本発明によると、下記化学式1:
で示されるアゾ化合物が提供される。本発明のアゾ化合物は、環状の飽和炭化水素基を有するアルキレン基(化学式1中の、−(CH2)m−X−(CH2)n−)1分子に2つのピリドンアゾ骨格がスルホンアミド結合(化学式1中の、−NH−SO2−)を介して連結されたダイマー型のアゾ化合物であることを特徴とする。このような特定の構造を有するダイマー型とすることにより、アゾ化合物は、優れた耐熱性(例えば、アゾ化合物を230℃以上で保持した場合のアゾ化合物の重量減少率が低減される)を発揮する。また、本発明のアゾ化合物は、溶剤、特にシクロヘキサノン(CHN)やN−メチルピロリドン(NMP)などの溶剤に対して優れた溶解性(本明細書中では、単に「溶剤溶解性」とも称する)を有する。したがって、本発明のアゾ化合物は、インクジェット用インクなどの用途に好適に使用されうる。
以下、本発明の好ましい形態を説明する。本発明のアゾ化合物は、下記化学式1で示される。
前記化学式1中、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素数1〜16の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はへテロ原子を含む置換基を表す。
ここで、炭素数1〜16の直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルキル基は、特に制限されない。このようなアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基などが挙げられる。これらのうち、耐熱性、溶剤溶解性など、特に溶剤溶解性を考慮すると、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が好ましく、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基がより好ましい。
へテロ原子を含む置換基は、ピリドン環合成に使用できるヘテロ原子(例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子)を有するアミンに由来するものなら特に制限されない。主なものとして、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシアルキル基、アルコキシアルキル基、アリールオキシアルキル基、アミノアルキル基、メルカプトアルキル基、アルキルチオアルキル基等の、ヘテロ原子として酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を含む置換基が例示できる。本発明のアゾ化合物において、これらの酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を含む置換基は、いずれも、耐熱性や色調等に悪影響を与えずに、溶剤溶解性をより向上するのに寄与しうる。ヘテロ原子を含む置換基に含まれる炭素原子の数は、特に制限はないが、溶剤溶解性、耐熱性など、特に溶剤溶解性などを考慮すると、0〜16が好ましく、1〜12がより好ましく、2〜10がさらに好ましい。
へテロ原子を含む置換基として、具体的には、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシ−1−メチル−エチル基、ヒドロキシエトキシエチル基、2−メトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−ブトキシプロピル基、3−イソプロポキシプロピル基、2−メトキシ−1−メチル−エチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−フェノキシエチル基、2−(4−メトキシフェノキシ)エチル基、3−N−モルホリノプロピル基、2−N−モルホリノエチル基、3−N−ピロリジノニルプロピル基、2−ジメチルアミノエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基、3−ジエチルアミノプロピル基、2−N−ピロリジニルエチル基、2−(N−メチル−2−ピロリジニル)エチル基、2−N−ピペリジニルエチル基、3−(2−メチル−N−ピペリジニル)プロピル基、メルカプトエチル基、2−(エチルチオ)エチル基、などが好ましい。
また、前記化学式1中、R3及びR4は、それぞれ独立して、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖、若しくは環状のアルキル基、又は炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基を表す。
ここで、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基は、特に制限されない。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。このうち、耐熱性、溶剤溶解性など、特に溶剤溶解性を考慮すると、炭素数1〜6の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基がより好ましい。
炭素数1〜8のハロゲン化アルキル基は、炭素数1〜8の直鎖、分岐鎖、又は環状のアルキル基の一部がハロゲン化されたものである。このようなハロゲン化アルキル基は、特に制限されないが、具体的には、クロロメチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基、クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ブロモエチル基、クロロプロピル基、ブロモプロピル基が挙げられる。このうち、耐熱性、溶剤溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、クロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基が好ましい。
また、前記化学式1中、R5及びR6は、それぞれ独立して、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、又はハロゲン原子を表す。ここで、複数のR5及びR6は、それぞれ、同一であっても又は異なるものであってもよい。
ここで、炭素数1〜8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基は、特に制限されない。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。このうち、耐熱性、溶剤溶解性など、特に溶剤溶解性を考慮すると、炭素数1〜4の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基がより好ましい。
ハロゲン原子としては、特に制限されないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。このうち、耐熱性、溶剤溶解性など、特に溶剤溶解性を考慮するとフッ素原子が好ましい。
また、上記化学式1中、p及びqは、それぞれ、ベンゼン環へのR5及びR6の結合数を表し、0〜4の整数である。なお、p又はqが0〜3の場合、R5又はR6及びスルホニル基(−SO2−)が結合していないベンゼン環上の炭素原子には、水素原子が結合している。このうち、耐熱性、溶剤溶解性など、特に溶剤溶解性を考慮すると、p及びqは、好ましくは0〜2である。なお、p及びqは、同一であっても異なるものであってもよい。
また、前記化学式1中、Xは、置換された又は非置換の炭素数5〜12のシクロアルキレン基を表す。この際、前記置換基は、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、ハロゲン原子、及びヘテロ原子を含む置換基からなる群より選択される。
ここで、炭素数5〜12のシクロアルキレン基は、特に制限されない。具体的には、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、などが挙げられる。このうち、耐熱性、溶剤溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、などが好ましく、シクロへキシレン基がより好ましい。
化学式1中、Xには、−(CH2)m−及び(CH2)n−が結合するが、その結合位置も特に制限されない。−(CH2)m−の結合位置を1位とした場合の−(CH2)m−及び(CH2)n−の結合位置は、例えば、Xがシクロペンチレン基である場合は1,2位、1,3位;Xがシクロヘキシレン基である場合は1,2位、1,3位、1,4位;Xがシクロヘプチレン基である場合は1,2位、1,3位、1,4位;Xがシクロオクチレン基である場合は1,2位、1,3位、1,4位、1,5位;のいずれであってもよい。
なお、上記化学式1中の−(CH2)m−X−(CH2)n−において、Xに結合する−(CH2)m−及び(CH2)n−の立体配置は、特に制限されず、シス体若しくはトランス体、又はそれらの混合体のいずれであってもよいが、シス体及びトランス体の混合体とすることにより、より一層、耐熱性、溶剤溶解性に優れたアゾ化合物(シス体・トランス体の幾何異性体を含む組成物)とすることができる。
上記炭素数5〜12のシクロアルキレン基に場合によって存在する炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基は、特に制限されない。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。このうち、耐熱性、溶剤溶解性など、特に溶剤溶解性を考慮すると、炭素数1〜6の直鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基がより好ましい。
上記炭素数5〜12のシクロアルキレン基に場合によって存在するハロゲン原子としては、特に制限はないが、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。このうち、耐熱性、溶剤溶解性など、特に耐熱性を考慮すると、フッ素原子が好ましい。
上記炭素数5〜12のシクロアルキレン基に場合によって存在するヘテロ原子を含む置換基としては、主なものとして、アシル基、アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、オキシアルキルエーテル基、シアノ基等のヘテロ原子として酸素原子、窒素原子、硫黄原子等を含む置換基が例示できるが、これらに限定されるものではない。ヘテロ原子を含む置換基に含まれる炭素原子の数は、特に制限はないが、溶剤溶解性、耐熱性など、特に溶剤溶解性などを考慮すると、0〜16が好ましく、1〜12がより好ましく、2〜10がさらに好ましい。上記置換基よりその一部をより具体的な例を挙げて以下に示す。
アシル基としては、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、ヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、p−t−ブチルベンゾイル基等が挙げられる。このうち、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ベンゾイル基、p−t−ブチルベンゾイル基が好ましい。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などの炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基が挙げられる。このうち、耐熱性、溶剤溶解性など、特に溶剤溶解性を考慮すると、炭素数1〜6の直鎖のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基がより好ましい。
アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基等が挙げられる。このうち、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、sec−ブチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基が好ましい。
アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、メトキシヘプチル基、エトキシエチル基、エトキシペンチル基、エトキシヘキシル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基、プロポキシブチル基、プロポキシペンチル基、ブトキシエチル基、ブトキシプロピル基、ブトキシブチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基などが挙げられる。このうちメトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシペンチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基、ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基が好ましい。
アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基、sec−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基等が挙げられる。このうち、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基が好ましい。
以上で例示した以外にも、炭素数5〜12のシクロアルキレン基に場合によって存在するヘテロ原子を含む置換基として、3−N−モルホリノプロピル基、2−N−モルホリノエチル基、3−N−ピロリジノニルプロピル基、2−ジメチルアミノエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基、3−ジエチルアミノプロピル基、2−N−ピロリジニルエチル基、2−(N−メチル−2−ピロリジニル)エチル基、2−N−ピペリジニルエチル基、3−(2−メチル−N−ピペリジニル)プロピル基、3−イソプロポキシプロピル基などが使用されうる。このうち、3−N−モルホリノプロピル基、2−N−モルホリノエチル基、3−N−ピロリジノニルプロピル基、2−(N−メチル−2−ピロリジニル)エチル基、2−N−ピペリジニルエチル基、3−(2−メチル−N−ピペリジニル)プロピル基が好ましい。
なお、上記置換基は、シクロアルキレン基に複数置換可能であり、これらの置換基の種類も、複数個置換する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよい。
また、前記化学式1中、m及びnは、それぞれ独立して0〜3の整数である。このうち、耐熱性、溶剤溶解性など、特に溶剤溶解性を考慮すると、m及びnは、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0〜1であり、さらに好ましくは、m=0,n=1、又はm=1,n=1の組み合わせである。
本発明のアゾ化合物は、優れた耐熱性、溶剤溶解性を発揮するために、上述の化学式1を有することが必須であるが、化学式1中の−(CH2)m−X−(CH2)n−が特定の構造、すなわち、化学式1中、Xは、置換基された又は非置換のシクロへキシレン基を表し、この際、前記置換基は、炭素数1〜8の直鎖又は分岐鎖のアルキル基からなる群より選択され;m及びnは、0〜2の整数であることが好ましい。
さらに、−(CH2)m−X−(CH2)n−が、下記化学式2:
からなる群より選択される基であることがより好ましく、−(CH2)m−X−(CH2)n−が、下記化学式3:
からなる群より選択される基であることがさらに好ましい。本発明のアゾ化合物は、−(CH2)m−X−(CH2)n−が上記構造を有することにより、より一層顕著な耐熱性、溶剤溶解性を発揮することができる。
上記化学式1において、ベンゼン環に置換するアミノスルホニル基(−SO2−NH−)の結合位置は、アゾ基の結合位置を1位とした場合、2位、3位、又は4位のいずれであってもよいが、2位又は4位が好ましく、4位がより好ましい。
本発明のアゾ化合物(ダイマー型のピリドン化合物)の製造方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法を適宜利用することができる。以下、本発明のアゾ化合物の好ましい製造方法を説明する。しかしながら、本発明は、下記の形態に制限されるものではない。
本発明のアゾ化合物(ダイマー型のピリドン化合物)の製造方法の一形態(第一の製造方法)は、下記化学式4:
上記化学式4中、R5、R6、p、及びqは上記化学式1の定義と同様である;のスルファニル酸(本明細書中では単に「スルファニル酸」とも称する)をニトロソ化剤存在下でジアゾ化し、得られたジアゾ化合物を下記化学式5:
上記化学式5中、R1、R2、R3、及びR4は上記化学式1の定義と同様である;の3−シアノ−6−ヒドロキシピリジン−2(1H)−オン化合物(本明細書中では、単に「ピリドン」とも称する)とカップリングする。その後、得られたアゾ化合物中間体を、塩素化剤を用いてスルホン酸(−SO3H)からスルホニルクロライド(−SO2Cl)へと変換し、下記化学式6:
上記化学式6中、X,m、及びnは上記化学式1の定義と同様である;のジアミンと反応(スルホンアミド化反応)させることにより行われる。
上記方法において、ジアゾ化反応は、特に制限されず、無溶媒下であるいは溶媒中で行われてもよいが、好ましくは溶媒中で行われる。この際、使用できる溶媒としては、酸性溶媒が好ましく使用され、より具体的には、酢酸、プロピオン酸、塩酸、硫酸、濃硫酸などが挙げられる。上記溶媒は、単独で使用されても若しくは2種以上の混合物の形態で使用されてもよく、又は水、メタノールなどの他の溶媒との混合物の形態で使用されてもよい。溶媒を使用する際の溶媒の使用量は、特に制限されないが、スルファニル酸の濃度が、好ましくは1〜40重量%となるような量である。また、上記化学式4のスルファニル酸(好ましくは溶液形態)は、−10〜10℃程度にまで冷却されることが好ましい。これにより、後の反応で生成するジアゾニウムが安定でありうる。
上記ジアゾ化反応はニトロソ化剤の存在下で行われる。ここで、ニトロソ化剤としては、特に制限されず、公知のニトロソ化剤が使用できる。具体的には、ニトロシル硫酸、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸メチルなどが挙げられる。ニトロソ化剤を使用する際のニトロソ化剤の使用量は、特に制限されないが、スルファニル酸1モルに対して、1〜2モルであることが好ましい。また、上記ニトロソ化剤は、そのままの形態で添加されてもよいが、水又はメタノール等で希釈して使用されてもよい。
上記ジアゾ化反応条件は、上記化学式4のスルファニル酸のジアゾ化反応が進行して所望のジアゾ化合物を得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、好ましくは−15〜15℃、より好ましくは−10〜10℃である。また、反応時間は、好ましくは0.1〜10時間、より好ましくは0.5〜3時間である。なお、ここでスルファミン酸を添加することにより余剰ニトロソ化剤を分解してもよい。
次に、このようにして得られたジアゾニウム化合物を、上記化学式5のピリドンとカップリング反応させる。ここで、上記カップリング反応は、特に制限されず、無溶媒下であるいは溶媒中で行われてもよいが、好ましくは溶媒中で行われる。また、ピリドンは、ジアゾ化合物に添加する際に、そのままの形態で添加されてもよいし、溶液の形態で添加されてもよい。溶液の形態で添加される場合に使用される溶媒は、ピリドンを溶解又は分散できるものであれば特に制限されない。例えば、水、メタノールなどが使用される。上記溶媒は、単独で使用されても又は2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。溶媒を使用する際の溶媒の使用量は、特に制限されないが、ピリドンの濃度が、好ましくは3〜30重量%となるような量である。また、ピリドンの溶解性、カップリング反応の反応性などを考慮すると、ピリドン溶液は、さらに塩基を含むことが好ましい。この際、塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。塩基の添加量は、特に制限されないが、好ましくはピリドン溶液がpH8〜10になるような量である。
上記カップリング反応において、ジアゾ化合物及びピリドンの添加順序は、特に制限されず、ジアゾ化合物及びピリドンを同時に添加する方法;ジアゾ化合物をピリドンに添加する方法;ピリドンをジアゾ化合物に添加する方法のいずれであってもよい。好ましくは、ピリドンをジアゾ化合物に添加する。これにより、発熱が抑えられ反応がきれいに進行しやすい。また、ピリドンは、−10〜10℃程度にまで冷却することが好ましい。これにより、ジアゾニウムが安定でありうる。
上記カップリング反応条件は、ジアゾ化合物とピリドンとの反応が進行して所望のアゾ化合物を得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、好ましくは−15〜15℃、より好ましくは−10〜10℃である。また、反応時間は、好ましくは0.1〜30分間、より好ましくは0.5〜20分である。なお、上記反応時間中、ピリドンをジアゾ化合物に添加(特に、滴下)することが特に好ましい。
また、上記カップリング反応終了後は、反応液のpHを5〜8に調節することにより、所望のアゾ化合物中間体を沈殿させることができる。このため、必要に応じて、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどを添加して、pHを調節してもよい。当該沈殿物は、従来公知の方法に従って、塩析、晶析、濾過、洗浄、乾燥を行なってもよい。このような操作により、アゾ化合物中間体を効率よく、しかも高純度で得ることができる。
その後、得られたアゾ化合物中間体のスルホン酸(−SO3H)を塩素化剤を用いてスルホニルクロライド(−SO2Cl)へと変換(塩素化)する。当該塩素化反応は、好ましくは溶媒存在下で行われる。この際に使用される溶媒としては、アゾ化合物中間体及び塩素化剤を十分に溶解又は分散できるものであれば特に制限はない。溶媒としては、具体的に、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、アセトン、エチルメチルケトン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−ジクロロベンゼン、アニリンなどが挙げられる。使用される溶媒の量も、特に制限はないが、アゾ化合物中間体の濃度が、好ましくは1〜30重量%となるような量である。
塩素化反応に用いる塩素化剤は、特に制限はなく、従来公知の塩素化剤を適宜選択することができる。具体的には、塩素化剤としては、塩化チオニル、クロロスルホン酸、塩化スルフリル、三塩化リン、五塩化リン、オキシ塩化リンなどが挙げられ、塩化チオニルが特に好ましい。塩素化剤の使用量も特に制限はないが、アゾ化合物中間体1モルに対して、1〜2モルである。
上記塩素化反応において、アゾ化合物中間体及び塩素化剤の添加順序は、特に制限されないが、好ましくはアゾ化合物中間体に塩素化剤を添加(特に、滴下)する。このような添加順序とすることによって、反応がきれいに進行しやすい。塩素化反応条件は、所望のスルホニルクロライドを得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、好ましくは20〜100℃、より好ましくは30〜70℃である。また、反応時間は、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは1〜3時間である。反応終了後、反応液を水に注ぎ、スルホニルクロライドを析出させ、析出物を濾別する。その後、必要に応じて析出物を乾燥(特に、減圧乾燥)させることによって、所望のスルホニルクロライドを得ることができる。
その後、得られたスルホニルクロライドをジアミンと反応させてスルホンアミド化することによって、ダイマー型のアゾ化合物を合成する。当該スルホンアミド化反応は、好ましくは溶媒存在下で行われる。この際に使用される溶媒としては、スルホニルクロライド及びジアミンを十分に溶解又は分散できるものであれば特に制限はない。溶媒としては、具体的に、メタノール、ジオキサン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジクロロエタン、クロロホルム、エタノール、アセトン、エチルメチルケトン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、o−ジクロロベンゼン、アニリンなどが挙げられる。使用される溶媒の量も、特に制限はないが、スルホニルクロライドの濃度が、好ましくは1〜30重量%となるような量である。
スルホンアミド化反応に用いるジアミンの使用量は、所望のダイマー型のアゾ化合物が得られる量であれば特に制限はないが、スルホニルクロライド1モルに対して、好ましくは0.5〜0.7モル、より好ましくは0.5〜0.6モルである。このような量であれば、収率よくダイマー型のアゾ化合物を得ることができる。
また、スルホンアミド化反応は、副生するHClをトラップするために、塩基存在下で行われることが好ましい。この際に使用される塩基は、特に制限はないが、具体的には、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリエタノールアミン、ピリジンなどが挙げられ、特にトリエチルアミンが好ましい。塩基の使用量も特に制限はないが、スルホニルクロライド1モルに対して、1〜2モルであることが好ましい。
スルホンアミド化反応において、スルホニルクロライド及びジアミンの添加順序は、特に制限されない。例えば、スルホニルクロライド及びジアミンを同時に添加する方法;スルホニルクロライドをジアミンに添加する方法;ジアミンをスルホニルクロライドに添加する方法のいずれであってもよい。好ましくは、スルホニルクロライドにジアミンを添加(特に、滴下)する。このような添加順序とすることによって、目的物を良好な収率で得ることができる。
スルホンアミド化反応条件は、所望のスルホンアミド体を得られる条件であれば特に制限されない。具体的には、反応温度は、好ましくは10〜40℃、より好ましくは15〜30℃である。また、反応時間は、好ましくは0.1〜2時間、より好ましくは0.5〜1時間である。反応終了後、反応溶液に塩酸水溶液を注ぎ、黄色い析出物を析出させ、析出物を濾別する。その後、必要に応じて析出物を乾燥(特に、減圧乾燥)させることによって、本発明のアゾ化合物(ダイマー型のアゾ化合物)を得ることができる。
また、本発明のアゾ化合物(ダイマー型のピリドン化合物)の他の製造方法(第二の製造法)は、下記化学式7:
上記化学式7中、R5、R6、p、及びqは上記化学式1の定義と同様である;のp−アセチルアミノベンゼンスルホニルクロライドを下記化学式6:
上記化学式6中、X,m、及びnは上記化学式1の定義と同様である;のジアミンと反応(スルホンアミド化反応)させた後、アミドを加水分解してジアミンとし、その後、アミドの加水分解によって得られたアミンをニトロソ化剤を用いてジアゾ化し、下記化学式5:
上記化学式6中、R1、R2、R3、及びR4は上記化学式1の定義と同様である;のピリドンとカップリングすることによって行われる。
上記の他の製造方法において、アミドの加水分解は、従来公知の手法を用いて行われる。加水分解には、塩酸、硫酸、硝酸などの酸、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、などの塩基が用いられうる。反応条件も特に制限はないが、反応温度は好ましくは60〜100℃であり、反応時間は、好ましくは1〜5時間である。
なお、上記他の製造方法におけるスルホンアミド化反応、ジアゾ化反応、カップリング反応で用いられる試薬や反応条件などは、上述の第一の製造方法と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
上記したような本発明のアゾ化合物は、420〜440nmの最大吸収波長を有し、黄色系色素(黄色系色素化合物)として使用できる。なお、上述のアゾ化合物の吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)は、紫外可視分光光度計を用いてクロロホルム中にて測定された値を意味する。また、本発明のアゾ化合物は、耐熱性に優れる。例えば、アゾ化合物を230℃で1時間保持した場合のアゾ化合物の重量減少率は低いほど好ましく、好ましくは4重量%以下であり、より好ましくは3重量%以下であり、さらに好ましくは、2重量%以下である。また、本発明のアゾ化合物は、溶剤、特にシクロヘキサノン(CHN)又はN−メチルピロリドン(NMP)、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等との溶解性(相溶性)に優れ、より好ましくはシクロヘキサノン、N−メチルピロリドンとの溶解性(相溶性)に優れる。本発明のアゾ化合物の溶剤溶解性は、特に限定されず、高いほど好ましい。例えば、本発明のアゾ化合物を溶解するのに必要なCHNの量に対するアゾ化合物の濃度は、1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であることがより好ましく、10重量%以上であることがさらに好ましい。また、本発明のアゾ化合物を溶解するのに必要なNMPの量に対するアゾ化合物の濃度は、7重量%以上であることが好ましく、9重量%以上であることがより好ましく、12重量%以上であることがさらに好ましい。このように、本発明のアゾ化合物は、耐熱性、溶剤溶解性に優れるため、種々の用途、特にインクジェット用インクに好適に使用されうる。
以下、本発明のアゾ化合物の用途として、インクジェット用インクを例に挙げて説明する。すなわち、本発明の他の形態は、本発明のアゾ化合物を含むインクジェット用インクである。
本発明のインクジェット用インクは、本発明のアゾ化合物を色素として含む以外は、特開2010−195904号公報、特開2009−132812号公報及び特開平11−106693号公報など、従来と同様のインクジェット用インクでありうる。
本発明のインクジェット用インクの組成は、本発明のアゾ化合物を色素として含む以外は公知の組成と同様でありうる。例えば、本発明のインクジェット用インクは、色素、樹脂及び溶剤を含む。
本発明のインクジェット用インクは、本発明のアゾ化合物を色素として含有することが必須である。ここで、本発明のアゾ化合物の配合量は特に制限されないが、インクの総重量に対して、1〜40重量%が好ましく、3〜30重量%がより好ましい。このような範囲であれば、充分な濃度の印字面が得られ、また、インキ中での安定した溶解状態が得られうる。なお、本発明のアゾ化合物は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、本発明のインクジェット用インクは、他の顔料又は染料を併用してもよい。他の顔料又は染料は、特に制限されず、公知の顔料又は染料が使用できる。なお、上記他の顔料又は染料は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明のインクジェット用インクに使用される樹脂は特に制限されず、インクジェット用インクに使用される公知の樹脂が使用できる。また、樹脂は、粘度や密着性等の特性を考慮して適宜選択できる。具体的には、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、フェノール樹脂、キシレン樹脂、マレイン酸樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。上記樹脂の重量平均分子量は特に制限されず、所望のインク粘度などを考慮して適宜選択できる。具体的には、上記樹脂の重量平均分子量は、1000〜40000が好ましい。このような範囲であれば、インクの粘度を適切な程度に調節できる。また、上記樹脂の配合量(インキの樹脂分)は、特に制限されないが、インクの総重量に対して、0.5〜20重量%が好ましく、0.6〜15重量%がより好ましい。このような範囲であれば、適度なインク粘度が得られるため、インクを、液滴吐出や方向乱れを起こすことなく、安定して吐出でき、印字面から剥がれることなく被印刷体への密着性に優れ、色素が良好に保持されうる。なお、上記樹脂は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。また、粘度及び密着性等の特性をさらに向上することを目的として、より高分子量の樹脂を併用してもよい。
本発明のインクジェット用インクに使用される溶剤は、他の成分(色素や樹脂など)を溶解できるものであれば特に制限されないが。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルアルコール、エチレングリコールモノメチルアルコール等のアルキレングリコールエーテル系溶剤;トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤などが挙げられる。これらのうち、ケトン系溶剤が好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドンがより好ましい。また、上記溶剤の配合量は、特に制限されないが、インクの総重量に対して、0.1〜20重量%が好ましい。このような範囲であれば、他の成分(色素や樹脂など)を効率よく溶解することができる。なお、上記溶剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明のインクジェット用インクは、他の添加剤を含んでもよい。ここで、他の添加剤としては、特に制限されず、インクジェット用インクに使用される添加剤が同様にして使用できる。例えば、電導度調整剤、アミン、分散剤、重合禁止剤、印刷適性や印刷物耐性を高めるために表面調整剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤などが挙げられる。
これらのうち、電導度調整剤は、特に本発明のインクをコンティニュアスタイプのインクジェットプリンタによる高速の印字に使用する場合に特に有効である。ここで、電導度調整剤としては、特に制限されず、公知の電導度調整剤が使用できる。具体的には、ヨウ化カリウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カリウム、硝酸リチウム等が挙げられる。これらの電導度調整剤は、印字面での残留により、温熱による変色を示さないため、好ましい。また、上記電導度調整剤の配合量は、特に制限されないが、インクの総重量に対して、0.1〜2重量%が好ましい。このような範囲であれば、十分な電導度が得られるため、適度な荷電偏向が得られ、また、変色を誘発しない。なお、上記電導度調整剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
分散剤は、色素の分散性及びインク組成物の保存安定性を向上させることを目的として添加されうる。ここで、分散剤としては、特に制限されず、公知の分散剤が使用できる。具体的には、水酸基含有カルボン酸エステル、長鎖ポリアミノアマイドと高分子量酸エステルの塩、高分子量ポリカルボン酸の塩、長鎖ポリアミノアマイドと極性酸エステルの塩、高分子量不飽和酸エステル、高分子共重合物、変性ポリウレタン、変性ポリアクリレート、ポリエーテルエステル型アニオン系活性剤、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ステアリルアミンアセテートなどが挙げられる。より具体的には、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、これらの塩;スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、これらの塩;スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体、これらの塩;ベンジルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、これらの塩などが挙げられる。上記分散剤の配合量は、特に制限されず、所望の分散性などを考慮して適宜設定できる。具体的には、分散剤の配合量は、インクの総重量に対して、0.01〜10重量%が好ましい。このような範囲であれば、色素などの成分が良好に分散できる。なお、上記分散剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
重合禁止剤は、インクの保存安定性や、記録装置内での安定性を高めることを目的として添加されうる。ここで、重合禁止剤としては、特に制限されず、公知の重合禁止剤が使用できる。具体的には、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ジ−t−ブチルヒドロキシトルエンなどが挙げられる。上記重合禁止剤の配合量は、特に制限されず、所望の特性などを考慮して適宜設定できる。具体的には、重合禁止剤の配合量は、インクの総重量に対して、0.01〜5重量%が好ましい。このような範囲であれば、硬化性を維持し、インクの保存安定性を高めることができる。なお、上記重合禁止剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明のインクジェット用インクは、公知の方法によって製造できる。例えば、本発明のインクジェット用インクは、樹脂を溶剤に添加、攪拌して溶解した後、色素並びに必要であれば他の添加剤を加えて、充分溶解させることによって、調製できる。なお、必要であれば、このようにして得られた混合液を、孔径3μm以下さらには、1μ以下のフィルターで濾過してもよい。
また、本発明のインクジェット用インクは、活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷に使用されるインクであってもよい。この場合には、インクジェット用インクは、色素、重合性モノマー、重合開始剤、及び必要により溶剤を含む。
ここで、色素は、上記したのと同様である。
また、上記形態のインクジェット用インクに使用される重合性モノマーは、特に制限されず、特開2009−132812号公報に記載の式(1)の活性エネルギー線重合性物質、特開2010−195904号公報に記載の1個のトリアジン環及び2個以上の重合性基を有する重合性モノマー(A)[例えば、ビス(アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等]、ベンジル(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、β−カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等の単官能モノマー、ジメチロールートリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(エトキシ(またはプロポキシ)化)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(又はテトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(又はテトラ)(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(又はテトラ)(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーなど、公知のモノマーを使用できる。上記重合性モノマーは、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
上記形態のインクジェット用インクに使用される重合開始剤は、特に制限されず、硬化速度、硬化塗膜物性、着色材料などを考慮して適宜選択することができる。具体的には、特開2009−132812号公報に記載の式(8)及び(10)〜(13)で表される化合物;ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、1,2−オクタンジオン、1−(4−(フェニルチオ)−2,2−(O−ベンゾイルオキシム))等の光ラジカル重合開始剤;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、及び1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン等の分子開裂型重合開始剤;ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチル−ジフェニルスルフィド等の水素引抜型重合開始剤などが挙げられる。上記重合開始剤の配合量は、特に制限されないが、重合性モノマーに対して、2〜25重量%であることが好ましい。このような範囲であれば、適度な硬化速度(重合性モノマーを効率よく重合)が達成でき、また、適度なインク粘度が得られるため、インクを、液滴吐出や方向乱れを起こすことなく、安定して吐出でき、印字面から剥がれることなく被印刷体への密着性に優れ、色素が良好に保持されうる。なお、上記重合開始剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。なお、上記式(8)及び(10)〜(13)で表される化合物を重合開始剤として使用する場合には、トリエタノールアミンやモノエタノールアミンなどの水素供与剤を重合性物質と併用してもよい。これにより、重合開始剤のラジカル発生効率を向上できる。
上記水素供与剤に加えて又は上記水素供与剤に代えて、増感剤を併用してもよい。増感剤としては、特に制限されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミン及び4,4'−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前記重合性モノマーと付加反応を起こさないアミンなどが挙げられる。
また、上記形態のインクジェット用インクは、溶剤を含んでもよい。溶剤は、他の成分(色素、重合性モノマー、重合開始剤など)を溶解できるものであれば特に制限されないが。具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、DIBK(ジイソブチルケトン)、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドン、DAA(ジアセトンアルコール)等のケトン系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールモノアセテート系溶剤;エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコールジアセテート系溶剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系溶剤;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル等の乳酸エステル系溶剤などが挙げられる。これらのうち、ケトン系溶剤が好ましく、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチルピロリドンがより好ましい。また、上記溶剤の配合量は、特に制限されないが、インクの総重量に対して、0.1〜20重量%が好ましい。このような範囲であれば、他の成分(色素、重合性モノマー、重合開始剤など)を効率よく溶解できる。なお、上記溶剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
また、上記形態のインクジェット用インクは、他の添加剤を含んでもよい。ここで、他の添加剤としては、特に制限されず、インクジェット用インクに使用される添加剤が同様にして使用できる。例えば、電導度調整剤、アミン、分散剤、重合禁止剤、印刷適性や印刷物耐性を高めるために表面調整剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤などが挙げられる。なお、これらの他の添加剤は上記と同様であるため、ここでは説明を省略する。
上記形態のインクジェット用インクは、公知の方法によって製造できる。例えば、色素、重合性モノマー、重合開始剤、及び必要であれば他の添加剤を、サンドミル等の通常の分散機を用いてよく分散することによって、調製できる。この際、色素の高濃度の濃縮液を予め作製した後、重合性モノマーで希釈してもよい。なお、必要であれば、このようにして得られた分散液を、孔径3μm以下さらには、1μm以下のフィルターで濾過してもよい。
本発明のインクジェット用インクの使用形態は、特に制限されず、公知のインクジェットによる印刷方法が適用できる。例えば、本発明のインクジェット用インクをインクジェット記録方式用プリンタのプリンタヘッドに供給し、このプリンタヘッドから被印刷体上に吐出した後、紫外線、電子線等の活性エネルギー線を照射する。これにより被印刷体上のインクは速やかに硬化する。なお、活性エネルギー線の光源として紫外線を照射する場合、例えば高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、紫外線レーザーやLED、及び太陽光を使用することができる。上記光源は、用いる重合開始剤の感度に合わせて適切に選択することが好ましい。本発明のインクの硬化に使用し得る紫外線強度は、硬化に有効な波長領域において、500〜5,000mW/cm2であることが好ましい。このような照射強度であれば、記録媒体にダメージを与えることなく、また色材の退色を誘発しない。
本発明のインクジェット用インクに含まれるアゾ化合物は、耐熱性に優れる。よって、当該インクジェット用インクが、被印刷体上に吐出された後に熱処理されるような用途に使用される場合であっても、アゾ化合物の分解が抑ええられるため、変色を効果的に防止することができる。また、本発明のインクジェット用インクに含まれるアゾ化合物は、溶剤溶解性にも優れるため、当該インクジェット用インク中において安定した溶解状態が維持されうる。
本発明の効果を、以下の実施例及び比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、以下の実施例において「部」及び[%]は、特に明示しない限り、それぞれ、重量部及び重量%を意味する。
[実施例1]
下記化学式8に化合物1の合成スキームを示す。
(化合物C1の合成)
スルファニル酸(化合物A)37gを、水150g及び35%塩酸32gと共に十分撹拌した後、4N亜硝酸ナトリウム水溶液25gを用いて5〜10℃で180分間ジアゾ化した。次いで、ピリドン(化合物B1)42gに水370gを加え、さらに2N水酸化ナトリウムでpH8に調整した溶液を、上記ジアゾ化溶液中に10℃以下の温度に保持しながら添加した。水酸化ナトリウムでpH5に調整してカップリング反応を完結させ、反応終了後塩化ナトリウム100gを用いて塩析させ、析出した生成物を濾別し、乾燥させてアゾ化合物中間体(化合物C1)を60g(収率78%)得た。
(化合物D1の合成)
アゾ化合物中間体(化合物C1)35gにアセトニトリル215g、ジメチルホルムアミド16gを加えてよく攪拌した後、室温(25℃)で塩化チオニル25gを10分かけて滴下した。滴下終了後40℃で2時間攪拌した。反応終了後、反応液を水500gに注ぎ析出物を濾別した。減圧乾燥を行い、スルホニルクロライド(化合物D1)を27g(収率74%)得た。
(化合物1の合成)
スルホニルクロライド(化合物D1)47gをジオキサン175gに溶かし、室温(25℃)で攪拌しながらイソホロンジアミン10g、次いでトリエチルアミン30gを、それぞれ5分及び10分かけて滴下した。室温(25℃)で1時間攪拌した後、1M塩酸水溶液300gに注いだところ黄色析出物が得られた。濾過後、析出物をアセトン100gで攪拌洗浄した後、乾燥し、化合物1を48g(収率95%)得た。
[実施例2]
下記化学式9に化合物2の合成スキームを示す。
(化合物F1の合成)
p−アセチルアミノベンゼンスルホニルクロライド(化合物E)50gをメタノール56gに溶かし、0℃で攪拌しながらイソホロンジアミン18g、次いでトリエチルアミン43gをそれぞれ5分及び20分かけて滴下した。室温(25℃)で1時間攪拌した後、35%塩酸水溶液97gを加え、3時間加熱還流を行った。反応終了後、反応液を水1500gに注ぎよく攪拌した。析出物を濾別し乾燥を行い、化合物F1を36g(収率69%)得た。
(化合物2の合成)
化合物F1 30gと亜硝酸ナトリウム17gに水600gを加えて十分撹拌した後、35%塩酸水溶液46gを用いて0〜5℃で180分間ジアゾ化した。次いで、これに、スルファミン酸12gを水121gに溶かした溶液を加えた。ピリドン(化合物B2)32gに水315gを加え、さらに2M水酸化ナトリウムでpH8に調整した溶液に、ジアゾニウム溶液を10℃以下の温度に保持して添加して攪拌した。反応終了後、析出した生成物を濾別し、乾燥させて化合物2を41g(96%)得た。
[実施例3]
下記化学式10に化合物3の合成スキームを示す。
(化合物3の合成)
化合物F1 30gと亜硝酸ナトリウム13gに水600gを加えて十分撹拌した後、35%塩酸水溶液46gを用いて0〜5℃で30分間ジアゾ化した。次いで、これに、スルファミン酸6gを水61gに溶かした溶液を加えた。ピリドン(化合物B3)45gに水446gを加え、さらに2M水酸化ナトリウムでpH8に調整した溶液に、ジアゾニウム溶液を10℃以下の温度に保持して添加して攪拌した。反応終了後、析出した生成物を濾別し、乾燥させて化合物2を55g(86%)得た。
[実施例4]
下記化学式11に化合物4の合成スキームを示す。
(化合物4の合成)
化合物F1 7gと亜硝酸ナトリウム2gに水112gを加えて十分撹拌した後、35%塩酸水溶液10gを用いて0〜5℃で60分間ジアゾ化した。次いで、これに、スルファミン酸0.6gを水4gに溶かした溶液を加えた。ピリドン(化合物B4)7gに水49gを加え、さらに2M水酸化ナトリウムでpH8に調整した溶液に、ジアゾニウム溶液を10℃以下の温度に保持して添加して攪拌した。反応終了後、析出した生成物を濾別し、乾燥させて化合物4を10g(68%)得た。
[実施例5]
下記化学式12に化合物5の合成スキームを示す。
(化合物F2の合成)
p−アセチルアミノベンゼンスルホニルクロライド(化合物E)20gをメタノール23gに溶かし、0℃で攪拌しながら1,3−ジ(アミノメチル)シクロヘキサン6g、次いでトリエチルアミン9gをそれぞれ2分及び5分かけて滴下した。室温(25℃)で1時間攪拌した後、35%塩酸水溶液22gを加え、3時間加熱還流を行った。反応終了後、反応液を水200gに注ぎよく攪拌した。析出物を濾別し乾燥を行い、化合物F2を10g(収率51%)得た。
(化合物5の合成)
化合物F2 15gと亜硝酸ナトリウム7gに水128gを加えて十分撹拌した後、35%塩酸水溶液4gを用いて0〜5℃で120分間ジアゾ化した。次いで、これに、スルファミン酸3gを水30gに溶かした溶液を加えた。ピリドン(化合物B1)12gに水55gを加え、さらに2M水酸化ナトリウムでpH8に調整した溶液に、ジアゾニウム溶液を10℃以下の温度に保持して添加して攪拌した。反応終了後、析出した生成物を濾別し、乾燥させて化合物5を18g(69%)得た。
[実施例6]
下記化学式13に化合物6の合成スキームを示す。
(化合物6の合成)
化合物F2 15gと亜硝酸ナトリウム7gに水128gを加えて十分撹拌した後、35%塩酸水溶液4gを用いて0〜5℃で120分間ジアゾ化した。次いで、これに、スルファミン酸3gを水30gに溶かした溶液を加えた。ピリドン(化合物B5)14gに水55gを加え、さらに2M水酸化ナトリウムでpH8に調整した溶液に、ジアゾニウム溶液を10℃以下の温度に保持して添加して攪拌した。反応終了後、析出した生成物を濾別し、乾燥させて化合物6を18g(61%)得た。
[実施例7]
下記化学式14に化合物7の合成スキームを示す。
(化合物7の合成)
化合物F2 15gと亜硝酸ナトリウム7gに水128gを加えて十分撹拌した後、35%塩酸水溶液4gを用いて0〜5℃で120分間ジアゾ化した。次いで、これに、スルファミン酸3gを水30gに溶かした溶液を加えた。ピリドン(化合物B3)18gに水55gを加え、さらに2M水酸化ナトリウムでpH8に調整した溶液に、ジアゾニウム溶液を10℃以下の温度に保持して添加して攪拌した。反応終了後、析出した生成物を濾別し、乾燥させて化合物7を18g(69%)得た。
[比較例1]
下記化学式15に化合物8の合成スキームを示す。
(化合物8の合成)
スルホニルクロライド(化合物D1)50gをジオキサン390gに溶かし、室温(25℃)で攪拌しながら2−エチルヘキシルアミン26g、次いでトリエチルアミン66gをそれぞれ5分及び15分かけて滴下した。室温(25℃)で1時間攪拌した後、1M塩酸水溶液500gに注いだところ黄色析出物が得られた。反応終了後、析出した生成物を濾別し、乾燥させて化合物8を61g(収率98%)得た。
[比較例2]
下記化学式16に化合物9の合成スキームを示す。
(化合物9の合成)
スルホニルクロライド(化合物D1)15gをクロロホルム168gに溶かし、室温(25℃)で攪拌しながらヘキサメチレンジアミン3g、次いでトリエチルアミン6gをそれぞれ1分及び5分かけて滴下した。室温(25℃)で1時間攪拌した後、1M塩酸水溶液200gに注いだところ黄色析出物が得られた。反応終了後、析出した生成物を濾別し、乾燥させて化合物9を15g(収率78%)得た。
<耐熱性評価(TG−DTA)>
実施例及び比較例で得た化合物1〜9それぞれ10mgを、室温(25℃)から230℃まで昇温して(昇温速度:5℃/分)1時間保持した後の重量減少率を測定し、耐熱性を評価した。値が小さいほど耐熱性が高いことを意味する。結果を下記表1A〜1Cに示す。
<溶解度>
実施例及び比較例で得た化合物1〜9それぞれ50mgをシクロヘキサノン(CHN)又はN−メチルピロリドン(NMP)に溶解する際に必要な溶剤量を測定した。そして溶剤量に対するそれぞれの化合物量の重量パーセントを算出し、各化合物の溶解性を評価した。値が大きいほど化合物の溶解性が高いことを意味する。結果を下記表1A〜1Cに示す。
表1A〜1Cの結果より、実施例1〜7の、環状の飽和炭化水素基を有するアルキレン基(化学式1中の、−(CH2)m−X−(CH2)n−)1分子に2つのピリドンアゾ骨格がスルホンアミド結合(−NH−SO2−)を介して連結されたダイマー型のアゾ化合物は、TG減少率が低く耐熱性に優れることが示された。さらに、実施例1〜7のダイマー型のアゾ化合物は、シクロヘキサノン又はN−メチルピロリドンに対する溶解性にも優れることが示された。特にジアミンとしてイソホロンジアミンを用いた実施例1〜4は、溶剤溶解性が顕著に優れていた。表の「−」は、未評価を表す。
一方、1分子中に1つのピリドンアゾ骨格のみを有する比較例1は溶剤溶解性には優れるものの、耐熱性に著しく劣ることが示された。また、2つのピリドンアゾ骨格が直鎖アルキル基で連結された比較例2は、比較例1よりも耐熱性が向上するものの依然として十分な耐熱性を有しておらず、また溶剤溶解性が著しく劣ることが示された。
以上の結果より、本発明のアゾ化合物は、耐熱性、溶剤溶解性に優れ、インクジェット用インクなどの用途に好適に使用されうることが示された。