JP2012170831A - 塗膜の剥離方法及び塗膜剥離用マスキング材 - Google Patents

塗膜の剥離方法及び塗膜剥離用マスキング材 Download PDF

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Abstract

【課題】 堆積塗膜を容易に剥離することができる塗膜の剥離方法及び塗膜剥離用マスキング材を提供する。
【解決手段】 ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とし、硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上の樹脂組成物を剥離用皮膜1として、下地基材2上に形成して硬化させ、その剥離用皮膜1上に塗料堆積物4が堆積された後に、下地基材2から剥離用皮膜1を引き剥がすことにより、下地基材2から容易に塗料堆積物4が堆積された剥離用皮膜1を剥離する塗膜の剥離方法及び塗膜剥離用マスキング材である。
【選択図】 図6

Description

本発明は、塗膜の剥離方法及び塗膜剥離用マスキング材に係り、特に、塗装作業の際に、塗装冶工具や塗装用ブースの壁面、床等に付着した堆積塗膜を容易に剥離することができる塗膜の剥離方法及び塗膜剥離用マスキング材に関する。
[従来の技術]
従来、塗装治工具や塗装用ブースの壁面、床等、本来不要な塗膜が付着し、堆積したものを除去する剥離方法には以下のものがある。
(1)トリクロロエチレン、ジクロロメタンなどに代表されるハロゲン系炭化水素を洗浄剤として用いて塗膜を除去する方法。
(2)有機アルカリや無機アルカリを煮沸して塗膜を剥離する方法。
(3)洗浄剤などを使用する際に、超音波を照射して塗膜の剥離を促進する方法。
(4)ケレン・ハツリ機具などを用いて物理的に塗膜を剥がす方法。
また堆積物除去を容易にするため、あらかじめグリースを塗布する、フィルム、テープを貼る方法等が取られている。
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2001−121077号公報「自動車車体の塗装方法」(本田技研工業株式会社)[特許文献1]、特開2001−017912号公報「自動車車体の塗装方法」(本田技研工業株式会社)[特許文献2]、特開平08−269372号公報「塗装面の保護フィルム形成用塗料及び車体塗装面の保護方法」(日産車体株式会社)[特許文献3]、特開平07−024832号公報「塗装された熱可塑プラスチック製品の塗装膜剥離方法並びに再生処理方法及び装置」(株式会社日本製鋼所)[特許文献4]がある。
特許文献1には、ヒンジ部の外表面からマスキング材を剥がすことが示され、特許文献2には、開口部を開放してマスキング材を剥がすことが示され、特許文献3には、保護フィルム形成用塗料の乾燥後に容易に剥離することが示され、特許文献4には、熱硬化性プラスチック塗料を塗装し、加熱して引き延ばして塗装膜を剥離することが示されている。
特開2001−121077号公報 特開2001−017912号公報 特開平08−269372号公報 特開平07−024832号公報
しかしながら、上記従来の塗料の剥離方法では、次のような問題点があった。
第1に、塗装治工具や塗装用ブースの壁面、床等、本来不要な塗料が付着し堆積したものを除去するために、ハロゲン系炭化水素を洗浄剤として用いる方法では、発ガン性があり、またその安定性ゆえに、環境中に放出された後、分解されず残留するという問題があった。
第2に、ハロゲン系炭化水素や有機アルカリや無機アルカリを煮沸して剥離する方法、さらに洗浄剤などを使用する際、超音波を照射して剥離を促進する方法では、大規模な設備が必要であるという問題点があった。
第3に、ケレン・ハツリ機具などを用いて物理的に剥がす方法では、大掛かりな設備・機具は必要ないが、従事作業者への負担が大きく危険作業を伴ってしまうという問題点があった。
また、堆積物除去を容易にするために行うグリースの塗布では、塗装場所の周囲や製品などへ飛散するなど汚染の問題、熱や水に晒される場所では使用できないという問題点があり、フィルム、テープ等を貼る方法では、これに付着する塗膜の重さに耐えられず、形成された塗膜が剥落して周囲に飛散するなど、こまめに取りかえる必要性が生じ、大量の産業廃棄物が発生してしまうという問題点があった。
いずれの場合にも作業効率が低くその改善が望まれていた。
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、塗装冶工具や塗装用ブースの壁面、床等に付着した堆積塗膜を容易に剥離することができる塗膜の剥離方法及び塗膜剥離用マスキング材を提供することを目的とする。
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、下地基材に堆積される塗料堆積物を前記下地基材から剥離する塗膜の剥離方法であって、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とし、硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上の樹脂組成物を剥離用皮膜として、下地基材上に形成され、剥離用皮膜を硬化させ、剥離用皮膜上に塗料堆積物が堆積された後に、下地基材から剥離用皮膜が引き剥がされることを特徴とする。
本発明は、上記塗膜の剥離方法において、剥離用皮膜上に剥がししろが接着され、当該剥がししろが接着された剥離用皮膜上に塗料堆積物が堆積されるものであり、剥がししろを引っ張ることで、下地基材から剥離用皮膜が引き剥がされることを特徴とする。
本発明は、上記塗膜の剥離方法において、剥がししろ近辺に堆積された塗料堆積物に切り込みを形成して剥がししろを露出させ、当該露出させた剥がししろを引っ張ることで、下地基材から剥離用皮膜が引き剥がされることを特徴とする。
本発明は、上記塗膜の剥離方法において、剥離用皮膜を形成する前に、下地基材に離型剤を塗布しておき、剥離用皮膜には揺変性付与剤が含有されていることを特徴とする。
本発明は、下地基材に堆積される塗料堆積物を下地基材から剥離するための下地基材をマスキングする塗膜剥離用マスキング材であって、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とする熱硬化性樹脂組成物であり、硬化剤、硬化促進剤、揺変性付与剤が配合されており、硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上のものを用いるものであることを特徴とする。
本発明は、下地基材に堆積される塗料堆積物を下地基材から剥離するための下地基材をマスキングする塗膜剥離用マスキング材であって、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とする熱硬化性樹脂組成物であり、硬化剤、硬化促進剤、揺変性付与剤が配合されており、硬化物として破断までの引張り伸び率が、25%以上のものを用いるものであることを特徴とする。
本発明は、上記塗膜剥離用マスキング材において、熱硬化性樹脂組成物には、揺変性付与助剤が添加されていることを特徴とする。
本発明は、上記塗膜剥離用マスキング材において、熱硬化性樹脂組成物には、空気乾燥性付与剤が添加されていることを特徴とする。
本発明は、上記塗膜剥離用マスキング材において、ラジカル共重合不飽和樹脂に対する重合性不飽和単量体の配合量は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性不飽和単量体の合計100重量部に対して、重合性不飽和単量体が、20〜70重量部であることを特徴とする。
本発明は、上記塗膜剥離用マスキング材において、熱硬化性樹脂組成物と揺変性付与剤との配合比は、熱硬化性樹脂組成物と揺変性付与剤の合計100重量部に対して、揺変性付与剤が0.5重量部〜6重量部であることを特徴とする。
本発明によれば、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とし、硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上の樹脂組成物を剥離用皮膜として、下地基材上に形成し、剥離用皮膜を硬化させ、剥離用皮膜上に塗料堆積物が堆積された後に、下地基材から剥離用皮膜を引き剥がす塗膜の剥離方法としているので、下地基材から容易に塗料堆積物が堆積された剥離用皮膜を剥離することができる効果がある。
本発明によれば、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とする熱硬化性樹脂組成物であり、硬化剤、硬化促進剤、揺変性付与剤が配合されており、硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上のものを用いる塗膜剥離用マスキング材としているので、マスキング部材上に堆積された塗料堆積物をマスキング部材と共に下地基材から容易に剥離できる効果がある。
本発明によれば、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とする熱硬化性樹脂組成物であり、硬化剤、硬化促進剤、揺変性付与剤が配合されており、硬化物として破断までの引張り伸び率が、25%以上のものを用いる塗膜剥離用マスキング材としているので、マスキング部材上に堆積された塗料堆積物をマスキング部材と共に下地基材から容易に剥離できる効果がある。
塗料堆積後の断面図である。 剥離用皮膜の塗布時の断面図である。 剥離用皮膜の形成後の断面図である。 剥がししろ接着後の断面図である。 塗料堆積後の断面図である。 塗料堆積物への切り込み状況の断面図である。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る塗膜の剥離方法(本剥離方法)は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とし、硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上の樹脂組成物を剥離用皮膜として、下地基材上(下地基材表面)に形成して硬化させ、その剥離用皮膜上に塗料堆積物が堆積された後に、下地基材から剥離用皮膜を引き剥がすことにより、下地基材から容易に塗料堆積物が堆積された剥離用皮膜を剥離することができるものである。
また、本発明の実施の形態に係る塗膜剥離用マスキング材(本マスキング部材)は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とする樹脂組成物であり、硬化剤、硬化促進剤、揺変性付与剤が配合されており、その硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上のものを用いるものであり、当該マスキング部材を下地基材上(下地基材表面)に塗布して硬化させることで、マスキング部材上に堆積された塗料堆積物をマスキング部材と共に下地基材から容易に剥離できるものである。
[本剥離方法:図1〜6]
本発明の実施の形態に係る塗膜の剥離方法(本剥離方法)について図1〜図6を参照しながら説明する。図1は、塗料堆積後の断面図であり、図2は、剥離用皮膜の塗布時の断面図であり、図3は、剥離用皮膜の形成後の断面図であり、図4は、剥がししろ接着後の断面図であり、図5は、塗料堆積後の断面図であり、図6は、塗料堆積物への切り込み状況の断面図である。
尚、図1,3が後述する実施例1〜6、図2が実施例1〜7、図4〜6が実施例7に関係している。
[剥離用皮膜、塗料堆積物の形成状態:図1]
下地基材2上に剥離用皮膜1が形成され、その上に塗料堆積物4が形成された状態が図1に示されている。
以下に、剥離用皮膜1、塗料堆積物4の形成方法、更に、剥離用皮膜1の剥離方法を説明する。
尚、図1では、塗料堆積物4を下地基材2上に堆積させたくない場合に、下地基材2と塗料堆積物4の間に剥離用皮膜1を形成するものであるが、下地基材2上に塗料堆積物4を堆積させる場合には、無論、剥離用皮膜1を設けないものである。
[剥離用皮膜の形成:図2,3]
本剥離方法は、図2,3に示すように、下地基材2上にエアスプレーガン、刷毛、ローラー等の塗装器具を使用して常温下で剥離用皮膜1を塗装し、硬化させる。
尚、予め下地基材2に離型剤を塗布することで、より剥離用皮膜1の剥離作業がしやすくできる。
剥離用皮膜(本マスキング部材)1は、具体的には後述するが、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とする樹脂組成物であり、その硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上のものを用いるものである。
また、剥離用皮膜1は、揺変性付与剤を含有し、チクソトロピー性を有するため、塗装時にタレの発生を抑え、均一なつなぎ目のない剥離用皮膜を形成できる。また、剥離用皮膜1に揺変性付与助剤を含有するようにしてもよい。
つまり、耐溶剤性、耐熱性、耐衝撃性に優れた熱硬化性樹脂の硬化物を剥離用皮膜1として用いることで、幅広い焼付け温度の塗料に対応できる。
[剥がししろ接着:図4]
下地基材2上に剥離用皮膜1が形成された状態で、図4に示すように、剥がししろ3を剥離用皮膜1の一部に接着する。剥がししろ3は、剥離用皮膜1、塗料堆積物4とは異種異形材を使用する。
剥がししろ3を両面テープ又は接着剤、粘着剤等で剥離用皮膜1に接着して、後に剥離用皮膜1を下地基材2から剥離する際に、剥がししろ3を引っ張ることで、容易に剥離用皮膜1を剥離できる。
[塗料堆積物の形成:図5]
更に、図5に示すように、剥離用皮膜1上に塗料堆積物4が堆積され、硬化させる。
[塗料堆積物への切り込み:図6]
そして、図6に示すように、塗料堆積物4にハツリ機具等で切り込みを形成し、剥がししろ3を露出させ、剥がししろ3を引っ張ることで、塗料堆積物4が堆積された剥離用皮膜1を下地基材2から剥離する。
[塗膜剥離用マスキング材]
次に、本発明の実施の形態に係る塗膜剥離用マスキング材(本マスキング部材:剥離用皮膜1)について具体的に説明する。
本マスキング部材は、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物に揺変性付与剤を添加したものを主成分とする熱硬化性樹脂組成物を使用する。
この樹脂組成物(本樹脂組成物)に、硬化促進剤と硬化剤を配合することで、常温硬化にて皮膜が形成できる。本樹脂組成物は、チクソトロピーを有し、簡易な塗装機具を使用して、常温下で塗装ができる。
本樹脂組成物を用いて、剥離用皮膜(本マスキング部材)1を形成するために、簡易な塗装機具として、エアスプレーガン、刷毛、ローラー等を使用して、0.1mm以上1.0mm以下の厚さ、さらに望ましくは、0.3mm〜1.0mmの厚さに塗装する。
0.1mm以下の場合、塗膜強度が低く、連続して剥がし難くなり、1.0mm以上の厚さでは、コスト高になる。
本樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等のラジカル共重合性不飽和樹脂とスチレン、メタアクリル酸等の重合性単量体の混合物を主成分とする樹脂であり、その硬化して破断までの引張り伸び率が、10%以上のものである。
これより伸び率が低い場合、硬化した皮膜が、硬く脆くなるため、皮膜が割れやすく、容易に堆積塗膜が剥がすことができない。また使用中に熱応力や物理的衝撃で割れてしまうことがある。
本樹脂組成物は、皮膜の形成時にタレや貫通ピンホール等、皮膜の欠陥を防ぐため、揺変性付与剤を含有し、チクソトロピー性を有するように調整する。チクソトロピー性がない場合は、垂れやすく、均一な膜厚が確保できなくなる。
本樹脂組成物は、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の常温で硬化するラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体を主成分とする。熱硬化性樹脂を使用することで、耐熱性、耐溶剤性、作業性等に優れた剥離用皮膜を得るものである。
[ラジカル共重合性不飽和樹脂]
次に、本樹脂組成物の成分であるラジカル共重合性不飽和樹脂について具体的に説明する。
このラジカル共重合性不飽和樹脂である、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等の組成は、特に限定されず公知慣用のものが使用できる。
[不飽和ポリエステル樹脂]
ラジカル共重合性不飽和樹脂である、不飽和ポリエステル樹脂の組成は、例えば、α,β−不飽和カルボン酸と多価アルコールとの反応で得られる。α,β−不飽和カルボン酸以外にも飽和カルボン酸を含んでいてもよい。
[α,β−不飽和カルボン酸]
α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロロマレイン酸、あるいは、これらのジメチルエステル類などが挙げられる。これらのα,β−不飽和カルボン酸はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[飽和カルボン酸]
また、飽和カルボン酸としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、テトラブロム無水フタル酸等が挙げられる。これらの飽和カルボン酸はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
[多価アルコール]
また、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2メチル−1,3プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA・アルキレンオキサイド付加物等のグリコール類などのジオール類、トリメチロールプロパンなどのトリオール類、ペンタエリスリトールなどのテトラオール類等が挙げられる。
また、樹脂に空気乾燥性を持たせるため、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トロプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル等のアリルエーテル類も使用される。
これらの多価アルコール類は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、臭素化飽和カルボン酸や、ジブロムネオペンチルグリコール等、臭素化グリコール等のハロゲン化物を選択的に使用することで、得られる樹脂組成物を難燃性にすることができる。
さらに、得られた不飽和ポリエステルをグリシジルメタアクリレート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等のエポキシ化合物類や、トルエンジイソシアネート、イソプロペニル−ジメチル−ベンジルイソシアネート等のイソシアネート化合物類で変性してもよい。
また、ジシクロペンタジエンを添加し、上記α,β−不飽和カルボン酸、飽和カルボン酸および多価アルコールと共に反応し得られるジシクロペンタジエン系不飽和ポリエステルにしてもよい。
[ビニルエステル樹脂]
次に、ラジカル共重合性不飽和樹脂である、ビニルエステル樹脂の組成について説明する。
ビニルエステル樹脂の組成は、例えば、エポキシ樹脂と不飽和一塩基酸との反応によって得られる反応生成物である。
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂としては、例えば、フェノール類のグリシジルエーテル類として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂類とその臭素化樹脂類、フェノールノボラック型エポキシ樹脂とその臭素化樹脂類、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールA・グリシジルエーテル等の多価アルコール類のグリシジルエーテル類、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ樹脂類、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル−p−オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル類、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリグリシジル−p一アミノフェノール、N,N−ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン類、1,3−ジグリシジル−5,5−ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレート等の複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
また、これらのエポキシ樹脂は単独もしくは2種以上を併用してもよい。
[不飽和一塩基酸]
不飽和一塩基酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、アクリル酸ダイマー、モノメチルマレート、モノメチルフマレート、モノシクロヘキシルフマレート、あるいはソルビン酸等が挙げられる。これら酸は単独もしくは、2種以上を併せて用いられる。
さらに、得られたビニルエステル樹脂を無水マレイン酸、無水コハク酸等の酸無水物類、トルエンジイソシアネート、イソプロペニル−ジメチル−ベンジルイソシアネートのようなイソシアネート化合物等で変性してもよい。
本実施の形態で用いられるラジカル共重合性不飽和樹脂である、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等は、単独あるいは2種類以上併用して使用してもよく、望ましくは、10%以上の伸び率を有する樹脂を単独あるいは、2種類以上併用し、あるいは、10%以下の伸び率の樹脂とブレンドして使用することで、耐衝撃性に優れた破断しにくい、引張り伸び率10%以上の樹脂組成物による剥離用皮膜を得ることができる。
さらに望ましくは、使用樹脂の引張伸び率が、より高伸び率のものを使用して、得られる樹脂組成物の引張り伸び率を25%以上にすることで、より連続して剥離しやすい剥離用皮膜を得ることができる。
[重合性不飽和単量体]
次に、本樹脂組成物の成分である重合性不飽和単量体について具体的に説明する。
この重合性不飽和単量体として使用できるモノマー成分としては、スチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸系モノマー及び(メタ)アクリル酸系エステル等が挙げられる。スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン(メチルスチレン)、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルベンジルアルキルエーテル等が挙げられる。
また、(メタ)アクリル酸系モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸グリセリルカーボネート、メタアクリル酸イソシアネートエチル、(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ベンジル、フェニル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ステアリル、ベヘニル、トリフルオロエチル等のエステル化合物等の単量体等が挙げられる。
また、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートやトリメチロールプロパントリアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等の多官能のアクリル系モノマーや、ジアリルフタレート等のアリル系モノマー等も挙げられる。
[ラジカル共重合不飽和樹脂と重合性不飽和単量体の配合量]
これらの重合性不飽和単量体は、単独あるいは2種類以上を併用して使用しても良く、上記のラジカル共重合不飽和樹脂に対する重合性不飽和単量体の配合量は、特に限定されるものではないが、剥離用皮膜の泡抜け、レベリングなどを考慮すると、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性不飽和単量体の合計100重量部に対して重合性不飽和単量体が、20〜70重量部の範囲が好ましい。
スチレンは、シックハウスの原因物質として厚生労働省の化学物質室内濃度指針に取り上げられるなど、スチレン以外の重合成不飽和単量体の使用を求められるため、環境配慮材料として、スチレン以外の重合性不飽和単量体を単独あるいは2種類以上を併用して使用することで、環境に配慮することができる。
[揺変性付与剤]
本実施の形態で用いられる樹脂組成物の揺変性付与剤としては、例えば、無水ケイ酸の微粉末(アエロジル)、ホワイトカーボン、アルミナ、ベントナイト、ケイ酸マグネシウム、水素添加ひまし油系、アマイド系、酸化ポリエチレン系、植物油重合油系、界面活性剤系等があり、また、これらを2種以上併用した複合系等が挙げられる。中でも特に、添加量が少量でも揺変性付与性に優れる無水ケイ酸の微粉末(アエロジル)が好ましい。
[揺変性付与助剤]
揺変性付与助剤としては、例えば、モノエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリヒドロキシカルボン酸アミド、有機4級アンモニウム塩、界面活性剤類、ポリカルボン酸のアマイド等が挙げられる。
[樹脂組成物と揺変性付与剤との配合比]
本実施の形態で用いられる樹脂組成物と揺変性付与剤との配合比は、樹脂組成物と揺変性付与剤の合計100重量部に対して、該揺変性付与剤が0.5重量部〜6重量部であることが塗布作業性の点から好ましい。
これより揺変性付与剤が少ない場合は、チクソトロピー性が十分でなく剥離用皮膜の形成時にタレが生じやすく、これより揺変性付与剤が多い場合は、粘度が高すぎて塗装し難く、また気泡を巻き込んだ皮膜になる等の塗膜欠陥が生じ易くなることから、塗布作業性と皮膜の状態から、揺変性付与剤の添加量は0.8重量部〜4重量部であることが、特に好ましい。
[空気乾燥性付与剤]
本樹脂組成物の組み合わせによっては、剥離用皮膜1の表面がベタツキを発生してしまうため、皮膜のベタツキ防止が必要な際は、空気乾燥性付与剤を添加することができ、例えば融点温度100F以上の石油系パラフィンワックスや石油系パラフィンワックスとヒドロキシポリエステルや極性物質と組み合わせたもの等が挙げられる。
また、中でも空気乾燥性付与剤としては、融点温度100F以上の石油系パラフィンワックスの添加が少量でかつ効果的であるが、過剰に添加すると、塗料を塗装する際、ハジキが発生しやすくなるため、その添加量は0.005重量部〜0.10重量部にすることが好ましい。
またその融点温度は、使用される条件に合わせて変更することができ、特に限定されるものではなく、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を併用してもよい。
[硬化促進剤]
本樹脂組成物の硬化促進剤としては、公知の酸化還元反応を有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、例えば、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン等の金属石鹸、コバルトアセチルアセトナート、バナジウムアセチルアセトナート等の金属キレート化合物、ジメチルアニリン、ジメチルトルイジン等のアミン化合物、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等を用いることができる。
これら硬化促進剤は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を併用して用いてもよい。上記硬化促進剤の使用量は、樹脂組成物の組成や使用する硬化剤あるいは該硬化促進剤の種類等に応じて、用途・環境に適した硬化時間になるように適宜設定されるものであり、特に限定されるものではない。これら硬化促進剤は予め樹脂組成物に含有させておいてもよく、あるいは、硬化剤添加直前に混合してもよい。
[硬化剤]
本樹脂組成物に利用できる硬化剤としては、特に限定されるものではなく、有機過酸化物やアゾ化合物等の従来公知のラジカル重合開始剤を使用することができる。
上記硬化剤のうち、有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、t−ブチルグミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル;ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシシカーボネート等のパーカーボネート;等が挙げられる。
また、アゾ化合物としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等が挙げられる。これら硬化剤は、一種類のみを用いてもよいし、適宜二種類以上を併用して用いてもよい。
上記硬化剤の使用量は、用途・使用環境に適した硬化時間になるように適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
[硬化温度]
また、これら硬化剤や硬化促進剤を使用して、樹脂組成物の硬化を行う際の硬化温度は、これら硬化剤や硬化促進剤の種類や添加量あるいはその他の条件により異なり、特に限定されるものではないが、好ましくは5℃以上の条件である。これより低温の場合、硬化時間が長くなる。硬化時間を短縮するには、温風養生などを適宜使用することができる。
[重合禁止剤]
本樹脂組成物に利用できる重合禁止剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知の重合禁止剤を用いることができる。
例えば、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、t−ブチルハイドロキノン、トルハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ナフトキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ナフテン酸銅、塩化銅等が挙げられる。
これらの重合禁止剤は、一種のみを用いても良く、また、二種以上を適宜混合して用いても良い。尚、上記重合禁止剤の添加量は、特に限定されるものではなく必要な作業時間に合わせて調整することができる。
[その他の添加剤]
本樹脂組成物は、必要に応じて、ラジカル重合性不飽和樹脂と重合性不飽和単量体、揺変性付与剤、揺変性付与助剤、硬化促進剤、硬化剤、空気乾燥性付与剤以外の成分として、通常用いられる常用の添加剤、例えば、充填剤、着色剤、ホルマリンキャッチャー剤、難燃剤、内部離型剤、可塑剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲内で含んでいてもよい。
本樹脂組成物に添加する添加剤については、特に限定されるものではないが従来公知の各種添加剤が使用できる。
[充填剤]
充填剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、タルク、珪砂、炭酸カルシウム、酸化アンチモン類、シリカ、有機または無機系の中空バルーン等が上げられる。
[着色剤]
着色剤としては、例えば、有機顔料、無機顔料、染料等が挙げられる。
[ホルマリンキャッチャー剤]
ホルマリンキャッチャー剤としては、例えば、2−イミダゾリジノン、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン等の環式アミン化合物が挙げられる。
その添加量は、ラジカル共重合性不飽和樹脂100重量部に対して、1重量部〜5重量部の範囲内で用いることが望ましい。これより少ない場合ホルマリン吸着効果が十分に得られない、また多すぎる場合コスト高になる。
[難燃剤]
さらに、樹脂硬化物に難燃性を付与する為に、難燃剤としては、赤燐系化合物、有機リン系化合物、ハロゲン系化合物等、また併用される難燃充填材としては、三酸化アンチモン、塩素化パラフィン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、樹脂組成物に、ハロゲン化物を含有組成とした、ラジカル重合性不飽和樹脂を使用することで、難燃性能を向上することができる。
[内部離型剤]
内部離型剤としては、フッ素系、シリコーン系、アルキル第4級アンモニウム塩、酸性リン酸エステル、流動パラフィン、ワックス、高級脂肪酸及びその金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪族アルコール、ビスアミド類、ポリシロキサン類、脂肪族アミンエチレンオキシド付加物、及びポリエーテル置換基を有するリン酸エステル等が挙げられる。
[可塑剤]
また、可塑剤としては、フタル酸エステル、塩素化パラフィン、リン酸エステル等が挙げられる。
[樹脂組成物の繊維強化]
また、本発明の樹脂組成物を繊維強化して使用する場合に、配合あるいは含浸させる繊維としては、例えば、無機繊維として、ガラス繊維、炭素繊維等、有機繊維として、アミラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維等を用いることができる。
[熱硬化性樹脂]
さらに、本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で、熱硬化性樹脂例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等、熱可塑性樹脂として、ポリスチレン、飽和ポリエステル、酢酸ビニル、アクリル酸系ポリマー、ゴム類等を含んでいてもよい。
[離型剤の塗布]
さらに、本発明の樹脂組成物により形成された、剥離用皮膜1によって、堆積塗膜4の剥離をさらに容易にするために、樹脂組成物塗布前に、FRP成型等に使用される、離型剤を塗布してもよい。
冶具やブース等に離型剤だけ塗布した場合、塗料の塗装時にハジキが発生し、周囲を汚染してしまうが、本樹脂組成物にて、剥離用皮膜1を形成することで、塗料のハジキが無い皮膜を形成できる。
離型剤の種類は、特に限定されるものではないが、FRP成型に一般に使用される、カルナバロウ系、シリコーン系、フッ素系、ワックス系、ポリビニルアルコール系、合成樹脂系等が挙げられる。
[剥がししろの利用]
さらに、本樹脂組成物により形成された剥離用皮膜1に、板状、管状、環状等の異種異形材料を剥がししろ3として併用することで、さらに容易に堆積塗膜4を剥がすことができる。
つまり、剥離用皮膜1に接着した剥がししろ3を引っ張ることで、堆積塗膜4が堆積された剥離用皮膜1を容易に下地基材2から剥離できる。
この剥がししろ3は、塗料の付着性や耐熱性等に問題がないものとし、特に材質及び、形状、取り付け方法を限定するものではなく、熱可塑性及び熱硬化性樹脂や木、金属等の材質が利用でき、樹脂組成物の塗布前にテープや粘着剤等で塗装冶具等に取り付けてもよいし、樹脂組成物形成後に、テープや接着剤、粘着剤等で貼り付けてもよい。
[実施の形態の効果]
本剥離方法によれば、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とし、硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上の樹脂組成物を剥離用皮膜1として、下地基材2上に形成して硬化させ、その剥離用皮膜1上に塗料堆積物4が堆積された後に、下地基材2から剥離用皮膜1を引き剥がすことにより、下地基材2から容易に塗料堆積物4が堆積された剥離用皮膜1を剥離することができる効果がある。
本マスキング部材によれば、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とする樹脂組成物であり、硬化剤、硬化促進剤、揺変性付与剤が配合されており、その硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上のものを、塗装作業において、予め下塗として、塗装治工具や塗装ブースの壁面等に塗装して剥離用皮膜1として形成しておくものであり、当該マスキング部材を下地基材上に塗布して硬化させることで、マスキング部材(剥離用皮膜1)上に堆積された塗料堆積物4をマスキング部材と共に下地基材2から容易に剥離できる効果がある。
以下に実施例を挙げて以下に本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。また、以下の文中の「部」は、特に断りのない限り重量基準である。
尚、ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物としては、一般に販売されている不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等を用いることができる。
[実施例1]
揺変付与剤を含有せず、チクソトロピー性を有さない、熱硬化性ラジカル硬化性樹脂して、引張伸び率3.2%の硬化物物性を持つ、不飽和ポリエステル樹脂A(スチレン含有量45%)100重量部に、硬化促進剤として、ナフテン酸コバルト溶液(6%)を0.5重量部、顔料としてトーナーホワイト(商品名:大泰化工(株)製)を3重量部添加することで、粘度500mPa・sの粘度特性を持ち、硬化物の物性が、引張伸び率3.2%の樹脂組成物Aを得た。
樹脂組成物A100重量部に、硬化剤として、パーメックN(商品名:日油(株)製)を1.0重量部添加し混合したものを下地基材2として鉄製の角材に、刷毛塗りで塗装し、常温下で硬化させ、膜厚約0.2mmの剥離用皮膜1を得た。
[実施例2]
引張伸び率3.2%の硬化物物性を持つ樹脂A(スチレン含有量45%)100重量部に、アエロジル#200(商品名:日本アエロジル(株)製)を2.0重量部添加し、ディゾルバー分散したものに、硬化促進剤として、ナフテン酸コバルト溶液(6%)を0.5重量部、粘度調整として、スチレンを10重量部、顔料として、トーナーホワイト(商品名:大泰化工(株)製)を3重量部添加することで、粘度1500mPa・s、揺変度3.4の粘度特性を持ち、硬化物の物性が、引張伸び率3.0%の樹脂組成物Bを得た。
樹脂組成物B100重量部に硬化剤として、パーメックN(商品名:日油(株)製)を1.0重量部添加し混合したものを、下地基材2として鉄製の角材へ刷毛塗りで塗装し、常温下で硬化させ、膜厚約0.5mmの剥離用皮膜1を得た。
[実施例3]
引張伸び率80%の硬化物物性を持つ樹脂B(スチレン含有量38%)50重量部と引張伸び率3.2%の硬化物物性を持つ樹脂A(スチレン含有量45%)50重量部をブレンドして、引張伸び率12%の硬化物物性を持つ樹脂Cを得た。
樹脂C100重量部に、アエロジル#200(商品名:日本アエロジル(株)製)を2.0重量部添加し、ディゾルバー分散したものに、硬化促進剤として、ナフテン酸コバルト溶液(6%)を0.5重量部、粘度調整として、スチレンを10重量部、顔料として、トーナーホワイト(商品名:大泰化工(株)製)を3重量部添加することで、粘度1600mPa・s、揺変度3.6の粘度特性を持ち、硬化物の物性が、引張伸び率10%の樹脂組成物Cを得た。
樹脂組成物C100重量部に硬化剤として、パーメックN(商品名:日油(株)製)を1.0重量部添加し混合したものを、下地基材2として鉄製の角材へ刷毛塗りで塗装し、常温下で硬化させ、膜厚約0.5mmの剥離用皮膜1を得た。
[実施例4]
引張伸び率80%の硬化物物性を持つ樹脂B(スチレン含有量38%)70重量部と引張伸び率3.2%の硬化物物性を持つ樹脂A(スチレン含有量45%)30重量部をブレンドして、引張伸び率27%の硬化物物性を持つ樹脂Dを得た。
樹脂D100重量部に、アエロジル#200(商品名:日本アエロジル(株)製)を2.0重量部添加し、ディゾルバー分散したものに、硬化促進剤として、ナフテン酸コバルト溶液(6%)を0.5重量部、粘度調整として、スチレンを9重量部、顔料として、トーナーホワイト(商品名:大泰化工(株)製)を3重量部添加することで、粘度1500mPa・s、揺変度3.4の粘度特性を持ち、硬化物の物性が、引張伸び率25%の樹脂組成物Dを得た。
樹脂組成物D100重量部に硬化剤として、パーメックN(商品名:日油(株)製)を1.0重量部添加し混合したものを、下地基材2として鉄製の角材へ刷毛塗りで塗装し、常温下で硬化させ、膜厚約0.5mmの剥離用皮膜1を得た。
[実施例5]
引張伸び率80%の硬化物物性を持つ樹脂B(スチレン含有量38%)100重量部に、アエロジル#200(商品名:日本アエロジル(株)製)を2.0重量部添加し、ディゾルバー分散したものに、硬化促進剤として、ナフテン酸コバルト溶液(6%)を0.5重量部、粘度調整として、スチレンを9重量部、顔料として、トーナーホワイト(商品名:大泰化工(株)製)を3重量部添加することで、粘度1550mPa・s、揺変度3.6の粘度特性を持ち、硬化物の物性が、引張伸び率76%の樹脂組成物Eを得た。
樹脂組成物E100重量部に硬化剤として、パーメックN(商品名:日油(株)製)を1.0重量部添加し混合したものを、下地基材2として鉄製の角材へ刷毛塗りで塗装し、常温下で硬化させ、膜厚約0.5mmの剥離用皮膜1を得た。
[実施例6]
実施例4の樹脂組成物Eを塗布する前に、ワックス系離型剤ミラーグレースNo8(商品名:マグワィアー社製)を下地基材2として鉄製の角材へ塗布し、拭き取り処理を行う。その後樹脂組成物E100部に硬化剤として、パーメックN(商品名:日油(株)製)を1.0重量部添加し混合したものを、刷毛塗りで塗装し、常温下で硬化させ、膜厚約0.5mmの剥離用皮膜1を得た。
[実施例7]
実施例4と同様の手順で得られた剥離用皮膜1に、剥がししろ3として異種材料のポリエチレン製のL字板を面の一部に両面テープで貼り付け、異種異形材料の剥がししろ3が一体化した剥離用皮膜1を得た(図3参照)。
実施例1〜7で得られた剥離用皮膜1付き下地基材2に、2成分型アクリルウレタン塗料として、ウレタン#5500 ホワイト及びブラック(商品名:大泰化工(株)製)をそれぞれ数十回塗り重ねて、硬化させ、約5mm厚の堆積塗膜4を得た。
[表1:実施例1〜5の樹脂組成物の配合、液状性状、硬化物の引張物性]
表1に実施例1〜5の樹脂組成物の配合及び、液状性状、硬化物の引張物性を示す。
Figure 2012170831
実施例1〜5の硬化物物性の測定方法は、JIS K7113に、粘度・揺変度の測定方法は、JIS K6901 5.5 5.6に準ずる。
[表2:実施例1〜5の塗装性、剥離性等]
表2に実施例1〜5に対する評価結果と比較例1として下地基材2である鉄製の角材に、実施例1〜5と同様に直接塗料を塗装したものを合わせて示す。
実施例1では、揺変特性が無い為、垂れやすく、垂直面では剥離用皮膜1の形成が困難で、結果的に0.2mm程度の膜厚しか得られなかった。
実施例2〜5は、揺変付与剤を添加して、チクソトロピー性を持たしたものである。粘度特性により、塗装時に垂れ難く、均一なつなぎ目の無い0.5mm程度の剥離用皮膜1が容易に得られた。
実施例1〜5において、樹脂組成物の硬化調整は、気温に合わせて、硬化剤と硬化促進剤の添加量を調整する等で、容易にコントロールが可能である。
本実施例においては、室温25℃下にて、3時間後に硬化した皮膜が得られた。
耐衝撃性試験として、鉄製ハンマーにて、打撃試験を行った。伸び率の低い実施例1と
実施例2は、容易に割れが発生して飛び散ってしまったが、実施例3は、打撃の衝撃で部分的にひび割れが発生したものの、容易に皮膜が剥離するには至らなかった。実施例4及び実施例5は、衝撃で打痕が付くものの、ひび割れや剥離等の不具合の発生が無かった。
塗料保持性として、実際に塗料のハジキ、タレ落ち等確認したが、比較例1及び、実施例1〜5で特に問題は見られなかった。
堆積塗膜の剥離方法として、ケレン・ハツリ機具として、ディスクグラインダーを使用した。塗装前に未処理の比較例1では、塗料が密着しているため、容易に剥がすことはできず、堆積塗膜4を除去するには、ディスクグラインダーで削り取る必要があった。
実施例1〜5の剥離では、ケレン・ハツリ機具として、ディスクグラインダーを使用した。伸び率の低い実施例1及び実施例2は、下地基材2に剥離用皮膜1が密着していないので、容易に剥離用皮膜1が下地基材2から浮くが、皮膜が硬く脆いため、衝撃で堆積塗膜4と一緒に割れてしまい、連続性の無い小さな剥離片になり周囲に飛び散ってしまった。そのため堆積塗膜は容易に剥がすことができなかった。
実施例3及び実施例4、実施例5は、同様に容易に剥離用皮膜1が浮き、連続して剥がすことができるが、実施例3では、まだ剥離用皮膜1の柔軟性が不足しているため頻繁に堆積塗膜3と一緒に割れてしまった。実施例5及び実施例6では、剥離用皮膜1の柔軟性が十分にあり、堆積塗膜3を連続して剥がすことが可能であった。
Figure 2012170831
[表3:実施例4,6,7の堆積塗膜の剥離性]
実施例4及び実施例6、実施例7における堆積塗膜4の剥離性の比較結果を表3に示す。
実施例3、実施例4、実施例6及び実施例7の堆積塗膜4の剥離性を比較した。
実施例3、実施例4及び実施例6では、堆積塗膜4の表面が均一のため、剥がし始める場所の特定が無く、また実施例3では、皮膜が割れやすく連続して剥がせなかった。
実施例7では、剥がししろ3を起点にハツリ機具にて堆積塗膜4を切断し剥がし始めることができる為、剥離作業が非常に容易になった(図6参照)。
実施例6では、実施例4と比較して、離型剤の作用により、剥離用皮膜1が浮きやすいため、連続して堆積皮膜4が剥がしやすくなった。
Figure 2012170831
未処理状態の比較例1、実施例1、実施例2と比較して、堆積塗膜4の剥離に関して、実施例3〜7の樹脂組成物による剥離用皮膜1を予め形成することで、堆積塗膜4を容易に剥がすことができるようになった。
本発明は、堆積塗膜を容易に剥離することができる塗膜の剥離方法及び塗膜剥離用マスキング材に好適である。
1...剥離用皮膜、 2...下地基材(鉄製角材)、 3...剥がししろ、 4...堆積塗膜、 5...ハツリ機具(ディスクサンダー)、 6...塗装機具(スプレー、ローラー刷毛)

Claims (10)

  1. 下地基材に堆積される塗料堆積物を前記下地基材から剥離する塗膜の剥離方法であって、
    ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とし、硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上の樹脂組成物を剥離用皮膜として、前記下地基材上に形成され、前記剥離用皮膜を硬化させ、前記剥離用皮膜上に塗料堆積物が堆積された後に、前記下地基材から前記剥離用皮膜が引き剥がされることを特徴とする塗膜の剥離方法。
  2. 剥離用皮膜上に剥がししろが接着され、当該剥がししろが接着された剥離用皮膜上に塗料堆積物が堆積されるものであり、
    前記剥がししろを引っ張ることで、下地基材から前記剥離用皮膜が引き剥がされることを特徴とする請求項1記載の塗膜の剥離方法。
  3. 剥がししろ近辺に堆積された塗料堆積物に切り込みを形成して前記剥がししろを露出させ、当該露出させた剥がししろを引っ張ることで、下地基材から前記剥離用皮膜が引き剥がされることを特徴とする請求項2記載の塗膜の剥離方法。
  4. 剥離用皮膜を形成する前に、下地基材に離型剤を塗布しておき、前記剥離用皮膜には揺変性付与剤が含有されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の塗膜の剥離方法。
  5. 下地基材に堆積される塗料堆積物を前記下地基材から剥離するための前記下地基材をマスキングする塗膜剥離用マスキング材であって、
    ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とする熱硬化性樹脂組成物であり、硬化剤、硬化促進剤、及び揺変性付与剤が配合されており、硬化物として破断までの引張り伸び率が、10%以上のものを用いるものであることを特徴とする塗膜剥離用マスキング材。
  6. 下地基材に堆積される塗料堆積物を前記下地基材から剥離するための前記下地基材をマスキングする塗膜剥離用マスキング材であって、
    ラジカル共重合性不飽和樹脂と重合性単量体の混合物を主成分とする熱硬化性樹脂組成物であり、硬化剤、硬化促進剤、及び揺変性付与剤が配合されており、硬化物として破断までの引張り伸び率が、25%以上のものを用いるものであることを特徴とする塗膜剥離用マスキング材。
  7. 熱硬化性樹脂組成物には、揺変性付与助剤が添加されていることを特徴とする請求項5又は6記載の塗膜剥離用マスキング材。
  8. 熱硬化性樹脂組成物には、空気乾燥性付与剤が添加されていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか記載の塗膜剥離用マスキング材。
  9. ラジカル共重合不飽和樹脂に対する重合性不飽和単量体の配合量は、前記ラジカル共重合性不飽和樹脂と前記重合性不飽和単量体の合計100重量部に対して、前記重合性不飽和単量体が、20〜70重量部であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれか記載の塗膜剥離用マスキング材。
  10. 熱硬化性樹脂組成物と揺変性付与剤との配合比は、前記熱硬化性樹脂組成物と前記揺変性付与剤の合計100重量部に対して、前記揺変性付与剤が0.5重量部〜6重量部であることを特徴とする請求項5乃至9のいずれか記載の塗膜剥離用マスキング材。
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