JP2012166483A - プラスチック字消し - Google Patents

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Abstract

【課題】特にコピー用紙、画用紙に対する消字率や、プラスチックに対する可塑剤の耐移行性に優れ、かつ、人体や環境に対する負荷が極めて少ない安全な字消しを提供する。
【解決手段】基材樹脂、可塑剤及び充填剤を含有するプラスチック字消しにおいて、可塑剤として、アルキルスルフォン酸フェニルエステルと、一般式(1)で表わされるシクロヘキサンジカルボン酸エステルを配合する。
【化1】

[式中、R、Rは互いに独立して、炭素数1〜20のアルキル基を表す。]
【選択図】なし

Description

本発明は、プラスチック字消しに関し、更に詳しくは、従来品と比較して特にコピー用紙、画用紙に対する消字率が高く、可塑剤の耐移行性に優れ(すなわち、可塑剤の移行量が少ない)、人体及び環境に対する負荷が少ない安全な字消しに関する。
プラスチック字消し(通称、消しゴム)は、高い消字性を有することから、筆記具の消去に欠かせないものとして、広範に使用されている。プラスチック字消しは、一般に基材樹脂に可塑剤及び充填剤を配合し、更に必要に応じて安定剤、着色料、香料等の字消し材料を適宜添加して混合撹拌した後、プレス成形、押出成形、射出成形などの成形方法により加熱、成形して製造されている。
プラスチック字消し用の基材樹脂としては、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂などが挙げられるが、基材樹脂の主流は、高い消字性を有することから、塩化ビニル樹脂である。
一方、可塑剤は、基材樹脂に柔軟性、耐久性、耐寒性、電気特性等を付与するために用いられているが、プラスチック字消しにおいては、消字性の側面から、消字対象物質である黒鉛等に親和性のある可塑剤が多用されている。従来フタル酸系のものが多く使用されており、その中でもフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−ブチルなどが一般的に使用されてきた。
しかしながら、近年人体及び環境への影響を考慮し、プラスチック製品、特に玩具や食品用の包装容器などへの可塑剤の使用は控えられる傾向にある。字消しも例外ではなく、従来使用されてきた可塑剤の使用を抑制すべく、消字率など性能面では従来の可塑剤と同等もしくはそれ以上の性能を有し、かつ、人体、環境への影響の少ない、安全な可塑剤を用いた字消しが望まれている。
特許文献1には、塩化ビニル樹脂に、可塑剤としてアルキルスルフォン酸フェニルエステルを配合したプラスチック字消しであって、消字率が高く、可塑剤の耐移行性にも優れる、安全な字消しが開示されている。しかしながら、コピー用紙や画用紙等の白色度が低い紙に濃い鉛筆で筆記した画線に対する消字率は、JIS規定の値以上にはなるものの、さらなる改良が望まれていた。更に、可塑剤の耐移行性についても改良の余地があった。
一方、特許文献2、3には、ジイソノニルフタレートの水素添加によって得られる、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソノニルエステルをプラスチック製造のための可塑剤や、字消しの可塑剤として使用することが記載されている。
特許文献3には、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステルは、ゲル化温度が高く、140℃でもペースト状のプラスチゾルの状態を維持しているので、塩化ビニル樹脂と可塑剤とがゲル化しない状態で均一になる利点を有しており、この可塑剤を塩化ビニル樹脂に配合した字消しは、消し屑のまとまり性に優れていることが記載されている。
しかしながら、可塑剤としてシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステルを単体で配合したプラスチック字消しは、折れ易い欠点がある。
特開2005−138359号公報(請求項1等) 特表2003−503526号公報(請求項3等) 特開2010−167717号公報(請求項1、段落[0012]、[0014]、[0016]−[0018])
本発明は、特にコピー用紙、画用紙に対する消字率に優れ、更には、プラスチックに対する可塑剤の耐移行性に優れ、かつ、人体や環境に対する負荷が極めて少ない安全な字消しを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、基材樹脂、可塑剤及び充填剤を含有するプラスチック字消しにおいて、可塑剤として、アルキルスルフォン酸フェニルエステルと、一般式(1)で表わされるシクロヘキサンジカルボン酸エステルを配合したことを特徴とするプラスチック字消しを提供する。
本発明のプラスチック字消しにおいては、アルキルスルフォン酸フェニルエステルとシクロヘキサンジカルボン酸エステルの配合比(質量比)が、10/90〜85/15の範囲であることが好ましい。該プラスチック字消しにおいては、基材樹脂が塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。
以上のとおり、本発明によれば、可塑剤として、アルキルスルフォン酸フェニルエステルとシクロヘキサンジカルボン酸エステルとを配合することにより、特にコピー用紙、画用紙に対する消字率に優れるとともに、プラスチックに対する可塑剤の耐移行性に優れる字消しが提供される。また、本発明の字消しは、人体、環境に対する負荷が極めて少なく、安全性が高く、耐環境汚染性に優れる。
本発明に用いられる基材樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリイソプレン(天然ゴム)、スチレン系、ブタジエン系、イソプレン系、エチレン−プロピレン系、ニトリル系、クロロプレン系、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、オレフィン系のエラストマー等が挙げられる。これらの基材樹脂は単独で又は必要に応じて2種類以上組み合わせて用いられる。これらの樹脂の中でも、可塑剤との混和が容易で消字力に優れる塩化ビニル系樹脂が特に好ましい。
塩化ビニル系樹脂としては、従来用いられている塩化ビニル系樹脂を全て用いることができ、例えば、重合度400〜3000程度のポリ塩化ビニルの他、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニリデン、塩化ビニル−アクリル酸メチル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸メチル共重合体、及び塩化ビニル−アクリル酸オクチル共重合体が挙げられる。これらは単独で又は必要に応じて2種類以上組み合わせて用いられる。塩化ビニル系樹脂としてはペーストレジンが可塑剤等との混和、加工が容易な点で好ましい。
本発明において、可塑剤として用いられるアルキルスルフォン酸フェニルエステルは、炭素数が12〜20のアルキル基を有するアルキルスルフォン酸フェニルエステルが挙げられ、バイエル社製の「メザモール」(登録商標)等が挙げられる。この可塑剤は、食品用途に推奨されており、環境ホルモンとして働く可能性は現在指摘されておらず、安全性が高いことが確認されている。
また、本発明によるプラスチック字消しにおいて、可塑剤として用いられるシクロヘキサンジカルボン酸エステルは、下記式(1)で表わされる。

[式中、R、Rは互いに独立して、炭素数1〜20のアルキル基を表す。]
、Rは、同じ又は異なっていてよい。R、Rは、直鎖又は分岐鎖である炭素数1〜20のアルキル基、好ましくは炭素数3〜18のアルキル基、特に好ましくは炭素数7〜13のアルキル基である。このようなアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−オクチル及び2−エチルヘキシル、n−ノニル、イソ−ノニル、n−デシル、イソ−デシル、n−ウンデシル、イソ−ウンデシル、n−ドデシル、イソ−ドデシル、n−トリデシル、イソ−トリデシル、ステアリル及びn−エイコシル等が挙げられる。R、Rは、シクロアルキル基、アルコキシアルキル基であってもよい。
シクロヘキサンジカルボン酸エステルは、シクロヘキサンジカルボン酸のジエステルである。シクロヘキサンジカルボン酸エステルは、アルキル基が異なる2以上のエステルからなる混合物であってよく、アルキル基の異なるアルコールとシクロヘキサンジカルボン酸との混合エステルであってもよい。また、シクロヘキサンジカルボン酸エステルには、本発明による効果を阻害しない範囲で、無水物等が含まれていてもよい。
シクロヘキサンジカルボン酸エステルは、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステル、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸エステル及びシクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸エステルである。本発明では、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステルが好ましい。
シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステルの具体例としては、例えば、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ブチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−tert−ブチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソブチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソペンチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソヘプチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−オクチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソオクチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−2−エチルヘキシルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ノニルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソノニルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−デシルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソデシルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−ウンデシルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソドデシルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−オクタデシルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソオクタデシルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジ−n−エイコシルエステル等のエステル;シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−tert−ブチル−n−ブチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イソブチル−n−ブチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−n−ヘキシル−n―ブチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−n−オクチル−n−ブチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−n−ノニル−n−ブチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イソノニル−n−ブチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イソドデシル−n−ブチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸−n−トリデシル−n−ブチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イソトリデシル−n−ブチルエステル等の混合エステルが挙げられる。
シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸エステル、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸エステルの場合も、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸エステルと同様のアルキル基を有するエステル、ならびに混合エステルを挙げることができる。
上記のシクロヘキサンジカルボン酸エステルの中でも、R、Rが、炭素数7〜13のアルキル基であるのが好ましく、例えば、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソペンチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソヘプチルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソノニルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジノニルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソデシルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のジ(C7−11)アルキルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のジ(C9−11)アルキルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のジ(C7−9)アルキルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸のジ(C8−13)アルキルエステル等である。市販品としては、BASF社製の「Hexamoll(登録商標)DINCH」が挙げられる。
BASF社製の「Hexamoll(登録商標)DINCH」は、食品包装用フィルム、キャップ、王冠コルク、人工ワインコルク、パッキン、調理用手袋などの食品接触製品に使用され、EFSA承認、EU指令2002/72/EC、ドイツBfR(ドイツ連邦リスク評価研究所)−食品接触用途のプラスチックに関する勧告、JHPA(日本塩ビ食品衛生協議会)承認を受けている。また医療では、呼吸器チューブ、カテーテル、呼吸マスクなどに使用され、生殖障害性なし、精巣毒性なし、生殖機能障害なし、催奇形性なし、内分泌撹乱作用なし、ペルオキシソーム増殖作用なし、発ガン性なし、環境的危険性なしとなっている。更に、玩具にあたる工作用粘土、人形、ベビー用品などにも使用され、EU指令2005/84/EC(改定22版):欧州、カリフォルニア、ブラジル(3歳以下の子供用玩具に適用)、理事会指令76/769§EN71−3 §EN71−5 §EN71−9、EFSA承認など安全性は高いことが確認されている。これに類似するシクロヘキサンポリカルボン酸及びその誘導体は、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステルならびに無水エステルがあり、これらも安全性が高いという報告がされている。
本発明の字消しにおける上記可塑剤の配合量は、基材樹脂100質量部に対し、合計で140〜200質量部とすることが好ましく、より好ましくは150〜170質量部である。可塑剤の配合量が140質量部以上であれば、字消しが硬くなりすぎることで消字率が低下するおそれがなく、一方200質量部以下であれば、字消しが柔らかくなりすぎることで良好な字消し性能が発現しなくなるおそれがない。
アルキルスルフォン酸フェニルエステルとシクロヘキサンジカルボン酸エステルの配合比(質量比)は、5/95〜95/5の範囲であれば良いが、より好ましくは10/90〜85/15の範囲である。この範囲で配合することにより、折れにくい字消しが得られるとともに、消字率及び耐折れ性において相乗効果が発現する。さらに好ましくは、10/90〜70/30の範囲であり、それぞれ単体で配合した場合に比べて、可塑剤の移行量が減少する。その理由は明らかではないが、アルキルスルフォン酸フェニルエステルは基材樹脂との相溶性が良好で、一方シクロヘキサンジカルボン酸エステルは基材樹脂との相溶性はやや劣るが、両者が併用されることにより、平面的構造のアルキルスルフォン酸フェニルエステルと嵩高構造のシクロヘキサンジカルボン酸エステルとの分子間相互作用により、基材樹脂との親和性が高まるものと推察される。
上記の可塑剤には、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の可塑剤を配合することもできる。他の可塑剤の配合量は、基材樹脂100質量部に対し、0〜60質量部であることが好ましい。
配合する可塑剤としては、例えば、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソデシルトリメリテート(TIDTM)、トリイソオクチルトリメリテート(TIOTM)、トリイソノニルトリメリテート等のトリメリット酸系可塑剤;トリオクチルピロメリット酸(TOPM)等のピロメリット酸系可塑剤;分子量1000以上のポリエステル系可塑剤;エポキシ化トリグリセリド、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化脂肪酸エステル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル(E−PS)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−n−オクチル(nE−PS)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエポキシステアリル(E−PO)等のエポキシヘキサヒドロフタル酸エステル等のエポキシ系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソノニルアジペート(DINA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)等のアジピン酸系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルセバケート(DOS)、ジブチルセバケート(DBS)等のセバシン酸系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアゼレート(DOZ)等のアゼライン酸系可塑剤;トリクレジルフォスフェート(TCP)、トリ−2−エチルヘキシルフォスフェート(TOP)等のリン酸系可塑剤;トリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−(2−エチルヘキシル)シトレート等のクエン酸系可塑剤が挙げられる。これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。これらの可塑剤の中でも、アジピン酸系可塑剤、セバシン酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤が好ましい。
本発明の可塑剤をゴム及びエラストマーに配合する場合には、石油系油、液状ゴム、液状オリゴマー等の軟化剤を併用することもできる。石油系油としては、パラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、芳香族系炭化水素油の混合物であるエクステンダーオイルや、プロセス油、スピンドル油、マシン油、流動パラフィン、塩素化パラフィン等が挙げられる。液状ゴムとしては、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン等が挙げられる。液状オリゴマーとしては、液状ポリブテン、液状α−オレフィンオリゴマー等が挙げられる。軟化剤の配合量は特に限定されないが、基材樹脂100質量部に対し、30〜300質量部であることが好ましい。
本発明のプラスチック字消しには、適度な硬度を付与するために充填剤を配合する。充填剤としては、珪石粉あるいは石灰石粉(重質炭酸カルシウム)を用いるのが一般的であり、これらの無機粉体は、筆記面を痛めないように微粉化して用いられる。他に珪藻土、タルクあるいはシラス粉末、酸化珪素の微粉末であるアエロジル、無機及び有機の中空粒子等を使用することができる。これらの充填剤の配合量は、基材樹脂によって異なるが、基材樹脂100質量部に対して、30〜250質量部であることが好ましい。
また、必要に応じて基材樹脂、特に塩化ビニル系樹脂の成形時による高温劣化防止のため、安定剤を用いる。光安定性向上のため、紫外線吸収剤等の光安定剤を配合することもできる。その他、粘度調整剤、滑剤、溶剤、着色剤、防腐剤、防黴剤、香料等の添加剤を含有することもできる。これらの添加剤は、本発明による効果を阻害しない範囲内であれば、配合量も特に制限されない。
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例で用いた材料を表1に示す。以下の記載において、「部」は特に断らない限り「質量部」を表す。
また、以下の実施例、比較例において、得られた字消しの消字率及び移行性は、下記の方法により測定又は評価した。
[消字率の測定方法(JIS法)]:
JIS S 6050 6.4に準拠した。
(1)字消しを厚さ5mmの板状に切り、着色紙と接触する先端部分を半径6mmの円弧に仕上げたものを試験片とした。
(2)画線機を用いて、JIS S 6006に規定する鉛筆のHBと、坪量90g/m以上、白色度75%以上の上質紙を使用して着色紙を作製し、この着色紙に対して、試験片を垂直に、しかも着色線に対して直角になるように接触させ、試験片におもりとホルダの質量の和が0.5kgとなるようにおもりを載せ、150±10cm/minの速さで着色部を4往復摩消させた。
(3)濃度計によって、着色紙の非着色部分の濃度を0として、着色部及び摩消部の濃度をそれぞれ測定した。
(4)消字率は次の式によって算出し、3回の平均値を求めた。
消字率(%)=(1−(摩消部の濃度÷着色部の濃度))×100
[消字率の測定方法(非JIS法)]:
JIS S 6006に規定する鉛筆のHB、4B(イラストなどは濃い鉛筆を用いるため)2種類の濃度で画線を行い、コピー用紙(坪量64g/m、白色度85%)及び画用紙(市販品)を用いた他は、JIS法に準拠した。
[移行性の評価方法]:
字消しをプラスチックの板に挟み、60±2℃の恒温器の中に入れ、24時間後に取り出し、可塑剤が試験片に付着した量を測定した。
[折れ試験]
字消しを片手で把持し折り曲げた際に、折れるまでに要した回数を測定した。
(実施例1〜6、比較例1〜2)
表2に示す配合割合(数字は質量部)で配合した組成物を減圧下にて撹拌した後、100〜150℃で成形して、プラスチック字消しを作製した。各字消しについて消字率及び移行性を上記方法で測定した結果を表2に示す。
また、上記とは別に、表2に示す配合割合で配合した組成物を減圧下にて撹拌した後、140℃で成形してプラスチック字消しを作製し、折れ試験に供した結果を表2に示す。
表2より、可塑剤の移行量に関しては、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソノニルエステルを単独で用いるよりも、これらを併用することにより移行量が減少し、可塑剤の配合比率が1:1のときに最も少なくなる傾向にあった。
表2より、HBの鉛筆で作成した画線に対する消字率に関しては、上質紙及びコピー用紙の場合、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソノニルエステルを単独で用いるよりも、両者を併用することにより顕著な相乗効果が認められた。
4Bの鉛筆で作成した画線に対する消字率に関しては、両可塑剤を併用することにより相乗効果が認められ、特にコピー用紙において顕著な相乗効果が認められた。
また、アルキルスルフォン酸フェニルエステルとシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソノニルエステルを併用することにより、アルキルスルフォン酸フェニルエステル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソノニルエステルをそれぞれ単体で配合した場合よりも、折れ性に優れるプラスチック字消しが得られた。
以上の結果より、本発明のプラスチック字消しは、アルキルスルフォン酸フェニルエステル又はシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジイソノニルエステルを単独で配合した比較例1、2のプラスチック字消しよりも、コピー用紙や画用紙の消字率ならびに可塑剤の移行性に関して性能向上が見られ、安全性においても人体及び環境に対する負荷が少ない安全な字消しを作製できた。

Claims (3)

  1. 基材樹脂、可塑剤及び充填剤を含有するプラスチック字消しにおいて、可塑剤として、アルキルスルフォン酸フェニルエステルと、一般式(1)で表わされるシクロヘキサンジカルボン酸エステルを配合したことを特徴とするプラスチック字消し。

    [式中、R、Rは互いに独立して、炭素数1〜20のアルキル基を表す。]
  2. 前記アルキルスルフォン酸フェニルエステルと、前記シクロヘキサンジカルボン酸エステルの配合比(質量比)が、10/90〜85/15の範囲である請求項1に記載のプラスチック字消し。
  3. 前記基材樹脂が塩化ビニル系樹脂である請求項1又は2に記載のプラスチック字消し。



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