JP2012166193A - 中性領域で安定な酸化チタン分散液 - Google Patents

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【課題】中性領域において高い分散安定性を示す酸化チタン分散液(酸化チタンゾルまたはスラリー)を提供する。
【解決手段】リン酸亜鉛で少なくとも部分的に表面が被覆された酸化チタン粒子を含み、該酸化チタン粒子が中性領域の水性媒体に分散していることを特徴とする光触媒用酸化チタン分散液。
【選択図】なし

Description

本発明は、中性領域で安定な酸化チタンの分散液およびその製造方法に関する。ここでいう「酸化チタンの分散液」とは、水性媒体中の酸化チタンのゾルまたはスラリーを意味する。
酸化チタンは、紫外線照射下で強い酸化分解力を発現する光触媒であり、抗菌、脱臭、防汚などの分野で実用化されている。酸化チタンは粉体であるから飛散を防止するため、場合によりバインダーを含む酸化チタンゾルまたは酸化チタンスラリーを基材に塗布し、乾燥して光触媒膜を形成することができる。
一般に酸化チタンゾルは、含水酸化チタンを塩酸または硝酸のような強酸で化学的に解膠することによって製造される。このゾルは強酸性であるためその輸送、貯蔵その他のハンドリングにおいてゾルと接触する容器およびその他の器具は耐酸性であることを要し、触媒膜を形成すべき基材も耐酸性でなければならない。単に中和によって中性のゾルを得ようとすると安定性を失い、ゾル粒子が凝集し、著しい増粘、ゲル化などを生じ、ゾルの状態を保つことができない。
粉体である酸化チタンの水性スラリーでも酸性領域では安定であるが、中性領域では不安定であり、巨大粒子に凝集して沈降する。
酸化チタンゾルの場合、酸性のゾルにヒドロキシカルボン酸または多価カルボン酸を溶解し、中和後脱イオン処理することによって酸化チタン粒子を負に帯電させ、これによって中性領域で安定な酸化チタンゾルを製造することが提案されている。特許文献1参照。
酸化チタンをリン酸塩と複合化させることにより負の電荷を与え、中性領域において安定な分散液を生成する複合化酸化チタンが提案されているが、複合化に用いられたリン酸塩はナトリウム、カルシウムおよびアルミニウムのピロリン酸塩、トリおよびテトラポリリン酸ナトリウムである。特許文献2および3参照。
本出願人は、チタンの水和リン酸化合物で被覆された中性領域で安定な透明な酸化チタンゾルを提案した。この技術もゾル粒子を負に帯電させることによって中性領域での分散安定性を達成する。特許文献4参照。
特開平11−278843号公報 特開2004−243307号公報 特開2006−124267号公報 特開2000−290015号公報
本発明によれば、例えば含水酸化チタンを強酸で化学的に解膠することによって製造された強酸性の酸化チタンゾルへ、水溶性亜鉛塩の溶液と、次いでリン酸または水溶性リン酸塩を加え、両者の反応によって生成したリン酸亜鉛で酸化チタンゾル粒子の表面を少なくとも部分的に被覆し、被覆された酸化チタンゾル粒子を含む反応混合物を中和することによって中性領域において安定な酸化チタンゾルを製造することができる。
リン酸亜鉛で被覆することによってゾル粒子が負に帯電し、電気的反発力によって中性領域における分散安定性が得られる。
同じ操作を光触媒用酸化チタン粉体の水スラリーへ適用することによって、同じ原理で中性領域で安定な酸化チタンスラリーを製造することができる。
従って一面において本発明は、リン酸亜鉛で少なくとも部分的に被覆された酸化チタン粒子を含み、該酸化チタン粒子が中性領域の水性媒体に分散していることを特徴とする酸化チタン分散液を提供する。
この場合、リン酸亜鉛による酸化チタン粒子の被覆量は、中性領域における満足な分散安定性を示し、他方酸化チタンの光触媒活性を大幅に低下させないため、酸化チタンに対し、1〜50wt%が適当であることがわかった。
リン酸亜鉛の被覆の効果は、酸化チタンゾルまたは酸化チタンスラリーの中性領域における分散安定性であるが、硫化水素ガスを吸着する効果が発現し、光触媒としてのみならず、硫化水素の吸着剤としても有用である。
他の面において、本発明は、分散している酸化チタン粒子の存在下、酸化チタン粒子が少なくとも部分的に反応によって生成する不溶性リン酸塩で被覆されるように、水溶性亜鉛をリン酸と反応させ、次に反応混合物を中和する工程を含む、中性領域で安定な酸化チタン分散液の製造方法を提供する。
リン酸の代りに、水溶性のリン酸塩、例えばリン酸水素二ナトリウムを使用してもよい。中和工程の後、通常は処理した酸化チタン粒子を濾過し、洗浄したのち水に再分散し、解砕して中性分散液として出荷されるであろう。
なお、本発明でいう中性領域とは、pH7.0を中心として1.5の変動を含む範囲、すなわちpH7.0±1.5の範囲をいう。
本発明は、酸化チタン粒子表面に機能性リン酸塩を表面処理することにより、中性領域において分散安定性を有し、且つ、機能性を付与した酸化チタン分散体を得ることを特徴とする。
機能性リン酸塩は、これを酸化チタンの表面に処理することにより、等電点を酸性側へシフトさせ、中性領域における分散安定性を付与する働きとともに、可視光下における高い光触媒能、あるいは硫化水素ガスに対する優れた吸着能などの機能を付与する働きを持つ。
ここでいう、機能性リン酸塩の種類としては、中性領域における分散安定性を付与し、且つ、硫化水素ガスに対する優れた吸着能などの機能を付与するものであれば、特に限定されるものではないが、リン酸亜鉛を処理した場合、硫化水素に対する優れた吸着能を付与することができる。
リン酸亜鉛を表面処理する場合、その処理量が多いほど、硫化水素に対する吸着能は向上するが、一方で、分散安定性および光触媒能は低下する。したがって、酸化チタンに対し1〜50wt%処理することが好ましい。
本発明の製造方法は、酸化チタン源として酸化チタン粉体を水に分散したものや酸化チタンゾルを用い、これにZnを含む水溶性金属塩とリン酸化合物を添加し、さらに、塩基性化合物水溶液を添加し、pH5.5〜8.5に調整したのち、ろ過して得られるケーキを中性の水性媒体に再分散することを特徴とする。
使用し得る酸化チタンとしては、アナタース、ルチル、ブルッカイト、アモルファス酸化チタンのいずれでも良いが、光触媒用途に対してはアナタース型酸化チタンを用いることが好ましい。また、使用し得る水溶性金属塩としては、塩化亜鉛などがあり、これらの中から、酸化チタンに付与したい機能により、適宜選択し、使用することができる。また、使用し得るリン酸化合物としては、各種のリンの酸素酸、例えば、オルトリン酸、メタリン酸、並びのそれらの水溶性塩があるが、オルトリン酸を用いることが好ましい。また、使用し得る塩基性化合物としては、アンモニア、水酸化ナトリウムなどがあるが、アンモニアを用いることが好ましい。
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制約されるものではない。
実施例1(参考)
市販の酸化チタンゾル(TKS−201、テイカ株式会社)を水で希釈し、20wt%酸化チタンゾル100gを調製した。これに硫酸アンモニウム鉄(III)・12水和物9.57gを加え、完全に溶解させたのち、85%オルトリン酸2.29gを加え、1時間反応させた。そして、この反応液をアンモニア水でpH7.0に調整し、ろ過して得たケーキを水洗後、固形分が20wt%になるよう水を添加し、ペイントコンディショナーを用いて再分散することによって、リン酸鉄を表面処理した中性酸化チタンゾルを得た。
実施例2
硫酸アンモニウム鉄(III)・12水和物9.57gを、78%塩化亜鉛水溶液4.03gに代え、85%オルトリン酸2.29gを85%オルトリン酸1.79gに代えること以外は、実施例1と同様にして、リン酸亜鉛を表面処理した中性酸化チタンゾルを得た。
実施例3(参考)
市販の酸化チタン粉体(AMT−100、テイカ株式会社)を水に加え、20wt%酸化チタンスラリー100gを調製した。これに硫酸アンモニウム鉄(III)・12水和物9.57gを加え、完全に溶解させたのち、85%オルトリン酸2.29gを加え、1時間反応させた。そして、この反応液をアンモニア水でpH7.0に調整し、ろ過して得たケーキを水洗後、固形分が20wt%になるよう水を添加し、ペイントコンディショナーを用いて再分散することによって、リン酸鉄を表面処理した中性酸化チタンスラリーを得た。
実施例4(参考)
硫酸アンモニウム鉄(III)・12水和物9.57gを、78%塩化亜鉛水溶液4.03gに代え、85%オルトリン酸2.29gを85%オルトリン酸1.79gに代えること以外は、実施例3と同様にして、リン酸亜鉛を表面処理した中性酸化チタンスラリーを得た。
実施例5(参考)
25%硫酸チタン(IV)水溶液400mlにアンモニア水を滴下し、pH9.0に調整することにより、白色析出物を含むスラリーを得た。得られた白色析出物を濾取し、空気中、120℃で12時間乾燥したのち、空気中、400℃で2時間焼成することによって、窒素をドープした酸化チタンを得た。この窒素ドープ酸化チタン粉体を実施例3における酸化チタン粉体と代えること以外は実施例3と同様にして、リン酸鉄を表面処理した中性窒素ドープ酸化チタンスラリーを得た。
比較例1
オルトリン酸を加えないこと以外は実施例1と同様にして、水酸化鉄を表面処理した中性酸化チタンゾルを得た。
比較例2
硫酸アンモニウム鉄(III)・12水和物9.57gを塩化鉄(III)7.57gに代え、さらにオルトリン酸を加えないこと以外は、実施例1と同様にして、水酸化鉄を表面処理した中性酸化チタンゾルを得た。
比較例3
硫酸アンモニウム鉄(III)・12水和物9.57gを硫酸鉄(III)5.61gに代え、さらにオルトリン酸を加えないこと以外は、実施例1と同様にして、水酸化鉄を表面処理した中性酸化チタンゾルを得た。
比較例4
硫酸チタン水溶液を熱加水分解して得られるメタチタン酸を、塩酸を用いてpH1.1に調整することにより、酸性酸化チタンゾルを得た。
比較例5
比較例4で得られた酸性酸化チタンゾルを水を用いてTiO換算で濃度50g/Lに調整し、このゾル2LへTiO換算で15gの四塩化チタン水溶液を添加し、次いで、Pに換算して5gのオルトリン酸を添加し、1時間反応させた。この反応液をアンモニア水でpH5.5に調整し、ろ過して得たケーキを水洗後、固形分が25wt%になるように水を添加し、ペイントコンディショナーを用いて再分散することによって、リン酸チタンを表面処理した中性酸化チタンゾルを得た。
物性評価:
実施例および比較例において得られたゾルあるいはスラリーを試験体とし、その各種物性(pH、粘度、平均粒子径)を調べた。粘度測定では、B型粘度計(TVB−10、TOKI SANGYO.,LTD.)を用い、回転数60rpmにおける粘度を測定した。また、平均粒子径測定では、粒度分析計(MICROTRAC UPA、日機装株式会社)を用いた。以上の方法により評価した結果を表1に示す。
光触媒活性の評価:
実施例および比較例において得られたゾルあるいはスラリーを乾燥、粉砕して得られる粉体0.5gを試験体とし、これと800ppmアセトアルデヒドガスをガスバック(3,000ml)に封入し、暗所で15時間静置し、吸着飽和状態とした。そして、紫外線吸収膜付蛍光灯(FLR40SW/MNU、TOSHIBA)を用いて光照射し、所定時間毎にアセトアルデヒド濃度を光音響マルチガスモニタ(1312型、INNOVA)を用いて測定した。その結果を表2に示す。
なお、光触媒活性の高低を示す指標として、ガス減少速度定数を以下の式より算出した。ガス減少速度定数k (h−1) : kt=ln(C/C
:UV照射時間(h)、 C:暗所吸着後のガス濃度(ppm)、C:所定UV照射時間後のガス濃度(ppm)
硫化水素に対する分解能の評価:
上記、実施例および比較例において得られたゾルあるいはスラリーを乾燥、粉砕して得られる粉体0.05gを試験体とし、これと150ppm硫化水素ガスをガスバック(3,000ml)に封入し、暗所で静置した。そして、所定時間毎に硫化水素ガス濃度をガス検知管を用いて測定した。その結果を表3に示す。
Figure 2012166193
Figure 2012166193
Figure 2012166193

Claims (8)

  1. リン酸亜鉛で少なくとも部分的に表面が被覆された酸化チタン粒子が中性領域の水性媒体に分散していることを特徴とする光触媒用酸化チタン分散液。
  2. 表面を被覆するリン酸亜鉛の量が、酸化チタンに対して1〜50wt%である請求項1の光触媒用酸化チタン分散液。
  3. 酸化チタン粒子が、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンまたはアモルファス酸化チタンである請求項1または2の光触媒用酸化チタン分散液。
  4. 酸化チタンゾルまたは酸化チタン水スラリーへ、水溶性亜鉛塩とリン酸もしくは水溶性リン酸塩とを加え、両者の反応で生成したリン酸亜鉛で酸化チタン粒子表面を少なくとも部分的に被覆し、反応混合物を中和後濾過して得たケーキを水洗後中性領域の水性媒体に再分散することを特徴とする光触媒用酸化チタン分散液の製造方法。
  5. 表面を被覆するリン酸亜鉛の量が、酸化チタンに対して1〜50wt%となるように、当量の水溶性亜鉛塩とリン酸もしくは水溶性リン酸塩が酸化チタンゾルまたは酸化チタン水スラリーへ添加される請求項4の方法。
  6. 酸化チタン粒子が、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンまたはアモルファス酸化チタンである請求項4または5の方法。
  7. 水溶性亜鉛塩として塩化亜鉛が選ばれる請求項4ないし6のいずれかの方法。
  8. 中和にアンモニアが用いられる請求項4ないし7のいずれかの方法。
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