JP2012145599A - 加速度スイッチ及び電子デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】加速度スイッチにおいて、加速度スイッチを小型化することおよび加速度スイッチの感度を向上することを課題とする。
【解決手段】この加速度スイッチは、第一基板と、前記第一基板に固定した支持部と、前記支持部の内部に位置し前記支持部が支持する梁と、前記梁が支持し略中心に孔部を有する質量体と、前記孔部の内部に位置し前記第一基板に固定した中心体と、を有する加速度スイッチであって、前記梁が前記質量体の外周に沿って重複していないことを特徴としている。
【選択図】図1

Description

本発明は、加速度スイッチ及び加速度スイッチを含む電子デバイスに関する。
従来からある加速度スイッチとして、質量体内部に対向電極を持ち、質量体を複数の梁で支持する無指向性の加速度スイッチについて、図19に基づき説明する。図19は従来の加速度スイッチの上面図であり、この加速度スイッチ100は、周辺部101と、4本の梁102〜105と、質量体(重り)106と、対向電極107からなり、この質量体の一端を周辺部に固定した、4本の梁で支えるように構成されている。また、加速度スイッチに印加される加速度に応じて、質量体とこの質量体内部に配置されている対向電極が接触することにより、この加速度スイッチに接続した外部装置が、振動を検出する。なお、この加速度スイッチは、ノーマリーオフかつ無指向性のスイッチとして使用でき、また、半導体製造技術を使用することにより、シリコン単結晶をベースに作製可能なため、比較的小型かつ大量生産可能な点などの様々なメリットがある。
そこで、この加速度スイッチを省電力用に、たとえば少容量のバッテリーしか内蔵できないようなポータブル機器に搭載すれば、人間の振動を検出しない時、すなわち、機器を使用しない時は動作を停止し、振動を検出した時、すなわち、機器を使用する時には、自動的に動作を開始して、無駄なバッテリーを使用しない電子デバイス(電子機器)を実現することができる。
一方、印加される加速度による振動を感知して、機器のオン、オフを行うような加速度スイッチは、どのような振動の方向にも均等に感知することが望ましいため、無指向性であることが有利となる。このため、特許文献1に示されるように、加速度により重り(質量体)の振動が偏らないように、複数の梁で重りを支えている。
このようなポータブル機器に搭載する加速度スイッチは小型化への要求が高いため、加速度スイッチの外形寸法は、より小さい方が有利となる。また、コストダウンへの要求も高く、半導体製造技術を使用し、加速度スイッチの外形寸法をより小さくして、一枚のウェハに多数の加速度スイッチを作製することがより有利となる。
意匠登録第1310053号公報
しかしながら、従来からある加速度スイッチのように重りを支える梁の数を多くすると、加速度による重りの動き、つまり変位量はより小さくなり、結果として加速度スイッチの感度が低下する。また、梁の数を多くすると、梁を配置するための面積も多く必要となり、加速度スイッチの小型化には不利となる。また、加速度スイッチを小型化すると重りも小さくなるため、高い感度を確保するためには、梁の形状をより柔軟にして、重りの変位量をより大きく確保する必要がある。
一方、加速度スイッチは、落下時の衝撃に耐えうる耐衝撃性を確保する必要もあり、外部からの衝撃に耐える梁の寸法及び形状も備える必要がある。
また、加速度スイッチは、所定の振動を受けて確実にスイッチが動作し、この加速度スイッチを含む機器を起動させる必要がある。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、小型、高感度で、耐衝撃性を確保するとともに、所定の振動を受けて確実に動作する加速度スイッチ及び加速度スイッチを含む電子デバイスを実現することである。
本発明に係る加速度スイッチは、内側に空間を備える質量体と、前記質量体を支え、加速度を受けたときに前記質量体にかかる慣性力により撓み、かつ前記質量体を取り囲むように配置される円弧状の梁と、前記梁を支持し、固定した状態で前記質量体の周囲に配置される支持部と、前記質量体の空間内に、加速度を受けたときに前記質量体との接触を検出する対向電極とを備え、前記質量体を支える梁は1本であり、前記質量体の内側面と前記対向電極の外側面との距離となる電極間隔は1μm以上、かつ20μm以下であることを特徴とする。
本発明に係る加速度スイッチによれば、電極間隔を1μm以上、かつ20μm以下の条件で形成し、加速度スイッチに必要な感度の精度を確保する。また、小型化したとしても、梁が1本のため梁の数が複数のスイッチに比較して梁の占める領域が小さくなるため、質量体の体積を確保でき、かつ梁の長さも確保できるので、質量体の変位量を大きく確保し、かつ、十分な感度を有する加速度スイッチを実現することができる。
また、前記加速度スイッチにおいて、前記梁の厚さhと前記梁の幅wは次式に基づき設定した梁を含むことを特徴とする。
Figure 2012145599
δは質量体の変位量であり、Eは材料のヤング率であり、変位量δは電極間隔に相当する1μm以上かつ20μm以下の条件を満たすものである。
この加速度スイッチによれば、梁の厚さと梁の幅の比率を変更することにより、質量体の変位量を所定の値に設定することができるため、所定の振動で確実に動作する加速度スイッチを実現することができる。
また、前記加速度スイッチにおいて、前記梁の幅wと前記梁の厚さhを次式に基づき設定した梁を含むことを特徴とする。
Figure 2012145599
δを質量体の変位量、σを質量体材料の密度、Rを梁の半径、r1を質量体の外側の半径、r2を質量体の内側の空間の半径、Hを質量体の厚さ、aを印加する加速度である。Eを梁材料のヤング率であり、νは梁材料のポアソン比であり、変位量δは電極間隔に相当する1μm以上、かつ20μm以下の条件を満たすものとする。
この加速度スイッチによれば、加速度スイッチを小型化したとしても、質量体のスペースを最大限確保しつつ、梁の幅wと梁の厚さhを最適条件に設定できるため、耐衝撃性を備え、かつ所定の振動で確実に動作する加速度スイッチを実現することができる。
また、前記加速度スイッチにおいて、前記梁の幅は4μm以上、かつ60μm以下であることを特徴とする。
この加速度スイッチによれば、加速度スイッチを小型化したとしても、梁の幅の精度を確保し、質量体のスペースを最大限確保するとともに、所定の振動で確実に動作する加速度スイッチを実現することができる。
また、前記加速度スイッチにおいて、前記梁の厚さは5μm以上、500μm以下で、かつ質量体の厚さ以下あることを特徴とする。
この加速度スイッチによれば、落下時に梁に加わる衝撃に耐えるために必要な耐衝撃性を確保するとともに、加速度スイッチを小型化したとしても、所定の振動で確実に動作する加速度スイッチを実現することができる。
また、支持部と質量体と梁と対向電極を含む加速度スイッチ本体部の外形寸法が、0.5mm以上、かつ3mm以下であることを特徴とする。
この支持部と質量体と梁と対向電極を含む加速度スイッチ本体部の外形寸法が、0.5mm以上、かつ3mm以下の加速度スイッチによれば、梁の幅および梁の厚さを設定する自由度が高く、加速度スイッチを小型化したとしても、加速度スイッチの感度を幅広く設定することが可能となる。
また、支持部と質量体と梁と対向電極を含む加速度スイッチ本体部の外形寸法が0.5mm以上、かつ1.5mm以下であり、前記梁の幅が4μm以上、かつ20μm以下であって、前記梁の厚さが5μm以上、かつ500μm以下で、かつ質量体の厚さ以下であることを特徴とする。
この支持部と質量体と梁と対向電極を含む加速度スイッチ本体部の外形寸法が0.5mm以上、かつ1.5mm以下の加速度スイッチは、外形寸法2mm程度の加速度スイッチと比較して、より小型であるため、加速度スイッチ1個当たりの生産コストを抑えることが可能となる。また、加速度スイッチを実装するためのスペースをより小さくできるため、より小型の電子デバイスに搭載することができる。
また、前記加速度スイッチにおいて、(1)梁の質量体側の一端と梁の支持部側の他端との距離が、前記対向電極と前記質量体の内面との最大距離より大きく、(2)前記質量体と前記梁の支持部側の他端との距離が、前記対向電極と前記質量体の内面との最大距離より大きく、(3)前記梁の質量体側の一端と前記支持部との距離が、前記対向電極と前記質量体の内面との最大距離より大きいことを特徴とする。
本発明に係る加速度スイッチによれば、前記加速度スイッチにおいて、質量体の内側面と対向電極の側面の間隔、つまり電極間隔より、(1)梁の質量体側の一端と梁の支持部側の他端、(2)質量体と前記梁の支持部側の他端、(3)前記梁の質量体側の一端と前記支持部の間隔を大きくすることにより、重りと対向電極が接触するより先に、質量体と梁もしくは支持部と梁もしくは梁同士が接触する現象を避けることができるため、水平方向に一定以上の振動が加わった場合でも確実に加速度スイッチで振動を検出することが可能となる。
さらに、前記加速度スイッチにおいて、第1基板と、前記質量体と前記対向電極と前記梁と前記支持部を含む第2基板と、第3基板とが積層される構成であり、前記第1基板は、外部回路と接続する接点を有し、前記支持部または前記対向電極と接続する接点とする第1の貫通電極と第2の貫通電極とを含み、前記第1基板と前記第3基板は、前記第2基板に含まれる前記支持部及び前記対向電極とに接合されていることを特徴とする
この加速度スイッチによれば、第2基板を挟み込むように第1基板及び第3基板を接合することにより、質量体、梁、対向電極を外部環境から保護することができる。さらに、第1基板を貫通する、第1及び第2の貫通電極を介して、外部の電子デバイスとの接続を確保することができるため、加速度スイッチの実装と、実装する基板を介して振動を検出する電子デバイスとの電気的接続とを容易に実現することが可能となる。
また、前記加速度スイッチにおいて、前記対向電極は、複数の電極部を含むことを特徴とする。
この加速度スイッチによれば、複数の電極部と質量体との接触の有無を外部回路で検出することにより、一定以上の振動検出のみならず、その加速度が印加する方向を検出することができるため、加速度スイッチの移動方向や加速度スイッチに対する傾き方向を検出することが可能となる。
また、本発明に係る電子デバイスにおいて、前記加速度スイッチを含み、前記加速度スイッチから出力される検出信号を検出し、前記検出信号に応じた所定の動作を行う回路と、を電子デバイスに備えることを特徴とする。
この電子デバイスによれば、小型かつ高感度で、ノーマリーオフの前記加速度スイッチを搭載することにより、振動を検出しない時、すなわち、機器を使用していない時は機器を停止しておき、振動を検出した時、すなわち、機器を使用している時のみ、自動的に電子デバイスを動作させるように制御できるため、電子デバイスの小型化と低消費電力化を低コストで実現することが可能となる。
本発明によれば、必要な耐衝撃性を確保するとともに、小型かつ高感度で、所定の振動で確実に動作する加速度スイッチ及び加速度スイッチを含む電子デバイスを実現することができる。
本発明に係る加速度スイッチの構成を示す断面図である。 図1のA−A´面に沿った加速度スイッチの縦断面図である。 本発明に係る加速度スイッチのキャップ層(第1基板)の上面図である。 本発明に係る加速度スイッチの動作を示す説明図である。 第1のシミュレーションを行う加速度スイッチの上面図である。 図5の加速度スイッチのX軸上の縦断面図である。 図5の加速度スイッチのX軸及びY軸と構造体の交点を示す図である。 第2,3のシミュレーションを行う加速度スイッチの上面図である。 第2,3のシミュレーションを行う加速度スイッチの縦断面図である。 SOIウェハを第2基板として使用した加速度スイッチの断面構成を示す説明図である。 外形寸法2mmの加速度スイッチに対する第2のシミュレーション結果を示すグラフである。 外形寸法2mmの加速度スイッチに対する第2のシミュレーション結果を示す表である。 外形寸法1mmの加速度スイッチに対する第3のシミュレーション結果を示すグラフである。 外形寸法1mmの加速度スイッチに対する第3のシミュレーション結果を示す表である。 x方向の振動方向を検出する加速度スイッチの断面図である。 図15の加速度スイッチのC−C´面に沿った加速度スイッチの縦断面図である。 図15に示す加速度スイッチの動作を示す説明図である。 x,y方向の振動方向を検出する加速度スイッチの断面図である。 従来の加速度スイッチの構成を示す上面図である。
[加速度スイッチの構成と動作]
以下、本発明を実施するための実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る、加速度スイッチ10の断面図である。なお、この断面の上下には、キャップ層となる第1基板、支持層となる第3基板が存在する。図2は、図1で示すA−A´面で切った縦断面図であり、キャップ層と支持層も含む。また、図1は図2のB−B´面で切った断面に相当する。図3は図1で省略した上部のキャップ層の上面図である。さらに、図1同様に図3のA−A´面で切った縦断面図も図2となる。
図1〜3に示すように、加速度スイッチ10は、上から、ガラスなどの絶縁材料を用いる第1基板15と、単結晶シリコンなどを用いる第2基板11と、ガラスなどの絶縁材料を用いる第3基板16により、互いに積層されるように構成されている。第2基板11は、シリコンエッチングにより、支持部11a、梁12、重り(質量体)13、対向電極14が形成されている。梁12は、一端を第2基板11の周辺に配置される支持部11aに固定され、他端を重り13に固定する。なお、梁12の支持部11a側の一端を接続部12aとし、梁の重り13側の他端を接続部12bとする。重り13は、内側に空間が形成されており、梁12の内側に配置され、その梁によって支持されている。対向電極14は、重り13の内側に形成された空間に配置され、加速度スイッチ10に、水平方向への一定以上の振動が加わった場合、重りに接触して、重りの移動を一定範囲内に規制する。なお、第2基板11の単結晶シリコンは、梁12から重り13を介して対向電極14への電気的な導通を取るため、低抵抗シリコン等を使用する。また、貫通電極17,18は、金などの導体を埋め込むことにより第1基板15を貫通するように形成され、それぞれ、一端を梁12を支持する支持部11a及び対向電極14と電気的に接続し、他端を外部回路と電気的に接続する。なお、第1基板15と第3基板16は、陽極接合などの方法により、第2基板11と接合されている。
次に、本発明に係る加速度スイッチの動作について、図4の説明図に基づき説明する。なお、図4では、重り13の動きをわかりやすくするため、重り周辺の梁やその周辺部は省略する。
まず、加速度スイッチに矢印方向に加速度が加わると、重りを除く加速度スイッチ全体は矢印方向に運動する。一方、梁で支えられた重りは、直接加速度が加わらず運動しないため、重り内部の空間に配置されている対向電極14と重り13が接触する。これにより、重り13と対向電極14との電気的導通が確保され、図1,2で示すように、梁12、支持部11a、貫通電極17とは常時、電気的に接続されているため、一定値以上の加速度が加速度スイッチ10に加わる場合に限り、重り13と対向電極14が接触し、貫通電極17と貫通電極18は電気的に接続する。
また、図1に示す重り13を一本の梁で支え、重りの外周を実質的に取り囲むように梁12を形成した加速度スイッチ10においては、重りと支持部11aとの隙間に、重りの変位量を確保する目的で梁12をできるだけ長く形成すると、必然的に梁と支持部との接続部12aと、梁と重りとの接続部12bが接近する構成となる。一方、接続部12aと接続部12bが接近しすぎると、重り13と対向電極14が接触するより先に接続部12aと接続部12bが接触することにより、水平方向に一定以上の振動が加わった場合でも加速度スイッチで振動を検出しない現象が発生する。そこで、本発明に係る加速度スイッチは、梁の支持部との一端12aと重り(質量体)の他端との間隔(距離)を、重りの内面と対向電極14との間隔(距離)以上確保することにより、一定の振動以上で重りと対向電極を確実に接触するように構成している。
また、梁12の支持部との接続部12aと重り13との隙間が狭すぎる場合にも、重りと対向電極が接触するより先に接続部12aと重り13が接触することにより、水平方向に一定以上の振動が加わった場合でも加速度スイッチで振動を検出できない現象が発生する。そこで、本発明に係る加速度スイッチは、梁の支持部側の一端と、梁の重り外側面との間隔(距離)を、重り(質量体)の内面と対向電極との間隔以上確保することにより、所定の振動以上で重りと対向電極を確実に接触するように構成している。
さらに、梁12の重り13との接続部12bと、支持部11a内側面との隙間が狭すぎる場合にも、重り13と対向電極14が接触するより先に接続部12bと支持部11aが接触することにより、水平方向に一定以上の振動が加わった場合でも加速度スイッチで振動を検出できない現象が発生する。そこで、本発明に係る加速度スイッチは、梁の支持部側の一端と、梁の重り(質量体)側の他端との距離を、重りの内面と対向電極との間隔以上確保することにより、所定の振動以上で重りと対向電極を確実に接触するように構成している。
次に、本発明の他の実施形態として、本発明に係る加速度スイッチを、電子デバイスの起動用スイッチとして使用することにより、振動を検出することが可能となる電子デバイスについて説明する。この電子デバイスは、これまで説明した加速度スイッチと接続され、加速度スイッチの貫通電極17,18を介して、加速度スイッチの開閉状態変化を検出信号として検出することにより、この電子デバイスは、所定の動作を行う。つまり、振動を検出したときに自らを起動し、振動を検出しないときに自らを停止(オフ)もしくは休止状態に維持、もしくは起動(オン)状態から停止もしくは休止状態に移行することにより、無駄なバッテリーの使用を制限するため、電子デバイスの小型化と低消費電力化を低コストで実現することができる。
[1本梁の加速度スイッチの感度等方性−第1のシミュレーション]
なお、重り中心に空間を形成し、その空間内部に対向電極を持つ加速度スイッチにおいて、平面方向の感度を均一にするためには、複数の梁で重りを支える方が偏りは少なくすることができるため、無指向性の加速度スイッチには適している。
しかし、この場合、梁の本数が多くなるために、重りの変位量は小さくなって、感度が低下する。そこで、重りを梁1本で支えた加速度スイッチの平面方向について、重りの変位量の偏りを検証し、1本梁の場合の使用の可否を検討する。1本梁で重りを支えた場合でも変位量の偏りがなければ、2本以上の梁で支持した場合と比較して、基本的に高感度であり、梁の占めるスペースも少なくできるため、加速度スイッチの小型化を実現するためには、有利となる。
そこで、図5〜7に示す加速度スイッチのモデルに基づき第1のシミュレーションを行い、1本梁の加速度スイッチの感度等方性について、検証する。具体的には、単結晶シリコンを構造体の材料として用い、重力に相当する−Z軸方向と、及び印加する振動に相当するX−Y平面方向に対して、それぞれ加速度1Gを印加する条件で、重りの変位量を計算する第1のシミュレーションを行い、重りを1本梁で支える加速度スイッチの変位量のバラツキの有無、つまり感度等方性について検証する。これは加速度スイッチを水平に置き、さらに平面方向に加速度を加えた状態に相当する。
まず、第1のシミュレーションを行う加速度スイッチの形状と条件について、以下のように設定する。この第1のシミュレーションに用いた加速度スイッチ20のモデルを図5に示す。図5は加速度スイッチ20の上面図であり、X−Y平面上にX軸、Y軸の交点を(0、0)として、モデルを作成した。図6は図5のX軸上の縦断面図である。ここでは重り23の変位量に注目したため、重り内側に配置される対向電極を省略している。また、図5は図1〜3で示した加速度スイッチのように加速度スイッチの全体ではなく、シミュレーションに必要な可動部分を含む構造体部分のみ、モデル化している。この第1のシミュレーションでは、梁厚を20及び40μmの2種類の条件で、重り23の最大変位量について計算する。このシミュレーションは、コベンターを使用して計算を行っている。
なお、図5,6で示す加速度スイッチは、重り23の外縁は2つの半円弧を合成した形としている。重り外側の円弧の左半分は下記の重り外側の半径(b1)の条件でモデル化し、重り外側の円弧の右半分は左半分の円弧の端を繋ぐ円弧として図7に示す座標でモデル化している。ただし、重り内側の空間は左右対称の真円とし、重り内側の半径(a1)の条件でモデル化している。円弧の左半分の外枠にあたる支持部21aの内径(c1)、梁の内側の半径(d1)、梁の外側の半径(e1)は下記の条件でモデル化している。また、梁幅(f1)、梁と重り外側および梁と支持部との間隔(g1)(g2)、梁厚(h1)、重りの厚さ(i1)は、下記の条件でモデル化している。なお、重りの厚さ(i1)を含めた構造体の厚みは左右均等である。
第1のシミュレーションモデルの条件(単位はμm)
重り内側の半径(a1): 100
重り外側の半径(b1): 585
外枠の内径(c1): 635
梁の内側の半径(d1): 605
梁の外形の半径(e1): 615
梁幅(f1): 10
梁と重り外側との間隔(g1): 20
梁と支持部との間隔(g2): 20
梁厚(h1): 20 及び40
重りの厚さ(i1): 350
また、円弧の条件を示すため、左右の重りの外縁、梁、外枠にあたる支持部の内縁と、X軸及びY軸との交点の座標を下記の通り示す。これらは、図7に示す左右の重りの外縁、梁、外枠の内縁とX軸及びY軸との各交点の座標である。(単位はμm)
X軸との交点x1:(635,0)
x2:(615,0)
x3:(605,0)
x4:(585,0)
x5:(−570,0)
x6:(−590,0)
x7:(―600,0)
x8:(−620,0)
Y軸との交点y1:(0,635)
y2:(0,615)
y3:(0,605)
y4:(0,585)
y5:(0,575)
y6:(0,555)
y7:(0,−585)
y8:(0,−605)
y9:(0,−615)
y10:(0,−635)
なお、第1のシミュレーションに使用する第1基板の材料である単結晶シリコンの物性値は下記のとおりである。
ヤング率E : 165GPa
ポアソン比ν : 0.30
密度σ : 2500Kg/m3
図5〜7に示す加速度スイッチの形状に基づき、重力に相当するZ軸方向と振動に相当するX軸方向に1Gの加速度を加速度スイッチに加えた場合の第1のシミュレーションの計算結果は下記の通りである。
(1a)梁厚が20μmの場合の重りの変位量
X方向の最大値:23.67μm
Y方向の最大値: 3.42μm
(1b)梁厚が40μmの場合の重りの変位量
X方向の最大値:12.17μm
Y方向の最大値: 1.87μm
また同様に図5に示す形状でZ軸方向とY軸方向に1Gの加速度を加えた第1のシミュレーション結果は下記の通りである。
(2a)梁厚が20μmの場合の重りの変位量
Y方向の最大値:23.70μm
X方向の最大値: 0.65μm
(2b)梁厚が40μmの場合の重りの変位量
Y方向の最大値:12.09μm
X方向の最大値: 0.34μm
この第1のシミュレーション結果より、次の3点の特性を得た。
(1)X,Y軸の同軸感度:X軸方向に加速度を加えた場合のX軸方向の最大変位量と、Y軸方向に加速度を加えた場合のY軸方向の最大変位量との差は0.12%程度であり、X、Y方向にほぼ同等の変位量を示す。
(2)X軸の他軸感度:X軸方向に加速度を加えた場合、傾きとしてY方向へ変位する量(他軸変位量)は、X方向の最大変位量の14%程度(梁厚が20μmの場合)、及び15%程度(梁厚が40μmの場合)である。
(3)Y軸の他軸感度:Y軸方向に加速度を加えた場合、傾きとしてX方向へ変位する量(他軸変位量)は、Y方向の最大変位量の2.7%程度(梁厚が20μmの場合)、及び2.8%程度(梁厚が40μmの場合)である。
第1のシミュレーションで得られた(1)〜(3)の特性により、加速度スイッチが円弧状の1本梁で重りを支持する構成でも、加速度印加方向の感度であるX方向とY方向の同軸感度はほぼ同等であり、加速度印加方向とは面内垂直方向の感度である他軸感度は加速度印加方向の感度である同軸感度よりはるかに少ないことが明らかである。したがって、例えば、人間の動きを振動で感知してポータブル機器のオン/オフを行うような使い方としては十分に等方的な感度を持ち、加速度が加えられた方向によって、感度が低くなったり、加えられた方向に対して面内垂直方向の感度が高くなるという現象は発生しない。したがって、加速度スイッチにおいて、1本梁で重りを支持する構成でも、十分に等方的な感度を確保できることが明らかである。なお、図5に示す加速度スイッチは、重りを支える梁の構成を一本梁、かつ一巻きとしているが、重りを支える梁の構成を二巻き、三巻き等の多重巻きとした加速度スイッチでも、等方的な感度を有することは明らかである。また、等方的な感度を損なわない程度であれば、一巻き未満の梁の構成とすることも可能である。
[加速度スイッチの梁の条件−第2のシミュレーション]
この第2のシミュレーションでは、1本梁の構成を備える加速度スイッチにおいて、最良な梁の条件について分析する。具体的には、第2のシミュレーションモデルに基づき、外形寸法2mm(角)の加速度スイッチの各条件を設定し、種々の梁幅及び梁厚条件を可変させ、種々の条件における重りの変位量を得ることにより、最良な梁の条件を分析し、加速度スイッチの最良な梁の条件を規定する。
まず、第2のシミュレーションを行う加速度スイッチ30に関する各条件について、図8,9に基づき説明する。図8は、第2のシミュレーションのモデルとなる加速度スイッチ30の上面図であり、図9は、図9の加速度スイッチの縦断面図である。この加速度スイッチ30は、シリコン基板をエッチング処理して形成された、支持部31a、梁32、重り(質量体)33、対向電極34で構成される。また、重り33の内側面と対向電極34の外側面との電極間隔を35とする。重り33は、シリコン基板の厚みをそのまま重りの厚みとすると作製が容易であり、またシリコン基板自体も厚い方が重りの変位量が多くなり、加速度スイッチの感度を高めることができる。一方、シリコン基板を厚くすると、ドライエッチング処理の制約で、加速度スイッチの各部を形成するエッチング処理時間が長くなる問題がある。このシリコン基板のエッチングには、ドライエッチングの一種であるボッシュプロセスを適用することにより、厚いシリコン基板でも短時間にエッチング処理を終了させることが可能である。しかし、シリコン基板が厚すぎる場合は、ボッシュプロセスを適用してもシリコンエッチングの処理時間が長くなるため、製造コストが上昇するとともに、エッチング可能なアスペクト比の限界から、重りの寸法、形状の制御が困難となる。したがって、シリコン基板の厚みは500μm以下であることが望ましい。今回のシミュレーションでは、シリコン基板の厚みを350μmに設定する。
また、加速度スイッチの支持部31aは、陽極接合等に使用する際に必要となる接合用の領域でもある。この領域の条件として、外形寸法2mmの加速度スイッチの場合は、接合用ののりしろを20%程度、すなわち片側200μm程度で、チップ両サイドを合計すると400μm程度の領域を確保する必要がある。したがって、重り及び重りの周囲に配置される梁の外周を含めた直径寸法は1600μm程度となる。また、梁幅を5〜10μm程度とすると、梁と重り、及び梁と支持部との隙間も確保する必要があるため、重り外側の寸法は1550μm程度となる。今回のシミュレーションでは、重りの直径寸法を1550μmに設定する。
なお、この加速度スイッチは人間が身につける、ポータブル機器の電力セーブ用のアプリケーションで使用することを前提とし、人間の動きによる加速度ないしは振動を検出した時にシステムをオンし、振動を検出しない時、すなわち、人間が静止もしくは休息している時には機器の使用を止めるような機器を想定しているので、必要とされる感度は、加速度1G前後、もしくは1G以下である。今回のシミュレーションでは、加速度1Gを加速度スイッチに印加した場合に必要な梁の形状の条件を算出する。また、加速度スイッチの使用方法として、加速度スイッチを水平に設置せずに立てて設置する場合もある。この場合は、垂直方向に重力1Gがオフセットとして加わるため1Gの感度を得るためには2Gの感度のスイッチが必要となる。
次に、第2のシミュレーションを行う加速度スイッチの感度と電極間隔について、説明する。加速度スイッチの感度は、重りの変位量に比例し、重り内側面と対向電極側面との距離である電極間隔に反比例する。仮に加速度スイッチに1Gの加速度が加わったときに重りの変位量が10μmの場合、電極間隔を10μmに設定することにより、対向電極と重りが接触して電気的に接続し、最終的に加速度スイッチに接続された電子デバイスが検出信号として検出する。この電極間隔10μmの加速度スイッチが、感度1Gの加速度スイッチとなる。また、電極間隔を5μmに設定することにより、重りは半分の変位量、すなわち半分の加速度の0.5Gでスイッチが入る。すなわち、この電極間隔5μmの加速度スイッチが、感度0.5Gの加速度スイッチとなる。このように、電極間隔は感度を決める重要な要素であり、加速度スイッチを設計する際に、想定する印加加速度に応じて、設定する。例えば、電極間隔をより短く設定することにより、加速度スイッチの感度を高めることができる。
しかしながら、電極間隔に関しては、製造面の制約がある。加速度スイッチの電極間の隙間を形成するためのシリコンエッチングプロセスとして、ボッシュプロセスを適用すると、電極間隔の精度で感度が大きく変化するため、より高精度なエッチングを行う必要がある。電極間隔をより狭く形成する場合、サイドエッチングやスキャロッピングなどの現象が、電極間隔の寸法精度に影響し、感度に影響するようになる。したがって、加速度スイッチの製造時の再現性や精度を考慮すると、電極間隔1μm程度が現実的な最小値となる。反対に、電極間隔をより広く形成すると、確実に、重りが対向電極に先に接触するためには、重りと梁及び梁と支持部との間隔をより広く確保する必要があり、この間隔が大きいと外形寸法が小さくならずコスト的に不利となる。このため、小型の加速度スイッチにおいては、電極間隔20μmが現実的な最大値となる。
また、梁の寸法に関しても、製造面の制約があり、電極間隔と同様にシリコンエッチングプロセスの制約を受ける。前記の電極間隔である隙間の作製条件と同様に、ボッシュプロセスを使用する場合、シリコン基板の厚さ:350μmの条件で、梁幅1μm程度に設定することも可能であるが、この梁に関しても、製造上の再現性や精度等の制約により、梁幅4μm程度が現実的な最小値となる。
なお、梁厚に関しては、図10に示す加速度スイッチ40の説明図で示すように、SOI層49を含むSOIウェハを第2基板41として使用すれば、この活性層の厚みをそのまま梁42の厚みとして作製できるため、製造の再現性や精度等による作製可能な寸法の制約が少なくなるとともに、一定の寸法精度も確保することもできる。ただし、加速度スイッチの落下時を想定した場合の耐衝撃性を考慮すると、梁厚を極端に薄く作製することは避ける必要があるため、5μm程度が現実的な梁厚の最小値となる。
次に、図8の上面図,図9の縦断面図に示す構造を持つ外形寸法2mmの加速度スイッチを想定した、下記条件に基づく第2のシミュレーションを行い、最良な梁の条件について分析する。なお、重りの変位量はx方向に1Gの加速度を加速度スイッチに印加した時のx方向の変位量δであり、下記の式(1)に基づき算出する。また、式(1)の条件は、梁及び重りの材料であるシリコンの物性等の条件については前記第1のシミュレーションの条件に基づき、その他の条件については、上述した2mmの加速度スイッチの重り及び梁形状、電極間隔等の各条件に基づき設定する。
外形寸法2mmの加速度スイッチの各条件(単位:μm)
重り内の半径(r1): 155
重り外形の半径(r2): 760
梁幅(w) : 可変
電極間隔(35): 限定せず
梁厚(h): 可変
重りの厚さ(H): 350
この外形寸法2mmの加速度スイッチの条件を使用し、下記の式(1)に基づく第2のシミュレーションを種々の条件下で行うことにより、加速度スイッチとして有効な重りの変位量を満たす梁幅w及び梁厚hの条件を求めた。この第2のシミュレーション結果を図11のグラフ及び図12の表に示す。
なお、下記の式(1)では、δを重りの変位量、σを重り材料の密度、πを円周率、r1を重りの外側の半径、r2を重りの内側空間の半径、Hを重りの厚さ、aを印加される加速度、Rを梁の半径、Eを梁材料のヤング率、νを梁材料のポアソン比とした。ただし、実際の重りの変位量は、実際の第2基板の材料によるヤング率のバラツキの影響を含むため、変位量δの式(1)を近似式とし、第2基板の材料及び重り及び梁の形状によって変動しない定数を除いた変位量δの式(2)を比例式とする。
Figure 2012145599
Figure 2012145599
なお、梁幅及び梁厚を調整して、電極間隔に合わせて重りの変位量を設定する場合、変位量δと梁厚h及び梁幅wについては、式(2)を更に簡略化した式(3)の比例式が成立する。
Figure 2012145599
図11のグラフは、外形寸法2mmの加速度スイッチの各条件を設定し、図9の平面方向(x方向)に、加速度aとして1G(9.8N)を加えた場合の梁厚(横軸)及び梁幅
(線種)と重りの変位量(縦軸)を示す。また、図12の表は、種々の梁厚及び梁幅条件による重りの変位量を示し、斜線部分は、電極間隔1μmの条件で、重りが対向電極に接触する条件を示す。なお電極間隔1μmの条件はシリコンエッチングプロセスで作製可能な電極間隔の下限値に対応する。
次に、上述した電極間隔及び梁幅、梁厚条件と、第2のシミュレーション結果から、外形寸法2mmの加速度スイッチに必要な条件について分析する。
最初に、シリコンエッチングプロセスで作製可能な電極間隔の下限値が1μmであるため、電極間隔の下限値を規定すると1μmとなる。また、電極間隔が広すぎる場合、重りと対向電極間の隙間の確保に加えて、重りと梁及び梁と支持部との隙間も確保する必要があることから、電極間隔の上限値を規定すると20μmとなる。この電極間隔の範囲、すなわち1μm以上、かつ20μm以下を加速度スイッチの第1条件として規定する。
また、梁幅についても、シリコンエッチングプロセスで作製可能な下限値があり、その値は4μmである。したがって、梁幅の下限値を加速度スイッチの第2条件として規定すると、4μmとなる。
また、梁厚についても、落下時の耐衝撃性を確保するための下限値が存在する。梁幅を大きく形成すると、重りの変位量を確保するために、梁厚を小さく形成する必要があるが、梁厚を小さく形成しすぎると、特に、図9に示す垂直方向(z方向)に加わる加速度への耐衝撃性を確保できない。そこで、その垂直方向の耐衝撃性を確保するための梁厚の下限値を加速度スイッチの第3条件として規定すると、5μmとなる。
さらに、外形寸法2mmの加速度スイッチにおいて、感度1G以上の加速度スイッチを実現するためには、重りの変位量を1μm以上確保する必要があり、その条件を満たす梁幅及び梁厚は、図12の表の斜線部分に対応する梁幅及び梁厚である。そこで、上述の加速度スイッチの第2条件と第3条件を含めて、加速度スイッチの第4条件として規定すると、具体的には、梁幅は4μm以上、かつ60μm以下、梁厚は5μm以上、かつ500μm以下の範囲となる。この梁厚の上限値は、上述した望ましいシリコン基板の厚み:500μm以下の条件により規定した。また、重りの変位量を確保するためには、重りの厚さより、梁厚を薄くする方が有利であるため、実際の梁厚の上限値は、重りの厚さ以下で規定する。なお、電極間隔の上限値を20μmに規定したとしても、電極間隔より梁幅を大きく形成した場合、その分、梁のスペースを確保する必要があるため、外形寸法2mmの加速度スイッチを実現する条件として、より好ましい梁幅の上限値は20μm以下である。
[加速度スイッチの梁の条件−第3のシミュレーション]
次に、図8,9に示す構造を持ち、より小型の加速度スイッチを想定した、第3のシミュレーションを行い、最良の梁の条件について、分析する。具体的には、外形寸法1mm(角)の加速度スイッチの条件を設定し、種々の梁幅及び梁厚条件を可変させ、種々の条件における重りの変位量を得ることにより、最良な梁の条件を分析し、加速度スイッチの最良な梁の条件を規定する。
まず、図8に示す加速度スイッチにおいて、X方向に1Gの加速度を外形寸法1mmの加速度スイッチに印加した時の、x方向の重りの変位量δを上述の式(1)に基づき算出する。なお、この第3のシミュレーションにおける式(1)の条件は、梁及び重りの材料であるシリコンの物性等の条件については前記第1のシミュレーションの条件に基づき、その他の条件については下記に示す外形寸法1mmの加速度スイッチの各条件に基づく。
外形寸法1mm(角)の加速度スイッチの各条件(単位:μm)
重り内の半径(r2): 77.5
重り外形の半径(r1): 380
梁幅(w): 可変
電極間隔(35): 限定せず
梁厚(h): 可変
重りの厚さ(H): 350
この外形寸法1mmの加速度スイッチの各条件を使用し、上述の式(1)の基づく第3のシミュレーションを種々の条件下で行うことにより、加速度スイッチとして有効な重りの変位量を満たす梁幅w及び梁厚hの条件を求めた。この第3のシミュレーション結果を図13のグラフ及び図14の表に示す。
図13のグラフは、外形寸法1mmの加速度スイッチの各条件を設定し、図9の平面方向(X方向)に対して、加速度aとして1Gを加えた場合の梁厚(横軸)及び梁幅(線種)と重りの変位量(縦軸)を示す。また、図14の表は、種々の梁厚及び梁幅条件による重りの変位量を示し、斜線部分は、電極間隔1μmの条件で重りが対向電極に接触する条件を示す。なお、電極間隔1μmの条件は、シリコンエッチングプロセスで作製可能な電極間隔の下限値に対応する。
次に、上述した電極間隔、梁幅及び梁厚条件と、第3のシミュレーション結果から、外形寸法1mmの加速度スイッチに必要な条件について分析する。
上述したように、シリコンエッチングプロセスで作製可能な電極間隔の下限値が1μmであるため、電極間隔の下限値を規定すると、1μmとなる。また、電極間隔が広すぎる場合、重りと対向電極間の隙間のみならず、重りと梁及び梁と支持部との隙間も確保する必要があることから、電極間隔の上限値を規定すると20μmとなる。この電極間隔について、1μm以上、かつ20μm以下の範囲を加速度スイッチの第1条件として規定する。
また、上述したように、梁幅について、シリコンエッチングプロセスで作製可能な梁幅の下限値である4μmを加速度スイッチの第2条件として規定する。
また、上述したように、梁厚について、落下時の耐衝撃性を確保するために必要な梁厚の下限値である5μmを加速度スイッチの第3条件として規定する。
さらに、外形寸法1mmの加速度スイッチにおいて、感度1G以上の加速度スイッチを実現するためには、重りの変位量を1μm以上確保する必要があり、その条件を満たす梁幅及び梁厚は、図14の表の斜線部分に対応する梁幅及び梁厚である。そこで、上述の加速度スイッチの第2条件と第3条件を含めて、加速度スイッチの第5条件として規定すると、具体的には、梁幅は4μm以上、かつ20μm以下の範囲であり、梁厚は5μm以上、かつ500μm以下の範囲となる。この梁厚の上限値は、上述した望ましいシリコン基板の厚み:500μm以下の条件により規定した。また、重りの変位量を確保するためには、重りの厚さより、梁厚を薄くする方が有利であるため、実際の梁厚の上限値は、重りの厚さ以下で規定する。
この本発明の他の実施形態について、図15〜17に基づき説明する。図15は、複数の電極に分割し、複数方向の振動を検出するようにした加速度スイッチ50の断面図である。なお、この断面の上下には、キャップ層となる第1基板55、支持層となる第3基板56が存在する。図16は、図15で示す加速度スイッチをA−A´面で切った縦断面図であり、図16では第1基板55と第3基板56も含む。また、図15は、図16のB−B´面で切った断面図に相当する。この加速度スイッチ50と図1で示した加速度スイッチ10を比較すると、支持部51a、梁52、重り(質量体)53については、同様の構成であるが、加速度スイッチの振動検出方向に合わせ、重りの内側面に沿って配列された複数の電極部54a,54bからなる対向電極群54を含み、それぞれに第2の貫通電極に対応する第2の貫通電極群58の貫通電極部58a,58bを含み、対向電極群54と貫通電極群を含む第1基板55を有する点が異なる。
次に、加速度スイッチ50の動作について、図17の説明図に基づき説明する。まず、加速度スイッチに矢印方向Px1の加速度が加わると、重りを除く加速度スイッチ全体は矢印方向Px1に運動する。一方、梁で支えられた重りは、直接加速度が加わらず運動しないため、重り内部の空間に配置されている電極部54aと重り53が接触する。これにより、重り53と電極部54aとの電気的導通が確保され、図15及び図16で示すように、第1の貫通電極57と第1の貫通電極部58aは電気的に接続する。一方、重り53と電極部54bが接触しないため、第1の貫通電極と貫通電極部58bは電気的に接続しない。
また、図17に示す加速度スイッチに矢印方向Px1とは逆方向となる、矢印方向Px2に加速度が加わると、重り53を除く加速度スイッチ全体は矢印方向Px2に運動することにより、電極部54bと重り53が接触する。これにより、重り53と電極部54bとの電気的導通が確保され、貫通電極57と貫通電極部58bは電気的に接続する。一方、重り53と電極部54aが接触しないため、第1の貫通電極57と貫通電極部58aは電気的に接続しない。
したがって、加速度スイッチ50の第1の貫通電極57及び第2の貫通電極群58の貫通電極部58a,58bを外部回路に接続し、第1の貫通電極57、貫通電極部58a、または第1の貫通電極57、貫通電極部58b間の導通を外部回路にて検出することにより、一定値以上の振動検出のみならず、振動方向を検出することができ、加速度スイッチに対する振動方向や傾き方向を検出することが可能となる。
さらに、細かく振動方向を検出する場合には、重りの内側面と接触し、径方向に分割され、周方向に配列された複数の電極部を必要な数だけ備えることで、その振動方向を検出することができる。例えば、四方向の加速度の方向を検出する場合、図18の加速度スイッチ60に示すように、振動検出方向に応じて、重りの内側面に沿って周方向に配列された電極部64a〜64dを備える対向電極群64を、加速度スイッチ10の対向電極14と置き換え、さらに、各々の電極面と接続する第2の貫通電極群を含む第1基板(図示しない)と置き換える構成にするとよい。
なお、本発明の技術範囲は前記実施の形態を限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でバリエーションを持たせることが可能である。
特に、本発明の技術範囲は加速度スイッチの外形寸法を2mm角及び1mm角に限定したり、加速度スイッチの感度を1Gに限定したりするものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、加速度スイッチのサイズ、及び加速度スイッチを設計する際に想定する感度等に応じて種々の変更を加えることも可能である。
10,20,30,40,50,60 加速度スイッチ
11,21,31,41,51 第2基板
12,22,32,42,52 梁
13,23,33,53 重り
14,34 対向電極
15,55 第1基板
16,56 第3基板
17,57 第2の貫通電極(支持部側)
18,58 第2の貫通電極(対向電極側)
100 従来の加速度スイッチ

Claims (5)

  1. 第一基板と、前記第一基板に固定した支持部と、前記支持部の内部に位置し前記支持部が支持する梁と、前記梁が支持し略中心に孔部を有する質量体と、前記孔部の内部に位置し前記第一基板に固定した中心体と、前記第一基板と反対側で前記支持部と前記中心体に固定した第二基板と、を有する加速度スイッチであって、
    前記梁が前記質量体の外周に沿って重複していないことを特徴とする加速度スイッチ。
  2. 前記第一基板または前記第二基板は、外部回路と前記支持部または前記中心体とを電気的に接続する第一貫通電極と第二貫通電極とを有することを特徴とする請求項1に記載の加速度スイッチ。
  3. 前記質量体が円筒形状であり、前記梁が前記質量体と同心円の形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の加速度スイッチ。
  4. 前記支持部、前記質量体および前記中心体がSOI層を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の加速度スイッチ。
  5. 請求項1乃至4のいずれか一項に記載の前記加速度スイッチを有し、
    前記加速度スイッチから出力される検出信号を検出し、前記検出信号に応じた所定の動作を行う回路と、を備える電子デバイス。
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