JP6380808B2 - 二次電池用電極の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、二次電池用電極の製造方法に関する。
近年、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池は、電気を駆動源とする車両搭載用電源、あるいはパソコン及び携帯端末その他の電気製品等に搭載される電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられている。
この種の二次電池の典型的な電極は、電荷担体となる化学種を可逆的に吸蔵および放出し得る活物質を主成分とする活物質層が集電体上に保持された構成を有する。活物質層は、一般に活物質およびバインダを適当な溶媒でスラリー化し、この電極用スラリーを集電体に塗布・乾燥した後、プレスすることで形成され得る。乾燥後のプレス工程は、活物質層の厚みや密度を調整する工程である。また、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いる場合には、PVdFの溶解度はあまり高くないため、PVdFを溶媒(例えばN−メチルピロリドン(NMP))に溶かした濃度10%以下のPVdF溶液を用意し、かかるPVdF溶液を電極用スラリーに添加している。この種の電極形成に関する従来技術として、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、PVdFを溶解したNMPの溶液に正極活物質を混合する合剤スラリーの製造方法が開示されている。
特開2012−186054号公報
ところで、本発明者は、多量の溶媒を使用することなく、湿潤粉体成型によって電極を製造することを考えている。湿潤粉体成型では、典型的には活物質とバインダと少量の溶媒とを含む湿潤造粒粒子を造粒し、かかる湿潤造粒粒子の粉体をプレス(圧延)して集電体上に成膜することで、集電体上に活物質層が形成され得る。かかる湿潤粉体成型によれば、溶媒の使用量が従来の電極スラリーに比べて少ないため、活物質層の乾燥時間が短縮され得る。また、湿潤造粒粒子の固形分率(NV)を高めることで高密度な活物質層が成膜されるので、乾燥後のプレス工程が不要になる。そのため、高容量化や高エネルギー密度化に貢献する高密度な活物質層を効率よく形成し得るという利点を有する。
しかし、上記湿潤粉体成型で電極を形成する場合に、バインダとしてPVdFを採用すると、前述したPVdF溶液は多量の溶媒を含むため、固形分率の増加が困難である。そのため、湿潤造粒粒子の固形分率を十分に上げることができず、上述した湿潤粉体成型の利点を活かせないという問題があった。かかる問題に対処すべく、PVdFを粉末状の形態で添加すると、PVdF粉末が溶媒に溶けきらず、粉のまま残ってしまう。PVdFが粉のまま残ると、バインダとしての機能が十分に発揮されず、結着強度が不足して成膜性が低下したり、活物質層と集電体との密着性が低下したりする要因になり得る。本願発明は上記課題を解決するものである。
ここで提案される二次電池用電極の製造方法は、少なくとも活物質とバインダとを含む粉末材料に溶媒を混合して湿潤造粒粒子を造粒する造粒工程と、湿潤造粒粒子から構成された粉体をプレス成形することにより集電体上に活物質層を形成する工程とを包含する。ここで、バインダは、平均粒径が49μm以下のポリフッ化ビニリデン(PVdF)系樹脂粉末からなる。そして、湿潤造粒粒子の固形分率は、少なくとも78質量%である。かかる構成によると、湿潤造粒粒子を78質量%以上の高固形分率に調整した場合でも、PVdF系樹脂粉末が溶媒に溶解した(PVdF系樹脂粉末が粉のまま残っていない)湿潤造粒粒子を造粒することができる。かかる湿潤造粒粒子を用いれば、PVdF系樹脂のバインダとしての機能が適切に発揮されるため、活物質間や活物質と集電体との間の結着強度を向上させることができる。また、湿潤造粒粒子をプレスして成膜する際の成膜性が良好となる。従って、本発明によれば、高固形分率の湿潤造粒粒子を用いることによる利点(例えば乾燥時間の短縮や乾燥後のプレス工程の省略等)を活かしつつ、成膜不良を回避し得、品質安定性および耐久性に優れた最適な二次電池用電極を製造することができる。
ここで開示される製造方法では、前記バインダの重量平均分子量が、100万以上であってもよい。このような高分子量のバインダを用いれば、活物質間や活物質と集電体との間をより強固に結着し得る。そのため、活物質層と集電体との密着性が良好で、かつ活物質層にスケやスジが少ない高品質な二次電池用電極を製造することができる。
ここで開示される製造方法では、前記湿潤造粒粒子の固形分全体に対する前記バインダの含有量が、1質量%〜2質量%であってもよい。このようなバインダの含有量の範囲内であると、電池抵抗の上昇を抑えつつ、活物質層にスケやスジが少ない高品質な二次電池用電極を製造することができる。
ここで開示される製造方法では、前記造粒工程には、前記活物質とバインダとを粉末同士で混合して攪拌する第1攪拌処理と、前記第1攪拌処理の後、得られた攪拌物に前記溶媒を混合して攪拌する第2攪拌処理とが含まれてもよい。このように活物質とバインダとを粉末同士で混ぜ合わせた後、溶媒を投入することにより、バインダを溶媒により効率よく溶解することができる。そのため、上述した電池性能向上効果がより好適に発揮され得る。
ここで開示される製造方法では、前記第1攪拌処理と前記第2攪拌処理とを同一の攪拌装置を用いて行ってもよい。また、前記第1攪拌処理における攪拌装置の攪拌回転数が、前記第2攪拌処理における攪拌装置の攪拌回転数よりも大きくなるように設定してもよい。このようにすれば、湿潤造粒粒子が安定して得られうる。
図1は、二次電池用電極の製造フローを示す図である。 図2は、造粒工程のフローを示す図である。 図3は、造粒工程で得られた湿潤造粒粒子を模式的に示す図である。 図4は、粉体ロールプレス装置を示す模式図である。 図5は、電池構成を模式的に示す図である。 図6は、捲回電極体を説明するための図である。 図7は、比較例1、2の造粒工程のフローを示す図である。
以下、ここで提案される二次電池用電極の製造方法についての一実施形態を説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、各図は模式的に描かれており、例えば、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充電可能な電池一般をいう。「リチウムイオン二次電池」は、電解質イオンとしてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
ここに開示される二次電池用電極を製造する方法の好適な実施形態の一つとして、リチウムイオン二次電池用正極を製造する方法を例にして図1および図2に示すフローチャートを参照しつつ詳細に説明するが、本発明の適用対象をかかる二次電池に限定する意図ではない。ここに開示される電極製造方法は、正極製造方法および負極製造方法の双方に適用され得る。
図1に示すように、ここに開示される正極製造方法は、少なくとも正極活物質とバインダとを含む粉末材料に溶媒を混合して湿潤造粒粒子を造粒する造粒工程(ステップS10)と、湿潤造粒粒子から構成された粉体をプレス成形することにより正極集電体上に正極活物質層を形成する工程(ステップS20)と、を包含する。以下、各工程を詳細に説明する。
<造粒工程>
ステップS10の造粒工程は、少なくとも正極活物質とバインダとを含む粉末材料に溶媒を混合して湿潤造粒粒子を造粒する工程である。
上記造粒工程で用いられる正極活物質としては、従来からリチウムイオン二次電池の正極活物質として用いられている各種の材料を特に限定なく使用することができる。好適例として、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMn)等のリチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物)や、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、リン酸鉄リチウム(LiFePO)等のリチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含むリン酸塩などが挙げられる。正極活物質の性状は特に限定されないが、例えば、レーザ回折・散乱法に基づく平均粒径(D50径)が1μm〜50μm(典型的には2μm〜10μm、好ましくは3μm〜7μm)程度の粉末状(粒子状)のものを好ましく用いることができる。ここで開示される製造方法は、このような平均粒径を有する正極活物質に対してより好適に適用することができる。
上記造粒工程で用いられるバインダとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)系樹脂(ポリマー)が挙げられる。PVDF系樹脂は、フッ化ビニリデン単独重合体であってもよく、フッ化ビニリデンと共重合可能な他のモノマーとフッ化ビニリデンとの共重合体であってもよい。共重合体においてフッ化ビニリデンと重合する他のモノマーとしては特に限定されない。例えば、四フッ化エチレン(ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))、六フッ化プロピレン、三フッ化エチレン、三フッ化塩化エチレン、フッ化ビニル、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等のフッ素系モノマーが挙げられる。これらの1種または2種以上を用いてもよい。共重合体においては、フッ化ビニリデン成分が50質量%以上であることが適当であり、75質量%以上であることがより好ましい。
PVdF系樹脂の分子量は特に限定されない。例えばPVdF系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、成膜性等の観点から、典型的には100万以上、好ましくは110万以上、より好ましくは120万以上である。また、PVdF系樹脂のMwは、典型的には200万以下であり、好ましくは180万以下、より好ましくは150万以下、さらに好ましくは130万以下である。なお、PVdF系樹脂のMwとしては、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)に基づく値を採用することができる。
上記PVdF系樹脂の形状は特に制限されないが、粉末状のPVdF系樹脂(PVdF系樹脂粉末)の使用が好ましい。例えば、平均粒径(D50径)が49μm以下のPVdF系樹脂粉末を好ましく使用し得る。このような微粉状のPVdF系樹脂粉末を用いることで、PVdF系樹脂が溶媒に溶解しやすくなる。そのため、湿潤造粒粒子を78質量以上の高固形分率に調整した場合でも、造粒工程においてPVdF系樹脂を溶媒に適切に溶解することができる。溶解容易性等の観点から、PVdF系樹脂粉末の平均粒径は、好ましくは47μm以下、より好ましくは45μm以下、特に好ましくは40μm以下である。PVdF系樹脂粉末の平均粒径の下限は特に限定されない。ハンドリング性、凝集防止等の観点から、PVdF系樹脂粉末の平均粒径は、典型的には10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは30μm以上である。
なお、本明細書中において「平均粒径」とは、特記しない限り、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布における積算値50%での粒径、すなわち50%体積平均粒子径を意味するものとする。ここで、積算値50%での粒径、すなわち50%体積平均粒子径を適宜に「D50」と称する。より具体的には、レーザ回析・散乱式粒度分布測定装置を用い、圧縮空気による粒子の分散は行わず、乾式測定した50%体積平均粒子径である。
ここに開示される湿潤造粒粒子は、正極活物質およびバインダ以外の材料が含まれていてもよく、例えば、導電材が含まれていてもよい。導電材を含む構成においては、導電材として、例えば、カーボン粉末、カーボンファイバーなどのカーボン材料が例示される。このような導電材から選択される一種を単独で用いてもよく二種以上を併用してもよい。カーボン粉末としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、オイルファーネスブラック、黒鉛化カーボンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、グラファイトなどの粉末を用いることができる。かかる導電材は、正極活物質と正極集電体との導電パスを形成するうえで、導電性が乏しい正極活物質を用いる場合に好適に添加される。この実施形態では、湿潤造粒粒子は導電材を含んでいる。
上記造粒工程で用いられる溶媒としては、N‐メチルピロリドン(NMP)、ピロリドン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクサヘキサノン、トルエン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、等の有機系溶剤またはこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。特に好ましい例として、NMPが挙げられる。あるいは、水または水を主体とする混合溶媒であってもよい。かかる混合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
ここに開示される造粒工程は、図2に示すように、上述した正極活物質とPVdF系樹脂(バインダ)と導電材とを粉末同士で混合して攪拌する第1攪拌処理(ステップS12)と、第1攪拌処理の後、得られた攪拌物に上記溶媒を混合して攪拌する第2攪拌処理(ステップS14)と、第2攪拌処理よりも高い攪拌回転数で攪拌する第3攪拌処理(ステップS16)とを含み得る。
ステップS12の第1攪拌処理では、正極活物質とPVdF系樹脂と導電材とを粉末同士で攪拌する。第1攪拌処理では、正極活物質とPVdF系樹脂と導電材とが均一に混合した状態となるまで十分に混ぜ合わせることが好ましい。第1攪拌処理の攪拌時間としては、装置構成や攪拌条件によっても異なり得るが、通常は1秒〜30秒程度であり、好ましくは3秒〜10秒であり、より好ましくは5秒〜8秒である。この第1攪拌処理においては、正極活物質とPVdF系樹脂と導電材とが粉末同士で攪拌されるので、正極活物質とPVdF系樹脂と導電材とが均一に混ざり合った粉末攪拌物が得られうる。
ステップS14の第2攪拌処理では、第1攪拌処理の後、得られた粉末攪拌物に溶媒を混合して攪拌する。第2攪拌処理では、上記粉末攪拌物を溶媒で湿らせ、攪拌の回転運動を付与することによって球形の粒子に凝集させる。その際、粉末攪拌物に混合された溶媒は、PVdF系樹脂粉末を溶解する。そして、PVdF系樹脂を溶解した溶媒が上記球形の粒子に湿潤し、正極活物質および導電材の各粒子間を結着結合する。このようにして、正極活物質とバインダと導電材と溶媒とを含む湿潤造粒粒子が得られうる。第2攪拌処理では、湿潤造粒粒子がある程度の大きさに球形化するまで攪拌することが好ましい。第2攪拌処理の攪拌時間としては、装置構成や攪拌条件によっても異なり得るが、通常は5秒〜60秒程度であり、好ましくは8秒〜30秒であり、より好ましくは10秒〜20秒である。
第1攪拌処理と第2攪拌処理とは、同一の攪拌装置を用いて行ってもよく異なる攪拌装置を用いて行ってもよいが、生産性の観点からは同一の攪拌装置を用いることが好ましい。攪拌を行うための攪拌装置は特に限定されない。例えば攪拌装置は、回転する攪拌子(ディスパー翼、タービン翼などの攪拌翼、攪拌羽根)を有し、この攪拌子を攪拌することにより混合・造粒し得るものであり得る。このような攪拌装置としては、プラネタリミキサ、フードプロセッサ、ホモミキサ、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、プロペラ攪拌機、高速ミキサ等の機械式の攪拌装置が例示される。
好ましい一態様では、第1攪拌処理と第2攪拌処理とを同一の攪拌装置を用い、かつ、第1攪拌処理における攪拌装置の攪拌回転数を、第2攪拌処理における攪拌装置の攪拌回転数よりも大きく設定する。第1攪拌処理の回転数を第2攪拌処理の回転数よりも大きく設定することで、正極活物質とバインダと導電材とがより均一に混ざり合った粉末攪拌物が効率よく得られうる。このように正極活物質とバインダと導電材とを均一に混ぜ合わせることにより、バインダ同士の凝集が妨げられる。そのため、上記溶媒を混合した際、バインダが溶媒に溶解しやすくなる。また、第2攪拌処理の回転数を第1攪拌処理の回転数よりも小さく設定することで、溶媒で湿らせた粉末攪拌物が球形化しやすくなり、湿潤造粒粒子を安定して得ることができる。特に限定されるものではないが、第1攪拌処理の攪拌回転数としては、概ね2000rpm〜5000rpmにすることが適当であり、好ましくは2500rpm〜4000rpmであり、より好ましくは2600rpm〜3000rpmである。第2攪拌処理の攪拌回転数としては、概ね300rpm〜1800rpmにすることが適当であり、好ましくは500rpm〜1500rpmであり、より好ましくは800rpm〜1000rpmである。
ステップS16の第3攪拌処理では、第2攪拌処理で得られた湿潤造粒粒子を高速で攪拌することにより、湿潤造粒粒子同士の二次凝集を防いで相互に分離させる。第3攪拌処理は、前述した第2攪拌処理と同一の攪拌装置を用いて行ってもよく異なる攪拌装置を用いて行ってもよいが、生産性の観点からは同一の攪拌装置を用いることが好ましい。第3攪拌処理における攪拌装置の攪拌回転数としては、概ね2000rpm〜5000rpmにすることが適当であり、好ましくは2500rpm〜4000rpmであり、より好ましくは2600rpm〜3000rpmである。第3攪拌処理の攪拌時間としては、装置構成や攪拌条件によっても異なり得るが、通常は0.5秒〜8秒程度であり、好ましくは1秒〜5秒であり、より好ましくは1秒〜3秒である。
このようにして、正極活物質とPVdF系樹脂(バインダ)と導電材と溶媒とを含む湿潤造粒粒子が造粒され得る。
図3は、上記造粒工程を経て形成された湿潤造粒粒子10の一例を模式的に示している。ここに開示される湿潤造粒粒子10は、図3に示すように、正極活物質12と導電材14とバインダ(PVdF系樹脂)16と溶媒とを含んでいる。かかる湿潤造粒粒子10は、個々の正極活物質12および導電材14の粒子表面にバインダ16が付着し、さらにその正極活物質12および導電材14の各粒子間がバインダ16によって互いに結合された態様であり得る。
上記造粒工程で造粒される湿潤造粒粒子10の性状としては、例えば、平均粒径が凡そ100μm以上であり得る。均質な負極活物質層を形成する観点から、湿潤造粒粒子10の平均粒径は、好ましくは200μm以上、より好ましくは300μm以上、さらに好ましくは400μm以上である。また、湿潤造粒粒子10の平均粒径は、概ね1000μm以下、例えば800μm以下、好ましくは600μm以下である。ここで開示される技術は、例えば、湿潤造粒粒子10の平均粒径が100μm以上1000μm以下(例えば350μm以上500μm以下)である態様で好ましく実施され得る。
湿潤造粒粒子の固形分全体に対するバインダ(PVdF系樹脂)の含有量は特に限定されるものではないが、概ね1質量%〜2質量%である。バインダの割合が少なすぎると、正極集電体近傍のバインダ量が不足して正極活物質層と正極集電体との剥離強度が低下傾向になる場合がある。また、正極活物質層の成膜性が低下し、スケやスジが生じる場合があり得る。成膜性や剥離強度向上等の観点から、バインダの含有量は、概ね1質量%以上であり、好ましくは1.2質量%以上、より好ましくは1.4質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上である。一方、バインダの含有量が多すぎると、バインダが正極活物質の表面を覆うことで電荷担体の出入りが阻害され、電池抵抗が上昇傾向になる場合がある。抵抗上昇抑制等の観点から、バインダの含有量は、概ね2質量%以下であり、好ましくは1.8質量%以下である。
特に制限されるものではないが、湿潤造粒粒子の固形分全体に対する正極活物質の含有量(割合)は、概ね50質量%以上(典型的には50質量%〜95質量%)であることが好ましく、75質量%〜90質量%であることが好ましい。また、正極活物質およびバインダ以外の成分(ここでは導電材)を含有する場合は、それら任意成分の合計含有量(割合)を概ね15質量%以下とすることが好ましく、10質量%以下(例えば1質量%〜10質量%)とすることが好ましい。
湿潤造粒粒子の固形分率(NV)は、少なくも78質量%である。乾燥効率、活物質層の高密度化等の観点からは、湿潤造粒粒子のNVは高ければ高いほど好ましい。湿潤造粒粒子のNVは、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上である。従来の技術では、バインダ(PVdF系樹脂)を溶媒に溶かした溶液状で添加されるため、バインダの使用量によっては、湿潤造粒粒子のNVを78質量%以上にすることは困難であったが、本技術によると、バインダ(PVdF系樹脂)を粉末状のまま添加するため、78質量%以上の高固形分率を容易に実現できる。湿潤造粒粒子のNVの上限は特に制限されない。成膜性等の観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは88質量%以下、特に好ましくは85質量%以下である。
<プレス工程>
ステップS200のプレス工程は、上述した湿潤造粒粒子から構成された粉体をプレス成形することにより正極集電体上に正極活物質層を形成(成膜)する工程である。正極集電体としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金が用いられる。
図4は、ここに開示される電極製造方法に用いられる粉体ロール成形装置90を模式的に示す斜視図である。粉体ロール成形装置90は、第1のロール92(以下、供給ロール92ともいう)と第2のロール94(以下、転写ロール94ともいう)とを備える。供給ロール92と転写ロール94の間には、所定の幅のギャップがある。供給ロール92の外周面と転写ロール94の外周面は互いに対向している。供給ロール92と転写ロール94は、図4の矢印に示すように、逆方向に回転する。
転写ロール94の隣には、正極集電体52の搬送装置として、第3のロール96(以下、バックアップロール96ともいう)が配置されている。転写ロール94の外周面とバックアップロール96の外周面は互いに対向している。転写ロール94とバックアップロール96は、図4の矢印に示すように、逆方向に回転する。
供給ロール92および転写ロール94の幅方向の両端部には、隔壁98が設けられている。隔壁98は、湿潤造粒粒子10の粉体を供給ロール92および転写ロール94上に保持すると共に、2つの隔壁98の間の距離によって、正極集電体52上に形成される正極活物質層53の幅を規定する役割を果たす。
ここに開示される製造方法の堆積工程では、まず、湿潤造粒粒子10の粉体を、回転する供給ロール92および回転する転写ロール94の間のギャップに通して塗膜を形成する。具体的にはまず、回転している供給ロール92および回転している転写ロール94の間に、湿潤造粒粒子10の粉体を供給する。湿潤造粒粒子10の粉体を供給ロール92および転写ロール94の間に供給すると、湿潤造粒粒子10の粉体が、供給ロール92および転写ロール94の回転により供給ロール92および転写ロール94の間のギャップに運ばれる。そして湿潤造粒粒子10の粉体は、供給ロール92および転写ロール94の間のギャップを通ってプレスされ、塗膜化される。すなわち、湿潤造粒粒子10の粉体が、供給ロール92および転写ロール94によって押し潰されながら湿潤造粒粒子10同士が一体化していき、引き延ばされて塗膜を形成する。
続いて、上記の塗膜を転写ロール94に付着させて搬送する。転写ロール94に付着した塗膜は、転写ロール94の回転によって搬送される。続いて、上記で搬送された塗膜を、バックアップロール96により搬送される正極集電体52上に転写して塗膜からなる正極活物質層53を形成する。転写ロール94の表面に付着した塗膜が、バックアップロール96により搬送された正極集電体52にある程度の圧力で接触することにより、上記塗膜が、正極集電体52に転写される。これにより、正極集電体52上に正極活物質層53が形成される。
その後、形成した正極活物質層53を適当な乾燥炉を用いて乾燥する。ここに開示される製造方法では、湿潤造粒粒子の固形分率が78質量%以上の高固形分率に設定されている。そのため、従来に比して正極活物質層53の乾燥時間を短縮できる。また、湿潤造粒粒子の固形分率を78質量%以上に高めることで高密度な正極活物質層が成膜される。そのため、乾燥後のプレス工程が不要になる。すなわち、乾燥後においては、正極活物質層をプレスしてさらに高密度化する必要がない。そのため、高容量化や高エネルギー密度化に寄与し得る高密度な正極活物質層を効率よく形成し得る。
このようにして、正極活物質層53が正極集電体52に保持された構成を有する正極を得ることができる。
ここに開示される製造方法は、少なくとも活物質とバインダとを含む粉末材料に溶媒を混合して湿潤造粒粒子を造粒する造粒工程と、湿潤造粒粒子から構成された粉体をプレス成形することにより正極集電体上に正極活物質層を形成する工程とを包含する。バインダは、平均粒径が49μm以下のポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末からなる。また、湿潤造粒粒子の固形分率は、少なくとも78質量%である。
かかる構成によると、PVdF系樹脂粉末の平均粒径を49μm以下とすることで、PVdF系樹脂粉末が溶媒に溶けやすくなる。そのため、湿潤造粒粒子を78質量%以上の高固形分率に調整した場合でも、PVdF系樹脂粉末が溶媒に溶解した(PVdF系樹脂粉末が粉のまま残っていない)湿潤造粒粒子を造粒することができる。かかる湿潤造粒粒子を用いれば、PVdF系樹脂のバインダとしての機能が適切に発揮されるため、活物質間や活物質と集電体との間の結着強度を向上させることができる。また、湿潤造粒粒子をプレスして成膜する際の成膜性が良好となり、活物質層にスケやスジが生じることを解消することができる。従って、上記構成によれば、高固形分率の湿潤造粒粒子を用いることによる利点(例えば乾燥時間の短縮や乾燥後のプレス工程の省略等)を活かしつつ、成膜不良を回避し得、品質安定性および耐久性に優れた最適な電極(例えば正極)を製造することができる。
かかる電極は、上述のように活物質層53が集電体52から剥がれ難く、より高性能であることから、種々の形態の二次電池の構成要素または該二次電池に内蔵される電極体の構成要素として好ましく利用され得る。
例えば、ここに開示されるいずれかの方法により得られた正極と、負極と、該正負極間に配置される電解質と、典型的には正負極間を離隔するセパレータ(固体状またはゲル状の電解質を用いた電池では省略され得る。)と、を備えるリチウムイオン二次電池の構成要素として好ましく使用され得る。かかる電池を構成する外容器の構造(例えば金属製の筐体やラミネートフィルム構造物)やサイズ、あるいは正負極集電体を主構成要素とする電極体の構造(例えば捲回構造や積層構造)等について特に制限はない。
<リチウムイオン二次電池>
以下、上述した方法を適用して製造された負極(負極シート)を用いて構築されるリチウムイオン二次電池の一実施形態につき、図5および図6に示す模式図を参照しつつ説明する。図5は本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の断面図である。図6は、当該リチウムイオン二次電池100に内装される電極体40を示す図である。このリチウムイオン二次電池100は、負極(負極シート)60として、上述した湿潤造粒粒子を用いる方法を適用して製造された負極(負極シート)60が用いられている。
本発明の一実施形態に係るリチウムイオン二次電池100は、図5に示すような扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)20に構成されている。リチウムイオン二次電池100は、図5および図6に示すように、扁平形状の捲回電極体40が、液状電解質(電解液)80とともに、電池ケース20に収容されている。
<電池ケース>
電池ケース20は、一端(電池100の通常の使用状態における上端部に相当する。)に開口部を有する箱形(すなわち有底直方体状)のケース本体21と、その開口部に取り付けられて該開口部を塞ぐ矩形状プレート部材からなる蓋体(封口板)22とから構成される。電池ケース20の材質は、従来のリチウムイオン二次電池で使用されるものと同じであればよく、特に制限はない。軽量で熱伝導性の良い金属材料を主体に構成された電池ケース20が好ましく、このような金属製材料としてアルミニウム等が例示される。
図5に示すように、蓋体22には外部接続用の正極端子23および負極端子24が形成されている。蓋体22の両端子23、24の間には、電池ケース20の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように構成された薄肉の安全弁30と、注液口32が形成されている。なお、図5では、当該注液口32が注液後に封止材33によって封止されている。
<捲回電極体>
捲回電極体40は、図6に示すように、長尺なシート状正極(正極シート50)と、該正極シート50と同様の長尺シート状負極(負極シート60)とを計二枚の長尺シート状セパレータ(セパレータ72、74)とを備えている。
<正極シート>
正極シート50は、帯状の正極集電体52と正極活物質層53とを備えている。正極集電体52には、例えば、正極に適する金属箔が好適に使用され得る。この実施形態では、正極集電体52として、アルミニウム箔が用いられている。正極集電体52の幅方向片側の縁部に沿って未塗工部51が設定されている。図示例では、正極活物質層53は、正極集電体52に設定された未塗工部51を除いて、正極集電体52の両面に保持されている。正極活物質層53には、前述のように、正極活物質と導電材とバインダ(PVdF系樹脂)が含まれている。正極シートの製造方法については、前述したとおりであるので、その説明は省略する。
<負極シート>
負極シート60は、図6に示すように、帯状の負極集電体62と負極活物質層63とを備えている。負極集電体62の幅方向片側には、縁部に沿って未塗工部61が設定されている。負極活物質層63は、負極集電体62に設定された未塗工部61を除いて、負極集電体62の両面に保持されている。負極活物質層63には、負極活物質とバインダとが含まれている。負極活物質としては、従来からリチウムイオン二次電池の負極活物質として用いられている各種の材料を特に限定なく使用することができる。好適例として、グラファイトカーボン、アモルファスカーボン等の炭素系材料、チタン酸リチウム等のリチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属窒化物、シリコン化合物などが挙げられる。バインダは、PVdF系樹脂であってもよく、PVdF系樹脂以外の材料であってもよい。バインダとしてPVdF系樹脂を用いる場合には、ここに開示される電極製造方法を適用して負極シートを作製することができる。
<セパレータ>
セパレータ72、74は、図6に示すように、正極シート50と負極シート60とを隔てる部材である。この例では、セパレータ72、74は、微小な孔を複数有する所定幅の帯状のシート材で構成されている。セパレータ72、74には、例えば、多孔質ポリオレフィン系樹脂で構成された単層構造のセパレータ或いは積層構造のセパレータを用いることができる。また、かかる樹脂で構成されたシート材の表面に、絶縁性を有する粒子の層をさらに形成してもよい。ここで、絶縁性を有する粒子としては、絶縁性を有する無機フィラー(例えば、金属酸化物、金属水酸化物などのフィラー)、或いは、絶縁性を有する樹脂粒子(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの粒子)で構成してもよい。この例では、図6に示すように、負極活物質層63の幅b1は、正極活物質層53の幅a1よりも少し広い。さらにセパレータ72、74の幅c1、c2は、負極活物質層63の幅b1よりも少し広い(c1、c2>b1>a1)。
《捲回電極体の取り付け》
この実施形態では、捲回電極体40は、図6に示すように、捲回軸WLに直交する一の方向において扁平に押し曲げられている。図6に示す例では、正極集電体52の未塗工部51と負極集電体62の未塗工部61は、それぞれセパレータ72、74の両側においてらせん状に露出している。この実施形態では、図5に示すように、未塗工部51の中間部分は、寄せ集められ、電池ケース20の内部に配置された電極端子(内部端子)の集電タブ25、26に溶接される。図5中の25a、26aは当該溶接個所を示している。
そして、ケース本体21の上端開口部から該本体21内に捲回電極体40が収容され、上記開口部を蓋体22との溶接等により封止する。また、電解液80が注液口32からケース本体21内に配置(注液)される。
<電解液(非水電解液)>
電解液(非水電解液)80としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液と同様のものを特に限定なく使用することができる。かかる非水電解液は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有する。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン等からなる群から選択された一種または二種以上を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF,LiBF,LiAsF,LiCFSO,LiCSO,LiN(CFSO,LiC(CFSO等のリチウム塩を用いることができる。一例として、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(例えば体積比3:4:3)にLiPFを約1mol/Lの濃度で含有させた非水電解液が挙げられる。
その後、注液口32を封止材33によって封止し、本実施形態に係るリチウム二次電池100の組み立てが完成する。ケース20の封止プロセスや電解液の配置(注液)プロセスは、従来のリチウムイオン二次電池の製造で行われている手法と同様でよく、本発明を特徴付けるものではない。このようにして本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100の構築が完成する。
このようにして構築されたリチウム二次電池100は、前記のように活物質層が集電体から剥がれ難く、優れた電池性能を示すものであり得る。例えば、サイクル特性に優れる、入出力特性に優れる、生産効率に優れる、のうちの少なくとも一つ(好ましくは全部)を満たす二次電池を提供することができる。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「%」は、特に断りがない限り質量基準である。また、各例のPVdF粉末の平均粒径は、高圧ジェットミルを用いてエアー圧を変更しつつ市販のPVdF粉末を粉砕することにより調整した。PVdF粉末の平均粒径は、レーザ回折式粒度分布計(マイクロトラック・ベル株式会社製:機種名MT3300EX)を用いて測定した。
<湿潤造粒粒子の造粒>
(実施例1)
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3粉末と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)粉末と、導電材としてのAB粉末とを、90.5:1.5:8の質量比でフードプロセッサに投入し、回転数2600rpmで10秒間攪拌した(第1攪拌処理)。次いで、溶媒としてのNMPを投入して回転数800rpmで10秒間攪拌し(第2攪拌処理)、さらに回転数2600rpmで3秒間攪拌した(第3攪拌処理)。このようにして平均粒径が400μmの正極湿潤造粒粒子の粉体を得た。本例では、PVdF粉末の平均粒径は47μm、重量平均分子量(Mw)は100万とした。また、正極湿潤造粒粒子の固形分率は78%となるように調整した。
(実施例2)
正極活物質とPVdFと導電材との質量比を91:1:8としたこと以外は実施例1と同じ手順で正極湿潤造粒粒子を得た。
(実施例3)
正極活物質とPVdFと導電材との質量比を90:2:8としたこと以外は実施例1と同じ手順で正極湿潤造粒粒子を得た。
(実施例4)
正極湿潤造粒粒子の固形分率を85%としたこと以外は実施例1と同じ手順で正極湿潤造粒粒子を得た。
(実施例5)
PVdF粉末のMwを130万としたこと以外は実施例1と同じ手順で正極湿潤造粒粒子を得た。
(比較例1)
本例では、PVdFをNMPに溶かした溶液状(PVdF溶液)で添加した。具体的には、図7に示すように、正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3粉末と導電材としてのAB粉末とを90.5:8の質量比でフードプロセッサに投入し、回転数2600rpmで10秒間攪拌した(第1攪拌処理)。次いで、PVdF溶液(PVdFの濃度が10%であるPVdF溶液を使用した。)を投入して回転数800rpmで10秒間攪拌し(第2攪拌処理)、さらに回転数2600rpmで3秒間攪拌した(第3攪拌処理)。このようにして平均粒径が400μmの正極湿潤造粒粒子の粉体を得た。PVdF溶液の添加量は、正極湿潤造粒粒子の全固形分に対するPVdFの含有量が1.5%となるように調整した。得られた正極湿潤造粒粒子の固形分率は77%に留まった。
(比較例2)
第2攪拌処理において、正極湿潤造粒粒子の全固形分に対するPVdFの含有量が1%となるようにPVdF溶液およびNMPを添加し、正極湿潤造粒粒子の固形分率を78%としたこと以外は比較例1と同じ手順で正極湿潤造粒粒子を得た。
(比較例3)
PVdF粉末の平均粒径を269μmとしたこと以外は実施例1と同じ手順で正極湿潤造粒粒子を得た。
(比較例4)
PVdF粉末の平均粒径を269μmとし、かつ正極活物質とPVdFと導電材との質量比を91:1:8としたこと以外は実施例1と同じ手順で正極湿潤造粒粒子を得た。
(比較例5)
PVdF粉末の平均粒径を71μmとしたこと以外は実施例1と同じ手順で正極湿潤造粒粒子を得た。
(比較例6)
PVdF粉末の平均粒径を71μmとし、かつ正極活物質とPVdFと導電材との質量比を91:1:8としたこと以外は実施例1と同じ手順で正極湿潤造粒粒子を得た。
<正極シートの作製>
各例の正極湿潤造粒粒子の粉体を図4に示す粉体ロール成形装置を用いてプレスして長尺シート状のアルミニウム箔(正極集電体)上に転写することにより、正極集電体上に正極活物質層を形成(成膜)した。このようにして正極集電体上に正極活物質層が設けられた正極シートを得た。
各例の正極シートについて、正極活物質層の成膜性を目視で観察した。ここでは、正極活物質層にスケやスジが存在しないものを「◎」、スケやスジが一部に存在するものの、成膜可能なものを「○」、塗膜が破断する等、成膜不可のものを「×」と評価した。結果を表1に示す。
また、各例の正極シートについて、正極活物質層の成膜密度を評価した。正極活物質層の成膜密度は、正極活物質層の目付量と厚みとから算出した。結果を表1に示す。
さらに、各例の正極シートについて、正極活物質層と正極集電体との密着性を評価した。具体的には、剥離強度計(エー・アンド・デー株式会社製:機種名テンシロン)を用いて、正極活物質層を剥がすときの剥離強度を測定した。結果を表1に示す。
また、各例の正極シートを用いて評価試験用セルを構築し、そのIV抵抗を評価した。評価試験用セルは、以下のようにして構築した。
<負極シートの作製>
負極活物質としての黒鉛粉末と、バインダとしてのポリイミド系樹脂粉末と、溶媒としてのイオン交換水とをフードプロセッサに投入して攪拌することにより負極湿潤造粒粒子を造粒した。この負極湿潤造粒粒子の粉体を図4に示す粉体ロールプレス機を用いてプレスして長尺シート状の銅箔(負極集電体)上に転写することにより、負極集電体上に負極活物質層が設けられた負極シートを作製した。
<評価試験用セルの構築>
正極シートを略矩形に切り出して評価試験用セルの正極を得た。また、負極シートを略矩形に切り出して評価試験用セルの負極を得た。上記正極と上記負極とを、互いの活物質層が対向するようにセパレータを挟んで積層し、電解液とともにラミネートフィルム(外装部材)に収容した。評価試験用セルのセパレータには、ポリエチレン(PE)の両面をポリプロピレン(PP)で挟んだ形態の3層構造(PP/PE/PP)の微多孔質シートを用いた。このようにして評価試験用セル(ラミネートセル)を構築した。
<IV抵抗の測定>
評価試験用セルについて出力特性を評価するため、ここではIV抵抗を測定した。IV抵抗は、次の手順によって算出した。
手順1:SOC調整にて、SOC60%の充電状態にする。
手順2:手順1の後、0.8Cの電流値で放電して10秒間放電処理する。
ここでは、手順2で測定された測定電流値を、手順2での初期電圧値から10秒時点での電圧値を引いた値である電圧ドロップ値ΔVで除算する。その値をIV抵抗値として求めた。結果を表1の該当欄に示す。
Figure 0006380808
表1に示すように、比較例1、2では、PVdFを溶媒に溶かした溶液状(PVdF溶液)の形態で添加している。このうち比較例1では、湿潤造粒粒子(固形分)中のPVdFの含有量が1.5%となるようにPVdF溶液の添加量を調整したため、湿潤造粒粒子の固形分率を77%までしか上げられず、正極活物質層の成膜密度が1.9g/cmと低かった。乾燥後のプレスレスを実現するためには、成膜密度2.2g/cm以上が望ましい。一方、比較例2では、湿潤造粒粒子(固形分)中のPVdFの含有量が1%となるようにPVdF溶液の添加量を調整したため、湿潤造粒粒子の固形分率は78%まで上げられたものの、電極の剥離強度は1N/m未満となり、耐久性に欠けていた。さらに、比較例1、2はいずれも高価な市販のPVdF溶液を使用したため、材料コストが割高であった。
これに対して、実施例1〜5および比較例3〜6では、PVdFを粉末状の形態で添加している。このうち比較例3〜6では、平均粒径が50μm以上のPVdF粉末を添加し、かつ湿潤造粒粒子を78%の高固形分率としたため、造粒時にPVdF粉末が溶媒に溶けきらず、粉のまま残留した。そのため、PVdFがバインダとしての機能を十分に発揮できず、ロールプレス時に塗膜に破断が生じ、正極活物質層を成膜できなかった。一方、実施例1〜5では、平均粒径が49μm以下のPVdF粉末を添加したため、湿潤造粒粒子を78%〜85%の高固形分率とした場合でも、造粒時にPVdF粉末を溶媒に溶かすことができ、成膜性が良好であった。また、実施例1〜5は、成膜密度、剥離強度およびIV抵抗の何れについても良好な結果が得られた。この結果から、湿潤造粒粒子を78%〜85%の高固形分率とした場合でも、平均粒径が49μm以下のPVdF粉末を用いることで、PVdF粉末の溶解性が改善され、高性能な電極ならびに電池を製造し得ることが確認された。
以上、本発明の一実施形態に係る二次電池用電極の製造方法を説明したが、本発明に係る電極製造方法は、上述した何れの実施形態にも限定されず、種々の変更が可能である。
例えば、上述した実施形態では、攪拌造粒法(回転運動を付与することによって球形の粒子に凝集させる方法)により湿潤造粒粒子を造粒する場合を例示したが、これに限定されない。例えば、流動層造粒法、転動造粒法等により湿潤造粒粒子を造粒してもよい。このような場合でも、PVdF系樹脂粉末の平均粒径を前記好適範囲とすることで、前述した効果を得ることができる。
また、上述した実施形態では、湿潤造粒粒子をロールプレスして塗膜を形成し、かかる塗膜を集電体上に転写して活物質層を形成する場合を例示したが、活物質層の形成方法はこれに限定されない。例えば、湿潤造粒粒子を集電体上に堆積した後、プレス成形して活物質層を形成してもよい。ただし、上述した実施形態の如く、湿潤造粒粒子をロールプレスして塗膜を形成し、かかる塗膜を集電体上に転写して負極活物質層を形成した方が、生産効率および生産安定性の観点からは好ましい。
また、二次電池の種類は上述したリチウムイオン二次電池に限られず、電極体構成材料や電解質が異なる種々の内容の電池であってもよい。また、該電池の大きさおよびその他の構成についても、用途(典型的には車載用)によって適切に変更することができる。
ここで提案される製造方法によって製造された負極を備える二次電池は、活物質層の剥離が生じ難く、耐久性に優れた電極を備えている。このため、耐久性が要求される用途で好ましく用いられる。かかる用途としては、例えば、車両に搭載されるモーター用の動力源(駆動用電源)が挙げられる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、電気トラック、原動機付自転車、電動アシスト自転車、電動車いす、電気鉄道等が挙げられる。なお、かかる二次電池は、それらの複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態で使用されてもよい。
10 湿潤造粒粒子
12 活物質
14 導電材
16 バインダ
100 二次電池

Claims (5)

  1. 少なくとも活物質とバインダとを含む粉末材料に溶媒を混合して湿潤造粒粒子を造粒する造粒工程と、
    前記湿潤造粒粒子から構成された粉体をプレス成形することにより集電体上に活物質層を形成する工程と
    を包含し、
    前記バインダは、平均粒径が49μm以下のポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末からなり、
    前記湿潤造粒粒子の固形分率は、少なくとも78質量%であり、
    前記溶媒は、前記造粒工程において前記ポリフッ化ビニリデン系樹脂粉末からなるバインダを溶解させる含有量でN−メチルピロリドン(NMP)を含む、二次電池用電極の製造方法。
  2. 前記バインダの重量平均分子量が、100万以上である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記湿潤造粒粒子の固形分全体に対する前記バインダの含有量が、1質量%〜2質量%である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記造粒工程には、
    前記活物質とバインダとを粉末同士で混合して攪拌する第1攪拌処理と、
    前記第1攪拌処理の後、得られた攪拌物に前記溶媒を混合して攪拌する第2攪拌処理と
    が含まれる、請求項1〜3の何れか一つに記載の製造方法。
  5. 前記第1攪拌処理と前記第2攪拌処理とを同一の攪拌装置を用いて行う、請求項4に記
    載の製造方法。
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