JP5526604B2 - Ecf漂白方法 - Google Patents
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(1)同一または異なる漂白シークエンスの蒸解未漂白パルプのアルカリ酸素漂白処理後および多段漂白処理の各漂白処理後から選ばれる少なくとも1つの脱リグニン処理後のパルプスラリーから分離したパルプ同伴水を、
(2)無機ペルオキシ酸を用いる処理段を含む多段漂白処理の無機ペルオキシ酸を用いる処理段に添加することを特徴とするパルプのECF漂白方法。
前記酸素ガスとアルカリは中濃度ミキサーにおいて中濃度のパルプスラリーに添加され混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られ、脱リグニンされる。酸素ガスの添加率は、絶乾(BD:bone dry)パルプ質量あたり0.5〜3質量%、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、反応温度は80〜120℃、反応時間は15〜100分、パルプ濃度は8〜15質量%が好適条件であるが、実施形態については特に限定するものではない。アルカリ漂白処理工程においては、アルカリ酸素漂白法による処理を連続して複数回行い、できる限り脱リグニンを進め、重金属の含有量を減らしておくことがより好ましい。アルカリ酸素漂白処理が実施されたパルプは通常は洗浄工程が行われるが、本発明のパルプ同伴水を分離する場合には、洗浄工程に供される前のパルプスラリーからパルプ同伴水を分離することが好ましい。洗浄工程後のパルプは、多段漂白処理工程へ送られる。
これらの処理段からなる多段漂白処理シークエンスとしては、例えば、Px−D−Eo−D、Px−D−Eop−D、D−Eo−D−Px、D−Ep−D−Px、D−Eop−D−Px、Px/D−Eo−P−D、Px/D−Eop−P−D、D−Eop−Px/D、A−ZD/Px−Eop−D、Z−Eop−D−Px、Z−Eo−P−D−Pxシークエンスによる漂白などが挙げられる。
これらのなかでも、パルプ同伴水を添加する無機ペルオキシ酸を用いる処理段が、パルプ同伴水を分離する多段漂白処理の漂白シークエンスに含まれる形態が最も好ましい形態である。パルプ同伴水を同一シークエンス内から分離することによって、分離から添加までの作業を効率よく行うことができ、また、ラインなどの設備製造のための費用を抑えることができる。
パルプスラリーからの同伴水の分離方法としては、ろ過や遠心分離などの公知の方法を用いて、パルプ同伴水の一部または全部を分離することができる。また、ろ過等によりパルプスラリーから同伴水を分離する前に、パルプスラリーに水を添加してパルプからの同伴水の分離効率を向上させることもできる。パルプからの同伴水を分離するための装置としてはシリンダー型シックナー、プレッシャーフィルター、バキュームフィルター、デフューザーウォッシャーなどを使用することができる。
本発明で使用されるモノ過硫酸は、ペルオキシ一硫酸(peroxymonosulfuric acid)とも呼ばれるものであり、ペルオキシ二硫酸を加水分解して製造することもできるし、過酸化水素と硫酸を任意の割合で混合して製造することもできるが、その製造方法については特に限定するものではない。また、モノ過硫酸の複塩(2KHSO5・KHSO4・K2SO4)であるオキソンのようなものを使用することもできる。ただし、経済性を考慮すると、安価な高濃度の過酸化水素と安価な高濃度の硫酸を混合して低コストでモノ過硫酸を製造し、使用するのが好ましい実施形態である。
また、例えば、国際公開第2008/047864号公報に示されるような方法で過酸化水素と硫酸を原料としてオンサイトで製造することが好ましい。
パルプを絶乾質量で0.16gとり、それを全量が80gになるように蒸留水を加えた。そこにギ酸を0.02g添加し、よく攪拌した。その全量を耐圧容器に移し、120℃で4時間加温してヘキセンウロン酸の酸加水分解を行った。加温後、ろ別された溶液中のヘキセンウロン酸の酸加水分解物である2−フランカルボン酸と5−ホルミル−2−フランカルボン酸をHPLCにて定量し、そのモル比の合計からヘキセンウロン酸量を求めた。
漂白パルプを離解後、JIS P8209に従って坪量60g/m2のシートを作製し、JIS P8148に従ってパルプの白色度を測定した。
漂白パルプを離解後、硫酸アルミニウムを添加しpH5.5に調製した後、坪量60g/m2のシートを作製した。作製したシートを80℃、相対湿度65%の条件下で24時間静置し、処理前後の白色度から下式に従ってPC価を算出した。
PC価={(1−褪色後白色度)2/(2×褪色後白色度)−(1−褪色前白色度)2/(2×褪色前白色度)}×100
モノ過硫酸の合成は三菱ガス化学(株)製の工業グレード45%過酸化水素水75.6g(1mol)に鉄濃度10ppm以下の工業用グレード95%濃硫酸310g(3mol)を、混合溶液が70℃を越えないような速度で滴下することにより行い、脱塩素水により希釈してモノ過硫酸2.1%水溶液3500gを得た。合成後のモノ過硫酸濃度は、ヨウ素滴定より求めた全過酸化物濃度から、硫酸(IV)セリウムを用いた酸化還元滴定より得た過酸化水素濃度を差し引いて求めた。
ユーカリ材を蒸解後、アルカリ酸素漂白した後の未晒L−パルプ(ヘキセンウロン酸量41.1μmol/パルプg、白色度 54.8%)を以下の条件で処理した。
<D0−Eop−D1処理>
・D0:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量0.2質量%、反応後pH3、温度70℃、時間30分
・Eop:パルプ濃度10%、過酸化水素添加量0.25質量%、酸素添加量0.15%、処理pH11〜12、温度60℃、時間70分
・D1:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量0.3質量%、反応後pH5、温度70℃、時間120分
・各段の洗浄条件:洗浄率90%、洗浄後パルプ濃度20%まで脱水。
なお、「D0」は初段二酸化塩素処理段を意味し、「D1」は、最終二酸化塩素処理段を意味する。
D1後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度は21.5μmol/パルプg、白色度は84.8%であった。
アルカリ酸素漂白後のパルプ濃度18.5%のパルプスラリーをパルプ濃度が23%になるまでろ過し、得られたろ液をパルプ同伴水とした。
D1処理後のパルプ濃度20%のパルプを40g量り取り、ポリエチレン袋に入れた。そこに2%モノ過硫酸3.6g、10%水酸化ナトリウム1.6gとパルプ同伴水を34.8g加え、パルプ濃度10%の試料を調製した。それを60℃で60分加温した。Px処理時の各物質使用量とPx処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度、白色度、PC価を表1に示した。
<パルプ同伴水の酸化剤処理>
実施例1で分離したパルプ同伴水165gに35%過酸化水素溶液を200g加え、10%水酸化ナトリウムを40g添加して、過酸化水素濃度17質量%、pH12の溶液に調整した。その溶液を55℃で3時間加温した後、残存過酸化水素濃度が10ppm以下になるようにカタラーゼを用いて過酸化水素を除去した。
実施例1のパルプ同伴水を酸化剤処理後のパルプ同伴水に代えて同様の処理を行った。
Px処理時の各物質使用量とPx処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度、白色度、PC価を表1に示した。
ユーカリ材を蒸解後、アルカリ酸素漂白した後の未晒L−パルプ(ヘキセンウロン酸量41.1μmol/パルプg、白色度 54.8%)を以下の条件で処理した。
<D0−Eop−D1処理>
・D0:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量0.2質量%、反応後pH3、温度70℃、時間30分
・Eop:パルプ濃度10%、過酸化水素添加量0.25質量%、酸素添加量0.15%、処理pH11〜12、温度60℃、時間70分
・D1:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量0.3質量%、反応後pH5、温度70℃、時間120分
・各段の洗浄条件:洗浄率90%、洗浄後パルプ濃度20%まで脱水。
D1後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度は21.5μmol/パルプg、白色度は84.8%であった。
D0処理後のパルプ濃度15%のパルプスラリーをパルプ濃度が25%になるまでろ過し、得られたろ液をD0処理後のパルプ同伴水とした。
分離したD0処理後のパルプ同伴水60gに35%過酸化水素溶液を80g加え、10%水酸化ナトリウムを20g添加して、過酸化水素濃度17質量%、pH12の溶液に調整した。その溶液を55℃で3時間加温した後、残存過酸化水素濃度が10ppm以下になるようにカタラーゼを用いて過酸化水素を除去した。
D1処理後のパルプ濃度20%のパルプを40g量り取り、ポリエチレン袋に入れた。そこに2%モノ過硫酸3.6g、10%水酸化ナトリウム1.7gとパルプ同伴水を34.7g加え、パルプ濃度10%の試料を調製した。それを60℃で60分加温した。Px処理時の各物質使用量とPx処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度、白色度、PC価を表1に示した。
ユーカリ材を蒸解後、アルカリ酸素漂白した後の未晒L−パルプ(ヘキセンウロン酸量41.1μmol/パルプg、白色度 54.8%)を以下の条件で処理した。
<D0−Eop−D1処理>
・D0:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量0.2質量%、反応後pH3、温度70℃、時間30分
・Eop:パルプ濃度10%、過酸化水素添加量0.25質量%、酸素添加量0.15%、処理pH11〜12、温度60℃、時間70分
・D1:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量0.3質量%、反応後pH5、温度70℃、時間120分
・各段の洗浄条件:洗浄率90%、洗浄後パルプ濃度20%まで脱水。
D1後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度は21.5μmol/パルプg、白色度は84.8%であった。
前記のD0−Eop−D1−Pxシークエンスとは異なる多段漂白シークエンス(D0―Epシークエンス)からパルプ同伴水を分離した。
ユーカリ材を蒸解後、アルカリ酸素漂白した後の未晒L−パルプ(ヘキセンウロン酸量41.1μmol/パルプg、白色度 54.8%)を以下の条件で処理した。
次いで、D0−Ep多段漂白処理を行った。
・D0:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量0.1質量%、反応後pH3、温度50℃、時間20分、
・D0段の洗浄条件:洗浄率90%、洗浄後パルプ濃度20%まで脱水。
・Ep:パルプ濃度15%、過酸化水素添加量1.0質量%、処理pH12、温度75℃、時間180分
Ep処理後のパルプ濃度15%のパルプスラリーをパルプ濃度が25%になるまでろ過し、得られたろ液をEp処理後のパルプ同伴水として分離した。
分離したEp処理後のパルプ同伴水80gに35%過酸化水素溶液を80g加え、10%水酸化ナトリウムを10g添加して、過酸化水素濃度17質量%、pH12の溶液に調整した。その溶液を55℃で3時間加温した後、残存過酸化水素濃度が10ppm以下になるようにカタラーゼを用いて過酸化水素を除去した。
<Px処理>
D0−Eop−D1−PxシークエンスのD1処理後のパルプ濃度20%のパルプを40g量り取り、ポリエチレン袋に入れた。そこに2%モノ過硫酸3.6g、10%水酸化ナトリウム1.5gとパルプ同伴水を34.9g加え、パルプ濃度10%の試料を調製した。それを60℃で60分加温した。Px処理時の各物質使用量とPx処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度、白色度、PC価を表1に示した。
<Px処理>
実施例1のパルプ同伴水を脱塩素水に代えて、実施例1と同様のパルプ漂白を行った。Px処理時の各物質使用量とPx処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度、白色度、PC価を表1に示した。
実施例2のPx処理の処理時間を60分から20分に変えて処理を行った。Px処理時の各物質使用量と処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度、白色度、PC価を表2に示した。
実施例5の酸化剤処理後のパルプ同伴水を脱塩素水に代えて、実施例5と同様のパルプ漂白を行った。Px処理時の各物質使用量と処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度、白色度、PC価を表2に示した。
ユーカリ材を蒸解後、アルカリ酸素漂白した後の未晒L−パルプ(ヘキセンウロン酸量41.1μmol/パルプg、白色度 54.8%)を以下の条件で処理した。
<Px処理>
パルプ濃度18.5%のアルカリ酸素漂白後の未晒パルプを86.4g量り取り、ポリエチレン袋に入れた。そこに2%モノ過硫酸 8g、10%水酸化ナトリウム 2.0gと実施例2で作製した酸化剤処理後のパルプ同伴水64.3gを加え、パルプ濃度10%の試料に調製した。それを60℃で60分加温し、加温後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度を測定した。Px処理時の各物質使用量とPx処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度を表3に示した。
<D0−Eop−D1処理>
・D0:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量 0.2質量%、反応後pH3、温度60℃、時間60分
・Eop:パルプ濃度10%、過酸化水素添加量 0.25質量%、酸素添加量 0.15%、処理pH11〜12、温度60℃、時間70分
・D1:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量 0.2質量%、反応後pH5、温度60℃、時間60分
・各段の洗浄条件:洗浄率90%、洗浄後パルプ濃度20%まで脱水。
D1処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度、白色度、PC価を表3に示した。
<Px処理>
実施例6のパルプ同伴水を脱塩素水に代えて、実施例6と同様のパルプ漂白を行った。Px処理時の各物質使用量と処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度、白色度、PC価を表3に示した。
ユーカリ材を蒸解後、アルカリ酸素漂白した後の未晒L−パルプ(ヘキセンウロン酸量41.1μmol/パルプg、白色度 54.8%)を以下の条件で処理した。
<Px/D0処理>
パルプ濃度18.5%のアルカリ酸素漂白後の未晒パルプを86.4g量り取り、ポリエチレン袋に入れた。そこに2%二酸化塩素4g、2%モノ過硫酸 4g、10%水酸化ナトリウム 0.8gと実施例2で作製した酸化剤処理後のパルプ同伴水64.8gを加え、パルプ濃度10%の試料を作製した。それを60℃で120分加温し、加温後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度を測定した。Px/D0処理時の各物質使用量とPx/D0処理後のヘキセンウロン酸濃度を表4に示した。
Px /D0処理後のパルプを以下の条件で処理した。
・Ep:パルプ濃度10%、過酸化水素添加量0.4質量%、処理pH11〜12、温度60℃、時間120分
・D1:パルプ濃度10%、二酸化塩素添加量0.2質量%、反応後pH5、温度60℃、 時間180分
・各段の洗浄条件 洗浄率90%、洗浄後パルプ濃度20%まで脱水。
D1処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度、白色度、PC価を表4に示した。
<Px処理>
実施例7のパルプ同伴水を脱塩素水に代えて、実施例7と同様のパルプ漂白を行った。Px処理時の各物質使用量と処理後のパルプ中のヘキセンウロン酸濃度、白色度、PC価を表4に示した。
Claims (5)
- リグノセルロース物質を蒸解して得られる未漂白パルプのECF漂白方法であって、
(1)同一または異なる漂白シークエンスの蒸解未漂白パルプのアルカリ酸素漂白処理後および多段漂白処理の各漂白処理後から選ばれる少なくとも1つの脱リグニン処理後のパルプスラリーから分離したパルプ同伴水を、
(2)無機ペルオキシ酸を用いる処理段を含む多段漂白処理の無機ペルオキシ酸を用いる処理段に添加することを特徴とするパルプのECF漂白方法。 - 無機ペルオキシ酸を用いる処理段が、パルプ同伴水を分離する多段漂白処理の漂白シークエンスに含まれることを特徴とする請求項1記載のECF漂白方法。
- パルプ同伴水を酸化剤で処理した後、無機ペルオキシ酸を用いる処理段に添加することを特徴とする請求項1または2に記載のECF漂白方法。
- 前記酸化剤が過酸化水素であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のECF漂白方法。
- 前記無機ペルオキシ酸がモノ過硫酸であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のECF漂白方法。
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