JP5596662B2 - 高分子凝集剤 - Google Patents

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Description

本発明は高分子凝集剤に関する。さらに詳しくは、有機性汚泥等の脱水性能に優れる高分子凝集剤に関する。
従来、下水もしくはし尿(以下、汚泥と略記)等、または工場廃水もしくは無機性汚泥(以下、廃水と略記)等のうち、汚泥とくに有機性汚泥の脱水に対しては、ポリ(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリルアミド−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー、ポリアミジン等のカチオン性高分子凝集剤、アクリルアミド−アクリル酸−アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライドコポリマー等の両性高分子凝集剤が広く使用されている。
また、廃水等の脱水に対しては、ポリアクリルアミド等のノニオン性高分子凝集剤、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウムコポリマー等のアニオン性高分子凝集剤が広く使用されている。
これらの高分子凝集剤の製造方法としては、水溶液重合法、薄膜重合法、逆相懸濁重合法、沈殿重合法及び乳化重合法等が知られている。
これらの高分子凝集剤の中で、近年、特に有機性汚泥の脱水に関して、発生する汚泥量の増加および汚泥性状の難脱水性化への対応の観点から、脱水処理速度向上のニーズが高まってきており、より強いフロックを形成する高分子凝集剤が望まれている。
また、脱水ケーキを焼却処分する際の焼却処分費用の高騰、脱水ケーキをそのまま埋め立て処分する際の埋め立て地の逼迫した状況から、脱水ケーキ含水率の低減を実現することができる高分子凝集剤が望まれている。
最近では、汚泥の脱水性改善のために無機凝集剤と両性高分子凝集剤を併用する方法(例えば特許文献1参照)が提案され、広く用いられるようになっている。但し該方法は、カチオン性高分子凝集剤を用いる方法と比較すると薬剤コストが高く、無機凝集剤の使用で発生する汚泥ケーキの増大や、焼却後の灰の増大などの問題があり、併用する無機凝集剤の低減が求められている。しかし、無機凝集剤量を低減すると汚泥凝集フロック(以下フロックと略記)の強度が低下して壊れやすくなり、含水率が上がる等の問題が生じる。
特開平2−180700号公報
現状用いられている高分子凝集剤は、まだ前記の課題を十分に解決できるレベルには到達しておらず、また上記開示されている高分子凝集剤はフロック強度や脱水ケーキ含水率の観点から、多少は改良されているもののまだ不十分であった。
本発明の目的は、難脱水性の有機性汚泥等の脱水処理において、緻密で低含水率のフロックを形成させて汚泥の脱水処理効率を大幅に向上できる高分子凝集剤を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記の関係式[1]を満足する水溶性ポリマー(A)を含有してなる高分子凝集剤;並びに、該高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ固液分離する汚泥または廃水の処理方法である。

−0.40 ≦ ln [η] / ln Vs≦ 0.55 [1]

[式中、[η]は1N−NaNO3水溶液中30℃での固有粘度、Vsは4重量%NaCl水溶液中25℃での、0.5重量%塩水溶液粘度を表す。]
本発明の高分子凝集剤は下記の効果を奏する。
(1)有機性汚泥の脱水処理において緻密で低含水率のフロックを形成する。
(2)形成されたフロックは破壊、再分散されにくいため凝集処理の安定性や処理速度を著しく高めることができる。
(3)脱水工程後のケーキ含水率が低く廃棄物量および焼却処理コストを低減できる。
[水溶性ポリマー(A)]
本発明における水溶性ポリマー(A)は、下記の関係式[1]を満足する。

−0.40 ≦ ln[η] /lnVs ≦ 0.55 [1]

上記関係式[1]中、[η]は1N−NaNO3水溶液中30℃での固有粘度(単位はdl/g)、Vsは後述の方法で測定される4重量%NaCl水溶液中25℃での0.5重量%塩水溶液粘度(単位はmPa・s。以下0.5%塩水溶液粘度ということがある)を表し、ln[η]/lnVsは、[η]の自然対数とVsの自然対数との比を表す。
該比が−0.40未満または0.55を超えると、水溶性ポリマーの凝集性能が悪くなる。
なお、本発明において、水溶性ポリマーもしくは後述の水溶性モノマーとは、水に対する溶解度が2g以上/水100g(20℃)であるものを意味し、また、本発明における凝集性能とは、フロック強度、ろ過速度、フロック緻密性、脱水ケーキ含水率等で評価される高分子凝集剤の性能を意味するものとする。
上記関係式[1]の導出に際しては、水溶性ポリマーの水中での拡がりと凝集性能との関係について次のような仮説を立てた。すなわち、ポリマー鎖が過剰に縮まっている場合には、汚泥粒子表面の電荷を中和しにくく、強度の弱いフロックが形成されて含水率が高くなり、また、ポリマー鎖が過剰に拡がっている場合には、汚泥粒子表面の電荷は中和されるものの、凝集に際しては水を多く含んだフロックが形成されて含水率が高くなると推定されることから、ポリマー鎖が適度な拡がりを有する場合が凝集性能に優れるとの仮説である。
この仮説を検証するため、数多くの実験を実施し、得られた結果に基づいて水溶性ポリマーの水中での拡がりと凝集性能との関係について考察した。
ここで水溶性ポリマーの水中での拡がりに関しては、溶液中における高分子の拡がりと分子量、固有粘度の関係を表す下記の<桜田−Houwinkの式>を参考にした。(「高分子の分子物性(下)」中島章夫、細野正夫共著、(株)化学同人刊、314−319頁、「レオロジーの世界」尾崎邦宏著、(株)工業調査会刊、86頁等参照)

[η]= KMα <桜田−Houwinkの式>

式中、[η]は固有粘度、Mは高分子の分子量、K、αは高分子の種類、溶媒、温度などにより定まる定数を表す。
式中のαは高分子鎖の形状に関わる因子であるため、<桜田−Houwinkの式>から、ln[η]/lnMが高分子鎖の形状に関わる因子、すなわち高分子鎖の拡がりを表す因子に該当することが導かれる。
高分子凝集剤としての水溶性ポリマーの場合、容易に分子量を測定することができないため、代替指標である0.5%塩水溶液粘度VsをMに置き換え、ln[η]/lnVsを水溶性ポリマーの水中での拡がりを表す因子とした。
ここで、0.5%塩水溶液粘度Vsとは前記のとおり、高濃度(4重量%NaCl)の塩水溶液中における水溶性ポリマーの粘度であり、水溶性ポリマーの分子量を表す代替指標として日常的に用いられるものである。すなわち、高分子凝集剤に用いられる水溶性ポリマーは、水中においてはポリマー鎖に存在するイオン性基による静電的な反発や水和によって該ポリマー鎖が拡がった状態をとっている。一方、高濃度の塩水溶液中では、電解質成分により高分子鎖の静電的な反発や水和が抑えられ、ポリマー鎖が限界まで縮まった状態をとるため、水溶性ポリマーの分子量を表す代替指標となるものと一般的に考えられている。
前記実験と考察の結果、水溶性ポリマーの水中での拡がりを表すln[η]/lnVs比が−0.40〜+0.55の範囲にある水溶性ポリマーがとくに優れた凝集性能を示すことを本発明において見出した。
前記ln[η]/lnVs比は、好ましくは−0.30〜0.48、さらに好ましくは−0.20〜0.35である。該比が−0.40未満では、水溶性ポリマー鎖が過剰に縮まり、汚泥粒子表面の電荷が(A)で中和されにくく、汚泥を十分に凝集させることができず、フロックが容易に破壊され含水率が高くなる。また、 該比が0.55を超えると、水溶性ポリマー鎖が過剰に拡がり、水を多く含んだフロックが形成され、脱水後のケーキ含水率が高くなる。
本発明における水溶性ポリマー(A)は、1個の不飽和基を有しオクタノール/水分配係数(logPow)が好ましくは1.0〜6.0、さらに好ましくは1.2〜5.8、とくに好ましくは1.3〜5.6の疎水性モノマー(a)と、1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(b)を構成単位として含有する水溶性ポリマーである。
(a)のオクタノール/水分配係数が1.0以上では、高分子凝集剤として用いた際に形成されるフロックの再分散がより起きにくく、含水率が一層低下しやすく好ましい。また、該係数が6.0以下では水溶性ポリマー(A)の水溶性がさらに良好で汚泥をより十分に凝集させて一層強固なフロックが形成されることから好ましい。
なお、本発明において疎水性モノマーとは、20℃の水への溶解度が2g未満/水100gのモノマーであるものを意味する。
該オクタノール/水分配係数(logPow)は、JIS Z7260−107(2000)に記載のフラスコ振とう法により求めることができる。該係数は、対象とする物質が、オクタノール相と水相の接した系中で平衡状態にある場合を対象として、各相の濃度の常用対数で示され、該対象物質の疎水性の指標となるものである。該係数が大であるほど疎水性が大であることを示す。
前記疎水性モノマー(a)としては、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリロイル基含有化合物(a1)、ビニル基を有するビニル基含有芳香環含有化合物(a2)、ビニル基を有するビニル基含有脂肪族化合物(a3)、ビニリデン基を有するビニリデン基含有化合物(a4)、ビニレン基を有するビニレン基含有化合物(a5)、およびアリル基を有するアリル基含有化合物(a6)等が挙げられ、これらのうち2種以上を併用してもよい。
上記(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基および/またはメタアクリロイル基を意味し、以下同様の記載法を用いる。
(メタ)アクリロイル基含有化合物(a1)としては、以下のもの、およびこれらの混合物等が挙げられる。
(a11)(メタ)アクリル酸エステル
炭素数(以下、Cと略記)5以上かつ数平均分子量[以下、Mnと略記、測定は後述の測定条件でのゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]500以下、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルケニルエステル、および(メタ)アクリル酸ポリオキシプロピレンエステル:具体例としては、(メタ)アクリル酸−メチル、−エチル、−ブチル、−イソブチルおよび−2−エチルヘキシル、ポリプロピレングリコール(以下PPGと略記)(分子量134以上かつMn400以下)のモノ(メタ)アクリル酸エステル;
(a12)C4〜24のN置換(メタ)アクリルアミド
N−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、N−アルケニル置換(メタ)アクリルアミド、およびN−(ポリ)オキシプロピル置換(メタ)アクリルアミド;例えば、N,N−ジエチル−、N−t−ブチル−、N−2−エチルヘキシル−、N−オクチル−、N−ドデシル−、N−ラウリル−、N−セチル−、N−ステアリル−、N−オレイル−およびN,N−ジ(ポリ)オキシプロピル[(ポリ)オキシプロピル基はプロピレンオキシド(以下POと略記)1〜3モル付加](メタ)アクリルアミド等。
ビニル基含有芳香環含有化合物(a2)としては、以下のもの、およびこれらの混合物等が挙げられる。
(a21)単環化合物
C8〜13の単環化合物;例えばスチレン、α−およびβ−メチルスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン;
(a22)多環化合物
C12〜15の多環化合物、例えばビニルナフタレン、ビニルナフトール。
ビニル基含有脂肪族化合物(a3)としては、ビニル基を有する直鎖もしくは分岐型のものが挙げられ、これらのうち好ましいlogPow値を有するという観点から下記一般式(1)で示される化合物およびこれらの混合物が好ましい。
CH2=CHR1 (1)

(1)式中、R1は下記一般式(2)または(3)で示される基である。

−O−C(=O)R2 (2)
−X1 (3)

(2)式中、R2はC2〜24のアルキル基を表し、該アルキル基としては、エチル基、プロピル基等が挙げられる。
(3)式中、X1は、C1〜4のアルキル基、ハロゲン原子またはC1〜4のハロゲン化アルキル基を表し、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等;ハロゲン原子としては、F、Cl、Br等;ハロゲン化アルキル基としてはフッ化メチル基、臭化メチル基等が挙げられる。)
(a3)の具体例としては、例えば、プロピオン酸ビニル等の不飽和脂肪族化合物;プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等のオレフィン;フッ化エチレン、フッ化プロペン、臭化エチレン、臭化プロペン等のハロゲン化ビニル化合物が挙げられる。
ビニリデン基含有化合物(a4)としては、ビニリデン基を有する直鎖もしくは分岐型のものが挙げられ、これらのうち好ましいlogPow値を有するという観点から下記一般式(4)で示される化合物およびこれらの混合物が好ましい。
CH2=CR34 (4)

(4)式中、R3、R4は下記一般式(5)、(6)、(7)または(8)で示される基であり、R3、R4は互いに同じでも異なっていてもよい。
−(CH2)n−C(=O)−O−R5 (n=0または1) (5)
−O−C(=O)R6 (6)
−C(=O)NH−R7 (7)
−X2 (8)
式中、R5、R6はC2〜24のアルキル基(エチル基、プロピル基等);R7はC1〜15のアルキル基(エチル基、プロピル基等);X2は、C1〜4のアルキル基、C6〜15のアリール基、ハロゲン原子またはC1〜4のハロゲン化アルキル基を表し、例えば前記X1のアルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基と同様の基が挙げられ、C6〜15のアリール基としては、フェニル基、アルキルベンゼンアルキルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
(a4)の具体例としては、イタコン酸ジアルキルエステル(イタコン酸ジエチル、イタコン酸エチルプロピル等)、オレフィン(イソブテン、2,4,4,−トリメチル−1−ペンテン等)、ハロゲン化ビニリデン化合物(1,1−ジクロロエチレン、1,1−ジブロモエチレン等)等が挙げられる。
ビニレン基含有化合物(a5)としては、ビニレン基を有する直鎖もしくは分岐型のものが挙げられ、これらのうち好ましいlogPow値を有するという観点から下記一般式(9)で示される化合物およびこれらの混合物が好ましい。
8−CH=CH−R9 (9)

(9)式中、R8、R9は前記一般式(5)、(6)、(7)または(8)で示される基であり、R8、R9は互いに同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
(a5)の具体例としては、マレイン酸アルキルエステル(マレイン酸ジエチル、マレイン酸エチルプロピル等)、オレフィン(2−ブテン、2−ペンテン等)、ハロゲン化ビニレン化合物(cis−およびtrans−ジクロロエチレン等)が挙げられる。
アリル基含有化合物(a6)としては、アリル基を有する直鎖もしくは分岐型のものが挙げられ、これらのうち好ましいlogPow値を有するという観点から下記一般式(10)で示される化合物およびこれらの混合物が好ましい。
CH2=CHCH210 (10)

(10)式中、R10は前記一般式(5)、(6)または(7)で示される基および、下記一般式(11)で示される基である。
−X3 (11)

(11)式中、X3は、C1〜4のアルキル基、C6〜15の(ヒドロキシ)アリール基、ハロゲン原子またはC1〜4のハロゲン化アルキル基を表し、例えば前記X1のアルキル基、ハロゲン化アルキル基と同様の基;ハロゲン原子としては、Br等;C6〜15の(ヒドロキシ)アリール基としては、フェニル基、アルキルベンゼンアルキルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アルコキシフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
(a6)の具体例としては、例えば、アリルベンゼン、アリルフェノール、臭化アリルが挙げられる。
これらの(a1)〜(a6)のうち、疎水性、後述の水溶性モノマー(b)との共重合性および工業上の観点から好ましいのは(a11)、(a21)、さらに好ましいのはC4〜15の(メタ)アクリル酸−アルキルエステルおよび−アルケニルエステル、スチレン、およびα−メチルスチレン、とくに好ましいのは(メタ)アクリル酸−メチル、−エチルおよび−ブチル、並びにスチレンである。
本発明におけるMnおよび後述の重量平均分子量のGPC測定は次の測定条件に従うものとする。
<GPC測定条件>
GPC機種:HLC−8120GPC、東ソー(株)製
カラム :TSKgel GMHXL2本+TSKgel Multipore
HXL−M、東ソー(株)製
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)、
東ソー(株)製
溶媒 :テトラヒドロフラン(THF)
水溶性ポリマー(A)を構成する不飽和モノマーには、前記モノマー(a)の他に、1個の不飽和基を有する水溶性モノマー〔(a)に該当する以外のもの〕(b)が含まれる。
1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(b)には、下記のカチオン性モノマー(b1)、ノニオン性モノマー(b2)、アニオン性モノマー(b3)、およびこれらの混合物が含まれる。
(b1)カチオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[例えば無機酸(塩酸、硫酸、リン酸および硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(b11)窒素原子含有(メタ)アクリレート
C5〜30のもの、例えばアミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート、N,N−ジアルキル(アルキル基はC1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリレート[N,N−ジメチルアミノエチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルおよび−プロピル(メタ)アクリレート等]、複素環含有(メタ)アクリレート[N−モルホリノエチル(メタ)アクリレート等];
(b12)アミノ基を有するエチレン性不飽和化合物
C5〜30のもの、例えばN,N−ジアルキル(C1〜2)アミノアルキル(C2〜3)(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアミン、ビニルアニリン、(メタ)アリルアミン、p−アミノスチレン、ジアリルジアルキル(C1〜12)アンモニウム、ジアリルアルキル(C1〜12)ベンジルアンモニウム、N,N−ジベンジルジアリルアンモニウム等;
(b13)アミンイミド基を有する化合物
C5〜30のもの、例えば1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド;
これら(b1)の中で水溶性ポリマー(A)の高分子量化の観点から好ましいものは、(b11)、(b12)であり、さらに好ましいのは(b11)であり、とくに好ましいのは(b11)のうちのN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの塩(メチルクロライド塩等)である。
(b2) ノニオン性モノマー
下記のもの、およびこれらの混合物が挙げられる。
(b21) (メタ)アクリレート
C4以上かつMn5,000以下のもの、例えば水酸基含有(メタ)アクリレート[例えばヒドロキシエチル−、ジエチレングリコールモノ−、ポリエチレングリコール(重合度3〜50)モノ−およびポリグリセロール(重合度1〜10)モノ(メタ)アクリレート]およびアクリル酸メチル;
(b22) (メタ)アクリルアミドおよびその誘導体
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(C1〜3)(メタ)アクリルアミド[N−メチル−およびN−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(メタ)アクリルアミド[N−メチロール(メタ)アクリルアミド等]、N−アルキロール(メタ)アクリルアミドのアルキレンオキシド(C1〜2。以下AOと略記)付加物;
(b23) 前記(b1)および(b22)以外の窒素原子含有エチレン性不飽和化合物
C3〜30のもの、例えばアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルスクシンイミド、N−ビニルカルバゾールおよび2−シアノエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル−およびヒドロキシエチルマレイミドのAO2〜10モル付加物。
(b3) アニオン性モノマー
下記のもの、これらの塩[アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等、以下同じ。)塩、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム等、以下同じ。)塩、アンモニウム塩およびアミン(C1〜20)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(b31) 不飽和カルボン酸
C3〜30のもの、例えば(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)イタコン酸、ビニル安息香酸、アリル酢酸、マレイン酸AO付加物モノエステル;
(b32) 不飽和スルホン酸
C2〜20の脂肪族不飽和スルホン酸(ビニルスルホン酸等)、C6〜20の芳香族不飽和スルホン酸(スチレンスルホン酸等)、スルホン酸基含有(メタ)アクリレート[スルホアルキル(C2〜20)(メタ)アクリレート[2−(メタ)アクリロイルオキシエタン、−プロパンおよび−ブタンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルオキシメチルベンゼンスルホン酸等]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド[2−(メタ)アクリロイルアミノエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルアミノプロパンスルホン酸、2−および4−(メタ)アクリロイルアミノブタンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、p−(メタ)アクリロイルアミノメチルベンゼンスルホン酸等]、アルキル(C1〜20)(メタ)アリルスルホコハク酸エステル[メチル(メタ)アリルスルホコハク酸エステル等]等;
(b33) (メタ)アクリロイルポリオキシアルキレン(アルキレン基はC1〜3)硫酸エステル(メタ)アクリロイルポリオキシエチレン(重合度2〜50)硫酸エステル等。
これら1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(b)のうち水溶性ポリマー(A)の高分子量化の観点から好ましいのは、カチオン性モノマー(b1)のうちの(b11)、(b12)、ノニオン性モノマー(b2)のうちの(b22)、(b23)、アニオン性モノマー(b3)のうちの(b31)、(b32)、さらに好ましいのは(b11)、(b12)、(b22)、(b23)、(b31)、および(b32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、特に好ましいのは(b11)、(b22)、(b23)、(b31)、および(b32)のうちのスルホン酸基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド、最も好ましいのは、(b11)のうちのN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびこれらの塩(前記のもの)、(b22)のうちの(メタ)アクリルアミド、(b23)のうちのアクリロニトリル、N−ビニルホルムアミド、(b31)のうちの(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸およびこれらのアルカリ金属塩、(b32)のうちの2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、2−および3−(メタ)アクリロイルオキシプロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩である。また、これらの(b)は、任意に混合して共重合させることができる。
1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(b)中の、カチオン性モノマー(b1)の含有量(モル%)は、凝集性能の観点から、好ましくは50〜100%、さらに好ましくは70〜100%である。
水溶性ポリマー(A)を構成する不飽和モノマーの合計重量に基づく疎水性モノマー(a)の含有量は、(A)のポリマー鎖の水中での拡がり抑制および(A)の水への溶解性の観点から好ましくは3〜60%、さらに好ましくは4〜45%、とくに好ましくは5〜30%;水溶性モノマー(b)の含有量は、(A)の水への溶解性および(A)のポリマー鎖の水中での拡がり抑制の観点から好ましくは40〜97%、さらに好ましくは55〜96%、とくに好ましくは70〜95%である。
また、該(a)と(b)の重量比は、(A)のポリマー鎖の拡がり抑制および(A)の、水への溶解性の観点から好ましくは3/97〜60/40、さらに好ましくは4/96〜45/55、とくに好ましくは5/95〜30/70である。
水溶性ポリマー(A)を構成する不飽和モノマーとしては、(a)、(b)以外に、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により架橋性モノマー(x)を含有してもよい。架橋性モノマーとは、2個またはそれ以上(好ましくは2〜8個)の重合性不飽和基を有するモノマーを意味する。
架橋性モノマー(x)としては、2個またはそれ以上の不飽和基を有する、以下の(x1)〜(x4)、反応性エポキシ基を2個もしくはそれ以上、または不飽和基と反応性エポキシ基を合計で2個もしくはそれ以上有する(x5)、これらの塩[例えば、塩基性モノマーについては、無機酸(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、リン酸、硝酸等)塩、メチルクロライド塩、ジメチル硫酸塩およびベンジルクロライド塩等、酸性モノマーについては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン(C1〜20、例えばメチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミン等)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(x1) ポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリルアミド
C5〜30のもの、例えばN,N’−メチレンビスアクリルアミド;
(x2) ポリ(2〜4またはそれ以上)(メタ)アクリレート
C8〜30のもの、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール[ポリ(2〜4)](メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;
(x3) ビニル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C4以上かつMn6,000以下、例えばジビニルアミン、多価(2価〜5価またはそれ以上)アミン[C2以上かつMn3,000以下、例えばエチレンジアミン、ポリエチレンイミン(C4以上かつMn3,000以下)]のポリ(2〜20)ビニルアミン、ジビニルエーテル、多価アルコール〔C2以上かつMn3,000以下、例えばアルキレン(C2〜6またはそれ以上)グリコール[エチレングリコール(以下、EGと略記)、プロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール等]、ポリオキシアルキレン[C2以上かつMn3,000以下、例えばポリオキシエチレングリコール(以下、PEGと略記)(分子量106以上かつMn3,000以下)、ポリオキシプロピレングリコール(分子量134以上かつMn3,000以下)、ポリオキシエチレン(分子量106以上かつMn3,000以下)/ポリオキシプロピレン(分子量134以上かつMn3,000以下)ブロックコポリマー等]、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、(ポリ)(2〜50)グリセリン(以下、GRと略記)、ペンタエリスリトール、ソルビトール、デンプン等〕のポリ(2〜20)ビニルエーテル;
(x4) アリル基(2〜20個またはそれ以上)含有モノマー
C6以上かつMn3,000以下、例えばジ(メタ)アリルアミン、N−アルキル(C1〜20)ジ(メタ)アリルアミン、多価アミン(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルアミン、ジ(メタ)アリルエーテル、多価アルコール(上記のもの)のポリ(2〜20)(メタ)アリルエーテル、ポリ(2〜20)(メタ)アリロキシアルカン(C1〜20)(テトラアリロキシエタン等);
(x5) 反応性エポキシ基を2個もしくはそれ以上、または不飽和基と反応性エポキシ基を合計で2個もしくはそれ以上有するもの
C8以上かつMn6,000以下、例えばEGジグリシジルエーテル、PEGジグリシジルエーテル、GRトリグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシヘキサヒドロベンジル(メタ)アクリレート;
架橋性モノマー(x)の使用量は、(a)と(b)の合計重量に基づいて通常1%以下、凝集性能および水溶性ポリマー(A)の水溶性の観点から好ましくは0.0001〜0.1%、さらに好ましくは0.001〜0.05%である。
水溶性ポリマー(A)は、前記(a)、(b)、および必要により(x)を含有する不飽和モノマーを、公知の水溶液重合(例えば、特開昭55−133413号公報に記載の断熱重合、薄膜重合、噴霧重合等)や、公知の逆相懸濁重合(例えば特公昭54−30710号公報、特開昭56−26909号公報、特開平1−5808号公報に記載のもの)を含む種々の重合法[光重合(例えば特公平6−804公報に記載のもの)、沈澱重合(例えば特開昭61−123610公報に記載のもの)、逆相乳化重合(例えば特開昭58−197398号に記載のもの)等]で、ラジカル重合開始剤(d)を用いて製造することができる。該重合法のうち、有機溶媒等を使用する必要がないこと等工業上の観点から好ましいのは水溶液重合法である。
ラジカル重合開始剤(d)としては、種々のもの、例えばアゾ化合物〔水溶性のもの[アゾビスアミジノプロパン(塩)、アゾビスシアノバレリン酸(塩)等]および油溶性のもの[アゾビスシアノバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等]〕および過酸化物〔水溶性のもの[過酢酸、t−ブチルパーオキサイド、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等]および油溶性のもの[ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロキシパーオキシド等]〕が挙げられる。
上記アゾ化合物における塩としては、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩およびアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
上記過酸化物は還元剤と組み合わせてレドックス開始剤として用いてもよく、還元剤としては重亜硫酸塩(重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等)、還元性金属塩[硫酸鉄(II)等]、遷移金属塩のアミン錯体[塩化コバルト(III)のペンタメチレンヘキサミン錯体、塩化銅(II)のジエチレントリアミン錯体等]、有機性還元剤〔アスコルビン酸、3級アミン[ジメチルアミノ安息香酸(塩)、ジメチルアミノエタノール等]等〕等が挙げられる。
また、アゾ化合物、過酸化物およびレドックス開始剤はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもいずれでもよい。
これらのうち、水溶性ポリマー(A)の水不溶解分低減の観点からアゾ化合物が好ましい。
(d)は、通常重合系の水相に含有させるが、前記重合方法によっては水相(もしくは分散相)および/または油相(もしくは連続相)のいずれに存在させてもよい。
(d)の使用量は、最適な分子量を得るとの観点から、(A)を構成する不飽和モノマーの全重量に基づいて、好ましくは0.001〜1.0%、さらに好ましくは0.005〜0.5%、とくに好ましくは0.01〜0.2%、最も好ましくは0.02〜0.15%である。
重合に際しては、連鎖移動剤(f)を使用することができる。
(f)としては、0.01〜100、好ましくは0.05〜50、とくに好ましくは0.1〜10の連鎖移動定数を有するものが挙げられる。
連鎖移動定数の定義は、ジェー・ブランドルプおよびイー・エッチ・インマーグト編「ポリマー・ハンドブック(第4版)」、ジョンウィレー アンド サンズ刊(J.Brandrup and E.H.Immergut編のPolymerHandbook fourth
edition,JOHN WILEY & SONS)の97〜98頁に記載されている。
本発明における連鎖移動定数は、「高分子合成の実験法」[化学同人(株)、1993年刊行]等に記載されている一般的な方法を用いて測定される、60℃のアクリルアミドへの連鎖移動定数であるものとする。
該(f)としては、分子内に1個または2個以上のアミノ基を有する化合物[C0〜60のもの、例えばアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、n−およびi−プロパノールアミン]、分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物(後述)および(次)亜リン酸化合物〔亜リン酸、次亜リン酸、およびこれらの塩[アルカリ金属(Na、K等)塩等]、並びにこれらの誘導体等〕等が挙げられる。これらのうち、分子量制御の観点から好ましいのは分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物および(次)亜リン酸化合物である。
分子内に1個または2個以上のチオール基を有する化合物としては、以下のもの、これらの塩[アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン(C1〜20のもの、例えばメチルアミン、エタノールアミン)塩、無機酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)塩等]、およびこれらの混合物が挙げられる。
(1)1価チオール
脂肪族チオール(C1〜20のもの、例えばメタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、n−オクタンチオール、n−ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、n−オクタデカンチオール、2−メルカプトエタノール、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、1−チオグリセロール、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオマレイン酸、メルカプトコハク酸、システイン、システアミン)、脂環含有チオール(C5〜20のもの、例えばシクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール)、芳香族チオール(C6〜12のもの、例えばベンゼンチオール、チオサリチル酸、チオクレゾール、チオキシレノール、チオナフトール)および芳香脂肪族チオール(C7〜20のもの、例えばα−トルエンチオール)が挙げられる。
(2)多価チオール
ジチオール[脂肪族ジチオール(C2〜40のもの、例えばエタンジチオール、ジエチレンジチオール、トリエチレンジチオール、n−、i−およびsec−プロパンジチオール、1,3−および1,4−ブタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、ネオペンタンジチオール、トリエチレングリコールジチオール、EG−ジ−2−メルカプトエチルエーテル)、脂環式ジチオール(C5〜20のもの、例えばシクロペンタンジチオール、シクロヘキサンジチオール)、芳香族ジチオール(C6〜16のもの、例えばベンゼンジチオール、ビフェニルジチオール)および芳香脂肪族ジチオール(C8〜20のもの、例えばキシレンジチオール)が挙げられる。
また、上記連鎖移動剤(f)のうち、高分子凝集剤の水不溶解分低減の観点から水溶性の高いものが好ましく、(f)の水/n−デカン分配係数は、好ましくは10/90〜100/0、さらに好ましくは20/80〜100/0、とくに好ましくは50/50〜100/0である。ここにおける水/n−デカン分配係数は、日本工業規格(JIS)に規定されている水/1−オクタノール分配係数(JIS Z7260−107)と同様の測定方法で、1−オクタノールを、n−デカンに代えることで測定することができる。
(f)の使用量は、(A)を構成する不飽和モノマーの全重量に基づいて、高分子凝集剤の水不溶解分低減および高分子量化の観点から、好ましくは0.0001〜1%、さらに好ましくは0.001〜0.5%、とくに好ましくは0.01〜0.3%、最も好ましくは0.05〜0.1%である。
水溶性ポリマー(A)の製造方法のうち逆相懸濁重合法としては、例えば次の方法が挙げられる。
すなわち、疎水性分散媒(e)および分散剤(c)を重合槽に仕込み、必要に応じて加熱しながら所定の重合温度(通常20〜100℃、好ましくは30〜80℃)に調整した後、槽内を不活性ガス(例えば窒素)で十分置換する。
一方、1個の不飽和基を有しlogPowが1.0〜6.0である疎水性モノマー(a)、1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(b)、ラジカル重合開始剤(d)、必要により連鎖移動剤(f)、および必要により架橋性モノマー(x)を加えたモノマー水溶液を調製し、不活性ガスで十分置換した後、撹拌下で重合槽内に投入し、懸濁させながら重合させる。
モノマー水溶液の投入方法としては、一括投入または滴下のいずれでもよい。また、その際モノマー水溶液としては、(a)、(b)、(d)、並びに必要により加える(f)および/または(x)の均一水溶液としてもよいし、別々の水溶液とした上で、滴下直前で混合してもよいし、別々に同時滴下してもよい。モノマー水溶液等を不活性ガスで置換する方法としては、モノマー水溶液等に不活性ガスをバブリング供給する方法、滴下ライン中でスタティックミキサー等により不活性ガスをブレンドする方法等が挙げられ、重合の均一性の観点からスタティックミキサーで不活性ガスをブレンドする方法が好ましい。
水溶性ポリマー(A)の製造方法のうち逆相懸濁重合法や逆相乳化重合法で用いられる疎水性分散媒(e)としては、以下の炭化水素、ケトン、エーテル、エステルおよびこれらの混合物が挙げられる。
なお、ここにおいて疎水性分散媒とは、水に対する溶解度(20℃)が1g未満/水100gである分散媒を意味する。
(1)炭化水素
脂肪族(C5〜12のもの、例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン)、脂環含有(C5〜12のもの、例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン)および芳香環含有炭化水素(C6〜12のもの、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等]等;
(2)ケトン
脂肪族(C3〜10のもの、例えばメチル−n−プロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、脂環含有(C5〜10のもの、例えばシクロペンタノン、シクロヘキサノン)および芳香環含有ケトン(C8〜13のもの、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン)等]等;
(3)エーテル
脂肪族(C4〜8のもの、例えばジ−n−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル)、環状(C4〜18のもの、例えばテトラヒドロピリン)および芳香環含有エーテル(C7〜12のもの、例えばアニソール)等]等;
(4)エステル
脂肪族(C3〜10のもの、例えば酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル)、脂環含有(C7〜12のもの、例えば酢酸シクロヘキシル、シクロヘキサンカルボン酸メチル)および芳香環含有エステル(C8〜13のもの、例えば安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−ブチル、酢酸ベンジル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート)等]等。
これらのうち、製造時の取り扱い性、および重合時の温度制御の観点から、好ましいのは脂肪族および脂環含有炭化水素、脂肪族および脂環含有エステル、さらに好ましいのはn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルおよび酢酸シクロヘキシルである。
疎水性分散媒(e)の使用量は、逆相懸濁重合では、分散系の粘度の観点からモノマー水溶液の全重量に基づいて、好ましい下限は25%、さらに好ましくは40%、とくに好ましくは65%、分散系の安定性の観点から好ましい上限は1,000%、さらに好ましくは400%、とくに好ましくは200%;逆相乳化重合では、エマルションの粘度の観点からモノマー水溶液の全重量に基づいて、好ましい下限は20%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは40%、エマルションの安定性の観点から好ましい上限は80%、さらに好ましくは70%、とくに好ましくは60%である。
また、逆相懸濁重合法で用いられる分散剤(c)としては、逆相懸濁または乳化粒子の分散または乳化安定性、および後述の水溶性ポリマー(A)の乾燥粒子の安息角、すなわち粉体流動性の制御の観点から好ましくはHLBが1〜8、さらに好ましくは1.5〜7.5、とくに好ましくは2〜7の、種々の油溶性物質が挙げられる。
ここにおいてHLBとは、Hydrophile−Lipophile Balanceを略記したもので、親水性と親油性とのつり合いを表し、下記の式から求められる[「界面活性剤の合成と其応用」、501頁、1957年槇書店刊;「新・界面活性剤入門」、197−198頁、1992年三洋化成工業(株)刊、等参照]。

HLB=10×(無機性/有機性)

上記式中、( )内は有機化合物の無機性と有機性の比率を表し、該比率は上記文献に記載されている値から計算することができる。
(c)の融点は、水溶性ポリマー(A)を含有してなる高分子凝集剤の粒子の安息角の観点から、好ましくは25〜100℃、さらに好ましくは30〜80℃、とくに好ましくは40〜70℃である。該融点はJIS K0064−1992,3.2融点試験方法に準じ、融点測定装置を用いて測定される。
(c)には、重量平均分子量[以下Mwと略記。測定は前記条件でのGPC法による。基準物質:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン]が5,000未満(さらに好ましくは100〜3,000、とくに好ましくは100〜1,000)の低分子分散剤(c1)、およびMwが5,000以上(さらに好ましくは7,000〜1,000,000、とくに好ましくは10,000〜100,000)の高分子分散剤(c2)が含まれる。
(c1)には、多価(2〜8またはそれ以上)アルコールの脂肪酸(C10〜30)エステル〔ショ糖脂肪酸エステル(C22〜120のもの、例えばショ糖ジステアレート、ショ糖トリステアレート)、ソルビタン脂肪酸エステル(C16〜120のもの、例えばソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート)、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル(C12〜120のもの、例えばグリセリンモノステアレート)、PEG脂肪酸エステル[Mw100〜5,000未満、例えばPEGのモノおよびジステアレート]等〕、アルキル(C1〜30)アリルエーテル等が含まれる。
上記(c1)のうち、製造時における重合装置への重合粒子付着防止および乾燥後の高分子凝集剤の乾燥粒子の安息角の観点から好ましいのは、多価アルコールの脂肪酸エステル、さらに好ましいのはショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、PEG脂肪酸エステルである。
(c2)には、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体またはその誘導体[例えば1−オレフィン(C11〜100)/(無水)マレイン酸共重合体、およびそのアミン反応物]、長鎖アルキル基(C12〜50)含有(メタ)アクリレート(共)重合体、変性(アミノ、カルボキシ、エポキシ、ヒドロキシ、メルカプト、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド変性等)オルガノポリシロキサン、セルロースエーテル(例えばエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース)、エチレン・酢酸ビニル共重合体、および無水マレイン酸変性された、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が含まれる。
該無水マレイン酸で酸変性されたエチレン・酢酸ビニル共重合体としては、無水マレイン酸をエチレン・酢酸ビニル共重合体に付加したものが挙げられ、無水マレイン酸とエチレン・酢酸ビニル共重合体の重量比は、逆相懸濁粒子の分散安定性および反応物の分子量調整の観点から好ましくは2/98〜30/70、さらに好ましくは5/95〜20/80である。
上記(c2)のうち、製造時における重合装置への重合粒子付着防止および乾燥後の高分子凝集剤の乾燥粒子の安息角の観点から好ましいのは、アルケンとα,β−不飽和多価カルボン酸(無水物)との共重合体またはその誘導体、変性オルガノポリシロキサン、(無水マレイン酸変性)エチレン・酢酸ビニル共重合体である。
分散剤(c)の使用に当たっては、逆相懸濁粒子の分散安定性および乾燥粒子の安息角、粒度分布の観点から(c1)と(c2)を併用することが好ましく、併用する際の重量比[(c1)/(c2)]は、同様の観点から好ましくは70/30〜1/99、さらに好ましくは50/50〜5/95である。
(c1)と(c2)を併用する場合、粒度分布の観点から好ましい組合せは、多価アルコールの脂肪酸エステルと無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体の組合せ、さらに好ましいのはPEG脂肪酸エステルと無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体の組み合わせである。
(c)の使用量は、疎水性分散媒(e)の重量に基づいて、通常20%以下、逆相懸濁粒子の安定性、乾燥後の高分子凝集剤の乾燥粒子の安息角および粒子径制御の観点から好ましくは0.01〜10%、さらに好ましくは0.05〜5%である。
水溶性ポリマー(A)を製造する際、疎水性モノマー(a)と水溶性モノマー(b)の共重合を促進する目的で、(a)と(b)を均一に溶解、乳化または分散させる両親媒性化合物(g)を用いることができる。
ここにおいて両親媒性化合物(g)とは、水およびn−ヘキサンの両方に1g以上(/水またはn−ヘキサン100g)、溶解する化合物であり、(g)としては、下記のC6以下の有機溶媒(g1)、変性シリコーンオイル(g2)および界面活性剤(g3)からなる群から選ばれる少なくとも1種のものが挙げられる。
(g1)C6以下の有機溶媒
アルコール(C1〜6、例えばメタノール、エタノール、n−およびi−プロピルアルコール)、ケトン(C3〜6、例えばアセトン、メチルエチルケトン)、エーテル[C2〜6、例えばテトラヒドロフラン(THF)]、アミド[C3〜5、例えばジメチルホルムアミド(DMF)]、これらの混合物等;
(g2)変性シリコーンオイル
Mn5,000〜50,000のもの、例えばポリエーテル変性ポリシロキサン[ポリオキシエチレン変性ポリシロキサン、ポリ(オキシエチレンおよび/またはオキシプロピレン)変性ポリシロキサン等]、カルボキシ変性ポリシロキサン、エポキシ変性ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、アルコキシ変性ポリシロキサン、およびこれらの混合物;
(g3)界面活性剤
(g31)ノニオン性界面活性剤
高級脂肪酸エステル(ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレート、オレイン酸ソルビタンエステルエチレンオキシド付加物)、ポリオキシエチレン長鎖アルキルエーテル(ラウリルアルコールポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)および長鎖アルキルアルカノールアミド(N,N−ジヒドロキシエチルラウリルアミド等)等;
(g32)カチオン性界面活性剤
4級アンモニウム塩(ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロライド等)等;
(g33)アニオン性界面活性剤
硫酸エステル(ポリ)オキシエチレン(平均付加モル数1〜30)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、2−ヒドロキシドデシルオキシ硫酸ナトリウム等]エーテルカルボン酸塩(ポリ)オキシエチレン(平均付加モル数1〜30)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、2−ヒドロキシドデシルオキシ酢酸ナトリウム等]、スルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等]、リン酸エステル塩[ラウリルリン酸ナトリウム、(ポリ)オキシエチレン(平均付加モル数1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩(ラウリン酸ナトリウム、ラウリン酸トリエタノールアミン等)等。
両親媒性化合物(g)の使用量は、(a)と(b)との均一な相溶、乳化もしくは分散
およびモノマーのラジカル重合反応を阻害することなく高分子凝集剤としてのポリマーを生成するとの観点から、(a)と(b)の合計重量に基づいて、好ましくは0.1〜30%、さらに好ましくは1〜28%、とくに好ましくは5〜25%である。
ラジカル重合法におけるモノマー水溶液中の不飽和モノマー濃度は、水溶液重合ではモノマー水溶液の全重量に基づいて、下限は通常1%、工業上の観点から好ましくは5%、さらに好ましくは10%、とくに好ましくは15%、最も好ましくは20%、上限は通常80%、重合時の温度コントロールの観点から好ましくは75%、さらに好ましくは70%、特に好ましくは65%;逆相懸濁重合では、下限は通常30%、前記と同様の観点から好ましくは40%、さらに好ましくは45%、とくに好ましくは50%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、前記と同様の観点から好ましくは85%、さらに好ましくは80%、とくに好ましくは78%、最も好ましくは75%;逆相乳化重合では、下限は通常10%、前記と同様の観点から好ましくは20%、さらに好ましくは30%、とくに好ましくは40%、最も好ましくは55%、上限は通常90%、前記と同様の観点から好ましくは80%、さらに好ましくは75%、とくに好ましくは70%、最も好ましくは65%である。
本発明における水溶性ポリマー(A)は、さらに変性反応させてもよい。ポリマー変性方法としては、例えば、1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(b)として加水分解性官能基を分子内に有する(メタ)アクリルアミドを使用した場合、重合時または重合後に苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)または炭酸アルカリ(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)を添加して、(b)のアミド基を部分的に加水分解してカルボキシル基を導入する方法(特開昭56−16505号公報等参照);ホルムアルデヒド、ジアルキルアミン(C1〜12)およびハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素等)化アルキル(C1〜12)(メチルクロライド、エチルクロライド等)を加え、マンニッヒ反応によって部分的にカチオン性基を導入する方法;アクリロニトリル等のニトリル基と、ビニルホルムアミドなどの加水分解により得られるアミノ基との閉環反応により分子内にアミジン環を形成させる方法(特開平5−192513号公報等参照);および重合後に前記の架橋性モノマー(x)を添加して架橋反応させる方法(特許3305688号公報等参照)等が挙げられる。
水溶液重合法等によって重合して得られる(A)が含水ゲル[(A)と水とからなる]である場合は、必要に応じて細断され、さらに脱水、乾燥することによって、粉末状の(A)を含有する本発明の高分子凝集剤(P)を得ることができる。
本発明の高分子凝集剤(P)中に含有される水溶性ポリマー(A)の、4重量%NaCl水溶液中25℃での0.5%塩水溶液粘度Vs(mPa・s、25℃)は、好ましくは1〜150、さらに好ましくは2〜130、とくに好ましくは3〜120である。0.5%塩水溶液粘度が1以上であると、凝集性能が良好であり、150以下であると、汚泥等の中の懸濁粒子との反応性が良好である。なお、0.5%塩水溶液粘度は後述の方法で測定することができる。
水溶性ポリマー(A)の分子量は固有粘度[η](dl/g、30℃)で表され、該固有粘度は、好ましくは1〜30、カチオン性および両性重合体では、さらに好ましくは4〜20、ノニオン性およびアニオン性重合体では、さらに好ましくは10〜25である。固有粘度が1以上であると、凝集性が良好であり、30以下であると、汚泥等の中の懸濁粒子との反応性が良好である。
本発明における水溶性ポリマー(A)は、前記固有粘度[η]と0.5%塩水溶液粘度Vsに関して、前記のとおり下記の関係式[1]を満足する。

−0.40 ≦ ln [η] / ln Vs≦ 0.55 [1]

本発明における水溶性ポリマー(A)は、固有粘度[η]と0.5%塩水溶液粘度Vsをともに前記好ましい範囲とすることにより、上記関係式[1]を満足することができるが、該比を前記のさらに好ましい範囲としてより優れた凝集性能を発揮させるとの観点から、前記疎水性モノマー(a)と水溶性モノマー(b)を含有する不飽和モノマーを重合させて(A)を製造するに際して、環構造内に第2級の窒素原子を1個含有する複素環式化合物(h)の存在下で重合させることが、より好ましい。
(h)としては、下記(h1)〜(h3)が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。
(h1)環構造内に第2級の窒素原子を1個のみ有し、他のヘテロ原子を有しない複素環式化合物
C2〜20のもの、例えば飽和複素環式化合物(エチレンイミン、アザシクロブタン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン等)、不飽和複素環式化合物(ピロール、アザトロピリデン、インドール、イソインドール、カルバゾール等)、およびこれらの誘導体;
(h2)環構造内に第2級の窒素原子を1個とそれ以外に1個以上の窒素原子を有する複素環式化合物
C3〜20のもの、例えば飽和複素環式化合物(2−アルキルピラゾリジン、3−アルキルイミダゾリジン、4−アルキルピペラジン等)、不飽和複素環式化合物(イミダゾール、ピラゾール、イミダゾリン、ベンゾイミダゾール、プリン、ポルフィリン、クロリン、コリン等)、およびこれらの誘導体;
(h3)環構造内に第2級の窒素原子を1個と窒素以外のヘテロ原子を1個以上有する複素環式化合物
C3〜20のもの、例えば環構造内に第2級の窒素原子以外に硫黄原子を有するもの(チアジン、フェノチアジン、イソチアゾリジン、チオモルホリン等)、環構造内に第2級の窒素原子以外に酸素原子を有するもの(モルホリン、イソオキサゾリジン等)、環構造内に第2級の窒素原子以外にセレン原子を有するもの(セレノモルホリン等)、環構造内に第2級の窒素原子以外にテルル原子を有するもの(テルロモルホリン等)、およびこれらの誘導体。
上記(h1)〜(h3)のうち、水溶性ポリマー(A)のln[η]/lnVs比を好ましい範囲にする観点から好ましいのは、(h1)および(h2)のうちの不飽和複素環式化合物、(h3)のうちの環構造内に第2級の窒素原子以外に硫黄原子を有する複素環式化合物、環構造内に第2級の窒素原子以外に酸素原子を有する複素環式化合物、さらに好ましいのは、(h1)のうちのピロール、アザトロピリデン、イソインドール、カルバゾール、(h2)のうちのイミダゾール、ピラゾール、ベンゾイミダゾール、(h3)のうちのチアジン、フェノチアジンである。なお、上記の好ましいものには、それらの誘導体も含まれる。
(A)を構成する不飽和モノマーの合計重量に基づく(h)の使用量は、高分子凝集剤(P)の凝集性能および(A)を構成する不飽和モノマーのラジカル重合性の観点から好ましくは0.0005〜0.01%、さらに好ましくは0.0008〜0.0075%、とくに好ましくは0.001〜0.005%である。
水溶性ポリマー(A)の0.2重量%水溶液粘度(以下において0.2%水溶液粘度ということがある。)(mPa・s、25℃)は、好ましくは50〜1,000、さらに好ましくは100〜800、とくに好ましくは200〜600である。0.2%%水溶液粘度が50以上であると凝集性が良好であり、1,000以下であると懸濁粒子との反応性が良好である。なお、0.2%水溶液粘度は後述の方法で測定することができる。
水溶性ポリマー(A)の分子量分布を表すことができる簡便な測定方法として、0.4重量%水溶液の曳糸長L(mm)が挙げられる。該曳糸長(mm)は、後述するノニオン性およびアニオン性高分子凝集剤では、工業上および凝集性能の観点から好ましくは20〜200、さらに好ましくは40〜150、カチオン性および両性高分子凝集剤では、同様の観点から好ましくは5〜100、さらに好ましくは6〜80である。
ここで、曳糸長L(mm)は曳糸性測定器[協和界面科学(株)製]等を用いて以下の手順で測定することができる。
水溶性ポリマー粒子0.80g(固形分換算)を300mlのガラス製ビーカーにとり、該ポリマーとイオン交換水の重量の合計が200.0gとなるようにイオン交換水をすばやく加え、ガラス棒などを用いて該ポリマーが膨潤して均一分散するまで(約1分)撹拌する。この時、該ポリマーがままこにならないように注意する。その後、透明樹脂フィルムでふたをして室温(約20℃)で約20時間静置した後、板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)1枚付き撹拌棒を取り付けたジャーテスターにセットし、120rpmで1時間撹拌して測定試料の0.4重量%水溶液を調製する。該測定試料を25±2℃に温度調整した後、曳糸性測定器の、吊り下げ糸の下端に取り付けられたガラス製回転楕円体(以下ガラス球という)(短径7mm、長径11mm。長径方向に吊り下げる。)をガラス球の長径上端が測定試料の液面直下に位置するように浸漬し、15秒間保持した後、16mm/秒の速度でガラス球を引き上げ、ポリマー水溶液の糸が切れるまでの、液面からガラス球下端までの距離を測定する。測定試料におけるガラス球の浸漬位置を変更して、測定を10回繰り返し、平均値を算出し、曳糸長L(mm)の値とする。
(A)の曳糸長L(mm)と固有粘度[η](dl/g)の比(L/[η])は、工業上および凝集性能の観点から好ましくは1〜8、さらに好ましくは1.5〜7、とくに好ましくは2〜5である。
[高分子凝集剤(P)]
本発明の高分子凝集剤(P)は、前記関係式[1]を満足する水溶性ポリマー(A)を含有してなる。
本発明の高分子凝集剤は、用途により、適したイオン性のものを用いる。
一般的に、下水汚泥においては、懸濁粒子の大きさが比較的大きく、また水中における懸濁粒子表面がマイナス荷電を有していることから、脱水用高分子凝集剤としてはカチオン性または両性高分子凝集剤、およびこれらの混合物が好ましい。
廃水においては、溶解性有機物等を処理するためにまず無機凝集剤を添加することが多く、その場合、懸濁粒子表面は無機凝集剤で覆われることとなりプラス荷電を有していることから、凝集沈殿処理用高分子凝集剤としては、アニオン性またはノニオン性、およびこれらの混合物が好ましい。
石油の3次回収用としては、比較的大きな分子量を有するものが使用され、アニオン性またはノニオン性、およびこれらの混合物が好ましい。
製紙工程での濾水歩留向上用または紙力増強用としては、カチオン性または両性高分子凝集剤、およびこれらの混合物が好ましい。
上記のイオン性は、本発明の高分子凝集剤中の、水溶性ポリマー(A)のイオン性に由来するものである。
ここで、カチオン性高分子凝集剤とは、分子内にカチオン性基を有する高分子凝集剤、すなわち水に溶解した際にカチオン性を示す高分子凝集剤であり、また両性高分子凝集剤とは、分子内にカチオン性基およびアニオン性基を有する高分子凝集剤、すなわち水に溶解した際にカチオン性およびアニオン性を示す高分子凝集剤である。これらの高分子凝集剤の水中におけるカチオン性またはアニオン性の評価方法については、コロイド当量値(meq/g)として求めることができる。すなわち、カチオン性凝集剤中のカチオン性基当量値はカチオンコロイド当量値として求めることができ、両性凝集剤中のカチオン性基当量値およびアニオン性基当量値は、それぞれカチオンコロイド当量値、アニオンコロイド当量値として求めることができる。
本発明の高分子凝集剤(P)がカチオン性高分子凝集剤の場合、該凝集剤中の水溶性ポリマー(A)のカチオンコロイド当量値は、凝集性能の観点から好ましい下限は1.5、より好ましくは1.8、さらに好ましくは2.0、とくに好ましくは2.3、最も好ましくは2.5、凝集性能の観点から好ましい上限は8.0、より好ましくは7.0、さらに好ましくは6.5、とくに好ましくは6.2、最も好ましくは6.0である。
また本発明の高分子凝集剤が両性高分子凝集剤の場合、該凝集剤中の水溶性ポリマー(A)のカチオンコロイド当量値は、凝集性能の観点から好ましい下限は1.5、より好ましくは1.8、さらに好ましくは2.0、とくに好ましくは2.3、最も好ましくは2.5、凝集性能の観点から好ましい上限は8.0、より好ましくは7.0、さらに好ましくは6.5、とくに好ましくは6.2、最も好ましくは6.0であり;アニオンコロイド当量値は、凝集性能の観点から好ましい下限は−13.0、より好ましくは−10.0、さらに好ましくは−8.0、とくに好ましくは−5.0、最も好ましくは−3.0、凝集性能の観点から好ましい上限は−0.05、より好ましくは−0.1、さらに好ましくは−0.3、とくに好ましくは−0.5、最も好ましくは−1.0である。
コロイド当量値は以下に示すコロイド滴定法により求めることができる。なお、以降の測定は室温(約20℃)下で行う。
(1)測定試料(50ppm水溶液)の調製
試料0.2g(固形分含量換算したもの)を精秤し、200mlの三角フラスコにとり、全体の重量(試料とイオン交換水の合計重量)が100gとなるようにイオン交換水を加えた後、マグネチックスターラー(長さ40mm、直径5mmの円筒状マグネット、回転数1,000rpm)で、3時間撹拌して完全に溶解させ、0.2重量%の水溶性ポリマー(A)の水溶液を調製する。500mlのビーカーに該調製水溶液10mlをとり、全体の重量(水溶液10mlとイオン交換水の合計重量)が400gとなるようにイオン交換水を加え、再度マグネチックスターラー(1,000〜1,200rpm)で、30分間撹拌して、均一な測定試料とする。
なお、水溶性ポリマー(A)の固形分含量は、粉末状の試料約1.0gをシャーレ(直径100mm、深さ10mm)に秤量(W1)して、循風乾燥機中、105±5℃で90分間乾燥させた後の残存重量を(W2)として、次式から算出した値である。

固形分含量(重量%)=(W2)×100/(W1)
(2)カチオンコロイド当量値の測定
測定試料100gを200mlのコニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら徐々に0.5重量%硫酸水溶液を加え、pH3に調整する。次にトルイジンブルー指示薬(TB指示薬)を2〜3滴加え、N/400ポリビニル硫酸カリウム(N/400PVSK)試薬で滴定する。滴定速度は2ml/分とし、測定試料が青から赤紫色に変色し、赤紫色が30秒間保持される時点を終点として滴定量(単位はml)を求める。
(3)アニオンコロイド当量値の測定
測定試料100gを200mlのコニカルビーカーにとり、マグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しながら、N/10水酸化ナトリウム水溶液0.5mlを加え、さらにN/200メチルグリコールキトサン水溶液5mlを加えた後、5分間撹拌する(その時のpH約10.5)。TB指示薬を2〜3滴加え、上記(2)と同様にして滴定量(単位はml)を求める。
(4)空試験
測定試料の代わりにイオン交換水100gを用いる以外は(2)または(3)と同様の操作を行い、滴定量(単位はml)を求める。
(5)計算方法

コロイド当量値(meq/g)=(1/2)×(試料の滴定量−空試験の滴定量)
×(N/400PVSKの力価)
本発明の高分子凝集剤(P)は、水溶性ポリマー(A)以外に、さらに、フロック径の増大化の観点から必要により、水溶性ポリマー(B)を含有してもよい。水溶性ポリマー(B)は、疎水性モノマー(a)を含まず、1個の不飽和基を有する前記水溶性モノマー(b)のみを構成単位として含有するポリマーである。
(B)の固有粘度[η](dl/g)は、凝集性能および工業上の観点から好ましくは1〜30、カチオン性および両性ポリマーでは、さらに好ましくは4〜20、ノニオン性およびアニオン性ポリマーでは、さらに好ましくは10〜25である。
(B)の0.5%塩水溶液粘度(mPa・s)は、凝集性能および工業上の観点から好ましくは3〜100、さらに好ましくは5〜80である。
(B)の0.2%水溶液粘度(mPa・s)は、凝集性能および工業上の観点から好ましくは50〜1,000、さらに好ましくは100〜800である。
(B)の曳糸長L(mm)は、ノニオン性およびアニオン性ポリマーでは、工業上および凝集性能の観点から好ましくは20〜200、さらに好ましくは40〜150、カチオン性および両性高分子凝集剤では、同様の観点から好ましくは5〜100、さらに好ましくは6〜80である。
(B)の曳糸長と固有粘度の比L/[η]は、工業上および凝集性能の観点から好ましくは1〜8、さらに好ましくは1.5〜7、とくに好ましくは2〜5である。
(B)の含有量は、(P)の重量に基づいて通常70%以下、フロック径増大化および凝集性能の観点から好ましくは10〜50%、さらに好ましくは20〜30%である。
また、本発明の高分子凝集剤(P)は、水溶性ポリマー(A)、(B)以外に、必要に応じ、本発明の効果を阻害しない範囲で、高分子凝集剤に通常用いられる、消泡剤、キレート化剤、pH調整剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤からなる群から選ばれる添加剤(C)を含有することができる。
これらの添加剤(C)のうち、ブロッキング防止剤を除く添加剤については、本発明の効果を阻害しない範囲で水溶性ポリマー(A)または(B)の製造前のモノマー水溶液中に予め含有させてもよい。
上記添加剤(C)全体の使用量は、(A)と(B)の合計重量に基づいて、通常50%以下、(C)の添加効果および凝集性能(とくにフロック強度)の観点から好ましくは1〜40%、さらに好ましくは2〜30%である。
各添加剤の使用量については、上記と同様の重量に基づいて、通常、消泡剤は5%以下、キレート化剤は30%以下、pH調整剤は10%以下、界面活性剤およびブロッキング防止剤はそれぞれ5%以下、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤はそれぞれ5%以下;上記と同様の観点から好ましくは、消泡剤は1〜3%、キレート化剤は2〜10%、pH調整剤は1〜5%、界面活性剤およびブロッキング防止剤はそれぞれ1〜3%、酸化防止剤、紫外線吸収剤および防腐剤はそれぞれ0.1〜2%である。
また、本発明の高分子凝集剤(P)は、凝集性能(フロック強度、ろ過速度等)向上の観点から、例えば特願2011−48186明細書に記載の他の高分子凝集剤(Q)を併用してもよい。該(Q)は、1〜8個のカルボキシル基を有する芳香環含有カルボン酸および/またはその塩(q)の存在下、水溶性不飽和モノマー(b)をラジカル重合させた、水溶性ポリマーを含有してなる高分子凝集剤である。
また、本発明の高分子凝集剤(P)は、凝集性能(フロック強度、ろ過速度等)向上の観点から、該(P)以外の他の高分子凝集剤(Q)を併用してもよい。該(Q)には特願2011−48186明細書に記載の高分子凝集剤[本明細書では(Q1)と称する]、特願2011−55783明細書に記載の高分子凝集剤[本明細書では(Q2)と称する]等が含まれる。該(Q1)は、水溶性不飽和モノマーを構成単位とする水溶性ポリマー、および1〜8個のカルボキシル基を有する芳香環含有カルボン酸および/またはその塩を含有してなる高分子凝集剤であり、(Q2)は、ハロゲンイオンを対イオンとする3級アミン塩基または4級アンモニウム塩基を有する水溶性不飽和モノマーを必須モノマーとする水溶性不飽和モノマーを含有する不飽和モノマーが、2〜10個のカルボキシル基を有する飽和脂肪族ポリカルボン酸および/またはその塩の存在下で、ラジカル重合されてなる水溶性ポリマーを含有する高分子凝集剤である。
(P)と(Q)を併用する方法としては、それぞれ作成した粉末状の(P)と(Q)をあらかじめ混合後、水に溶解しこれを汚泥または廃水に添加する方法、(P)と(Q)の各水溶液を作成後、これらを汚泥または廃水に、(P)、(Q)ほぼ同時に添加する方法、(P)を添加して1次処理後、(Q)を添加して2次処理する、あるいは(Q)を添加して1次処理後、(P)を添加して2次処理する逐次的添加方法等が挙げられる。
これらの方法のうち、凝集性能(フロック強度、ろ過速度等)向上の観点から好ましいのは粉末状の(P)と(Q)をあらかじめ混合後、水に溶解しこれを汚泥または廃水に添加する方法である。
(P)と該(Q)を併用する場合の(Q)の使用量は、(P)と(Q)の合計重量に基づいて通常90%以下、より強固なフロックを形成する観点および凝集性能の観点から好ましくは5〜70%、さらに好ましくは10〜30%である。
本発明の高分子凝集剤(P)を汚泥または廃水に添加する方法としては、特に限定はなく、例えば特許第1311340号公報または特許第2038341号公報等に記載の方法が挙げられる。
本発明の高分子凝集剤(P)の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁粒子の含有量、高分子凝集剤(P)の分子量等により異なるが、特に限定はなく、汚泥または廃水中の蒸発残留物重量(以下、TSと略記)に基づいて、通常0.01〜10%、凝集性能の観点から好ましい下限は0.1%、さらに好ましくは0.5%、とくに好ましくは1%、処理費用の観点から好ましい上限は5%、さらに好ましくは3%、とくに好ましくは2%である。
本発明の高分子凝集剤(P)の使用方法としては、十分な凝集性能発揮の観点から水溶液にした後に汚泥または廃水に添加するのが好ましいが、(P)を固体(粉末)の状態で直接汚泥または廃水に添加することもできる。(P)を水溶液として用いる場合の濃度は、取り扱い上および溶解速度の観点から好ましくは0.05〜1重量%である。
(P)の溶解方法としては、特に限定されることはなく、例えば予め秤り取った水をジャーテスターなどの撹拌装置を用いて撹拌しながら所定量の(P)を徐々に加え、数時間(約2〜4時間程度)かけて溶解させる方法等が採用できる。
粉末状の(P)を水に溶解させる際に、所定量の(P)を一気に加える方法はままこを生じ、完全に水に溶解させることが困難となることから好ましくない。
本発明の高分子凝集剤(P)を石油の3次回収用として使用する際には、通常水溶液として使用される。該(P)の濃度(重量%)は、通常0.001〜3%、増粘効果および送液可能な粘度の観点から好ましくは0.005〜1%、さらに好ましくは0.01〜0.5%である。
本発明の高分子凝集剤(P)を汚泥または廃水に適用する際、汚泥または廃水が有機性の汚泥や嫌気性菌処理汚泥である場合は、汚泥粒子の荷電中和の観点から凝結剤(D)(無機および/または有機凝結剤)を併用するのが好ましい。
無機凝結剤(D1)としては、硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄、消石灰等;有機凝結剤(D2)としては、アニリン−ホルムアルデヒド重縮合物塩酸塩、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジ(メタ)アリルアンモニウムクロライド、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−マレイン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−シトラコン酸共重合体、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−イタコン酸、(メタ)アリルアミンまたはジ(メタ)アリルアミン−フマル酸共重合体等が挙げられる。
(D)を併用する場合は、本発明の高分子凝集剤(P)に予め(D)を添加した混合物で汚泥または廃水を処理するか、汚泥または廃水に予め(D)を添加して一次凝集させた後、(P)を添加して処理するかいずれでもよい。
(D)を併用する場合の使用量は、汚泥または廃水の種類、懸濁粒子の大きさ、用いる凝結剤の種類などによって異なるが、特に限定はなく、汚泥または廃水中のTSに基づいて、無機凝結剤では通常20%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.5%、さらに好ましくは1%、とくに好ましくは1.5%、脱水ケーキ焼却後のスラッジ量低減の観点から好ましい上限は10%、さらに好ましくは5%、とくに好ましくは3%であり、有機凝結剤では通常1%以下、凝結性能の観点から好ましい下限は0.01%、さらに好ましくは0.025%、とくに好ましくは0.05%、フロック強度の観点から好ましい上限は0.5%、さらに好ましくは0.2%、とくに好ましくは0.15%である。
本発明の高分子凝集剤(P)の添加の際には、汚泥または廃水のpHを予め調整しておいてもよい。pHの調整範囲は通常3〜8、(P)の加水分解防止の観点から好ましい下限は3.5、さらに好ましくは4、とくに好ましくは4.5、(P)の溶解性の観点から好ましい上限は7、さらに好ましくは6、とくに好ましくは5.5である。
pHの調整方法としては、特に限定されることはなく、無機酸(硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等)等の酸性物質や苛性アルカリ(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等のアルカリ性物質を用いる方法が挙げられる。また、前記の無機および/または有機凝結剤を汚泥または廃水に予め加えることで、上記pHに調整することもできる。
また、(P)を汚泥または廃水に添加して形成されたフロックの脱水方法(固液分離法)としては、遠心脱水、フィルタープレス脱水、ベルトプレス脱水、スクリュープレス脱水およびキャピラリー脱水等の種々の脱水法が適用できる。これらのうち、本発明の高分子凝集剤(P)の特異的な凝集性能である高フロック強度の観点から好ましいのは、スクリュープレス脱水およびベルトプレス脱水である。
以下実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部、%は重量%を表す。
実施例および比較例に使用した原料の組成、記号等は次のとおりである。
(1)1個の不飽和基を有しオクタノール/水分配係数(logPow)が1.0〜6.0である疎水性モノマー(a)
(a1−1):メタクリル酸メチル(logPow1.4)
(a1−2):メタクリル酸2−エチルヘキシル(logPow 4.5)
(a1−3):N−t−ブチルアクリルアミド(logPow 1.0)
(a1−4):メタクリル酸ブチル(logPow 2.9)
(a1−5):アクリル酸デシル(logPow 5.5)
(a1−6):N−ラウリルアクリルアミド(logPow 5.8)
(a2−1):スチレン(logPow 3.0)
(a3−1):1−ブテン(logPow 2.4)
(a4−1):イソブテン(logPow 2.4)
(a5−1):シクロヘキセン(logPow 2.9)
(2)1個の不飽和基を有しlogPowが6を超える疎水性モノマー(a’)
(a’−1):メタクリル酸ドデシル(logPow 6.7)
(3)1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(b)
(b1−1):N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートのメチルクロライド塩の78.3%水溶液
(b1−2):N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートのメチルクロライド塩の70%水溶液
(b1−3):ジアリルジメチルアンモニウムクロライドの65%水溶液[和光純薬工業(株)製]
(b1−4):2−ヒドロキシエチルメタクリレート
(b2−1):アクリル酸メチル(logPow 0.8)
(b2−2):アクリルアミドの50%水溶液
(b3−1):アクリル酸の80%水溶液
(5)架橋性モノマー(x)
(x2−1)PEG(Mw600)ジアクリレート[商品名「ライトアクリレート14EG−A」]、 共栄社化学(株)製の1%水溶液
(6)連鎖移動剤(f)
(f−1):1−チオグリセロールの1%水溶液
(f−2):エチレングリコール−ジ−2−メルカプトエチルエーテルの1%水溶液
(7)ラジカル重合開始剤(d)
(d−1):アゾビスアミジノプロパン塩酸塩[和光純薬工業(株)製、「V−50」
10時間半減期温度:56℃]の10%水溶液
(d−2):4,4’−アゾビス(4―シアノ吉草酸)[和光純薬工業(株)製、「V
−501」、10時間半減期温度:69℃]の10%水溶液(水酸化ナトリ
ウム水溶液でpH7.0に調整したもの。)
(d−3):過酸化水素水の1%水溶液
(d−4):アスコルビン酸の1%水溶液
(d−5):硫酸鉄(II)の1%水溶液
(d−6):ジクミルパーオキサイド
(8)疎水性分散媒(e)
(e−1):n−デカン
(9)分散剤(c)
(c1−1):PEG(Mn300)のジステアリン酸エステル[商品名「イオネット
DS−300」、三洋化成工業(株)製、HLB7.3、Mn800の
低分子分散剤]
(c2−1):後述する製造例1で得られた高分子分散剤(HLB2.1、
Mw15,000)
(10)両親媒性化合物(g)
(g1−1):メタノール
(g3−1):アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム[商品名「エレ
ミノールMON−7」、三洋化成工業(株)製、HLB21.4]
(11)環構造内に第2級の窒素原子を1個含有する複素環式化合物(h)
(h1−1)ピロール
(h2−1)ベンゾイミダゾール
(h3−1)チアジン
(h3−2)フェノチアジン
(12)有機凝結剤(D2)
(D2−1)ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド[商品名「スイフロック
SR−2000」、(株)スイレイ製]
(13)芳香族環含有カルボン酸および/またはその塩[特願2011−48186明
細書に記載の「1〜8個のカルボキシル基を有する芳香環含有カルボン酸およ
び/またはその塩(B)」に該当するもの。本願においては(q)の記号を付
す。]
(q−1):トリメリット酸のナトリウム塩の10%水溶液
<評価方法>
水溶性ポリマー(A)からなる高分子凝集剤の固形分含量は前記の方法で評価し、その他の項目は下記の方法で評価した。
なお、下水汚泥等中の蒸発残留物重量(TS)、浮遊物質(SS)、有機分(強熱減量)は、「下水試験方法」(日本下水道協会、1984年度版)記載の分析方法に準じて行った。
(1)0.2%水溶液粘度(mPa・s、25℃)
ジャーテスター[型式「JMD−6HS−A」、宮本理研工業(株)製、以下同じ。]に板状の塩ビ製撹拌羽根(直径5cm、高さ2cm、厚さ0.2cm)2枚を十字になるように上下に連続して撹拌棒に取り付けた撹拌装置を用い、500mLビーカーにイオン交換水499gを入れ、水温20〜25℃にて300rpmで撹拌下、固形分1.0gの試料を徐々に加えて、3時間かけて完全に溶解させた。その後、得られた水溶液の一部を200mLトールビーカーに移し、25℃の恒温槽に20分間静置して温度調整した後、B型粘度計[型式「TV−10M」、東機産業(株)製、以下同じ。]でM2ローター、30rpmにて、測定開始300秒後の値を0.2%水溶液粘度とした。
(2)0.5%塩水溶液粘度(mPa・s、25℃)
上記と同じ撹拌装置を用い、500mLビーカーにイオン交換水477.5gを入れ、水温20〜25℃にて200rpmで撹拌下、固形分2.5gの試料を徐々に加えて、4時間かけて完全に溶解させた。その後、塩化ナトリウム20gを入れ、さらに30分間撹拌して溶解させた。その後、得られた塩水溶液(塩化ナトリウムの濃度は4%)の一部を200mLトールビーカーに移し、25℃の恒温槽に20分間静置して温度調整した後、B型粘度計でM1ローター、60rpmにて、測定開始300秒後の値を0.5%塩水溶液粘度とした。
(3)水溶解性
上記の0.5%塩水溶液粘度を測定した際に調整して水溶液全量を、あらかじめ重量(W3)を測定したふるい(目開き180μm)に全量移し、ろ過した。ろ過後、水道水の流水(流速:約10L/min)でふるい上の残分を3分間洗浄した。洗浄後、ふるいの枠に付着している水分を布などでふき取り、重量(W4)を測定し、次式から水不溶解分量を計算した。

水不溶解分量(g)=(W4)−(W3)

上記の式から求めた水不溶解分量に基づき、下記の基準に従って水溶解性を評価した。
<評価基準>
◎ 水溶解性が非常に良好 (水不溶解分≦5)
○ 良好 (5<水不溶解分≦15)
△ やや悪い (15<水不溶解分≦30)
× 悪い (30<水不溶解分)
(4)フロック粒径(mm)
300mlのビーカーに汚泥200mlを入れ、上記(1)と同じ撹拌装置にセットした。ジャーテスターの回転数を300rpmとし、徐々に汚泥を撹拌しながら、所定の濃度の高分子凝集剤の水溶液を所定の方法で添加し、30秒間撹拌した後、撹拌を止め形成されたフロックの粒径(mm)を目視にて観察した。続いて回転数を650rpmに変え、さらに30秒間撹拌した後、撹拌を止め形成されたフロックの粒径(mm)を再度目視にて観察した。
(5)フロック強度
上記(4)における回転数300rpmおよび650rpmでのフロック粒径を比較し、フロック粒径の変化からフロック強度を下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
◎ 非常に強固 (粒径に変化なし)
○ 強固 (ごく一部細分化)
△ やや弱い (部分的に細分化)
× 弱い (全体的に細分化)
(6)10秒後ろ液量、60秒後ろ液量(ml)
T−1189のナイロン製ろ布[敷島カンバス(株)製、円形状、直径9cm]、ヌッチェ漏斗、および300mlが計測できるメスシリンダーを用いてろ過装置をセットした。上記(4)のフロック粒径試験後の汚泥をヌッチェろ過面上に一気に全量投入して濾過し、ストップウォッチを用いて投入直後から10秒後および60秒後までに通過したろ液量を測定した。
(7)フロックの緻密性(%)
上記(6)のろ液量計測後のフロック約10gを目皿750μmの篩い上に取り分け、スパーテルで薄く伸ばした後、25℃で5分間静置する。その後、フロック約3gをシャーレに秤量(W5)して、循風乾燥機中、105±5℃、8時間で乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W6)として、次式からろ過後フロックのソリッド率を算出した。該ソリッド率が小さいほどフロックの緻密度が高いことを示すことから、該ソリッド率(%)をフロックの緻密性の指標として評価した。

ろ過後フロックの緻密性(%)=[(W5)−(W6)]×100/(W5)
(8)ろ布剥離性
ろ過した汚泥の一部をスパーテルで取り出し、プレスフィルター試験機を用いて脱水試験(1kg/cm2、60秒)を行い、試験後のろ布に付着した脱水ケーキをスパーテルで剥離させた場合の脱水ケーキの剥離性を下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
◎:非常に剥がれやすい(ろ布に付着物なし)
○:剥がれやすい (ろ布に付着物わずかにあり)
△:多少剥がれにくい (ろ布に付着物あり、わずかにろ布内部にまで付着物あり)
×:剥がれにくい (ろ布内部にまで付着物多い)
(9)脱水ケーキ含水率(%)
上記(8)のろ布剥離性試験後の脱水ケーキ約3gをシャーレに秤量(W7)して、循風乾燥機中、105±5℃、8時間で乾燥させた後、シャーレ上に残った乾燥ケーキの重量を(W8)として、次式からケーキ含水率を算出した。

脱水ケーキ含水率(%)=[(W7)−(W8)]×100/(W7)
製造例1[分散剤(c2−1)の製造]
ステンレス製オートクレーブに、エチレン・酢酸ビニル共重合体[商品名「AC−POLY−400」、Honeywell(株)製、酢酸ビニル単位含量14%]171部、無水マレイン酸17.1部、キシレン117.7部を仕込み、100℃まで加熱して均一溶液とし、ポリマー溶液を調製した。別の容器に、ラジカル重合開始剤(d−6)11.8部、キシレン11.8部、n−ドデカンチオール0.092部を仕込み、均一混合して開始剤溶液とした。
150℃に加熱した前記ポリマー溶液に上記開始剤溶液を0.4部/分(ここにおいて「部」を「g」と読み替えた場合はg/分を示す。)の滴下速度で1時間かけて投入し、その後同温度で3時間反応させた後、キシレンを3〜20kPaの減圧下、140〜160℃、2時間でストリッピングして、高分子分散剤(c2−1)(無水マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体)を得た。
以下においては、高分子凝集剤の製造と該得られた高分子凝集剤の性能評価の実施例および比較例は同じNO.で表記することとする。
実施例1[高分子凝集剤(P−1)の製造](水溶液重合)
撹拌機を備えた反応容器に、表1に従って、疎水性モノマー(a1−1)、水溶性モノマー(b1−1)、緩衝剤、複素環式化合物(h3−2)、およびイオン交換水を配合したモノマー水溶液[水相(1)]を系内が均一溶液になるまで混合、撹拌した。撹拌下、モノマー水溶液のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら硫酸を用いて3.0に調整した。
次に、0℃の恒温水槽中で溶液温度を5℃に調整し、系内を窒素(純度99.999%以上)で充分に置換した(気相酸素濃度約5ppm)。その後、ラジカル重合開始剤(d−2)、(d−3)、(d−4)、(d−5)、およびイオン交換水を表1に基づいて配合した開始剤水溶液[水相(2)]を加えた原料混合液について、溶液温度5℃で重合を開始させ、重合により発生する熱により溶液温度が上昇し、溶液温度が70℃に達した時点で90℃の恒温槽内に反応容器を入れて10時間保温し重合を完結させた。なお重合中、内容物が高粘度となり撹拌が困難となったため、撹拌は途中で停止した。
その後、得られた含水ゲルを取り出し、ミートチョッパー機[型番「12VR−400K」、ROYAL(株)製、目皿の目開き6mm]により混合、混練、さらにミンチ状に細断し、80℃の熱風で2時間乾燥後、ジューサーミキサーで粉砕して、水溶性ポリマー(A−1)を含有してなる粉末状の高分子凝集剤(P−1)920部を得た(収率92%、固形分含量95%)。配合組成等を表1に示す。
実施例2〜7、比較例1〜7[高分子凝集剤(P−2)〜(P−7)、(RP−1)〜(RP−7)の製造]
実施例1において、モノマー水溶液を表1、4に基づいて配合したモノマー水溶液に代えたこと以外は実施例1と同様にして、各高分子凝集剤を得た。連鎖移動剤を使用する場合は、開始剤水溶液[水相(2)]中に配合した。各高分子凝集剤の配合組成等を表1、4に示す。
実施例8[高分子凝集剤(P−8)の製造](逆相懸濁重合)
[第1工程] 表1に従って、疎水性モノマー(a1−1)、水溶性モノマー(b1−1)、緩衝剤、およびイオン交換水を配合したモノマー水溶液[水相(1)]を室温(20〜25℃)で調製した。さらにスルファミン酸を用いて水相(1)のpH(20℃)をpHメーターで監視しながら3.0に調整した。別の容器に、ラジカル重合開始剤(d−1)、イオン交換水を表1に従って配合し、開始剤水溶液[水相(2)]を調製した。該水相(1)、(2)を別々に窒素(純度99.999%以上。以下同じ。)を通気して十分に窒素置換(溶存酸素濃度20ppb以下)した。
これらとは別に、撹拌翼(マックスブレンド翼)を備えた反応槽に、疎水性分散媒(e−1)1,770部、分散剤(c1−1)21.3部および(c2−1)5.3部を仕込み、油相を調製した。撹拌翼を340rpmの回転数にて撹拌しながら、反応槽内を窒素置換(気相酸素濃度10ppm以下)した後、80℃まで昇温して30分間保持した後、重合温度である50℃まで冷却した。重合温度に到達後、0.1kPa圧力条件下で、上記水相(1)、(2)を各々滴下ポンプにて25℃で送液し、スタティックミキサーにて連続的に混合しながら、混合液(モノマー水溶液)を反応槽中に2時間かけて全量滴下投入した。その後2時間、50℃で撹拌を継続し逆相懸濁重合させた。
[第2工程] その後、さらに同じ配合比で作成した水相(2)を9部添加し、その1時間後、さらに重亜硫酸ナトリウム14部およびメルカプト酢酸0.19部をイオン交換水10部に溶解させた水溶液を追加投入し、該投入した時点から、55℃で30分間撹拌を継続して重合を完結させた。
反応系の温度を55℃として、減圧(3〜20kPa)により共沸脱水させてスラリーを得た。該スラリーを減圧ろ過機に供給し固液分離を行った後、固形分を減圧乾燥機中(1.3kPa、40℃×2時間)で乾燥させ、水溶性ポリマー(A−8)からなる乾燥粒子である高分子凝集剤(P−8)を得た。(P−8)の配合組成等を表1に示す。
Figure 0005596662
実施例9〜20[高分子凝集剤(P−9)〜(P−20)の製造]
実施例1において、モノマー水溶液を表2、3に基づいて配合したモノマー水溶液に代えたこと以外は実施例1と同様にして、各高分子凝集剤を得た。連鎖移動剤を使用する場合は、開始剤水溶液[水相(2)]中に配合した。各高分子凝集剤の配合組成等を表2、3に示す。
実施例21[高分子凝集剤(P−21)の製造]
実施例2で得られた水溶性ポリマー(A−2)の粉末状の樹脂粒子20部に対して、比較例2で得られた水溶性ポリマー(RA−2)20部を配合し、25℃で1時間撹拌混合して、水溶性ポリマー(A−2)と水溶性ポリマー(RA−2)の混合物からなる高分子凝集剤(P−21)を得た。(P−21)の配合組成等を表3に示す。
実施例22[高分子凝集剤(P−22)の製造]
実施例2で得られた水溶性ポリマー(A−2)の粉末状の樹脂粒子30部に対して、比較例2で得られた水溶性ポリマー(RA−3)10部を配合し、25℃で1時間撹拌混合して、水溶性ポリマー(A−2)と水溶性ポリマー(RA−3)の混合物からなる高分子凝集剤(P−22)を得た。(P−22)の配合組成等を表3に示す。
実施例23[高分子凝集剤(PD−1)の製造]
実施例2で得られた水溶性ポリマー(A−2)の粉末状の樹脂粒子36部に対して、有機凝結剤(D2−1)4部を配合し、25℃で1時間撹拌混合して、水溶性ポリマー(A−2)と有機凝結剤(D2−1)の混合物からなる高分子凝集剤(PD−1)を得た。(PD−1)の配合組成等を表3に示す。
実施例24[高分子凝集剤(PQ−1)の製造]
[高分子凝集剤(Q−1)の製造]
実施例1において、モノマー水溶液および開始剤水溶液を以下に基づいて調製したモノマー水溶液および開始剤水溶液に代えたこと以外は実施例1と同様にして、高分子凝集剤(Q−1)を得た。(Q−1)の0.5%塩水溶液粘度は、150mPa・s、0.2%水溶液粘度は500mPa・sであった。
<モノマー水溶液の調製>
水溶性不飽和モノマー(b1−3)1,211部、(b2−2)156部、トリメリット酸のナトリウム塩の10%水溶液(q−1)92.6部、緩衝剤13.6部、およびイオン交換水131部を配合した。
<開始剤水溶液の調製>
ラジカル重合開始剤(d−1)13.8部、(d−3)0.23部、(d−4)0.58部、(d−5)0.55部、連鎖移動剤(f−1)0.55部、およびイオン交換水131部を配合した。
<高分子凝集剤(PQ−1)の製造>
実施例2で得られた水溶性ポリマー(A−2)の粉末状の樹脂粒子32部に対して、高分子凝集剤(Q−1)8部を配合し、25℃で1時間撹拌混合して、(A−2)を含有してなる高分子凝集剤(P−2)と高分子凝集剤(Q−1)の混合物からなる高分子凝集剤(PQ−1)を得た。(PQ−1)の評価結果を表3に示す。
比較例[高分子凝集剤(RP−8)〜(RP−9)の製造]
実施例1において、モノマー水溶液を表4に基づいて配合したモノマー水溶液に代えたこと以外は実施例1と同様にして、各高分子凝集剤を得た。連鎖移動剤を使用する場合は、開始剤水溶液[水相(2)]中に配合した。各高分子凝集剤の配合組成等を表4に示す。
Figure 0005596662
Figure 0005596662
Figure 0005596662
実施例1〜24、比較例1〜9[高分子凝集剤の性能評価]
得られた高分子凝集剤をそれぞれイオン交換水に溶解させて固形分含量0.2%の水溶液とした。消化処理したA市処理場から採取した消化汚泥[pH7.4、TS2.9%、SS2.7%、有機分65%、アルカリ度4,543mg−CaCO3/L]200部を500mLのビーカーに採り、上記高分子凝集剤の各水溶液20部を添加(この時の固形分添加量0.7%/TS)し、性能を評価した。結果を表5、6に示す。
Figure 0005596662
Figure 0005596662
表5、6から、実施例1〜24では、比較例1〜9に比べて、低撹拌下(300rpm)で一旦形成されたフロックが高撹拌下(650rpm)でも壊れにくい(フロック強度が強い)こと、10秒後ろ液量が多いことから初期ろ過速度が速いこと、フロックの緻密性が高い(含水率が低い)こと、ろ布剥離性に優れること、および脱水性(脱水ケーキ含水率)において優れた効果を示すことがわかる。
本発明の高分子凝集剤は、従来にない特異的な凝集性能を示すことから、下水汚泥等の脱水用高分子凝集剤、製紙工程での濾水歩留向上用または紙力増強用高分子凝集剤の他、産業廃水の凝集沈殿処理用、石油の3次回収用等の高分子凝集剤として幅広く好適に用いられ、極めて有用である。

Claims (7)

  1. 1個の不飽和基を有しオクタノール/水分配係数(logPow)が1.0〜6.0である疎水性モノマー(a)とカチオン性モノマーを含有する水溶性モノマー(b)を含有してなり、該(a)と該(b)との重量比が3/97〜33/67である不飽和モノマーを環構造内に第2級の窒素原子を1個含有する複素環式化合物(h)の存在下で重合させた、下記の関係式[1]を満足する水溶性ポリマー(A)[但し、水溶性モノマーが、水溶性の天然高分子、半合成高分子および合成高分子から選ばれる水溶性ポリマーにグラフト化されたグラフト(共)重合体を除く]を含有してなる高分子凝集剤(P)。

    −0.40 ≦ ln[η]/lnVS ≦ 0.55 [1]

    [式中、[η]は1N−NaNO3水溶液中30℃での固有粘度、VSは4重量%NaCl水溶液中25℃での0.5重量%塩水溶液粘度を表す。]
  2. (a)が、1個の不飽和基を有しオクタノール/水分配係数(logPow)が1.0〜6.0である疎水性モノマーであり、(b)が、1個の不飽和基を有する水溶性モノマーである請求項1記載の高分子凝集剤。
  3. (A)を構成する不飽和モノマーの全重量に基づく(a)の含有量が、3〜33%である請求項1または2記載の高分子凝集剤。
  4. さらに、1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(b)のみを重合させた水溶性ポリマー(B)を含有させてなる請求項1〜3のいずれか記載の高分子凝集剤。
  5. (P)の重量に基づく(B)の含有量が、70%以下である請求項記載の高分子凝集剤。
  6. 1個の不飽和基を有しオクタノール/水分配係数(logPow)が1.0〜6.0である疎水性モノマー(a)と、1個の不飽和基を有する水溶性モノマー(b)を含有してなり、該(a)と該(b)との重量比が3/97〜33/67である不飽和モノマーを、環構造内に第2級の窒素原子を1個含有する複素環式化合物(h)の存在下で重合させることを特徴とする水溶性ポリマー(A)を含有してなる高分子凝集剤(P)の製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか記載の高分子凝集剤を汚泥または廃水に添加、混合してフロックを形成させ固液分離する汚泥または廃水の処理方法。
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