JP2012154844A5 - - Google Patents
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本発明は、外力で可動子が動いたときに逆起電力(逆起電圧)を発生するモータの状況検査方法及びモータ特性検査装置に関するものである。
従来のモータの状況検査方法及びモータ特性検査装置では、トルク等の検査を行うために、モータに電力を供給して、モータを一定の回転数で動作させ、そのときの動作出力を検査している。そのため検査用の電圧計、回転計や速度センサなどを用いて必要な計測をする必要があった。このようなことから、従来は、設備に組み込まれた状態のモータを直接検査することはせず、検査対象のモータの特性を検査するために、設備からモータを取り外して専用の検査装置と組み合わせて検査を行う必要があった。そのため定期点検や検査のたびに、設備からモータを取り外す必要があり、検査に要する手間と時間をかなり必要としていた。また設備からモータを取り外すと、設置状況の不具合を見ることはできなかった。
特に、リニアモータの場合、可動子と固定子の設置状況(いわゆるエアギャップの良否)がモータの出力に影響する。従来は、設置状況を検査するために、可動子と固定子との間に形成される隙間に隙間ゲージを挿入して、機械的寸法検査を行っていた。しかしながら、この場合には、モータを設備から外して検査を行っても、検査後のモータを設備に設置する際に機械的な誤差を生じやすく、また可動子と固定子との間に形成される隙間が、全体的に均一になっているかどうかの検査が困難であった。
そこで、本願発明者らは、モータが外力で動いたときに発生する逆起電力波形の周波数と振幅値とに基づいて逆起電力定数を求めることでモータの特性を検査するモータの状況検査方法及びモータ特性検査装置を発明している(特願2009−177091号・特許文献1)。
特許文献1の手法では、逆起電圧の半周期(電気角180°)に基づいて周波数を検出している。しかし、加速時や減速時において、逆起電圧の半周期内において急激な変化(リニアモータであれば急激な速度変化、回転モータであれば急激な回転数の変化)があった場合、電圧のピーク値を境にして周波数のデューティー比が大きく変化してしまい、検査結果に誤差が生じやすいという問題があった。例えば、図7に示すように、区間(A)では、周波数のデューティー比(f1A:f1B)が大きく変化しており、周波数のデューティー比(f2A:f2B)の変化が小さい区間(B)を用いる場合に比べて、誤差が生じやすい。
本発明の目的は、設備に組み込まれたモータを、設備から取り外すことなく検査をすることが可能であり、且つ、検査結果に誤差が生じにくいモータの状況検査方法及びモータ特性検査装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、モータの設置状況の良否を簡便な方法で検査することが可能なモータの状況検査方法及びモータ特性検査装置を提供することにある。
本発明は、設備に組み込まれた三相モータの状況を設備から三相モータを取り外すことなく検査するモータの状況検査方法及びモータ特性検査装置を対象とする。
モータに発電作用があることは周知のことであり、外力を加えて三相モータの可動部を動かすと、三相モータの入力端子には、三相の逆起電力(逆起電圧)が発生する。本発明では、モータの特性を示す定数の1つである逆起電力定数Keφを求め、モータの特性の良否を判定する。
本発明のモータ特性検査装置は、給電されていない状態で三相モータの可動子が動いているときに電機子巻線に発生する三相の逆起電力中の一相の逆起電力のピーク値を含む電気角で180°よりも小さい所定の角度範囲を特定する角度範囲検出部と、一相の逆起電力がα軸になるように三相の逆起電力をαβ変換により三相の逆起電力に等価な二相交流に変換する三相二相変換部と、所定の角度範囲におけるα成分の変化量及びβ成分の変化量から所定の角度範囲における電圧ベクトルの変化量を演算する電圧ベクトル変化量演算部と、所定の角度範囲における可動子の速度の変化量を検出する速度変化量検出部と、速度変化量及び電圧ベクトルの変化量に基づいて逆起電力定数を演算する逆起電力定数演算部と、逆起電力定数の演算結果または予想される演算結果に対して予め用意した判定結果を表示する結果表示部とを備えている。したがって、モータ特性検査装置に三相の逆起電力を入力すると、電気角で180°よりも小さい所定の角度範囲における可動子が外力により移動したときに変化する速度の変化と、速度の変化に伴って変化する逆起電力の増加量を電圧ベクトルの変化量として求めることができる。このように求める電圧ベクトルの変化量から求める逆起電力定数は、逆起電力の電圧の変化量から求める逆起電力定数と比べて、加速時や減速時においても、誤差が少ない。したがって、従来よりもモータの特性の良否を精度良く判定できる。なお、本発明において「電圧ベクトル」とは、三相の逆起電力の成分を三相二相変換して得られるα成分及びβ成分を有するベクトルのことである。
角度範囲検出部によって所定の角度範囲を決定する方法としては、様々な方法が考えられる。例えば、三相の逆起電力がそれぞれゼロになるゼロクロス点を検出し、ゼロクロス点に基づいて所定の角度範囲を決定する方法がある。この場合には、所定の角度範囲として、60°の角度範囲を決定することができる。また、三相の逆起電力及び二相交流がそれぞれゼロになるゼロクロス点を検出し、これらのゼロクロス点に基づいて所定の角度範囲を決定する方法もある。この場合には、所定の角度範囲として、30°の角度範囲を決定することができる。なお、電気角の角度範囲が180°よりも小さい方が、電圧ベクトルの変化量が小さくなるため、逆起電力定数の誤差を小さくすることができる。そのため、60°の角度範囲で逆起電力定数を決定する場合よりも、30°の角度範囲で逆起電力定数を決定する場合の方が、逆起電力定数の誤差を小さくすることができる。
所定の角度範囲における電圧ベクトルの変化量ΔVvecは、例えば、所定の角度範囲の始点における第1の電圧ベクトルのα成分をVα1、β成分をVβ1とし、所定の角度範囲の終点における第2の電圧ベクトルのα成分をVα2、β成分をVβ2とし、次の式により求めることができる。
したがって、電圧ベクトルの変化量ΔVvecは、第1の電圧ベクトルと第2の電圧ベクトルの差の大きさ、と言い換えることもできる。
なお、本発明によれば、急激な速度の変化がある場合でも演算する逆起電力定数の誤差を小さくすることができる。しかし、さらに誤差を少なくするために、所定の角度範囲を二等分した2つの分割角度範囲における2つの電圧ベクトルの変化量の差が予め定めた許容値以下であるときに、演算結果または判定結果を表示するように結果表示部を構成してもよい。2つの電圧ベクトルの変化量の差が予め定めた許容値よりも大きい場合には、特に急激な速度変化が生じているために、演算する逆起電力定数の誤差が大きくなりやすい。そこで、許容値以下の場合にのみ結果表示部に演算結果または判定結果を表示するようにすれば、本発明による検査結果の信頼性を向上させることができる。
本発明が検査対象としているモータは、三相モータで、逆起電力を検出することができるものであればよく、回転型三相モータやリニアモータなどの形態は問わない。三相モータが可動子が回転する回転型三相モータである場合、速度変化量検出部は、速度を可動子の単位時間当たりの回転数として検出し、回転数の変化量を速度の変化量として検出するように構成することができる。
三相モータが設備の固定部に固定された固定子と設備の可動部に設けられた可動子とを備えたリニアモータである場合、逆起電力定数演算部の演算結果に基づいて固定子の固定子側磁極と可動子の可動子側磁極との間のギャップの大きさを判定し、判定結果から設置状況の良否を判定する設置状況判定部を更に備えるようにしてもよい。ギャップと逆起電力定数が比例関係にあるため、この関係を利用すれば、設置されているリニアモータのギャップの状況を知ることができ、モータの設置状況が判定できる。
リニアモータは、別々になっている固定子と可動子を使用場所において組み合わせて使用するのが一般的である。すなわちモータの設置及びギャップ調整は使用者の方で行うことが多い。そのため、隙間ゲージを用いたギャップ調整が不十分であることが原因で、リニアモータの十分な出力を得ることができないことがある。本発明によるモータ特性検査装置を使用すれば、簡易にギャップ調整が可能となる。
リニアモータのための設置状況判定部は、逆起電力定数が予め定めた閾値範囲よりも小さいときには、ギャップが適正範囲よりも広いと判定し、逆起電力定数が予め定めた閾値範囲よりも大きいときには、ギャップが適正範囲よりも狭いと判定し、いずれの判定の場合も設置状況が悪いと判定するように構成しておくことが望ましい。このようにしておけば、ギャップの調整が更に容易になる。
本発明のモータの状況検査方法では、本発明によるモータ特性検査装置を用意し、設備に組み込まれた三相モータから給電線を外した状態で、三相モータの電機子巻線とモータ特性検査装置とを電気的に接続し、三相モータの可動子に外力を加えて電機子巻線に逆起電力を発生させ、モータ特性検査装置の結果表示部に表示された演算結果に基づいて、モータの状況を判定する。結果表示部は、逆起電力定数の演算結果(数値)を表示し、測定者は、該モータの本来の逆起電力定数が得られているか否かを判定する。本来の逆起電力定数が得られない場合には、モータに異常があることがわかる。結果表示部に、予想される演算結果に対して予め用意した判定結果を表示するようにしてもよい。このようにすると、モータの逆起電力定数から良否が直ちにわからない場合にも、容易にモータの良否を判定することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明のモータ特性検査装置の実施の形態の一例のブロック図である。
図1に示した実施の形態では、モータ特性検査装置1は、検査対象である回転型三相モータ3に接続されている。回転型三相モータ3は、設備に固定された固定子3aと回転する回転子からなる可動子3bとを備え、U相、V相及びW相の三相を有する回転型三相モータである。モータ特性検査装置1は、給電線を外した回転型三相モータ3の固定子3aの電機子巻線に接続された給電線5にケーブル7を介して接続されている。
モータ特性検査装置1は、大きく分けて、電圧測定部11、三相二相変換部13、電気角取得部14、演算部20及び結果表示部27とから構成されている。
〔電圧測定部〕
電圧測定部11は、回転型三相モータ3が外力によって動かされた場合に発生する三相の逆起電力を受信し、U相、V相及びW相(Keu、Kev及びKew)の電圧値を測定し、記憶している。
電圧測定部11は、回転型三相モータ3が外力によって動かされた場合に発生する三相の逆起電力を受信し、U相、V相及びW相(Keu、Kev及びKew)の電圧値を測定し、記憶している。
〔三相二相変換部〕
三相二相変換部13は、電圧測定部11から後述する時間t1及びt2のタイミングにおけるU相電圧値Keu及びV相電圧値Kevを読み出し三相二相変換を行う。三相二相変換は、U相の逆起電力がα軸になるように三相の逆起電力をαβ変換して三相の逆起電力に等価な二相交流に変換するものである。本明細書においては、三相二相変換して得られる電圧のベクトルを「電圧ベクトル(Vvec)」と定義し、電圧ベクトルのα成分をVα、β成分をVβとしている。三相二相変換部13は、電圧ベクトルのα成分Vα及びβ成分Vβを後述する電圧ベクトル変化量演算部23に出力する。なお、本実施の形態では、後述のように、三相のうち、U相電圧値Keu及びV相電圧値Kevのみを用いて三相二相変換を行うことができるため、W相電圧値Kewは、読み出していない。
三相二相変換部13は、電圧測定部11から後述する時間t1及びt2のタイミングにおけるU相電圧値Keu及びV相電圧値Kevを読み出し三相二相変換を行う。三相二相変換は、U相の逆起電力がα軸になるように三相の逆起電力をαβ変換して三相の逆起電力に等価な二相交流に変換するものである。本明細書においては、三相二相変換して得られる電圧のベクトルを「電圧ベクトル(Vvec)」と定義し、電圧ベクトルのα成分をVα、β成分をVβとしている。三相二相変換部13は、電圧ベクトルのα成分Vα及びβ成分Vβを後述する電圧ベクトル変化量演算部23に出力する。なお、本実施の形態では、後述のように、三相のうち、U相電圧値Keu及びV相電圧値Kevのみを用いて三相二相変換を行うことができるため、W相電圧値Kewは、読み出していない。
〔電気角取得部〕
電気角取得部14は、ゼロクロス検出部15、角度範囲検出部17及び一定周期パルス発生部19とから構成されている。
電気角取得部14は、ゼロクロス検出部15、角度範囲検出部17及び一定周期パルス発生部19とから構成されている。
ゼロクロス検出部15は、U相ゼロクロス検出部15a、V相ゼロクロス検出部15b及びW相ゼロクロス検出部15cを備えており、各相ごとに逆起電力の波形がゼロ点をクロスした点(ゼロクロス点)において、出力電圧が0V→5V(すなわち、信号“1”)、5V→0V(すなわち、信号“0”)に切り替わるように構成されている。例えば、回転型三相モータ3が外力によって動かされた場合、図2(A)の三相の逆起電力波形が発生したとすると、ゼロクロス検出部15は、電圧測定部11からU相、V相及びW相(Keu、Kev及びKew)の電圧値を読み出し、図2(B)乃至(D)の波形の信号を出力する。ゼロクロス検出部15からの信号を受信した角度範囲検出部17は、ゼロクロス検出部15の3つの出力信号の論理和を演算し、電気角の角度範囲を定める信号を出力する。本実施の態様では、U相ゼロクロス検出部15aの信号が“1”(図2(B)参照)、V相ゼロクロス検出部15bの信号が“0”(図2(C)参照)、W相ゼロクロス検出部15cの信号が“0”(図2(D)参照)の期間だけ信号を出力するように構成されている。これにより、図2(E)に示すような角度範囲60°の角度範囲を示すパルス信号(角度範囲信号)を出力することができる。なお、角度範囲信号の始点の時間tをt1とし、角度範囲信号の終点の時間tをt2とする。
〔演算部〕
演算部20は、速度変化量検出部21、電圧ベクトル変化量演算部23及び逆起電力定数演算部25とから構成されている。
演算部20は、速度変化量検出部21、電圧ベクトル変化量演算部23及び逆起電力定数演算部25とから構成されている。
速度変化量検出部21は、角度範囲検出部17が出力する角度範囲信号と、一定周期パルス発生部19が出力する一定周期のパルスにより、電気角で60°の角度範囲を可動子が移動するのにかかった時間Δtを求める。一定周期パルス発生部19は、周波数(またはパルス幅)が既知であり、一定周期パルス発生部19から出力されるパルスが角度範囲検出部17の出力する角度範囲信号の始点から終点までの間に何パルス入力されるかをカウントすることにより、電気角で60°の角度範囲を可動子が移動するのにかかった時間Δtを求めることができる。なお、Δtは、Δt=t2-t1を表している。速度変化量検出部21は、さらに、Δt区間の周波数及びΔt区間に変化する回転数を演算する。
電圧ベクトル変化量演算部23は、Δtの間、すなわち電気角で60°の角度範囲の間の電圧ベクトルの変化量ΔVvecを演算する。
逆起電力定数演算部25は、速度変化量検出部21及び電圧ベクトル変化量演算部23からの演算結果に基づいて、逆起電力定数Keφを演算し、結果表示部27に演算結果を表示する。
〔電圧ベクトル〕
電圧ベクトルVvecと電圧ベクトルの変化量ΔVvecの物理的な意味を、図3及び図4により説明する。
電圧ベクトルVvecと電圧ベクトルの変化量ΔVvecの物理的な意味を、図3及び図4により説明する。
図3(A)は三相の逆起電力の波形であり、図3(B)は図3(A)の三相の逆起電力を三相二相変換して得られる二相交流(Vα、Vβ)の波形であり、図3(C)は、図3(A)に対応したパルス幅が電気角で60°の角度範囲信号である。電圧ベクトルVvecは、α成分Vα及びβ成分Vβを有するベクトルで表される。時間応答を描くと、図3(B)に描いた波形、すなわち、Vα、Vβの漸近線が電圧ベクトルVvecの軌跡である。そして、図示した区間1を例にとると、Vvec1からVvec2への電圧ベクトルの変化量がΔVvecである。
図4は、区間1における電圧ベクトルをαβ座標で示した図である。図示した通り、Vvec1とVvec2との間の角度が電気角で60°であり、この間の変化を示すVvec2とVvec1の差が、ベクトルVdifである。本発明においては、このベクトルVdifの大きさを「電圧ベクトルの変化量ΔVvec」として利用している。なお、ベクトルVdifがβ軸と平行に近ければ近いほど、逆起電力の波形のピークを境にした周波数のデューティー比が近くなり、検出誤差は小さくなる。例えば、図3の区間2における電圧ベクトルを描いた場合には、ベクトルVdifはほぼβ軸と平行になるため、区間1を利用する場合よりも、さらに誤差を小さくすることができる。
〔測定から結果表示までの流れ〕
次に、図5のフローチャートを用いて、測定から結果表示までの流れを詳述する。
次に、図5のフローチャートを用いて、測定から結果表示までの流れを詳述する。
回転型三相モータ3の可動子3bが外力により動かされると、電圧測定部11は、モータが発生する三相の逆起電力波形を受信して、U相、V相及びW相(Keu、Kev及びKew)の電圧値を測定・記憶し、ゼロクロス検出部15に対して信号を送る。前述の方法で角度範囲検出部17から角度範囲信号が出力されると(ステップST1)、三相二相変換部13は、角度範囲信号の始点の時間t1におけるU相電圧値Keu1及びV相電圧値Kev1並びに角度範囲信号の終点における時間t2のU相電圧値Keu2及びV相電圧値Kev2を電圧測定部11から読み出す(ステップST2)。そして、式(1)による三相二相変換により、Vα1及びVβ1並びにVα2及びVβ2を算出し、電圧ベクトル変化量演算部23に送る(ステップST3)。
なお、式(1)より明らかなように、本実施の形態では、三相のうち、U相電圧値Keu及びV相電圧値Kevのみを用いて三相二相変換を行うことができるため、W相電圧値Kewは、読み出していない。
速度変化量検出部21は、求めた時間Δt及び電気角60°(Δθ=1.047[rad])とから、式(3)により角度範囲60°(Δt)の間の周波数Δf[Hz]を演算する(ステップST5)。また、周波数Δfから式(4)により角度範囲60°(Δt)の間の速度の変化量(回転数)ΔN[rpm]を演算する(ステップST6)。
逆起電力定数演算部25は、演算した逆起電力定数Keφと予め定められている閾値とを比較し、逆起電力定数Keφが予め定められた閾値の範囲内にあるか否かの判定を行う(ステップST8)。逆起電力定数Keφが閾値の範囲内にある場合には、モータが正常であると判定し(ステップST9)、閾値範囲内におさまっていない場合には、モータに異常があると判定する(ステップST10)。判定結果を結果表示部27に表示する(ステップST11)。なお、本実施の形態においては、閾値を、Keφの理論値の±10%としている。
本実施の形態によれば、急激な速度の変化がある場合でも演算する逆起電力定数の誤差を小さくすることができる。しかし、さらに誤差を少なくするために、所定の角度範囲を二等分した2つの分割角度範囲における2つの電圧ベクトルの変化量の差が予め定めた許容値以下であるときに、演算結果または判定結果を表示するように結果表示部を構成してもよい。2つの電圧ベクトルの変化量ΔVvecの差が予め定めた許容値よりも大きい場合には、特に急激な速度変化が生じているために、演算する逆起電力定数の誤差が大きくなりやすい。そこで、許容値以下の場合にのみ結果表示部27に演算結果または判定結果を表示するようにすれば、検査結果の信頼性を向上させることができる。
また、本発明において、1つの角度範囲信号に基づくだけでなく、複数発生する角度範囲信号に基づいて逆起電力定数Keφを複数回演算し、平均を求めて、判定を行ってもよい。このようにすれば、より誤差を小さくすることができる。
さらに、ゼロクロス検出部15でVα及びVβのゼロクロス点も含めて検出するようにすれば、U相、V相、W相、Vα、Vβのゼロクロス波形の組み合わせにより、30°の角度範囲を検出することも可能である。30°の角度範囲の方が60°の角度範囲の場合よりも誤差を小さくすることが可能である。
なお、本発明は三相モータを対象としており、U相及びV相の二相分を測定すれば残りのW相を計算で求めることができるため、電圧測定部11は、U相及びV相の電圧値のみを測定し、W相の電圧を計算で求めるようにしてもよいのはもちろんである。
〔リニアモータを検査する場合〕
図6は、本発明によるモータの状況検査方法を三相の逆起電力を発生するリニアモータに適用する場合(第2の実施の形態)のフローチャートを示したものである。図6において、第1の実施の形態と共通する部分には、図5に示した符号に100の数を加えた数の符号を付してある。検査対象がリニアモータの場合には、ステップST106で、周波数Δfから式(6)により電気角で角度範囲60°(Δt)の間の速度の変化量ΔV[m/s]を演算する。
図6は、本発明によるモータの状況検査方法を三相の逆起電力を発生するリニアモータに適用する場合(第2の実施の形態)のフローチャートを示したものである。図6において、第1の実施の形態と共通する部分には、図5に示した符号に100の数を加えた数の符号を付してある。検査対象がリニアモータの場合には、ステップST106で、周波数Δfから式(6)により電気角で角度範囲60°(Δt)の間の速度の変化量ΔV[m/s]を演算する。
そして、逆起電力定数Keφ一定の閾値範囲内におさまっているか否かの判定を行い(ステップST108)、逆起電力定数Keφが閾値範囲内の場合には、ギャップは適正と判定する(ステップST109)。逆起電力定数Keφが閾値範囲内におさまっていない場合には、閾値範囲よりも大きいか否かを判定し(ステップST110)、閾値範囲よりも大きい場合には、ギャップが狭いと判定し、(ステップST111)、閾値範囲よりも小さい場合には、ギャップが広いと判定する(ステップST112)。最終的に、逆起電力定数を含む判定結果を結果表示部に表示する(ステップST113)。
本発明によれば、三相の逆起電力波形に基づいて、モータの特性を検査することで、設備からモータを取り外すことなく、また、回転計や速度センサを必要とせずに、精度良くモータの特性を検査することができる。
1 モータ特性検査装置
3 回転型三相モータ
5 給電線
7 ケーブル
11 電圧測定部
13 三相二相変換部
14 電気角取得部
15 ゼロクロス検出部
17 角度範囲検出部
19 一定周期パルス発生部
20 演算部
21 速度変化量検出部
23 電圧ベクトル変化量演算部
25 逆起電力定数演算部
27 結果表示部
3 回転型三相モータ
5 給電線
7 ケーブル
11 電圧測定部
13 三相二相変換部
14 電気角取得部
15 ゼロクロス検出部
17 角度範囲検出部
19 一定周期パルス発生部
20 演算部
21 速度変化量検出部
23 電圧ベクトル変化量演算部
25 逆起電力定数演算部
27 結果表示部
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