安息香酸、アリル酢酸等;
(a32) 不飽和スルホン酸
C2〜20の脂肪族不飽和スルホン酸(ビニルスルホン酸等)、C6〜20の芳香族不飽和スルホン酸(スチレンスルホン酸等)、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート[スルホアルキル(C2〜20)(メタ)アクリレート[2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド[2−(メタ)アクリロイルアミノエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、2−および4−(メタ)アクリロイルアミノブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルアミノメチルベンゼンスルホン酸等]、アルキル(C1〜20)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[メチル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等]等;
(a33) (メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(C1〜6)硫酸エステル、(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン(重合度2〜50)硫酸エステル等。
(a)のうち高分子量化の観点から好ましいのは、(a1)、(a21)、(a22)、(a31)、(a32)、さらに好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a22)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、特に好ましいのは(a12)、(a13)、(a21)、(a31)、および(a32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、最も好ましいのは(a12)のうちの(メタ)アクリルアミド、(a13)のうちのアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、(a21)のうちのN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩(上記のもの)、(a31)のうちの(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸およびこれらのアルカリ金属塩、(a32)のうちの2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩である。また、これらの(a)は、任意に混合して共重合させることができる。
前記疎水性モノマー(b)は、1個の不飽和基〔(メタ)アクリロイル基〕を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(b1)、および1個の不飽和基(ビニル基)を有する芳香環含有ビニル化合物(b2)からなる群から選ばれる1種または2種以上のモノマーである。ここにおいて疎水性モノマーは、20℃の水への溶解度が1g未満/水100gのモノマーであることを意味する。
(b)のHLB(Hydrophile−Lipophile Balance)は、好ましくは0.5〜12、さらに好ましくは0.8〜10である。
(b)のHLBが12以下であると、得られた高分子凝集剤を有機汚泥に添加すると、特に強固なフロックが形成される。
本発明においてHLBとは、親水性と親油性とのつり合いを表し、下記の式から求められる[「界面活性剤の合成と其応用」、501頁、1957年槇書店刊;「新・界面活性剤入門」、197−198頁、1992年三洋化成工業(株)刊、等参照]。

HLB=10×(無機性/有機性)

上記式中、( )内は有機化合物の無機性と有機性の比率を表し、該比率は上記文献に記載されている値から計算することができる。
(メタ)アクリロイル基含有化合物(b1)としては、以下のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(b11)(メタ)アクリル酸エステル C4以上かつ数平均分子量[以下、Mnと略記、測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。基準物質:ポリスチレン]1,000以下、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルケニルエステル、および(メタ)アクリル酸ポリオキシプロピレンエステル:例えば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、ポリプロピレングリコール(Mn100〜800)の(メタ)アクリル酸エステル。
(b12)C8〜24のN置換(メタ)アクリルアミド
N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、N−アルケニル置換(メタ)アクリルアミド、およびN−(ポリ)オキシプロピル置換(メタ)アクリルアミド;例えば、N,N−ジエチルメタアクリルアミド、N−2エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−オクチル(メタ)アクリルアミド、N−ドデシル(メタ)アクリルアミド、N−ラウリル(メタ)アクリルアミド、N−セチル(メタ)アクリルアミド、N−ステアリル(メタ)アクリルアミド、N−オレイル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(ポリ)オキシプロピル[(ポリ)オキシプロピル基はプロピレンオキシド1〜3モル付加](メタ)アクリルアミド等。
これらの(b1)のうち、疎水性、工業上および(a)との共重合性の観点から好ましいのは(b11)、さらに好ましいのはC4〜24の(メタ)アクリル酸アルキルおよびアルケニルエステル、とくに好ましいのはメチルメタアクリレート、(メタ)アクリル酸ラウリル、−セチル、−ステアリルおよび−オレイルである。
(b2)としては、以下のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(b21)単環化合物 C8〜C13、例えばスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、アリルベンゼン、アリルフェノールが挙げられる。
(b22)多環化合物
C12〜C15、例えばビニルナフタレン、ナフチルアクリル酸、ビニルナフトールが挙げられる。
これらの(b2)のうち工業上の観点から好ましいのは、スチレン、α−メチルスチレン、ヒドロキシスチレン、アセトキシスチレン、さらに好ましいのはスチレン、α−メチルスチレン、アセトキシスチレン、とくに好ましいのはスチレンである。
(a)と(b)の合計重量に基づく(b)の含有量は、疎水性と親水性のバランスの観点から、好ましくは0.001〜50重量%、さらに好ましくは0.01〜40重量%、とくに好ましくは0.1〜35重量%、最も好ましくは1〜30重量%である。
また、架橋性モノマー(x)としては、以下の(x1)〜(x5)、これらの塩[例えば、塩基性モノマーについては、無機酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等、酸性モノマーについては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン等)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(x1) ビスポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリルアミド
C5〜30、例えばN,N’−メチレンビスアクリルアミド等;
(x2) ポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリレート
C8〜30、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール[ポリ(2〜4)](メタ)アクリレート;
(x3) ビニル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C4〜Mn6,000、例えばジビニルアミン、多価(2〜5またはそれ以上)アミン[C2〜Mn3,000、例えばエチレンジアミン、ポリエチレンイミン(C4〜Mn3,000)]のポリ(2〜20)ビニルアミン、ジビニルエーテル、多価アルコール〔C2〜Mn3,000、例えばアルキレン(C2〜6またはそれ以上)グリコール[エチレングリコール(以下、EGと略記)、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等]、ポリオキシアルキレン[C2〜Mn3000、例えばポリエチレングリコール(以下、PEGと略記)(分子量106〜Mn3,000)、ポリプロピレングリコール(分子量134〜Mn3,000)、ポリオキシエチレン(分子量106〜Mn3,000)/ポリオキシプロピレン(分子量134〜Mn3,000)ブロックコポリマー等]、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、(ポリ)(2〜50)グリセリン(以下、GRと略記)、ペンタエリスリトール、ソルビトール、デンプン等〕のポリ(2〜20)ビニルエーテル等;
(x4) アリル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C6〜Mn3000、例えばジ(メタ)アリルアミン、N−アルキル(C1〜20)ジ(メタ)アリルアミン、多価アミン(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルアミン、ジ(メタ)アリルエーテル、多価アルコール(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルエーテル、ポリ(2〜20)(メタ)アリロキシアルカン(C1〜20)(テトラアリロキシエタン等)等;
(x5) エポキシ基含有モノマー
C8〜Mn6,000、例えばEGジグリシジルエーテル、PEGジグリシジルエーテル、GRトリグリシジルエーテル等。
(x)の使用量は、使用する架橋性モノマー(x)の重合性または反応性にもよるが、(a)と(b)の合計重量に基づいて、通常1%以下、凝集性能発現の観点から、好ましい下限は0.0001%、さらに好ましくは0.001%、得られる高分子凝集剤の水への溶解性の観点から、好ましい上限は0.1%、さらに好ましくは0.05%である。
前記、両親媒性化合物(c)は、水およびn−ヘキサンの両方に、1g以上/水またはn−ヘキサン100g、溶解する化合物である。(c)として好ましくは、炭素数6以下の有機溶媒(c1)、変性シリコーンオイル(c2)および界面活性剤(c3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物およびこれらの混合物である。
(c1)炭素数6以下の有機溶媒
アルコール(C1〜6、例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロピルアルコール)、ケトン(C3〜6、例えばアセトン、メチルエチルケトン)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、これらの混合物等の有機溶媒が挙げられる。
(c2)変性シリコーンオイル
ポリエーテル変性ポリシロキサン{ポリオキシエチレン変性ポリシロキサン及びポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)変性ポリシロキサン等}、カルボキシ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン等及びこれらの混合物等が含まれる。
(c3)界面活性剤
(c3)としては、以下のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(c31)ノニオン性界面活性剤
ノニオン性界面活性剤としては、例えば高級脂肪酸エステル(例えば、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレートおよびオレイン酸ソルビタンエステルエチレンオキシド付加物)、ポリオキシエチレン長鎖アルキルエーテル(例えばラウリルアルコールポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)および長鎖アルキルアルカノールアミド(例えばN,N−ジヒドロキシエチルラウリルアミド)が挙げられる。
(c32)カチオン性界面活性剤
カチオン性界面活性剤としては、例えば4級アンモニウム塩(ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド)が挙げられる。
(c33)アニオン性界面活性剤
アニオン性界面活性剤としては、例えば硫酸エステル(例えば、(ポリ)オキシエチレン(平均付加モル数=1〜30)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、2−ヒドロキシドデシルオキシ硫酸ナトリウム)、エーテルカルボン酸塩(例えば、(ポリ)オキシエチレン(平均付加モル数=1〜30)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、および2−ヒドロキシドデシルオキシ酢酸ナトリウム)スルホン酸塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム)、リン酸エステル塩(ラウリルリン酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(平均付加モル数=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム)、脂肪酸塩(ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン等)等が挙げられる。
両親媒性化合物(c)の使用量は、(a)と(b)を均一に相溶させるという観点から、(a)と(b)の合計重量に基づいて、好ましくは0.001〜30%、さらに好ましくは0.01〜28%、とくに好ましくは0.1〜25%である。
本発明における水溶性重合体(A)の重合方法としては、とくに限定されないが、重合時の除熱の容易さ、分子量分布のシャープ性、重合体を乾燥させてなる粒子の粒径の均一性、真球度(粒子の長径/短径比)、粒子表面の滑らかさ、および重合体の乾燥工程の簡素化もしくは省略、などの観点から、好ましいのは逆相懸濁重合である。該逆相懸濁重合法としては、例えば次の方法が挙げられる。
すなわち、疎水性分散媒(e)および分散剤(f)を重合槽に仕込み、必要に応じて加熱しながら所定の重合温度(通常20〜100℃、好ましくは30〜80℃)に調整した後、槽内を不活性ガス(例えば窒素)で十分置換する。
一方、水溶性モノマー(a)、疎水性モノマー(b)、両親媒性化合物(c)、ラジカル重合開始剤(g)、および必要により連鎖移動剤(h)、並びに必要により架橋性モノマー(x)を加えたモノマー水溶液を調製し、不活性ガスで十分置換した後、撹拌下で重合槽内に投入し、懸濁させながら重合させる。
モノマー水溶液の投入方法としては、一括投入または滴下のいずれでもよい。また、その際モノマー水溶液としては、(a)、(b)、(c)および必要により加える(x)の均一水溶液としてもよいし、別々の水溶液とした上で、滴下直前で混合してもよいし、別々に同時滴下してもよい。モノマー水溶液等を不活性ガスで置換する方法としては、モノマー水溶液等に不活性ガスをバブリング供給する方法、滴下ライン中でスタティックミキサー等により不活性ガスをブレンドする方法等が挙げられ、重合の均一性の観点からスタティックミキサーで不活性ガスをブレンドする方法が好ましい。
疎水性分散媒(e)とは、水に対する溶解度(20℃)が1g未満/水100gである分散媒を意味する。
(e)としては、炭化水素[脂肪族(C5〜12、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン)、脂環含有(C5〜12、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン)および芳香環含有炭化水素(C6〜12、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等]、ケトン[脂肪族(C3〜10、例えばメチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、脂環含有(C5〜10、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン)および芳香環含有ケトン(C8〜13、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン)等]、エーテル[脂肪族(C4〜8、例えばジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル)、環状(C4〜18、例えばテトラヒドロピリン)および芳香環含有エーテル(C7〜12、例えばアニソール)等]、エステル[脂肪族(C3〜10、例えば酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル)、脂環含有(C7〜12、例えば酢酸シクロヘキシル、シクロヘキサンカルボン酸メチル)および芳香環含有エステル(C8〜13、例えば安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−ブチル、酢酸ベンジル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート)等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
これらのうち、製造時の取り扱い性、および重合時の温度制御の観点から、好ましいのは脂肪族および脂環含有炭化水素、脂肪族および脂環含有エステル、さらに好ましいのはn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルおよび酢酸シクロヘキシルである。
分散剤(f)としては、水溶性重合体(A)の粒子の分散安定性の観点から、好ましくはHLBが1〜8、さらに好ましくは2〜7の、種々の油溶性物質が挙げられる。
(f)には、Mwが5,000未満(さらに好ましくは100〜3,000、とくに好ましくは100〜1,000)の低分子分散剤(f1)、およびMwが5,000以上(さらに好ましくは7,000〜1,000,000、とくに好ましくは10,000〜100,000)の高分子分散剤(f2)が含まれる。
(f1)には、多価(2〜8またはそれ以上)アルコールの脂肪酸(C10〜30)エステル〔ショ糖脂肪酸エステル(C22〜120、例えばショ糖ジステアレート、ショ糖トリステアレート)、ソルビタン脂肪酸エステル(C16〜120、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート)、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(C12〜120、例えばグリセリンモノステアレート)、PEG脂肪酸エステル[Mw100〜5,000未満、例えばPEGのモノステアレート]等〕、アルキル(C1〜30)アリルエーテル等が含まれる。
上記(f1)のうち、製造時における装置への重合粒子付着防止および乾燥後の高分子凝集剤の乾燥粒子の安息角の観点から好ましいのは、多価アルコールの脂肪酸エステル、さらに好ましいのは、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、PEG脂肪酸エステルである。
(f2)には、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体またはその誘導体[例えば1−オレフィン(C11〜100)/(無水)マレイン酸共重合体、およびそのアミン反応物]、長鎖アルキル基(C12〜50)含有(メタ)アクリレート(共)重合体、変性(アミノ、カルボキシ、エポキシ、ヒドロキシ、メルカプト、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド変性等)オルガノポリシロキサン、セルロースエーテル(例えばエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース)、(無水マレイン酸変性)エチレン・酢酸ビニル共重合体等が含まれる。
上記(無水マレイン酸変性)エチレン・酢酸ビニル共重合体には、エチレンおよび/または無水マレイン酸変性エチレンと酢酸ビニルの共重合体、およびエチレン・酢酸ビニル共重合物を無水マレイン酸で変性したもの等が含まれる。
無水マレイン酸変性エチレンとしては、無水マレイン酸をエチレン・酢酸ビニル共重合物に付加したものが挙げられ、無水マレイン酸とエチレン・酢酸ビニル共重合物の重量比は分散安定性および反応物の分子量調整の観点から好ましくは2/98〜30/70、さらに好ましくは5/95〜20/80である。
(無水マレイン酸変性)エチレンと酢酸ビニルとの共重合体における共重合比(重量比)は、疎水性分散媒(e)への溶解性および分散安定性の観点から好ましくは50/50〜95/5、さらに好ましくは70/30〜90/10である。
上記(f2)のうち、製造時における装置への重合粒子付着防止および乾燥後の高分子凝集剤の乾燥粒子の安息角の観点から好ましいのは、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体またはその誘導体、変性オルガノポリシロキサン、(無水マレイン酸変性)エチレン・酢酸ビニル共重合体である。
分散剤(f)の使用に当たっては、逆相懸濁粒子の分散安定性および乾燥粒子の安息角、粒度分布の観点から(f1)と(f2)を併用することが好ましく、併用する際の重量比[(f1)/(f2)]は、同様の観点から好ましくは70/30〜1/99、さらに好ましくは50/50〜5/95である。
(f1)と(f2)を併用する場合、粒度分布の観点から好ましい組合せは、多価アルコールの脂肪酸エステルと無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体の組合せ、さらに好ましいのはPEG脂肪酸エステルと無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体の組み合わせである。
(f)の使用量は、疎水性分散媒(e)の重量に基づいて、通常20%以下、(A)の分散粒子の安定性、乾燥後の高分子凝集剤の乾燥粒子の安息角および粒子径制御の観点から、好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.05〜5%である。
ラジカル重合開始剤(g)としては、種々のもの、例えばアゾ化合物〔水溶性のもの[アゾビスアミジノプロパン(塩)、アゾビスシアノバレリン酸(塩)等]および油溶性のもの[アゾビスシアノバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等]〕および過酸化物〔水溶性のもの[過酢酸、t−ブチルパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等]および油溶性のもの[ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロキシパーオキシド等]〕が挙げられる。なお、上記アゾ化合物における塩としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩およびアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
上記過酸化物は還元剤と組み合わせてレドックス開始剤として用いてもよく、還元剤としては重亜硫酸塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等)、還元性金属塩[硫酸鉄(II)等]、遷移金属塩のアミン錯体[塩化コバルト(III)のペンタメチレンヘキサミン錯体、塩化銅(II)のジエチレントリアミン錯体等]、有機性還元剤〔アスコルビン酸、3級アミン[ジメチルアミノ安息香酸(塩)、ジメチルアミノエタノール等]等〕が挙げられる。
また、アゾ化合物、過酸化物およびレドックス開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもいずれでもよい。
(g)は、通常上記分散相(水溶液)に存在させるが、分散相(水溶液)および/または連続相(疎水性分散媒)のいずれに存在させてもよい。
(g)の使用量は、最適な分子量を得るとの観点から、(A)を構成するモノマーの全重量に基づいて、好ましい下限は0.001%、さらに好ましくは0.005%、とくに好ましくは0.01%、好ましい上限は1%、さらに好ましくは0.5%、とくに好ましくは0.1%、最も好ましくは0.05%である。
本発明における分散相中のモノマーの合計濃度は、分散相の重量に基づいて、生産性の観点から好ましくは20%以上、さらに好ましくは25%以上、とくに好ましくは30%以上、装置への重合粒子付着防止の観点から好ましくは90%以下、さらに好ましくは85%以下、とくに好ましくは80%以下である。
連鎖移動剤(h)としては、0.01〜100、好ましくは0.05〜50、とくに好ましくは0.1〜10の連鎖移動定数を有するものが挙げられる。
連鎖移動定数の定義は、ジェー・ブランドルプおよびイー・エッチ・インマーグト編「ポリマー・ハンドブック(第4版)」、ジョン ウィレー アンド サンズ刊(J.Brandrup and E.H.Immergut編のPolymerHandbook fourth edition,JOHN WILEY & SONS)の97〜98頁に記載されている。
本発明における連鎖移動定数は、「高分子合成の実験法」[化学同人(株)、1993年刊行]等に記載されている一般的な方法を用いて測定される、60℃のアクリルアミドへの連鎖移動定数であるものとする。
該(h)としては、分子内に1個または2個以上のアミノ基を有する化合物[C0〜60、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、n−およびi−プロパノールアミン]、分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物(後述)および(次)亜リン酸化合物〔亜リン酸、次亜リン酸、およびこれらの塩[アルカリ金属(Na、K等)塩等]、並びにこれらの誘導体等〕等が挙げられる。これらのうち、分子量制御の観点から好ましいのは分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物および(次)亜リン酸化合物である。
分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物としては、以下のもの、これらの塩[アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エタノールアミン)塩、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(1)1価チオール
脂肪族チオール(C1〜20、例えばメタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、n−オクタンチオール、n−ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、n−オクタデカンチオール、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、1−チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオマレイン酸、メルカプトコハク酸、システイン、システアミン)、脂環含有チオール(C5〜20、例えばシクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール)、芳香環含有チオール(C6〜12、例えばベンゼンチオール、チオサリチル酸、チオクレゾール、チオキシレノール、チオナフトール)および芳香脂肪族チオール(C7〜20、例えばα−トルエンチオール)が挙げられる。
(2)多価チオール
ジチオール[脂肪族ジチオール(C2〜40、例えばエタンジチオール、ジエチレンジチオール、トリエチレンジチオール、n−、i−およびsec−プロパンジチオール、1,3−および1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、ネオペンタンジチオール、トリエチレングリコールジチオール)、脂環式ジチオール(C5〜20、例えばシクロペンタンジチオール、シクロヘキサンジチオール)、芳香族ジチオール(C6〜16、例えばベンゼンジチオール、ビフェニルジチオール)および芳香脂肪族ジチオール(C8〜20、例えばキシレンジチオール)が挙げられる。
また、上記(h)のうち、高分子凝集剤の水不溶解分低減の観点から水溶性の高いものが好ましく、水/n−デカン分配係数が、好ましくは10/90〜100/0、さらに好ましくは20/80〜100/0、とくに好ましくは50/50〜100/0である。ここにおける水/n−デカン分配係数は、日本工業規格(JIS)に規定されている水/1−オクタノール分配係数(JIS Z7260−107)と同様の測定方法で、1−オクタノールを、n−デカンに代えることで測定することができる。
(h)の使用量は、本発明の高分子凝集剤の最適な分子量を得るとの観点から、(a)と(b)、または、(a)と(b)と必要により併用される(x)の合計重量に基づいて、好ましい下限は0.0001%、さらに好ましくは0.0005%、好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%、最も好ましくは1%である。
本発明におけるモノマー水溶液のpHは、特に限定されないが、高分子量化の観点から、好ましい下限は1.5、さらに好ましくは2、とくに好ましくは2.5、加水分解防止の観点から好ましい上限は9、さらに好ましくは8、とくに好ましくは7.5である。pH調整のために用いられるpH調整剤としては特に限定はなく、モノマー水溶液がアルカリ性の場合は無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)、無機固体酸性物質(酸性リン酸ソーダ、酸性ぼう硝、塩化アンモン、硫安、重硫安、スルファミン酸等)および有機酸(C2〜20、例えばシュウ酸、こはく酸、リンゴ酸)が挙げられ、モノマー水溶液が酸性の場合は無機アルカリ性物質(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)および有機アルカリ性物質(グアニジン等)が挙げられる。
なお、ここにおけるpHは、モノマー水溶液の原液をpHメーター[例えば、商品名「LABpHメーターM−12」、(株)堀場製作所製]を用いて室温(20℃)で測定される値である。
逆相懸濁重合における重合温度(℃)は、重合中でのモノマー濃度の変化防止の観点から、疎水性分散媒(e)の沸点未満にすることが好ましい。
重合温度としては、重合速度の観点から、好ましい下限は10、さらに好ましくは30、とくに好ましくは40、最も好ましくは50、分子量および分散粒子安定性の観点から好ましい上限は95、さらに好ましくは80、とくに好ましくは70、最も好ましくは60である。また、重合中は所定重合温度を一定(例えば、所定重合温度±5℃)に保つように、適宜加熱、冷却して調節することが好ましい。
重合温度を一定に保つために、予め所定重合温度に温調した分散媒に撹拌下でモノマーを随時滴下してもよい。その際の滴下時間は、モノマー濃度、および重合反応発熱量により異なるが、通常0.5〜20時間、好ましくは1〜10時間である。
重合反応の終了は、重合による発熱がなくなった点で確認できるが、重合時間は、通常発熱により重合開始を確認した時点から1〜24時間、重合を完結し、残存モノマーを減少させるとの観点から好ましい下限は2時間、さらに好ましくは3時間、工業上の観点から好ましい上限は12時間、さらに好ましくは10時間である。モノマーを随時滴下する場合は滴下終了後から上記時間重合することが好ましい。
上記のモノマー濃度、重合温度、重合時間は、モノマー組成、重合法、開始剤種類等によって適宜調整することができる。
重合時の圧力[kPa(絶対圧力)、以下数値のみを示す。]は、特に限定されないが、通常大気圧または減圧下で行う。分子量分布制御の観点から、好ましくは重合温度で疎水性分散媒(e)が沸騰する圧力にすることが好ましい。
圧力の好ましい下限は5、さらに好ましくは10、とくに好ましくは15、好ましい上限は500、さらに好ましくは300、とくに好ましくは150である。
本発明における水溶性重合体(A)は、逆相懸濁重合による製造直後は、含水ゲル粒子の状態で得られるが、さらに脱水、乾燥することによってビーズ状の水溶性重合体(A)となり、該(A)を含有してなる本発明の高分子凝集剤を得ることができる。
脱水方法としては、特に限定されないが、重合後の含水ゲル(通常体積平均粒径100〜2,000μm)をろ過または遠心分離により固液分離させた後、公知の乾燥機(真空乾燥、スクリューコンベア、ドラムドライヤーなど)を用いて加熱し、乾燥させる方法などが挙げられる。乾燥温度としては、通常20〜200℃、乾燥速度の観点から好ましい下限は30℃、さらに好ましくは40℃、架橋防止の観点から好ましい上限は150℃、さらに好ましくは120℃である。
本発明における水溶性重合体(A)の分子量は、固有粘度で表され、該固有粘度は、好ましくは1〜30dl/g、ノニオン性およびアニオン性重合体では、さらに好ましくは10〜25dl/g、カチオン性および両性重合体では、さらに好ましくは4〜20dl/gである。
ここで固有粘度は、30℃で1Nの硝酸ソーダ水溶液中で測定される値である。
本発明の高分子凝集剤は、水溶性重合体(A)以外に、必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤からなる群から選ばれる添加剤を含有することができる。
消泡剤としては、シリコーン系(例えばMn100〜100,000のジメチルポリシロキサン)、鉱物油(例えばスピンドル油およびケロシン)、C12〜22の金属石ケン(例えばステアリン酸カルシウム);
キレート化剤としては、C6〜12のアミノカルボン酸(例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ニトリロトリ酢酸およびトリエチレンテトラミンヘキサ酢酸)、多価カルボン酸〔例えばマレイン酸、ポリアクリル酸(Mn1,000〜10,000)およびイソアミレン−マレイン酸共重合体(Mn1,000〜10,000)〕、C3〜10のヒドロキシカルボン酸(例えばクエン酸、グルコン酸、乳酸およびリンゴ酸)、縮合リン酸(例えばトリポリリン酸およびトリメタリン酸)およびこれらの塩〔例えばアルカリ金属(例えばナトリウムおよびカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えばカルシウムおよびマグネシウム)塩、アンモニウム塩、C1〜20のアルキルアミン(例えばメチルアミン、エチルアミンおよびオクチルアミン)塩およびC2〜12のアルカノールアミン(例えばモノ−、ジ−およびトリエタノールアミン)塩〕;
pH調整剤としては、苛性アルカリ(例えば苛性ソーダ)、アミン(例えばモノ−、ジ−およびトリエタノールアミン)、無機酸(塩)[例えば無機酸(例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸および炭酸)、およびこれらの金属(例えばアルカリ金属およびアルカリ土類金属)塩(例えば炭酸ソーダ、炭酸カリウム、硫酸ソーダ、硫酸水素ナトリウムおよびリン酸1ナトリウム)およびアンモニウム塩(例えば炭酸アンモンおよび硫酸アンモン)]、有機酸(塩)[例えば有機酸(例えばカルボン酸、スルホン酸およびフェノール)、およびこれらの金属(上記に同じ)塩(例えば酢酸ソーダおよび乳酸ソーダ)およびアンモニウム塩(例えば酢酸アンモニウムおよび乳酸アンモニウム)];
界面活性剤としては、米国特許第4331447号明細書記載の界面活性剤、例えばポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルおよびジオクチルスルホコハク酸ソーダ];
ブロッキング防止剤としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル、例えば、ポリエチレンオキシド変性シリコーンおよびポリエチレンオキシド・ポリプロピレンオキシド変性シリコーン;
酸化防止剤としては、フェノール化合物[例えばハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、カテコール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)および2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)]、含硫化合物〔例えばチオ尿素、テトラメチルチウラムジサルファイド、ジメチルジチオカルバミン酸およびその塩[例えば金属(上記に同じ)塩およびアンモニウム塩]、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、2−メルカプトベンゾチアゾールおよびその塩(上記に同じ)、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート(DLTDP)およびジステアリル3,3’−チオジプロピオネート(DSTDP)〕、含リン化合物[例えばトリフェニルホスファイト、トリエチルホスファイト、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、トリフェニルホスファイト(TPP)およびトリイソデシルホスファイト(TDP)]および含窒素化合物[アミン(例えばオクチル化ジフェニルアミン、N−n−ブチル−p−アミノフェノールおよびN,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン)、尿素、グアニジン、およびグアニジンの上記無機酸塩];
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系(例えば2−ヒドロキシベンゾフェノンおよび2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン)、サリチレート系(例えばフェニルサリチレートおよび2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート)、ベンゾトリアゾール系[例えば(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾールおよび(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール]およびアクリル系[例えばエチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレートおよびメチル−2−カルボメトキシ−3−(パラメトキシベンジル)アクリレート];
防腐剤としては、例えば安息香酸、パラオキシ安息香酸エステルおよびソルビン酸が挙げられる。
これらの添加剤のうち、ブロッキング防止剤を除く添加剤については、本発明の効果を阻害しない範囲で水溶性重合体(A)の製造前のモノマー水溶液中に予め含有させてもよい。
上記添加剤全体の使用量は、添加剤を(A)に含有させる場合は、(A)の重量に基づいて、またモノマー水溶液中に予め含有させる場合は、モノマー重量に基づいて、通常30%以下、本発明の効果(フロック強度)の観点から好ましくは0〜10%である。
各添加剤の使用量については、上記と同様の重量に基づいて、消泡剤は通常5%以下、好ましくは1〜3%、キレート化剤は通常30%以下、好ましくは2〜10%、pH調整剤は通常10%以下、好ましくは1〜5%、界面活性剤およびブロッキング防止剤はそれぞれ通常5%以下、好ましくは1〜3%、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤はそれぞれ通常5%以下、好ましくは0.1〜2%である。
本発明の高分子凝集剤は、ポリマー分子中に疎水性部位を均一に有することから、従来にないフロック強度を発現し、特異的な凝集効果やろ液の清澄性向上効果(例えばろ液SS低減)を示すことから、下水等または工場排水等の処理で生じた有機性または無機性汚泥の脱水処理用高分子凝集剤として用いることができ、とくに有機性汚泥の脱水処理用として好適に用いられる。
本発明の高分子凝集剤を用いた下水等の有機性汚泥や工場廃水等の無機性の汚泥または廃水の処理方法は、高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ、固液分離を行う方法であれば特に限定されることはない。
また、本発明の高分子凝集剤を汚泥または廃水に使用する際には、公知の無機および有機凝結剤を1種以上併用してもよい。これらを併用する場合は、汚泥に有機凝結剤およびまたは無機凝結剤を添加したのち本発明の高分子凝集剤を添加する方法、有機凝結剤およびまたは無機凝結剤と高分子凝集剤を同時に添加する方法。本発明の高分子凝集剤を添加し、脱水したのちケーキに有機凝結剤およびまたは無機凝結剤を添加する方法のいずれを採用してもよい。
公知の無機凝結剤としては、例えば硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄および消石灰が挙げられる。
公知の有機凝結剤としては、例えばエピハロヒドリンとアミンとの重縮合体(もしくはその塩酸塩、以下塩酸塩と略記)、エピハロヒドリンとアルキレンジアミンとの重縮合体(塩酸塩)、ポリエチレンイミン(塩酸塩)、アルキレンジハライド−アルキレンポリアミン重縮合体(塩酸塩)、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合体(塩酸塩)、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ポリビニルピリジン(塩酸塩)、(ジ)メチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライドおよびポリビニルイミダゾリン(塩酸塩)が挙げられる。
これらの公知の無機および有機凝結剤はそれぞれの1種または2種以上用いても、あるいは両者を併用してもいずれでもよい。
公知の無機および/または有機凝結剤を汚泥または廃水に添加する場合の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁している粒子の大きさ、および廃水中の蒸発残留物重量(以下TSと略記)等によって異なるが、汚泥または廃水中のTSに基づいて、公知の無機凝結剤では、凝集性の観点から好ましい下限は0.5%、さらに好ましくは1%、とくに好ましくは2%、同様の観点から好ましい上限は40%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは20%であり、公知の有機凝結剤では、凝集性の観点から好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.05%、とくに好ましくは0.1%、同様の観点から好ましい上限は10%以下、さらに好ましくは8%以下、とくに好ましくは5%である。
本発明の高分子凝集剤を、汚泥または廃水に添加する方法としては、特に限定はなく、そのまま該汚泥または廃水に添加してもよいが、均一混合の観点から好ましいのは高分子凝集剤を水溶液にした後に該汚泥または廃水に添加する方法である。高分子凝集剤を水溶液として用いる場合の濃度は、好ましくは0.05〜1重量%、さらに好ましくは0.1〜0.5重量%である。
溶解方法、溶解後の希釈方法は特に限定はないが、粉末状の高分子凝集剤を水に溶解する際、一度に加えるとままこを生じて水に溶解しにくくなるため好ましくない。
また、本発明の高分子凝集剤の溶解性を高めるために、溶解した水溶液のpHが2.0〜5.0の範囲になるように前述したpH調整剤を添加し調整するのが好ましい。さらに好ましくはpHが2.5〜4.0、とくに好ましくはpHが2.7〜3.5である。
汚泥または廃水に添加する際の高分子凝集剤の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁している粒子の含有量および高分子凝集剤の分子量等によって異なり、とくに限定はされないが、汚泥または廃水中のTSに基づいて凝集性能の観点から、好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.05%、とくに好ましくは0.1%、最も好ましくは0.5%、同様の観点から、好ましい上限は10%、さらに好ましくは8%、とくに好ましくは5%、最も好ましくは3%である。
また上記の処理方法により形成されたフロック状の汚泥の脱水方法(固液分離法)としては、例えば重力沈降、膜ろ過、カラムろ過、加圧浮上、および濃縮装置(例えばシックナー)および脱水装置(例えば遠心脱水機、スクリュープレス脱水機、ベルトプレス脱水機、フィルタープレス脱水機およびキャピラリー脱水機)を用いる方法が挙げられる。これらのうち本発明の高分子凝集剤の特異的な凝集性能である高フロック強度の観点から好ましいのは、脱水装置、とくに遠心脱水機、およびスクリュープレス脱水機を用いる方法である。
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、吸光度以外の%は重量%を表す。
汚泥または廃水中のTS、有機分(強熱減量)は、下水道試験方法(日本下水道協会、1997年度版)記載の分析方法に準じて行った。
また、本実施例中のフロック粒径、ろ液量、ろ布剥離性、ケーキ含水率、ろ液清澄度は以下の方法に従って性能評価した。
(1)<フロック粒径>
ジャーテスター[宮本理研工業(株)製、形式JMD−6HS−A、以下同じ。]に板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になる様に上下に連続して撹拌棒に取り付け、汚泥または廃水200部を500mlのビーカーに取り、ジャーテスターにセットする。ジャーテスターの回転数を120rpmにし、ゆっくり汚泥を撹拌しながら、所定量の0.2%の高分子凝集剤水溶液を一気に添加し、30秒間撹拌した後、撹拌を止め凝集物の大きさ(単位:mm)を目視にて観察する(回転数120rpmでのフロック粒径を表中に示す)。
続いて回転数を300rpmにセットし、さらに30秒間撹拌した後、撹拌を止め凝集物の大きさを再度目視にて観察する(回転数300rpmでのフロック粒径を表中に示す)。
(2)<ろ液量>
T−1189のナイロン製ろ布[敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、300mlが測れるメスシリンダーをセットし、上記フロック粒径試験後の汚泥を一度に投入して濾過し、ストップウォッチを用いて投入直後から60秒後のろ液量を測定する。
(3)<ろ布剥離性>
濾過した汚泥の一部をスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水試験(2kg/cm2、60秒)を行い、試験後のろ布からの脱水ケーキの剥離性を下記の基準に従って評価する。
◎:非常に剥がれやすい(ろ布付着物ほとんどなし)
○:剥がれやすい (わずかに、ろ布付着物あり)
△:多少剥がれにくい (ろ布付着物あり、わずかに、ろ布内部まで付着)
×:剥がれにくい (ろ布内部まで付着)
(4)<ケーキ含水率>
上記ろ布剥離性試験後の脱水ケーキ約3.0gをシャーレに秤量(W3)して、循風乾燥機中で完全に水分が蒸発するまで(例えば、105±5℃で8時間)乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W4)として、次式からケーキ含水率を算出する。
ケーキ含水率(%)={(W3)−(W4)}×100/(W3)
(5)<ろ液清澄度>
上記ろ液量測定後のろ液を用いて、吸光度計[(株)島津製作所製、UV−1200]で波長590nmおよび700nmの時の吸光度を測定し、ろ液清澄度を評価する。なお、吸光度の数値(%)は、イオン交換水の吸光度を100%とした時の値を示す。
実施例および比較例に使用した原料の組成、記号等は次のとおりである。
(1)水溶性モノマー(a)
(a−1)AAM:アクリルアミドの50%水溶液
(a−2)DAAQ:N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の70%水溶液
(a−3)DAMQ:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩の80%水溶液
(a−4)AAC:アクリル酸の80%水溶液
(2)疎水性モノマー(b)
(b−1)MMA:メタクリル酸メチル(HLB 7.5)
(b−2)SMA:メタクリル酸ステアリル(HLB 1.4)
(b−3)NLA:N−ラウリルアクリルアミド(HLB 6.9)
(b−4)St:スチレン(HLB 1.0)
(3)両親媒性化合物(c)
(c−1)メタノール
(c−2)PEG(Mn1000)のステアリン酸エステル[商品名「イオネットMS−1000」、三洋化成工業(株)製、HLB15.6、Mw1300)]
(c−3)側鎖ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン[商品名「KF−354L」、信越化学工業(株)製、HLB16]
(4)連鎖移動剤(h)
(h−1):1−チオグリセロール
(h−2):メルカプト酢酸
(5)ラジカル重合開始剤(g)
(g−1):ジクミルパーオキサイド
(g−2):アゾビスアミジノプロパン塩酸塩の10%水溶液
(6)疎水性分散媒(e)
(e−1)n−デカン
(7)分散剤(f)
(f1−1):PEG(Mn300)のジステアリン酸エステル[商品名「イオネットDS−300」、三洋化成工業(株)製、HLB7.3、Mw700)]
(f2−1):下記製造例1で得られた分散剤(HLB2.1、Mw15,000)
製造例1[分散剤(f2−1)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、エチレン−酢酸ビニル共重合体[商品名「AC−POLY−400」、Honeywell(株)製、酢酸ビニル単位含量14%]171部、無水マレイン酸17.1部、キシレン117.7部を100℃まで加熱して均一溶液とし、ポリマー溶液を調整した。(g−1)11.8部、キシレン11.8部、ドデシルメルカプタン0.092部を加えて均一溶解し開始剤溶液とした。150℃に加熱したポリマー溶液に開始剤溶液を0.4部/分の滴下速度で1時間かけて投入し、その後3時間反応させた。キシレンを3kPa〜20kPaの減圧下、140〜160℃、2時間でストリッピングして、分散剤(f2−1)を得た。
実施例1[水溶性重合体(A)の製造]
[第1工程] 水溶性モノマー(a)、疎水性モノマー(b)、NaH2PO4、両親媒性化合物(c)、連鎖移動剤(h)を表1に従って配合したモノマー水溶液を室温(20〜25℃)で調製した。さらにスルファミン酸を用いてモノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら3.0に調整した。得られたモノマー水溶液を十分に窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)で置換(溶存酸素濃度100ppb以下)した後、ラジカル重合開始剤(g−2)を表1に従って加え、モノマー水溶液を調製した(表1において、%/M、ppm/Mとは、全モノマー〔(a)と(b)〕の合計重量に対する重量比を意味する。)。このモノマー水溶液は、全量で400部となるように調整した。
別に還流脱水配管、滴下漏斗、窒素導入管および撹拌翼(マックスブレンド翼)を備えたステンレス製オートクレーブにn−デカン(疎水性分散媒)、分散剤(f1−1)および(f2−1)を表1に従って加えて油相400部を調製し、340rpmの回転数にて撹拌しながら、反応槽内を窒素置換(気相酸素濃度10ppm以下)した後、60℃まで昇温して30分間保持した後、50℃まで冷却した。50℃に到達後、常圧(103kPa)条件下で、予め滴下漏斗内に仕込んだ前記のモノマー水溶液を反応槽中に120分間かけて全量投入し、その後120分間、50℃で撹拌を継続し逆相懸濁重合させた。
[第2工程] さらにラジカル重合開始剤(g−2)を4.5部添加して50℃で、60分間撹拌を継続し、さらに重亜硫酸ナトリウム7.2部およびメルカプト酢酸(h−2)0.10部をイオン交換水10部に溶解し、これを反応槽中に追加投入し、55℃で30分間撹拌を継続して重合を完結させた。
その後、反応生成物を55℃で減圧(3〜20kPa)により共沸脱水した後、得られたスラリーを、減圧ろ過機に供給し固液分離を行った後、減圧乾燥機中(1.3kPa、40℃×2時間)で乾燥し、水溶性共重合体(A−1)からなる高分子凝集剤(P−1)を得た。結果を表2に示す。
実施例2〜14、比較例1〜6[高分子凝集剤(P−2)〜(P−14)、(比P−1)〜(比P−6)の製造]
実施例1において、第1工程のモノマー水溶液および油相の組成を表1に示す量にする以外は表1の配合組成に従って、実施例1と同様にして、高分子凝集剤(P−2)〜(P−14)、比較の高分子凝集剤(比P−1)〜(比P−6)を得た。結果を表3に示す。
Figure 2012170853
Figure 2012170853
<性能評価方法>
(P−1)〜(P−10)、(比P−1)〜(比P−4)を高分子凝集剤として用い、それぞれについて性能評価を行った。
得られた高分子凝集剤をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量0.2%の水溶液とした。
A下水処理場から採取した消化汚泥[pH7.3、TS1.6%、有機分71%]を必要な個数の500mlビーカーに200部ずつ採り、先に調製した各水溶液24部を添加(固形分添加量1.5%/TS)して撹拌、混合処理し、前記の評価方法によりフロック粒径、ろ液量、ろ布剥離性、ケーキ含水率、およびろ液清澄度について性能評価した。結果を表3に示す。
Figure 2012170853
表3の結果から、実施例1〜10では、比較例1〜4に比べて、以下の点が優れていることが分かる。
〔1〕大粒径のフロックが形成される。
〔2〕高撹拌下(300rpm)でも一旦形成されたフロックが壊れにくい(フロックが強固に凝集している)。
〔3〕ろ過速度が速い。
〔4〕ろ布剥離性が良い。
〔5〕ケーキ含水率が低い(脱水性が良い)。
〔6〕ろ液清澄性が良い。
(P−11)〜(P−14)、(比P−5)〜(比P−6)を高分子凝集剤として用い、それぞれについて性能評価を行った。
得られた高分子凝集剤をそれぞれイオン交換水に溶解して固形分含量0.2%の水溶液とした。
H下水処理場から採取した混合汚泥[余剰汚泥/消化汚泥=1/1(重量比)、pH5.1、TS2.0%、有機分81%]を必要な個数の500mlビーカーに200部ずつ採り、それぞれポリテツ[日鉄鉱業(株)製]0.4部を添加しハンドミキサーで30秒間撹拌混合したのち、先に調製した各水溶液12部を添加(固形分添加量0.6%/TS)して上記実施例1〜10、比較例1〜4と同様に性能評価した。結果を表4に示す。
Figure 2012170853
表4の結果から、実施例11〜14では、比較例5〜6に比べて、以下の点が優れていることが分かる。
〔1〕大粒径のフロックが形成される。
〔2〕高撹拌下(300rpm)でも一旦形成されたフロックが壊れにくい(フロックが強固に凝集している)。
〔3〕ろ過速度が速い。
〔4〕ろ布剥離性が良い。
〔5〕ケーキ含水率が低い(脱水性が良い)。
〔6〕ろ液清澄性が良い。
上記実施例1〜14と比較例1〜6の結果より、本発明の高分子凝集剤は比較のものに比べフロック粒径、フロック強度、ろ過速度、ろ布剥離性、脱水性およびろ液清澄性がいずれも優れることがわかる。
本発明の高分子凝集剤は、フロック強度、ろ過速度、脱水性などに優れることから汚泥または廃水の処理に好適に用いられる他、分散剤、スケール防止剤、凝結剤、脱色剤、増粘剤、帯電防止剤、繊維処理剤、製紙用薬剤(例えば製紙工業用地合形成助剤、ろ水歩向上剤、ろ水性向上剤および紙力増強剤)等の分野に適用することができる。

Claims (9)

  1. 下記の関係式を満足する水溶性重合体(A)を含有してなる高分子凝集剤。

    0.1≦CE2/CE1≦0.9

    [式中、CE1は純水中でのコロイド当量測定値、CE2は0.05重量%のNa2SO4水溶液中のコロイド当量測定値を表す。]
  2. (A)が、1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(a)と、1個の不飽和基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(b1)および1個の不飽和基を有する芳香環含有ビニル化合物(b2)からなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性モノマー(b)とが、両親媒性化合物(c)の存在下で重合されてなる水溶性重合体である請求項1記載の高分子凝集剤。
  3. (b)のHLBが0.5〜12である請求項2記載の高分子凝集剤。
  4. (c)が、炭素数6以下の有機溶媒(c1)、変性シリコーンオイル(c2)および界面活性剤(c3)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項2または3記載の高分子凝集剤。
  5. (a)と(b)の合計重量に基づく(b)の含有量が0.001〜50重量%である請求項2〜4のいずれか記載の高分子凝集剤。
  6. (a)と(b)の合計重量に基づく(c)の量が0.001〜30重量%である請求項2〜5のいずれか記載の高分子凝集剤。
  7. (A)が、1N−NaNO3中30℃で1〜30dl/gの固有粘度を有する請求項1〜6のいずれか記載の高分子凝集剤。
  8. (A)が、逆相懸濁重合法で重合された水溶性重合体である請求項1〜7のいずれか記載の高分子凝集剤。
  9. 請求項1〜8のいずれか記載の高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ固液分離する汚泥または廃水の処理方法。
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