JP2012150923A - 電池の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】使用される活物質やバインダの仕様に応じた最適な溶媒量を迅速かつ正確に決定して、品質のよい電極を備えた電池を効率よく製造することができる電池製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明に係る電池の製造方法は、活物質とポリマーと溶媒とを混練して固練り状混練物を得る固練り工程と、混練物を溶媒で希釈して該混練物から活物質層形成用スラリーを得る希釈工程と、活物質層形成用スラリーを集電体に塗工して該集電体上に活物質層が形成された電極を得る塗工工程とを包含する。固練り工程において、活物質とポリマーと溶媒とを混練するときの騒音値を測定し、その騒音値に基づいて該固練り工程に投入される溶媒の量を調整する。
【選択図】図2

Description

本発明は、電池の製造方法と該電池の製造方法に用いられる混練システムに関する。
近年、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池その他の二次電池は、車両搭載用電源、或いはパソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウム二次電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられるものとして期待されている。この種の二次電池の一つの典型的な構成では、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出し得る材料(電極活物質)が導電性部材(電極集電体)に保持された構成の電極を備える。例えば、正極に用いられる電極活物質(正極活物質)の代表例としては、リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(以下、「リチウム遷移金属酸化物」ともいう。)が挙げられる。また、正極に用いられる電極集電体(正極集電体)の代表例としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金を主体とするシート状または箔状の部材が挙げられる。
かかる構成を有する電極は、活物質とバインダ(結着剤)とを適当な溶媒に分散させてスラリー状の塗工組成物(活物質層形成用スラリー)を調製し、これを集電体に塗工して活物質層を形成することにより作製される。活物質層形成用スラリーに用いられるバインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリル酸(PAA)等からなるポリマーが、単独で、あるいは組み合わせて使用され得る。しかし、これらのポリマーは分子量が大きいため、分子間力等によって活物質層形成用スラリー中で凝集塊を形成している場合が多い。
バインダが凝集塊を形成すると、塗布乾燥後の活物質層の平滑性が損なわれるため、従来、このような凝集塊を解してバインダを溶媒中に均一に溶解することが試みられている。例えば特許文献1には、第1の工程として、原料を分体−液体状態がファニキュラー状態で固練りし、第2の工程として、それを希釈するという2段階の混練方法が記載されている。同公報によれば、第1の工程(固練り工程)においては、粘度が比較的高い状態にあるので、原料の粉体に強いせん断力がかかり、粉体の凝集塊が短時間で分散されて均一な状態にすることができるとされている。この種の2段階の混練方法に関する他の従来技術としては特許文献2が挙げられる。
特開2005−235675号公報 特開2004−303572号公報
上記固練りをするに際しての混練条件、中でも固練り工程に投入される適切な溶媒量は、使用される活物質やバインダの仕様(品種、配合比等)が変わればそれに応じて変化するものであるため、従来は予備検討や試行錯誤によって活物質やバインダの仕様に応じた最適な溶媒量を事前に把握しておく必要があった。しかしながら、少量多品種生産や受注生産において、毎回、予備検討や試作を行うことは大変煩わしいとともに、予備検討も含めた製造期間が増大し、コスト上昇を招く要因になっていた。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、使用される活物質やバインダの仕様に応じた最適な溶媒量を迅速かつ正確に決定して、品質のよい電極を備えた電池を効率よく製造することができる電池製造方法を提供することである。
本発明に係る電池の製造方法は、活物質とポリマーと溶媒とを混練して固練り状混練物を得る固練り工程と、上記混練物を溶媒で希釈して該混練物から活物質層形成用スラリーを得る希釈工程と、上記活物質層形成用スラリーを集電体に塗工して該集電体上に活物質層が形成された電極を得る塗工工程とを包含する。そして、上記固練り工程において、上記活物質と上記ポリマーと上記溶媒とを混練するときの騒音値を測定し、その騒音値に基づいて該固練り工程に投入される溶媒の量を調整することを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、活物質とポリマーと溶媒とを混練するときの騒音値を測定し、その騒音値に基づいて固練り工程に投入される溶媒量が調整されるので、混練しながらでも、スラリー内の凝集塊を少なくするための最適な溶媒量(すなわち活物質及びポリマーの粉体同士に高せん断力がかかる溶媒量)を迅速かつ正確に決定して混練を行うことができる。したがって、活物質及びポリマーの各粉体の凝集(ダマ)を解いて、品質のよい電池用電極ならびに該電極を備える電池を効率よく製造することができる。この場合、従来行われていた活物質やバインダの仕様ごとの予備検討が不要になるため、予備検討も含めた製造期間を短縮でき、製造コストを安価にすることができる。
ここに開示される電池製造方法の好ましい一態様では、上記固練り工程において、まず、上記活物質の粉体と上記ポリマーの粉体とを混練して粉体混練物を形成し、その後、粉体混練物に上記溶媒を所定量ずつ添加し混練する。これにより、固練り工程に投入される溶媒量を細かく微調整することができる。
ここに開示される電池製造方法の好ましい一態様では、上記固練り工程において、上記粉体混練物に上記溶媒を所定量ずつ添加し混練したときの騒音値を測定し、その騒音値が所定の閾値を超えた時点で上記溶媒の添加を停止する。これにより、スラリー内の凝集物が少なくなる最適な溶媒量を適切に把握することができる。
ここに開示される電池製造方法の好ましい一態様では、上記所定の閾値は、上記活物質の粉体と上記ポリマーの粉体とを混練して上記粉体混練物を形成したときの騒音値を基準にして設定されている。好ましくは、活物質の粉体とバインダの粉体とを混練して粉体混練物を形成したときの騒音値に対して、10dB以上大きい値に設定するとよい。これにより、スラリー内の凝集物が少なくなる最適な溶媒量を適切に把握することができる。
ここに開示される電池製造方法の好ましい一態様では、上記固練り工程において測定される騒音値は、500Hz〜4000Hzの周波数領域の音である。500Hz〜4000Hzの周波数領域の音は、溶媒を添加したときの騒音値の変化が特に大きいため、最適な溶媒量を容易に且つ正確に把握できる点で好ましい。このような500Hz〜4000Hzの周波数領域の音は、例えば積分型騒音計のA特性により簡易的に測定することができる。
また、本発明によると、ここに開示される何れかの電池製造方法を実施するために好ましく用いることができる混練システムが提供される。この混練システムは、活物質とバインダと溶媒とを混練するための混練槽を有する混練装置と、上記混練槽内の騒音値を検知する騒音センサとを備えている。また、上記混練システムは、上記騒音センサで検知した騒音値に基づいて、上記混練槽に投入される溶媒量を調整する溶媒量調整部を備えている。
ここに開示される混練システムの好ましい一態様では、上記溶媒量調整部は、上記混練槽に上記溶媒を所定量ずつ添加し、かつ、上記騒音センサで検知した騒音値が所定の閾値を超えた時点で上記溶媒の添加を停止するように構成されている。好ましくは、上記所定の閾値は、上記活物質の粉体と上記ポリマーの粉体とを混練して粉体混練物を形成したときの騒音値を基準にして設定されている。また好ましくは、上記所定の閾値は、上記活物質の粉体と上記ポリマーの粉体とを混練して粉体混練物を形成したときの騒音値よりも10dB以上大きい値に設定されている。上記騒音センサで検知される騒音値は、500Hz〜4000Hzの周波数領域の音でもよい。
本発明の混練システムは、電池用電極の製造を行うために好ましく用いることができる。即ち、本発明は、電池用電極の構成成分(例えば、活物質、ポリマー(バインダ、増粘剤等)と溶媒とを混練して活物質層形成用スラリー(ペーストともいう。)を形成する混練システムとして本発明の混練システムを使用することを特徴とする電池(電池用電極)の製造方法を提供する。本発明によると、スラリー内に凝集物が生じることを防止して、活物質層の厚みを均一に形成することができる。したがって、品質の良い電池用電極ならびに該電極を備える電池(典型的にはリチウムイオン二次電池等の二次電池)を製造することができる。上記のようにして製造された電池(例えばリチウム二次電池)は、品質の良い電極を用いて構築されていることから、優れた電池性能を示すものである。例えば、サイクル耐久性が高い、出力特性に優れる、生産安定性がよい、のうちの少なくとも一つ(好ましくは全部)を満たすものであり得る。
このような電池は、例えば自動車等の車両に搭載される電池として好適である。したがって本発明によると、ここに開示されるいずれかの電池(複数の電池が接続された組電池の形態であり得る。)を備える車両が提供される。特に、軽量で高出力が得られることから、上記電池がリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン電池)であって、該リチウム二次電池を動力源(典型的には、ハイブリッド車両または電気車両の動力源)として備える車両(例えば自動車)が好適である。
本発明の一実施形態に係る電極の製造フローを示す図である。 騒音値と溶媒量との関係を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係る混練システムを模式的に示す図である。 本発明の一実施形態に係る混練システムの制御フローを示す図である。 本発明の一実施形態に係る電池を模式的に示す図である。 中心周波数と増加量との関係を示すグラフである。 A特性騒音値と溶媒量との関係を示すグラフである。 C特性騒音値と溶媒量との関係を示すグラフである。 例1〜6の試験結果を示すグラフである。 例7〜12の試験結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態に係る電池を搭載した車両を模式的に示す側面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。なお、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、電極活物質の製造方法、セパレータや電解質の構成および製法、電池その他の電池の構築に係る一般的技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
本発明の一実施形態に係る電極ならびに該電極を備えた電池製造方法について、図1を参照しつつ説明する。図1は電極の製造工程の全体の流れを示すフロー図である。ここに開示される電極製造方法は、活物質とポリマーと溶媒とを混練して固練り状混練物を得る固練り工程(ステップS10)と、この混練物を溶媒で希釈して該混練物から活物質層形成用スラリーを得る希釈工程(ステップS20)と、活物質層形成用スラリーを集電体に塗工して該集電体上に活物質層が形成された電極を得る塗工工程(ステップS30)とを包含する。そして、固練り工程(ステップS10)において、活物質とポリマーと溶媒とを混練するときの騒音値を測定し、その騒音値に基づいて該固練り工程に投入される溶媒量を調整することを特徴とする。特に限定することを意図したものではないが、以下では主としてアルミニウム製の箔状正極集電体(Al箔)を有するリチウム二次電池(典型的にはリチウムイオン二次電池)用の正極(正極シート)を例として、各工程をより詳細に説明する。
ステップS10の固練り工程では、正極活物質とバインダ(ポリマー)と溶媒とを混練して固練り状の混練物を形成する。この実施形態では、まず、正極活物質の粉体とバインダの粉体とを粉体のみの状態で混練することで粉体混練物を形成する。次いで、粉体混練物に少量の溶媒を添加し混練することで固練り状の混練物を形成する。上記固練り工程に投入される正極活物質としては、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。ここに開示される技術の好ましい適用対象として、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムマンガン酸化物(LiMn)等の、リチウムと一種または二種以上の遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物)を主成分とする正極活物質が挙げられる。好ましくは、上記リチウム遷移金属複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびマンガンの少なくとも一種の金属元素を含有する。中でも、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含有するリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3)を主成分とする正極活物質(典型的には、実質的にリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質)への適用が好ましい。
ここで、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物とは、Li,Ni,Co及びMnを構成金属元素とする酸化物のほか、Li,Ni,Co及びMn以外に他の少なくとも一種の金属元素(すなわち、Li,Ni,Co及びMn以外の遷移金属元素および/または典型金属元素)を含む酸化物をも包含する意味である。かかる金属元素は、例えば、Al,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W,Cu,Zn,Ga,In,Sn,LaおよびCeからなる群から選択される一種または二種以上の元素であり得る。リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、及びリチウムマンガン酸化物についても同様である。
このようなリチウム遷移金属酸化物(典型的には粒子状)としては、例えば、従来公知の方法で調製されるリチウム遷移金属酸化物粉末をそのまま使用することができる。例えば、レーザー回折・散乱法に基づく平均粒径が凡そ1μm〜25μm(好ましくは1μm〜10μm、より好ましくは4μm〜6μm)の範囲にある二次粒子によって実質的に構成されたリチウム遷移金属酸化物粉末を正極活物質として好ましく用いることができる。
上記固練り工程に投入されるバインダは、上記正極活物質を結合するためのものであり、該バインダを構成する材料自体は、従来公知のリチウム二次電池用正極に用いられるものと同様の材料であり得る。例えば、後述する正極活物質層形成用スラリーが溶剤系の溶媒(バインダの分散媒が主として有機溶媒である溶液)の場合には、溶剤系の溶媒に分散または溶解するポリマーを用いることができる。溶剤系溶媒に分散または溶解するポリマーとしては、例えばポリフッ化ビニリデン系樹脂組成物が挙げられる。ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましく用いられる。さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体も好ましく用いられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよび三塩化フッ化エチレン等が例示される。あるいは、溶剤系溶媒に分散または溶解するポリマーとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、等も好ましく用いられる。また、正極活物質層形成用スラリーが水系の溶媒(バインダの分散媒として水または水を主成分とする混合溶媒を用いた溶液)の場合には、上記バインダとして、水に分散または溶解するポリマーを好ましく採用し得る。水に分散または溶解するポリマーとしては、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン(PE)、ポリアクリル酸(PAA)、等が例示される。
上記固練り工程に投入される溶媒としては、N‐メチルピロリドン(NMP)、ピロリドン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクサヘキサノン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、等の有機系溶剤またはこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。あるいは、水または水を主体とする混合溶媒であってもよい。かかる混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
上記固練り工程において、正極活物質とバインダと溶媒とを混練する操作は、例えば、適当な混練装置(プラネタリーミキサー、ホモディスパー、クレアミックス、フィルミックス等)を用いて行うことができる。特にプラネタリーミキサー(好ましくは2軸プラネタリーミキサー)を用いて混練することが好ましい。この実施形態では、まず、適当な混練装置に正極活物質の粉体とバインダの粉体とを投入し、粉体のみの状態で混練することで粉体混練物を形成する。次いで、混練装置に少量の溶媒を投入し、粉体混練物と溶媒とを混練することで固練り状の混練物を形成する。この固練り工程においては、混練物の粘度が比較的高い状態にあるので、正極活物質及びバインダの粉体同士が強いせん断力で擦り合わされる。そのため、各粉体の凝集(ダマ)を解いて均一に分散させることができる。
ここで上記固練り工程では、活物質及びバインダの粉体同士が高せん断力で擦り合わされるように、固練り工程に投入される溶媒量を適切に調整することが必要とされる。本実施形態では、正極活物質とバインダと溶媒とを混練するときの騒音値を測定し、その騒音値に基づいて固練り工程に投入される溶媒量を調整する。
図2に騒音値と溶媒量との関係を示す。図2は、正極活物質の粉体とバインダの粉体とを混練して粉体混練物を形成し、その後、粉体混練物に溶媒を所定量ずつ添加し混練したときの騒音値の変化を示すグラフである。ここでは、後述するA特性で騒音値を重み付けした一例を示してあるが、これに限定されるものではない。図2に示すように、正極活物質とバインダを粉体のみの状態で混練したとき(溶媒量X=0)の騒音値は比較的低いものの、これに溶媒を添加していくと騒音値が増大し、溶媒量X=aの時点で極大となる。この騒音値が極大付近となる状態で混練を行うと、スラリー内の凝集物が減少傾向になることが後述する試験例により確かめられた。即ち、活物質とバインダと溶媒とを混練するときの騒音値を測定し、その騒音値が図2のグラフの極大付近(溶媒量X=a)となるように溶媒量を調整することにより、スラリー内の凝集物を少なくするための最適な溶媒量を得ることができる。
上記固練り工程に投入される溶媒量を調整するに際しては、まず、活物質とバインダとを粉体のみの状態で混練して粉体混練物を形成し、その後、粉体混練物に溶媒を所定量ずつ添加し混練するとよい。そして、粉体混練物に溶媒を所定量ずつ添加し混練したときの騒音値を測定し、その騒音値が所定の閾値を超えた時点で上記溶媒の添加を停止する。この場合、固練り工程に投入される溶媒量を細かく微調整することができる。そのため、スラリー内の凝集物を少なくするための最適な溶媒量を適切に把握することができる。
上記溶媒の添加停止のトリガーとなる所定の閾値としては、図2のグラフの極大付近(溶媒量X=a)となるように溶媒量を調整し得るものであれば特に限定されない。例えば、活物質とバインダとを混練して粉体混練物を形成したときの騒音値を基準にして設定するとよい。例えば、活物質とバインダとを混練して粉体混練物を形成したときの騒音値(即ち初期の騒音値)を基準にして、それよりも所定値(図2の例では+10dB)以上大きい値に設定するとよい。そして、粉体混練物に溶媒を所定量ずつ添加し混練したときの騒音値を測定し、その騒音値が上記設定した閾値(初期の騒音値に対して+10dB)を超えた時点で溶媒の添加を停止する。これにより、図2のグラフの極大付近(溶媒量X=a)となるように固練り工程に投入される溶媒量を調整することができる。
このようにして固練り工程に投入される溶媒量を調整したら、正極活物質とバインダと溶媒とを混練して固練り状の混練物を得る。この実施形態では、適当な混練装置を用いて上記固練り工程に投入される溶媒量の調整を行った後、混練装置による混練を継続することで固練り工程が行われる。このときの混練条件は上記溶媒量を調整したときの混練条件と同じであってもよく異なっていてもよい。好ましくは、上記溶媒量を調整したときよりも混練装置の練り速度(例えばミキサー回転数)を小さくして混練するとよい。例えば、上記溶媒量の調整を練り速度50rpm〜80rpm、例えば60rpm前後で行った後、混練装置の練り速度を20rpm〜40rpm、例えば30rpm前後に小さくして固練り工程を行うことが好ましい。該固練り工程における好ましい混練時間は、活物質及びバインダの粉体同士が十分に擦り合わされて均一に分散するまでの時間とすればよく、概ね20〜40分が適当であり、例えば30分前後が好ましい。
次のステップS20の希釈工程では、上記固練り工程で得られた固練り状の混練物を溶媒で希釈して該混練物から活物質層形成用スラリーを得る。この実施形態では、適当な混練装置で上記固練り工程を行った後、混練装置による混練を継続したまま溶媒を追加投入することで希釈工程が行われる。このときの混練条件としては上記固練り工程のときの混練条件と同じであってもよく異なっていてもよい。好ましくは、上記固練り工程を行ったときよりも混練装置の練り速度(例えばミキサー回転数)を小さくして混練するとよい。例えば、上記固練り工程を練り速度20rpm〜40rpm、例えば30rpm前後で行った後、混練装置の練り速度を10rpm〜20rpm、例えば15rpm前後に小さくして希釈工程を行うことが好ましい。希釈工程における好ましい混練時間は、固練り状混練物が溶媒で十分に希釈されて混練物が均一に分散するまでの時間とすればよく、概ね40〜80分が適当であり、例えば60分前後が好ましい。このようにして固練り状混練物を溶媒で希釈することにより、活物質層形成用スラリーを形成することができる。
特に限定されるものではないが、上記固練り工程で投入される溶媒量(質量)をAとし、上記希釈工程で投入される溶媒量(質量)をBとした場合に、スラリー全体の溶媒量A+Bに占める上記固練り工程で投入される溶媒量Aの割合(=[A/(A+B)]×100)は、概ね30質量%〜60質量%であることが適当であり、例えば40質量%〜50質量%であることが好ましい。
次のステップS30の塗工工程では、上記希釈工程で得られた活物質層形成用スラリーを正極集電体に塗工して正極集電体上に正極活物質層が形成された正極を得る。
正極活物質層形成用スラリーを正極集電体に塗布する操作は、従来の一般的なリチウム二次電池用正極を作製する場合と同様にして行うことができる。例えば、適当な塗工装置(ダイコーター、スリットコーター、コンマコーター等)を使用して、上記正極集電体に所定量の上記正極活物質層形成用スラリーを均一な厚さに塗布することにより行われる。塗布後、適当な乾燥手段で塗布物を乾燥(典型的には70℃〜200℃)して正極活物質層形成用スラリーから溶媒を除去することによって、正極活物質を含む正極活物質層が形成される。
このようにして、正極集電体上に正極活物質層が形成された正極(正極シート)を得ることができる。なお、乾燥後、必要に応じて適当なプレス処理(例えばロールプレス処理)を施すことによって、正極活物質層の厚みや密度を適宜調整することができる。
なお、ここで開示される正極活物質層は、上述した正極活物質及びバインダの他に、一般的なリチウム二次電池において正極活物質層の構成成分として使用され得る一種または二種以上の材料を必要に応じて含有することができる。そのような材料の例として、導電剤が挙げられる。該導電剤としてはカーボン粉末やカーボンファイバー等のカーボン材料が好ましく用いられる。あるいは、ニッケル粉末等の導電性金属粉末等を用いてもよい。特に好ましい例として、例えばレーザー回折・散乱法に基づく平均粒径が1μm〜3μmのケッチェンブラック粉末が挙げられる。かかる導電剤は、希釈工程後に活物質層形成用スラリーに添加してもよいが、固練り工程において正極活物質及びバインダとともに投入されることが好ましい。これにより、正極活物質とバインダと導電剤とが均一に分散したスラリーを形成することができる。
その他、正極活物質層の成分として使用され得る材料としては、活物質層形成用スラリーの増粘剤として機能し得る各種のポリマー材料(例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC))が挙げられる。かかる増粘剤は、希釈工程後に活物質層形成用スラリーに添加してもよいが、固練り工程において正極活物質及びバインダとともに投入されることが好ましい。これにより、正極活物質とバインダと増粘剤とが均一に分散したスラリーを形成することができる。
本実施形態に係る製造方法では、上述のように、活物質とバインダと溶媒とを混練するときの騒音値を測定し、その騒音値に基づいて固練り工程に投入される溶媒量が調整されるので、混練しながらでも、スラリー内の凝集塊を少なくするための最適な溶媒量(すなわち活物質及びポリマーの粉体同士に高せん断力がかかる溶媒量)を迅速かつ正確に決定して混練を行うことができる。したがって、活物質及びバインダの各粉体の凝集(ダマ)を解いて、品質のよい電池用電極ならびに該電極を備える電池を効率よく製造することができる。この場合、従来行われていた活物質やバインダの仕様ごとの予備検討が不要になるため、予備検討も含めた製造期間を短縮でき、製造コストを安価にできる。
続いて、図3及び図4を参照しながら、ここに開示される電池製造方法を実施するために用いることができる混練システムについて説明する。この混練システム10は、図3に示すように、活物質とバインダ(ポリマー)と溶媒とを混練するための混練槽14を有する混練装置12と、混練槽14内の騒音値を検知する騒音センサ16とを備えている。また、この混練システム10は、騒音センサ16で検知した騒音値に基づいて、混練槽14に投入される溶媒量を調整する溶媒量調整部18を備えている。
混練システム10に搭載される混練装置12は、活物質とバインダと溶媒とを混練するために使用されるものであり、この実施形態では2軸プラネタリーミキサー12である。2軸プラネタリーミキサー12は、2本のブレード15a、15bを有しており、該2本のブレード15a、15bを混練槽14内で遊星運動させることにより、混練槽14内に投入された活物質とバインダと溶媒とを混練するようになっている。
騒音センサ16は、混練槽14内に取り付けられ、混練槽14内の騒音値を検知するために使用されるものである。騒音センサ16については一般的な騒音センサとして常套的に採用されているものを任意に使用することができる。この実施形態では、騒音センサは積分平均形騒音計である。積分平均形騒音計で検知される騒音値の周波数領域としては特に限定されないが、例えば500Hz〜4000Hzの周波数領域であることが好ましい。500Hz〜4000Hzの周波数領域の音は、溶媒を添加したときの騒音値の変化が特に大きいため、最適な溶媒量を容易に且つ正確に把握できる点で好ましい。このような500Hz〜4000Hzの周波数領域の音は、例えばA特性を使用して簡易的に測定することができる。A特性に限らず、各周波数に対してフラットに重み付けを行ったC特性やZ特性を使用してもよい。
溶媒量調整部18は、騒音センサ16で検知した騒音値に基づいて、混練槽14に投入される溶媒量を調整するためのものである。この実施形態では、溶媒量調整部18は、溶媒投入部18aと中央処理演算装置(CPU)18bとから構成されている。溶媒投入部18aは、混練槽14の外面に設けられ、混練槽14に溶媒を所定量ずつ添加するように構成されている。また、溶媒投入部18aは、CPU18bに電気的に接続されており、CPU18bからの指令により混練槽14への溶媒の添加を停止するようになっている。 CPU18bは、騒音センサ16に電気的に接続されており、騒音センサ16により検知された騒音値のデータがCPU18bに送信されるようになっている。また、CPU18bには、条件設定部19が電気的に接続されている。条件設定部19には、溶媒投入部18aからの溶媒の添加を停止するためのトリガーとなる所定の閾値が設定されている。この実施形態では、所定の閾値は、活物質の粉体とバインダの粉体とを混練して粉体混練物を形成したときの騒音値(初期の騒音値)に対して10dB以上大きい値に設定されている。また、条件設定部19には、最終的にスラリーが含有する溶媒の量(総量)が設定されている。これらのデータは、例えばコンピュータで読み出し可能な記録媒体(例えば、HDD、光記録媒体、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、フラッシュメモリなど)に記録することができる。CPU18bは、騒音センサ16により検知した騒音値が初期の騒音値に対して10dB以上増加した時点で溶媒投入部18aに停止指令を発し、混練槽14への溶媒の添加を停止するようになっている。
次に、図4を加えて、この混練システム10の作動につき説明する。図4は、混練システム10の制御フローを示す図である。
混練システム10を作動する際には、まず活物質とバインダの粉体を混練槽14内に投入する(ステップS110)。そして、2本のブレード15a、15bを混練槽14内で遊星運動させることにより、活物質とバインダを粉体のみの状態で所定の練り速度(例えば60rpm)で混練して粉体混練物を形成する。CPU18bは、このときの騒音値を騒音センサ16により検知し、この騒音値に対して10dB大きい値を閾値として条件設定部19に設定する。
次いで、ステップS120において、混練槽14内での混練を継続しながら所定量の溶媒を添加し、そのときの騒音値を騒音センサ16により検知する(ステップS130)。そして、騒音センサ16により検知した騒音値が所定の閾値(初期の騒音値に対して+10dB)に達したか否かを判断する(ステップS140)。騒音センサ16により検知した騒音値が所定の閾値(初期の騒音値に対して+10dB)に達しない場合は、ステップS120に戻って所定量の溶媒の添加を続行する(「No」の場合)。一方、騒音センサ16により検知した騒音値が所定の閾値(初期の騒音値に対して+10dB)に達したら、ステップS150に進んで、溶媒の添加を停止する(「Yes」の場合)。このことによって、固練り工程に投入される溶媒の量を最適化することができる。
その後、ステップS160において、上記最適化した溶媒量にて所定の練り速度(例えば30rpm)で所定時間混練し、固練り状の混練物を形成する。その後、ステップS170において、混練槽14内での混練を継続しながら混練槽14内に溶媒を追加投入し、最終的なスラリーの溶媒量となるように混練物を所定の練り速度(例えば15rpm)で所定時間混練して希釈分散させる。このことによって、活物質層形成用スラリーを形成することができる。
このようにして得られた活物質層形成用スラリーは、該スラリー内に凝集物が生じることが防止され、活物質とバインダとが均一に分散したものとなる。そのため、その後の製造工程において厚みが均一で品質の良い電極ならびに該電極を備える電池(典型的にはリチウムイオン二次電池等の二次電池)を製造し得る最適な活物質層形成用スラリーとなり得る。さらに、本実施形態によれば、混練しながらでもスラリー内の凝集物が少なくなる最適な溶媒量が把握できるので、従来実施されていた材料ごとの事前検討(最適な溶媒量の条件出し)が不要になる。そのため、予備検討も含めた製造期間を短縮でき、製造コストを安価にすることができる。
このようにして得られた活物質層形成用スラリーは、次の塗工工程に供される。塗工工程では、前述したように、活物質層形成用スラリーを集電体に塗工(典型的には塗布乾燥)して当該集電体上に活物質層が形成された電極を得る。このようにして得られた電極は、活物質層の厚みが均一で品質の良いことから、種々の形態の電池の構成要素または該電池に内蔵される電極体の構成要素(例えば正極)として好ましく利用され得る。
例えば、ここに開示されるいずれかの方法により得られた正極と、負極(本発明を適用して製造された負極であり得る。)と、該正負極間に配置される電解質と、典型的には正負極間を離隔するセパレータ(固体状またはゲル状の電解質を用いた電池では省略され得る。)と、を備えるリチウム二次電池の構成要素として好ましく使用され得る。かかる電池を構成する外容器の構造(例えば金属製の筐体やラミネートフィルム構造物)やサイズ、あるいは正負極集電体を主構成要素とする電極体の構造(例えば捲回構造や積層構造)等について特に制限はない。
以下、上述した方法を適用して製造された正極(正極シート)20を用いて構築されるリチウム二次電池の一実施形態につき、図5に示す模式図を参照しつつ説明する。このリチウム二次電池100は、正極(正極シート)20として、上述した騒音値に基づいて混練(固練り)時の溶媒量が調整された活物質層形成用スラリーを用いて製造された正極(正極シート)20が用いられている。
図示するように、本実施形態に係るリチウム二次電池100は、金属製(樹脂製又はラミネートフィルム製も好適である。)のケース82を備える。このケース(外容器)82は、上端が開放された扁平な直方体状のケース本体84と、その開口部を塞ぐ蓋体86とを備える。ケース82の上面(すなわち蓋体86)には、電極体80の正極20と電気的に接続する正極端子74および該電極体の負極30と電気的に接続する負極端子72が設けられている。ケース82の内部には、例えば長尺シート状の正極(正極シート)20および長尺シート状の負極(負極シート)30を計二枚の長尺シート状セパレータ(セパレータシート)40とともに積層して捲回し、次いで得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることによって作製される扁平形状の捲回電極体80が収容される。
正極シート20は、長尺シート状の正極集電体の両面に正極活物質を主成分とする正極活物質層が設けられた構成を有する。正極集電体にはアルミニウム箔その他の正極に適する金属箔が好適に使用される。また、負極シート30も正極シートと同様に、長尺シート状の負極集電体の両面に負極活物質を主成分とする負極活物質層が設けられた構成を有する。なお、ここに開示される製造方法は、正極および負極のいずれの製造にも適用することができる。負極シート30も正極シート20と同様に、上述した騒音値に基づいて混練(固練り)時の溶媒量が調整された活物質層形成用スラリーを用いて製造された負極シート30であってもよい。これらの電極シート20、30の幅方向の一端には、いずれの面にも上記電極活物質層が設けられていない電極活物質層非形成部分が形成されている。
上記積層の際には、正極シート20の正極活物質層非形成部分と負極シート30の負極活物質層非形成部分とがセパレータシート40の幅方向の両側からそれぞれはみ出すように、正極シート20と負極シート30とを幅方向にややずらして重ね合わせる。その結果、捲回電極体80の捲回方向に対する横方向において、正極シート20および負極シート30の電極活物質層非形成部分がそれぞれ捲回コア部分(すなわち正極シート20の正極活物質層形成部分と負極シート30の負極活物質層形成部分と二枚のセパレータシート40とが密に捲回された部分)から外方にはみ出ている。かかる正極側はみ出し部分(すなわち正極合材層の非形成部分)20Aおよび負極側はみ出し部分(すなわち負極活物質層の非形成部分)30Aには、正極リード端子79および負極リード端子78がそれぞれ付設されており、上述の正極端子74および負極端子72とそれぞれ電気的に接続される。
なお、捲回電極体80を構成する構成要素は、従来のリチウム二次電池の電極体と同様でよく、特に制限はない。例えば、負極シート30は、長尺状の負極集電体の上にリチウム二次電池用負極活物質を主成分とする負極活物質層が付与されて形成され得る。負極集電体には銅箔その他の負極に適する金属箔が好適に使用される。負極活物質は従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、リチウム遷移金属複合酸化物(リチウムチタン複合酸化物等)、リチウム遷移金属複合窒化物等が例示される。
また、正負極シート20、30間に使用されるセパレータシート40の好適例としては、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成されたものが挙げられる。
そして、ケース本体84の上端開口部から該本体84内に捲回電極体80を収容するとともに適当な電解質を含む電解液をケース本体84内に配置(注液)する。電解質は例えばLiPF等のリチウム塩である。例えば、適当量(例えば濃度1M)のLiPF等のリチウム塩をジエチルカーボネートとエチレンカーボネートとの混合溶媒(例えば質量比1:1)に溶解してなる非水電解液を使用することができる。
その後、上記開口部を蓋体86との溶接等により封止し、本実施形態に係るリチウム二次電池100の組み立てが完成する。ケース82の封止プロセスや電解質の配置(注液)プロセスは、従来のリチウム二次電池の製造で行われている手法と同様でよく、本発明を特徴付けるものではない。このようにして本実施形態に係るリチウム二次電池100の構築が完成する。
以下、本発明に関する試験例を説明するが、本発明を以下の試験例に示すものに限定することを意図したものではない。
[騒音測定試験]
正極活物質層形成用スラリーの作製を目的として、その原料であるLiCoO粉体(正極活物質)とアセチレンブラック粉体(導電剤)とポリフッ化ビニリデン粉体(バインダ)とを固形分組成比が80:10:10となるように秤量し、これを市販の2軸プラネタリーミキサーに投入し、回転数60rpmで混練して粉体混練物を形成した。この粉体混練物に溶媒としてのN‐メチルピロリドン(NMP)を少量ずつ添加しながら回転数60rpmで混練し、そのときの騒音値(音圧レベル)を積分平均型騒音計(精密騒音計NA−28:リオン社製)で測定した。騒音値(音圧レベル)はA特性およびC特性で測定した。また、31.5Hz〜4000Hzの周波数範囲を1/1オクターブ分析し、初期値(正極活物質とバインダと導電剤とを混練して粉体混練物を形成したときの騒音値)に対する騒音値の増加量(最大増加量)を求めた。結果を図6〜図8に示す。図6は騒音値の増加量と中心周波数との関係を示すグラフであり、図7は溶媒を追加した際のA特性の騒音値(音圧レベル)の変化を示すグラフであり、図8は溶媒を追加した際のC特性の騒音値(音圧レベル)の変化を示すグラフである。
図6に示すように、500Hz〜4000Hzの高周波数領域で騒音値(音圧レベル)の増加量が特に大きくなった。このことから、最適な固練り条件の際には500Hz〜4000Hzの高周波数領域の騒音が出ていることが確認できた。また、図7と図8の比較から、各周波数に対してフラットに重み付けを行ったC特性に比べて、500Hz〜4000Hzを含む高周波数領域に重み付けしたA特性で簡易評価する方が騒音に対する感度がより良好であることが確認できた。
[評価試験]
次に、図7および図8の結果に基づいて、活物質とバインダと溶媒とを混練したときの騒音値がグラフの極大付近となるように溶媒量を調整することにより、スラリー内の凝集物が少なくなることを確認するため、以下の実験を行った。
<例1>
上記の[騒音測定試験]と同様の手順により粉体混練物を形成し、これに溶媒としてのNMPを所定量ずつ添加し混練したときのA特性騒音値を測定した。そして、A特性騒音値が初期値(正極活物質とバインダと導電剤とを混練して粉体混練物を形成したときの騒音値)に対して+5dB増加した時点で溶媒の添加を停止した(図7参照)。その後、回転数30rpmで30分間混練し(固練り工程)、さらにNMPを最終的なスラリーの固形分率が50質量%となるように追加投入し、回転数15rpmで60分間混練した(希釈工程)。このようにして、目的の正極活物質層形成用スラリーを作製した。なお、NMPの1回あたりの添加量は、使用した固形分の1質量%とした。
<例2>
A特性騒音値が初期値に対して+10dB増加した時点で溶媒の添加を停止したこと以外は、例1と同様にして正極活物質層形成用スラリーを作製した。
<例3>
A特性騒音値が初期値に対して+10dB以上増加した後も溶媒の添加をさらに続け、初期値に対して+5dBのところまで騒音値が低下した時点で溶媒の添加を停止したこと以外は、例1と同様にして正極活物質層形成用スラリーを作製した。
<例4>
A特性騒音値に代えてC特性騒音値を測定したこと以外は、例1と同様にして正極活物質層形成用スラリーを作製した。本例では、C特性騒音値が初期値に対して+5dB増加した時点で溶媒の添加を停止した(図8参照)。
<例5>
C特性騒音値が初期値に対して+10dB増加した時点で溶媒の添加を停止したこと以外は、例4と同様にして正極活物質層形成用スラリーを作製した。
<例6>
C特性騒音値が初期値に対して+10dB以上増加した後も溶媒の添加をさらに続け、初期値に対して+5dBのところまで騒音値が低下した時点で溶媒の添加を停止したこと以外は、例4と同様にして正極活物質層形成用スラリーを作製した。
上記得られた各例の正極活物質層形成用スラリーをアルミニウム箔(正極集電体)の片面に帯状に塗布して乾燥し、正極集電体の片面に正極活物質層が設けられた正極シートを作製した。正極活物質層形成用スラリーの塗布量(片面)は、約10mg/cm(固形分基準)となるように調節した。そして、正極シート25cmあたりに含まれる凝集サイズ0.5mm以上の凝集塊の個数を目視で確認した。結果を表1及び図9に示す。
Figure 2012150923
表1及び図9に示すように、騒音値が初期値に対して+10dB増加した時点で溶媒の添加を停止した例2及び例5に係る正極シートは、他の例に比べて凝集塊の個数が少なかった。このことから、騒音値が初期値に対して+10dB増加した時点、即ち騒音値が図7及び図8のグラフの極大付近となった時点で溶媒の添加を停止することにより、スラリー内の凝集物をより適切に低減できることが確認できた。また、例2と例5の比較から、A特性を使用する方がC特性を使用するよりも好ましいことが分かった。
さらに、本発明を適用して負極シートを作製した。負極シートの作製は以下のようにして行った。
<例7>
負極活物質層形成用スラリーの作製を目的として、その原料である天然黒鉛粉末(負極活物質)とカルボキシルセルロース(増粘剤)とスチレンブタジエンゴム(バインダ)とを固形分組成比が98:1:1となるように秤量し、これを市販の2軸プラネタリーミキサーに投入し、回転数60rpmで混練して粉体混練物を形成した。この粉体混練物に溶媒としての水を少量ずつ添加しながら回転数60rpmで混練し、そのときのA特性騒音値を積分平均型騒音計(精密騒音計NA−28:リオン社製)で測定した。そして、A特性騒音値が初期値(負極活物質とバインダと増粘剤とを混練して粉体混練物を形成したときの騒音値)に対して+5dB増加した時点で溶媒の添加を停止した。その後、回転数30rpmで30分間混練し(固練り工程)、さらに水を最終的なスラリーの固形分率が50質量%となるように追加投入し、回転数15rpmで60分間混練した(希釈工程)。このようにして、目的の負極活物質層形成用スラリーを作製した。なお、水の1回あたりの添加量は、使用した固形分の1質量%とした。
<例8>
A特性騒音値が初期値に対して+10dB増加した時点で溶媒の添加を停止したこと以外は、例7と同様にして負極活物質層形成用スラリーを作製した。
<例9>
A特性騒音値が初期値に対して+10dB以上増加した後も溶媒の添加を続け、初期値に対して+5dBのところまで騒音値が低下した時点で溶媒の添加を停止したこと以外は、例1と同様にして負極活物質層形成用スラリーを作製した。
<例10>
A特性騒音値に代えてC特性騒音値を測定したこと以外は、例7と同様にして負極活物質層形成用スラリーを作製した。本例では、C特性騒音値が初期値に対して+5dB増加した時点で溶媒の添加を停止した。
<例11>
C特性騒音値が初期値に対して+10dB増加した時点で溶媒の添加を停止したこと以外は、例10と同様にして負極活物質層形成用スラリーを作製した。
<例12>
C特性騒音値が初期値に対して+10dB以上増加した後も溶媒の添加を続け、初期値に対して+5dBのところまで騒音値が低下した時点で溶媒の添加を停止したこと以外は、例10と同様にして正極活物質層形成用スラリーを作製した。
上記得られた各例の負極活物質層形成用スラリーを銅箔(負極集電体)の片面に帯状に塗布して乾燥し、負極集電体の片面に負極活物質層が設けられた負極シートを作製した。負極活物質層形成用スラリーの塗布量(片面)は、約5mg/cm(固形分基準)となるように調節した。そして、負極シート25cmあたりに含まれる凝集塊の個数を目視で確認した。結果を表2及び図10に示す。
Figure 2012150923
表2及び図10に示すように、負極シートの場合も正極シートと同様の傾向になった。即ち、騒音値が初期値に対して+10dB増加した時点で溶媒の添加を停止した例8及び例11に係る負極シートは、他の例に比べて凝集塊の個数が少なかった。このことから、騒音値が初期値に対して+10dB増加した時点、即ち騒音値が図7及び図8のグラフの極大付近となった時点で溶媒の添加を停止することにより、スラリー内の凝集物が少なくなることが確認できた。また、例8と例11の比較から、A特性を使用する方がC特性を使用するよりも好ましいことが分かった。
以上、本発明を好適な実施形態及び実施例により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、電池の種類は上述したリチウム二次電池に限られず、電極体構成材料や電解質が異なる種々の内容の電池、例えば、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池であってもよい。
なお、ここに開示されるいずれかの電池100は、車両に搭載される電池として適した性能を備えたものであり得る。したがって本発明によると、図8に示すように、ここに開示されるいずれかの電池100を備えた車両1が提供される。特に、該電池100を動力源(典型的には、ハイブリッド車両または電気車両の動力源)として備える車両(例えば自動車)が提供される。
1 車両
10 混練システム
12 混練装置
14 混練槽
15a、15b ブレード
16 騒音センサ
18 溶媒量調整部
18a 溶媒投入部
18b CPU
19 条件設定部
20 正極シート
30 負極シート
40 セパレータシート
72 負極端子
74 正極端子
78 負極リード端子
79 正極リード端子
80 捲回電極体
82 ケース
84 ケース本体
86 蓋体
100 リチウム二次電池

Claims (12)

  1. 活物質とポリマーと溶媒とを混練して固練り状の混練物を得る固練り工程と、
    前記混練物を溶媒で希釈して該混練物から活物質層形成用スラリーを得る希釈工程と、
    前記活物質層形成用スラリーを集電体に塗工して該集電体上に活物質層が形成された電極を得る塗工工程と
    を包含し、
    ここで前記固練り工程において、前記活物質と前記ポリマーと前記溶媒とを混練するときの騒音値を測定し、その騒音値に基づいて該固練り工程に投入される溶媒の量を調整することを特徴とする、電池の製造方法。
  2. 前記固練り工程において、まず、前記活物質の粉体と前記ポリマーの粉体とを混練して粉体混練物を形成し、その後、粉体混練物に前記溶媒を所定量ずつ添加し混練する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記固練り工程において、前記粉体混練物に前記溶媒を所定量ずつ添加し混練したときの騒音値を測定し、その騒音値が所定の閾値を超えた時点で前記溶媒の添加を停止する、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記所定の閾値は、前記活物質の粉体と前記ポリマーの粉体とを混練して前記粉体混練物を形成したときの騒音値を基準にして設定されている、請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記所定の閾値は、前記活物質の粉体と前記ポリマーの粉体とを混練して前記粉体混練物を形成したときの騒音値に対して、10dB以上大きい値に設定されている、請求項3または4に記載の製造方法。
  6. 前記固練り工程において測定される騒音値は、500Hz〜4000Hzの周波数領域の音である、請求項1〜5の何れか一つに記載の製造方法。
  7. 活物質とポリマーと溶媒とを混練するための混練槽を有する混練装置と、
    前記混練槽内の騒音値を検知する騒音センサと
    を備えた、混練システム。
  8. 前記騒音センサで検知した騒音値に基づいて、前記混練槽に投入される溶媒量を調整する溶媒量調整部を備える、請求項7に記載の混練システム。
  9. 前記溶媒量調整部は、前記混練槽に前記溶媒を所定量ずつ添加し、かつ、前記騒音センサで検知した騒音値が所定の閾値を超えた時点で前記溶媒の添加を停止するように構成されている、請求項8に記載の混練システム。
  10. 前記所定の閾値は、前記活物質の粉体と前記ポリマーの粉体とを混練して粉体混練物を形成したときの騒音値を基準にして設定されている、請求項9に記載の混練システム。
  11. 前記所定の閾値は、前記活物質の粉体と前記ポリマーの粉体とを混練して粉体混練物を形成したときの騒音値に対して、10dB以上大きい値に設定されている、請求項9または10に記載の混練システム。
  12. 前記騒音センサで検知される騒音値は、500Hz〜4000Hzの周波数領域の音である、請求項7〜11の何れか一つに記載の混練システム。
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