JP5119471B2 - リグノセルロース物質の蒸解方法 - Google Patents

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Description

本発明は、リグノセルロース物質の蒸解方法に関し、更に詳しくは、クラフト蒸解にける蒸解性とパルプ収率の両者を向上することが可能なリグノセルロース物質の蒸解方法に関する。
リグノセルロース物質を製紙原料として多くの用途に使用するためには、蒸解処理して化学パルプとするか、あるいはリファイナー等を用いて機械的に処理して機械パルプとする必要がある。これらのパルプは、必要に応じて漂白処理され、所望の白色度に調整された後、製紙原料として使用される。現在、所望の白色度、パルプ特性に調整しやすいことから化学パルプ化法が主として用いられ、特にクラフト法と呼ばれる蒸解法は、薬品の再生が可能であり、使用原料の制限も少ない等の理由から化学パルプ化法の主流となっている。また、クラフトパルプ法は、装置の面でも発展してきており、連続蒸解釜と呼ばれる大量生産型でかつ大型のものが主流となっている。
クラフトパルプ法の改良法としては、連続蒸解釜を用いたMCC法、EMCC法、ITC法、Lo−Solids法などが提案されている。MCC法は連続式蒸解釜への蒸解薬液の添加を3分割し、一部を釜の中段や下段からチップと向流添加することで、蒸解工程の各段のアルカリ濃度を均一に保ち、過剰なアルカリによる木材中のセルロースの崩壊を抑制することでパルプ強度を向上する方法である。また、Lo−Solids法は黒液を抽出する工程と、抽出した黒液よりも溶解有機物の少ない液で液補充する工程を組み合わせることにより、蒸解工程を通して蒸解液中の溶解有機物を少なく保ち、均一な蒸解反応をなすことでパルプ強度を向上する方法である(特許文献1、2)。これらの改良法は何れもパルプ品質を改良する方法であるが、黒液を浸透ゾーンに戻し、蒸解のアルカリプロファイルを均一にし、低温長時間蒸解をする方法いわゆるCOMPACT COOKINGTM法、KOBUDOMARI法(特許文献3、4、5、非特許文献1)では、従来の蒸解法と比較して蒸解収率を102〜103に向上できるとされている。しかしながら、これらの蒸解法を既設の連続蒸解釜へ適用する場合に大掛かりな設備の改造をともなうという問題がある。
また、パルプ収率の向上を目指した、蒸解液の改善や脱リグニン助剤などの開発も進み、前者ではポリサルファイド蒸解法、後者ではキノン化合物の添加などが挙げられる。これらのうち、ポリサルファイド蒸解は、蒸解薬液を酸化して硫化ナトリウムをポリサルファイド硫黄に変換したり、蒸解薬液に直接硫黄を添加することにより、ヘミセルロースの末端基を酸化保護して高アルカリ性の蒸解薬液へのヘミセルロース溶出を抑えるためパルプ収率が向上するとしている(非特許文献2)。一方、キノン化合物を添加するキノン蒸解では、キノン化合物がセルロースの末端基を酸化保護してセルロースの溶出を抑制し、パルプ収率が向上するとしている(特許文献6、7)。これらポリサルファイド蒸解とキノン蒸解を組合せた蒸解法も検討されている(特許文献8)が、いずれも蒸解収率の向上効果と比較して薬品コストが大きく、さほど普及が進んでいないのが現状である。
クラフト蒸解における蒸解薬液は苛性ソーダ(NaOH)と硫化ソーダ(NaS)からなり、クラフト蒸解の初期に硫化物が存在すれば得られるパルプの強度が向上することが古くから知られており(非特許文献3)、蒸解初期の硫化度(硫化ソーダ濃度/(苛性ソーダ濃度+硫化ソーダ濃度))に関する研究が精力的に行われてきた。その反面、蒸解中期以降の硫化度が蒸解性やパルプ収率に対して与える効果は知られていない。蒸解薬液よりも硫化度の高い溶液として、パルプ工場内では蒸解黒液および回収工程で生成する緑液が存在する。
前記COMPACT COOKINGTM法、KOBUDOMARI法では蒸解黒液を蒸解初期段階に硫化物源として添加する方法であり、緑液を蒸解初期段階で添加する方法も検討されている(非特許文献4)が、蒸解初期段階にあたる浸透ゾーンに硫化度の高い溶液を添加しても浸透ゾーンおよび蒸解最高温度に到達する前にアルカリと共に硫化ソーダの多くが消費されてしまい、実際の脱リグニンに利用される硫化ソーダが少ないという問題がある。
特表平8−511583号公報、 特表平10−504614号公報 米国特許第6086717号公報 米国特許第6123807号公報 米国特許第6159336号公報 特開昭52−37803号公報 特開昭53−45404号公報 特開2002−115190号公報 具延、「COMPACT COOKINGTM法及びKOBUDOMARI法の蒸解パルプの収率評価法」、平成15年度 紙パルプ技術協会 年次大会 講演予稿集、p49〜59 山口章、「工場チップのポリサルファイド蒸解」、紙パ技協誌、第33巻第8号、p1〜9 Sjoblom,Kら、「Extended delignification in kraft cooking through improved selectivity」、Paperi Puu 65:4、177、1983年 Svedman,Mら、「The use of green liquor and its derivatives in improving kraft pulping」、TAPPI J.、vol81 No.10、151、1998年
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、リグノセルロース物質の蒸解方法において、大掛かりな設備の改造無しで、クラフト蒸解における蒸解性、パルプ収率を向上させる蒸解方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、クラフト蒸解における硫化度に着目して種々検討した結果、浸透ゾーン、蒸解ゾーンを順に有する連続蒸解装置において、蒸解ゾーンに硫化度の高い蒸解薬液を添加することで脱リグニンを大幅に促進でき、カッパー価あたりのパルプ収率も増加することを見出し、本発明を完成するに至った。
本願発明は以下の発明を包含する。
(1)リグノセルロース物質を浸透ゾーン、蒸解ゾーンを順に有する連続蒸解装置で蒸解する際に、蒸解薬液を浸透ゾーンおよび蒸解ゾーンに添加する蒸解方法であって、該浸透ゾーンの温度が90〜140℃であり、該浸透ゾーンに添加する蒸解薬液よりも5%以上硫化度の高い蒸解薬液を該蒸解ゾーンに用いるリグノセルロース物質の蒸解方法。
(2)前記蒸解ゾーンに添加する蒸解薬液として、緑液を用いる(1)記載のリグノセルロース物質の蒸解方法。
(3)前記該蒸解ゾーンに添加する蒸解薬液として、黒液を用いる(1)記載のリグノセルロース物質の蒸解方法。
(4)前記蒸解ゾーン温度が120℃〜170℃であり、かつ浸透ゾーンと蒸解ゾーンの温度差が20℃以上である(1)〜(3)いずれかに記載のリグノセルロース物質の蒸解方法。
(5)前記蒸解ゾーンに添加する蒸解薬液を蒸解ゾーンでの最高温度に達する前に添加する(1)〜(4)いずれかに記載のリグノセルロース物質の蒸解方法。
(6)前記浸透ゾーンが液比2.0〜2.8の低液比で行なわれる(1)〜(5)いずれかに記載のリグノセルロース物質の蒸解方法。
本発明者によれば、浸透ゾーン、蒸解ゾーンを順に有する連続蒸解装置において、蒸解ゾーンに硫化度の高い蒸解薬液を添加することで脱リグニンを大幅に促進でき、同一カッパー価あたりのパルプ収率を大幅に向上するリグノセルロース物質の蒸解方法を提供することが可能となった。
本発明で用いられるリグノセルロース物質は、好適には広葉樹材および針葉樹材であるが、非木材と呼ばれるものでも良く、特に限定するものではないが、針葉樹材のほうが未漂白パルプの元々のカッパー価が高いため、本発明の効果が大きく好ましい。
本発明においては、例えば図1に示すように、上部から底部にかけて、浸透ゾーン(A)、蒸解ゾーン(B)、洗浄ゾーン(C)を順に有する連続蒸解釜、好ましくは、さらに蒸解ゾーン(B)が上部蒸解ゾーン(B1)と下部蒸解ゾーン(B2)に別れた連続蒸解釜が用いられる。各々のゾーンは、ストレーナーにより区切られる。本発明においては、浸透ゾーンを有する浸透ベッセルが連続蒸解釜の前に設置された2ベッセル蒸解装置においても好適に用いられる。例えば図1の場合には、リグノセルロース物質に蒸解液導入管2から蒸解薬液が添加された後、木釜頂部3からストレーナー5を出るまでの工程が浸透ゾーン(A)、ストレーナー5からストレーナー6までの工程が上部蒸解ゾーン(B1)、ストレーナー6からストレーナー7までの工程が下部蒸解ゾーン(B2)、ストレーナー7から木釜下部4までの工程が洗浄ゾーン(C)である。
本発明においては、必ず蒸解薬液が洗浄ゾーンを除く、前記各ゾーン毎に1ヶ所以上添加される。例えば、図1の場合、蒸解薬液(白液)は蒸解薬液導入管2によって浸透ゾーン、蒸解薬液導入管1によって蒸解ゾーンに分割添加される。蒸解薬液は浸透ゾーンへ添加比率として50%以上添加される。浸透ゾーンへの蒸解薬液の添加比率がこれより少ない場合、浸透ゾーンでのアルカリが不足し、脱リグニンが進まなくなる。有効アルカリ添加率は総計で絶乾木材重量当たり5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%である。本発明において、蒸解補助剤として公知のポリサルファイドや環状ケト化合物、例えばベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、アントロン、フェナントロキノン及び前記キノン系化合物のアルキル、アミノ等の核置換体、或いは前記キノン系化合物の還元型であるアントラヒドロキノンのようなヒドロキノン系化合物、さらにはディールスアルダー法によるアントラキノン合成法の中間体として得られる安定な化合物である9,10−ジケトヒドロアントラセン化合物等から選ばれた1種或いは2種以上が添加されてもよく、その添加率は通常の添加率であり、例えば、木材チップの絶乾重量当たり0.001〜1.5重量%である。また、その他使用できる蒸解助剤としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等のキレート剤や、各種界面活性剤等が挙げられ、特に限定されるものではない。これらの蒸解助剤は、蒸解液同様に分割添加することが可能であり、添加場所も限定されるものではない。
本発明において、浸漬ゾーンに添加される白液の硫化度は15〜30%であり、蒸解ゾーンに添加される蒸解薬液の硫化度は浸透ゾーンに添加される白液よりも硫化度が5%以上高いことを特徴としている。浸透ゾーンに添加される白液中の硫化ソーダ成分は水硫化物イオン(SH)として存在するが、浸透ゾーンにおいてその大半がチップ成分に消費あるいは吸着してしまい、脱リグニンが行なわれる蒸解ゾーンにおいて水硫化物イオンが不足してしまう。この不足分を補うために蒸解ゾーンにおいて硫化度の高い蒸解薬液を添加することで、蒸解ゾーンにおける脱リグニンが大幅に促進できる。硫化度が同等の蒸解薬液を該蒸解ゾーンに添加する場合はこの水硫化物イオンを補う効果が得られず、脱リグニンを促進できない。
該蒸解ゾーンに添加される薬液として白液を用いる場合、浸透ゾーンと蒸解ゾーンで硫化度の異なる白液を添加するためには、あらかじめ2種類の白液を製造しなければならず、新たに製造設備を増設する必要がある。一方、回収工程で生成する緑液は硫化度が50〜90%程度であり、かつ緑液の利用により緑液を苛性化して白液とするために必要な薬品やエネルギーを大幅に削減することができるために好適である。回収ボイラーからのスメルトを溶解した時点の緑液にはドレッグスと称する不溶性不純物が含まれており、これらの混入はパルプ品質を損なうため、清澄した緑液を用いることが好ましい。緑液の清澄法としては、公知のクラリファイヤーやろ過型清澄設備などを単独もしくは組合せて使用することができる。また、蒸解黒液も硫化度が50〜70%程度であり、特別な処理を必要とせずに該蒸解ゾーンに添加できるため好ましい。本発明における効果を緑液と黒液とで比較すると、通常は緑液の方がアルカリ濃度および硫化度が高いため、大きな効果が得られる。
本発明において、浸透ゾーンにおける温度は90〜140℃であり、蒸解ゾーンにおける最高温度との温度差が20℃以上あることが好ましく、浸透ゾーンにおけるリグノセルロース物質の滞留時間は20分〜2時間である。温度が90℃より低い場合や滞留時間が20分より少ない場合には浸透ゾーンにおける蒸解薬液の浸透および反応が不十分であり、その後の蒸解ゾーンで急激に加温され不均一な蒸解となるため適さない。一方、浸透ゾーン温度が140℃よりも高い場合や蒸解ゾーンにおける最高温度との温度差が20℃未満の場合には、蒸解薬液がチップに十分浸透する前に浸透ゾーンで蒸解反応がスタートしてしまい、やはり不均一な蒸解となってしまうために適さない。また、滞留時間2時間以上の浸透ゾーンに関しては設備費が膨大になってしまい、現実的でない。
本発明において、浸透ゾーンにおける液比は2〜7であり、好ましくは2〜2.8である。液比を2未満にすると、原料に蒸解薬液が十分に浸透しないうえ、原料が釜内を沈降し難くなり、不均一蒸解となるため適さない。一方、液比が7より大きくなると黒液の回収負荷が大きくなり過ぎるため適さない。液比を2.8以下にすると浸透ゾーンでのアルカリ濃度が高くなり、続く蒸解ゾーンでの脱リグニンが進みやすくなるために好ましい。
本発明の浸透ゾーンおよび蒸解ゾーンにおいては、向流蒸解および並流蒸解に関して、特に限定するものではなく、状況に応じて向流蒸解および並流蒸解が適宜選択される。例えば、蒸解ゾーンを上部蒸解ゾーンと下部蒸解に分けた場合には、向流蒸解+向流蒸解、向流蒸解+並流蒸解、並流蒸解+並流蒸解、並流蒸解+向流蒸解の4つの組み合わせが可能である。これらの選択は、原料となるリグノセルロース物質の性状や、操業性、経済性、パルプ品質等を考慮して行なわれる。
本発明の蒸解ゾーンにおける液比は3〜10である。液比を3未満にすると、蒸解液の浸透不十分により未蒸解カスが発生し、一方液比10を越えると黒液の回収負荷が大きくなり過ぎるため適さない。蒸解ゾーンにおける最高温度は、例えば広葉樹を原料とした場合、120〜150℃であり、針葉樹を原料とした場合には、140〜170℃である。本発明において、蒸解ゾーンに添加される蒸解薬液は蒸解ゾーンでの脱リグニンを促進する効果が大きいため、蒸解ゾーンにおける最高温度に達する前に添加することが好ましい。蒸解ゾーンにおけるリグノセルロース物質の滞留時間は2〜10時間である。滞留時間が2時間より短ければ、蒸解不十分でチップがパルプ化されず、一方10時間より長ければ過蒸解によりパルプ繊維が傷んでしまうため望ましくない。蒸解ゾーン終了時に抽出される黒液中の残アルカリ量は、5〜20g/L、好ましくは8〜12g/Lである。残アルカリ濃度が5g/Lより低い場合には、蒸解ゾーンでの脱リグニン反応が十分に進まず、20g/Lよりも高くなると、セルロースの損傷が大きくなり、蒸解パルプ収率が低くなるため適さない。
本発明の洗浄ゾーンにおける条件は、特に限定されるものではないが、釜内での洗浄の効率化を考慮すると、向流洗浄とするのが好ましい実施形態である。
本発明では、前記未漂白パルプは、洗浄、粗選及び精選工程を経て、公知のアルカリ酸素漂白法により脱リグニンすることもできる。本発明に使用されるアルカリ酸素漂白法は、公知の中濃度法或いは高濃度法がそのまま適用できるが、現在、汎用的に用いられているパルプ濃度が8〜15%で行われる中濃度法が好ましい。
前記中濃度法によるアルカリ酸素漂白法において、アルカリとしては苛性ソーダあるいは酸化されたクラフト白液を使用することができ、酸素ガスとしては、深冷分離法からの酸素、PSA(Pressure Swing Adsorption)からの酸素、VSA(Vacuum Swing Adsorption)からの酸素等が使用できる。前記酸素ガスとアルカリは中濃度ミキサーにおいてパルプスラリーに添加され、混合が十分に行われた後、加圧下でパルプ、酸素及びアルカリの混合物を一定時間保持できる反応塔へ送られ、脱リグニンされる。
酸素ガスの添加率は、絶乾パルプ質量当たり0.5〜3質量%、アルカリ添加率は0.5〜4質量%、反応温度は80〜120℃、反応時間は15〜100分、パルプ濃度は8〜15%であり、この他の条件は公知のものが適用できる。本発明では、アルカリ酸素漂白工程において、上記アルカリ酸素漂白を連続して複数回行い、できる限り脱リグニンを進めるのが好ましい実施形態である。
アルカリ酸素漂白が施されたパルプは次いで洗浄工程へ送られ、洗浄後、多段漂白工程へ送られ、多段漂白処理することもできる。
本発明の多段漂白処理は、特に限定されるものではないが、二酸化塩素(D)、アルカリ(E)、酸素(O)、過酸化水素(P)、オゾン(Z)、過酸等の公知の漂白剤と漂白助剤を組み合わせるのが好適である。例えば、多段漂白処理の初段は二酸化塩素漂白段(D)やオゾン漂白段(Z)を用い、二段目にはアルカリ抽出段(E)や過酸化水素段(P)、三段目以降には、二酸化塩素や過酸化水素を用いた漂白シーケンスが好適に用いられる。三段目以降の段数も特に限定されるわけではないが、エネルギー効率、生産性等を考慮すると、合計で三段あるいは四段で終了するのが好適である。また、多段漂白処理中にエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)等によるキレート剤処理段を挿入してもよい。
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、もちろん本発明はこれによって何等制限されるものではない。また、特に示さない限り、パルプカッパー価の評価および蒸解収率、未蒸解カス率の測定は以下の方法で行った。なお、実施例及び比較例における薬品の添加率は乾燥チップ質量当たりの質量%示す。
1.カッパー価の測定
JIS P 8211に準じて行った。
2.蒸解収率の測定
蒸解収率の測定は、下記の式より算出した。
蒸解収率(%)=蒸解後の絶乾パルプ(g) / 投入した絶乾チップ(g)×100
3.未蒸解カス率の測定
未蒸解カス率の測定は、下記の式より算出した。
未蒸解カス率(%)= 未蒸解カス(g) / 投入した絶乾チップ(g)×100
参考例1
ラジアータパインチップ絶乾500gに対し、有効アルカリとして18%、硫化度28%、液比2.5に相当する蒸解薬液1.25リットルとして、実験用循環式オートクレーブを用いて、蒸解をスタートさせた。浸透ゾーンの条件として、温度は125℃、チップの滞留時間は40分であり、浸透ゾーン終了後、140℃で、有効アルカリとして2%、硫化度35%に相当する蒸解薬液0.25リットルを添加した。蒸解ゾーン条件として温度は165℃、液比3、滞留時間150分でクラフト蒸解を行ない、パルプを得た。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
実施例1
参考例1において、浸透ゾーン終了後に添加する蒸解薬液として、有効アルカリとして2%、硫化度70%に相当する緑液0.25リットルを添加した以外は参考例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
参考例2
参考例1において、有効アルカリとして19%、硫化度28%、液比2に相当する蒸解薬液1リットルを実験用循環式オートクレーブに添加し、蒸解をスタートさせ、浸透ゾーン終了後に添加する蒸解薬液として、有効アルカリとして1%、硫化度70%に相当する蒸解黒液を0.5リットル添加した以外は参考例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
参考例3
参考例1において、スタート時に添加する蒸解薬液の量を1.5リットル、液比3とした以外は参考例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
参考例4
参考例1において、浸透ゾーンの温度を98℃とした以外は参考例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
参考例5
参考例1において、蒸解ゾーンで165℃での蒸解がスタートして5分後に蒸解薬液を添加した以外は参考例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
比較例1
参考例1において、スタート時に添加する蒸解薬液として、有効アルカリ20%、硫化度28%、液比3に相当する蒸解薬液1.5リットルを添加し、蒸解薬液の途中添加をせずに蒸解をした以外は参考例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
比較例2
参考例1において、スタート時に添加する蒸解薬液として、有効アルカリ22%、硫化度28%、液比3に相当する蒸解薬液1.5リットルを添加し、蒸解薬液の途中添加をせずに蒸解をした以外は参考例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
比較例3
参考例1において、浸透ゾーン終了後に添加する蒸解薬液として、有効アルカリとして2%、硫化度28%に相当する蒸解薬液0.25リットルを添加した以外は参考例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
比較例4
参考例1において、浸透ゾーン終了後に添加する蒸解薬液として、有効アルカリとして2%、硫化度30%に相当する蒸解薬液0.25リットルを添加した以外は参考例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
比較例5
実施例1において、有効アルカリとして2%、硫化度70%に相当する緑液0.25リットルを蒸解スタート時に添加した以外は実施例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
比較例6
参考例1において、浸透ゾーンの温度を150℃とした以外は参考例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
比較例7
参考例1において、浸透ゾーンの温度を80℃とした以外は参考例1と同様の操作を行なった。得られたパルプのカッパー価、蒸解収率および未蒸解カス率を表1に示した。
Figure 0005119471


表1の実施例1と比較例1を比較することから明らかなように、浸透ゾーン終了後に硫化度の高い蒸解薬液を添加することで、同一有効アルカリ添加率条件において、蒸解収率を維持しながらパルプカッパー価を大幅に低下することができることがわかる。次に、実施例1と2を比較すると、浸透ゾーン終了後に添加する蒸解薬液としてより硫化度の高い緑液を用いることでより高い効果が得られることがわかり、実施例2と比較例2との比較により、緑液の途中添加により同一カッパー価のパルプを得るために必要な有効アルカリとして2%に相当するアルカリを削減でき、蒸解収率も1.7%向上していることがわかる。また、実施例3から黒液を用いることでも本発明の効果が得られることがわかる。さらに、実施例4からは、浸透ゾーンの液比が3でも本発明の効果が得られるが、液比が2.5と低い実施例1においてより大きな効果が得られていることがわかる。
一方、比較例3、4から、浸透ゾーン終了後に同等の硫化度の白液を添加するとむしろパルプカッパー価が増加すること、比較例5から、蒸解スタート時に緑液を添加すると緑液の効果が十分に得られないことがわかる。また、実施例1、5と比較例6、7を比較すると、浸透ゾーンの温度には最適な範囲が有り、温度が低すぎると蒸解が進行し難くなり、高すぎると蒸解薬液が浸透する前に蒸解反応がスタートし、未蒸解カスが多くなりすぎることがわかる。実施例1、6から、蒸解温度に到達する前から蒸解温度に到達する前に蒸解薬を添加するとより大きな効果が得られる。
このように本発明は、設備改造することなく低カッパー価のパルプを高収率で得ることができ、連続蒸解装置を用いたリグノセルロース物質の蒸解方法に好適である。
連続蒸解釜
符号の説明
A:浸透ゾーン
B1:上部蒸解ゾーン
B2:下部蒸解ゾーン
C:洗浄ゾーン
1,2:白液導入管
3:木釜頂部
4:木釜下部
5〜7:ストレーナー
8〜11:ポンプ
12〜14:ヒーター

Claims (4)

  1. リグノセルロース物質を浸透ゾーン、蒸解ゾーンを順に有する連続蒸解装置で蒸解する際に、蒸解薬液を浸透ゾーンおよび蒸解ゾーンに添加する蒸解方法であって、該浸透ゾーンの温度が90〜140℃であり、硫化度が50〜90%の緑液を該蒸解ゾーンに用いることを特徴とするリグノセルロース物質の蒸解方法。
  2. 前記蒸解ゾーン温度が140℃〜170℃であり、かつ浸透ゾーンと蒸解ゾーンの温度差が20℃以上であることを特徴とする請求項1記載のリグノセルロース物質の蒸解方法。
  3. 前記蒸解ゾーンに添加する蒸解薬液を蒸解ゾーンでの最高温度に達する前に添加することを特徴とする請求項1又は2に記載のリグノセルロース物質の蒸解方法。
  4. 前記浸透ゾーンが液比2.0〜2.8の低液比で行なわれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグノセルロース物質の蒸解方法。
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