図10に示すような従来の熱交換器(即ち、冷媒が第1のヘッダ集合管(101)から第2のヘッダ集合管(102)へ向かって一回だけ流れる熱交換器)には、凝縮器として機能する際に充分な性能が得られないという問題があった、この問題点について説明する。
図10に示すように、凝縮器として機能する熱交換器では、出口側の第2のヘッダ集合管(102)に液冷媒が溜まり込む。そして、熱交換器のうち同図において太い破線で囲まれた領域は、扁平管(103)が液冷媒で満たされた状態になってしまう。このため、第1のヘッダ集合管(101)から熱交換器の下部に配置された扁平管(103)へ流入するガス冷媒の流量が少なくなり、熱交換器の性能が充分に発揮されなくなる。特に、扁平管(103)の本数が多い大型の熱交換器では、第2のヘッダ集合管(102)内に溜まった液冷媒の深さが深くなり、熱交換器のうち扁平管(103)が液冷媒で満たされる領域が拡大するため、この問題が顕著であった。
この問題は、熱交換器を図11に示すような構造にすれば、ある程度解消される。図11に示す熱交換器では、各ヘッダ集合管(101,102)の内部空間が、仕切板(104)によって上下に仕切られ、冷媒が第1のヘッダ集合管(101)と第2のヘッダ集合管(102)の間を複数回行き来する。この構造の熱交換器では、液冷媒が両方のヘッダ集合管(101,102)に分散するため、ヘッダ集合管(101,102)内に溜まった液冷媒の深さがそれ程深くならない。このため、熱交換器のうち扁平管(103)が液冷媒で満たされる領域が比較的狭くなり、各扁平管(103)へ流入する冷媒の流量の差が小さく抑えられる。
ところが、この図11に示す構造の熱交換器には、蒸発器として機能する場合に冷媒の圧力損失が過大になるという問題があった。この問題点について説明する。
蒸発器として機能する熱交換器において、第2のヘッダ集合管(102)の下部へ流入した冷媒は、扁平管(103)を通過する際に空気から吸熱して蒸発し、ガス単相状態となって第1のヘッダ集合管(101)の上部から流出してゆく。つまり、この構造の熱交換器を流れる冷媒は、流れの向きを何度も変えながら熱交換器の下部から上部へ向かって流れる。一方、凝縮器として機能する熱交換器に比べると、蒸発器として機能する熱交換器では、比体積の大きなガス単相状態の冷媒の流れる領域が大きくなる。このため、蒸発器として機能する熱交換器では、流速の高い冷媒が何度も向きを変えながら流れるため、熱交換器を通過する間における冷媒の圧力損失が過大となるおそれがあった。そして、熱交換器における冷媒の圧力損失が大きくなると、熱交換器へ流入する冷媒の圧力と温度が高くなり、熱交換器における冷媒と空気の熱交換量が減少してしまう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の扁平管がヘッダ集合管に接続された構造を有する熱交換器の性能を、凝縮器として機能する場合と蒸発器として機能する場合の両方において充分に発揮させることにある。
第1の発明は、それぞれが立設された第1ヘッダ集合管(60)及び第2ヘッダ集合管(70)と、側面が対向するように上下に配列されると共に内部に流体の通路(34)が形成され、それぞれの一端が上記第1ヘッダ集合管(60)に接続されて他端が上記第2ヘッダ集合管(70)に接続された複数の扁平管(33)と、隣り合う上記扁平管(33)の間を空気が流れる複数の通風路(37)に区画する複数のフィン(35,36)とを備え、上記扁平管(33)内の通路(34)を流れる冷媒が、上記通風路(37)を流れる空気と熱交換して蒸発し又は凝縮する熱交換器を対象とする。そして、上下に並び且つそれぞれが複数の上記扁平管(33)を有する複数の熱交換部(50a〜50c)に区分され、上記第1ヘッダ集合管(60)及び上記第2ヘッダ集合管(70)には、それぞれの内部空間を上下に仕切ることによって、各熱交換部(50a〜50c)に対応した該熱交換部(50a〜50c)と同数の連通空間(61a〜61c,71a〜71c)が形成され、上記第1ヘッダ集合管(60)に形成された各連通空間(61a〜61c)は、対応する上記熱交換部(50a〜50c)が有する上記扁平管(33)のうちの一部に連通する第1部分空間(62a〜62c)と残りに連通する第2部分空間(63a〜63c)に仕切られ、上記第2ヘッダ集合管(70)に形成された各連通空間(71a〜71c)は、対応する上記熱交換部(50a〜50c)が有する全ての上記扁平管(33)に連通する一方、上記第1ヘッダ集合管(60)に形成された各連通空間(61a〜61c)では、上記第1部分空間(62a〜62c)の上方に上記第2部分空間(63a〜63c)が形成され、上記第1ヘッダ集合管(60)には、全ての上記第1部分空間(62a〜62c)に連通する液側接続部材(80)と、全ての上記第2部分空間(63a〜63c)に連通するガス側ヘッダ(85)とが取り付けられるものである。
第1の発明では、熱交換器(23)が複数の熱交換部(50a〜50c)に区分される。熱交換器(23)では、複数の熱交換部(50a〜50c)が上下に並んでいる。各熱交換部(50a〜50c)は、扁平管(33)を複数ずつ有している。各扁平管(33)は、それぞれの一端が第1ヘッダ集合管(60)に接続され、それぞれの他端が第2ヘッダ集合管(70)に接続される。第1ヘッダ集合管(60)及び第2ヘッダ集合管(70)のそれぞれには、熱交換部(50a〜50c)と同数の連通空間(61a〜61c,71a〜71c)が形成される。一つの熱交換部(50a〜50c)が有する扁平管(33)は、その熱交換部(50a〜50c)に対応する第1ヘッダ集合管(60)及び第2ヘッダ集合管(70)の連通空間(61a〜61c,71a〜71c)に連通する。
第1の発明の熱交換器(23)において、第1ヘッダ集合管(60)の各連通空間(61a〜61c)は、第1部分空間(62a〜62c)と第2部分空間(63a〜63c)に仕切られる。第1ヘッダ集合管(60)の一つの連通空間(61a〜61c)に対応する熱交換部(50a〜50c)が有する複数の扁平管(33)は、その連通空間(61a〜61c)の第1部分空間(62a〜62c)に一部が連通し、その連通空間(61a〜61c)の第2部分空間(63a〜63c)に残りが連通する。一方、第2ヘッダ集合管(70)の一つの連通空間(71a〜71c)には、その連通空間(71a〜71c)に対応する熱交換部(50a〜50c)が有する全ての扁平管(33)が連通する。
第1の発明の熱交換器(23)へ送られてきた冷媒は、複数の熱交換部(50a〜50c)に分配され、各熱交換部(50a〜50c)に対応した第1ヘッダ集合管(60)の連通空間(61a〜61c)へ流入する。その際、熱交換器(23)へ送られてきた冷媒は、第1ヘッダ集合管(60)の各第1部分空間(62a〜62c)または各第2部分空間(63a〜63c)へ分かれて流入する。各熱交換部(50a〜50c)へ分配された冷媒は、各熱交換部(50a〜50c)の扁平管(33)内の流路(34)を流れ、その間に通風路(37)を流れる空気と熱交換して蒸発し又は凝縮する。
例えば、第1の発明の熱交換器(23)へ送られてきた冷媒が第1ヘッダ集合管(60)の各第1部分空間(62a〜62c)へ流入する場合、各熱交換部(50a〜50c)では、第1部分空間(62a〜62c)から第2部分空間(63a〜63c)へ向かって冷媒が流れる。つまり、一つの熱交換部(50a〜50c)に対応する第1部分空間(62a〜62c)へ流入した冷媒は、その第1部分空間(62a〜62c)に連通する扁平管(33)と、その熱交換部(50a〜50c)に対応する第2ヘッダ集合管(70)の連通空間(71a〜71c)と、その連通空間(71a〜71c)に連通する扁平管(33)とを順に流れて第2部分空間(63a〜63c)へ流入する。
また、第1の発明の熱交換器(23)へ送られてきた冷媒が第1ヘッダ集合管(60)の各第2部分空間(63a〜63c)へ流入する場合、各熱交換部(50a〜50c)では、第2部分空間(63a〜63c)から第1部分空間(62a〜62c)へ向かって冷媒が流れる。つまり、一つの熱交換部(50a〜50c)に対応する第2部分空間(63a〜63c)へ流入した冷媒は、その第2部分空間(63a〜63c)に連通する扁平管(33)と、その熱交換部(50a〜50c)に対応する第2ヘッダ集合管(70)の連通空間(71a〜71c)と、その連通空間(71a〜71c)に連通する扁平管(33)とを順に流れて第1部分空間(62a〜62c)へ流入する。
また、第1の発明では、第1ヘッダ集合管(60)に液側接続部材(80)とガス側ヘッダ(85)とが取り付けられる。そして、凝縮器として機能する熱交換器(23)では、冷媒がガス側ヘッダ(85)から液側接続部材(80)へ向かって流れる。一方、蒸発器として機能する熱交換器(23)では、冷媒が液側接続部材(80)からガス側ヘッダ(85)へ向かって流れる。
凝縮器として機能する第1の発明の熱交換器(23)において、そこへ送られてきたガス冷媒は、ガス側ヘッダ(85)を通って第1ヘッダ集合管(60)内の各第2部分空間(63a〜63c)へ分配される。その後、各第2部分空間(63a〜63c)内の冷媒は、第2部分空間(63a〜63c)に連通する扁平管(33)と、第2ヘッダ集合管(70)内の連通空間(71a〜71c)と、その連通空間(71a〜71c)に連通する扁平管(33)と、第2部分空間(63a〜63c)の下方の第1部分空間(62a〜62c)とを順に通過し、液側接続部材(80)へ流入して合流する。
蒸発器として機能する第1の発明の熱交換器(23)において、そこへ送られてきた液単相状態または気液二相状態の冷媒は、液側接続部材(80)を通って第1ヘッダ集合管(60)内の各第1部分空間(62a〜62c)へ分配される。その後、各第1部分空間(62a〜62c)内の冷媒は、第1部分空間(62a〜62c)に連通する扁平管(33)と、第2ヘッダ集合管(70)内の連通空間(71a〜71c)と、その連通空間(71a〜71c)に連通する扁平管(33)と、第1部分空間(62a〜62c)の上方の第2部分空間(63a〜63c)とを順に通過し、ガス側ヘッダ(85)へ流入して合流する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記第1ヘッダ集合管(60)では、各第1部分空間(62a〜62c)の下端寄りに上記液側接続部材(80)が接続され、各第2部分空間(63a〜63c)の上端寄りに上記ガス側ヘッダ(85)が接続されるものである。
第2の発明の第1ヘッダ集合管(60)では、各第1部分空間(62a〜62c)の下端寄りの位置に液側接続部材(80)が連通し、各第2部分空間(63a〜63c)の上端寄りの位置にガス側ヘッダ(85)が連通する。
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、各熱交換部(50a〜50c)では、上記第1ヘッダ集合管(60)の第1部分空間(62a〜62c)に連通する扁平管(33)が設けられた部分が第1熱交換領域(52a〜52c)となり、且つ上記第1ヘッダ集合管(60)の第2部分空間(63a〜63c)に連通する扁平管(33)が設けられた部分が第2熱交換領域(51a〜51c)となり、各熱交換部(50a〜50c)における上記第1熱交換領域(52a〜52c)と上記第2熱交換領域(51a〜51c)の境界部(55)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)の間と、熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)の間とに、上下に隣り合う扁平管(33)の一方から他方への伝熱を抑制するための伝熱抑制構造(57)が設けられるものである。
第3の発明の各熱交換部(50a〜50c)では、第1ヘッダ集合管(60)の第1部分空間(62a〜62c)に連通する扁平管(33)が第1熱交換領域(52a〜52c)に設けられ、第1ヘッダ集合管(60)の第2部分空間(63a〜63c)に連通する扁平管(33)が第2熱交換領域(51a〜51c)に設けられる。また、この発明の熱交換器(23)では、所定の箇所に伝熱抑制構造(57)が設けられる。
上述したように、本発明の熱交換器(23)の第1ヘッダ集合管(60)へ流入した冷媒は、第1部分空間(62a〜62c)に連通する扁平管(33)と第2部分空間(63a〜63c)に連通する扁平管(33)の一方を通過後に他方へ流入する。このため、第1部分空間(62a〜62c)に連通する扁平管(33)を流れる冷媒と、第2部分空間(63a〜63c)に連通する扁平管(33)を流れる冷媒との間には、比較的大きな温度差がある。一方、各熱交換部(50a〜50c)では、第1熱交換領域(52a〜52c)と第2熱交換領域(51a〜51c)の境界部(55)を挟んで、第1部分空間(62a〜62c)に連通する扁平管(33)と第2部分空間(63a〜63c)に連通する扁平管(33)が隣り合っている。また、本発明の熱交換器(23)では、隣り合う熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)を挟んで、下側の熱交換部(50a,50b)の第2部分空間(63a,63b)に連通する扁平管(33)と上側の熱交換部(50b,50c)の第1部分空間(62b,62c)に連通する扁平管(33)が隣り合っている。
このように、本発明の熱交換器(23)には、それぞれを流れる冷媒の温度差が比較的大きな扁平管(33)が隣り合っている部分が存在する。そして、隣り合った扁平管(33)の一方から他方へ熱が伝わると、扁平管(33)を流れる冷媒と通風路(37)を流れる空気の間における熱交換量が減少してしまう。
それに対し、第3の発明では、第1熱交換領域(52a〜52c)と第2熱交換領域(51a〜51c)の境界部(55)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)の間と、隣り合う熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)の間とに、伝熱抑制構造(57)が設けられる。伝熱抑制構造(57)は、隣り合う扁平管(33)の一方から他方への熱の移動を阻害する。従って、この発明の熱交換器(23)では、隣り合う扁平管(33)を流れる冷媒の一方から他方へ伝わる熱量が減少する。
第4の発明は、空気調和機(10)を対象とし、上記第1〜第3の何れか一つの発明の熱交換器(30)が設けられた冷媒回路(20)を備え、上記冷媒回路(20)において冷媒を循環させて冷凍サイクルを行うものである。
第4の発明では、上記第1〜第3の何れか一つの発明の熱交換器(30)が冷媒回路(20)に接続される。熱交換器(30)において、冷媒回路(20)を循環する冷媒は、扁平管(33)の通路(34)を流れ、通風路(37)を流れる空気と熱交換する。
本発明の熱交換器(23)が凝縮器として機能する場合、ガス側ヘッダ(85)へ送り込まれたガス冷媒は、第1ヘッダ集合管(60)内の各第2部分空間(63a〜63c)へ分配される。そして、各熱交換部(50a〜50c)を流れる冷媒は、扁平管(33)を通過する間に凝縮し、その後に第2ヘッダ集合管(70)内の連通空間(71a〜71c)へ流入する。このように、第2ヘッダ集合管(70)内の各連通空間(71a〜71c)へは、一つの熱交換部(50a〜50c)へ供給された冷媒だけが流入する。このため、熱交換器(23)へ供給された冷媒の全てが第2ヘッダ集合管(70)内の一つの空間へ流入する場合に比べると、第2ヘッダ集合管(70)内の各連通空間(71a〜71c)に溜まる液冷媒の深さは浅くなる。その結果、各第2部分空間(63a〜63c)に連通する扁平管(33)のうち液冷媒で満たされる領域が狭くなり、各第2部分空間(63a〜63c)に連通する複数の扁平管(33)を流れる冷媒の流量の差が小さくなる。従って、本発明によれば、熱交換器(23)が凝縮器として機能する場合に各扁平管(33)を流れる冷媒の流量の差を縮小でき、熱交換器(23)の性能を充分に発揮させることができる。
また、本発明の熱交換器(23)が蒸発器として機能する場合、液側接続部材(80)へ送り込まれた冷媒は、第1ヘッダ集合管(60)内の各第1部分空間(62a〜62c)へ分配される。そして、各熱交換部(50a〜50c)を流れる冷媒は、第1ヘッダ集合管(60)と第2ヘッダ集合管(70)の間を一往復だけして、第1ヘッダ集合管(60)内の第2部分空間(63a〜63c)へ流入する。つまり、蒸発器として機能する熱交換器(23)の各熱交換部(50a〜50c)において、ガス冷媒を多く含む流速の比較的高い冷媒は、第2ヘッダ集合管(70)内で一度だけ流れの向きを変える。従って、本発明によれば、熱交換器(23)が蒸発器として機能する場合において、冷媒が熱交換器(23)を通過する間の圧力損失を小さく抑えることができる。その結果、蒸発器として機能する熱交換器(23)へ流入する冷媒の圧力と温度を低く抑えることができ、熱交換器(23)における冷媒と空気の熱交換量を確保することができる。
このように、本発明の熱交換器(23)は、凝縮器として機能する場合と蒸発器として機能する場合の両方において、その性能を充分に発揮することができる。
また、本発明では、液側接続部材(80)とガス側ヘッダ(85)の両方が第1ヘッダ集合管(60)に取り付けられる。つまり、この発明の熱交換器(23)では、複数の熱交換部(50a〜50c)に対して冷媒を流入出させるための部材が、第1ヘッダ集合管(60)に取り付けられる。従って、本発明によれば、熱交換器(23)へ冷媒を導入し又は導出するための配管の熱交換器(23)に対する接続位置を近接させることができ、熱交換器(23)の設置作業を簡素化することができる。
上記第2の発明の第1ヘッダ集合管(60)では、各第1部分空間(62a〜62c)の下端寄りの位置に液側接続部材(80)が連通している。従って、この発明の熱交換器(23)が凝縮器として機能する場合は、密度の大きい液冷媒を第1部分空間(62a〜62c)から液側接続部材(80)へ確実に送り込むことができる。また、この発明の第1ヘッダ集合管(60)では、各第2部分空間(63a〜63c)の上端寄りの位置にガス側ヘッダ(85)が連通している。従って、この発明の熱交換器(23)が蒸発器として機能する場合は、密度の小さいガス冷媒を第2部分空間(63a〜63c)からガス側ヘッダ(85)へ確実に送り込むことができる。
上記第3の発明の熱交換器(23)では、第1熱交換領域(52a〜52c)と第2熱交換領域(51a〜51c)の境界部(55)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)の間と、隣り合う熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)の間とに、伝熱抑制構造(57)が設けられる。上述したように、これら境界部(55,56)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)を流れる冷媒の間には比較的大きな温度差がある。ところが、この発明の熱交換器(23)では、これら境界部(55,56)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)の一方から他方へ向かう熱の移動が、伝熱抑制構造(57)によって阻害される。従って、この発明によれば、隣り合う扁平管(33)を流れる冷媒の一方から他方へ伝わる熱量を削減でき、冷媒と空気の間における熱交換量を増大させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態の熱交換器は、空気調和機(10)に設けられた室外熱交換器(23)である。
−空気調和機−
空気調和機(10)について、図1を参照しながら説明する。
〈空気調和機の構成〉
空気調和機(10)は、室外ユニット(11)及び室内ユニット(12)を備えている。室外ユニット(11)と室内ユニット(12)は、液側連絡配管(13)及びガス側連絡配管(14)を介して互いに接続されている。空気調和機(10)では、室外ユニット(11)、室内ユニット(12)、液側連絡配管(13)、及びガス側連絡配管(14)によって、冷媒回路(20)が形成されている。
冷媒回路(20)には、圧縮機(21)と、四方切換弁(22)と、室外熱交換器(23)と、膨張弁(24)と、室内熱交換器(25)とが設けられている。圧縮機(21)、四方切換弁(22)、室外熱交換器(23)、及び膨張弁(24)は、室外ユニット(11)に収容されている。室外ユニット(11)には、室外熱交換器(23)へ室外空気を供給するための室外ファン(15)が設けられている。一方、室内熱交換器(25)は、室内ユニット(12)に収容されている。室内ユニット(12)には、室内熱交換器(25)へ室内空気を供給するための室内ファン(16)が設けられている。
冷媒回路(20)は、冷媒が充填された閉回路である。冷媒回路(20)において、圧縮機(21)は、その吐出側が四方切換弁(22)の第1のポートに、その吸入側が四方切換弁(22)の第2のポートに、それぞれ接続されている。また、冷媒回路(20)では、四方切換弁(22)の第3のポートから第4のポートへ向かって順に、室外熱交換器(23)と、膨張弁(24)と、室内熱交換器(25)とが配置されている。
圧縮機(21)は、スクロール型またはロータリ型の全密閉型圧縮機である。四方切換弁(22)は、第1のポートが第3のポートと連通し且つ第2のポートが第4のポートと連通する第1状態(図1に実線で示す状態)と、第1のポートが第4のポートと連通し且つ第2のポートが第3のポートと連通する第2状態(図1に破線で示す状態)とに切り換わる。膨張弁(24)は、いわゆる電子膨張弁である。
室外熱交換器(23)は、室外空気を冷媒と熱交換させる。室外熱交換器(23)については後述する。一方、室内熱交換器(25)は、室内空気を冷媒と熱交換させる。室内熱交換器(25)は、円管である伝熱管を備えたいわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器によって構成されている。
〈空気調和機の運転動作〉
空気調和機(10)は、冷房運転と暖房運転を選択的に行う。
冷房運転中の冷媒回路(20)では、四方切換弁(22)を第1状態に設定した状態で、冷凍サイクルが行われる。この状態では、室外熱交換器(23)、膨張弁(24)、室内熱交換器(25)の順に冷媒が循環し、室外熱交換器(23)が凝縮器として機能し、室内熱交換器(25)が蒸発器として機能する。室外熱交換器(23)では、圧縮機(21)から流入したガス冷媒が室外空気へ放熱して凝縮し、凝縮後の冷媒が膨張弁(24)へ向けて流出してゆく。
暖房運転中の冷媒回路(20)では、四方切換弁(22)を第2状態に設定した状態で、冷凍サイクルが行われる。この状態では、室内熱交換器(25)、膨張弁(24)、室外熱交換器(23)の順に冷媒が循環し、室内熱交換器(25)が凝縮器として機能し、室外熱交換器(23)が蒸発器として機能する。室外熱交換器(23)には、膨張弁(24)を通過する際に膨張して気液二相状態となった冷媒が流入する。室外熱交換器(23)へ流入した冷媒は、室外空気から吸熱して蒸発し、その後に圧縮機(21)へ向けて流出してゆく。
−室外熱交換器−
室外熱交換器(23)について、図2〜4を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明に示す扁平管(33)の本数は、何れも単なる一例である。
〈室外熱交換器の構成〉
図2及び図3に示すように、室外熱交換器(23)は、一つの第1ヘッダ集合管(60)と、一つの第2ヘッダ集合管(70)と、多数の扁平管(33)と、多数のフィン(35)とを備えている。第1ヘッダ集合管(60)、第2ヘッダ集合管(70)、扁平管(33)、及びフィン(35)は、何れもアルミニウム合金製の部材であって、互いにロウ付けによって接合されている。
第1ヘッダ集合管(60)と第2ヘッダ集合管(70)は、何れも両端が閉塞された細長い中空円筒状に形成されている。図2及び図3では、室外熱交換器(23)の左端に第1ヘッダ集合管(60)が立設され、室外熱交換器(23)の右端に第2ヘッダ集合管(70)が立設されている。つまり、第1ヘッダ集合管(60)と第2ヘッダ集合管(70)は、それぞれの軸方向が上下方向となる姿勢で設置されている。
図4にも示すように、扁平管(33)は、その断面形状が扁平な長円形あるいは角の丸い矩形となった伝熱管である。室外熱交換器(23)において、複数の扁平管(33)は、その伸長方向が左右方向となり、且つそれぞれの平坦な側面が互いに向かい合う姿勢で配置されている。また、複数の扁平管(33)は、互いに一定の間隔をおいて上下に並んで配置され、それぞれの伸長方向が実質的に平行になっている。図3に示すように、各扁平管(33)は、その一端部が第1ヘッダ集合管(60)に挿入され、その他端部が第2ヘッダ集合管(70)に挿入されている。
図4に示すように、各扁平管(33)には、複数の流体通路(34)が形成されている。各流体通路(34)は、扁平管(33)の伸長方向に延びる通路である。各扁平管(33)において、複数の流体通路(34)は、扁平管(33)の伸長方向と直交する幅方向に一列に並んでいる。各扁平管(33)に形成された複数の流体通路(34)は、それぞれの一端が第1ヘッダ集合管(60)の内部空間に連通し、それぞれの他端が第2ヘッダ集合管(70)の内部空間に連通している。室外熱交換器(23)へ供給された冷媒は、扁平管(33)の流体通路(34)を流れる間に空気と熱交換する。
図4に示すように、フィン(36)は、金属板をプレス加工することによって形成された縦長の板状フィンである。フィン(36)には、フィン(36)の前縁(即ち、風上側の縁部)からフィン(36)の幅方向に延びる細長い切り欠き部(45)が、多数形成されている。フィン(36)では、多数の切り欠き部(45)が、フィン(36)の長手方向(上下方向)に一定の間隔で形成されている。切り欠き部(45)の風下寄りの部分は、管挿入部(46)を構成している。管挿入部(46)は、上下方向の幅が扁平管(33)の厚さと実質的に等しく、長さが扁平管(33)の幅と実質的に等しい。扁平管(33)は、フィン(36)の管挿入部(46)に差し込まれ、管挿入部(46)の周縁部とロウ付けによって接合される。また、 フィン(36)には、伝熱を促進するためのルーバー(40)が形成されている。
図3に示すように、室外熱交換器(23)では、上下に隣り合う扁平管(33)の間の空間が、フィン(36)によって複数の通風路(37)に区画される。室外熱交換器(23)は、扁平管(33)の流体通路(34)を流れる冷媒を、通風路(37)を流れる空気と熱交換させる。
図2に示すように、室外熱交換器(23)は、三つの熱交換部(50a〜50c)に区分されている。具体的に、室外熱交換器(23)には、下から上に向かって順に、第1熱交換部(50a)と、第2熱交換部(50b)と、第3熱交換部(50c)とが形成されている。図3に示すように、各熱交換部(50a〜50c)は、二十六本の扁平管(33)を有している。なお、室外熱交換器(23)に形成される熱交換部(50a〜50c)の数は、二つであってもよいし、四つ以上であってもよい。室外熱交換器(23)に形成される熱交換部(50a〜50c)の数は、各熱交換部(50a〜50c)の高さが概ね350mm以下(望ましくは、300〜350mm程度)となるように、室外熱交換器(23)の高さに応じて適当に設定される。
第1ヘッダ集合管(60)及び第2ヘッダ集合管(70)の内部空間は、複数の仕切板(39)によって上下に仕切られている。第1ヘッダ集合管(60)と第2ヘッダ集合管(70)のそれぞれには、その内部空間を仕切板(39a,39b)で仕切ることによって、三つの連通空間(61a〜61c,71a〜71c)が形成される。各ヘッダ集合管(31,32)において、最も下に位置する第1連通空間(61a,71a)は第1熱交換部(50a)の扁平管(33)に連通し、第1連通空間(61a,71a)の上側に隣接する第2連通空間(61b,71b)は第2熱交換部(50b)の扁平管(33)に連通し、最も上に位置する第3連通空間(61c,71c)は第3熱交換部(50c)の扁平管(33)に連通する。
第1ヘッダ集合管(60)の各連通空間(61a〜61c)は、更に仕切板(39c)によって上下に仕切られている。第1ヘッダ集合管(60)の各連通空間(61a〜61c)では、下側の空間が第1部分空間である下側部分空間(62a〜62c)となり、上側の空間が第2部分空間である上側部分空間(63a〜63c)となっている。
第1ヘッダ集合管(60)において、各下側部分空間(62a〜62c)は、対応する熱交換部(50a〜50c)の下端寄りの五本の扁平管(33)に連通し、各上側部分空間(63a〜63c)は、対応する熱交換部(50a〜50c)の残りの二十一本の扁平管(33)に連通している。つまり、第1ヘッダ集合管(60)の第1連通空間(61a)では、下側部分空間(62a)が第1熱交換部(50a)の下端寄りの五本の扁平管(33)に連通し、上側部分空間(63a)が第1熱交換部(50a)の残りの二十一本の扁平管(33)に連通する。また、第1ヘッダ集合管(60)の第2連通空間(61b)では、下側部分空間(62b)が第2熱交換部(50b)の下端寄りの五本の扁平管(33)に連通し、上側部分空間(63b)が第2熱交換部(50b)の残りの二十一本の扁平管(33)に連通する。また、第1ヘッダ集合管(60)の第3連通空間(61c)では、下側部分空間(62c)が第3熱交換部(50c)の下端寄りの五本の扁平管(33)に連通し、上側部分空間(63c)が第3熱交換部(50c)の残りの二十一本の扁平管(33)に連通する。
第2ヘッダ集合管(70)において、各連通空間(71a〜71c)は、対応する熱交換部(50a〜50c)の全ての扁平管(33)と連通している。つまり、第2ヘッダ集合管(70)の第1連通空間(71a)には、第1熱交換部(50a)の全ての扁平管(33)が連通する。また、第2ヘッダ集合管(70)の第2連通空間(71b)には、第2熱交換部(50b)の全ての扁平管(33)が連通する。また、第2ヘッダ集合管(70)の第3連通空間(71c)には、第3熱交換部(50c)の全ての扁平管(33)が連通する。
室外熱交換器(23)の各熱交換部(50a〜50c)は、第2熱交換領域である主熱交換領域(51a〜51c)と、第1熱交換領域である補助熱交換領域(52a〜52c)に区分されている。各熱交換部(50a〜50c)では、対応する第1ヘッダ集合管(60)の上側部分空間(63a〜63c)に連通する二十一本の扁平管(33)が主熱交換領域(51a〜51c)を構成し、対応する第1ヘッダ集合管(60)の下側部分空間(62a〜62c)に連通する五本の扁平管(33)が補助熱交換領域(52a〜52c)を構成している。つまり、各熱交換部(50a〜50c)では、補助熱交換領域(52a〜52c)を構成する扁平管(33)の本数が、主熱交換領域(51a〜51c)を構成する扁平管(33)の本数よりも少なくなっている。
具体的に、第1熱交換部(50a)では、主熱交換領域(51a)が第1上側部分空間(63a)に連通する二十一本の扁平管(33)を備え、補助熱交換領域(52a)が第1下側部分空間(62a)に連通する五本の扁平管(33)を備えている。また、第2熱交換部(50b)では、主熱交換領域(51b)が第2上側部分空間(63b)に連通する二十一本の扁平管(33)を備え、補助熱交換領域(52b)が第2下側部分空間(62b)に連通する五本の扁平管(33)を備えている。また、第3熱交換部(50c)では、主熱交換領域(51c)が第3上側部分空間(63c)に連通する二十一本の扁平管(33)を備え、補助熱交換領域(52c)が第3下側部分空間(62c)に連通する五本の扁平管(33)を備えている。
室外熱交換器(23)の各熱交換部(50a〜50c)では、第1ヘッダ集合管(60)の仕切板(39c)の側方に位置する部分が、主熱交換領域(51a〜51c)と補助熱交換領域(52a〜52c)の境界部(55)となっている。また、室外熱交換器(23)では、対応する第1ヘッダ集合管(60)の仕切板(39a)と第2ヘッダ集合管(70)の仕切板(39b)の間の部分が、熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)となっている。
図2に示すように、室外熱交換器(23)には、液側接続部材(80)とガス側ヘッダ(85)とが設けられている。液側接続部材(80)及びガス側ヘッダ(85)は、第1ヘッダ集合管(60)に取り付けられている。
液側接続部材(80)は、一つの分流器(81)と、三本の細径管(82a〜82c)とを備えている。液側接続部材(80)を構成する分流器(81)及び細径管(82a〜82c)の材質は、ヘッダ集合管(60,70)や扁平管(33)と同様のアルミニウム合金である。分流器(81)の下端部には、室外熱交換器(23)と膨張弁(24)を繋ぐ銅製の配管(17)が、図外の継手を介して接続されている。分流器(81)の上端部には、各細径管(82a〜82c)の一端が接続されている。分流器(81)の内部では、その下端部に接続された配管と、各細径管(82a〜82c)とが連通している。各細径管(82a〜82c)の他端は、第1ヘッダ集合管(60)に接続され、対応する下側部分空間(62a〜62c)に連通している。各細径管(82a〜82c)、ロウ付けによって第1ヘッダ集合管(60)と接合されている。
図3にも示すように、各細径管(82a〜82c)は、対応する下側部分空間(62a〜62c)の下端寄りの部分(即ち、下側部分空間(62a〜62c)の上下方向の中央よりも下側の部分)に開口している。つまり、第1細径管(82a)は第1下側部分空間(62a)の下端寄りの部分に開口し、第2細径管(82b)は第2下側部分空間(62b)の下端寄りの部分に開口し、第3細径管(82c)は第3下側部分空間(62c)の下端寄りの部分に開口している。なお、各細径管(82a〜82c)の長さは、各熱交換部(50a〜50c)へ流入する冷媒の流量の差がなるべく小さくなるように、個別に設定されている。
ガス側ヘッダ(85)は、一つの本体管部(86)と、三つの接続管部(87a〜87c)とを備えている。ガス側ヘッダ(85)を構成する本体管部(86)及び接続管部(87a〜87c)の材質は、ヘッダ集合管(60,70)や扁平管(33)と同様のアルミニウム合金である。本体管部(86)は、その上端部が逆U字状に曲がった比較的大径の管状に形成されている。本体管部(86)の上側の端部には、室外熱交換器(23)と四方切換弁(22)の第3のポートを繋ぐ銅製の配管(18)が、図外の継手を介して接続されている。本体管部(86)の下側の端部は、閉塞されている。接続管部(87a〜87c)は、本体管部(86)の直線状の部分から側方に突出している。
図3にも示すように、各接続管部(87a〜87c)は、ロウ付けによって第1ヘッダ集合管(60)と接合されている。各接続管部(87a〜87c)の突端は、対応する上側部分空間(63a〜63c)の上端寄りの部分(即ち、上側部分空間(63a〜63c)の上下方向の中央よりも上側の部分)に開口している。つまり、第1接続管部(87a)は第1上側部分空間(63a)の上端寄りの部分に開口し、第2接続管部(87b)は第2上側部分空間(63b)の上端寄りの部分に開口し、第3接続管部(87c)は第3上側部分空間(63c)の上端寄りの部分に開口している。
〈室外熱交換器における冷媒の流れ〉
空気調和機(10)の冷房運転中には、室外熱交換器(23)が凝縮器として機能する。冷房運転中における室外熱交換器(23)での冷媒の流れを説明する。
室外熱交換器(23)には、圧縮機(21)から吐出されたガス冷媒が供給される。圧縮機(21)から送られたガス冷媒は、ガス側ヘッダ(85)の本体管部(86)へ流入した後に三つの接続管部(87a〜87c)へ分かれて流入し、各熱交換部(50a〜50c)へ分配される。
ガス側ヘッダ(85)から各熱交換部(50a〜50c)へ分配された冷媒は、第1ヘッダ集合管(60)の対応する上側部分空間(63a〜63c)へ流入し、上側部分空間(63a〜63c)に連通する二十一本の扁平管(33)へ分配される。各扁平管(33)の流体通路(34)へ流入した冷媒は、流体通路(34)を流れる間に室外空気へ放熱して凝縮し、その後に第2ヘッダ集合管(70)の対応する連通空間(71a〜71c)へ流入する。つまり、第2ヘッダ集合管(70)の各連通空間(71a〜71c)では、対応する熱交換部(50a〜50c)の主熱交換領域(51a〜51c)の二十一本の扁平管(33)を通過した冷媒が合流する。
第2ヘッダ集合管(70)の各連通空間(71a〜71c)へ流入した冷媒は、対応する熱交換部(50a〜50c)の補助熱交換領域(52a〜52c)の五本の扁平管(33)へ分配される。各扁平管(33)の流体通路(34)へ流入した冷媒は、流体通路(34)を流れる間に室外空気へ放熱し、過冷却液状態となって第1ヘッダ集合管(60)の対応する下側部分空間(62a〜62c)へ流入する。
第1ヘッダ集合管(60)の各下側部分空間(62a〜62c)へ流入した冷媒は、液側接続部材(80)の細径管(82a〜82c)を通って分流器(81)へ流入する。分流器(81)では、各細径管(82a〜82c)から流入した冷媒が合流する。分流器(81)において合流した冷媒は、室外熱交換器(23)から膨張弁(24)へ向かって流出してゆく。
空気調和機(10)の暖房運転中には、室外熱交換器(23)が蒸発器として機能する。暖房運転中における室外熱交換器(23)での冷媒の流れを説明する。
室外熱交換器(23)には、膨張弁(24)を通過する際に膨張して気液二相状態となった冷媒が供給される。膨張弁(24)から送られた冷媒は、液側接続部材(80)の分流器(81)へ流入した後に三本の細径管(82a〜82c)へ分かれて流入し、各熱交換部(50a〜50c)へ分配される。
液側接続部材(80)から各熱交換部(50a〜50c)へ分配された冷媒は、第1ヘッダ集合管(60)の対応する下側部分空間(62a〜62c)へ流入し、下側部分空間(62a〜62c)に連通する五本の扁平管(33)へ分配される。各扁平管(33)の流体通路(34)へ流入した冷媒は、流体通路(34)を流れて第2ヘッダ集合管(70)の対応する連通空間(71a〜71c)へ流入する。つまり、第2ヘッダ集合管(70)の各連通空間(71a〜71c)では、対応する熱交換部(50a〜50c)の補助熱交換領域(52a〜52c)の五本の扁平管(33)を通過した冷媒が合流する。
第2ヘッダ集合管(70)の各連通空間(71a〜71c)へ流入した冷媒は、依然として気液二相状態のままである。各連通空間(71a〜71c)内の冷媒は、対応する熱交換部(50a〜50c)の主熱交換領域(51a〜51c)の二十一本の扁平管(33)へ分配される。各扁平管(33)の流体通路(34)へ流入した冷媒は、流体通路(34)を流れる間に室外空気から吸熱した蒸発し、ほぼガス単相状態となって第1ヘッダ集合管(60)の対応する上側部分空間(63a〜63c)へ流入する。
第1ヘッダ集合管(60)の各上側部分空間(63a〜63c)へ流入した冷媒は、ガス側ヘッダ(85)の接続管部(87a〜87c)を通って本体管部(86)へ流入する。本体管部(86)では、各接続管部(87a〜87c)から流入した冷媒が合流する。本体管部(86)において合流した冷媒は、室外熱交換器(23)から圧縮機(21)へ向かって流出してゆく。
−実施形態1の効果−
本実施形態の室外熱交換器(23)が凝縮器として機能する場合、ガス側ヘッダ(85)へ送り込まれたガス冷媒は、第1ヘッダ集合管(60)内の三つの第2部分空間(63a〜63c)へ分配される。そして、各熱交換部(50a〜50c)を流れる冷媒は、扁平管(33)を通過する間に凝縮し、その後に第2ヘッダ集合管(70)内の連通空間(71a〜71c)へ流入する。
このように、第2ヘッダ集合管(70)内の各連通空間(71a〜71c)へは、一つの熱交換部(50a〜50c)へ供給された冷媒だけが流入する。このため、室外熱交換器(23)へ供給された冷媒の全てが第2ヘッダ集合管(70)内の一つの空間へ流入する場合に比べると、第2ヘッダ集合管(70)内の各連通空間(71a〜71c)に溜まる液冷媒の深さは浅くなる。その結果、各主熱交換領域(51a〜51c)のうち扁平管(33)が液冷媒で満たされる領域が狭くなり、それぞれの主熱交換領域(51a〜51c)に設けられた各扁平管(33)を流れる冷媒の流量の差が小さくなる。従って、本実施形態によれば、室外熱交換器(23)が凝縮器として機能する場合に各扁平管(33)を流れる冷媒の流量の差を縮小でき、室外熱交換器(23)の性能を充分に発揮させることができる。
また、本実施形態の室外熱交換器(23)が蒸発器として機能する場合、液側接続部材(80)へ送り込まれた冷媒は、第1ヘッダ集合管(60)内の各第1部分空間(62a〜62c)へ分配される。そして、各熱交換部(50a〜50c)を流れる冷媒は、第1ヘッダ集合管(60)と第2ヘッダ集合管(70)の間を一往復だけして、第1ヘッダ集合管(60)内の上側部分空間(63a〜63c)へ流入する。つまり、蒸発器として機能する室外熱交換器(23)の各熱交換部(50a〜50c)において、ガス冷媒を多く含む流速の比較的高い冷媒は、第2ヘッダ集合管(70)内で一度だけ流れの向きを変える。従って、本実施形態によれば、室外熱交換器(23)が蒸発器として機能する場合において、冷媒が室外熱交換器(23)を通過する間の圧力損失を小さく抑えることができる。その結果、蒸発器として機能する室外熱交換器(23)へ流入する冷媒の圧力と温度を低く抑えることができ、室外熱交換器(23)における冷媒と空気の熱交換量を確保することができる。
このように、本実施形態の室外熱交換器(23)は、凝縮器として機能する場合と蒸発器として機能する場合の両方において、その性能を充分に発揮することができる。
また、本実施形態の室外熱交換器(23)は、上下に並んだ三つの熱交換部(50a〜50c)に区分されている。また、第1ヘッダ集合管(60)及び第2ヘッダ集合管(70)には、その内部空間を上下に仕切ることによって、各熱交換部(50a〜50c)に対応した連通空間(61a〜61c,71a〜71c)が形成される。このため、本実施形態の室外熱交換器(23)では、室外熱交換器(23)の全体が一つの熱交換部を構成する場合に比べ、ヘッダ集合管(60,70)内に形成された連通空間(61a〜61c,71a〜71c)の高さが低くなり、ヘッダ集合管(60,70)内の一つの連通空間(61a〜61c,71a〜71c)に連通する扁平管(33)のうち最上方のものと最下方のものとの高低差が小さくなる。従って、本実施形態によれば、家庭用や業務用の空気調和機(10)に設けられる比較的大型の室外熱交換器(23)においても、室外熱交換器(23)を適当な数の熱交換部(50a〜50c)に区分することによって、ヘッダ集合管(60,70)内の連通空間(61a〜61c,71a〜71c)に連通する各扁平管(33)へ流入する冷媒の流量の差を小さく保つことができる。
ここで、蒸発器として機能している室外熱交換器(23)において、第2ヘッダ集合管(70)の各連通空間(71a〜71c)内の冷媒は、上方へ向かって流れ、主熱交換領域(51a〜51c)の複数本(本実施形態では二十一本)の扁平管(33)へ分配される。蒸発器として機能している室外熱交換器(23)では、補助熱交換領域(52a〜52c)の扁平管(33)から第2ヘッダ集合管(70)の各連通空間(71a〜71c)へ、気液二相状態の冷媒(即ち、互いの密度が大きく異なる液冷媒とガス冷媒が共存した状態の冷媒)が流入する。各連通空間(71a〜71c)内の冷媒には重力が作用するため、主熱交換領域(51a〜51c)の扁平管(33)のうち下方に位置するものほど、流入する冷媒の湿り度(即ち、冷媒中の液相の割合)が大きくなる。このため、各連通空間(71a〜71c)の高さが高すぎると、各連通空間(71a〜71c)に連通する扁平管(33)のうち最上方のものと最下方のものとの高低差が拡大し、主熱交換領域(51a〜51c)の各扁平管(33)へ流入する冷媒の流量の差が拡大してしまう。
これに対し、本実施形態の室外熱交換器(23)は、適当な数の熱交換部(50a〜50c)に区分されており、第2ヘッダ集合管(70)の各連通空間(71a〜71c)の高さは、それほど過大ではない値に抑えられる。従って、本実施形態によれば、蒸発器として機能している室外熱交換器(23)において、主熱交換領域(51a〜51c)の各扁平管(33)へ流入する冷媒の流量の差を小さく保つことができ、室外熱交換器(23)の性能を充分に発揮させることができる。
また、本実施形態の室外熱交換器(23)では、液側接続部材(80)とガス側ヘッダ(85)の両方が第1ヘッダ集合管(60)に取り付けられる。つまり、本実施形態の室外熱交換器(23)では、複数の熱交換部(50a〜50c)に対して冷媒を流入出させるための部材が、第1ヘッダ集合管(60)に取り付けられる。従って、本実施形態によれば、膨張弁(24)や四方切換弁(22)から延びる配管の室外熱交換器(23)に対する接続位置を近接させることができ、室外熱交換器(23)の設置作業を簡素化することができる。
また、本実施形態の室外熱交換器(23)の第1ヘッダ集合管(60)では、各下側部分空間(62a〜62c)の下端寄りの位置に液側接続部材(80)の細径管(82a〜82c)が連通している。従って、本実施形態の室外熱交換器(23)が凝縮器として機能する場合は、密度の大きい液冷媒を下側部分空間(62a〜62c)から液側接続部材(80)の細径管(82a〜82c)へ確実に送り込むことができる。更に、本実施形態の室外熱交換器(23)の第1ヘッダ集合管(60)では、各上側部分空間(63a〜63c)の上端寄りの位置にガス側ヘッダ(85)の接続管部(87a〜87c)が連通している。従って、本実施形態の室外熱交換器(23)が蒸発器として機能する場合は、密度の小さいガス冷媒を上側部分空間(63a〜63c)からガス側ヘッダ(85)の接続管部(87a〜87c)へ確実に送り込むことができる。
−実施形態1の変形例−
本実施形態の室外熱交換器(23)では、図5に破線で示す位置に扁平管(33)を設けないようにしてもよい。具体的に、図5に示す本変形例の室外熱交換器(23)では、図3において各主熱交換領域(51a〜51c)の最も下方に位置する扁平管(33)と、図3において第2熱交換部(50b)及び第3熱交換部(50c)の補助熱交換領域(52b,52c)の最も下方に位置する扁平管(33)とが省略されている。
本変形例の室外熱交換器(23)では、各熱交換部(50a〜50c)において主熱交換領域(51a〜51c)と補助熱交換領域(52a〜52c)の境界部(55)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)の間と、熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)の間とに形成された扁平管(33)の設けられない部分が、伝熱抑制構造(57)を構成している。
本実施形態の室外熱交換器(23)では、第1ヘッダ集合管(60)の各上側部分空間(63a〜63c)と各下側部分空間(62a〜62c)の一方から他方へ向けて流れる間に空気と熱交換する。このため、各熱交換部(50a〜50c)において主熱交換領域(51a〜51c)と補助熱交換領域(52a〜52c)の境界部(55)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)を流れる冷媒同士、および熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)を流れる冷媒同士の間には、比較的大きな(例えば5℃程度)の温度差がある。そして、これら境界部(55,56)を挟んで隣接する扁平管(33)同士の間隔が狭いと、隣接する扁平管(33)の一方から他方へ熱が移動し、冷媒と空気の間でやり取りされる熱量が減少してしまう。
これに対し、本変形例の室外熱交換器(23)では、扁平管(33)の設けられない部分が伝熱抑制構造(57)を構成している。室外熱交換器(23)の各熱交換部(50a〜50c)において、主熱交換領域(51a〜51c)と補助熱交換領域(52a〜52c)の境界部(55)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)同士の間隔(即ち、主熱交換領域(51a〜51c)の最下方の扁平管(33)と補助熱交換領域(52a〜52c)の最上方の扁平管(33)との間隔)を、D1とする。また、室外熱交換器(23)において、熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)同士の間隔(即ち、隣り合う熱交換部(50a〜50c)のうち下側の熱交換部(50a,50b)の最上方の扁平管(33)と上側の熱交換部(50b,50c)の最下方の扁平管(33)との間隔)を、D2とする。そして、本変形例の室外熱交換器(23)では、上述した特定の扁平管(33)同士の間隔D1,D2が、それ以外の扁平管(33)同士の間隔D0よりも広くなっている。
従って、本変形例によれば、各熱交換部(50a〜50c)において主熱交換領域(51a〜51c)と補助熱交換領域(52a〜52c)の境界部(55)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)同士と、熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)同士の間における熱の移動を抑制することができ、室外熱交換器(23)の性能を充分に発揮させることができる。
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。本実施形態は、上記実施形態1の室外熱交換器(23)の構成を変更したものである。ここでは、本実施形態の室外熱交換器(23)について、図6〜8を適宜参照しながら、上記実施形態1と異なる点を説明する。
図6に示すように、本実施形態の室外熱交換器(23)では、上記実施形態1の板状のフィン(36)に代えて、コルゲートフィンからなるフィン(35)が設けられている。図7にも示すように、本実施形態のフィン(35)は、上下に蛇行する形状となっている。このフィン(35)は、上下に隣り合う扁平管(33)の間に配置され、扁平管(33)の平坦な側面にロウ付けで接合されている。図8に示すように、フィン(35)では、上下に延びる平板状の部分に、伝熱を促進するためのルーバー(40)が形成されている。
図6に示すように、室外熱交換器(23)では、上下に隣り合う扁平管(33)の間の空間が、フィン(35)によって複数の通風路(37)に区画される。室外熱交換器(23)は、扁平管(33)の流体通路(34)を流れる冷媒を、通風路(37)を流れる空気と熱交換させる。
図7及び図8に示すように、フィン(35)には、扁平管(33)よりも風下側に突出する突出板部(42)が形成されている。突出板部(42)は、フィン(35)の上側と下側にも突き出ている。図8に示すように、室外熱交換器(23)では、扁平管(33)を挟んで上下に隣り合うフィン(35)の突出板部(42)が、互いに接触する。なお、図7では、ルーバー(40)が省略されている。
−実施形態2の変形例−
上記実施形態1の変形例と同様に、本実施形態の室外熱交換器(23)においても、隣接する扁平管(33)同士の間で移動する熱の量を削減するための工夫が施されていてもよい。
図9に示すように、本変形例の室外熱交換器(23)の第1ヘッダ集合管(60)では、同図において黒く塗りつぶされた扁平管(33x,33y)のすぐ上とすぐ下の両方に仕切板(39a,39c,39d,39e)が設置されている。具体的に、この室外熱交換器(23)の第1ヘッダ集合管(60)では、各熱交換部(50a〜50c)において主熱交換領域(51a〜51c)と補助熱交換領域(52a〜52c)の境界付近に位置する扁平管(33x)の上下に仕切板(39c,39e)が設置され、熱交換部(50a〜50c)同士の境界付近に位置する扁平管(33y)の上下に仕切板(39a,39d)が設置されている。
本変形例の第1ヘッダ集合管(60)の各連通空間(61a〜61c)では、上記の扁平管(33x,33y)に連通する部分が、下側部分空間(62a〜62c)と上側部分空間(63a〜63c)の両方から仕切られている。このため、本変形例の室外熱交換器(23)において、上記の扁平管(33x,33y)は、実質的に冷媒が通過しない封止された状態となる。この実質的に封止された扁平管(33x,33y)は、伝熱抑制構造(57)を構成している。
本変形例の室外熱交換器(23)の各熱交換部(50a〜50c)では、第1ヘッダ集合管(60)の仕切板(39c)よりも上側で且つ仕切板(39e)よりも下側に位置する部分が、主熱交換領域(51a〜51c)と補助熱交換領域(52a〜52c)の境界部(55)となっている。この境界部(55)には、実質的に封止された扁平管(33x)が存在している。また、室外熱交換器(23)では、第1ヘッダ集合管(60)の仕切板(39a)よりも上側で且つ仕切板(39d)よりも下側に位置する部分が、熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)となっている。この境界部(56)には、実質的に封止された扁平管(33y)が存在している。
このように、本変形例の室外熱交換器(23)では、実質的に封止された扁平管(33x,33y)が伝熱抑制構造(57)を構成している。室外熱交換器(23)の各熱交換部(50a〜50c)において、主熱交換領域(51a〜51c)と補助熱交換領域(52a〜52c)の境界部(55)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)同士の間隔(即ち、主熱交換領域(51a〜51c)の最下方の扁平管(33)と補助熱交換領域(52a〜52c)の最上方の扁平管(33)との間隔)を、D1とする。また、室外熱交換器(23)において、熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)同士の間隔(即ち、隣り合う熱交換部(50a〜50c)のうち下側の熱交換部(50a,50b)の最上方の扁平管(33)と上側の熱交換部(50b,50c)の最下方の扁平管(33)との間隔)を、D2とする。そして、本変形例の室外熱交換器(23)では、上述した特定の扁平管(33)同士の間隔D1,D2が、それ以外の扁平管(33)同士の間隔D0よりも広くなっている。
従って、本変形例によれば、各熱交換部(50a〜50c)において主熱交換領域(51a〜51c)と補助熱交換領域(52a〜52c)の境界部(55)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)同士と、熱交換部(50a〜50c)同士の境界部(56)を挟んで上下に隣り合う扁平管(33)同士の間における熱の移動を抑制することができ、室外熱交換器(23)の性能を充分に発揮させることができる。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。