JP2012145378A - 放射性物質付着抑制方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】原子炉の金属材料がクロムの含有量が非常に少ない金属材料である場合でも金属材料の表面に形成される酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを抑制する放射性物質付着抑制方法を提供すること。
【解決手段】本発明の放射性物質付着抑制方法は、軽水冷却型の原子炉を有する原子力発電プラントを構成するとともに冷却水に接液する金属材料の表面に、この金属材料の主成分である金属元素の酸化物を含む酸化皮膜が形成される場合に、この酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを抑制する放射性物質付着抑制方法において、前記金属材料の材質は、Cr含有量が1質量%以下の鉄合金であり、前記金属材料またはこの金属材料の酸化皮膜の表面に、前記冷却水中の前記金属材料の腐食電位を低下させる物質を付着させる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、原子力発電プラントで使用される材料表面に形成される酸化皮膜中への放射性物質の付着抑制方法に関する。
原子炉のうち軽水を冷却材として用いる軽水炉では、定期検査作業や予防保全工事等の作業の際に、作業員の放射線被ばく線量を低減する対策が重要になっている。被ばく線量低減のためには、冷却材である冷却水が接液する配管等の金属材料の表面に形成された酸化皮膜中への放射性物質の付着を抑制することにより、放射線の線量率を低減する必要がある。
従来、放射線の線量率の低減対策方法としては、金属材料の表面処理方法や冷却水の水質制御方法が提案されている。また、金属材料の表面処理方法としては、金属材料表面に放射性物質の付着を抑制する酸化皮膜を形成する表面改質方法が知られている。
放射線の線量率の低減対策方法のうち、金属材料表面に積極的に酸化皮膜を形成する表面改質方法としては、たとえば、特許文献1(特開2004−294393号公報)に、金属材料表面に熱水や水蒸気を接触させて酸化皮膜を形成する方法、特許文献2(特開2002−236191号公報)に、金属材料表面に酸素またはオゾンを含む気体を接触させて酸化皮膜を形成する方法、および特許文献3(特開2006−38483号公報)に、金属材料表面に鉄(II)イオンを吸着させ酸化してフェライト皮膜を成膜する方法、が開示されている。
また、放射線の線量率の低減対策方法のうち、冷却水の水質制御方法としては、たとえば、特許文献4(特開2005−30814号公報)、特許文献5(特開2001−516061号公報)、および特許文献6(特表2002−542458号公報)に、炉水中に亜鉛を注入する方法が開示されている。
さらに、放射線の線量率の低減対策方法のうち、前記金属材料表面に酸化皮膜を形成する表面改質方法に類似する方法としては、たとえば、特許文献7(特開2006−16522号公報)に、鉄鋼部材表面にFe等のP型半導体の性質を持つ酸化物を含む耐食性の皮膜を形成し、その上にTiO等のN型半導体の性質を持つ触媒物質を付着させることにより、ステンレス鋼やニッケル基合金の、応力腐食割れを抑制する方法、特許文献8(特開2005−195346号公報)に、原子炉構造材の表面にTiO等の原子炉内で励起電流を生じる物質を付着させるとともに、原子炉冷却水中に水素を注入する腐食抑制方法、が開示されている。
特開2004−294393号公報 特開2002−236191号公報 特開2006−38483号公報 特開2005−30814号公報 特開2001−516061号公報 特表2002−542458号公報 特開2006−16522号公報 特開2005−195346号公報
日本原子力学会編、「原子炉水化学ハンドブック」、コロナ社、2000年12月27日、第32頁、第144頁
特許文献1、2および3等に記載される方法は、運転中の原子炉とは別に用意された取替え用の配管や除染処理後の配管等の、酸化皮膜が形成されてない金属が露出した金属材料については、初期腐食にともなう金属材料中への放射性物質の取り込み量を抑制することができるため有用である。
しかし、たとえば原子炉の運転中に金属材料の表面に酸化皮膜が形成された場合には、特許文献1、2および3等に記載される方法では、この酸化皮膜中に放射性物質が取り込まれることを充分に抑制することができない。このため、特許文献1、2および3等に記載される方法には、時間と共に酸化皮膜中への放射性物質の取り込み量が増加するという課題がある。
また、特許文献4および5等に記載される炉水中に亜鉛を注入する方法は、金属材料がクロムを含むステンレス鋼である場合は酸化皮膜中へのコバルト60等の放射性物質の取り込みを抑制できて有用であるが、金属材料がクロムの含有量が非常に少ない炭素鋼等の金属材料である場合は酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを充分に抑制できないおそれがある。
すなわち、非特許文献1(原子炉水化学ハンドブック)には、炉水中に亜鉛を注入することによりステンレス鋼からなる配管中へのコバルト等の放射性物質の取り込みが抑制されるメカニズムとして、ステンレス鋼の表面に形成される酸化皮膜中の酸化クロムの部分に亜鉛が取り込まれることにより、酸化皮膜中への放射性物質の取り込みが抑制されると記載されている。このため、クロムの含有量が非常に少ない炭素鋼等の金属材料の場合には、この酸化皮膜中への放射性物質の取り込みのメカニズムが当てはまらないからである。
このように、従来、原子炉の金属材料がクロムの含有量が非常に少ない金属材料である場合において、金属材料の表面に形成される酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを抑制する技術が望まれていた。
本発明は上記課題を解決するものであり、原子炉の金属材料がクロムの含有量が非常に少ない金属材料である場合でも、金属材料の表面に形成される酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを抑制する放射性物質付着抑制方法を提供することを目的とする。
本発明は、クロムの含有量が非常に少ない炭素鋼等の金属材料の表面に形成される酸化皮膜において、酸化皮膜を化学的に不安定なものにすれば、酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを抑制することができることを見出してなされたものである。
炭素鋼等の金属材料の表面に形成される酸化皮膜を化学的に不安定なものにすることにより、酸化皮膜中への放射性物質の取り込みが抑制されるメカニズムは以下のとおりであると推測される。
図6は、非特許文献1に記載されている、290℃におけるFe−HO系の電位−pH図である。非特許文献1には、高温水中の鉄が腐食電位とpHとに応じてFe、Fe等の様々な形態を取ることが記載されている。
図6によれば、中性条件において、鉄の腐食電位が比較的高いときは鉄の酸化物は領域Aに示される化学的に安定で溶解しにくいヘマタイト(Fe)であるが、腐食電位が低くなると鉄の酸化物は領域Bに示される化学的に不安定で溶解しやすいマグネタイト(Fe)になることが分かる。
このため、鉄の腐食電位を卑側に制御すると、鉄材料の表面に形成されている酸化皮膜をヘマタイトからマグネタイトに変化させて溶解させるとともに、鉄材料の表面でのマグネタイトの新たな発生、成長を抑制することにより、酸化皮膜へのコバルト等の放射性物質の取り込みおよび滞留を抑制することができると考えられる。
図6は、純粋な鉄を用いた場合における高温水中の電位−pH図であるが、本発明は、純粋な鉄に加えて炭素鋼等のクロムの含有量が非常に少ない金属材料にも応用しようとするものである。
なお、金属材料がステンレス鋼である場合は、ステンレス鋼が合金元素としてクロムを含み、ステンレス鋼の表面に形成される酸化皮膜は不動態化して化学的に安定になる。このため、ステンレス鋼の表面に形成される酸化皮膜中への放射性物質の取り込み抑制は、本発明の酸化皮膜中への放射性物質の取り込み抑制とはメカニズムが異なるものと思料される。
本発明の放射性物質付着抑制方法は、上記課題を解決するためのものであり、軽水冷却型の原子炉を有する原子力発電プラントを構成するとともに冷却水に接液する金属材料の表面に、この金属材料の主成分である金属元素の酸化物を含む酸化皮膜が形成される場合に、この酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを抑制する放射性物質付着抑制方法において、前記金属材料の材質は、Cr含有量が1質量%以下の鉄合金であり、前記金属材料またはこの金属材料の酸化皮膜の表面に、前記冷却水中の前記金属材料の腐食電位を低下させる物質を付着させることを特徴とする。
本発明の放射性物質付着抑制方法によれば、原子炉の金属材料がクロムの含有量が非常に少ない金属材料である場合でも金属材料の表面に形成される酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを抑制することができる。
本発明に係る放射性物質付着抑制方法が用いられる原子力発電プラントの一例を示す概略構成図。 (A)および(B)は各々従来技術において酸化皮膜が形成された炭素鋼製配管への炉水(冷却水)の接液直後および長時間経過後の状態変化を示す断面図。 (A)および(B)は各々従来技術において酸化皮膜が形成されていない炭素鋼製配管への炉水(冷却水)の接液直後および長時間経過後の状態変化を示す断面図。 (A)および(B)は各々本発明に係る放射性物質付着抑制方法を用いて図2に示す酸化皮膜の表面に二酸化チタンTiOをさらに付着させた場合の炉水(冷却水)の接液直後および長時間経過後の状態変化を示す断面図。 (A)および(B)は各々本発明に係る放射性物質付着抑制方法を用いて図3に示す炭素鋼製配管の表面に二酸化チタンTiOをさらに付着させた場合の炉水(冷却水)の接液直後および長時間経過後の状態変化を示す断面図。 290℃におけるFe−HO系の電位−pH図。
以下、図面を参照して、本発明に係る放射性物質付着抑制方法について説明する。
[原子力発電プラント]
図1は、本発明に係る放射性物質付着抑制方法が用いられる原子力発電プラントの一例を示す概略構成図である。
図1に示す原子力発電プラント1は、沸騰水型の原子力発電プラントであり、軽水冷却型の原子炉11と、給水系20と、再循環系30A、30Bと、残留熱除去系40と、冷却水浄化系50とを備える。
(給水系)
給水系20は、一方端が原子炉11に接続された給水系配管21と、給水系配管21中の液体、たとえば冷却水を送液する給水ポンプ25とを備える。冷却水としては、たとえば純水が用いられる。給水系20は、原子炉11に冷却水を供給する。
給水系20の給水系配管21には、給水系配管21中の液体に、冷却水中の金属材料の腐食電位を低下させる物質を供給する注入点27が設けられる。冷却水中の金属材料の腐食電位を低下させる物質については、後述する。
(再循環系)
再循環系30Aは、一方端と他方端とが原子炉11にそれぞれ接続された再循環系配管31Aと、再循環系配管31A中の液体、たとえば冷却水を送液する再循環ポンプ35Aとを備える。再循環系30Bは、一方端と他方端とが原子炉11にそれぞれ接続された再循環系配管31Bと、再循環系配管31B中の液体、たとえば冷却水を送液する再循環ポンプ35Bとを備える。再循環系30Aの再循環系配管31Aの途中には、残留熱除去系40の残留熱除去系配管41に分岐する分岐点38が設けられている。
再循環系30A、30Bは、それぞれが原子炉11との間で冷却水を循環する。また、再循環系30Aは、残留熱除去系40および冷却水浄化系50に冷却水を供給することができるようになっている。
再循環系30Aの再循環系配管31Aには、再循環系配管31A中の液体に、冷却水中の金属材料の腐食電位を低下させる物質を供給する注入点37が設けられる。
(残留熱除去系)
残留熱除去系40は、一方端が再循環系30Aの再循環系配管31Aの分岐点38に接続されるとともに他方端が原子炉11に接続された残留熱除去系配管41と、残留熱除去系配管41中の液体、たとえば冷却水を送液する残留熱除去系ポンプ45と、残留熱除去系配管41の途中に設けられた熱交換器42とを備える。
残留熱除去系40の残留熱除去系配管41には、残留熱除去系配管41中の液体に、冷却水中の金属材料の腐食電位を低下させる物質を供給する注入点47が設けられる。
(冷却水浄化系)
冷却水浄化系50は、一方端が残留熱除去系40の残留熱除去系配管41の分岐点48に接続されるとともに他方端が給水系20の給水系配管21の合流点28に接続された冷却水浄化系配管51と、冷却水浄化系配管51の途中にそれぞれ設けられた熱交換器52および53と、冷却水浄化系配管51中の液体、たとえば冷却水を送液する冷却水浄化系ポンプ55と、冷却水浄化系配管51中の液体をろ過・脱塩するろ過脱塩器56とを備える。
冷却水浄化系50の冷却水浄化系配管51には、冷却水浄化系配管51中の液体に、冷却水中の金属材料の腐食電位を低下させる物質を供給する注入点57が設けられる。
(金属材料)
上記の原子力発電プラント1を構成する、原子炉11、給水系20、再循環系30Aおよび30B、残留熱除去系40、ならびに冷却水浄化系50を構成する部材のうち、冷却水に接液する部分は、通常、金属材料で形成される。この原子力発電プラント1を構成する金属材料の材質としては、一般的には、炭素鋼等のCr含有量が1質量%以下の鉄合金や、ステンレス鋼等のCr含有量が1質量%を超える鉄合金等が用いられる。以下、Cr含有量が1質量%以下の鉄合金を、低Cr鉄合金という。また、Cr含有量が1質量%を超える鉄合金を、高Cr鉄合金という。
なお、原子力発電プラント1等の原子力発電プラントにおいて用いられる、本発明に係る放射性物質付着抑制方法は、金属材料の材質としてCr含有量が1質量%以下の鉄合金(低Cr鉄合金)について用いられる方法である。本発明に係る放射性物質付着抑制方法における金属材料の材質については、本発明に係る放射性物質付着抑制方法の説明の項において後述する。
炭素鋼等の低Cr鉄合金は、ステンレス鋼等の高Cr鉄合金に比べて、Cr含有量が低いために純粋な鉄に近い組成になっている。
このため、原子力発電プラント1の運転中において、低Cr鉄合金が、原子力発電プラント1の運転中の温度の冷却水、すなわち290℃程度の冷却水に接液すると、低Cr鉄合金の電位−pH図は、図6とほぼ同様になる。
すなわち、中性条件において、低Cr鉄合金の腐食電位が比較的高いときは低Cr鉄合金のうち冷却水に接液する部分は領域Aに示される化学的に安定で溶解しにくいヘマタイト(Fe)になり、低Cr鉄合金の腐食電位が低いときは低Cr鉄合金のうち冷却水に接液する部分は領域Bに示される化学的に不安定で溶解しやすいマグネタイト(Fe)になる。
原子力発電プラント1の通常の運転中においては、冷却水の条件は、図6における鉄の腐食電位が比較的高い場合に相当する。
このため、本発明に係る放射性物質付着抑制方法を用いない従来技術を用いた場合の、原子力発電プラント1の通常の運転中において、金属材料を構成する低Cr鉄合金が290℃程度の冷却水に接液すると、低Cr鉄合金の表面には、通常、化学的に安定で溶解しにくいヘマタイト(Fe)を主成分とする酸化皮膜が形成される。
一方、沸騰水型の原子炉の冷却水には、通常、コバルト60等の放射性物質が含有されている。このため、低Cr鉄合金の表面に形成されたヘマタイト(Fe)を主成分とする酸化皮膜が冷却水に接液すると、冷却水中のコバルト60等の放射性物質が酸化皮膜中に取り込まれる。すなわち、金属材料の表面に形成された酸化皮膜は、放射性物質を含んだものになる。
この酸化皮膜中に冷却水中の放射性物質が取り込まれる作用を、図面を参照して説明する。
図2は、従来技術において酸化皮膜が形成された炭素鋼製配管への炉水(冷却水)の接液直後および長時間経過後の状態変化を示す断面図である。このうち、図2(A)は、炉水の接液直後の状態を示し、図2(B)は、炉水の接液から長時間経過後の状態を示す。
図2(A)に示されるように、従来技術において、原子力発電プラント1中に冷却水が存在する場合、表面にヘマタイト(Fe)を主成分とする酸化皮膜72が形成された炭素鋼製配管71の酸化皮膜72は、放射性物質であるコバルト60粒子74を含む290℃程度の冷却水75に接液している。
この炭素鋼製配管71が酸化皮膜72側で冷却水75に接液する状態が長時間続くと、炭素鋼製配管71の酸化が進行して酸化皮膜72の厚さが増加するとともに、冷却水75中のコバルト60粒子74が酸化皮膜72中に取り込まれる。
このように、冷却水75に長時間接液した、酸化皮膜72を有する炭素鋼製配管71は、図2(B)に示されるように、コバルト60粒子74が含まれた厚い酸化皮膜72が表面に形成された炭素鋼製配管71になる。
図2では、原子力発電プラント1の金属材料が、酸化皮膜が形成された炭素鋼製配管である場合の炉水(冷却水)への接液直後および長時間経過後の状態変化について説明した。しかし、原子力発電プラント1の金属材料は、化学除染等で酸化皮膜が除去されることにより、炉水(冷却水)への接液当初には、表面に酸化皮膜が形成されていない炭素鋼製配管である場合もある。
この表面に酸化皮膜が形成されていない炭素鋼製配管が炉水(冷却水)に接液した場合において、炭素鋼製配管の表面に形成された酸化皮膜中に冷却水中の放射性物質が取り込まれる作用を、図面を参照して説明する。
図3は、従来技術において酸化皮膜が形成されていない炭素鋼製配管への炉水(冷却水)の接液直後および長時間経過後の状態変化を示す断面図である。このうち、図3(A)は、炉水の接液直後の状態を示し、図3(B)は、炉水の接液から長時間経過後の状態を示す。
図3(A)に示されるように、従来技術において、原子力発電プラント1中に冷却水が存在する場合、化学除染等により表面に酸化皮膜72が形成されていない炭素鋼製配管71は、放射性物質であるコバルト60粒子74を含む290℃程度の冷却水75に接液している。
この炭素鋼製配管71が冷却水75に接液する状態が長時間続くと、炭素鋼製配管71の酸化が進行して炭素鋼製配管71の表面に酸化皮膜72が形成されるとともに、冷却水75中のコバルト60粒子74が酸化皮膜72中に取り込まれる。
このように、冷却水75に長時間接液した炭素鋼製配管71は、図3(B)に示されるように、コバルト60粒子74が含まれた酸化皮膜72が表面に形成された炭素鋼製配管71になる。
本発明に係る放射性物質付着抑制方法は、図2および図3に示されるような酸化皮膜72中へのコバルト60粒子74の取り込みを抑制するものである。
[放射性物質付着抑制方法]
本発明に係る放射性物質付着抑制方法は、軽水冷却型の原子炉を有する原子力発電プラントを構成するとともに冷却水に接液する金属材料の表面に、この金属材料の主成分である金属元素の酸化物を含む酸化皮膜が形成される場合に、この酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを抑制する放射性物質付着抑制方法である。
(金属材料)
本発明に係る放射性物質付着抑制方法に用いられる金属材料の材質は、Cr含有量が1質量%以下の鉄合金(低Cr鉄合金)である。低Cr鉄合金としては、たとえば炭素鋼が挙げられる。金属材料の材質が炭素鋼であると、Cr含有量が非常に少なく、炭素鋼の腐食の挙動が図6に示されるFe−HO系の電位−pH図と略同じであることから、酸化皮膜中への放射性物質の取り込みの抑制を十分に行えるため、好ましい。
なお、金属材料の材質が、ステンレス鋼等の高Cr鉄合金であると、この鉄合金の腐食の挙動が図6に示されるFe−HO系の電位−pH図と大きく異なることから、酸化皮膜中への放射性物質の取り込みの抑制が不十分になりやすいため、好ましくない。
(酸化皮膜)
本発明に係る放射性物質付着抑制方法において、酸化皮膜とは、金属材料の主成分である金属元素の酸化物を含み、金属材料の表面に形成される皮膜である。本発明に係る放射性物質付着抑制方法に用いられる金属材料の材質は低Cr鉄合金であるため、金属材料の主成分である金属元素は鉄である。このため、金属材料の主成分である金属元素の酸化物を含む酸化皮膜とは、酸化鉄を含む皮膜を意味する。
酸化鉄としては、図6の領域Aに示されるようなヘマタイト(Fe)、領域Bに示されるマグネタイト(Fe)等が挙げられる。しかし、ヘマタイト(Fe)、マグネタイト(Fe)等の酸化鉄の組成は、図6に示されるように腐食電位により変化するため、本発明に係る放射性物質付着抑制方法において酸化鉄の組成は特に限定されない。
酸化皮膜は、酸化鉄以外に、不純物や放射性物質を含んでいてもよい。この酸化皮膜に含まれる放射性物質としては、たとえば、コバルト60を含む粒子が挙げられる。
なお、本発明に係る放射性物質付着抑制方法において、冷却水中の金属材料の腐食電位を低下させる物質を付着させる対象は、金属材料または酸化皮膜の表面である。すなわち、冷却水中の金属材料の腐食電位を低下させる物質を付着させる対象は、表面に酸化皮膜が形成されていない金属材料であってもよいから、本発明に係る放射性物質付着抑制方法において、酸化皮膜は必須の要件ではない。
冷却水中の金属材料の腐食電位を低下させる物質を付着させる対象が、表面に酸化皮膜が形成されていない金属材料である場合、この金属材料は、たとえば、表面に酸化皮膜が形成された金属材料に対して、化学除染等の除染処理をすることにより得られる。
(冷却水中の金属材料の腐食電位を低下させる物質)
本発明に係る放射性物質付着抑制方法では、金属材料または酸化皮膜の表面に、冷却水中の金属材料の腐食電位を低下させる物質を付着させる。以下、冷却水中の金属材料の腐食電位を低下させる物質を、適宜、腐食電位を低下させる物質という。
本発明において、腐食電位を低下させる物質とは、低Cr鉄合金からなる金属材料を290℃の冷却水に接液させたときに、金属材料の腐食電位を低下させる物質を意味する。ここで、冷却水の温度を290℃としたのは、原子力発電プラント1の通常の運転中の冷却水の温度が290℃程度だからである。
腐食電位を低下させる物質としては、たとえば、TiO、BaTiO、Bi、ZnO、WO、SrTiO、Fe、FeTiO、KTaO、MnTiO、SnO、ZrO、CeO、In、Al、MgO、MgFe、NiFe、MnO、MoO、Nb、SnO、SiO、PbO、V、ZnFe、ZnAl、ZnCoおよびTaから選ばれる少なくとも1種が用いられる。
これらの腐食電位を低下させる物質は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
腐食電位を低下させる物質は、上記物質のうちの二酸化チタン(TiO)であると、粒子状または粉末状のものが入手容易でかつ安価であるため好ましい。
腐食電位を低下させる物質の形状は、粒子状または粉末状であると、腐食電位を低下させる物質を冷却水に注入したり、腐食電位を低下させる物質を含む溶液または懸濁液を噴霧した場合に、腐食電位を低下させる物質が金属材料または酸化皮膜の表面に付着しやすいため好ましい。
腐食電位を低下させる物質は、平均粒径が、通常1μm以下、好ましくは0.02μm〜1μm、さらに好ましくは0.02μm〜0.3μmである。
腐食電位を低下させる物質の平均粒径が1μm以下であると、腐食電位を低下させる物質が金属材料または酸化皮膜の表面に付着しやすいとともに腐食電位を低下させる物質の表面積が大きくなることにより、金属材料である低Cr鉄合金の腐食電位を低下させる効果が大きくなるため、好ましい。
腐食電位を低下させる物質の平均粒径が1μmを超えると、腐食電位を低下させる物質が金属材料または酸化皮膜の表面に付着しにくいとともに腐食電位を低下させる物質の表面積が小さくなることにより、金属材料である低Cr鉄合金の腐食電位を低下させる効果が小さくなるおそれがある。
腐食電位を低下させる物質は、金属材料または酸化皮膜の表面への付着量が、通常1μg/cm以上、好ましくは10μg/cm〜100μg/cm、さらに好ましくは40μg/cm〜60μg/cmである。
腐食電位を低下させる物質の金属材料または酸化皮膜の表面への付着量が1μg/cm以上であると、腐食電位を低下させる物質が金属材料または酸化皮膜の表面に、腐食電位を低下させる物質の表面積が十分に大きくなることにより、金属材料である低Cr鉄合金の腐食電位を低下させる効果が大きくなるため好ましい。
腐食電位を低下させる物質の金属材料または酸化皮膜の表面への付着量が1μg/cm未満であると、腐食電位を低下させる物質が金属材料または酸化皮膜の表面に、腐食電位を低下させる物質の表面積が不十分であることにより、金属材料である低Cr鉄合金の腐食電位を低下させる効果が小さくなるため好ましくない。
(腐食電位を低下させる物質を金属材料または酸化皮膜の表面に付着させる方法)
腐食電位を低下させる物質を金属材料または酸化皮膜の表面に付着させる方法としては、腐食電位を低下させる物質を含む溶液または懸濁液を金属材料または酸化皮膜の表面に噴霧することにより、金属材料または酸化皮膜の表面に腐食電位を低下させる物質を付着させる第1の方法と、腐食電位を低下させる物質を原子力発電プラント1の冷却水に注入することにより、金属材料または酸化皮膜の表面に腐食電位を低下させる物質を付着させる第2の方法とがある。
<第1の方法>
第1の方法は、腐食電位を低下させる物質を含む溶液または懸濁液を作製した後、この腐食電位を低下させる物質を含む溶液または懸濁液を金属材料または酸化皮膜の表面に噴霧することにより、金属材料または酸化皮膜の表面に腐食電位を低下させる物質を付着させる方法である。
腐食電位を低下させる物質を含む溶液または懸濁液は、たとえば、原子力発電プラント1中から取り出した冷却水または原子力発電プラント1に供給する冷却水に、腐食電位を低下させる物質を添加し、混合して溶解または分散させることにより得られる。
腐食電位を低下させる物質を含む溶液または懸濁液の金属材料または酸化皮膜の表面への噴霧方法としては、たとえば、原子炉11の定期点検中等の長期停止中において、酸化皮膜が形成されていない金属材料の表面または金属材料の表面に形成された酸化皮膜の表面のうちの冷却水に接液していない部分に噴霧する方法や、原子力発電プラント1に取り付けられる前の原子力発電プラント1の交換用部品の、酸化皮膜が形成されていない金属材料の表面または金属材料の表面に形成された酸化皮膜の表面に噴霧する方法が挙げられる。
金属材料または酸化皮膜の表面に噴霧された腐食電位を低下させる物質を含む溶液または懸濁液は、溶液または懸濁液中の水等の液体分が蒸発等で除去されることにより、腐食電位を低下させる物質になるとともに金属材料または酸化皮膜の表面に付着する。
<第2の方法>
第2の方法は、腐食電位を低下させる物質を原子力発電プラント1の冷却水に注入することにより、金属材料または酸化皮膜の表面に腐食電位を低下させる物質を付着させる方法である。
ここで、原子力発電プラント1の冷却水とは、原子力発電プラント1中に存在する冷却水と、原子力発電プラント1に供給される冷却水との両方を含む概念で用いる。
原子力発電プラント1中に存在する冷却水としては、たとえば、図1に示される、原子炉11、冷却水浄化系50、給水系20、再循環系30、または残留熱除去系40に存在する冷却水が挙げられる。
第2の方法において、冷却水に注入される腐食電位を低下させる物質は、固形分からなる腐食電位を低下させる物質自体の形態であってもよいし、第1の方法と同様に調製された腐食電位を低下させる物質を含む溶液または懸濁液の形態であってもよい。腐食電位を低下させる物質を含む溶液または懸濁液の形態であると、腐食電位を低下させる物質を、原子力発電プラント1の冷却水に注入することおよび注入量の調節が容易であるため好ましい。
腐食電位を低下させる物質の注入の場所としては、たとえば、図1に示される、冷却水浄化系50、給水系20、再循環系30、および残留熱除去系40の少なくとも1種が挙げられる。
原子力発電プラント1における腐食電位を低下させる物質の具体的な注入の場所、すなわち注入点としては、たとえば、図1に示される、冷却水浄化系50の冷却水浄化系配管51に設けられた注入点57、給水系20の給水系配管21に設けられた注入点27、再循環系30A(30)の再循環系配管31Aに設けられた注入点37、および残留熱除去系40の残留熱除去系配管41に設けられた注入点47が挙げられる。
これらの注入点57等において、図1に図示しないポンプ等を用いて、腐食電位を低下させる物質を原子力発電プラント1の冷却水に注入すると、注入された腐食電位を低下させる物質は、冷却水と共に系統全体を循環した後、原子力発電プラント1の金属材料または酸化皮膜の表面に付着する。
冷却水浄化系50の注入点57、給水系20の注入点27、再循環系30の注入点37、および残留熱除去系40の注入点47は、各系統、すなわち、冷却水浄化系50、給水系20、再循環系30、および残留熱除去系40の施設に設けられる限り、図1に示される場所以外に設けられてもよい。
たとえば、注入点37は、再循環系30Bの再循環系配管31Bに設けられていてもよいし、再循環系30Aの再循環系配管31Aおよび30Bの再循環系配管31Bの両方に設けられていてもよい。
上記腐食電位を低下させる物質の注入の場所のうち、冷却水浄化系50は、冷却水の水質管理が容易であるため好ましい。また、腐食電位を低下させる物質の注入の場所は、冷却水浄化系50のうちでも、ろ過脱塩器56と合流点28との間の冷却水浄化系配管51の部分であると、腐食電位を低下させる物質を浄化後の冷却水に注入するため、水質管理をより正確に行えるため好ましい。
第2の方法で、腐食電位を低下させる物質を原子力発電プラント1の冷却水に注入する場合、金属材料または酸化皮膜の表面への腐食電位を低下させる物質の付着を促進するため、原子力発電プラント1の稼働状況に応じて、注入時または注入後の冷却水の温度を調整することが好ましい。
原子力発電プラント1の稼働状況としては、たとえば、原子炉11の長期停止中や、原子炉11の起動時、運転中または停止時が挙げられる。ここで、長期停止とは、運転中または運転終了時の一時的な停止時ではなく、定期点検による停止等の停止時間が長い状態を意味する。
原子力発電プラント1の稼働状況が長期停止中である場合、金属材料または酸化皮膜の表面へ腐食電位を低下させる物質を付着させるときの冷却水の温度は、通常80℃〜100℃、好ましくは85℃〜95℃である。
冷却水の温度が80℃〜100℃であると、腐食電位を低下させる物質の金属材料または酸化皮膜の表面への付着性が高いため好ましい。
なお、この冷却水の温度80℃〜100℃は、金属材料または酸化皮膜の表面へ腐食電位を低下させる物質を付着させるときの温度である。このため、腐食電位を低下させる物質を冷却水に注入するときの冷却水の温度は、80℃〜100℃以外の温度、たとえば、常温や100℃を超える温度であってもよい。
たとえば、常温の腐食電位を低下させる物質を含む溶液または懸濁液を、冷却水に注入する場合でも、溶液または懸濁液の注入量を制御したり適宜加熱したりすることにより原子力発電プラント1内に存在する冷却水の温度が80℃〜100℃になっていればよい。
原子力発電プラント1の稼働状況が起動時、運転中または停止時である場合、金属材料または酸化皮膜の表面へ腐食電位を低下させる物質を付着させるときの冷却水の温度は、通常100℃〜200℃、好ましくは150℃〜200℃である。
冷却水の温度が100℃〜200℃であると、腐食電位を低下させる物質の金属材料または酸化皮膜の表面への付着性が均一になるため好ましい。
(酸化皮膜の除染処理)
本発明に係る放射性物質付着抑制方法では、必要により金属材料からの酸化皮膜の除染処理が行われる。
本発明に係る放射性物質付着抑制方法において酸化皮膜の除染処理を行う場合、金属材料の表面に形成された酸化皮膜を除染処理した後、除染処理されて露出した金属材料の表面に、腐食電位を低下させる物質を付着させる。
金属材料の表面に酸化皮膜が形成されている場合、酸化皮膜中には既に放射性物質が取り込まれていることが多い。このため、酸化皮膜の除染処理を行って金属材料から酸化皮膜を予め除去しておき、除染処理されて露出した金属材料の表面に、腐食電位を低下させる物質を付着させると、冷却水に接液した金属材料の表面に酸化皮膜が新たに形成される場合の、酸化皮膜への放射性物質の取り込みをより抑制することができるため好ましい。
除染処理の種類としては、化学除染処理、物理除染処理等のいずれも用いることができる。これらの除染処理のうち、化学除染処理は、配管の隅々まで除染が可能であるため好ましい。
また、化学除染処理は、還元溶解工程および酸化溶解工程の少なくともいずれか一方を1回以上行う除染方法であることが好ましい。
還元溶解工程としては、たとえば、還元剤としてシュウ酸を用いて、酸化皮膜を溶解する工程が挙げられる。還元溶解工程を行うと、酸化皮膜中の酸化鉄は溶解して、たとえば、鉄イオンFe2+、Fe3+等として溶出する。また、酸化皮膜が放射性物質であるコバルト60を含む場合には、酸化皮膜中のコバルト60もコバルトイオンCo2+として溶出する。
酸化溶解工程としては、たとえば、酸化剤として過マンガン酸塩やオゾンを用いて、酸化皮膜を溶解する工程が挙げられる。酸化皮膜が酸化クロムを含む場合に酸化溶解工程を行うと、酸化クロムは酸化により溶解して、二クロム酸イオンCr 2−として溶出する。
これらの還元溶解工程および酸化溶解工程の少なくともいずれか一方を1回以上行うと、金属材料の表面に形成された酸化皮膜の除染の度合いが高くなるため好ましい。
また、還元溶解工程および酸化溶解工程の両方をそれぞれ1回以上行うと、金属材料の表面に形成された酸化皮膜の除染の度合いがより高くなるため好ましい。
(作用)
本発明に係る放射性物質付着抑制方法の作用を、図面を参照して説明する。
以下、金属材料としての炭素鋼製配管71の表面に酸化皮膜72が形成されている状態(第1の状態)における作用と、金属材料としての炭素鋼製配管71の表面に酸化皮膜72が形成されていない状態(第2の状態)における作用とについて、分けて説明する。なお、第2の状態は、化学除染等の除染により酸化皮膜72が除去された場合等に生じる。
<第1の状態における作用>
第1の状態では、金属材料としての炭素鋼製配管71の表面に酸化皮膜72が形成されているため、腐食電位を低下させる物質としての二酸化チタン73は酸化皮膜72の表面に付着する。
図4は、本発明に係る放射性物質付着抑制方法を用いて図2に示す酸化皮膜の表面に二酸化チタン(TiO)をさらに付着させた場合の炉水(冷却水)の接液直後および長時間経過後の状態変化を示す断面図である。このうち、図4(A)は、炉水の接液直後の状態を示し、図4(B)は、炉水の接液から長時間経過後の状態を示す。
第1の状態において、表面に酸化皮膜72が形成された炭素鋼製配管71は、腐食電位を低下させる物質を付着させる前は、酸化皮膜72がヘマタイト(Fe)を主成分とするものになっている。
次に、腐食電位を低下させる物質を金属材料または酸化皮膜の表面に付着させる方法である上記第1の方法または第2の方法を用いて、原子力発電プラント1の炭素鋼製配管71の表面に形成されたヘマタイト(Fe)を主成分とする酸化皮膜72の表面に、腐食電位を低下させる物質としての二酸化チタン73を付着させる。
これにより、図4(A)に示されるように、酸化皮膜72の表面に、二酸化チタン73が二酸化チタン73同士離間して付着する。二酸化チタン73同士が離間して付着するため、酸化皮膜72の表面は、部分的に冷却水に接液するようになっている。
酸化皮膜72の表面に二酸化チタン73が付着した炭素鋼製配管71は、図4(A)に示されるように、原子力発電プラント1の運転中の液性が中性で290℃程度の冷却水に接液すると、付着した二酸化チタン73の作用により金属材料としての炭素鋼製配管71の腐食電位が低下する。
炭素鋼製配管71の腐食電位が低下すると、酸化皮膜72に含まれる酸化鉄は、図6に示されるように、化学的に安定で溶解しにくいヘマタイト(Fe)(領域A)から、化学的に不安定で溶解しやすいマグネタイト(Fe)(領域B)に変化する。
マグネタイト(Fe)は化学的に不安定で溶解しやすいため、酸化皮膜72は炭素鋼製配管71から剥離しやすくなる。このため、酸化皮膜72は、厚さの増加がほとんどなく薄いままであるとともに、酸化皮膜72に一旦取り込まれた放射性物質であるコバルト60粒子74も酸化皮膜72の剥離とともに酸化皮膜72から除去されやすくなる。
この結果、酸化皮膜72の表面に二酸化チタン73が付着した炭素鋼製配管71は、冷却水に長時間接液しても、図4(B)に示されるように、酸化皮膜72の厚さが薄いままであるとともに酸化皮膜72中に取り込まれるコバルト60粒子74の量も少ない。
<第2の状態における作用>
第2の状態では、金属材料としての炭素鋼製配管71の表面に酸化皮膜72が形成されていないため、腐食電位を低下させる物質としての二酸化チタン73は炭素鋼製配管71の表面に付着する。
図5は、本発明に係る放射性物質付着抑制方法を用いて図3に示す炭素鋼製配管の表面に二酸化チタンTiOをさらに付着させた場合の炉水(冷却水)の接液直後および長時間経過後の状態変化を示す断面図である。このうち、図5(A)は、炉水の接液直後の状態を示し、図5(B)は、炉水の接液から長時間経過後の状態を示す。
第2の状態において、炭素鋼製配管71は、化学除染等で酸化皮膜72が除去されることにより、表面に酸化皮膜72が形成されていないものになっている。
次に、腐食電位を低下させる物質を金属材料または酸化皮膜の表面に付着させる方法である上記第1の方法または第2の方法を用いて、原子力発電プラント1の炭素鋼製配管71の表面に、腐食電位を低下させる物質としての二酸化チタン73を付着させる。
これにより、図5(A)に示されるように、炭素鋼製配管71の表面に、二酸化チタン73が二酸化チタン73同士離間して付着する。二酸化チタン73同士が離間して付着するため、炭素鋼製配管71の表面は、部分的に冷却水に接液するようになっている。
表面に二酸化チタン73が付着した炭素鋼製配管71は、図5(A)に示されるように、原子力発電プラント1の運転中の液性が中性で290℃程度の冷却水に接液すると、付着した二酸化チタン73の作用により金属材料としての炭素鋼製配管71の腐食電位が低下する。
この腐食電位が低下した炭素鋼製配管71が冷却水に接液すると、冷却水に接液する炭素鋼製配管71の表面、および二酸化チタン73と炭素鋼製配管71との界面には、図5(B)に示されるように酸化鉄を含む酸化皮膜72が形成される。このとき、炭素鋼製配管71の腐食電位が低いため、酸化皮膜72に含まれる酸化鉄は、図6の領域Bに示されるように化学的に不安定で溶解しやすいマグネタイト(Fe)になる。
マグネタイト(Fe)は化学的に不安定で溶解しやすいため、酸化皮膜72は炭素鋼製配管71から剥離しやすくなる。このため、酸化皮膜72は、薄いままであるとともに、酸化皮膜72に一旦取り込まれた放射性物質であるコバルト60粒子74も酸化皮膜72の剥離とともに酸化皮膜72から除去されやすくなる。
この結果、表面に二酸化チタン73が付着した炭素鋼製配管71は、冷却水に長時間接液しても、図5(B)に示されるように、酸化皮膜72の厚さが薄いままであるとともに酸化皮膜72中に取り込まれるコバルト60粒子74の量も少ない。
(効果)
本発明に係る放射性物質付着抑制方法によれば、原子炉の金属材料がクロムの含有量が非常に少ない低Cr鉄合金からなる金属材料である場合でも金属材料の表面に形成される酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを抑制することができる。
なお、本発明に係る放射性物質付着抑制方法では、金属材料または酸化皮膜の表面に腐食電位を低下させる物質を付着させた後、運転中の原子炉の冷却水中にさらに水素を注入することが好ましい。
冷却水中に腐食電位を低下させる物質が存在する場合において、運転中の原子炉の冷却水中にさらに水素を注入すると、腐食電位を低下させる物質が熱で励起されて生成した正孔により、冷却水中の水素が酸化される。冷却水中の水素が酸化されると、金属材料または酸化皮膜の表面でのアノード電流が増加し、一般的に、金属材料の腐食電位が低下する。
このように、冷却水中にさらに水素を注入すると、腐食電位を低下させる物質の付着による金属材料の腐食電位の低下の効果と、水素の注入による金属材料の腐食電位の低下の効果との両方の効果が発現して、金属材料の腐食電位がより低下する。そして、金属材料の腐食電位がより低下することにより、酸化皮膜中への放射性物質の取り込みをより抑制することができる。
水素の注入の場所としては、腐食電位を低下させる物質の注入の場所と同様に、たとえば、図1に示される、冷却水浄化系50、給水系20、再循環系30、および残留熱除去系40の少なくとも1種が挙げられる。
水素の注入の場所は、腐食電位を低下させる物質の注入の場所に近接して設置してもよいし、離間して設置してもよい。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1 原子力発電プラント
11 原子炉
20 給水系
21 給水系配管
25 給水ポンプ
27 注入点
28 合流点
30、30A、30B 再循環系
31、31A、31B 再循環系配管
35、35A、35B 再循環ポンプ
37 注入点
38 分岐点
40 残留熱除去系
41 残留熱除去系配管
42 熱交換器
45 残留熱除去系ポンプ
47 注入点
50 冷却水浄化系
51 冷却水浄化系配管
52 熱交換器
53 熱交換器
55 冷却水浄化系ポンプ
56 ろ過脱塩器
57 注入点
58 分岐点
71 炭素鋼製配管(金属材料)
72 酸化皮膜
73 酸化チタン(TiO)(腐食電位を低下させる物質)
74 コバルト60粒子(放射性物質)
75 冷却水
A ヘマタイト(Fe)の領域
B マグネタイト(Fe)の領域

Claims (14)

  1. 軽水冷却型の原子炉を有する原子力発電プラントを構成するとともに冷却水に接液する金属材料の表面に、この金属材料の主成分である金属元素の酸化物を含む酸化皮膜が形成される場合に、この酸化皮膜中への放射性物質の取り込みを抑制する放射性物質付着抑制方法において、
    前記金属材料の材質は、Cr含有量が1質量%以下の鉄合金であり、
    前記金属材料またはこの金属材料の酸化皮膜の表面に、前記冷却水中の前記金属材料の腐食電位を低下させる物質を付着させることを特徴とする放射性物質付着抑制方法。
  2. 前記腐食電位を低下させる物質は、TiO、BaTiO、Bi、ZnO、WO、SrTiO、Fe、FeTiO、KTaO、MnTiO、SnO、ZrO、CeO、In、Al、MgO、MgFe、NiFe、MnO、MoO、Nb、SnO、SiO、PbO、V、ZnFe、ZnAl、ZnCoおよびTaから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の放射性物質付着抑制方法。
  3. 前記鉄合金は、炭素鋼であることを特徴とする請求項1または2に記載の放射性物質付着抑制方法。
  4. 前記放射性物質は、コバルト60を含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の放射性物質付着抑制方法。
  5. 前記腐食電位を低下させる物質を含む溶液または懸濁液を前記金属材料またはこの金属材料の酸化皮膜の表面に噴霧することにより、この金属材料または酸化皮膜の表面に前記腐食電位を低下させる物質を付着させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の放射性物質付着抑制方法。
  6. 前記原子炉の長期停止中に、前記腐食電位を低下させる物質を前記冷却水に注入することにより、前記金属材料またはこの金属材料の酸化皮膜の表面に前記腐食電位を低下させる物質を付着させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の放射性物質付着抑制方法。
  7. 前記冷却水の温度が、80℃〜100℃であることを特徴とする請求項6に記載の放射性物質付着抑制方法。
  8. 前記原子炉の起動時、運転中または停止時に、前記腐食電位を低下させる物質を前記冷却水に注入することにより、前記金属材料またはこの金属材料の酸化皮膜の表面に前記腐食電位を低下させる物質を付着させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の放射性物質付着抑制方法。
  9. 前記冷却水の温度が100℃〜200℃であることを特徴とする請求項8に記載の放射性物質付着抑制方法。
  10. 前記冷却水への前記腐食電位を低下させる物質の注入の場所が、冷却水浄化系、給水系、再循環系、および残留熱除去系の少なくとも1種であることを特徴とする請求項6または8に記載の放射性物質付着抑制方法。
  11. 前記冷却水への前記腐食電位を低下させる物質の注入の場所が、冷却水浄化系であることを特徴とする請求項6または8に記載の放射性物質付着抑制方法。
  12. 前記金属材料の表面に形成された前記酸化皮膜を除染処理した後、前記金属材料の表面に、前記腐食電位を低下させる物質を付着させることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1項に記載の放射性物質付着抑制方法。
  13. 前記除染処理は化学除染処理であり、この化学除染処理は、還元溶解工程および酸化溶解工程の少なくともいずれか一方を1回以上行う除染方法であることを特徴とする請求項12に記載の放射性物質付着抑制方法。
  14. 前記金属材料または酸化皮膜の表面に前記腐食電位を低下させる物質を付着させた後、運転中の前記原子炉の冷却水中にさらに水素を注入することを特徴とする請求項1ないし13のいずれか1項に記載の放射性物質付着抑制方法。
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