JP2012153999A - 漂白パルプの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】広葉樹材から、ピッチトラブルや紙のチリ欠点や摩擦低下のトラブル等を起こさない紙を製造できる漂白パルプを製造する方法を提供する。
【解決手段】 炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計含有量が0.1質量%以上である広葉樹蒸解未漂白パルプを酸素脱リグニン工程及び引き続く多段漂白工程で処理することよりなる漂白パルプの製造方法であって、前記脱リグニン工程における脱リグニン処理されたパルプを洗浄処理する洗浄工程が、脱リグニンパルプ絶乾質量に対して0.02質量%以上0.5質量%未満の添加率でアルカリが添加されている洗浄工程であり、引き続く多段漂白工程が元素状塩素を使用しない漂白処理工程である広葉樹漂白パルプの製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計含有量が0.1質量%以上である広葉樹蒸解未漂白パルプを酸素脱リグニン工程及び引き続く多段漂白工程で処理することよりなる漂白パルプの製造方法であって、前記脱リグニン工程における脱リグニン処理されたパルプを洗浄処理する洗浄工程が、脱リグニンパルプ絶乾質量に対して0.02質量%以上0.5質量%未満の添加率でアルカリが添加されている洗浄工程であり、引き続く多段漂白工程が元素状塩素を使用しない漂白処理工程である広葉樹漂白パルプの製造方法。
【選択図】 なし
Description
本発明は、製紙用パルプの製造方法に関し、さらに詳しく述べれば、広葉樹を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素脱リグニンし、元素状塩素を使用せずに漂白して漂白パルプを製造する方法に関する。
広葉樹材を紙の原料として使用する場合、まず木材チップを蒸解工程でパルプ化し、多段階漂白処理して漂白パルプとする必要がある。現在の主流は、蒸解工程と多段漂白の間に酸素とアルカリによるいわゆる酸素脱リグニンを行ない、多段漂白では元素状塩素を用いないECF(Elemental Chlorine Free)漂白が行なわれている。ECF漂白では、オゾン、二酸化塩素、過酸化水素及び過酢酸、過硫酸等の過酸が使用されているが、薬品コストが比較的低く、取り扱いも比較的容易な二酸化塩素や過酸化水素が主に使用されている。一部では、二酸化塩素も使用しないTCF(Totally Chlorine Free)漂白も採用されている。
ECF漂白の代表的な多段漂白シーケンスとしては、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)を組合せた、D−E/O−D、D−E/P−D、D−E/OP−D、D−E/O−P−D、D−E/O−D−D、D−E/O−D−P、Z−E/O−D、Z−E/OP−D、Z−E/O−P−D等を挙げることができる。また、多段漂白工程中に、高温酸処理段(A)や酸洗浄段、酵素処理段、高温二酸化塩素漂白段、過硫酸や過酢酸等による過酸漂白段、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)やジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段等を導入する漂白シーケンスも一般的によく知られている。
酸素脱リグニン段の排水及び洗浄排水は、前工程の蒸解工程の洗浄水等に再利用され、排水濃縮装置(エバポレーター)で濃縮したのちボイラーで燃焼することで、薬品及び熱の回収、排水負荷の低減を可能としている。一方で、酸素脱リグニン後のパルプ洗浄が不十分な場合、パルプに付随するリグニン分解物等が漂白薬品を浪費し、後続する漂白工程の薬品使用量が増加するとともに、現状の技術では塩素系薬品を用いる漂白工程からの排水を経済的に回収できないため、排水負荷を増加させるという欠点も有している。そのため、通常は酸素脱リグニン後には複数段の洗浄機が設置されているが、洗浄水量を増加すると排水量が多くなり、エバポレーターの負荷が増大し大幅なコスト増を伴うため、洗浄を強化する方法には限界がある。
漂白工程の薬品使用量を低減する方法として、酸素漂白に先立つ未晒パルプの洗浄工程で再使用される酸素漂白廃液にアルカリを加えpHを9.0以上とすることにより、後段へ持ち込まれる被洗浄固形分を減少させる方法(特許文献1)や、酸素脱リグニン後のパルプに対してアルカリを添加、滞留させた後に洗浄する方法等が提案されている(特許文献2)。しかしながら、これらの方法は漂白薬品の低減効果はみられるが、後述するピッチトラブルや紙の摩擦係数低下等を軽減する効果は認められない。
通常のパルプ原料として用いられるリグノセルロース物質にはパルプの主成分であるセルロース、ヘミセルロース及びリグニンの他に、脂肪酸、樹脂酸、脂肪酸グリセライド等のピッチ成分が含まれている。このピッチ成分はパルプ化の際に一部がパルプから離脱して、いわゆるコロイダルピッチと呼ばれる遊離のピッチとなることが知られている。一般に、各種パルプ化工程で製造されたパルプは、精選工程を経て他の製紙用材料と混合された後、抄紙工程に送られて抄紙され、製品となるが、この一連の工程の中で、遊離の浮遊ピッチあるいは付着ピッチが、製紙機械の各所に凝集し、用具の汚れや、紙汚れ、紙切れ等のピッチトラブルを起こすことになる。
従来から、ピッチトラブルの防止法としては、原木あるいは木材チップを屋外に積み上げて長期にわたって放置し、材中のピッチ成分を分解・除去する、いわゆる「シーズニング」と呼ばれる方法が取られてきた。しかしながら、この方法では、長期間にわたり大量の原木あるいは木材チップを放置できるだけの広大な土地を確保する必要があり、また、放置している間に木材中のセルロースやヘミセルロースが劣化し、パルプ化した場合のパルプ収率が低下するといった問題点があった。
シーズニング以外のピッチトラブルの防止法としては、界面活性剤を添加してピッチを乳化、分散させる方法(例えば、特許文献3)、タルク等の無機填料を添加してピッチを吸着させる方法(例えば、非特許文献1)、あるいは脂肪酸トリグリセライド加水分解酵素(リパーゼ)を添加してピッチを分解する方法(例えば、特許文献4)や、カビでチップを処理する方法(非特許文献2)、酸素脱リグニン段及びアルカリ抽出段後にプレス洗浄工程を設置する方法(特許文献5)等が提案されている。
しかしながら、界面活性剤を添加する方法は、充分な効果が得られない場合があるだけでなく、工程中に泡立ちを起こし、さらにはセルロース間の水素結合を阻害して紙力やサイズ度を低下させるといった問題点がある。無機填料を添加する方法は、リファイナーやワイヤーの摩耗、あるいはフェルトの目詰まり等の問題点を有している。脂肪酸トリグリセライド加水分解酵素で処理する方法は、ピッチ成分には脂肪酸トリグリセライドだけでなく他の成分も含まれているため、充分な効果が得られない場合があるといった問題点がある。また、カビでチップを処理する方法は、チッピングしたての新鮮なチップでなければ効果が出にくく、処理に長時間を要するといった問題点がある。酸素脱リグニン段及びアルカリ抽出段後にプレス洗浄工程を設置する方法には、複数段のプレス洗浄工程にプレス洗浄機を導入するために多大な設備投資が必要となるといった問題点がある。
しかしながら、界面活性剤を添加する方法は、充分な効果が得られない場合があるだけでなく、工程中に泡立ちを起こし、さらにはセルロース間の水素結合を阻害して紙力やサイズ度を低下させるといった問題点がある。無機填料を添加する方法は、リファイナーやワイヤーの摩耗、あるいはフェルトの目詰まり等の問題点を有している。脂肪酸トリグリセライド加水分解酵素で処理する方法は、ピッチ成分には脂肪酸トリグリセライドだけでなく他の成分も含まれているため、充分な効果が得られない場合があるといった問題点がある。また、カビでチップを処理する方法は、チッピングしたての新鮮なチップでなければ効果が出にくく、処理に長時間を要するといった問題点がある。酸素脱リグニン段及びアルカリ抽出段後にプレス洗浄工程を設置する方法には、複数段のプレス洗浄工程にプレス洗浄機を導入するために多大な設備投資が必要となるといった問題点がある。
近年、パルプの原料としてユーカリやアカシアに代表される熱帯広葉樹材の比率が高まってきている。これら熱帯広葉樹から製造されるパルプには、コロイダルピッチやピッチを含む繊維導管、樹脂等が特に多いことが知られており、これらは前述のピッチトラブル以外にも、紙のチリ欠点増加や摩擦係数低下の原因となり、従来の技術では熱帯広葉樹材の使用量に上限を設定せざるを得ない。このような状況から、熱帯広葉樹材パルプからピッチや樹脂を除去する方法として、ハイドロサイクロンでパルプを処理する方法(特許文献6)が提案されているが、設備投資が必要なうえ、水中でのパルプ処理で除去できるピッチや樹脂には限界があるといった問題がある。
さらに、熱帯広葉樹材を原料としたパルプ中には、炭素数が16から28の脂肪酸が多く含まれている(例えば、非特許文献3)。代表的な脂肪酸としては、炭素数16のパルミチン酸(C15COOH)は融点64℃、炭素数18のステアリン酸(C17COOH)は融点70℃、炭素数20のアラキジン酸(C19COOH)は融点76℃、炭素数22のドコサン酸(C21COOH)は融点79℃、炭素数24のテトラコサン酸(C23COOH)は融点84℃、炭素数26のセロチン酸(C25COOH)は融点88℃、炭素数28のオクタコサン酸(C27COOH)は融点91℃であり、脂肪酸の炭素数が増えるほど融点が高くなる。特に炭素数24〜28の脂肪酸は融点が80℃以上であり、通常のパルプ化工程では殆ど除去することができず、漂白パルプ中に残留して紙の摩擦係数を低下させる主原因となる。これらの残留脂肪酸や脂肪族アルコールを除去して紙の摩擦係数低下を抑制する方法としては、界面活性剤処理(特許文献7)やオゾン処理(特許文献8)による方法が提案されているが、既存のパルプ化工程内に新規の処理設備を設置するため多大な設備投資が必要となるといった問題点がある。
紙パルプ技術タイムス 昭和56年4月号、p90−93、5月号p28−31
Theresa S.Brush等、Tappi Journal Vol.77,No.1 p155−159(1994)
Lalita Joshi等、Appita Journal vol62,No.3 p226−231(2009)
本発明は、広葉樹を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素脱リグニンし、元素状塩素を使用せずに漂白して、ピッチトラブルや紙のチリ欠点や摩擦低下のトラブル等を起こさない紙を製造できる漂白パルプを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、広葉樹材を用いて漂白パルプを製造する方法について種々検討を重ねた結果、ピッチトラブルや紙のチリ欠点や摩擦低下のトラブルの頻度が、パルプ中の炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールが0.1質量%を超えると増加することを見出し、さらに酸素脱リグニン後の洗浄工程にパルプ絶乾質量に対するアルカリ質量の比率で表される添加率として0.02〜0.5質量%のアルカリを添加して洗浄した後に、ECF多段漂白を行なうことで、炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールを低減できることを見出し、以下の発明を完成するに至った。
(1)炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計含有量が0.1質量%以上である広葉樹蒸解未漂白パルプを酸素脱リグニン工程及び引き続く多段漂白工程で処理する漂白パルプの製造方法であって、前記脱リグニン工程における脱リグニン処理されたパルプを洗浄処理する洗浄工程が、脱リグニンパルプ絶乾質量に対して0.02質量%以上0.5質量%未満の添加率でアルカリが添加されている洗浄工程であり、引き続く多段漂白工程が元素状塩素を使用しない漂白処理工程であることを特徴とする広葉樹漂白パルプの製造方法。
(2)前記アルカリが、前記脱リグニン処理されたパルプを前記洗浄工程にパルプスラリーとして送るために使用される希釈水に添加されることを特徴とする(1)項記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
(3)前記酸素脱リグニン工程における洗浄工程が直列に接続されている複数の洗浄機を有しており、最後の洗浄機に前記アルカリが添加されている洗浄水が供給され、該最後の洗浄機から順にそれぞれの洗浄機における洗浄排水が直前の洗浄機におけるパルプに対する向流洗浄水として送られることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
(4)前記酸素脱リグニンの洗浄工程の洗浄水として、前記元素状塩素使用せずに漂白処理する多段漂白工程のアルカリ抽出段の排水を再利用することを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれかに記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
(5)前記酸素脱リグニン工程が、炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計含有量が0.1質量%未満のパルプを製造する工程であることを特徴とする、(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
(6)前記酸素脱リグニン工程における最終洗浄機がプレス洗浄機であることを特徴とする(1)項〜(5)項のいずれか1項に記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
(3)前記酸素脱リグニン工程における洗浄工程が直列に接続されている複数の洗浄機を有しており、最後の洗浄機に前記アルカリが添加されている洗浄水が供給され、該最後の洗浄機から順にそれぞれの洗浄機における洗浄排水が直前の洗浄機におけるパルプに対する向流洗浄水として送られることを特徴とする(1)項又は(2)項に記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
(4)前記酸素脱リグニンの洗浄工程の洗浄水として、前記元素状塩素使用せずに漂白処理する多段漂白工程のアルカリ抽出段の排水を再利用することを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれかに記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
(5)前記酸素脱リグニン工程が、炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計含有量が0.1質量%未満のパルプを製造する工程であることを特徴とする、(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
(6)前記酸素脱リグニン工程における最終洗浄機がプレス洗浄機であることを特徴とする(1)項〜(5)項のいずれか1項に記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
本発明者によれば、広葉樹を蒸解して得られる未漂白パルプをアルカリ酸素脱リグニンし、その洗浄工程において、脱リグニンパルプ絶乾質量に対して0.02〜0.5質量%の添加率でアルカリが添加されている洗浄水を使用して洗浄処理した後に、ECF多段漂白を行なうことで、炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの含有量を低レベルとしたパルプを提供することが可能となった。
本発明で使用できる木材チップとしては、ユーカリ、オーク、アカシア、ビーチ、タンオーク、オルダー等、広葉樹材であれば特に制限はない。また、使用する広葉樹材に多少の針葉樹材を含まれていても構わない。
本発明に用いられる未漂白パルプを得るための蒸解法としては、クラフト蒸解、ポリサルファイド蒸解、ソーダ蒸解、アルカリサルファイト蒸解等の公知の蒸解法を用いることができるが、パルプ品質、エネルギー効率等を考慮すると、クラフト蒸解法が好適に用いられる。例えば、木材をクラフト蒸解する場合、クラフト蒸解液の硫化度は5〜75%、好ましくは20〜35%であり、有効アルカリ添加率は絶乾木材質量当たり5〜30質量%、好ましくは10〜25質量%であり、蒸解温度は140〜170℃である。
また、蒸解方式は、連続蒸解法あるいはバッチ蒸解法のどちらでもよく、連続蒸解釜を用いる場合は、蒸解白液を分割で添加する蒸解法でもよく、その方式は特に問わない。
また、蒸解方式は、連続蒸解法あるいはバッチ蒸解法のどちらでもよく、連続蒸解釜を用いる場合は、蒸解白液を分割で添加する蒸解法でもよく、その方式は特に問わない。
蒸解に際して使用する蒸解液には、蒸解助剤として公知の環状ケト化合物、例えばベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノン及び前記キノン系化合物のアルキル、アミノ等の核置換体、或いは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、さらにはディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1種或いは2種以上が添加されてもよく、その添加率は木材チップの絶乾質量当たり0.001〜1.0質量%である。
本発明の方法において、公知の蒸解法により得られた未漂白化学パルプは洗浄、粗選及び精選工程を経て、公知の酸素脱リグニン法により脱リグニンされる。本発明の方法における酸素脱リグニン法としては、中濃度法あるいは高濃度法がそのまま適用できるが、パルプ濃度が8〜15%で行われる中濃度法が脱水装置を必要とせず、操業性がよいため好ましい。
酸素脱リグニン法に用いるアルカリとしては苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(PRESSURE Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。
酸素脱リグニン法に用いるアルカリとしては苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(PRESSURE Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。
酸素脱リグニン工程では、前記酸素ガスとアルカリが中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され、混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られ、脱リグニンされる。酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.5〜3質量%であり、アルカリ添加率は0.5〜4質量%である。
また、反応温度は80〜120℃で、反応時間は15〜100分であり、パルプ濃度は8〜15質量%である。その他の条件については、一般的な酸素脱リグニン工程で採用される条件を任意に適用することができる。本発明の方法においては、酸素脱リグニン工程における酸素脱リグニン処理を連続して複数回行い、できる限りパルプの脱リグニンを進めるのが好ましい実施形態である。
また、反応温度は80〜120℃で、反応時間は15〜100分であり、パルプ濃度は8〜15質量%である。その他の条件については、一般的な酸素脱リグニン工程で採用される条件を任意に適用することができる。本発明の方法においては、酸素脱リグニン工程における酸素脱リグニン処理を連続して複数回行い、できる限りパルプの脱リグニンを進めるのが好ましい実施形態である。
本発明の方法では、酸素脱リグニンを施されたパルプは洗浄工程へ送られる。本発明の方法において、酸素脱リグニン後の洗浄工程で使用する洗浄機、及び多段漂白工程中の洗浄段に使用する洗浄機としては、プレッシャーディフューザー、ディフュージョンウオッシャー、加圧型ドラムウオッシャー、水平長網型ウオッシャー、プレス洗浄機等を挙げることができ、特に限定されるものではない。本発明の方法における上記各洗浄段は、一機の洗浄機でまかなうこともできるし、複数の洗浄機を使用することもできる。酸素脱リグニン後の洗浄段でより多くの脂肪酸と脂肪族アルコールを除去するためには、それぞれの洗浄段で複数の洗浄機を使用することが好ましい。
酸素脱リグニン後の洗浄段の洗浄水には脱リグニンパルプ絶乾質量に対して0.02以上0.5質量%未満の添加率でアルカリが添加される。酸素脱リグニンの洗浄段に複数の洗浄機が有る場合には、洗浄水は最後の洗浄機に使用され、その排水を一つ前の洗浄機の洗浄水として再利用する向流洗浄を行なうことが好ましい。本発明では、アルカリが添加された洗浄水は酸素脱リグニン後の洗浄工程の最終の洗浄機の洗浄水及び/又は洗浄機前のパルプスラリーの希釈水として使用される。
本発明の方法で用いるアルカリは特に限定されないが、最終的にボイラーで燃焼され薬品回収を行なうことから、通常のパルプ化工程で用いられる苛性ソーダもしくは酸化白液が好ましい。
また、本発明の方法では、酸素脱リグニン段の最終の洗浄機としてプレス洗浄機を用いて洗浄後のパルプ濃度を30〜40%とすることが、脂肪酸と脂肪族アルコールを多量に含むアルカリ排水とパルプとを効果的に分離できるためさらに好ましい。
また、本発明の方法では、酸素脱リグニン段の最終の洗浄機としてプレス洗浄機を用いて洗浄後のパルプ濃度を30〜40%とすることが、脂肪酸と脂肪族アルコールを多量に含むアルカリ排水とパルプとを効果的に分離できるためさらに好ましい。
本発明の方法では、酸素脱リグニン工程で脱リグニン処理及びアルカリ洗浄処理されたパルプはECF多段漂白工程へ送られる。多段漂白工程は、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)といった公知のECF漂白法を組合せて行うことができる。また、多段漂白工程中に、高温酸処理段(A)や酸洗浄段、酵素処理段、高温二酸化塩素漂白段、過硫酸や過酢酸等による過酸漂白段、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)やジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段等を導入することもできる。
本発明の方法では、多段漂白工程におけるアルカリ抽出段からの排水を酸素脱リグニン後の洗浄工程における洗浄水として用いることが、添加するアルカリ量を削減できると共に、漂白排水の一部を回収するセミクローズド化により薬品の回収及び排水負荷の低減を可能となることから好ましい。
本発明の方法では、紙製品のチリ欠点や摩擦係数低下の原因となる、パルプ中の炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールを低減できるため、漂白パルプを感熱原紙やインクジェット原紙、電子写真用転写紙に好適に使用できる。チリ欠点の減少は感熱原紙やインクジェット原紙のバーコード印字適性を、摩擦係数の維持は電子写真用転写紙の走行性を、それぞれ大きく向上させる。
本発明の方法では、酸素脱リグニン後の洗浄工程にアルカリを添加することで、酸素脱リグニン工程においてパルプからアルカリ溶液側に炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールを溶出させて効率的に除去することが出来る。アルカリを添加せず、清水で洗浄する場合にはパルプスラリーのpHが低下し、アルカリ溶液に溶出した脂肪酸と脂肪族アルコールがパルプに再吸着してしまい、これらの除去性が低下してしまうと考えられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、もちろん本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、特に示さない限り、パルプカッパー価、脂肪酸及び脂肪族アルコールの定量は以下の方法で行なった。なお、実施例及び比較例における各種添加薬品類の添加率(質量%)の数値は、パルプ絶乾質量をaとし、添加薬品質量をbとして、式「(b/a)×100」により算出されるパルプ絶乾質量に対する添加薬品質量の割合を示す数値である。
1.カッパー価の測定
JIS P 8211に準じて行なった。
JIS P 8211に準じて行なった。
2.パルプの白色度測定
漂白パルプを離解後、パルプスラリーに硫酸バンドを対パルプ3.0%加え、Tappi試験法T205os−71(JIS P 8209)に従って作成した坪量60g/m2のシートを用い、JIS P 8123に従ってパルプの白色度を測定した。
漂白パルプを離解後、パルプスラリーに硫酸バンドを対パルプ3.0%加え、Tappi試験法T205os−71(JIS P 8209)に従って作成した坪量60g/m2のシートを用い、JIS P 8123に従ってパルプの白色度を測定した。
3.パルプ中の脂肪酸及び脂肪族アルコールの定量
乾燥させたパルプ試料0.2gと2mlのクロロホルムとをサンプル管に入れて蓋をし、10分間超音波にかけてクロロホルム抽出を行なった。未漂白パルプ及び酸素脱リグニンパルプについては、脂肪酸塩の形でパルプ中に存在するため、0.1mlの濃塩酸を添加してクロロホルム抽出を行なった。クロロホルム抽出液を高速液体クロマトグラフィーで成分分離し、荷電化粒子検出器 (LC−CAD)を用いて炭素数24〜28の脂肪酸及び脂肪族アルコールを定量した。
乾燥させたパルプ試料0.2gと2mlのクロロホルムとをサンプル管に入れて蓋をし、10分間超音波にかけてクロロホルム抽出を行なった。未漂白パルプ及び酸素脱リグニンパルプについては、脂肪酸塩の形でパルプ中に存在するため、0.1mlの濃塩酸を添加してクロロホルム抽出を行なった。クロロホルム抽出液を高速液体クロマトグラフィーで成分分離し、荷電化粒子検出器 (LC−CAD)を用いて炭素数24〜28の脂肪酸及び脂肪族アルコールを定量した。
実施例1
工場製の広葉樹未漂白クラフトパルプ(UKP、カッパー価19.1)絶乾質量60gを採取し、対パルプ2質量%の苛性ソーダを添加し、次いでイオン交換水で希釈してパルプ濃度を10質量%に調整し、間接加熱式オートクレーブに入れ、ゲージ圧が0.5MPaとなるように純度99.9%の市販圧縮酸素ガスで加圧し、温度100℃で60分間加熱して中濃度法で酸素脱リグニンを行なった。得られたパルプをイオン交換水で希釈してパルプ濃度を3質量%に調整した後、ブフナー漏斗を用いて脱水し、パルプマットを作成した。パルプマットに対パルプ0.45質量%の苛性ソーダを添加したイオン交換水で希釈して再度パルプ濃度を3質量%にした後、ブフナー漏斗を用いて脱水し、酸素脱リグニンパルプ(OKP)を得た。脱水後のパルプ濃度は20%であった。
絶乾質量45gのOKPをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10質量%に調整した後、対パルプ0.9質量%に相当する二酸化塩素を含有する二酸化塩素水を添加し、温度70℃の高温槽に30分間浸漬して二酸化塩素漂白(DO段)を行なった。
得られたパルプをイオン交換水で3質量%に希釈した後、ブフナー漏斗で脱水、洗浄した。DO段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10質量%に調整した後、苛性ソーダを対パルプ1.0質量%添加し、温度70℃で60分処理し、アルカリ抽出段(E段)を行なった。得られたパルプをイオン交換水で3質量%に希釈した後、ブフナー漏斗で脱水、洗浄した。
E段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10質量%に調整した後、対パルプ0.2質量%に相当する二酸化塩素を含有する二酸化塩素水を添加し、温度70℃で120分処理し、二酸化塩素漂白(D1段)を行なった。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈した後、ブフナー漏斗で脱水、洗浄し、白色度85.1%の漂白パルプ(BKP)を得た。
UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
工場製の広葉樹未漂白クラフトパルプ(UKP、カッパー価19.1)絶乾質量60gを採取し、対パルプ2質量%の苛性ソーダを添加し、次いでイオン交換水で希釈してパルプ濃度を10質量%に調整し、間接加熱式オートクレーブに入れ、ゲージ圧が0.5MPaとなるように純度99.9%の市販圧縮酸素ガスで加圧し、温度100℃で60分間加熱して中濃度法で酸素脱リグニンを行なった。得られたパルプをイオン交換水で希釈してパルプ濃度を3質量%に調整した後、ブフナー漏斗を用いて脱水し、パルプマットを作成した。パルプマットに対パルプ0.45質量%の苛性ソーダを添加したイオン交換水で希釈して再度パルプ濃度を3質量%にした後、ブフナー漏斗を用いて脱水し、酸素脱リグニンパルプ(OKP)を得た。脱水後のパルプ濃度は20%であった。
絶乾質量45gのOKPをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度10質量%に調整した後、対パルプ0.9質量%に相当する二酸化塩素を含有する二酸化塩素水を添加し、温度70℃の高温槽に30分間浸漬して二酸化塩素漂白(DO段)を行なった。
得られたパルプをイオン交換水で3質量%に希釈した後、ブフナー漏斗で脱水、洗浄した。DO段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10質量%に調整した後、苛性ソーダを対パルプ1.0質量%添加し、温度70℃で60分処理し、アルカリ抽出段(E段)を行なった。得られたパルプをイオン交換水で3質量%に希釈した後、ブフナー漏斗で脱水、洗浄した。
E段後のパルプをプラスチック袋に入れ、イオン交換水を用いてパルプ濃度を10質量%に調整した後、対パルプ0.2質量%に相当する二酸化塩素を含有する二酸化塩素水を添加し、温度70℃で120分処理し、二酸化塩素漂白(D1段)を行なった。得られたパルプをイオン交換水で3%に希釈した後、ブフナー漏斗で脱水、洗浄し、白色度85.1%の漂白パルプ(BKP)を得た。
UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例2
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプマットに添加する苛性ソーダを対パルプ0.02質量%とした以外は実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプマットに添加する苛性ソーダを対パルプ0.02質量%とした以外は実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例3
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプマットに対し、苛性ソーダを添加したイオン水を用いてパルプ濃度3質量%に希釈し、ブフナー漏斗を用いてパルプマットを作成した後に、シリンダープレス機で脱水し、脱水後のパルプ濃度を33質量%とした以外は、実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプマットに対し、苛性ソーダを添加したイオン水を用いてパルプ濃度3質量%に希釈し、ブフナー漏斗を用いてパルプマットを作成した後に、シリンダープレス機で脱水し、脱水後のパルプ濃度を33質量%とした以外は、実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例4
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプマットに対して、E段の排水を用いてパルプ濃度3質量%となるように希釈した以外は、実施例1と同様の操作を行なった。なお、このときのE段排水中の苛性ソーダ量は対パルプ0.45質量%に相当した。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプマットに対して、E段の排水を用いてパルプ濃度3質量%となるように希釈した以外は、実施例1と同様の操作を行なった。なお、このときのE段排水中の苛性ソーダ量は対パルプ0.45質量%に相当した。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例5
実施例1において、炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量の多いUKP(カッパー価20.1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例1において、炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量の多いUKP(カッパー価20.1)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
参考例
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプに対し、対パルプ3.0質量%の苛性ソーダを添加し、50℃で90分保持した後に、アルカリを添加せずに希釈洗浄を行なう以外は実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプに対し、対パルプ3.0質量%の苛性ソーダを添加し、50℃で90分保持した後に、アルカリを添加せずに希釈洗浄を行なう以外は実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
比較例1
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプマットに対し、苛性ソーダを添加せずにイオン交換水のみでパルプ濃度3質量%に希釈した以外は実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプマットに対し、苛性ソーダを添加せずにイオン交換水のみでパルプ濃度3質量%に希釈した以外は実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
比較例2
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプマットに添加する苛性ソーダを対パルプ0.01質量%とした以外は実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例1において、酸素脱リグニン後のパルプマットに添加する苛性ソーダを対パルプ0.01質量%とした以外は実施例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
比較例3
実施例5において、酸素脱リグニン後のパルプマットに対し、苛性ソーダを添加せずにイオン交換水のみでパルプ濃度3質量%に希釈した以外は実施例5と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
実施例5において、酸素脱リグニン後のパルプマットに対し、苛性ソーダを添加せずにイオン交換水のみでパルプ濃度3質量%に希釈した以外は実施例5と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
比較例4
比較例1において、UKPに対パルプ0.5質量%の苛性ソーダを添加したイオン交換水を用いてパルプ濃度3%に希釈した後にブフナー漏斗を用いて脱水したパルプを用いた以外は比較例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
比較例1において、UKPに対パルプ0.5質量%の苛性ソーダを添加したイオン交換水を用いてパルプ濃度3%に希釈した後にブフナー漏斗を用いて脱水したパルプを用いた以外は比較例1と同様の操作を行なった。UKP、OKP、BKPの炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計量及びBKPの白色度を表1に示した。
表1の実施例1〜5、参考例及び比較例1〜4の比較から明らかなように、酸素脱リグニン後の洗浄水にアルカリを添加することで、OKP及びBKP中の炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールを大幅に低減することが出来ることが判る。また、参考例からは、苛性ソーダを過剰添加してアルカリ添加後に加温して保持すると、パルプの漂白性は向上するものの、脂肪酸と脂肪族アルコールの除去効果は変わらないことが判る。さらに、比較例2から、アルカリ添加率が少なすぎる場合には十分な脂肪酸と脂肪族アルコールの除去効果が得られないことが判る。また、比較例4から、蒸解後のUKPの洗浄水に対してアルカリを添加しても、パルプの漂白性は向上するものの、脂肪酸と脂肪族アルコールはほとんど除去されないことが判る。
本発明の方法によれば、新規の設備投資を必要とせずに、経済的に紙製品のチリ欠点や摩擦係数低下の原因となるパルプ中の炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールを低減し、かつ元素状塩素を使用せずに漂白して漂白パルプを製造することができるので、パルプの原料としての比率が高まってきているユーカリやアカシアに代表される熱帯広葉樹材の利用分野のさらなる拡大に寄与する。
Claims (6)
- 炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計含有量が0.1質量%以上である広葉樹蒸解未漂白パルプを酸素脱リグニン工程及び引き続く多段漂白工程で処理する漂白パルプの製造方法であって、前記脱リグニン工程における脱リグニン処理されたパルプを洗浄処理する洗浄工程が、脱リグニンパルプ絶乾質量に対して0.02質量%以上0.5質量%未満の添加率でアルカリが添加されている洗浄工程であり、引き続く多段漂白工程が元素状塩素を使用しない漂白処理工程であることを特徴とする広葉樹漂白パルプの製造方法。
- 前記アルカリが、前記脱リグニン処理されたパルプを前記洗浄工程にパルプスラリーとして送るために使用される希釈水に添加されることを特徴とする請求項1記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
- 前記酸素脱リグニン工程における洗浄工程が直列に接続されている複数の洗浄機を有しており、最後の洗浄機に前記アルカリが添加されている洗浄水が供給され、該最後の洗浄機から順にそれぞれの洗浄機における洗浄排水がそれぞれの直前の洗浄機におけるパルプに対する向流洗浄水として送られることを特徴とする請求項1又は2に記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
- 前記酸素脱リグニンの洗浄工程の洗浄水として、前記元素状塩素使用せずに漂白処理する多段漂白工程のアルカリ抽出段の排水を再利用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに1項に記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
- 前記酸素脱リグニン工程が、炭素数24〜28の脂肪酸と脂肪族アルコールの合計含有量が0.1質量%未満パルプを製造する工程であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
- 前記酸素脱リグニン工程における最終洗浄機がプレス洗浄機であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の広葉樹漂白パルプの製造方法。
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WO2013015323A1 (ja) * | 2011-07-25 | 2013-01-31 | 王子ホールディングス株式会社 | 非塗工紙及び塗工紙 |
JP2015057270A (ja) * | 2013-08-16 | 2015-03-26 | 日本製紙株式会社 | 鉱滓用造粒剤 |
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-
2011
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