〔第1実施形態〕
図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る成形型の製造方法を利用することによって最終的に得られるウェハレンズについて説明し、かかるウェハレンズを作製するための成形型の構造や製造方法について説明する。
ウェハレンズ等の構造
図1に示すように、ウェハレンズ10は、円盤状の外形を有しており、基板11と、第1レンズ樹脂層12と、第2レンズ樹脂層13とを有する。本実施形態においては、ウェハレンズ10をレンズ基板とも称する場合がある。なお、図1において、第1レンズ樹脂層12や第2レンズ樹脂層13の表面を部分的に拡大して斜視図として示している。
ウェハレンズ(レンズ基板)10のうち基板11は、ウェハレンズ10の中心に埋め込まれた円形の平板(後述する第3基板)であり、光透過性を有するガラスで形成されている。基板11の外径は、第1及び第2レンズ樹脂層12,13の外径と略同じである。基板11の厚さは、基本的には光学的仕様によって決定されるが、少なくとも成形物を離型してウェハレンズ10を得るに際して破損しない程度の厚さとなっている。
第1レンズ樹脂層12は、光透過性を有し、基板11の一方の面11a上に形成されている。第1レンズ樹脂層12は、部分的な拡大斜視図に示すように、第1レンズ本体1aと第1フランジ部1bとを一組とする多数の第1レンズ要素L1をXY面内で2次元的に配列している。これらの第1レンズ要素L1は、連結部1cを介して一体に成形されている。各第1レンズ要素L1と連結部1cとを合わせた表面は、転写によって一括成形される第1被転写面12aとなっている。第1レンズ本体1aは、図2にも示すように、例えば凸形状の非球面型又は球面型のレンズ部であり、第1光学面OS1を有している。周囲の第1フランジ部1bは、第1光学面OS1の周囲に広がる平坦な第1フランジ面FP1を有し、第1フランジ面FP1の外周は、連結部1cの表面ともなっている。第1フランジ面FP1は、光軸OAに垂直なXY面に対して平行に配置されている。
なお、図1に示すように、第1レンズ樹脂層12は、製造工程に由来して多数のアレイユニットAUに区分されており、これらのアレイユニットAUは、詳細な図示を省略するが、矩形の輪郭を有し、基板11上でマトリックス状又は格子状に配列されている。各アレイユニットAUは、後述するマスター型30の端面30aを反転したような表面形状を有しており、等間隔でマトリクス状に配列された多数の第1レンズ本体1aを有している。
第1レンズ樹脂層12は、例えば光硬化性樹脂で構成される。光硬化性樹脂は、主成分である重合性単量体などの重合性組成物と、重合性組成物の重合硬化を開始させるための光重合開始剤と、必要に応じて用いられる各種添加剤とを含む光硬化性樹脂材料を硬化させることにより得られる。このような光硬化性樹脂材料は、硬化前の状態では流動性を有している。光硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂、ビニル樹脂等がある。エポキシ樹脂は、光重合開始剤のカチオン重合により重合性組成物を反応硬化させて得ることができ、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂、及びビニル樹脂は、光重合開始剤のラジカル重合により重合性組成物を反応硬化させて得ることができる。
第2レンズ樹脂層13は、第1レンズ樹脂層12と同様に、光透過性を有し、基板11の他方の面11b上に形成されている。第2レンズ樹脂層13は、部分的な拡大斜視図に示すように、第2レンズ本体2aと第2フランジ部2bとを一組とする多数の第2レンズ要素L2をXY面内で2次元的に配列している。これらの第2レンズ要素L2は、連結部2cを介して一体に成形されている。各第2レンズ要素L2と連結部2cとを合わせた表面は、転写によって一括成形される第2被転写面13aとなっている。第2レンズ本体2aは、図2にも示すように、例えば凸形状の非球面型又は球面型のレンズ部であり、第2光学面OS2を有している。周囲の第2フランジ部2bは、第2光学面OS2の周囲に広がる平坦な第2フランジ面FP2を有し、第2フランジ面FP2の外周は、連結部2cの表面ともなっている。第2フランジ面FP2は、光軸OAに垂直なXY面に対して平行に配置されている。
なお、第2レンズ樹脂層13も、製造工程に由来して多数のアレイユニットAUに区分されており、これらのアレイユニットAUは、矩形の輪郭を有し、基板11上でマトリックス状又は格子状に配列されている。
第2レンズ樹脂層13に用いられる光硬化性樹脂は、第1レンズ樹脂層12に用いられるものと同様の光硬化性樹脂である。ただし、両レンズ樹脂層12,13を同一の光硬化性樹脂で形成する必要はなく、別の光硬化性樹脂で形成することができる。
なお、第1レンズ樹脂層12と第2レンズ樹脂層13とのうち一方を省略することができる。つまり、基板11の一方の面11a又は他方の面11bにのみレンズ樹脂層を設けてもよい。
図2に示すように、第1レンズ樹脂層12に設けたいずれか1つの第1レンズ要素L1と、これに対向する第2レンズ樹脂層13の第2レンズ要素L2と、これらのレンズ要素L1,L2間に挟まれた基板11の部分11pとは、1つの光学レンズ4に相当する。光学レンズ4は、ウェハレンズ10を連結部1c,2cの位置でダイシングすることによって個片化して得られる平面視正方形の複合レンズとなっている。
形状転写用の成形型の構造
図1のウェハレンズ10は、図3(A)に示すマスター型30を原版として3段階の転写を行うことによって作製される。以下、マスター型30やこれから得られる樹脂製の形状転写面を持つ成形型の構造について説明する。
図3(A)及び4(A)に示すように、マスター型30は、直方体状のブロック部材であり、その端面30a上に、図4(B)のサブマスター型40の第2成形面43を形成するための第1成形面31と、第1成形面31の周囲に設けられた環状の段差32とを有する。マスター型30は、サブマスター型40の作製のため繰返し使用されるものであり、サブマスター基板42上にマトリックス状又は格子状の配列で一様に形成された浅い矩形の凹部42cに対向するように2次元的に移動しながら転写を繰り返すステップ&リピート方式の転写によって、サブマスター基板42上に分離して配列された単位成形面PUをまとめた第2成形面43を有するサブマスター樹脂層41を形成することができる。マスター型30の第1成形面31は、最終的に得られるウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12の第1被転写面12aを部分的に反転した形状を有する。また、第1成形面31の輪郭即ち転写される面の外形は、長方形形状となっている。第1成形面31は、第1被転写面12aのうち第1光学面OS1を形成するための第1光学転写面31aと、第1フランジ面FP1を形成するための平坦な第1フランジ転写面31bとを含む。第1光学転写面31aは、例えば等間隔の格子点上に多数個配置されており、各々が最終的に得られる光学レンズに対応する形状、ここでは、略半球の凹形状に形成されている。一方、段差32は、サブマスター型40のサブマスター樹脂層41に残膜部を形成するための部分である。後退面32aから端面30aに至る側面部には、成形物の離型性向上のために、端面30aに近づくほど第1成形面31の中央に向かって傾斜するテーパーを設けてもよい。
マスター型30は、一般に金属材料で形成される。金属材料としては、例えば鉄系材料、鉄系合金、非鉄系合金等が挙げられる。なお、マスター型30は、金属ガラスやアモルファス合金で形成されてもよい。マスター型30は、単一の材料で形成されるものに限らず、適当な基材上に上記のような金属材料等を被覆したものとすることもできる。
図4(B)に部分的に拡大して示すように、第1の成形型であるサブマスター型40は、サブマスター樹脂層41とサブマスター基板42とを有する。なお、図4(B)においては、理解を容易にするために、サブマスター型40の一部を切り出した状態を模式的に示している。サブマスター樹脂層41とサブマスター基板42とは、積層構造となっている。サブマスター樹脂層41は、その端面41a上に、後述するサブサブマスター型50の第3成形面53を形成するための第2成形面43を有する。第2成形面43は、上記のステップ&リピート方式によって第1成形面31をサブマスター基板42上に繰り返し転写して形成される多数の単位成形面PUで構成される。つまり、1つの単位成形面PUが1つのアレイユニットAU(図1参照)に対応する。この第2成形面43は、最終的に得られるウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12の第1被転写面12aのポジ型に対応し、第1被転写面12aのうち第1光学面OS1を形成するための第2光学転写面43aと、第1フランジ面FP1を形成するための第2フランジ転写面43bとを含む。第2光学転写面43aは、第1光学転写面31aによって転写され、格子点上に多数個配置されており、略半球の凸形状に形成されている。
サブマスター樹脂層41は、第1の樹脂材料を用いて形成されている。第1の樹脂材料としては、光硬化性樹脂材料が挙げられ、上記ウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12と同様の、硬化後に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂、ビニル樹脂等になる光硬化性樹脂材料が使用可能である。また、第1の樹脂材料としては、硬化後に良好な離型性を示す樹脂材料、特に硬化波長で十分な光透過性を有し、離型剤を塗布しなくても離型できる樹脂材料が好ましい。
サブマスター基板42は、光透過性を有し十分な剛性を有する材料、例えばガラス等で形成されている第1基板である。サブマスター基板42(第1基板)の表面42a上には、図3(B)に示すように、略全面に亘ってマトリックス状に配列された多数の浅い矩形の凹部42cが形成されている。各凹部42cは、200μm程度以下の深さを有し、底面42dと側面42eとを有し内部が閉じた形状を持つ窪みである。凹部42cは、マスター型30の端面30aとサブマスター基板42の表面42aとの間に第1の樹脂材料を挟んで転写を行う際に、第1の樹脂材料が極端に薄くなることを防止している。これにより、マスター型30を大きな圧力でサブマスター基板42側に押し付けることなく、マスター型30をサブマスター基板42の表面42aに対して適所まで近づけることができる。凹部42cは、サブマスター基板42に対する切削加工やエッチング等、各種の方法によって形成することができる。凹部42cの側面42eは、底面42dに近づくほど凹部42cの開口面積が小さくなるように傾斜していたり曲面になっていたりしてもよい。このようにすると凹部42cを比較的容易に形成できる。あるいは、底面42dに近づくほど広くなるように側面42eを傾斜させたり、側面42eを粗面化してもよい。このようにすると、マスター型30からの離型時における離型不良を低減することができる。ここで、凹部42cの配列パターンは、上記のステップ&リピート方式によってサブマスター型40のXY面上においてマスター型30を転写することで得られる被転写面である第2成形面43を構成する長方形形状の単位成形面PUの配列パターンに対応するものである。従って、後述する単位成形面PUの配列パターンの決定は、凹部42cの配列パターンを決定することでもある。
図4(C)に部分的に拡大して示すように、第2の成形型であるサブサブマスター型50は、サブサブマスター樹脂層51とサブサブマスター基板52とを有する。なお、図4(C)においては、理解を容易にするために、サブサブマスター型50の一部を切り出した状態を模式的に示している。サブサブマスター樹脂層51とサブサブマスター基板52とは、積層構造となっている。サブサブマスター樹脂層51は、その端面51a上に、ウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12を転写によって形成するための第3成形面53を有する。この第3成形面53は、ウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12の第1被転写面12aを反転した形状を有し、第1被転写面12aのうちのうち第1光学面OS1を形成するための第3光学転写面53aと、第1フランジ面FP1を形成するための第3フランジ転写面53bとを含む。第3光学転写面53aは、上述のように第2光学転写面43aによって転写され、マトリクス状に複数個配置されており、略半球の凹形状に形成されている。
サブサブマスター樹脂層51は、サブマスター樹脂層41の第1の樹脂材料と同様の第2の樹脂材料で形成され、第2基板としてのサブサブマスター基板52は、サブマスター基板42と同様の材料で形成される。即ち、サブサブマスター樹脂層51の第2の樹脂材料としては、硬化後に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アリルエステル樹脂、ビニル樹脂等になる光硬化性樹脂材料が使用可能である。また、サブサブマスター基板(第2基板)52としては、光透過性を有し十分な剛性を有する材料、例えばガラス等で形成されている。
なお、サブマスター樹脂層41とサブサブマスター樹脂層51とは、必ずしも同一の材料で形成される必要はなく、異なる光硬化性樹脂等で形成されてもよい。また、サブマスター基板42とサブサブマスター基板52も、必ずしも同一の材料で形成される必要はなく、異なる材料で形成されてもよい。
マスター型30、サブマスター型40、及び、サブサブマスター型50には、成形物の離型を容易にするため、離型剤を塗布するなどして離形層を形成してもよい。
サブマスター型等の製造装置
以下、図5を参照して、図4(B)に示すサブマスター型40等を作製するための製造装置について説明する。
図5に示すように、製造装置100は、アライメント駆動部61と、ディスペンサー62と、光源63と、制御装置65と、基板ステージセンサー71と、マスター型取付部センサー72と、ユーザー操作部73とを備える。ここで、アライメント駆動部61は、図3(A)に示すマスター型30を図3(B)に示すサブマスター基板42に設けた各凹部42cに対して精密に位置決めして配置するためのものである。アライメント駆動部61は、サブマスター基板42を支持する基板用ステージ61mと、マスター型30を支持する金型用ステージ61nと、基板用ステージ61m上のサブマスター基板42をX軸方向の所望位置に移動させためのX軸移動機構61aと、サブマスター基板42をY軸方向の所望位置に移動させるY軸移動機構61bと、金型用ステージ61n上のマスター型30をZ軸方向の所望位置に移動させるZ軸移動機構61cと、移動機構61a,61b,61c等の滑らかな動作を可能にするエアスライド駆動機構61dと、マスター型30の傾斜や回転姿勢を調整するアクチュエーター61eと、マスター型30の周辺空間を適当なタイミングで減圧するための減圧機構61gと、マスター型30のサブマスター基板42に対する3次元的な相対的位置又は姿勢を検出する位置センサー61iと、アライメント状態を観察するための顕微鏡61jと、マスター型30のサブマスター基板42への押し付け圧力を検出する圧力センサー61hとを備える。
ディスペンサー62は、図3(B)に示すサブマスター基板42のサブマスター樹脂層41を形成するために、マスター型30上に光硬化性樹脂材料からなる第1の樹脂材料を供給する役割を有する。光源63は、マスター型30とサブマスター基板42との間に挟まれた第1の樹脂材料に対して、例えばUV光源などの、樹脂材料を硬化させる波長の光を発生するものであり、光を照射することにより、サブマスター基板42上に固化したサブマスター樹脂層41を形成する。
基板ステージセンサー71は、基板用ステージ61m上に載置されたサブマスター基板42について、例えばX,Y及びZ方向から感知して位置情報等を制御装置65に送信する。
マスター型取付部センサー72は、金型用ステージ61nに支持されたマスター型30について、例えばX,Y及びZ方向或いは傾斜角度を感知して位置情報等を制御装置65に送信する。
ユーザー操作部73は、ユーザーによるキーボードやマウス等(不図示)の操作に基づいて入力された情報を受け付ける。例えばユーザーによって、ユーザー操作部73を介してサブマスター基板42のサイズやマスター型30の縦横のサイズ等の情報が制御装置65に入力される。なお、基板ステージセンサー71がサブマスター基板42のサイズ等を検出可能であれば、検出した情報を制御装置65に送信し、マスター型取付部センサー72がマスター型30の縦横のサイズ等の情報を送信するという構成も可能である。
制御装置65は、サブマスター型40等の作製のため、上記のアライメント駆動部61の各部、ディスペンサー62、光源63等の動作を統括的に制御する部分であり、かつ、成形型の型作製に際してサブマスター基板42上での成形面の配列パターンを決定する部分である。つまり、制御装置65は、入力されたマスター型30及びサブマスター基板42のサイズ情報に応じて最適なマスター型30の転写パターンである特定の配列パターンを選択するための手段として機能する。このため、制御装置65は、成形面の転写数を演算する制御部66と、特定の配列パターンを選択するための候補である複数の配列規則の情報を格納するとともに現状設置されているサブマスター基板42及びマスター型30についてのサイズ等外形に関する情報を保存する記憶部67と、各種情報の送受信を行うインターフェース部IFとを有する。制御装置65は、インターフェース部IFを介してユーザー操作部73等からの情報を受け取り、これらの情報を記憶部67の各部に保存する。さらに、制御装置65は、これらの情報に基づいて、記憶部67に格納された複数の配列規則を呼び出して制御部66で演算をそれぞれ行い、演算結果から最適な配列規則を選択し、現状のサブマスター基板42及びマスター型30についての特定の配列パターンとして採用する。また、記憶部67には、複数の配列規則として、異なる手法で単位成形面PUを格子状に配列した第1〜第4の配列規則が保存されているものとする(図6(A)及び図8(A)〜8(C)参照)。また、各配列規則の配列中心位置即ち各配列規則に基づく配列パターンの基準位置は、いずれもサブマスター基板42の中心点に一致させている。さらに、制御装置65は、制御部66で採用した特定の配列パターンに基づいて、基板用ステージ61m上に載置されたサブマスター基板42の移動のさせ方を決定する。つまり、1つの転写ステップごとのマスター型30に対するサブマスター基板42の移動方向及び量を決定する。
配列規則での最大取り数の演算
以下、図6(A)及び6(B)により、配列規則の一例について説明する。図6(A)及び6(B)は、記憶部67に記憶された4つの配列規則のうち、第1の配列規則について示す図であり、図6(A)は、その一部としてサブマスター基板42の1/4の領域(第1象限)についてのパターンを拡大したものである。なお、図6(B)は、サブマスター基板42全体についてのパターンの様子を示すものである。
既述のように、サブマスター基板42は円板状であり、ここでは、図6(A)に示すように、その中心を中心点PAとし、縁部であるエッジEG上の点を周辺点PBとしている。つまり、中心点PAから周辺点PBまでの距離がサブマスター基板42の半径Rである。
これに対して、多数の単位成形面PUがサブマスター基板42の中に納まっていることが、サブマスター基板42から有効に取り出されるために最低限必要な条件となる。この条件下で、単位成形面PUを取り出すことのできる最大限の個数が、図6(A)に示す第1の配列規則での最大取り数となる。
ここで、図6(B)に示すように、格子状に配列される多数の単位成形面PUの中心である成形位置PPをX方向に結んだ線を第1基準線LXとし、Y方向に結んだ線を第2基準線LYとする。第1の配列規則の場合、サブマスター基板42のX方向の中心軸AXは、中心点PAを挟んで隣接して延びる一対の第1基準線LX,LXの中間線となっている。つまり、当該一対の第1基準線LX,LXは、中心軸AXに対して対称となっている。また、同様に、サブマスター基板42のY方向の中心軸AYは、中心点PAを挟んで隣接して延びる一対の第2基準線LY,LYの中間線となっている。この結果、第1の配列規則では、配列中心位置である中心点PAを4つの単位成形面PUで囲むような構成配列となっている。以上より、第1の配列規則は、サブマスター基板42の中心軸AX,AYの双方に対して軸対称なパターンとなっている。
以下、上記最大取り数をカウントするために第1の配列規則で配列された多数の単位成形面PUの満たすべき条件をより具体的にする。中心点PAを原点とし、多数の単位成形面PUの占める領域上の点に関して原点からX方向についての距離を距離XX、Y方向についての距離を距離YYとすると、これらがサブマスター基板42の半径Rに対して、
となっていることが上述した条件に相当する。さらに具体的には、第1の配列規則の多数の単位成形面PUの外縁のうち、中心点PAから最も遠くなる可能性のある図6(A)中の周辺点P1や周辺点PZについて、上式(1)の条件が満たされていればよい。ここでは、一例として、X及びY方向に格子状に並ぶ多数の単位成形面PUのうち、Y方向に並ぶ列を一列として、各列を−X側のものから順に確認していくものとする。この場合、最も−X側の第1列目C1を構成する単位成形面PUのうち中心点PAから最も遠くなる可能性のある点は、最も+Y側に位置する単位成形面PUの+Y側かつ+X側の頂点である周辺点P1である。従って、第1列目C1については、周辺点P1が上式(1)の条件を満たさせば他の全ての単位成形面PUについて上式(1)の条件を満たすことになる。同様の条件を、第2列目C2から最終列目CZまで考察することで、全ての単位成形面PUについて上式(1)の条件を満たす最大限の単位成形面PUの配列及びその時の単位成形面PUの個数である最大取り数が分かる。なお、X方向及びY方向についての対称性により、図6(A)に示す1/4の領域配列と他の領域(第2〜第4象限)の配列とは等しいものとして捉えられるので、図6(A)に示す領域についてのみ考察すれば、他の領域について同様に考察できる。
ここで、上記周辺点P1等の周辺点を一般化した式を考える。このため、Y方向に並ぶ任意の1つの列での単位成形面PUの個数をn
yとし、X方向についての個数即ちその列が第何列目であるかを示す数をn
xとする。従って、n
x、n
yは、整数である。また、各単位成形面PUのY方向の長さをaとし、X方向の長さをbとする。さらに、各単位成形面PU間のY方向の間隔をc
yとし、X方向の間隔をc
xとする。この場合、中心線AXが隣接する一対の基準線LX,LXの中間線に一致することから距離YYは、長さaと間隔c
yとの和に個数n
yを掛けた値から間隔c
yの半分の値を引いて、
と表される。同様に、中心線AYが隣接する一対の基準線LY,LYの中間線に一致することから距離XXは、
と表される。これらの式(2)、(3)を上式(1)に代入して、Y方向についての個数n
yについて解くと、
となる。従って、例えば図7(A)に示すように、第1列目C1の単位成形面PUのY方向に並ぶ個数は、上式(4)において、n
x=1とした場合での個数n
yの最大値に相当する。ここで、個数n
yは整数である。同様に、図7(B)に示すように、第2列目C2の成形面42のY方向に並ぶ個数は、上式(4)において、n
x=2とした場合の個数n
yの最大値に相当する。以下同様にして個数n
yをカウントし、最後に、図7(B)に示すように、Xについて最終列目CZの成形面42のY方向に並ぶ個数n
yについてカウントする(図7(C)の場合、n
y=1である)。その後、すべての個数n
yを足し合わせ、さらに、第1の配列規則の場合、足し合わせたものを4倍すれば、基板42全体での単位成形面PUの個数の最大である最大取り数が算出できる。なお、最終列が第何列目となるかについては、例えば距離XXがとり得る最大の条件を考慮すればよい。具体的には、距離XXが半径R以下となるための条件
即ち
を満たす最大の整数n
xの値(n
xは整数)を最終列の値とすればよい。
以下、より具体的な一実施例について説明する。上記において、R=90mm、a=10mm、b=20mm、cx=cy=1mmとする。この場合、図6(A)に示す全体の1/4の領域における単位成形面PUの個数は、23個となる。具体的に算出すると、まず、上式(5')より、nxの最大は、nx=4即ちXについての最終列は第4列である。次に、上式(4)より、nx=1(第1列目)のときny=8、nx=2(第2列目)のときny=7、nx=3(第3列目)のときny=5、nx=4(第4列目)のときny=3となり、個数nyの合計が8+7+5+3=23となる。従って、図6(B)に示す基板43全体からは、最大で23個×4=92個の単位成形面PUを取り出せることになる。つまり、この場合の第1の配列規則での最大取り数は92個である。
以下、図8(A)〜8(C)により、他の配列規則である第2〜第4の配列規則について説明する。なお、各図は、1/4の領域について示すものであり、全体については第1の配列規則の場合と同様、対称性により同等であるので省略する。
まず、図8(A)は、第2の配列規則について示す図である。図示のように、第2の配列規則では、単位成形面PUの中心である成形位置PPと配列中心位置である中心点PAとが一致している。つまり、1つの第1基準線LXと中心軸AXとが一致し、1つの第2基準線LYと中心軸AYとが一致し、これらの交点が配列中心位置となっている。以上より、第2の配列規則も、サブマスター基板42の中心軸AX,AYの双方に対して軸対称なパターンとなっている。この場合、周辺点の距離YY、距離XXは、単位成形面PUの中心である成形位置PPと中心点PAとが一致していることから、長さaと間隔c
yとの和に個数n
yを掛けた値から長さaの半分の値と間隔c
yの1つ分の値とを引いて、
と表される。従って、これらの式(6),(7)を上式(1)に代入して、Y方向についての個数n
yについて解くと、
となる。
次に、図8(B)は、第3の配列規則について示す図である。図示のように、第3の配列規則では、1つの第1基準線LXが中心軸AXに一致し、中心点PAを挟んで隣接して延びる一対の第2基準線LY,LYの中間線が中心軸AYに一致する。以上より、第3の配列規則も、サブマスター基板42の中心軸AX,AYの双方に対して軸対称なパターンとなっている。この場合、距離YYは、上記第2の配列規則と同様であり、距離XXは、上記第1の配列規則と同様であるので、
と表される。従って、これらの式(9),(10)を上式(1)に代入して、Y方向についての個数n
yについて解くと、
となる。
次に、図8(C)は、第4の配列規則について示す図である。図示のように、第4の配列規則では、中心点PAを挟んで隣接して延びる一対の第1基準線LX,LXの中間線が中心軸AXに一致し、1つの第2基準線LYが中心軸AYに一致する。以上より、第4の配列規則は、サブマスター基板42の中心軸AX,AYの双方に対して軸対称なパターンとなっている。この場合、距離YYは、上記第1の配列規則と同様であり、距離XXは、上記第2の配列規則と同様であるので、
と表される。従って、これらの式(12),(13)を上式(1)に代入して、Y方向についての個数n
yについて解くと、
となる。
以上の第2〜第4の配列規則に関して、第1の配列規則の場合と同様に、上述した具体的な一実施例について、上式(8),(11),(14)等を用いて各配列規則の最大取り数を算出すると、1/4の領域における単位成形面PUの個数は、第2の配列規則で28個、第3の配列規則で24個、第4の配列規則で24個となる。ただし、全体としての個数を算出するに当たっては、これらを単純に4倍すると、例えば第2の配列規則の場合、縦の中心軸AY上の単位成形面PUや横の中心軸AX上の単位成形面PUを重複してカウントすることになる。従って、4倍した後に重複してカウントした分を差し引いた個数が第2の配列規則での最大取り数となる。この場合、第2の配列規則での最大取り数は83個となる。同様に、第3の配列規則では、横の中心軸AX上の単位成形面PUの重複分を除いた88個が最大取り数となり、第4の配列規則では、縦の中心軸AY上の単位成形面PUの重複分を除いた84個が最大取り数となる。従って、上記一例の場合、第1の配列規則が最大取り数92個で最も大きな値をとる。したがって、この場合、第1の配列規則を採用することで、基板42からより効率的に光学素子を取り出すことができる。なお、光学レンズがマスター型30に対して縦横2mm間隔で切り出されるものとすると、1つの単位成形面PUから50個の光学レンズが切り出されることになる。つまり、1つのウェハ基板から92×50=4600個の光学レンズが切り出されることになる。
以上に対して、別の具体的な一実施例では、第1の配列規則以外の配列規則の最大取り数が最も大きな値となる場合もある。例えば、R=90mm、a=10mm、b=12mm、cx=cy=2mmとする。この場合、第1〜第4の配列規則の最大取り数は、128個、123個、132個及び130個となり、第3の配列規則の最大取り数が最も大きな値をとる。この場合、光学レンズがマスター型30に対して縦横2mm間隔で切り出されるものとすると、1つの単位成形面PUから30個の光学レンズが切り出され、1つのウェハ基板から132×30=3960個の光学レンズが切り出される。また、別の具体的な一実施例として、例えば、R=90mm、a=20mm、b=22mm、cx=cy=2mmとする。この場合、第1〜第4の配列規則の最大取り数は、36個、39個、38個及び36個となり、第2の配列規則の最大取り数が最も大きな値をとる。この場合、光学レンズがマスター型30に対して縦横2mm間隔で切り出されるものとすると、1つの単位成形面PUから110個の光学レンズが切り出され、1つのウェハ基板から39×110=4290個の光学レンズが切り出される。
以上のように、成形型の製造装置100では、サブマスター基板42のサイズ即ち半径Rの値やマスター型30のサイズ即ち長さa,bの値に対応して複数の配列規則のうち最適なものを選択することで、例えばサブマスター基板42やマスター型30を取り換えてもこれに迅速に対応し、より効率的な成形型の作製ができるものとなっている。
最大取り数の算出の処理
以下、図5のブロック図及び図9のフローチャートにより、上述した最大取り数の算出の処理を含む特定の配列パターンを選択するための手段として機能する成形型の製造装置100の動作について説明する。
まず、製造装置100の制御装置65において、制御部66は、インターフェースIFで受け付けたサブマスター基板42に関する情報を記憶部67の基板情報記憶部67aに保存し、マスター型30に関する情報を記憶部67のマスター型情報記憶部67bに保存する(図9のステップS101)。また、制御部66は、記憶部67の配列規則記憶部67cに保存された複数の配列規則の中から一つの配列規則を読み出す(図9のステップS102)。ここでは、配列規則記憶部67cにおいて、上述した第1〜第4の配列規則が記憶されており、これらのうちから一つが読み出されるものとする。次に、制御部66の最大取り数演算部66aは、読み出した一つの配列規則について、基板42及びマスター型30に関する基板42の半径Rやマスター型30の縦横の長さa,b等についての情報を照合する。これとともに、最大取り数演算部66aは、上式(4)等に基づいて、nx=1とした場合即ち第1列目の単位成形面PUの個数nyの最大値を初期のnyの値として算出する(図9のステップS103)。次に、最大取り数演算部66aは、上式(4)等においてnx=2とし(図9のステップS104)、個数nyの最大値を求める(図9のステップS105)。以上の動作を個数nxが最大となるまで繰り返す(図9のステップS106)。ステップS105において、個数nxが最大となったと判断されると、最大取り数演算部66aは、算出された各個数nyの値を足し合わせるとともに、上述した各配列規則に応じた計算方法によって、その配列規則に基づく配列パターンでの最大取り数を算出する処理を行う(図9のステップS107)。以上により一つの配列規則に基づく配列パターンを確定するとともに当該配列パターンでの最大取り数の算出がなされると、制御部66は、他の配列規則について上記と同様の算出処理が終了したか否かを確認し、全ての配列規則について上記の算出処理が終了するまで同様の動作を繰り返す(図9のステップS108)。ステップS108において、全ての配列規則についての算出処理が終了したと判断されると、各配列規則での最大取り数に基づいて、これらのうち最適な配列規則を選択するとともに選択した配列規則を特定の配列パターンとして記憶部67の選択処理記憶部67dに保存する(図9のステップS109)。
製造装置100は、以上の結果から得られた特定の配列パターンに基づいて、サブマスター基板42の表面42a上に凹部42c(図3(B)参照)を形成させるとともに、マスター型30によって凹部42c上に単位成形面PUを形成させる。これにより、第2成形面43が形成される。
ウェハレンズの製造工程
以下、図10(A)〜10(E)、11(A)〜11(D)等を参照しつつ、上述のマスター型30、サブマスター型40、サブサブマスター型50を使用して行われるウェハレンズ10の製造工程の概要について説明する。なお、以下では第1レンズ樹脂層12の成形について説明するが、第2レンズ樹脂層13の成形についても同様の工程が行われる。
まず、研削加工等によって、ウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12を構成する各アレイユニットAUのネガ型に対応するマスター型30を作製する(図12のステップS1参照)。
次に、図10(A)に示すように、図5等に示す製造装置100を用いて、マスター型30の第1成形面31上に第1の樹脂材料41bを配置する。その後、図10(B)に示すように、図5等に示す製造装置100を用いて、マスター型30の端面30aをサブマスター基板42の表面42aに形成された特定の凹部42cに対向するようにアライメントして配置し、サブマスター基板42の下方からマスター型30を押圧して、第1成形面31と凹部42cとが適当な間隔となるまで近接させる。この状態で、光源63によりUV光などの所定波長の光を照射し、間に挟まれた樹脂材料41bを硬化させる。結果的に、マスター型30の第1成形面31が転写されかつ硬化した樹脂によって構成される樹脂層部分41dが形成される。これにより、第2成形面43が形成される。次に、図10(C)に示すように、マスター型30から樹脂層部分41dとサブマスター基板42とを一体として離型する。これにより、マスター型30の端面30aを対向させた凹部42cを含む矩形領域において樹脂層部分41dが露出する。この樹脂層部分41dは、マスター型30の段差32を転写したものとして、本体の周囲に残膜部44を有する。また、樹脂層部分41dは、その表面として、第2成形面43の一部を構成する転写面要素43dを有する。この転写面要素43dは、マスター型30の第1成形面31上にn個の第1光学転写面31aが形成されている場合、これに対応してn個の第2光学転写面43aを有する。つまり、1つの転写面要素43dが、図6(A)等に示す単位成形面PUの1つ分に相当する。
次に、図10(A)に戻って、マスター型30の第1成形面31上に第1の樹脂材料41bを配置する。その後、図10(B)に示すように、マスター型30の端面30aをサブマスター基板42の表面42aに形成された次の凹部42cに対向するようにアライメントして配置し、サブマスター基板42の下方からマスター型30を押圧して第1成形面31と凹部42cとが適当な間隔となるまで近接させる。ここで、樹脂材料41bはマスター型30によって押圧され、凹部42c及びマスター型30の段差32の後退面32aとサブマスター基板42との対向部とを満たす。この状態で、光源63によりUV光などの所定波長の光を照射させ、間に挟まれた第1の樹脂材料41bを硬化させる。結果的に、第1の樹脂材料41bにマスター型30の第1成形面31が転写され、第1の樹脂材料41bに第2成形面43を分割した転写面要素43dを有する樹脂層部分41dが形成される。この樹脂層部分41dは、マスター型30の段差32を転写したものとして、本体の周囲に残膜部44を有する。
以上の工程を、図5に示す記憶部67の選択処理記憶部67dにおいて特定の配列パターンとして選択・保存された内容に基づいて繰り返す。具体的には、例えば移動機構61a,61bによって、まず、基板用ステージ61m上のサブステージ基板42の中心を特定の配列パターンの配列中心位置である中心点PAに一致させる。次に、特定の配列パターンに応じて定まっているサブマスター基板42の移動パターンに従って、1つの転写ステップごとに移動機構61a,61b等が動作してマスター型30とサブマスター基板42との相対的な位置関係を特定の移動方向及び移動量で順次変化させ、転写動作が進められる。この際、第1成形面31上の樹脂材料41bの塗布や樹脂材料41bの硬化等が各転写ステップでのルーチン動作としてなされる。以上により、マスター型30とサブマスター基板42との組み合わせに対して、制御装置65によって最適と判断された配列パターンでの第1成形面31の転写がなされる。これにより、サブマスター基板42上に形成されたすべての凹部42cにおいて樹脂層部分41dが形成され、マトリックス状又は格子状に配列された多数の樹脂層部分41dを含むサブマスター樹脂層41が形成され、結果としてサブマスター型40が完成する(図12のステップS2参照)。サブマスター樹脂層41は、サブマスター基板42上にm個の凹部42cが形成されている場合、これに対応してm個の樹脂層部分41dを有する。つまり、サブマスター型40上には、n×m個の第2光学転写面43aが形成されている。
次に、図10(D)に示すように、図5等に示す製造装置100と同様の製造装置を用いて、サブマスター型40の第2成形面43上に第2の樹脂材料51bを広範囲に配置する。その後、図10(E)に示すように、図5等に示す製造装置100と同様の製造装置を用いて、サブサブマスター基板52の下方からサブマスター型40を押圧して第2成形面43とサブサブマスター基板52の表面52aとが近接して適当な間隔となるまで移動させる。この状態で、光源によりUV光などの所定波長の光を照射し、間に挟まれた第2の樹脂材料51bを硬化させる。結果的に、サブマスター型40の第2成形面43が転写されかつ硬化した樹脂から構成されるサブサブマスター樹脂層51が形成される。つまり、サブサブマスター樹脂層51上に第3成形面53(図4(C)に示す第3光学転写面53a及び第3フランジ転写面53bを含む)が形成される。なお、本実施形態においては、サブサブマスター基板52側から光を照射しているが、サブマスター型40側から光を照射してもよいし、サブサブマスター基板52側とサブマスター型との両方から光を照射してもよい。
次に、図11(A)に示すように、サブマスター型40からサブサブマスター樹脂層51とサブサブマスター基板52とを一体として離型し、独立したサブサブマスター型50が完成する(図12のステップS3参照)。なお、サブサブマスター型50のサブサブマスター樹脂層51は、サブマスター型40の樹脂層部分41d即ち図6(A)等の単位成形面PUに対応して多数の樹脂層部分51dに区分されており、これらの樹脂層部分51dは、マトリックス状に配列されている。各樹脂層部分51dの外側には、サブマスター型40の残膜部44に挟まれた凹部の形状に対応する突起部54が形成される。この突起部54は、サブマスター型40の表面において格子パターン状に延びる。
次に、ウェハレンズ10の作製を開始する。図11(B)に示すように、図5等に示す製造装置100と同様の製造装置を用いて、サブサブマスター型50の第3成形面53上に第3の樹脂材料12b(第1レンズ樹脂層12を形成するための光硬化性樹脂材料)を広範囲に配置する。その後、図11(C)に示すように、図5等に示す製造装置100と同様の製造装置を用いて、基板11の下方からサブサブマスター型50を押圧して第3成形面53と基板11の表面とが適当な間隔となるまで移動させる。この状態で、光源によりUV光等の所定波長の光を照射し、間に挟まれた樹脂材料12bを硬化させる。結果的に、サブサブマスター型50の第3成形面53が転写されかつ硬化した樹脂から構成される第1レンズ樹脂層12が形成される。つまり、第1樹脂層12上に第1被転写面12a(図1に示す第1光学面11d及び第2フランジ面11gを含む)が形成される。なお、本実施形態においては、基板11側から光を照射しているが、サブサブマスター基板52側から光を照射してもよいし、基板11側とサブサブマスター基板52側との両方から光を照射してもよい。
その後、図11(D)に示すように、サブサブマスター型50から第1レンズ樹脂層12と基板11とを一体として離型する。既に第2レンズ樹脂層13が形成されている場合、ウェハレンズ10が完成する(図12のステップS4参照)。第2レンズ樹脂層13が形成されていない場合、第1レンズ樹脂層12と同様の工程を行うことで第4の樹脂材料からなる第2レンズ樹脂層13が形成され、第2レンズ樹脂層13用のサブサブマスター型50から第2レンズ樹脂層13と基板11とを一体として離型することで、ウェハレンズ10が完成する(図12のステップS4参照)。なお、第1レンズ樹脂層12を得るためにサブサブマスター型50を離型する前に、第2レンズ樹脂層13を形成するための工程を開始するようにしてもよい。基板11の一方の面に成形型を残した状態で、基板11の他方の面に成形を始めることで、成形物に反りが発生するのを抑えやすくなる。
ウェハレンズ10の第1レンズ樹脂層12は、サブサブマスター型50の樹脂層部分51dに対応してマトリックス状に配列された多数のアレイユニットAUに区分されている。各アレイユニットAUの外縁には、サブサブマスター型50のサブサブマスター樹脂層51に形成された突起部54に隣接する窪み、即ちサブマスター型40の残膜部44に対応するものとして、突起14が形成される。
ウェハレンズ10は、例えば上記と同様の工程で複数種類作製され、これらが適宜積層され、ダイシングラインLに沿って、第1レンズ本体11a等を中心とする四角柱状にダイシングによって切り出されることにより、複数の分割された複合レンズ即ち光学レンズ4(図2参照)となる。
以上で説明したマスター型30、サブマスター型40及びサブサブマスター型50は、複数回使用される(図12のステップS5参照)。つまり、これらの型30,40,50が劣化して型交換又は型変更が必要となった場合、マスター型30、サブマスター型40及びサブサブマスター型50のいずれかを新たなものと交換又は別のものを再利用しつつ、図12のステップS1〜S4が適当な上限回数まで実行される。結果的に、例えばマスター型30がi回転写され、サブマスター型40がj回転写され、サブサブマスター型50がk回転写されることで、計i×j×k個のウェハレンズ10を得ることができる。
〔第2実施形態〕
以下、図13を参照しながら、第2実施形態に係る成形型の製造方法及び製造装置について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態の成形型の製造装置100の変形例であり、製造方法に関する内部的な処理を除き、第1実施形態の場合と同様であるので、装置の構造等については、図示及び説明を省略する。
図13に示すように、本実施形態では、サブマスター基板42の半径Rに対して、エッジEGからある程度大きなマージン(余白)を持たせるための第1歩留保証半径R1と、第1歩留保証半径R1に比べるとマージンの少ない第2歩留保証半径R2とを定め、最大取出し数を算出する際の基準の1つとしている。
上記のようなウェハのうち縁に近い周辺部分では、切り出される製品の精度が落ちやすく、歩留を高く保つためにこのような周辺部分を使用しないようにする場合がある。つまり、ウェハの縁からある程度のマージンをもたせる場合がある。ここでは、一例として、サブマスター基板42上において、製品の精度が落ちることなく高い歩留を保つことができる範囲を第1歩留保証半径R1の領域MD1とし、多少製品の精度が落ち歩留が悪くなる可能性はあるが一定の割合以上で適正な製品の作製が可能である範囲を第2歩留保証半径R2の領域MD1とし、上式(4)等の半径Rとして、歩留保証半径R1,R2の選択が可能であるものとする。
以上の場合、各配列規則に基づく配列パターンでの最大取り数の算出において、当該配列パターンの外縁が歩留保証半径R1,R2の領域MD1,MD2内にあるか否かを加味することで、例えば作製される光学レンズの精度に応じて最適な配列パターンを選択する、といったことが可能になる。例えば、より高い精度を必要とする光学レンズ用の成形型を作製する場合には、上式(4)等において半径Rを第1歩留保証半径R1として最大取り数の算出を行い、それほど高い精度を必要としない光学レンズ用の成形型を作製する場合には、半径Rを第2歩留保証半径R2として最大取り数の算出を行う、といった設定ができる。
この場合、図中点線で示す成形候補面PU1のように、第2歩留保証半径R2を選択した場合には最大取り数の算出においてカウントされるが、第1歩留保証半径R1を選択した場合にはカウントされないものが存在する。つまり、歩留保証半径R1,R2の選択次第で、最大取り数の算出結果、延いては特定の配列パターンとして選択されるべきものが異なってくる。
なお、成形候補面PU1において、製品の精度が落ちる可能性があるのは、第1歩留保証半径R1の外側である図中斜線で示す一部領域DAのみであり、領域DA以外の領域から切り出される製品については、高精度のものとなる。従って、例えば成形候補面PU1の大きさに対する領域DAの大きさの割合に応じて成形候補面PU1を取り入れるか否かを決定することも可能である。
以上の場合、図5に示す制御装置65において、例えば次のような処理が可能である。まず、制御装置65の制御部66において、複数の配列規則について、第2歩留保証半径R2を基準として最大取り数を算出し、最大取り数が最大のものと、最大から所定の差以内のものとを特定の配列パターンの候補として選択する。次に、制御部66は、選択されたものの中から第1歩留保証半径R1を基準とした最大取り数や領域DAの割合を算出し、それらの算出結果から最適と判断される一つの配列規則を特定の配列パターンとして採用する。
以上のように、本実施形態に係る成形型の製造方法では、マスター型30のサイズ等に加え、サブマスター基板42の歩留保証半径R1,R2や成形候補面PU1の領域DAを参酌して複数の配列規則のうち最適なものを選択することで、より効率的な成形型の作製ができるものとなっている。
〔第3実施形態〕
以下、図14(A)〜14(C)を参照しながら、第3実施形態に係る成形型の製造方法について説明する。なお、本実施形態は、第1実施形態の成形型の製造装置100等の変形例であり、配列規則として新たなものを含むことを除き、第1実施形態等の場合と同様であるので、装置の構造等については、図示及び説明を省略する。
図14(A)に一例を示すように、本実施形態では、多数の単位成形面PUをレンガ積状に配列する配列規則を有している。図14(A)の場合では上述した格子状を組み合わせて、X方向に並ぶ列を一列としてY方向についての各列が奇数列と偶数列とで互い違いになった千鳥(ジグザグ)状の配列となっている。以下、図14(A)〜14(C)を用いてこの場合についてより具体的に説明する。まず、図14(A)に示すように、X方向に並ぶ列をY方向について最も−Y側から第1列目M1、第2列目M2…として見る。この場合、図14(B)に実線で示すように、偶数列目M2,M4…については、図6(A)等に示す第1の配列規則と同様になっている。つまり、Y方向について第1の配列規則の奇数列目を飛ばしたパターンとなっている。一方、図14(C)に実線で示すように、奇数列目M1,M3…については、図8(C)に示す第4の配列規則と同様になっている。つまり、Y方向について第4の配列規則偶数列目を飛ばしたパターンとなっている。以上のように、図14(A)に示す新たな配列規則は、第1の配列規則と第4の配列規則とを組み合わせることによって得られる。なお、この配列規則での最大取り数についても、第1及び第4の配列規則を組み合わせることで算出できる。
上記のほか、例えば第2の配列規則と第3の配列規則とを組み合わせて新たな配列規則を構成することも可能である。また、上記では、奇数列目か偶数列目かでパターンを分けており1つ飛ばしとなっているが、2つ飛ばし以上で組み合わせを作ることも可能である。
以上のように、本実施形態に係る成形型の製造方法では、マスター型30やサブマスター基板42のサイズ等に加え、種々の配列規則を用意し、これらのうち最適なものを選択することで、より効率的な成形型の作製ができるものとなっている。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、ウェハレンズ10の輪郭形状や、レンズ要素L1,L2の形状及び配列は、図示のものに限らず、用途に応じて様々な形状とすることができる。同様に、サブマスター型40に形成されるサブマスター樹脂層41、サブサブマスター型50に形成されるサブサブマスター樹脂層51等の形状も図示のものに限らず、用途に応じて様々な形状とすることができる。なお、これらの場合、サブマスター型40等の形状に応じて配列規則の最大取り数の取り方を適宜定めることができる。
また、上記した最大取り数の算出について、例えば予め記憶部67に円盤状のサブマスター基板42の半径Rと長方形状のマスター型30の長さa,bに対する各配列規則での最大取り数がテーブルデータとして記憶されており、制御部66が入力された半径R等の各情報に基づいて各配列規則での最大取り数を記憶部67から読出し、最適なパターンを選択するものであってもよい。
また、上記では、第1実施形態において、Xについての列ごとに、Y方向について単位成形面PUの個数を数えているが、単位成形面PUの数え方はこれ以外の方法であってもよい。例えば、サブマスター基板42の範囲よりも広くなるように各配列規則を十分大きな範囲で用意し、サブマスター基板42上に当該パターンを投影し、半径R又は歩留保証半径R1,R2の外側の領域にあるもの及び当該外側の領域を一部に含むものを除外して残った単位成形面PUの数を数えるものとしてもよい。
また、上記では、レンズ樹脂層12等が光硬化性樹脂で形成されるものとし、光照射で樹脂材料を硬化させたが、光照射に加えて加熱により硬化を促進させてもよい。また、光硬化性樹脂に代えて、熱硬化性樹脂等の他のエネルギー硬化性樹脂で形成することもできる。
サブマスター基板42に対するマスター型30の移動方法については、特に制限はないが、なるべく隣接する凹部42cに移動する経路とすることが処理速度上は望ましい。マスター型30に対してサブマスター基板42を移動させてもよいし、両者を移動させてもよい。両者で樹脂を押圧する際も同様であり、マスター型30をサブマスター基板42に押圧する代わりに、サブマスター基板42をマスター型30に押圧してもよいし、両者を移動して近づけてもよい。
上記実施形態においては、最終的に得られるウェハレンズとして、基板上に光学レンズとして機能する樹脂層を設けたもの(レンズ基板)について説明したが、これに限らず、特に基板を有しておらず、光学レンズとして機能する部分とその周囲の平坦部、及び、それらを連結する部分が樹脂で一体的に構成されたものであってもよい。この場合、2つの成形型の間に樹脂材料を介在させて当該樹脂材料を硬化させることで光学レンズ部及びその周囲部が一体的に構成されたウェハレンズを作製することができる。
上記実施形態においては、サブサブマスター型を用いてウェハレンズを作製する例について説明したが、これに限るものではなく、サブマスター型を用いてウェハレンズを作製するようにしてもよい。この場合、原版となるマスター型は、最終成形物であるウェハレンズのレンズ要素のポジ型とする。第1の樹脂層12と第2の樹脂層13ともに、サブサブマスター型を用いて成形を行ってもよいし、両者ともにサブマスター型を用いて成形を行ってもよいし、一方をサブサブマスター型、他方をサブマスター型で成形してもよい。
また、上記では、凹部42cを設けることを前提としているが、凹部42cを設けず、直接サブマスター基板42上に単位成形面PUを転写する構成としてもよい。