JP2012152113A - コーティング用油脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】口溶け及び固化性が良好であり、しかも、パン・ケーキ等の表面が軟らかいベーカリー食品にコーティングした場合であっても、経時的なべたつき、或いは、ひび割れや剥離を抑えることができるベーカリー食品コーティング用油脂組成物を提供すること。
【解決手段】ランダムエステル交換油脂を油相中に45〜90質量%(油相基準)含有し、油相のSFC(固体脂含量)が10℃で44〜66%、20℃で25〜44%、30℃で5〜25%、40℃で0〜5%であることを特徴とするコーティング用油脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、口溶け及び固化性が良好であり、しかも、パン・ケーキ等の表面が軟らかいベーカリー食品にコーティングした場合であっても、経日的なべたつき、或いは、ひび割れや剥離を抑えることができるコーティング用油脂組成物に関する。
パン・ケーキ等のベーカリー食品や洋菓子或いは和菓子は、食感のバラエティ化、乾燥防止、或いは吸湿防止等の目的で、その表面をナパージュ、アイシング、シュガークリーム、或いはチョコレート等のコーティング材で被覆することが行われる。その場合、コーティング材の包装部材への付着、或いは、コーティング材が環境の水分を吸収したり逆に乾燥したりするという問題を避けるため、一般的には、コーティング材に油脂を含有させ、コーティング用油脂組成物として使用することが行われる。中でも、油脂含量の高いチョコレートはこの目的に適しているため、コーティングチョコレートとして製菓・製パン分野で広く使用されている。
これらのコーティング用油脂組成物は、口溶けや艶、風味が良好であることはもちろんであるが、特に必要な特性として、固化性(コーティング後の搬送や包装の工程に速やかに移すために室温で短時間に固化する性質)が優れていることが挙げられる。従来、このような用途のため、ヤシ油やパーム核油等のラウリン系油脂を主体とする油脂組成物が主として使用されてきた。このラウリン系油脂を主体とする油脂組成物は、単に精製油脂を使用するだけでは十分な固化性が得られず、また経日的にべたつきやすいという問題があるため、これら油脂に水素添加、分別等の操作を施した水素添加油、或いは分別硬部油等の油脂を使用することが行われる。
しかし、このような油脂を使用して融点を単に上げただけでは、ひび割れ、或いは剥がれが生じやすいという問題があった。特に、デニッシュ・ペーストリーやスポンジケーキ或いはシューエクレアのような表面が軟らかいベーカリー食品を対象物とした場合、わずかな応力によっても対象物が変形するため、特にひび割れや剥がれが生じやすい。そのため、このような表面が軟らかいベーカリー食品にコーティングした場合であっても、柔軟性があり、ひび割れや剥離が生じにくいコーティング用油脂組成物が求められていた。このようなコーティング用油脂組成物として、例えば、以下のような提案が行われている。
例えば、特許文献1には、短鎖脂肪酸を1個又は2個含有するトリ飽和トリグリセリドを多く含有するコーティング用油脂組成物が提案され、また、特許文献2には、極度硬化したラウリン系油脂及び20℃で液状油脂を必須成分とする被覆チョコレートが提案されている。
しかし、特許文献1では、一定の硬さと粘りを有するため、コーティング当初はひび割れや剥離は生じにくいが、柔軟性が十分ではないため、対象物が軟らかい場合に経日的にひび割れや剥離が生じやすく、十分な物性を得ることができないことに加え、炭素数の合計が58以上であるトリグリセリドによる口溶けの悪化という問題があった。また特許文献2では、液状油を使用しているため経日的にべとつきやすいという問題があった。
このように、要求される物性や機能において、未だ十分なコーティング用油脂組成物が得られていないのが現状である。
特開2008−182961号公報 特開2009−17821号公報
従って、本発明の目的は、口溶け及び固化性が良好であり、しかも、パン・ケーキ等の表面が軟らかいベーカリー食品にコーティングした場合であっても、経日的なべたつき、或いは、ひび割れや剥離を抑えることができるベーカリー食品コーティング用油脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、従来使用されていたラウリン系油脂を主体とするコーティング用油脂組成物において、該ラウリン系油脂の半分近くをランダムエステル交換油脂に置換し、油相のSFC(固体脂含量)を特定の値とした場合に、上記課題を全て解決可能であり、中でも特定の2種のランダムエステル交換油脂を併用した場合には、特に良好な結果が得られることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、ランダムエステル交換油脂を、油相中に45〜90質量%(油相基準)含有し、油相のSFC(固体脂含量)が10℃で44〜66%、20℃で25〜44%、30℃で5〜25%、40℃で0〜5%であることを特徴とするコーティング用油脂組成物、好ましくは、更に下記(1)〜(5)を有するコーティング用油脂組成物を提供するものである。
(1)上記ランダムエステル交換油脂が、その全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が20〜60質量%であり、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が30〜70質量%である油脂配合物(I)をランダムエステル交換してなるエステル交換油脂(
I)を油相中に好ましくは5〜75質量%含有する。
(2)上記ランダムエステル交換油脂が、ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油を70質量%以上含有し、且つその構成脂肪酸全体における不飽和脂肪酸含量が50質量%以上である油脂配合物(II)をランダムエステル交換してなるエステル交換油脂(II)を油相中に好ましくは5〜75質量%含有する。
(3)含まれる油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が15〜45質量%である。
(4)含まれる油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の20〜70質量%が、上記ランダムエステル交換油脂由来である。
(5)含まれる油脂の全構成脂肪酸組成において実質的にトランス脂肪酸を含有しない。
本発明のコーティング用油脂組成物は、口溶け及び固化性が良好であり、しかも、パン・ケーキ等の表面が軟らかいベーカリー食品にコーティングした場合であっても、経日的なべたつき、或いは、ひび割れや剥離を防止することができる。
以下、本発明のコーティング用油脂組成物について、好ましい実施形態に基づき詳述する。
先ず、本発明のコーティング用油脂組成物に用いられるランダムエステル交換油脂について述べる。
上記ランダムエステル交換油脂は、油脂配合物をランダムエステル交換(非選択的エステル交換)して得られる油脂である。該油脂配合物に使用することのできる油脂としては、食用に使用可能な油脂であれば特に制限なく使用することができ、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明のコーティング用油脂組成物においては、上記油脂配合物をランダムエステル交換した(ランダムエステル交換油脂)を用いる。このランダムエステル交換は、常法に従って行うことができ、化学的触媒による方法でも、酵素による方法でもよい。
上記化学的触媒としては、例えば、ナトリウムメチラート等のアルカリ金属系触媒が挙げられ、また、上記酵素としては、位置選択性のない酵素、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes) 属、リゾープス(Rhizopus)属、アスペルギルス(Aspergillus) 属、ムコール(Mucor) 属、ペニシリウム(Penicillium) 属等に由来するリパーゼが挙げられる。なお、該リパーゼは、イオン交換樹脂或いはケイ藻土及びセラミック等の担体に固定化して、固定化リパーゼとして用いることもできるし、粉末の形態で用いることもできる。
本発明のコーティング用油脂組成物は、上記ランダムエステル交換油脂を油相中に、油相基準で45〜90質量%、好ましくは50〜85質量%、より好ましくは60〜80質量%含有する。エステル交換油脂の含有量が45質量%未満であると本発明の効果、特に十分なひび割れ防止効果が得られない。また、エステル交換油脂の含有量が90質量%超であると、口溶けが悪くなる。
本発明においては、上記ランダムエステル交換油脂として、その一部又は全部に、その全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が20〜60質量%であり、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が30〜70質量%である油脂配合物(I)をランダム
エステル交換してなるエステル交換油脂(I)を使用することが、本発明の効果、特に固化性を早め、べたつきを抑えることができる点で好ましい。また、上記エステル交換油脂(I)を使用すると、コーティング用油脂組成物がチョコレートであった場合、カカオ脂との相溶性を高めることができ、より多くのカカオ脂を含有させることが可能である点でも好ましい。
ここで、上記エステル交換油脂(I)について具体的に説明する。
上記エステル交換油脂(I)に用いられる上記油脂配合物(I)は、その構成脂肪酸中
に炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂、及びその構成脂肪酸中に炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂を用いて、上記構成脂肪酸組成となるように配合することにより得ることができる。
上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂において、炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量は、その構成脂肪酸中に好ましくは30〜100質量%、より好ましくは65〜100質量%である。
また、上記の炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂において、炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量は、その構成脂肪酸中に好ましくは30〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%である。
上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂としては、例えば、パーム核油、ヤシ油、ババス油、並びにこれらに対し硬化、分別及びエステル交換のうちの1種又は2種以上の操作を施した油脂を挙げることができ、これらの中の1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、好ましくは、パーム核油又はヤシ油を使用する。
上記の炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する油脂としては、例えば、パーム油、大豆油、ナタネ油、豚脂、牛脂、並びにこれらに対し硬化、分別及びエステル交換のうちの1種又は2種以上の操作を施した油脂を挙げることができ、これらの中の1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、好ましくは、パーム硬化油、大豆硬化油又はナタネ硬化油、より好ましくは、パーム極度硬化油、大豆極度硬化油又はナタネ極度硬化油を使用する。
上記油脂配合物(I)において、上記の炭素数14以下の飽和脂肪酸を含有する油脂は
、上記油脂配合物(I)の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が
好ましくは20〜60質量%、より好ましくは20〜45質量%となるように配合される。ここで、上記炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が20質量%未満であると、コーティング用油脂組成物に適した固化性及び口溶けを得ることが難しくなるおそれがある。また炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が60質量%超であると、経日的なべたつきを防止することが難しくなるおそれがあることに加え、コーティング用油脂組成物がチョコレートであった場合、カカオ脂との相溶性が極端に悪化するおそれがある。
また、上記油脂配合物(I)において、上記の炭素数16以上の飽和脂肪酸を含有する
油脂は、上記油脂配合物(I)の全構成脂肪酸組成における炭素数16以上の飽和脂肪酸
含量が好ましくは30〜70質量%、より好ましくは40〜60質量%となるように配合される。炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が30質量%未満であると、相対的に低融点の油脂が多くなるためべたつきやすくなるおそれがある。また、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が70質量%超であると、得られるチョコレートの口溶けが悪化するおそれがある。
本発明のコーティング用油脂組成物における、上記エステル交換油脂(I)の含有量は
、油相中に好ましくは5〜75質量%、より好ましくは10〜70質量%、更に好ましくは15〜55質量%である。上記エステル交換油脂(I)の含有量が5質量%未満である
と口溶けと良好な固化性をバランスよく保つことができなくなるおそれがある。また上記エステル交換油脂(I)の含有量が75質量%超であると、口溶けが悪くなるおそれがあ
る。
更に、本発明では、上記ランダムエステル交換油脂として、上記エステル交換油脂(I
)に加え、ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油を70質量%以上含有し、且つその構成脂肪酸全体における不飽和脂肪酸含量が50質量%以上である油脂配合物(II)をランダムエステル交換してなるエステル交換油脂(II)を使用することが、経日的なひび割れの防止効果が一層高く、また、滑らかな食感が得られる点で特に好ましい。
ここで、上記エステル交換油脂(II)について説明する。
上記ランダムエステル交換油脂(II)に用いられる上記油脂配合物(II)は、ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油を好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%用い、更に必要に応じてその他の油脂を配合し、上記油脂配合物(II)の構成脂肪酸における不飽和脂肪酸含量が好ましくは50質量%以上、より好ましくは50〜80質量%、さらに好ましくは52〜70質量%となるようにすることで得ることができる。ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油の含有量が70質量%未満、或いは、油脂配合物(II)の構成脂肪酸における不飽和脂肪酸含量が50質量%未満であると、ひび割れしやすくなるおそれがある。
上記パーム分別軟部油は、アセトン分別やヘキサン分別等の溶剤分別、ドライ分別等の無溶剤分別等の方法によって、パーム油を分別した際に得られる低融点部であり、通常、ヨウ素価52〜70のものである。本発明に用いられるパーム分別軟部油としては、ヨウ素価が52以上のパームオレインを使用することが、より高いひび割れ防止効果と滑らかな食感が得られる点で特に好ましく、ヨウ素価60以上のパームスーパーオレインを使用することが更に好ましい。
上記油脂配合物(II)に含まれる、上記パーム分別軟部油以外の油脂としては、食用に適する油脂であれば特に制限されないが、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明のコーティング用油脂組成物における、上記エステル交換油脂(II)の含有量は、油相中に好ましくは5〜75質量%、より好ましくは10〜70質量%、更に好ましくは15〜60質量%である。上記エステル交換油脂(II)の含有量が5質量%未満であるとひび割れしやすくなるおそれがある。また、上記エステル交換油脂(II)の含有量が75質量%超であると、口溶けが悪くなるおそれがある。
また、本発明のコーティング用油脂組成物における上記エステル交換油脂(I)及びエ
ステル交換油脂(II)を合計した含有量は、油相中に上記2種のランダムエステル交換油脂の合計量として、好ましくは45〜90質量%、より好ましくは50〜85質量%、最も好ましくは60〜80質量%である。
また、本発明で使用するランダムエステル交換油脂に占める上記2種のエステル交換油脂の割合は、上記2種のランダムエステル交換油脂の合計量として、好ましくは45〜100質量%、より好ましくは70〜100質量%、更に好ましくは90〜100%である。
すなわち、本発明のコーティング用油脂組成物では、上記2種のランダムエステル交換油脂以外のランダムエステル交換油脂を使用することもできるが、その含有量は油相中、好ましくは55質量%未満、より好ましくは30質量%未満、更に好ましくは10質量%未満とする。上記2種のランダムエステル交換油脂以外のランダムエステル交換油脂の含有量が55質量%以上であると、良好な口溶けを保ちながらひび割れを抑えることが難しくなるおそれがある。
本発明のコーティング用油脂組成物は、上記ランダムエステル交換油脂に、その他の油脂を添加し、上記油相のSFC(固体脂含量)が10℃で44〜66%、20℃で25〜44%、30℃で5〜25%、40℃で0〜5%、好ましくは10℃で45〜60%、20℃で27〜43%、30℃で7〜22%、40℃で0〜4%とする。SFCが10℃で44%未満及び/又は20℃で25%未満であると、コーティング用油脂組成物としての適切な硬さが得られない。一方、SFCが10℃で66%超、及び/又は20℃で44%超であると、保存時にひび割れしやすいものとなり、また口溶けも悪くなる。尚、SFCが30℃で5%未満であると、経日的にべたつきが生じやすく、25%超であると口溶けが悪くなる。また、SFCが40℃で5%超であると、口溶けが悪く、後味の良くないものとなる。
上記ランダムエステル交換油脂以外のその他の油脂としては、求めるコーティング用油脂組成物の硬さに応じ、適宜選択することができ、その代表例としては、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、オリーブ油、落花生油、米油、べに花油、ひまわり油等の常温で液体の油脂が挙げられるが、その他に、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、マンゴ脂、乳脂、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の常温で固体の油脂も用いることができ、更に、これらの食用油脂に水素添加、分別、位置選択的エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することもできる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明においては、上記「ランダムエステル交換油脂以外のその他の油脂」の中でも、パーム核油、ヤシ油、又は更にこれらの油脂に水素添加、分別、位置選択的エステル交換等の物理的又は化学的処理の1種又は2種以上の処理を施した油脂を使用することが好ましく、パーム核油、ヤシ油を物理的又は化学的処理せずに使用することが最も好ましい。
本発明のコーティング用油脂組成物は、含まれる油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が、好ましくは15〜45質量%、より好ましくは15〜40質量%、更に好ましくは20〜35質量%である。上記炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が15質量%未満であると、固化性が悪くなりやすく、また口溶けもシャープなものが得られなくなるおそれがある。また、上記炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が45質量%超であると経日的にひび割れをおこしやすくなるおそれがある。
また、本発明のコーティング用油脂組成物は、含まれる油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の好ましくは20〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%、最も好ましくは20〜50質量%が、上記ランダムエステル交換油脂由来であることが好ましい。上記炭素数14以下の飽和脂肪酸のうち上記ランダムエステル交換油脂由来が20質量%未満であると、軟らかいベーカリー食品にコーティングした場合に経日的にひび割れを起こしやすくなるおそれがあり、また、70質量%超であると良好な口溶けが得られなくなるおそれがある。
また、本発明のコーティング用油脂組成物は、含まれる油脂の全構成脂肪酸組成における飽和脂肪酸含量が90質量%未満であるのが好ましく、80質量%未満であるのが更に好ましい。上記飽和脂肪酸含量が90質量%以上になると、経日的にひび割れを起こしやすくなるおそれがある。
また、本発明のコーティング用油脂組成物は、油脂中の対称型トリグリセリド含量が20質量%未満であることが好ましく、15質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることが最も好ましい。本発明において、油脂中の対称型トリグリセリド含量が20質量%以上であると、ブルーミング現象が生じやすくなるおそれがある。尚、ここでいう対称型トリグリセリドとは、トリグリセリドの2位に炭素数16〜24の不飽和脂肪酸が結合し、1、3位に炭素数16〜24の飽和脂肪酸が結合したものである。上記不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミトレイン酸、エライジン酸等が挙げられ、上記飽和脂肪酸としては、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。
また、本発明のコーティング用油脂組成物は、含まれる油脂の全構成脂肪酸組成においてトランス脂肪酸を実質的に含有しないことが好ましい。ここでいう「トランス脂肪酸を実質的に含有しない」とは、トランス脂肪酸含量が、本発明のコーティング用油脂組成物に含まれる油脂の全構成脂肪酸において、好ましくは10質量%未満、更に好ましくは5質量%未満、最も好ましくは2質量%未満であることを意味する。
水素添加は油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、これによって得られる水素添加油脂は、完全水素添加油脂を除いて、通常その構成脂肪酸中にトランス脂肪酸が10〜50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス脂肪酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス脂肪酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものが要求されている。
本発明では、上記油脂配合物に使用する油脂、及び上記その他の油脂(上記ランダムエステル交換油脂以外の油脂)として、それぞれ実質的にトランス脂肪酸を含有しない油脂を使用することで、水素添加油脂を使用せずとも良好なコンステンシーを有し、トランス脂肪酸を実質的に含有しないコーティング用油脂組成物を簡単に得ることができる。
本発明のコーティング用油脂組成物における油脂分含量は、好ましくは35〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%である。油脂分含量が35質量%未満であると、コーティング時のコーティング用油脂組成物の粘度が高くなり薄く均一なコーティングが不可能となるおそれがあり、80質量%超であると、コーティング用油脂組成物が薄く均一となるが呈味成分の味が薄くコーティング用油脂組成物には適さないおそれがあることに加え、油性感が強い食感となってしまうおそれがある。尚、この油脂分含量は、直接配合する油脂以外に、油脂分を含有する食品素材や食品添加物を使用した場合には、それらに含まれる油脂分をあわせて算出するものとする。
本発明のコーティング用油脂組成物において、油相の含量は、好ましくは35〜83質量%、より好ましくは40〜72質量%である。本発明における油相は、以下の操作によりコーティング用油脂組成物から抽出される部分である。通常、油相には、上述のエステル交換油脂、その他の油脂、及び食品素材や食品添加物に含有される油脂分が含まれるほか、油溶性の任意成分(例えば、油溶性の乳化剤、酸化防止剤、着色料、着香料)を使用した場合には、これらも含まれる。
油相抽出方法:基準油脂分析法に記載のソックスレー抽出法。すなわち、試料10gを、ソックスレー抽出器で、ジエチルエーテルを用いて抽出する。
本発明のコーティング用油脂組成物には、カカオマス・ココアパウダー等のカカオ原料、脱脂粉乳・全粉乳・クリーム・牛乳・乳清ミネラル等の乳や乳製品、糖類等の一般的なチョコレートに通常使用することのできる原材料はもちろん、水、乳化剤、増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸・乳酸・グルコン酸等の酸味料、糖アルコール類、高甘味度甘味料、β−カロチン・カラメル・紅麹色素等の着色料、トコフェロール・茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白といった植物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、香辛料、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー原料等の各種食品素材や食品添加物を含有させることができる。
但し、本発明のコーティング用油脂組成物においては、水分含量が高いと固化性が著しく悪化するため、水分含量は少ないほど好ましく、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下とする。尚、この水分含量には、直接配合する水以外に、水分を含有する食品素材や食品添加物を使用した場合には、それらに含まれる水分をあわせて算出するものとする。
上記乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができ、その好ましい添加量は、本発明のコーティング用油脂組成物中、好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%である。
本発明のコーティング用油脂組成物は、上記乳化剤の中でも、結合脂肪酸の主体が飽和脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルを、油相中に油相基準で好ましくは0.01〜3質量%、より好ましくは0.1〜2質量%含有することが好ましい。ここでいう「結合脂肪酸の主体が飽和脂肪酸である」とは、その結合脂肪酸の脂肪酸組成において、飽和脂肪酸の割合が好ましくは65質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%であることを意味する。
上記飽和脂肪酸の種類は、好ましくは炭素数16以上の飽和脂肪酸、より好ましくは炭素数18以上の飽和脂肪酸、更に好ましくは炭素数20以上の飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸の炭素数の上限は、特に制限されるものではないが、通常は多くても24である。
また、結合脂肪酸の主体が飽和脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルのHLBは、好ましくは6以下であり、更に好ましくは5以下である。HLBの下限は、特に制限されるものではないが、通常小さくても0である。
また、本発明のコーティング用油脂組成物は、コーティング時の粘度を低くさせる効果が高いことから、レシチンを油脂組成物中に0.01〜2質量%、特に0.01〜1質量%含有することが好ましい。尚、上記レシチンは、リゾレシチンを含むものである。
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。上記増粘安定剤の好ましい含有量は、本発明のコーティング用油脂組成物中に、好ましくは0〜5質量%、より好ましくは0〜2質量%である。
本発明のコーティング用油脂組成物はチョコレートであることが好ましい。本発明におけるチョコレートとは、全国チョコレート業公正取引協議会で規定されたチョコレート、準チョコレートだけでなく、生チョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレート等の油脂加工食品も含まれるものである。
本発明のコーティング用油脂組成物をチョコレートとする場合は、上記カカオ原料を含有させる。本発明のコーティング用油脂組成物中のカカオ原料の含有量は、好ましくは5〜50質量%である。尚、ここでいうカカオ原料の含有量は、カカオ原料中に含まれる油分も含めた量である。また、上記エステル交換油脂や上記その他の油脂にカカオ脂を使用した場合は、該カカオ脂も含めた量である。
本発明のコーティング用油脂組成物をチョコレートとする場合は、上記甘味料も含有させることが好ましい。本発明のコーティング用油脂組成物中の甘味料の含有量は、好ましくは15〜50質量%である。
次に、本発明のコーティング用油脂組成物の好ましい製造方法について説明する。
本発明のコーティング用油脂組成物は、「ランダムエステル交換油脂を、油相中に油相基準で45〜90質量%含有し、油相のSFC(固体脂含量)が10℃44〜66%、20℃で25〜44%、30℃で5〜25%、40℃で0〜5%である」ようにする以外は、一般的なコーティング用油脂組成物と同様の製造方法によって得ることができる。
例えば、コーティング用油脂組成物がチョコレートである場合は、ランダムエステル交換油脂の含有量が最終的なコーティング用油脂組成物の油相中45〜90質量%であり、油相のSFC(固体脂含量)が10℃で44〜66%、20℃で25〜44%、30℃で5〜25%、40℃で0〜5%、好ましくは、10℃で45〜60%、20℃で27〜43%、30℃で7〜22%、40℃で0〜4%となるように、ランダムエステル交換油脂及びその他の油脂に、カカオ原料、乳や乳製品をはじめとする、各種食品原料や食品添加物を加え、混合、ロール掛け、コンチングすることにより得ることができる。
この場合、上記エステル交換油脂を含有するハードバター組成物をいったん製造してから、上記ランダムエステル交換油脂の含有量が最終的なコーティング用油脂組成物の油相中45〜90質量%であり、油相のSFC(固体脂含量)が10℃で44〜66%、20℃で25〜44%、30℃で5〜25%、40℃で0〜5%、好ましくは、10℃で45〜60%、20℃で27〜43%、30℃で7〜22%、40℃で0〜4%となるように、上記ハードバター組成物に各種食品原料や食品添加物を加え、混合、ロール掛け、コンチングすることにより本発明のコーティング用油脂組成物を得ることもできる。
上述のようにして得られた本発明のコーティング用油脂組成物は、食品のコーティング用に利用することができる。
対象となる食品としては、食パン、菓子パン、フランスパン、ロールパン、マフィン、クロワッサン、ケーキ、シュー、クッキー、ビスケット、デニッシュペーストリー等のベーカリー製品、まんじゅう、どら焼等の和菓子、洋菓子、スナック菓子等が挙げられるが、本発明のコーティング用油脂組成物は、表面が軟らかいベーカリー食品にコーティングした場合であっても、経日的なべたつき、ひび割れを抑えることのできるため、ベーカリー食品コーティング用であることが好ましく、中でも、表面の軟らかい食パン、菓子パン、シュー等の製品に使用するのが最も好ましい。
本発明のコーティング用油脂組成物のこれらの食品へのコーティング方法としては、滴下、塗布、スプレー、浸漬、どぶ漬け等の方法が挙げられる。
なお、上記食品における本発明のコーティング用油脂組成物の使用量は、食品の種類に応じて任意であり、特に制限されるものではない。
以下、本発明を実施例等により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例等により何等制限されるものではない。
<エステル交換油脂(I)の製造>
〔製造例1〕エステル交換油脂Aの製造
ヨウ素価1のパーム極度硬化油55質量部と、パーム核油45質量部を混合した油脂配合物に、ナトリウムメチラートを触媒として添加し、ランダムエステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Aを得た。エステル交換油脂Aの全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は33質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量は59質量%であった。
〔製造例2〕エステル交換油脂Bの製造
ヨウ素価1のパーム極度硬化油40質量部と、パーム核油60質量部を混合した油脂配合物に、ナトリウムメチラートを触媒として添加し、ランダムエステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、エステル交換油脂Bを得た。エステル交換油脂Bの全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は44質量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量は45質量%であった。
<エステル交換油脂(II)の製造>
〔製造例3〕エステル交換油脂Cの製造
ヨウ素価65のパーム分別軟部油にナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行った後、脱色(白土3%、85℃、9.3×102Pa以下の減圧下)、脱臭(250℃、60分間、水蒸気吹き込み量5%、4.0×102Pa以下の減圧下)を行ない、パーム分別軟部油のランダムエステル交換油脂であるエステル交換油脂Cを得た。エステル交換油脂Cの全構成脂肪酸組成における不飽和脂肪酸含量は59質量%であった。
<コーティング用油脂組成物の製造>
〔実施例1〕
エステル交換油脂A30質量部、エステル交換油脂C44質量部、ヤシ油25質量部、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンドデカベヘネート)1質量部からなる油脂混合物を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ハードバター組成物Aを作製した。
次にカカオマス(油分含量=55質量%) 3.0質量部、ココアパウダー(油分含量=11質量%)17.0質量部、砂糖30.0質量部、ハードバター組成物A50.0質量部、レシチン0.4質量部を、常法により、ロール掛けした後、コンチングして、チョコレートであるコーティング用油脂組成物Aを得た。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は29.9質量%であり、この炭素数14以下の飽和脂肪酸のうち35.8質量%が、エステル交換油脂由来であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油相のSFCは10℃で58%、20℃で38%、30℃で19%、40℃で2%であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有していなかった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂中の対称型トリグリセリド含量は9.9質量%であった。
〔実施例2〕
エステル交換油脂A32質量部、エステル交換油脂C25質量部、ヤシ油42質量部、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンドデカベヘネート)1質量部からなる油脂混合物を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ハードバター組成物Bを作製した。
次に、ハードバター組成物Aを全てハードバター組成物Bに変更した以外は実施例1と同様にして、チョコレートであるコーティング用油脂組成物Bを得た。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は43.4質量%であり、この炭素数14以下の飽和脂肪酸のうち25.6質量%が、エステル交換油脂由来であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油相のSFCは10℃で65%、20℃で43%、30℃で19%、40℃で4%であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有していなかった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂中の対称型トリグリセリド含量は8.3質量%であった。
〔実施例3〕
エステル交換油脂A25質量部、エステル交換油脂C40質量部、ヤシ油34質量部、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンドデカベヘネート)1質量部からなる油脂混合物を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ハードバター組成物Cを作製した。
次に、ハードバター組成物Aを全てハードバター組成物Cに変更した以外は実施例1と同様にして、チョコレートであるコーティング用油脂組成物Cを得た。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は35.1質量%であり、この炭素数14以下の飽和脂肪酸のうち25.6質量%が、エステル交換油脂由来であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油相のSFCは10℃で58%、20℃で37%、30℃で16%、40℃で2%であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有していなかった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂中の対称型トリグリセリド含量は9.5質量%であった。
〔実施例4〕
パーム核油35質量部、エステル交換油脂A10質量部、エステル交換油脂B40質量部、大豆油14質量部及びポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンドデカベヘネート)1質量部からなる油脂混合物を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ハードバター組成物Dを作製した。
次に、ハードバター組成物Aを全てハードバター組成物Dに変更した以外は実施例1と同様にして、チョコレートであるコーティング用油脂組成物Dを得た。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は47.2質量%であり、この炭素数14以下の飽和脂肪酸のうち42.2質量%が、エステル交換油脂由来であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油相のSFCは10℃で61%、20℃で44%、30℃で18%、40℃で3%であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有していなかった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂中の対称型トリグリセリド含量は6.6質量%であった。
〔実施例5〕
エステル交換油脂B40質量部、エステル交換油脂C30質量部、ヤシ油29質量部、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンドデカベヘネート)1質量部からなる油脂混合物を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ハードバター組成物Eを作製した。
次に、ハードバター組成物Aを全てハードバター組成物Eに変更した以外は実施例1と同様にして、チョコレートであるコーティング用油脂組成物Eを得た。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は39.3質量%であり、この炭素数14以下の飽和脂肪酸のうち43.2質量%が、エステル交換油脂由来であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油相のSFCは10℃で59%、20℃で40%、30℃で17%、40℃で2%であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有していなかった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂中の対称型トリグリセリド含量は8.6質量%であった。
〔実施例6〕
エステル交換油脂A30質量部、エステル交換油脂C44質量部、ヤシ油25質量部、及びショ糖脂肪酸エステル(ショ糖ステアリン酸エステル)1質量部からなる油脂混合物を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ハードバター組成物Fを作製した。
次に、ハードバター組成物Aを全てハードバター組成物Fに変更した以外は実施例1と同様にして、チョコレートであるコーティング用油脂組成物Fを得た。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は29.9質量%であり、この炭素数14以下の飽和脂肪酸のうち35.8質量%が、エステル交換油脂由来であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油相のSFCは10℃で58%、20℃で38%、30℃で19%、40℃で3%であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有していなかった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂中の対称型トリグリセリド含量は9.9質量%であった。
〔実施例7〕
エステル交換油脂A45質量部、エステル交換油脂C45質量部、ヤシ油9質量部、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンドデカベヘネート)1質量部からなる油脂混合物を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ハードバター組成物Gを作製した。
次に、ハードバター組成物Aを全てハードバター組成物Gに変更した以外は実施例1と同様にして、チョコレートであるコーティング用油脂組成物Gを得た。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は22.7質量%であり、この炭素数14以下の飽和脂肪酸のうち69.6質量%が、エステル交換油脂由来であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油相のSFCは10℃で57%、20℃で41%、30℃で25%、40℃で5%であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有していなかった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂中の対称型トリグリセリド含量は10.5質量%であった。
〔実施例8〕
エステル交換油脂A45質量部、エステル交換油脂C45質量部、ヤシ油9質量部、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンドデカオレエート)1質量部からなる油脂混合物を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ハードバター組成物Hを作製した。
次に、ハードバター組成物Aを全てハードバター組成物Hに変更した以外は実施例1と同様にして、チョコレートであるコーティング用油脂組成物Hを得た。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は22.7質量%であり、この炭素数14以下の飽和脂肪酸のうち69.6質量%が、エステル交換油脂由来であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油相のSFCは10℃で57%、20℃で41%、30℃で25%、40℃で5%であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有していなかった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂中の対称型トリグリセリド含量は10.5質量%であった。
〔比較例1〕
エステル交換油脂A10質量部、エステル交換油脂C20質量部、ヤシ油69質量部、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンドデカベヘネート)1質量部からなる油脂混合物を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ハードバター組成物Iを作製した。
次に、ハードバター組成物Aを全てハードバター組成物Iに変更した以外は実施例1と
同様にして、チョコレートであるコーティング用油脂組成物Iを得た。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は56.7質量%であり、この炭素数14以下の飽和脂肪酸のうち6.3質量%が、エステル交換油脂由来であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油相のSFCは10℃で65%、20℃で34%、30℃で5%、40℃で1%であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有していなかった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂中の対称型トリグリセリド含量は7.3質量%であった。
〔比較例2〕
エステル交換油脂C10質量部、ヤシ油89質量部、及びポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンドデカベヘネート)1質量部からなる油脂混合物を、70℃まで加温して完全に溶解し混合した後、−30℃/分の冷却速度で急冷可塑化し、ハードバター組成物Jを作製した。
次に、ハードバター組成物Aを全てハードバター組成物Jに変更した以外は実施例1と同様にして、チョコレートであるコーティング用油脂組成物Jを得た。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量は68.6質量%であり、この炭素数14以下の飽和脂肪酸のうち0.1質量%が、エステル交換油脂由来であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油相のSFCは10℃で60%、20℃で34%、30℃で2%、40℃で1%であった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂の全構成脂肪酸組成におけるトランス脂肪酸含量は2質量%未満であり、トランス脂肪酸を実質的に含有していなかった。
得られたコーティング用油脂組成物の油脂中の対称型トリグリセリド含量は6.1質量%であった。
上記実施例1〜8並びに比較例1及び2で得られたコーティング用油脂組成物A〜Jにおいて、ランダムエステル交換油脂含量(質量%)[油相基準]、各温度における油相のSFC、エステル交換油脂(I) の含量(質量%)[油相基準]、エステル交換油脂(I
I) の含量(質量%)[油相基準]、 全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量(質量%)、全構成脂肪酸組成における上記ランダムエステル交換油脂を由来とする炭素数14以下の飽和脂肪酸含量(質量%)、及びトランス脂肪酸含量(質量%)の値をそれぞれ表1にまとめた。
<評価>
上記実施例1〜8並びに比較例1及び2で得られたチョコレートを、いったん55℃で融解後、40℃で調温した。ここに、25℃に保存しておいたパンの表面をコーティングし、チョココーティングパンを得た。その際の固化性について、下記評価基準に従い評価し、結果を表2に記載した。
また、得られたチョココーティングパンを20℃に3日間保管した後、試食し、下記評価基準に従い口溶けを評価し、結果を表2に記載した。
更に、得られたチョココーティングパンを20℃に3日間保管し、そのチョコレート部分のひび割れの状態について、下記評価基準に従い評価し、結果を表2に記載した。また、20℃、3日保存した後、手指でさわり、以下に示す基準に従ってべとつきを評価した。
・固化性評価基準
◎:25℃下で30分未満で固化
○:25℃下で30分以上45分未満で固化
×:25℃下で45分以上で固化
・口溶け評価基準
◎:適度ななめらかさで溶解し、極めて良好であった。
○:適度ななめらかさで溶解し、良好であった。
△:適度ななめらかさで溶解しない部分があり、やや不良であった。
×:溶解せず溶け残る部分が感じられ、不良であった。
・ひび割れ評価基準
◎:ひび割れはまったくみられなかった。
○:若干のひび割れがみられた。
×:激しいひび割れがみられた。
・ べとつき評価基準
◎:べとつかない
○:ややべとつく
×:かなりべとつく
Figure 2012152113
Figure 2012152113

Claims (9)

  1. ランダムエステル交換油脂を、油相中に45〜90質量%(油相基準)含有し、且つ該油相のSFC(固体脂含量)が10℃で44〜66%、20℃で25〜44%、30℃で5〜25%、40℃で0〜5%であることを特徴とするコーティング用油脂組成物。
  2. 上記ランダムエステル交換油脂が、その全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が20〜60質量%であり、炭素数16以上の飽和脂肪酸含量が30〜70質量%である油脂配合物(I)をランダムエステル交換してなるエステル交換油脂(I)を含有することを特徴とする請求項1記載のコーティング用油脂組成物。
  3. 上記ランダムエステル交換油脂が、ヨウ素価52〜70のパーム分別軟部油を70質量%以上含有し、且つその全構成脂肪酸組成における不飽和脂肪酸含量が50質量%以上である油脂配合物(II)をランダムエステル交換してなるエステル交換油脂(II)を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のコーティング用油脂組成物。
  4. 含まれる油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸含量が15〜45質量%であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のコーティング用油脂組成物。
  5. 含まれる油脂の全構成脂肪酸組成における炭素数14以下の飽和脂肪酸の20〜70質量%が、上記ランダムエステル交換油脂由来であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のコーティング用油脂組成物。
  6. 含まれる油脂の全構成脂肪酸組成において実質的にトランス脂肪酸を含有しないことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のコーティング用油脂組成物。
  7. 結合脂肪酸の主体が飽和脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又はショ糖脂肪酸エステルを、油相中に0.01〜3質量%(油相基準)含有することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のコーティング用油脂組成物。
  8. チョコレートであることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のコーティング用油脂組成物。
  9. ベーカリー食品コーティング用であることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載のコーティング用油脂組成物。
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