JP2012154430A - ボール螺子装置、及びボール螺子装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ボール螺子ナットに嵌合体が嵌合された状態で、ボール螺子ナットの軸方向に沿って心間距離を均一にして転動路の通路径を均一にすることができるボール螺子装置、及びボール螺子装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】ボール螺子装置において、ボール螺子ナット33の嵌合部位Wに軸受37の内輪37aを嵌合した状態で、ボール螺子ナット33の中心軸L2(軸心)から、そのボール螺子ナット33の螺子溝34aに配されるボール32の中心Pまでの心間距離Mが、ボール螺子ナット33の軸方向に沿って均一になるように螺子溝34aの深さDが調整されている。すなわち、内輪37aを嵌合する前での嵌合部位Wの内周に位置する螺子溝34aの深さD1が、その他の部位の内周に位置する螺子溝34aより深く形成されている。
【選択図】図2
【解決手段】ボール螺子装置において、ボール螺子ナット33の嵌合部位Wに軸受37の内輪37aを嵌合した状態で、ボール螺子ナット33の中心軸L2(軸心)から、そのボール螺子ナット33の螺子溝34aに配されるボール32の中心Pまでの心間距離Mが、ボール螺子ナット33の軸方向に沿って均一になるように螺子溝34aの深さDが調整されている。すなわち、内輪37aを嵌合する前での嵌合部位Wの内周に位置する螺子溝34aの深さD1が、その他の部位の内周に位置する螺子溝34aより深く形成されている。
【選択図】図2
Description
本発明は、ボール螺子装置、及びボール螺子装置の製造方法に関するものである。
従来より、ボール螺子装置を用いてモータの回転をラック軸の往復動に変換することにより、操舵系にアシスト力を付与する所謂ラックアシスト型の電動パワーステアリング装置(EPS)がある(例えば、特許文献1参照)。
このようなボール螺子装置は、ラック軸の外周に螺刻された螺子溝と、ボール螺子ナットの内周に螺刻された螺子溝とを対向させてなる螺旋状の転動路内に、複数のボールを介在させることにより形成される。そして、ラック軸に対してボール螺子ナットが相対回転することにより、ボールは転動路内を転動するようになっている。
ところで、特許文献1のボール螺子装置においては、ボール螺子ナットの外周に軸受の内輪(嵌合体)が嵌合されている。このようにボール螺子ナットに嵌合体が嵌合されると、その嵌合によってボール螺子ナットが変形して、ボール螺子ナットの軸心から、そのボール螺子ナットの螺子溝に配されるボールの中心までの径方向に沿った距離(以下、心間距離と記載する)が、軸受を嵌合する前と異なってしまう。この場合、ボール螺子ナットにおいては、軸受が嵌合された部位と、嵌合されてない部位とで心間距離が異なってしまい、ボール螺子装置においては、ボール螺子ナットの軸方向に沿って転動路の通路径にばらつきが生じてしまう。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、ボール螺子ナットに嵌合体が嵌合された状態で、ボール螺子ナットの軸方向に沿って心間距離を均一にして転動路の通路径を均一にすることができるボール螺子装置、及びボール螺子装置の製造方法を提供することにある。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、外周に螺子溝が螺刻された螺子軸と、内周に螺子溝が螺刻されたボール螺子ナットと、前記螺子軸の螺子溝と前記ボール螺子ナットの螺子溝とを対向させてなる螺旋状の転動路内に配設された複数のボールと、前記ボール螺子ナットの外周において、該ボール螺子ナットの軸方向に沿った全体長さの一部を占める嵌合部位に嵌合され該ボール螺子ナットと一体回転する嵌合体と、を備えるボール螺子装置であって、前記嵌合部位に嵌合体を嵌合した状態で、前記ボール螺子ナットの軸心から該ボール螺子ナットの螺子溝に配される前記ボールの中心までの径方向に沿った心間距離が、前記ボール螺子ナットの軸方向に沿って均一になるように、前記嵌合部位に位置する螺子溝の深さを調整したことを要旨とする。
上記構成によれば、嵌合部位に位置する螺子溝の深さが予め調整されているため、嵌合部位に対する嵌合体の嵌合に伴いボール螺子ナットが変形しても、その変形の結果として嵌合部位に位置する螺子溝の深さが、その他の部位での螺子溝の深さに合わされ、ボール螺子ナットの軸方向に沿って心間距離が均一になる。このため、ボール螺子ナットに嵌合体が嵌合されても、ボール螺子装置における転動路の通路径をボール螺子ナットの軸方向に沿って均一にすることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のボール螺子装置において、前記嵌合体を嵌合する前の状態で、前記嵌合部位に位置する螺子溝は、前記ボール螺子ナットにおけるその他の部位に位置する螺子溝より深く形成されていることを要旨とする。
上記構成によれば、嵌合部位に対する嵌合体の嵌合に伴い、ボール螺子ナットが内周側に変形することにより、嵌合部位に位置する螺子溝の内底面がボール螺子ナットの内周側(軸心)に近付く。このため、嵌合部位に位置する螺子溝の深さを、その他の部位に位置する螺子溝の深さに合わせることができる。
請求項3に記載の発明は、外周に螺子溝が螺刻された螺子軸と、筒状体の内周に螺子溝が螺刻されたボール螺子ナットと、前記螺子軸の螺子溝と前記ボール螺子ナットの螺子溝とを対向させてなる螺旋状の転動路内に配設された複数のボールと、前記ボール螺子ナットの外周において、該ボール螺子ナットの軸方向に沿った全体長さの一部を占める嵌合部位に嵌合され該ボール螺子ナットと一体回転する嵌合体と、を備えるボール螺子装置の製造方法であって、前記筒状体の外周に対し前記嵌合部位を設定し、該嵌合部位に前記嵌合体を嵌合した状態で、前記ボール螺子ナットの軸心から該ボール螺子ナットの螺子溝に配される前記ボールの中心までの径方向に沿った心間距離が、前記ボール螺子ナットの軸方向に沿って均一になるように、該筒状体の内周面に前記螺子溝を螺刻することにより前記ボール螺子ナットを形成することを要旨とする。
上記製造方法によれば、筒状体は、嵌合体が嵌合されるのに伴い変形する。この変形状態で筒状体に螺子溝を螺刻するため、螺子溝の螺刻時には、嵌合体の嵌合に伴うボール螺子ナットの変形が考慮される。このため、嵌合体が嵌合された状態であっても、ボール螺子ナットの軸方向に沿った心間距離を均一にすることができる。
本発明によれば、ボール螺子ナットに嵌合体が嵌合された状態で、ボール螺子ナットの軸方向に沿って心間距離を均一にして転動路の通路径を均一にすることができる。
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図2にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施形態のラック同軸型のEPS11において、略円筒状をなすハウジング12にはラック軸13が挿通されている。このラック軸13は、ラックガイド及び滑り軸受(ともに図示略)を介して軸方向に沿って移動可能にハウジング12に支持されている。また、ラック軸13は、周知のラック&ピニオン機構を介してステアリングシャフトと連結されることにより、ステアリング操作に伴い軸方向に往復動するようになっている。
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図1〜図2にしたがって説明する。
図1に示すように、本実施形態のラック同軸型のEPS11において、略円筒状をなすハウジング12にはラック軸13が挿通されている。このラック軸13は、ラックガイド及び滑り軸受(ともに図示略)を介して軸方向に沿って移動可能にハウジング12に支持されている。また、ラック軸13は、周知のラック&ピニオン機構を介してステアリングシャフトと連結されることにより、ステアリング操作に伴い軸方向に往復動するようになっている。
EPS11において、ハウジング12内にはモータ14が収納されている。モータ14のモータステータ20は、ハウジング12の内周面に固定されるとともに、このモータステータ20内には中空軸状に形成されたモータ軸16が挿通されている。このモータ軸16は、ハウジング12の内周に設けられた軸受17によって回転可能に支持されるとともに、モータ軸16の外周にはマグネット製のモータロータ18がモータステータ20と対向する位置に固着されている。そして、モータ14は、モータステータ20への通電によるモータロータ18の回転に伴いモータ軸16を回転させる。
このモータ軸16内にはラック軸13が挿通されるとともに、ハウジング12内において、モータ軸16はラック軸13と同軸に配置されている。ラック軸13は、その外周に螺子溝31を螺刻することにより、螺子軸として構成されている。ラック軸13において、その中心軸L1の延びる方向をラック軸13の軸方向とすると、螺子溝31の深さは軸方向に沿って均一になっている。
また、モータ軸16の軸方向端部16aの内周面には螺子部16bが螺刻されるとともに、この螺子部16bには、ボール螺子ナット33が螺着されている。このボール螺子ナット33は、円筒状をなすナット本体34と、このナット本体34の軸方向端部から延設された円筒状をなす接続部35とから形成されている。接続部35の外径は、ナット本体34の外径より小さく設定されるとともに、この接続部35の外周面には螺子部35aが螺刻されている。そして、ボール螺子ナット33の螺子部35aがモータ軸16の螺子部16bに螺合されることで、ボール螺子ナット33がモータ軸16に一体回転可能に螺着されている。
また、ボール螺子ナット33において、ナット本体34の外周面には、軸受37の内輪37a(嵌合体)が嵌合されるとともに、軸受37の外輪37bはハウジング12の内周面に固定されている。内輪37aと外輪37bの間には転動子37cが介在している。そして、ボール螺子ナット33は、内輪37aと一体回転するとともに、転動子37cを介した外輪37bによってハウジング12に回転可能に支持されている。
また、ボール螺子ナット33は、複数のボール32を介してラック軸13に外嵌されている。ボール螺子ナット33において、ナット本体34の内周には、ラック軸13の螺子溝31に対向配置される螺子溝34aが形成され、各ボール32は、これら二つの螺子溝31,34aが対向することにより形成される螺旋状の転動路R内に配設されている。
また、ボール螺子ナット33には、螺子溝34a内の二箇所に開口する還流路(図示せず)が形成されている。そして、ラック軸13とボール螺子ナット33との間の転動路R内に介在された各ボール32は、ラック軸13に対するボール螺子ナット33の相対回転により、その負荷を受けつつ転動路R内を転動する。また、転動路R内を転動した各ボール32は還流路を介して無限循環することにより、ボール螺子ナット33の回転をラック軸13の軸方向移動に変換することが可能となっている。そして、本実施形態では、ラック軸13と、ボール32と、ボール螺子ナット33から、モータ14の回転をラック軸13の軸方向移動に変換するボール螺子装置15が構成されている。
図2に示すように、上記ボール螺子ナット33において、中心軸L2の延びる方向をボール螺子ナット33の軸方向とするとともに、この軸方向に直交する方向をボール螺子ナット33の径方向とし、この径方向に沿った螺子溝34aの深さをDとする。また、ナット本体34の外周面には、内輪37aが嵌合される部位である嵌合部位Wが予め設定されている。嵌合部位Wは、ナット本体34の外周であって、ボール螺子ナット33の軸方向に沿った全体長さの一部を占める領域に設定され、本実施形態では、ナット本体34の軸方向の両端よりも中央寄りに設定されている。
ナット本体34の嵌合部位Wに内輪37aが嵌合された状態では、螺子溝34aの深さDは軸方向に沿って均一になっている。すなわち、ナット本体34に内輪37aが嵌合された状態において、嵌合部位Wに位置する螺子溝34aの深さDと、嵌合部位Wに位置しない螺子溝34aの深さDとが同じになっている。ここで、図2の2点鎖線に示すように、螺子溝34aに配されるボール32の中心をPとし、ボール螺子ナット33の径方向に沿った中心Pから中心軸L2(軸心)までの距離を心間距離Mとすると、螺子溝34aの深さDが均一になっていることから心間距離Mもボール螺子ナット33の軸方向に沿って均一になっている。そして、ラック軸13においても、螺子溝31の深さは軸方向に沿って均一になっているため、螺子溝31,34aによって形成される転動路Rは、ラック軸13の軸方向に沿って均一な通路径になっている。
一方、図2の2点鎖線に示すように、嵌合部位Wに内輪37aが嵌合される前の状態では、嵌合部位Wに位置する螺子溝34aの深さD1は、嵌合部位Wに位置しないその他の螺子溝34aの深さDより深く形成されている。螺子溝34aの深さD1は、嵌合部位Wへの内輪37aの嵌合に伴うナット本体34の変形を考慮して予め設定されている。具体的には、螺子溝34aの深さD1は、嵌合部位Wへの内輪37aの嵌合に伴う、螺子溝34a内底面のナット本体34の内周(軸心)側への移動量を考慮して設定されている。
そして、ボール螺子ナット33は、例えば、圧入等で、嵌合部位Wに内輪37aを嵌合すると、その嵌合に伴って、嵌合部位Wに位置する螺子溝34aの内底面がボール螺子ナット33の軸心側に近付くように、ボール螺子ナット33の内周側に変形する。このため、嵌合部位Wへの内輪37aの嵌合に伴い、嵌合部位Wに位置する螺子溝34aの深さD1は嵌合前と比べると浅くなり、嵌合部位W以外の螺子溝34aの深さDに合わせられる。その結果、図2の実線で螺子溝34aを示したように、ボール螺子ナット33の軸方向に沿って螺子溝34aの深さDが均一になるとともに、心間距離Mも均一になるボール螺子ナット33が製造される。
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)内輪37aを嵌合する前のボール螺子ナット33において、嵌合部位Wに位置する螺子溝34aの深さD1を、嵌合に伴うボール螺子ナット33の変形を考慮して調整した。このため、嵌合部位Wに対する内輪37aの嵌合に伴いボール螺子ナット33が変形しても、その変形の結果として嵌合部位Wに位置する螺子溝34aの深さDが、その他の部位での螺子溝34aの深さDに合わされ、ボール螺子ナット33の軸方向に沿って螺子溝34aの深さDを均一にすることができる。その結果、ボール螺子ナット33の軸方向に沿って、ボール螺子ナット33の中心軸L2(軸心)とボール32の中心Pの心間距離Mを均一にすることができ、ラック軸13の螺子溝31とで形成される転動路Rの通路径を均一にすることができる。したがって、EPS11においては、転動路R内でのボール32の転動にばらつきが生じることが防止され、ボール32が転動路Rを通過する際に発生する振動や騒音、さらにはトルク変動を低減することができる。その結果、EPS11の操舵フィーリング及び静粛性を優れたものにし、さらには耐久性を向上させることができる。
(1)内輪37aを嵌合する前のボール螺子ナット33において、嵌合部位Wに位置する螺子溝34aの深さD1を、嵌合に伴うボール螺子ナット33の変形を考慮して調整した。このため、嵌合部位Wに対する内輪37aの嵌合に伴いボール螺子ナット33が変形しても、その変形の結果として嵌合部位Wに位置する螺子溝34aの深さDが、その他の部位での螺子溝34aの深さDに合わされ、ボール螺子ナット33の軸方向に沿って螺子溝34aの深さDを均一にすることができる。その結果、ボール螺子ナット33の軸方向に沿って、ボール螺子ナット33の中心軸L2(軸心)とボール32の中心Pの心間距離Mを均一にすることができ、ラック軸13の螺子溝31とで形成される転動路Rの通路径を均一にすることができる。したがって、EPS11においては、転動路R内でのボール32の転動にばらつきが生じることが防止され、ボール32が転動路Rを通過する際に発生する振動や騒音、さらにはトルク変動を低減することができる。その結果、EPS11の操舵フィーリング及び静粛性を優れたものにし、さらには耐久性を向上させることができる。
(2)内輪37aが嵌合部位Wに嵌合される前の状態において、嵌合部位Wに位置する螺子溝34aの深さD1を、その他の螺子溝34aの深さDより深く形成した。このため、嵌合部位Wに内輪37aを嵌合することに伴い、螺子溝34aの深さが浅くなり、嵌合部位Wに位置する螺子溝34aの深さDを、その他の螺子溝34aの深さDと同じにすることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図3にしたがって説明する。第2の実施形態は、ボール螺子ナット33への螺子溝34aの形成方法が、第1の実施形態と相違する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図3にしたがって説明する。第2の実施形態は、ボール螺子ナット33への螺子溝34aの形成方法が、第1の実施形態と相違する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
図3(a)に示すように、ボール螺子ナット33は、筒状体50を用いて製造される。以下、この筒状体50を用いたボール螺子装置15におけるボール螺子ナット33の製造方法について説明する。なお、筒状体50は、ナット本体34が形成される部位である第1筒部51と、この第1筒部51より小径をなし接続部35が形成される部位である第2筒部52とからなる。第2筒部52の外周面には螺子部35aが形成されているものとする。
そして、図3(b)に示すように、第1筒部51において、内輪37aが嵌合されることとなる嵌合部位Wに、嵌合体としての嵌合用治具60を嵌合する。嵌合用治具60は、内輪37aと同じ材質で円筒状に形成されるとともに、嵌合用治具60の内径も内輪37aの内径と同じに設定されている。そして、第1筒部51の嵌合部位Wに嵌合用治具60を嵌合し、この嵌合に伴い第1筒部51が内周面側に変形した状態で、螺子溝34aの深さDが軸方向に沿って均一になるように、第1筒部51の内周面に螺子溝34aを螺刻する。このとき、製造されるボール螺子ナット33の中心軸L2(軸心)と、螺子溝34aに配されるボール32の中心Pとの心間距離Mが軸方向に沿って均一になるように、第1筒部51に螺子溝34aが螺刻される。
その後、第1筒部51から嵌合用治具60を取り外すと、螺子溝34aが形成された第1筒部51によりナット本体34が形成されるとともに、第2筒部52により接続部35が形成され、ボール螺子ナット33が製造される。このボール螺子ナット33において、嵌合用治具60が取り外されると、嵌合部位Wが嵌合状態の解除により外周面側に変形する。このため、嵌合部位Wの螺子溝34aの内底面が、ボール螺子ナット33の中心軸L2(軸心)から離間する側に変形し、その螺子溝34aの深さDがその他の螺子溝34aの深さDに比べて深くなる(深さD1になる)。
そして、ボール螺子装置15及びEPS11の組み立て時、嵌合部位Wに内輪37aを嵌合すると嵌合部位Wが内周側に変形するため、嵌合部位Wの内周側に位置する螺子溝34aも、内底面がボール螺子ナット33の軸心側に近付くように変形する。その結果、嵌合部位Wに位置する螺子溝34aの深さDが、その他の螺子溝34aの深さDと同じになり、内輪37aの嵌合状態で螺子溝34aの深さDがボール螺子ナット33の軸方向に沿って均一になるとともに、心間距離Mも均一になる。
上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態の(1)と同様の記載に加え、以下のような効果を得ることができる。
(3)第1筒部51の嵌合部位Wに嵌合用治具60を嵌合し、第1筒部51を変形させた状態で螺子溝34aを螺刻してボール螺子ナット33が製造される。すなわち、螺子溝34aの螺刻時には嵌合用治具60の嵌合に伴う変形が考慮される。このため、嵌合用治具60の代わりに内輪37aが嵌合された状態であっても、ボール螺子ナット33における螺子溝34aの深さDを精度良く均一にすることができ、心間距離Mを精度良く均一にすることができる。
(3)第1筒部51の嵌合部位Wに嵌合用治具60を嵌合し、第1筒部51を変形させた状態で螺子溝34aを螺刻してボール螺子ナット33が製造される。すなわち、螺子溝34aの螺刻時には嵌合用治具60の嵌合に伴う変形が考慮される。このため、嵌合用治具60の代わりに内輪37aが嵌合された状態であっても、ボール螺子ナット33における螺子溝34aの深さDを精度良く均一にすることができ、心間距離Mを精度良く均一にすることができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 図4(c)に示すように、ボール螺子ナット39の環流路を、ボール螺子ナット33の軸方向に貫通形成された貫通孔39aと、ボール螺子ナット39に取り付けられることにより貫通孔39aと螺子溝39bとを連通させるボール循環部材40,41とから形成してもよい。このボール螺子ナット39を製造するには、図4(a)に示すように、第2の実施形態で述べた筒状体50及び嵌合用治具60を用いる。そして、図4(b)に示すように、第1筒部51において、内輪37aが嵌合されることとなる嵌合部位Wに、嵌合用治具60を嵌合する。この嵌合に伴い第1筒部51が内周側に変形した状態で螺子溝39bの深さDが軸方向に沿って均一になるように、第1筒部51の内周面に螺子溝39bを螺刻する。また、第1筒部51の厚み内に、軸方向に沿って直線状に延びる貫通孔39aを形成する。
○ 図4(c)に示すように、ボール螺子ナット39の環流路を、ボール螺子ナット33の軸方向に貫通形成された貫通孔39aと、ボール螺子ナット39に取り付けられることにより貫通孔39aと螺子溝39bとを連通させるボール循環部材40,41とから形成してもよい。このボール螺子ナット39を製造するには、図4(a)に示すように、第2の実施形態で述べた筒状体50及び嵌合用治具60を用いる。そして、図4(b)に示すように、第1筒部51において、内輪37aが嵌合されることとなる嵌合部位Wに、嵌合用治具60を嵌合する。この嵌合に伴い第1筒部51が内周側に変形した状態で螺子溝39bの深さDが軸方向に沿って均一になるように、第1筒部51の内周面に螺子溝39bを螺刻する。また、第1筒部51の厚み内に、軸方向に沿って直線状に延びる貫通孔39aを形成する。
その後、第1筒部51から嵌合用治具60を取り外すとともに、ボール循環部材40,41を第1筒部51に取り付けると、ボール螺子ナット39が製造される。このボール螺子ナット39において、嵌合用治具60が取り外されると、嵌合部位Wが嵌合状態の解除により外周面側に変形する。このため、嵌合部位Wの螺子溝39bの内底面が、ボール螺子ナット39の軸心から離間する側に変形し、その螺子溝39bの深さDがその他の螺子溝34aの深さDに比べて深くなる(深さD1になる)とともに、貫通孔39aは若干曲げ変形する。
そして、ボール螺子装置15及びEPS11の組み立て時、嵌合部位Wに内輪37aを嵌合すると嵌合部位Wが内周側に変形するため、嵌合部位Wに位置する螺子溝39bの深さDが、その他の螺子溝34aの深さDと同じになるとともに、貫通孔39aは直線状に延びるようになる。
したがって、ボール螺子ナット39の軸方向に沿って螺子溝39bの深さD、及び中心軸L2と螺子溝39bに配されるボール32の中心Pとの心間距離Mを均一にすることができるとともに、貫通孔39aも直線状に延びるようにすることができ、転動路R及び環流路の通路径を均一にすることができる。なお、嵌合用治具60の代わりに内輪37aを嵌合部位Wに嵌合して貫通孔39a及び螺子溝39bを形成してもよい。
○ 第2の実施形態では、筒状体50に嵌合用治具60を嵌合して螺子溝34aを螺刻したが、嵌合用治具60ではなく内輪37aを筒状体50に嵌合して螺子溝34aを螺刻してもよい。
○ 第1の実施形態では、ラック同軸型EPSにおいて、嵌合体を、軸受37の内輪37aに具体化したが、ラッククロス型EPSにおいては、嵌合体を従動ギアに具体化してもよいし、ラックパラレル型EPSにおいては、嵌合体を従動ギア又はプーリに具体化してもよい。
○ 各実施形態では、ボール螺子装置15をEPS11に適用したが、本発明のボール螺子装置15を特開2010−38240号公報に開示される電磁緩衝器に適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記ボール螺子ナットには、前記螺子溝内の二箇所に開口する還流路が形成されるとともに、該環流路は、前記軸方向に沿って前記ボール螺子ナットの厚み内に延びる貫通孔と、前記ボール螺子ナットに取り付けられ前記貫通孔と螺子溝とを連通させるボール循環部材とから形成されており、前記嵌合体を前記筒状体に嵌合した状態で、前記筒状体の軸方向に延びるように前記筒状体に前記貫通孔を形成することを特徴とするボール螺子装置の製造方法。
(イ)前記ボール螺子ナットには、前記螺子溝内の二箇所に開口する還流路が形成されるとともに、該環流路は、前記軸方向に沿って前記ボール螺子ナットの厚み内に延びる貫通孔と、前記ボール螺子ナットに取り付けられ前記貫通孔と螺子溝とを連通させるボール循環部材とから形成されており、前記嵌合体を前記筒状体に嵌合した状態で、前記筒状体の軸方向に延びるように前記筒状体に前記貫通孔を形成することを特徴とするボール螺子装置の製造方法。
(ロ)請求項1又は請求項2に記載のボール螺子装置を備えた電動パワーステアリング装置。
D…深さ、L2…軸心としての中心軸、M…心間距離、P…ボールの中心、R…転動路、W…嵌合部位、13…螺子軸としてのラック軸、15…ボール螺子装置、31,34a,39a…螺子溝、32…ボール、33,39…ボール螺子ナット、37a…嵌合体としての内輪、50…筒状体、60…嵌合体としての嵌合用治具。
Claims (3)
- 外周に螺子溝が螺刻された螺子軸と、
内周に螺子溝が螺刻されたボール螺子ナットと、
前記螺子軸の螺子溝と前記ボール螺子ナットの螺子溝とを対向させてなる螺旋状の転動路内に配設された複数のボールと、
前記ボール螺子ナットの外周において、該ボール螺子ナットの軸方向に沿った全体長さの一部を占める嵌合部位に嵌合され該ボール螺子ナットと一体回転する嵌合体と、を備えるボール螺子装置であって、
前記嵌合部位に嵌合体を嵌合した状態で、前記ボール螺子ナットの軸心から該ボール螺子ナットの螺子溝に配される前記ボールの中心までの径方向に沿った心間距離が、前記ボール螺子ナットの軸方向に沿って均一になるように、前記嵌合部位に位置する螺子溝の深さを調整したことを特徴とするボール螺子装置。 - 前記嵌合体を嵌合する前の状態で、前記嵌合部位に位置する螺子溝は、前記ボール螺子ナットにおけるその他の部位に位置する螺子溝より深く形成されている請求項1に記載のボール螺子装置。
- 外周に螺子溝が螺刻された螺子軸と、
筒状体の内周に螺子溝が螺刻されたボール螺子ナットと、
前記螺子軸の螺子溝と前記ボール螺子ナットの螺子溝とを対向させてなる螺旋状の転動路内に配設された複数のボールと、
前記ボール螺子ナットの外周において、該ボール螺子ナットの軸方向に沿った全体長さの一部を占める嵌合部位に嵌合され該ボール螺子ナットと一体回転する嵌合体と、を備えるボール螺子装置の製造方法であって、
前記筒状体の外周に対し前記嵌合部位を設定し、該嵌合部位に前記嵌合体を嵌合した状態で、前記ボール螺子ナットの軸心から該ボール螺子ナットの螺子溝に配される前記ボールの中心までの径方向に沿った心間距離が、前記ボール螺子ナットの軸方向に沿って均一になるように、該筒状体の内周面に前記螺子溝を螺刻することにより前記ボール螺子ナットを形成することを特徴とするボール螺子装置の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2011014307A JP2012154430A (ja) | 2011-01-26 | 2011-01-26 | ボール螺子装置、及びボール螺子装置の製造方法 |
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Cited By (1)
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CN104959791A (zh) * | 2015-07-07 | 2015-10-07 | 成都亨通兆业精密机械有限公司 | 一种精密丝杆加工工艺 |
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2011
- 2011-01-26 JP JP2011014307A patent/JP2012154430A/ja active Pending
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