JP2012144706A - 塩化ビニル系樹脂及びその製造方法並びにインキ - Google Patents

塩化ビニル系樹脂及びその製造方法並びにインキ Download PDF

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Abstract

【解決手段】(A)塩化ビニル単量体 60〜95質量%、
(B)脂肪酸ビニル単量体 2〜15質量%、
(C)エポキシ基含有ビニル単量体 0.25〜1.5質量%、
(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体 2〜30質量%
を共重合するに際し、重合中に(A)塩化ビニル単量体及び(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体のそれぞれ一部を上記の使用量範囲内でそれぞれ追加仕込みすることを特徴とする塩化ビニル系樹脂の製造方法。
【効果】本発明によれば、熱安定性、有機溶剤への溶解性に優れ、白色顔料へ使用可能な塩化ビニル系樹脂が得られる。
【選択図】なし

Description

本発明は、インキ顔料との分散性に優れ、かつ耐久性が良好な塗膜を与える塩化ビニル系樹脂及びその製造方法並びに該塩化ビニル系樹脂を含有したインキに関する。
従来、インキには塗膜の耐久性及び発色性の向上のため、顔料との分散性に優れた水酸基を含有する塩化ビニル系樹脂を用いてきた。例えば、特開2001−271015号公報(特許文献1)の実施例3では、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂をケン化反応することによって得られた樹脂をポリエステルポリウレタン樹脂と併用している。また、特開2005−120225号公報(特許文献2)では、有機溶媒系の金属コロイドと塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の少なくとも一部を水酸基含有単量体成分にて変性した結着樹脂を用いたインキ組成物を開示しており、明細書中に塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール3元共重合体が記載されている。しかし、こういった樹脂は、樹脂自体が着色しており、熱安定性が悪く、特に白色顔料への使用には不向きであった。また、ケン化工程が加わるため、生産効率が下がるという欠点があった。
一方、特許文献1の実施例6では、塩化ビニル−酢酸ビニル−アクリル酸ヒドロキシルエチル共重合物をポリエステルポリオール樹脂と併用している。また、特許文献2では、有機溶媒系の金属コロイドと塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の少なくとも一部を水酸基含有単量体成分にて変性した結着樹脂を用いたインキ組成物を開示しており、明細書中に塩化ビニル−酢酸ビニル−ヒドロキシアルキルアクリレート3元共重合体が記載されている。更に、国際公開第2006/095611号パンフレット(特許文献3)では、導電性物質と、塩化ビニル/酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル共重合体樹脂とを含む導電性インキが開示されている。しかしながら、これらは重合開始前に原料を一括投入し、次いで重合することで得られる樹脂であり、樹脂の有機溶剤への溶解性が十分なレベルではなく、従ってインキ特性も満足できるものではなかった。
特開2001−271015号公報 特開2005−120225号公報 国際公開第2006/095611号パンフレット
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので、従来の水酸基を含有する塩化ビニル系樹脂の優れた特性を損なうことなく、熱安定性、有機溶剤への溶解性に優れ、白色顔料へ使用可能な塩化ビニル系樹脂及びその製造方法並びにインキを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、
(A)塩化ビニル単量体 60〜95質量%、
(B)脂肪酸ビニル単量体 2〜15質量%、
(C)エポキシ基含有ビニル単量体 0.25〜1.5質量%、
(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体 2〜30質量%
を共重合するに際し、重合中に(A)塩化ビニル単量体及び(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体のそれぞれ一部を上記の使用量範囲内で追加仕込みすることにより、熱安定性に優れ、有機溶剤への溶解性に優れ、白色顔料に使用可能な塩化ビニル系樹脂が得られ、従ってこの塩化ビニル系樹脂がインキの結合剤として有効であることを知見し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、下記に示す塩化ビニル系樹脂及びその製造方法並びにインキを提供する。
[1](A)塩化ビニル単量体 60〜95質量%、
(B)脂肪酸ビニル単量体 2〜15質量%、
(C)エポキシ基含有ビニル単量体 0.25〜1.5質量%、
(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体 2〜30質量%
を共重合するに際し、重合中に(A)塩化ビニル単量体及び(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体のそれぞれ一部を上記の使用量範囲内でそれぞれ追加仕込みすることを特徴とする塩化ビニル系樹脂の製造方法。
[2]更に、(C)成分であるエポキシ基含有ビニル単量体の一部を上記使用量範囲内で追加仕込みすることを特徴とする[1]記載の塩化ビニル系樹脂の製造方法。
[3]初期仕込みの(A)塩化ビニル単量体と追加仕込みの(A)塩化ビニル単量体の仕込み量比が質量比として20:80〜60:40である[1]又は[2]記載の塩化ビニル系樹脂の製造方法。
[4]初期仕込みの(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体と追加仕込みの(D)ヒドロキシ基含有ビニル単量体の仕込み量比が質量比として10:90〜40:60である[1]〜[3]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂の製造方法。
[5]追加仕込みの(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体の追加時間が、追加仕込みの(A)塩化ビニル単量体の追加時間の30〜150%である[1]〜[4]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂の製造方法。
[6]塩化ビニル系樹脂がインキの結合剤用である[1]〜[5]のいずれかに記載の塩化ビニル系樹脂の製造方法。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の製造方法により得られた塩化ビニル系樹脂。
[8][7]記載の塩化ビニル系樹脂を含有したインキ。
本発明によれば、熱安定性、有機溶剤への溶解性に優れ、白色顔料へ使用可能な塩化ビニル系樹脂が得られる。
以下、本発明について詳しく説明する。本発明の塩化ビニル系樹脂の製造方法は、(A)塩化ビニル単量体60〜95質量%、(B)脂肪酸ビニル単量体2〜15質量%、(C)エポキシ基含有ビニル単量体0.25〜1.5質量%、(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体2〜30質量%を共重合するものである。
この場合、重合中に(A),(D)成分の単量体をそれぞれ追加仕込みすることを特徴とするものであり、更に(C)成分の追加仕込みすることが推奨されるものである。
ここで、(A)塩化ビニル単量体は、塗膜に強靭性と高い表面硬度を付与するが、その量は60〜95質量%であり、70〜85質量%が好ましい。60質量%未満であると、印刷インキ塗膜の強度が低下し、95質量%を超えると、有機溶剤に対する溶解性が低下し、インキ用塗料の粘度が高くなって分散性が低下する。また、初期仕込みの塩化ビニル単量体と追加仕込みの塩化ビニル単量体の仕込み量比は質量比として20:80〜60:40であり、30:70〜50:50が好ましい。20:80より初期仕込みの塩化ビニル単量体が少ない場合は、重合初期の酢酸ビニル単量体濃度が極端に多くなり、最終的に得られた樹脂が組成不均一となる。その結果、樹脂溶解性が低下するといった不具合が生じる場合があり、60:40より初期仕込みの塩化ビニル単量体が多い場合は、重合初期の塩化ビニル単量体濃度が極端に多くなり、最終的に得られた樹脂が組成不均一となる。その結果、樹脂溶解性が低下するといった不具合が生じる場合がある。
(B)脂肪酸ビニル単量体の量は2〜15質量%であり、5〜10質量%が好ましい。2質量%未満であると、有機溶剤に対する溶解性の低下と共に印刷インキ用塗料の粘度が高くなって分散性が低下する。15質量%を超えると、塗膜の強度や耐久性が低下する。脂肪酸ビニル単量体としては、酢酸ビニル、モノクロル酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられ、酢酸ビニルが好ましい。
(C)エポキシ基含有ビニル単量体の量は0.25〜1.5質量%であり、0.4〜0.9質量%が好ましい。0.25質量%未満であると、樹脂自体の熱安定性が低下するといった不具合が生じ、1.5質量%を超えると樹脂自体の溶剤への溶解性が低下するといった不具合が生じる。エポキシ基含有ビニル単量体としては、メチルグリシジルメタクリレート、メチルグリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルフェノールグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体の量は2〜30質量%であり、5〜20質量%が好ましい。2質量%未満であると、印刷インキの発色性や耐久性、密着性の面で性能が劣化し、30質量%を超えると、ガラス転移温度が低下してブロッキング等の問題が発生する。また、初期仕込みのヒドロキシル基含有ビニル単量体と追加仕込みのヒドロキシル基含有ビニル単量体の仕込み質量比は10:90〜40:60であり、20:80〜30:70が好ましい。10:90より初期仕込みのヒドロキシル基含有ビニル単量体が少ない場合は、重合安定性が低下し、樹脂が凝集するといった不具合が生じる場合があり、40:60より初期仕込みのヒドロキシル基含有ビニル単量体が多い場合は、水溶性が強いヒドロキシル基含有モノマーのホモポリマーが多くなり、溶剤への溶解性が低下するといった不具合が生じる場合がある。ヒドロキシル基含有ビニル単量体としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセリンモノアリルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、(メタ)アリルアルコール、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられ、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましく、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが最も好ましい。
更に、(C)エポキシ基含有ビニル単量体を追加仕込みする場合は、(C)成分と(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体はそれぞれ別途に追加してもよく、混合して追加してもよい。
追加仕込みする場合には、初期仕込みと追加仕込み比は、質量比で15:85〜60:40で仕込むことが好ましい。
ここで、初期仕込みは、好ましくは重合開始前(重合温度に昇温する前)に行う。また、追加仕込みする際に、各成分(A),(C),(D)の添加時期は、所定の重合温度、具体的には重合温度が50〜80℃の範囲の所定温度になった時点で添加を開始することが好ましく、この場合該重合温度に達してから1時間以内、更に好ましくは30分以内に追加を開始することが好ましい。追加開始が遅れると、樹脂が凝集する場合がある。なお、(A)成分の追加仕込みは、好ましくは3〜12時間、更に好ましくは4〜10時間かけて行うことが好ましい。(C),(D)成分の追加仕込みは、好ましくは1〜18時間、更に好ましくは2〜10時間かけて行うことが好ましい。また、追加仕込みの(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体の追加時間は、追加仕込みの(A)塩化ビニル単量体の追加時間の30〜150%であることが好ましく、60〜110%が更に好ましい。30%を下回っても150%を超えても有機溶剤への溶解性が悪くなる場合がある。
この他に必要に応じて共重合性の単量体を使用することができ、これらには、例えばスチレン、α−メチルスチレン、アクリルニトリル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、塩化ビニリデン等が挙げられる。これらの単量体は本発明の効果を損なわない限り、全単量体の10質量%以下の範囲で使用することができる。
本発明の塩化ビニル系樹脂の製造に際しては、環状有機燐化合物を有する連鎖移動剤を使用する場合がある。この連鎖移動剤としては、ジヒドロオキサフォスファフェナンスレン系リン化合物が好ましく、使用量は単量体合計量に対して0.3〜0.6質量%であり、0.4〜0.5質量%が好ましい。0.3質量%未満では、所定濃度における塗料粘度が高くなって作業性が著しく悪くなり取り扱いが困難となる場合がある。0.6質量%を超えると、インキ塗膜が脆くなるなど物理的強度が低下し、耐久性も低下する場合がある。
本発明の塩化ビニル系樹脂は懸濁重合によって得ることが有効である。即ち、重合器内を窒素置換後にイオン交換水、懸濁剤、重合開始剤、塩化ビニル単量体の一部、脂肪族ビニル単量体全部、エポキシ基含有ビニル単量体の全部又は一部、ヒドロキシ基含有ビニル単量体の一部を圧入して窒素雰囲気下で反応温度まで昇温して反応をスタートさせ、残りの塩化ビニル単量体、ヒドロキシ基含有ビニル単量体を所定時間内に追加し、更にエポキシ基含有ビニル単量体を反応中に追加しながら懸濁重合を行う。
懸濁剤としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル部分ケン化物、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、マレイン酸−スチレン共重合体、マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体の如き合成高分子、及びデンプン、ゼラチン等の天然高分子、ポリエチレンオキサイド、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられ、中でもヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。懸濁剤の使用量は、単量体合計量に対して0.05〜0.3質量%が好ましく、1種又は2種以上使用される。
重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ブチルパーオキシネオデカネート、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチル)バレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は、単量体合計量に対して0.1〜0.3質量%が好ましい。
重合媒体としてのイオン交換水は、単量体合計量に対して50〜200質量%が好ましい。また、50質量%を超えない範囲でメタノールやイソプロピルアルコール等の水溶性のアルコールを併用することができる。
また、重合温度は、50〜80℃が好ましく、55〜75℃が更に好ましい。
本発明におけるビニル単位の平均重合度は、上記要因を適切に選定し、150〜400の範囲にすることが好ましい。
重合に際しては、以上に記した連鎖移動剤、重合開始剤、懸濁安定剤等を重合開始時に一括して重合系に添加してもよいし、重合中に分割して添加することもできる。
以上のような懸濁重合によって、本発明の塩化ビニル系樹脂が得られ、その後水性媒体から分離されて乾燥される。なお、得られた乾燥粉末の平均粒径は、好ましくは50〜300μmである。また、この塩化ビニル系樹脂のビニル単位の平均重合度は150〜400であることが好ましい。
塩化ビニル系共重合樹脂の乾燥粉末は、種々の有機溶媒に溶解し、得られた溶液からインキ等が作られる。用いられる有機溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等のプロトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤などが挙げられ、これらは単独又は2種を組み合わせて用いることができる。
上記のようにして得られた塩化ビニル系樹脂は、インキの結合剤として好適に用いられる。インキ用塗料製造時に上記樹脂を結合剤用樹脂として使用する際、必要に応じて、他の樹脂を併用してもよく、併用し得る樹脂としてはポリウレタン樹脂、ニトロセルロース、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等の重合体又は共重合体などの各樹脂が例示される。これらのうちではポリウレタン樹脂が好ましい。この場合、本発明の塩化ビニル系樹脂の配合量は、インキ中40質量%以下が好ましく、1〜25質量%の範囲が更に好ましい。なお、上記有機溶剤はインキ中に30質量%以上含まれることが好ましく、50質量%以上が更に好ましい。
本発明に使用される顔料をカラーインデックスで示すと、ピグメントホワイト4、ピグメントホワイト6、ピグメントホワイト21、ピグメントブラック7、ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、60、ピグメントグリーン7、36、ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、57:1、97、122、149、168、177、178、179、206、207、209、242、254、255、ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、95、109、110、117、120、125、128、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213、ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74等が挙げられる。顔料はインキ中に0.1〜10質量%含まれることが好ましい。
以下、本発明を具体例で説明する。なお、下記例中の部及び%はそれぞれ質量部、質量%である。
[製造例1]
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル32部、酢酸ビニル5部、グリシジルメタクリレート0.2部、ヒドロキシプロピルアクリレート3.55部、懸濁剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.1部、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを0.026部、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイドを0.25部仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、63℃に到達直後に塩化ビニル48部を6時間で、グリシジルメタクリレート0.6部、ヒドロキシプロピルアクリレート10.65部を混合したものを5.4時間で連続圧入し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。この樹脂の平均重合度、溶解性、耐熱安定性、粒度を測定し、その結果を表1に示した。なお、各樹脂の物性評価は、以下のようにして行った。
a.平均重合度
試料をニトロベンゼンに溶解し、30.0℃の雰囲気下でウベローデ粘度計にて落下に要する時間を測定し、得られた秒数を換算表にてビニル単位の重合度を計算する。
b.溶解性
塩化ビニル系共重合樹脂をメチルイソブチルケトン50部、トルエン50部の混合溶剤又は酢酸エチル100部に20%濃度で溶解し、得られた溶液をガラス管に入れ、底に書いてある文字が見えるところの数値を読む(数値が大きいほど透明性が高い)。
○:35cm以上
△:5cm以上35cm未満
×:5cm未満
c.耐熱安定性
塩化ビニル系共重合樹脂を80℃で5時間加熱後、メチルイソブチルケトン50部、トルエン50部の混合溶剤に溶解し、4段階評価した。色度は前もって1,000mLの水に溶解したK2CrO4のmg数で検量線を求めた。例えば、色差濁度計の色度20とはK2CrO420mgを1,000mLの水に溶解した溶液と同じ濃さの溶液色であることを示す。
◎:溶液色10以下
○:溶液色11〜20
△:溶液色21〜49
×:溶液色50以上
d.粒度分布
JIS K−0069により求めた28メッシュパス率で判定し、3段階評価した。
○:28メッシュパス率99.0%以上
△:28メッシュパス率90.1〜98.9%
×:28メッシュパス率90.0%以下
e.発色性
塩化ビニル系共重合樹脂を酢酸エチルに固形分20質量%となるように溶解し、その溶解液に下記顔料(A)及び(B)をそれぞれ2質量%添加後撹拌した。その後、試料をガラス板に塗布し、50℃で乾燥させた。得られた試料を色差計(NIPPON DENSHOKU社製SE2000)にて測定し、JIS Z−8729のごとく色を表示した。L*値は明るさを表し、値が大きければ明るいことになる。また、a*値は赤−緑軸を表し、値が大きければより赤いということになる。更に、b*値は黄−青軸を表し、値が大きければより黄色いということになる。例えば、赤色評価の場合、L*値、a*値が高いほうが発色性に優れることになり、白色評価の場合、L*値が高く、a*値、b*値が小さいほうがより白く、発色性が優れることになる。なお、製造例10を「1」として表記した。
(A)赤色顔料ピグメントレッド57:1
(B)白色顔料ピグメントホワイト6
[製造例2]
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル54.5部、酢酸ビニル2.5部、グリシジルメタクリレート0.37部、ヒドロキシプロピルアクリレート0.93部、懸濁剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.1部、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを0.026部、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイドを0.25部仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、63℃に到達直後に塩化ビニル39.5部を6時間で、グリシジルメタクリレート0.53部、ヒドロキシプロピルアクリレート1.67部を混合したものを2.4時間で連続圧入し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。この樹脂の平均重合度、溶解性、耐熱安定性、粒度分布、発色性を測定し、その結果を表1に示した。
[製造例3]
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル15.6部、酢酸ビニル8部、グリシジルメタクリレート0.09部、ヒドロキシプロピルアクリレート3.4部、懸濁剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.1部、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを0.026部、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイドを0.25部仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、63℃に到達直後に塩化ビニル49.4部を6時間で、グリシジルメタクリレート0.31部、ヒドロキシプロピルアクリレート23.2部を混合したものを8.4時間で連続圧入し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。この樹脂の平均重合度、溶解性、耐熱安定性、粒度分布、発色性を測定し、その結果を表1に示した。
[製造例4]
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル32部、酢酸ビニル5部、グリシジルメタクリレート0.8部、ヒドロキシプロピルアクリレート3.55部、懸濁剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.1部、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを0.026部、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイドを0.25部仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、63℃に到達直後に塩化ビニル48部を6時間で、ヒドロキシプロピルアクリレート10.65部を5.4時間で連続圧入し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。この樹脂の平均重合度、溶解性、耐熱安定性、粒度分布、発色性を測定し、その結果を表1に示した。
[製造例5]
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル80部、酢酸ビニル5部、グリシジルメタクリレート0.8部、ヒドロキシプロピルアクリレート14.2部、懸濁剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.1部、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを0.026部、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイドを0.25部仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却したところ、スケール化して塩化ビニル系共重合樹脂を得ることはできなかった。
[製造例6]
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル38.8部、酢酸ビニル1.5部、グリシジルメタクリレート0.05部、ヒドロキシプロピルアクリレート0.33部、懸濁剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.1部、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを0.026部、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイドを0.25部仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、63℃に到達後に塩化ビニル58.2部を6時間で、グリシジルメタクリレート0.15部、ヒドロキシプロピルアクリレート0.97部を混合したものを1.68時間で連続圧入し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。この樹脂の平均重合度、溶解性、耐熱安定性、粒度分布、発色性を測定し、その結果を表1に示した。
[製造例7]
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル34.2部、酢酸ビニル16部、グリシジルメタクリレート0.64部、ヒドロキシプロピルアクリレート10.2部、懸濁剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.1部、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを0.026部、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイドを0.25部仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、63℃に到達後に塩化ビニル22.8部を6時間で、グリシジルメタクリレート0.96部、ヒドロキシプロピルアクリレート15.2部を混合したものを9.3時間で連続圧入し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。この樹脂の平均重合度、溶解性、耐熱安定性、粒度分布、発色性を測定し、その結果を表1に示した。
[製造例8]
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル12部、酢酸ビニル5部、グリシジルメタクリレート0.06部、ヒドロキシプロピルアクリレート1.1部、懸濁剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.1部、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを0.026部、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイドを0.25部仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、63℃に到達後に塩化ビニル68部を6時間で、グリシジルメタクリレート0.74部、ヒドロキシプロピルアクリレート13.1部を混合したものを5.4時間で連続圧入し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。この樹脂の平均重合度、溶解性、耐熱安定性、粒度分布、発色性を測定し、その結果を表1に示した。
[製造例9]
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル52部、酢酸ビニル5部、グリシジルメタクリレート0.36部、ヒドロキシプロピルアクリレート6.4部、懸濁剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.1部、重合開始剤としてジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネートを0.026部、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイドを0.25部仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら63℃に昇温し、63℃に到達後に塩化ビニル28部を6時間で、グリシジルメタクリレート0.44部、ヒドロキシプロピルアクリレート7.8部を混合したものを5.4時間で連続圧入し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。この樹脂の平均重合度、溶解性、耐熱安定性、粒度分布、発色性を測定し、その結果を表1に示した。
[製造例10]
撹拌装置を備えたオートクレーブに、窒素置換後、脱イオン水100部、メタノール40部、塩化ビニル70.4部、酢酸ビニル29.1部、グリシジルメタクリレート0.5部、懸濁剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.035部、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイドを0.06部、ジ−3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキサイドを0.01部仕込み、窒素ガス雰囲気下に撹拌しながら74℃に昇温し、共重合反応させた。オートクレーブ内圧が0.3MPaになった時点で残圧を抜き、冷却して樹脂スラリーを取り出し、ろ過、乾燥して塩化ビニル系共重合樹脂を得た。更に、この樹脂をケン化し、塩化ビニル87.6%、酢酸ビニル0.9%、ビニルアルコール11.5%の樹脂を得た。この樹脂の平均重合度、溶解性、耐熱安定性、粒度分布、発色性を測定し、その結果を表1に示した。
[製造例11]
製造例1において、ヒドロキシプロピルアクリレートを重合前に全量配合させた以外は製造例1と同様にして、塩化ビニル樹脂を得た。その結果を表1に示した。
Figure 2012144706
L*値、a*値、b*値:製造例10を「1」として表記した。
MIBK:メチルイソブチルケトン

Claims (8)

  1. (A)塩化ビニル単量体 60〜95質量%、
    (B)脂肪酸ビニル単量体 2〜15質量%、
    (C)エポキシ基含有ビニル単量体 0.25〜1.5質量%、
    (D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体 2〜30質量%
    を共重合するに際し、重合中に(A)塩化ビニル単量体及び(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体のそれぞれ一部を上記の使用量範囲内でそれぞれ追加仕込みすることを特徴とする塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  2. 更に、(C)成分であるエポキシ基含有ビニル単量体の一部を上記使用量範囲内で追加仕込みすることを特徴とする請求項1記載の塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  3. 初期仕込みの(A)塩化ビニル単量体と追加仕込みの(A)塩化ビニル単量体の仕込み量比が質量比として20:80〜60:40である請求項1又は2記載の塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  4. 初期仕込みの(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体と追加仕込みの(D)ヒドロキシ基含有ビニル単量体の仕込み量比が質量比として10:90〜40:60である請求項1〜3のいずれか1項記載の塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  5. 追加仕込みの(D)ヒドロキシル基含有ビニル単量体の追加時間が、追加仕込みの(A)塩化ビニル単量体の追加時間の30〜150%である請求項1〜4のいずれか1項記載の塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  6. 塩化ビニル系樹脂がインキの結合剤用である請求項1〜5のいずれか1項記載の塩化ビニル系樹脂の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法により得られた塩化ビニル系樹脂。
  8. 請求項7記載の塩化ビニル系樹脂を含有したインキ。
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