JP2012127904A - タンパク質結晶化分析装置及びタンパク質結晶化分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】高感度なタンパク質結晶化分析装置を提供する。
【解決手段】
タンパク質の結晶化を分析するタンパク質結晶化分析装置Xを用いる。測定試料部3は、タンパク質結晶化溶液の入った溶液セルを固定する。この測定試料部3の溶液セルに光源1から、入射光調整部2を介して入射光を導入する。測定散乱光導入部7は、測定試料部3の溶液セルからの散乱光のみを散乱光検出部5へと導く。測定散乱光導入部7により導かれた結晶化溶液の前方小角散乱光又は後方小角散乱光は、散乱光検出部5で検出する。制御解析部9は、散乱光検出部5で検出された小角散乱光又は後方小角散乱光の強度を解析し、前記結晶化溶液におけるタンパク質の結晶化状態を分析する。
【選択図】図1

Description

本発明は、タンパク質結晶化分析装置及びタンパク質結晶化分析方法に係り、特にタンパク質溶液の光散乱計測による結晶化状態の分析を行うタンパク質結晶化分析装置及びタンパク質結晶化分析方法に関する。
従来から、タンパク質に代表される生体高分子の機能を解明するために、結晶構造解析の技術が必要不可欠となっている。
生体高分子の結晶構造は、核磁気共鳴(NMR)測定、X線回折測定、また中性子線回折測定等を用いて解析される。
解析された結晶構造のデータを用いて、生体高分子の高次構造や機能の解析を行うことができる。
このような結晶構造の解析及び評価は、いかに良質の生体高分子の結晶を作製するかに大きく依存する。
ここで、タンパク質の結晶作製は、通常、タンパク質の過飽和溶液に沈殿剤(結晶化剤)等を添加して行われる。
しかしながら、タンパク質の結晶化条件は、タンパク質の溶液濃度、沈殿剤(結晶化剤)の種類や濃度、緩衝液の種類、pH値、溶液温度等の、様々な要因を考慮する必要がある。
このため、従来から、試行錯誤を繰り返し、又は網羅的に試験を行い、対象のタンパク質を結晶化させるための結晶化条件を探索する方法が用いられていた。
たとえば、従来、タンパク質の濃度を一定にし、沈殿剤(結晶化剤)の濃度を変化させた溶液試料について、結晶化要件を求める試験をしていた。また、例えば、沈殿剤(結晶化剤)の濃度を一定にして、タンパク質の濃度を変化させた溶液試料について、試験をしていた。その他にも、例えば、沈殿剤(結晶化剤)の種類を変えた場合の溶液試料に対して試験をしていた。
しかしながら、溶液中におけるタンパク質の結晶成長速度は、一般的には大変遅い。
従って、結晶化する条件下であっても、光学顕微鏡等で結晶生成が確認できるまでには、少なくとも数日から数週間が必要である。
また、タンパク質の種類や作製条件によっては、数ヶ月以上を要することもある。
ところが、従来は、実際に結晶を作成することで、対象となる個々のタンパク質にとって最適な結晶化条件の探索をしていた。
このように、一般的に、タンパク質結晶の作製は、網羅的な非能率的手法によって行われている。
この効率を高めるため、従来から、タンパク質濃度と沈殿剤(結晶化剤)濃度との関係を調べた図、いわゆる「相図」が作成されてきた。
たとえば、特許文献1及び非特許文献1を参照すると、タンパク質の結晶化状態を表す相図として、ニワトリ卵白リゾチームの相図が記載されている。
特許文献1及び非特許文献1に記載の相図は、タンパク質濃度及び沈殿剤(結晶化剤)濃度を用いた相図である。
この相図では、結晶化条件を示す状態として、結晶化溶液のpH値と温度が一定である場合の、沈殿剤(結晶化剤)濃度に対するリゾチームの濃度の関係が、相図として記載されている。この相図は、タンパク質結晶作製の方針として利用されている。
より具体的には、特許文献1及び非特許文献1を参照すると、ニワトリ卵白リゾチームの結晶化溶液の相図が記載されている。
特許文献1に記載の相図は、pH4.7に調整された酢酸―酢酸ナトリウム緩衝液を使用して、温度295K(22℃)でニワトリ卵白リゾチームとその沈殿剤(結晶化剤)の塩化ナトリウムを含む結晶化溶液に対して、リゾチームが結晶化するか否かが、結晶化法の一つである透析法によって調査されたものである。
また、非特許文献1に記載の相図は、pH4.5に調整されたリン酸緩衝液を使用して、温度293K(20℃)でニワトリ卵白リゾチームとその沈殿剤(結晶化剤)の塩化ナトリウムを含む結晶化溶液に対して、リゾチームが結晶化するか否かが、結晶化法の一つである透析法によって調査されたものである。
これらの相図においては、結晶化が進行せずタンパク質の結晶作製に適さない濃度条件、及び溶液中に一度に多数のタンパク質微結晶が生成される濃度条件が記載されている。
そして、上記の2つの濃度領域に挟まれた中間領域である準安定領域では、例えば、結晶核形成の原因となる埃などの混入や、振動、圧力、磁界、電界、光等の結晶化に影響を及ぼす外部からの刺激がなければ、結晶化が進行しない。また、この準安定領域では、溶液中に少数個のタンパク質微結晶が形成されると、結晶が大型化しやすいという特徴がある。
従って、NMRやX線や中性子線によりタンパク質を構造解析するために用いる大型で良質な結晶を作製するためには、この準安定領域の濃度条件下で行うことが好ましい。よって、この準安定領域の濃度領域を見出すことが、タンパク質結晶を作製する上で最も重要である。
従来の相図は、結晶化のための条件が分かっているタンパク質の結晶を大量に作成するといった分野では、非常に有効な方法である。
しかしながら、相図を作成するためには、各溶液の濃度条件を変化させて、実際にタンパク質結晶を作製することが必要である。このため、様々な各濃度条件について結晶化するかどうかを調べなければならず、タンパク質の結晶化を時間経過で観察する必要があった。
よって、相図の作成自体に多大な時間と労力が必要である状況は変わらず、相図は、新規のタンパク質の結晶を製造する用途にはあまり用いられていなかった。
このように、非能率的で多大な時間を要するタンパク質の結晶作製において、タンパク質結晶化溶液の状態を正確に把握し分析できれば、効率的な結晶作製が可能となる。
ここで、従来から、溶媒中でブラウン運動している微粒子からの散乱光を計測し、その散乱光の時間的振舞いから、微粒子の粒度分布を調べる動的光散乱(Dynamic Light Scattering、DLS)法(光子相関法)が、コロイド等のような微粒子の分析に用いられている。
このような粒子ブラウン運動によるDLS法では、粒径の大きな粒子はゆっくり揺らぎ、小さな粒子は速く揺らぐという特性を測定する。この特性から、粒子サイズが評価できる。
DLS法は、タンパク質分子が含まれる溶液の計測・評価にも用いられている。DLS法によれば、溶液中におけるタンパク質分子の状態を、光散乱計測によって非破壊的に測定が可能である。
また、特許文献2を参照すると、生体高分子含有溶液からの生体高分子の結晶化条件を探査する方法であって、生体高分子含有溶液と半透膜で隔てられた溶液に、溶液の物理化学的性質を変化させる物質を連続的又は断続的に添加して、前記生体高分子含有溶液の物理化学的性質を連続的又は断続的に変化させ、その間の、生体高分子含有溶液の状態を、連続的又は断続的にモニターすることで、生体高分子の結晶化条件を探査する方法が開示されている(以下、従来技術1とする)。
具体的には、従来技術1は、光散乱法によって、タンパク質を含む溶液の状態をモニターする方法とその装置について開示されている。従来技術1では、結晶化条件を連続的に最適化しながら検索するため、結晶化条件を見逃す可能性が、従来法に比べて低いという効果がある。
また、特許文献3を参照すると、目的タンパク質を結晶化するタンパク質結晶化過程を解析するタンパク質溶液結晶化過程の解析装置であって、目的タンパク質を含む溶液が収容されている容器を支持する支持部と、該支持部に支持されている前記容器内の観測対象に対してラマン励起用レーザ光を照射するレーザ部と、共焦点ラマン分光分析顕微鏡と、該共焦点ラマン分光分析顕微鏡からのラマン分光光をスペクトル解析するスペクトル解析部とを有するタンパク質溶液結晶化過程の解析装置が記載されている(以下、従来技術2とする。)。
すなわち、従来技術2では、物質に光を入射した際に、散乱光に入射光の波長とは異なる波長の光であるラマン分光光が含まれる「ラマン効果」を用いた、タンパク質溶液の結晶化過程を解析する装置が開示されている。
従来技術2では、従来は人の目で行っていたタンパク質結晶化判別作業を分光学的に行うことができるようになるため、タンパク質結晶化段階の客観的な判断を行うことができるという効果がある。
一方、上述のDLS法のような動的光散乱法以外に、従来より静的光散乱(Static Light Scattering、SLS)法が用いられている。これは、タンパク質溶液からの散乱光をある散乱角度、例えば、特に、溶液に照射する光に対し直角、すなわち、散乱角90°において散乱光を測定し、その溶液濃度と散乱光強度の関係に基づいて、タンパク質溶液を分析する。
たとえば、非特許文献2及び非特許文献3には、SLS法による装置を用いたタンパク質溶液の分析について記述されている。
米国特許出願公開第2006/0236924号明細書 特開2004−45169号公報 特開2006−250655号公報
W.Iwai,D.Yagi,T.Ishikawa,Y.Ohnishi,I.Tanaka,and N.Niimura,"Crystallization and evaluation of hen egg−white lysozyme crystals for protein pH titration in the crystalline state",Journal of Synchrotron Radiation,vol.15,pp.312−315(2008). O.D.Velev,E.W.Kaler,and A.M.Lenhoff,"Protein Interactions in Solution Characterized by Light and Neutron Scattering:Comparision of Lysozyme and Chymotrypsinogen",Biophysical Journal,vol.75,pp.2682−2697(1998). A.Paliwal,D.Asthagiri,D.Abras,A.M.Lenhoff,and M.E.Paulaitis,"Light−Scattering Studies of Protein Solutions:Role of Hydration in Weak Protein−Protein Interractions",Biophysical Journal,vol.89,1564−1573(2005).
ここで、タンパク質の結晶化は、溶液中でタンパク質が均一に分散し溶解している単分散状態に対して、沈殿剤(結晶化剤)の添加、溶液温度の変化、紫外線照射、磁場や電場の印加、外部からの衝撃の付与等の刺激によって、タンパク質が物理化学的状態を変化させ、これによってタンパク質分子が凝集し、結晶核形成から微結晶形成へと結晶が成長していくと解釈されている。
溶液中ではタンパク質分子やその凝集体は、周囲の溶媒、例えば多くの場合、水と強く結合し、タンパク質凝集体の中に溶媒が入り込んでいる。つまり、タンパク質凝集体の形成に、入り込んだ溶媒が分子間の凝集結合を媒介するという役割を担っている。
水は、その分子H2Oが大きな電気双極子モーメントをもった極性溶媒である。このため、水溶性タンパク質分子と近接し、タンパク質のアミノ酸側鎖基と結合して、水溶液中で固有の水和構造を形成する。
つまり、タンパク質分子の凝集体が成長して形成されるタンパク質結晶中には、溶媒が含まれる。このタンパク質結晶の溶媒含有量は、60%を超えることも多く、結晶格子内におけるタンパク質分子間の結合は、ほとんど溶媒を介している状態となっている。
従って、タンパク質凝集体が溶媒中に存在する溶液系の光散乱は、コロイド等のように、内部に溶媒を介した結合を持たない微粒子が溶媒中に単分散状態で存在する場合とは、異なった特性を示す。
つまり、溶媒との結合が小さいコロイド等の微粒子の分散液系に比べて、タンパク質凝集体は、溶液中で溶媒を介し結合している。このため、タンパク質凝集体の散乱光の強度は、溶媒自身からの光散乱と顕著な差が現れにくい。
また、タンパク質溶液のDLS法による測定から、タンパク質は、分子量の異なる分子の混合物である多分子系よりも、単一の組成をもつ分子の単分散系の方が結晶化し易いとされている。しかしながら、この単分散系では、さらに溶媒自身とタンパク質の光散乱と顕著な差が現れにくいという問題があった。
すなわち、タンパク質凝集体による散乱光は、一般に微弱で検出が難しいという問題があった。
また、従来のDLS法によるタンパク質溶液の分析は、通常、低濃度のタンパク質溶液を対象に行われていた。
つまり、従来のDLS法は、タンパク質結晶化で用いられるような高濃度のタンパク質結晶化溶液には、適用できなかった。
これは、非特許文献2及び非特許文献3に記載の、従来のSLS法による装置を用いたタンパク質溶液の分析でも同様であった。
また、従来技術1においては、従来の光散乱法による結晶化溶液状態の具体的な分析方法については開示されていなかった。すなわち、上述したように、タンパク質が完全には結晶化していない、タンパク質の凝集体による散乱光は微弱であるため、通常の散乱光の検出は難しかった。
このため、従来技術1は、単純に散乱光を検出した場合、ある程度大きくなった良/ 不良初期結晶の屈折による散乱光を得ていると考えられる(例えば、段落[0030]等を参照)。
また、従来技術2についても、ある程度大きくなった微結晶を検出している(例えば、段落[0035]の「これらのピーク強度の高さからタンパク質の微結晶である」等を参照)。
すなわち、従来技術1や従来技術2では、タンパク質が結晶化する前の状態のタンパク質結晶化溶液の分析については用いることができなかった。
しかしながら、結晶構造解析に用いるタンパク質結晶化溶液においては、目的のタンパク質とその結晶化剤を含むタンパク質結晶化溶液が、結晶核形成から微結晶形成へと結晶が成長する前の段階において分析できることが望まれていた。
つまり、光学顕微鏡等で観察できるようになるまでの大きさにタンパク質の微結晶が成長するまでに、タンパク質分子の凝集の程度を分析し、溶液中のタンパク質が結晶化が進行する方向にあるか否かの分析をすることが求められていた。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消することを課題とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、タンパク質の結晶化を分析するタンパク質結晶化分析装置において、タンパク質結晶化溶液の前方小角又は後方小角の散乱光を、該散乱光検出部へと導く測定散乱光導入部と、前記測定散乱光導入部により導かれた前記散乱光を検出する散乱光検出部と、前記散乱光検出部で検出された前記散乱光の強度を解析し、前記タンパク質結晶化溶液におけるタンパク質の結晶化状態を分析する制御解析部とを備えることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記散乱光は、測定対象の溶液へ入射する光の透過光に対する散乱角度が10°程度以下の前方小角散乱光、又は測定対象の溶液へ入射する光の反射光に対する散乱角度が10°程度以下の後方小角散乱光であり、前記測定散乱光導入部は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光を導くことを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、測定する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の散乱角度を変化させる測定散乱角制御部を備え、前記制御解析部は、前記測定散乱角制御部の散乱角度を制御し、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の値を解析することを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の値は、それぞれ前記散乱角度に対する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度関数により求めることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の値は、それぞれ前記散乱角度に対する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度関数から求めた前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の平均値であることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記制御解析部は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の時間的強度ゆらぎに基づいて、前記タンパク質結晶化溶液におけるタンパク質の結晶化状態を分析することを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記測定散乱光導入部は、前記タンパク質結晶化溶液と前記散乱光検出部の間に配置され、少なくとも2つ以上のスリット、ピンホール、又は虹彩絞りを含むことを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記タンパク質結晶化溶液の入った溶液セルを固定する、透明ブロック及び支持台を含む測定試料部を備え、前記透明ブロックは、前記溶液セルを光学的に密着させることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記透明ブロックは、半円柱形プリズムであり、前記溶液セルへ平行光を入射するためのレンズ部を備えることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記溶液セルに入射する光の入射角度を調整制御するための入射角制御部を備えることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記タンパク質結晶化溶液に光を照射する光源を備えることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記光源は、単一光の光源であり、タンパク質分子に固有の光吸収帯から離れた波長領域の光源であることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記光源は、ダイオード励起固体レーザであることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記光源から出射される光の偏光状態を調整し、前記散乱光の検出に適するように、前記タンパク質結晶化溶液への入射光の光量を調整する、入射光調整部を備えることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記光源から出射される光の強度をモニターする入射モニター光検出部を備えることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析装置は、前記タンパク質結晶化溶液は、タンパク質と、該タンパク質の結晶化剤とを含むことを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析方法は、タンパク質の結晶化を分析するタンパク質結晶化分析方法において、タンパク質結晶化溶液に光を照射し、前記タンパク質結晶化溶液からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光を測定し、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度に基づいて、前記タンパク質結晶化溶液の状態を分析することを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析方法は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度は、それぞれ散乱角度に対する前記前方小角散乱光の強度関数又は前記後方小角散乱光の強度関数であることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析方法は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度は、それぞれ散乱角度に対する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度関数から得られる、前記前方小角散乱光の強度の平均値又は前記後方小角散乱光の強度の平均値であることを特徴とする。
本発明のタンパク質結晶化分析方法は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の時間的強度ゆらぎに基づいて、前記タンパク質結晶化溶液におけるタンパク質の結晶化状態を分析することを特徴とする。
本発明によれば、タンパク質結晶化溶液の前方小角又は後方小角の散乱光を検出することで、微結晶が生じていない準安定領域であるか否かについて分析するタンパク質結晶化分析装置Xを提供することができる。
本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xの概略制御構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xの詳細制御構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態に係る溶液セル30の構成例を示す断面図である。 本発明の実施の形態に係る溶液セル30の構成例を示す正面図である。 本発明の実施の形態に係る透明体ブロックを用いない場合の測定試料部3と入射光、透過光、及び前方又は後方小角散乱光の関係を示す平面概念図である。 本発明の実施の形態に係る透明体ブロックを用いた場合の測定試料部3と入射光、透過光、及び前方又は後方小角散乱光の関係を示す平面概念図である。 本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化溶液31の測定・分析処理のフローチャートである。 本発明の実施の形態の実施例に係るニワトリ卵白リゾチームをタンパク質結晶化溶液31として用いた際の、測定された散乱角に対する前方小角散乱光の強度関数を示すグラフである。 本発明の実施の形態の実施例に係るニワトリ卵白リゾチームをタンパク質結晶化溶液31として用いた際の、測定された散乱角に対する前方小角散乱光の強度関数から得られた、光散乱強度の平均値と沈殿剤(結晶化剤)の関係を示すグラフである。
<実施の形態>
〔タンパク質結晶化分析装置Xの構成〕
図1を参照して、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xの概略構成について説明する。
本実施形態のタンパク質結晶化分析装置Xは、主な構成として、光源1と、入射光調整部2と、測定試料部3と、入射角制御部4と、散乱光検出部5と、入射モニター光検出部6と、測定散乱光導入部7と、測定散乱角制御部8と、制御解析部9とを備える。ここで、図1においては、点線の矢印は光信号の流れを、実線の矢印は制御信号及び観測に係る電気信号の流れの例を示している。
本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xは、目的のタンパク質と沈殿剤等の結晶化剤を含むタンパク質結晶化溶液に対して、結晶化溶液からの静的光散乱、及び動的光散乱の計測、特に前方小角光散乱又は後方小角光散乱の計測に基づいて、溶液中におけるタンパク質結晶化の状態を分析する装置である。
すなわち、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xは、測定対象のタンパク質結晶化溶液へ光を入射し、前方小角又は後方小角における散乱光を計測して、タンパク質結晶化溶液からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光の放射角度の強度分布(SLS)、又はその時間的強度変化(DLS)によって、タンパク質結晶化溶液の状態を分析する。
なお、本実施形態において、「前方小角光散乱」とは、測定対象となるタンパク質結晶化溶液へ入射する光の透過光に対する散乱角が10°程度以下、特に6°以下における溶液からの散乱光であることを示す。
また、同様に「後方小角光散乱」とは、測定対象の溶液へ入射する光の反射光に対する散乱角が10°程度以下、特に6°以下における溶液からの散乱光であることを示す。
光源1は、分析する対象となるタンパク質結晶化溶液から散乱光を発生させるために、タンパク質結晶化溶液へ入射させる光を発生させる光源である。
光源1は、タンパク質結晶化溶液からの散乱光、特に前方小角散乱光又は後方小角散乱光を効率よく発生させる機能を有している。
光源1は、タンパク質結晶化分析装置Xの本体を駆動させる電源(図示せず)によって点灯される。
光源1に適した光源としては、例えば、各種ガスレーザ、半導体レーザ(semiconductor laser、diode laser、LD)、ダイオード励起固体(Diode−pumped solid−state、DPSS)レーザ、及び発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)等を用いることができる。
さらにまた、対象タンパク質結晶化溶液からの散乱光が比較的大きい場合では、上記の光源よりも低輝度の光源、例えば白色光源から分光器によって得られる単色光も利用できる。
光源1として、より好ましい光源は、高輝度のレーザ光源であって、高いコヒーレンス長を持った、シングル縦モードの単一波長を発振するレーザ光源が特に好ましい。
このレーザ光源としては、例えば、DPSSレーザを用いることができる。DPSSレーザは、レーザ光発振に必要な光共振器を内蔵した、小型なレーザ光源である。
DPSSレーザは、低電力で高効率の安定な高出力レーザが得られるという特長がある。このため、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xの光源として特に適切である。
入射光調整部2は、光源本体から出射された光の偏光状態、及び光量を調整する機能を備える部位である。
入射光調整部2の詳細については、後述する。
測定試料部3は、測定対象のタンパク質結晶化溶液を収容する溶液セル30と、その溶液セル30を支持する指示部材、及び溶液セル30へ平行光を導くためのレンズ等の光学素子から構成されている。
測定試料部3には、タンパク質結晶化溶液からの散乱光、特に前方小角散乱光又は後方小角散乱光を測定するための適切な光学的配置が施されている。
また、測定試料部3は、溶液セル30(図3A)内のタンパク質結晶化溶液31(図3A)へ、ビーム光が平行状態になるよう光学調整を行ったコリメートビーム光等を入射させ、溶液セル30の透過光や反射光の影響を少なくし、タンパク質結晶化溶液からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光、特に前方小角散乱光を効率よく放射させ測定できるように構成されている。
さらに、測定試料部3は、レンズやプリズム等の光学部位を備えていてもよい。
入射角制御部4は、タンパク質結晶化溶液の溶液セル30へ入射する光の入射角度を調整・設定する機能を備える部位である。
後述するように、タンパク質結晶化溶液の溶液セル30(図3A)は、電動の回転ステージ(例えば、<URL=”http://www.sigma−koki.com/index_sd.php?lang=jp&smcd=C060203”>を参照)であるθ回転ステージ14(図2)上に載せられる。入射角制御部4は、このθ回転ステージ14の回転軸を入射光の光軸上に設定する。
散乱光検出部5は、タンパク質結晶化溶液から放射される散乱光を検出し、散乱光強度を測定するための光検出器である。
具体的には、散乱光検出部5は、タンパク質結晶化溶液による散乱光の検出に適した光検出器であり、各種の光センサを用いることができる。
入射モニター光検出部6は、タンパク質結晶化溶液31への入射光の強度をモニターする機能を備える光検出器である。
入射モニター光検出部6は、光源1から出射される光の時間的強度変化の影響を受けないように、安定にタンパク質結晶化溶液からの散乱光強度を計測するために用いられる。具体的に、入射モニター光検出部6は、入射光の一部を分割するためのビームスプリッタ等の光分割素子、例えば、カバーガラス等の薄いガラス平板を備え、この光分割素子によって分けられた一部の入射モニター光を検出するための光センサを備えている。さらに、入射モニター光検出部6は、光センサからの電気信号(アナログ信号)を増幅するための増幅器を備えている。
入射モニター光検出部6により、入射光をモニターすることで、入射光の時間的変動による散乱光の測定誤差を除去し、高精度の散乱光計測が可能となる。このために、入射モニター光検出部6により得られたモニター光の強度をI0とし、タンパク質結晶化溶液31から測定された散乱光強度Isとの比、すなわち、Is/I0を得て、相対的散乱光強度として測定することができる。
なお、光源1が特に安定して動作する場合、特に入射光をモニターしなくてもよく、従って、入射モニター光検出部6を設置する必要はない。この場合には、相対的散乱光強度のデータとしては、測定された散乱光強度Is自身を用いる。
ここで、光源1の発生ノイズが、例えば10Hz〜2MHzの周波数範囲において、光出力に対して数%程度以下、特に1%以下であり、また、出射光強度の変動が例えば8時間で5%程度以下、特に3%程度以下のような場合であって、しかもタンパク質結晶化溶液の散乱光が極微弱ではなく、高いSN比で散乱光計測が行える場合は、光源1が特に安定して動作するものとして、入射モニター光検出部6を設置しなくてもよい。
このように、使用する光源の出力値や出力の安定性、及び測定対象のタンパク質結晶化溶液の31の散乱光強度に応じて、入射モニター光検出部6の設置・使用の有無を選択することが可能である。
なお、測定するタンパク質結晶化溶液からの散乱光の強度が特に微弱であり、計測のSN比が良好でない場合には、微弱信号の計測法の一つである、いわゆるロックイン検出法を用いることができる。ロックイン検出法では、所定周波数で変調した光をタンパク質結晶化溶液31に入射し、溶液からの散乱光の中で入射光の変調周波数と同期した信号成分のみを適宜増幅して検出する。
また、入射光の変調方法としては、光源の駆動ドライバーに変調信号を入力させ、光源から出射される光を直接変調する方法、あるいは、入射光の光路中に適宜周波数で光を通過・遮断する機構、例えばライトチョッパーを設置する方法を採用できる。光源の駆動ドライバーによって入射光を変調できない場合でも、ライトチョッパーによる入射光の変調は可能である。
光変調によるタンパク質結晶化溶液の散乱光の計測は、特に、微弱な散乱光の強度角度分布、すなわち、静的散乱光の計測に適した方法である。
測定散乱光導入部7は、タンパク質結晶化溶液から放射される散乱光、特に前方小角散乱光又は後方小角散乱光を、所定の散乱角度で散乱光検出部5へ導く部位である。
具体的には、測定散乱光導入部7は、溶液セル30からの散乱光を正確に測定できるように、所定の前方小角又は後方小角の散乱角度で、測定すべき散乱光を散乱光検出部5へ導く。
また、測定散乱光導入部7は、他の散乱光や、迷光となる光学素子等からの他の散乱光が、散乱光検出部5へ入射するのを防止するように構成する。これは、タンパク質結晶化溶液と溶液セルからの前方小角散乱光又は後方小角散乱光の測定では、前方小角散乱光又は後方小角散乱光に比べて強度の著しく大きい透過光、及び反射光が測定の妨害となるためである。
測定散乱角制御部8は、散乱光検出部5及び測定散乱光導入部7の、溶液セル30に対する角度位置を設定・変化させる機能を備える部位である。
測定散乱角制御部8は、測定散乱角制御部8は、タンパク質結晶化溶液31(図3A)からの散乱光に対して測定する散乱角度を設定し制御することができる。
具体的には、測定散乱角制御部8は、所定の散乱角度範囲、特に前方小角の散乱角度において、タンパク質結晶化溶液31(図3A)からの、散乱角に対する散乱光の強度関数(散乱光強度分布)を測定する。
また、測定散乱角制御部8は、所定の散乱角度、特に前方小角の散乱角度で散乱光の時間的強度変化(時間的強度ゆらぎ)を測定することもできる。
制御解析部9は、散乱光検出部5によって検出された散乱光による電気信号(アナログ信号)を増幅することで散乱光の強度を計測し、測定された散乱光の強度に応じた電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する部位である。この際、制御解析部9は、散乱光の計測では、タンパク質結晶化溶液からの散乱光が微弱な散乱光であっても、散乱光データとして取り扱えるように演算を行う。
また、制御解析部9は、入射モニター光検出部6により得られた、モニターした入射光の光強度に応じた電気信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換することもできる。
さらに、制御解析部9は、測定したデータの記録、呼び出し、相対的散乱光強度の算出、データのグラフ化等の、測定データを演算・処理する機能を備える。これにより、タンパク質結晶化溶液の散乱光を解析、分析する。
また、制御解析部9は、入射角制御部4及び測定散乱角制御部8により、測定試料部3に入射する入射光の角度と、測定散乱光導入部7に導かれる散乱光の角度とを制御する。
なお、入射光調整部2と、入射角制御部4と、入射モニター光検出部6と、測定散乱角制御部8とに関しては、いずれかを備えない構成とすることも可能である。
また、光源1をタンパク質結晶化分析装置Xに加えず、外部の装置から入射光を取得するように構成することも可能である。
(タンパク質結晶化分析装置Xの各機器の詳細構成)
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xを構成する各部について、より具体的に、好ましい各構成機器についての詳細な説明をする。
光源1は、光源のデバイスが小型であれば、タンパク質結晶化分析装置Xへの組み込みが容易となる。また、光源1に高効率の低電力駆動のレーザ光源を用いた場合、光源部からの発熱に対する特別な冷却対処を施す必要がなくなるため好適である。
光源1は、光散乱法によるタンパク質溶液の結晶化分析に適する光の波長を用いる。この波長としては、測定対象のタンパク質分子に固有の光吸収帯から離れた波長領域であることが好ましい。これは、タンパク質分子の吸収帯付近では、タンパク質凝集体による弾性散乱光が結晶化溶液中に他のタンパク質に吸収され、結晶化溶液から放射される測定散乱光の強度が著しく低下する恐れがあるためである。
このような光の波長の例として、まず、金属イオンを含まず、可視光領域に光吸収がないタンパク質等では、可視域であればどのような波長の光でも使用できる。なお、このようなタンパク質では、水溶液が無色透明に見える。
これに対して、金属イオンを含むタンパク質の多くは、可視光領域にも、これらの金属イオンに由来した光吸収のバンドがある。このような可視域に吸収帯を持つタンパク質の場合には、好ましくは、それらの吸収帯から離れた、吸収帯の波長領域の吸収が比較的小さい波長の光を用いる。なお、このような金属イオンを含むタンパク質や、様々な低分子を結合させたタンパク質、及びアミノ酸を修飾させた補欠分子を含むタンパク質などでは、結晶化溶液が呈色している。
また、多くのタンパク質には、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、フェニルアラニン(Phe)等の芳香族アミノ酸に由来する280nm付近の紫外波長域に大きな吸収帯がある。このため、これらの吸収帯から離れた波長領域を用いる必要がある。
さらに、測定対象のタンパク質が光吸収の無い、もしくは小さい波長域では、より短波長の光がタンパク質分子やその集合体でより強く散乱されるために、検出感度の面から、測定で用いる光源としては、できるだけ短波長であることが好ましい。
これは、光吸収が無いか小さい波長域において、タンパク質の屈折率は、波長が短くなるにつれて単調に大きくなる正常分散を示し、従って、より短波長で散乱強度が高いレーリー散乱(Rayleigh scattering)を示すためである。
一方、タンパク質の強い吸収帯付近では、その屈折率(複素屈折率の実部)が異常分散によって、著しく変化する。従って、タンパク質の強い吸収帯付近では、より短波長の波長が、散乱光測定の光波長として適するとは限らない。
なお、レーリー散乱は、光の波長より小さい粒子径の粒子による光の散乱であり、例えば、空が青く見えるのは、太陽光が大気でレーリー散乱されることによる。
上述のように、光源1では、測定対象のタンパク質の吸収特性に応じて、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xで使用する光源の波長を選択する。
光源1の出力には、特に制限はなく、測定対象のタンパク質結晶化溶液の散乱光自身の強度、使用する散乱光検出部5の光検出器の感度、及び散乱光計測で使用する増幅器の増幅度などに依存する。また、光源1は、駆動電源と光源本体を装置に組み込む上で適したサイズであることが好ましく、例えば数mW〜数十mW程度のレーザ光源が適する。
また、光源から出射される光の偏光性には、特に制限はなく、直線偏光や円偏光、及び楕円偏光などの偏光した光が利用でき、無偏光であっても良い。その中で特に、TE(s)偏光やTM(p)偏光などの直線偏光が利用しやすい。また、タンパク質結晶化溶液のような溶液系の場合には、TE(s)偏光の入射光による散乱光がより強いことが多いので、好ましくはTE(s)偏光に設定して使用する。しかしながら、タンパク質結晶化溶液の光散乱は、TE(s)偏光に限定した現象ではないので、TE(s)偏光の入射光でなくてもよい。
光源1には、光源本体内部で偏光させる機構を持った光源が使用できるが、光源の出射側の外部に、直線偏光素子、1/2波長板、1/4波長板などの偏光素子を設置して、対象タンパク質結晶化溶液に入射する光の偏光状態を調整することも可能である。この調整は、後述するように、入射光調整部2にて行うことができる。
光源1から、タンパク質結晶化溶液31(図3A)へ入射させるビーム光(入射光)は、平行な光、すなわちコリメート光が適する。入射光の広がり角は、できる限り小さくし、全角度で1mrad程度以下が好ましい。入射光自身の広がり角が大きすぎる場合、レンズ等で入射光を平行光にしようとしても、光ビーム径の拡大を避けられず、タンパク質結晶化溶液からの散乱光を高精度に角度分布測定するには適さない。
入射光のビームの形状には、特に制限はないものの、円形の光ビームを用いると、対称性が高く散乱光の受光や光軸調整が容易であるため特に好ましい。しかしながら、入射光のビームの形状は、楕円形や長方形状等であっても良い。この場合、入射光のビームの形状によって、使用する溶液セル30の形状、測定散乱光導入部7を構成するスリット、ピンホール、虹彩絞り、及びこれらの組み合わせを用いて、透過させる光のビーム形状、散乱光検出部5の受光部の形状等を決定する。
高精度の散乱光計測には入射光の安定性が要求され、使用する光源の出力安定度は、1時間当たり数%程度以下であることが好ましい。さらに、散乱光の計測では、入射光の強度変化をモニターすることにより、入射光変動は除去できる。
光源1の本体と駆動電源とは、それらを装置に組み込むので、できるだけ小型であることが好ましい。駆動電源が光源本体と一体化した場合、それらが別個でケーブルで接続されている場合の機器があるが、どちらの場合でも装置に組み込める程度のサイズであれば、問題がない。
入射光調整部2は、偏光素子2a、及び光量調整フィルター2bから構成される。偏光素子2aは、光源1から放射される光の偏光状態を調整する部位である。また、光量調整フィルター2bは、光源1から放射される光及び測定溶液に入射する入射光の強度を調整するNDフィルター等である。
より具体的に説明すると、光源1から出射された光は、測定対象のタンパク質結晶化溶液31(図3A)からの散乱光計測に適用するために、光量と偏光性を調整することが好ましい。上述したように、溶液の散乱光測定では、入射光は無偏光であってもよく、入射光の偏光性は必ずしも重要ではない。しかしながら、光源1から出射される光は、光源1の本体内部に偏光素子を備え、出射時には既に偏光性を持っている場合があるため、入射光調整部2により偏光性を適切に調整した方が、より再現性の良いデータが得られることが多い。
偏光素子2aとしては、光源1から出射される光が無偏光である場合には、入射光の偏光性を調整するための各種の偏光板や偏光フィルターを利用する。この際、タンパク質結晶化分析のためには、偏光の消光比1/500程度であっても、十分用いることができる。また、出射光が既に直線偏光している場合には、偏光素子2aとして、1/2波長板等を用いることができる。これにより、偏光方向を任意の角度に設定でき、光学系に対して、電界ベクトルが水平であるTM(p)偏光、又は垂直であるTE(s)偏光を得られる。
また、光量調整フィルター2bとして、各種のフィルター、例えば、金属薄膜フィルター、誘電体フィルター等を用いることができる。光量調整フィルター2bは、透過率0.1%〜50%までのNDフィルター等を用いることで、入射光の光量を容易に調整できる。光量調整フィルター2bの透過率は、光検出器の検出感度や検出信号の増幅率などに応じて求める。つまり、光量調整フィルター2bにより、光源1から出射される光の光量を、測定対象のタンパク質結晶化溶液31からの散乱光が良好なSN比で得られるように調整する。
ここで、光源1からの出射された光を、測定対象の溶液セル30に入射光として導入するために光路変更を行うことが好適である。
入射光光路変更部15は、この光路変更のための、一群のミラー、プリズム、レンズ等の光学デバイスである。
具体的には、例えば、光源1からの出射光に対して入射角45度で平面ミラーに入射するように、2枚一組の平面ミラー15a、15bを配置し、各々の平面ミラーで直角に光路変更させ、光を反転方向させるように構成できる。このようなミラーの配置によって、溶液セル30へ入射光を導入するための光軸調整(アライメント)が容易になり、入射光学系の小型化が可能となるため、タンパク質結晶化分析装置Xを小型化することができる。
また、この入射光光路変更部15において、入射光の一部を分岐して入射光をモニターすることも可能である。この入射光の分岐には、例えば、透過光と反射光を分路させるハーフミラー等を用いることができる。
たとえば、図2によると、入射光光路変更部15の平面ミラー15a、15bの間に、ビームスプリッタ等の光分割素子、例えば、カバーガラス等の薄いガラス平板やハーフミラー等であるビームスプリッタ6bを備える構成が可能である。この場合、ビームスプリッタ6bからの反射光を、光センサー等である入射モニター光検出器6aで検出することで、入射モニター光検出部6として機能させることができる。
なお、入射モニター光検出部6としては、入射光調整部2に光センサーを備えたり、その他の光路上の部位に光センサーを備えるような構成も可能である。
さらに、ロックイン検出法による散乱光の検出を行うために、光源1から測定試料部3までの光路中に、光変調器16とロックインアンプ17とを備えることもできる。
光変調器16は、溶液セル30に入射される光を周期的にチョッピングするライトチョッパー等であり、周波数に応じて光量を変調する光変調器である。
ロックインアンプ17は、溶液セル30のタンパク質結晶化溶液31からの散乱光を光検出部5で検出した信号を増幅する増幅器(アンプ)である。
このロックインアンプ17は、光変調器16にてチョッピングされた入射光に係る散乱光の信号を、光変調器16の周波数を参照信号として増幅する「ロックイン検出法」の増幅に用いることもできる。
ここで、光路変更された入射光は、入射角制御部4により角度を調整した上で、溶液セル30に導入する。そして、この溶液セル内のタンパク質結晶化溶液31(図3A)からの散乱光が、測定散乱角制御部8により角度を調整されて、測定散乱光導入部7に導入される。
このような角度の調整のため、入射角制御部4と測定散乱角制御部8とを、電動の回転ステージを用いて構成可能である。
この構成としては、例えば、2つの回転ステージの回転軸を一致させ、2段組に重ね合わせることによって一体化した、独立に回転移動できる2段回転ステージ(以下、θ−2θ回転ステージと呼ぶ)を用いることができる。
このθ−2θ回転ステージとしては、θ回転ステージ14と2θ回転ステージ18とを用いて構成することができる。
たとえば、入射角制御部4としては、溶液セル30へ入射する光の入射角を調整制御するための溶液セル30を搭載したθ回転ステージ14を用いて構成することができる。θ回転ステージ14上には、溶液セル30の回転軸合わせ調整機構、例えば2軸平面ステージ(XY軸ステージ)を備える。溶液セル30の中心軸がθ回転ステージ14の回転軸に一致するように、支持部材上の溶液セル30の位置調整を行い、θ回転ステージ14上に固定する。
また、測定散乱角制御部8としては、上記θ回転ステージの回転軸に一致した回転軸を持った2軸平面ステージである2θ回転ステージ18を用いて構成することができる。この際、散乱光検出部5、及び測定散乱光導入部7は、2θ回転ステージ18の回転軸と同じ軸で回転移動できるように、溶液セル30から所定距離だけ離して2θ回転ステージ18上に設置する。
より詳細に説明すると、このような構成の場合、溶液セル30は、θ回転ステージ14の回転軸上付近、例えば、θ回転ステージ14の中央部に設置される。また、散乱光検出部5、及び測定散乱光導入部7は、2θ回転ステージ18の回転軸から離れた位置に設置される。この際、例えば、散乱光検出部5及び測定散乱光導入部7は、2θ回転ステージ18に取り付けた板状のアーム上に設置される。
さらに、入射角制御部4及び測定散乱角制御部8は、それぞれθ回転ステージ14及び2θ回転ステージ18の角度位置を電動にて制御するための回転ステージ駆動制御器であるドライバー4a、8aを備える。
ドライバー4a、8aは、制御解析部9のパーソナルコンピュータ(Personal Computer、PC)であるPC9bによって制御される。
なお、入射角制御部4及びθ回転ステージ14を備えない構成とすることも可能である。この場合、測定試料部3の溶液セル30を、測定散乱角制御部8を構成する2θ回転ステージ18の中心軸上に設置し、入射光が常に所定の入射角、例えば、垂直入射で溶液セル30に入射するように固定する。
測定試料部3の溶液セル30は、タンパク質結晶化溶液を収容し、散乱光を計測するための容器(溶液セル)である。溶液セル30は、θ回転ステージ14上に固定される。
溶液セル30は、測定対象の溶液が微量で、高濃度であっても、溶液からの散乱光を効率良く放出させるように構成する。
溶液セル30の具体的な構造について後述する。
ここで、溶液セル30へ入射する入射光としては、平行光、すなわちコリメート光が好ましい。
これは、溶液セル30の入射側の側壁面が、曲率を有する曲面である場合、コリメート光でない非平行光がタンパク質結晶化溶液31(図3A)を通過すると、溶液セル30へ入射する際にこの入射側の曲面で屈折し、溶液からの散乱光の放射角強度分布を正確に測定することが困難となるためである。
また、溶液セル30の透過側の側壁面が曲面である場合も、溶液を通過した透過光が、溶液セル30の出射側曲面で屈折し、屈折して非平行となった透過光は、前方小角散乱光又は後方小角散乱光の検出を妨げる恐れがある。
このため、入射光及び透過光の広がり角を可能な限り低く抑えることが好ましい。
測定散乱光導入部7は、調整された角度での散乱光のみを取り出す部位である。このため、測定散乱光導入部7は、タンパク質結晶化溶液31を通過した透過光、及び溶液セル30の入射側の光路上に設置された各光学素子等からの散乱光などの迷光を避けて、散乱光検出部5に導く。
測定散乱光導入部7は、所定距離を隔てて平行に置かれた複数の光学素子である、スリット群、ピンホール群、または虹彩絞り群、又はこれらの組み合わせから構成される。これは、1つのスリットやピンホール、又は虹彩絞りを溶液セル30と散乱光検出部5との間に配置しただけでは、他の散乱光を防止することは困難だからである。
測定散乱光導入部7は、例えば光学台での使用に適した複数の金属製のスリット板であるスリット群11等により構成され、溶液セル30と散乱光検出部5との間の所定距離を隔てた直線上に配置される。
散乱光を測定する散乱光取込み角度は、溶液セル30と散乱光検出部5の間に配置した測定散乱光導入部7の光学素子の位置と開口径に依存する。
タンパク質結晶化溶液へ照射されるコリメート光のビーム径が十分小さく、溶液からの散乱光が点光源の放射と近似できる場合において、例えば、測定散乱光導入部7として、例えば、60mm間隔で2つの虹彩絞り群が設置され、後方の虹彩絞りがタンパク質結晶化溶液31から180mm離れた位置にあり開口径が1mmφである場合、測定される散乱光の取り込み角度は、立体角で約2.4×10−5srである。この値は、平面角では約0.32°に相当する。
測定散乱光導入部7に導入された散乱光は、散乱光検出部5にて検出され、例えば、ロックインアンプ17内の増幅器により適宜増幅され、アナログ電圧信号としてA/D変換器9aに入力される。
散乱光検出部5を構成する主要な散乱光検出素子としては、使用する光の波長に対し十分な分光感度を持ち、タンパク質結晶化溶液の微弱な散乱光を検出できる十分な受光感度を持った光検出素子が適する。
散乱光検出部5に適用できる好ましい光検出素子としては、フォトダイオード(PD、Photo Diode)や光電子増倍管(PMT、Photomultiplier Tube)等が挙げられる。比較的強い散乱光の場合には、例えばpn接合型PD、特にSiフォトダイオードが好ましく、散乱光を安定に測定するために逆バイアス動作で散乱光の検出を行う。
また、微弱散乱光の場合、例えばPMT、特に高圧電源回路を内蔵した小型のメタルパッケージPMTが好ましい。さらに、アバランシェ増倍現象を用いて受光感度を上昇させたフォトダイオードであるアバランシェフォトダイオードを用いることもできる。
また、タンパク質結晶化溶液31の散乱光強度を静的に測定する静的散乱光(SLS、Static Light Scattering)測定では、例えば、光変調器16としてライトチョッパーを用いて、ロックインアンプ17との組み合わせたロックイン検出法によって、微弱な散乱光を高感度に計測することができる。このような光変調によるロックイン検出法の場合、使用する散乱光検出部5の光検出器の応答速度や周波数特性のような応答性に関して配慮する必要がある。
なお、光源の出力が安定であり、ある程度のパワーを持った、例えば数十mW程度以上の光源を使用して、タンパク質結晶化溶液から検出に十分な強度の散乱光が得られる場合には、上記のロックイン検出法を用いなくても、タンパク質結晶化溶液のSLS測定を十分に行うことが可能である。この場合、従って本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xにおいて、光変調器16であるライトチョッパーと、ロックインアンプ17とを除くことができ、分析装置を簡略化できる。
一方、タンパク質結晶化溶液の散乱光の時間的変化の測定(動的散乱光(DLS、Dynamic Light Scattering)測定とも呼ぶ)を行う場合には、散乱光検出部5の応答性を考慮し、適切な検出器を選択する。
応答性に優れた光検出器としては、pn接合間に真性半導体層を持ったPINフォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、及びPMT等が挙げられ、測定する散乱光のゆらぎ時間やゆらぎ周波数に応じて光検出器を選択する。
図2によると、散乱光検出部5からの散乱光の信号が増幅されたアナログの出力電圧信号は、アナログ/デジタル(A/D)変換インタフェースであるA/D変換器9aを介してデジタル信号に変換される。直接PC9bは、直接、このデジタル信号を測定データとして取り込むことができる。この際には、A/D変換インタフェースの入力許容レベル以内に散乱光のアナログ電圧信号の増幅度を調整し、直接、A/D変換器9aをへ測定信号を入力する。
この構成では、電圧計測器を必要としないので計測機器の省略化ができるため好適である。
また、ライトチョッパーである光変調器16とロックインアンプ17とを組み合わせてロックイン検出法によって散乱光測定をする場合、まず、散乱光検出部5からの変調電気信号を前段増幅器(プリアンプ、図示せず)で増幅する。この上で、ロックインアンプ17により、増幅された変調電圧信号の変調同期成分がさらに増幅され、計測される。この場合でも、ロックインアンプ17からのアナログ出力信号をA/D変換器9aを通じてPC9bに散乱光データを取り込むことができる。
なお、散乱光の電気信号を、A/D変換器9aで直接入力せず、別途、増幅器(図示せず)によって適宜増幅し、電圧計測器(図示せず)で計測してもよい。
この増幅器としては、散乱光検出部5からの電気信号が電流信号であれば、電流―電圧変換型増幅器を、電圧信号であれば、電圧―電圧型増幅器を使用する。これにより、散乱光強度に比例した電圧信号が得られ、電圧計測器によって計測される。
電圧計測器としては、各種のアナログ電圧計、デジタルマルチメータ、エレクトロメータなどが使用できる。
増幅器からの出力データは、USB、GPIB通信、RS232C通信等のインタフェースを介して制御解析部9のPC9bへ取り込むことができる。
PC9bは、PC/AT互換機やMAC互換機等のPCやハンドヘルドデバイス等であり、タンパク質結晶化溶液の散乱光に関する計測・収集したデータを分析し、例えば補助記憶装置であるハードディスク等に記憶する機能を備える。
また、PC9bは、計測したデータをグラフとして表示部(ディスプレイ)やプリンタ(図示せず)に画像として表示する機能を備えている。
(本発明の実施の形態に係る溶液セル30の構成)
次に、図3Aの側断面図と図3Bの概正面図とを参照して、本発明の実施の形態に係る測定試料部3の溶液セル30の構成の一例について説明する。
溶液セル30は、上述したように、光散乱計測のためにタンパク質結晶化溶液を収容するための溶液セルである。
溶液セル30は、具体的には、例えば2つの透明な溶液セル基板である平板状基板32、33で適宜厚さを持った平板状のスペーサー34を挟み、このスペーサー34によって形成される基板間の間隙にタンパク質結晶化溶液31を注入し保持する、サンドイッチ型構造で構成される。
これにより、スペーサー34と平板状基板32、33とは、タンパク質結晶化溶液31を保持する容器になる。
溶液セル30の平板状基板32、33の材料としては、入射光側と散乱光放射側で、測定光領域で透過性に優れた光学材料が好ましい。具体的には、溶液セル30の材料は、各種透明ガラスや透明プラスチックなどが適切である。
ガラスは、可視光領域で透過性が高く、均質性に優れ、化学的に安定している材料である。特に、BK−7やパイレックス(登録商標)等のホウ珪酸ガラス、及び紫外線領域にも高い透過性を有する石英ガラスが特に好ましい。
プラスチックは、硬いガラスと異なり、容易に曲げられるフレキシブルな材料である。光透過性に優れ、化学的に安定なプラスチック材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデン、及びポリエチレン等の重合高分子化合物が好ましい。
測定対象の溶液セル30を通過する光路長は、短く、容量も微量であることが好ましい。これは、タンパク質結晶化溶液31が高濃度の場合、溶液中の多重散乱の効果を可能な限り低減するためである。
具体的には、溶液セル30の光路長として、溶液に入射する光のビーム径程度、例えば1mm以下、特に0.5mm以下が好ましい。このため、光散乱測定で使用するタンパク質結晶化溶液31の容量は、数十μL程度以下が好ましい。具体的には20〜30μL程度以下で測定可能である。
なお、溶液セル30として、透過光による光吸収測定用に市販されている角型や円筒形などの溶液セルを使用することも可能ではある。しかしながら、多くの市販の溶液セルの場合、溶液セル30を通過する入射光の光路長は、例えば5mm〜1cm程度と長く、数mL以上の溶液を必要とするため、光吸収測定用の溶液セル30として使用することは適さない。
タンパク質結晶化溶液31は、測定・分析対象のタンパク質結晶化溶液である。
一般的に、タンパク質の結晶は、過飽和溶液から析出させて作製される。この際、通常は、タンパク質を含む溶液に塩類、有機溶媒、あるいは水溶性高分子などの沈殿剤(結晶化剤)を添加して、タンパク質溶液を過飽和状態にしてタンパク質を結晶化する。
このため、本実施形態のタンパク質結晶化溶液31は、タンパク質と、タンパク質を結晶化するための沈殿剤(結晶化剤)とを含む溶液、或いは、それらを含む各溶液の組み合わせ(混合)である。また、タンパク質結晶化溶液31には、pH値を制御するために、タンパク質の結晶化に適した緩衝液(バッファー)を使用する。
また、タンパク質結晶化溶液31としては、バッチ法及び蒸気拡散法のいずれのタンパク質結晶化方法に係る試料溶液も用いることができる。ここで、バッチ法とは、例えば、タンパク質と沈殿剤(結晶化剤)とを混合させたタンパク質結晶化溶液を溶液セル30内に封止して、タンパク質を結晶化させる方法である。また、蒸気拡散法とは、タンパク質含有溶液と沈殿剤(結晶化剤)含有溶液、及び緩衝液など必要な各溶液を溶液セル30の中に離した状態で注入し封止して、タンパク質を結晶化させる方法である。
タンパク質結晶化溶液31の封入方法としては、例えば、タンパク質とその沈殿剤(結晶化剤)を混合させた結晶化溶液作成し、溶液セル30中に注入し封止することができる。
あるいは、例えば、先にタンパク質含有溶液を溶液セル30に注入し、後に例えば光散乱計測による分析の直前に、溶液セル30に設けた注入口から沈殿剤(結晶化剤)を含む溶液を注入してもよい。
この場合、例えば溶液セル30に振動を与え、溶液セル30中で両者の溶液を良く混合させる。なお、溶液セル30に注入する各溶液の順序は、特に制限はなく、上述の説明とは逆であってもよい。
平板状基板32は、溶液セル30に入射光が入射する側の部材である。また、反対側の平板状基板33は、溶液セル30から透過光が出射され、また散乱光が放射される側の部材である。
平板状基板32及び平板状基板33は、光透過性が高いことが望ましく、入射光や散乱光が吸収されない材料を選択することが好ましい。
また、平板状基板32及び平板状基板33は、同じ材料である必要は特になく、光透過性が高い材料であれば両者が異なった材料で構成してもよい。
同じ材料の透明部材で平板状基板32、33を用いた場合には、溶液セル30において入射側と出射側の区別はなく、どちらから光を入射させてもよい。
平板状基板32、33としては、透明で均一な材料であれば良い。透明ガラス、透明プラスチック等を用いることができる。平板状基板32及び平板状基板33がガラスの場合は、ホウケイ酸ガラスや石英ガラス等が特に好ましく、顕微鏡用の薄いカバーガラス等が特に利用しやすい。この際、厚さ0.2mm程度以下のカバーガラスが特に好ましい。
スペーサー34としては、ガラスをはじめ、ポリスチレン、ポリプロピレン、フッ素ゴムやシリコンゴム等が適する。その中で、シリコンゴムが特に好ましく、シートやフイルムを使用する。シリコンゴムは、平板状基板32、33にガラス基板を用いた際の密着性も良好であり、スペーサーの材料として特に好ましい。また、シリコンゴムは、数十分間程度の測定時間であれば、隙間からの水分蒸発で結晶化溶液の各種溶質の濃度変化も問題にならない。
スペーサー34は、例えば、平板状のシリコンゴムに、例えば円形や楕円形、及び長方形等の任意形状の溝孔を形成する。この上で、スペーサー34を2つの平板状基板32、33で挟むことによって形成される溝孔空間に、タンパク質結晶化溶液31を収容することができる。すなわち、この溝孔空間にタンパク質結晶化溶液31を注入して保持することで、容器として機能する。この際、スペーサー34にシリコンゴムを用いることで、タンパク質結晶化溶液31を収容するための溝孔、溶液を注入するための注入口、あるいは排出するための排出口、及びそれらの流路などを容易に加工形成できる。
また、タンパク質結晶化溶液31を収容するスペーサー34の溝孔の大きさは、入射光のビームよりも大きくすることが好適である。これは、溝孔が入射光ビームの大きさよりも小さい場合、タンパク質結晶化溶液に照射する光の一部がスペーサー部分に当たり、溶液からの散乱光に加え、スペーサーから散乱光が生じることになり、散乱光測定の大きなノイズになるので、好ましくないためである。
ここで、バッチ法によるタンパク質結晶化を行う際には、例えば、タンパク質含有溶液と沈殿剤(結晶化剤)含有溶液とを混合させたタンパク質結晶化溶液31を溶液セル30内に封じ込めた状態で光散乱計測を行う。
具体的には、上述のようにスペーサー34内に溝孔を設け、2つの平板状基板32、33を用いてタンパク質結晶化溶液31を封止する。この上で、タンパク質結晶化溶液31の状態を光散乱法で計測する。
この際、溶液セル30に溶液を注入した後、結晶化溶液からの蒸発を防止するために、例えばパラフィンオイル等でシールすることもできる。
数十時間以上の長時間、タンパク質溶液を溶液セル30に保持した状態で使用する場合等では、さらに液漏れ防止のために2枚の平板状基板32、33とスペーサー34との間をシリコングリース等でシールすることもできる。
さらに、溶液セル30から溶液が漏れ出ないように、スペーサーと基板とを強く密着させ、場合によっては適宜の留め金具等で溶液セル30をクリップする。また、溶液漏れを防止するために、例えばグリース等で密着する側面部分をシールすることが好適である。この漏れ防止用のグリースとしては、シリコングリースやフッ素グリース等が使用できる。
また、例えば、タンパク質を蒸気拡散法で結晶を行っている際には、バッチ法と同様に同一の溶液セル30の中に必要な各溶液を離した状態で注入して、その後、封止し、光散乱計測により結晶化溶液状態を分析する。
なお、溶液セル30内に予めタンパク質結晶化溶液を封止するバッチ法を使用せず、分析の際にタンパク質結晶化溶液を作製するためのタンパク質、沈殿剤(結晶化剤)、緩衝剤等の各物質を含む溶液を、溶液セル30内に注入したり、排出したりできるようにして、タンパク質結晶化溶液の分析を行うことも可能である。このような構成の場合、溶液セル30に溶液を注入、あるいは排出するための挿入口や排出口を備えるようにする。この場合、挿入口と排出口を用いて、タンパク質結晶化溶液の分析中に、各物質の濃度を調整したり、変化させたりして分析を行うことも可能になる。
〔散乱光の取得方法〕
次に、図4を参照して、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xによる溶液セル30からの散乱光の取得方法について説明する。
図4は、図3Aのタンパク質結晶化の溶液セル30を使用した場合の測定試料部3の一例を示している。また、図4では、タンパク質結晶化の溶液セル30における、入射光、透過光、及び散乱光の様子を表したもので、後述する、例えば半円柱形プリズム40(図5)のような透明体ブロックを用いない場合の概念図である。
溶液セル30への光入射に透明体ブロックを用いない場合、入射角制御部4のθ回転ステージ14上の固定ホルダー等の所定の固定手段によりに溶液セル30を固定する。
この上で、タンパク質結晶化溶液中を通過する光が平行になるように、溶液セル30の入射側の側壁平面部分に平行な光を垂直に入射させる。
その入射角度の調整を入射角制御部4の溶液セル30を載せ固定したθ回転ステージ14によって行う。
タンパク質結晶化溶液31からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光の散乱角度分布(放射分布)を高精度に測定するためには、θ回転ステージ14と2θ回転ステージ18の回転の中心軸が一致する、すなわち共軸の回転軸であることが必要である。また両方の回転ステージ、特に前方小角散乱光又は後方小角散乱光の散乱角度分布を測定するために使用する2θ回転ステージ18は、微小角度、例えば0.02度程度で回転位置を制御することが好適である。
回転ステージを微小角度で制御するには、5相、あるいは2相のステッピング(パルス)モーター等で駆動する回転ステージが好ましい。
より高精度の回転角精度で位置決め制御をするためには、5相のステッピング(パルス)モーターが特に好ましい。たとえば、5相ステッピング(パルス)モーターでは、本体への信号1パルス当たり0.72度の回転移動量(基本ステップ)が得られる。この上で、回転ステージの駆動で使用するギヤのギヤ比の設定にり、例えば0.005度という高精度の回転ステップ角を設定することも可能である。
しかし、実際には、回転ステージの重量、搭載された散乱光検出部5やスリット群11等の機器の重量、及び回転ギヤ等の結合状態等が原因で、必ずしも上記のような高精度の移動角度や回転位置決めが得られないことがある。このため、移動角度や回転位置決め等の性能としては、性能に余裕を持った回転ステージを使用することが好適である。
測定散乱角制御部8の2θ回転ステージ18、及び入射角制御部4のθ回転ステージ14の各制御は、各回転ステージのモーターを駆動するための駆動ドライバーであるドライバー4a、8a(図2)によって行う。具体的には、図2に示すように、それぞれ回転ステージ14、18を駆動するモーター駆動用のドライバー4a、8aを、PC9bによって制御操作する。PC9bからドライバー4a、8aへ、モーター駆動用ドライバーに制御信号を送ることで、回転移動角度、回転角による位置決め、散乱光の角度分布測定のためのステップ角度などの制御を行うことができる。
(透明体ブロックを用いた散乱光の取得方法の例)
ここで、図5を参照して、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xによる溶液セル30からの散乱光の取得方法として、透明体ブロックを用いる例について説明する。
図5は、図3Aのタンパク質結晶化の溶液セル30を使用した測定試料部3における、入射光、透過光、及び散乱光の関係を表している。
透明体ブロックに溶液セル30を装着する場合には、溶液へ入射する光が平行になるように、レンズ等を用いて光を透明体ブロック側へ入射させる。
図5の例のように透明体ブロックが半円柱形プリズム40であり、図3Aの例のように溶液セル30が平板状である場合には、溶液セル30を装着した半円柱形プリズム40の入射側の所定位置に、例えば円筒面平凸レンズ(シリンドリカルレンズ)や球面凸レンズ等であるレンズ41を設置し、透明体ブロック側から入射させる光がコリメートビーム光で溶液セル30を通過するようにする。
図5は、透明体ブロックとして、半円柱形プリズム40を用いた場合における、入射光、透過光、及び散乱光の様子を示している。図5の例では、半円柱形プリズム40の平面部分に、タンパク質結晶化のための溶液セル30を密着固定している。また、溶液セル30へ平行な光を入射させるために、半円柱形プリズム40の曲面である側面側に適宜の焦点距離を持ったレンズ、例えば円筒面平凸レンズのレンズ41(レンズ部)を配置している。
図5では、半円柱形プリズム40を入射角制御部4のθ回転ステージ上14に固定している。半円柱形プリズム40は、例えば固定ホルダーを用いて固定する。
この上で、溶液セル30は、所定の手段で半円柱形プリズム40に装着し、半円柱形プリズム40を介して光を入射させている。溶液セル30は、半円柱形プリズム40の平面部、具体的には半円柱形プリズムの側面平面へ、光学的に接続する接着方法によって張り合わせる。
半円柱形プリズム40に溶液セル30を光学的に接続させるには、半円柱形プリズム40の材料と溶液セル30の構成材料が例えばBK−7ガラスなどのガラスである場合、ガラスの屈折率に等しい適宜の屈折率整合オイル等を用いて、半円柱形プリズム40へ溶液セル30を密着させ固定する。
屈折率接合オイルは、光学ガラス材料と同じ屈折率を持ち、粘性を有するが容易には固化しないオイルを用いる。特に、半円柱形プリズム40と溶液セル30の材料が、光学ガラス材料であれば、光学顕微鏡用の屈折率整合オイルを使用可能である。
これにより、接合部分で散乱光が発生しないようにでき、さらにまた、半円柱形プリズム40に装着した溶液セル30を容易に取り外しできるようにすることができる。
また、半円柱形プリズム40のような半円柱形等の湾曲した側面から光を入射させる場合、円筒面平凸レンズのレンズ41として、適切な焦点距離と口径の凸レンズ等を入射側に備えるようにする。この円筒面平凸レンズのレンズ41により、溶液セル30中のタンパク質結晶化溶液31を通過する光が平行になるように、入射光の形状を調整することができる。
たとえば、半円柱形プリズム40が屈折率約1.50のガラス製の半径10mmの半円柱形プリズムである場合、レンズ41として、入射側に焦点距離130mmであるシリンドリカルレンズ又は凸レンズを半円柱形プリズム40の回転中心軸から距離約160mmの位置に配置して、溶液セル30に平行な入射光を入射させる。
溶液セル30に入射する入射光は、溶液セル30の入射側の面で光が屈折しないような入射角度で入射することが望ましい。溶液セル30の入射側が入射光ビーム径に対して平面である場合には、溶液セル30面での屈折が避けられる入射角、すなわち、垂直入射が特に好ましい。
従って、入射光が、溶液セル30に密着させた半円柱形プリズム40側から、溶液セル30へ垂直に入射するように、入射角制御部4構成のθ回転ステージをステッピング(パルス)モーターで駆動することによって、溶液セル30へ入射する光の入射角度を調整する。
なお、タンパク質結晶化溶液の散乱光測定では、光学プリズム等の透明体ブロック側から光を入射し、溶液セル30側から散乱光を測定してもよい。また、反対に、溶液セル30側へ光を入射し、透明体ブロック側から散乱光を測定してもよい。さらに、使用する透明体ブロックの形状、溶液セル30の形状、及び入射光の形状などに応じて、いずれかの測定配置を選択することが好適である。
透明体ブロックとしては、光透過性が良ければ、特に材料に制限はない。しかしながら、溶液セル30の構成材料と同じ、例えば透明性の良いガラスを用いることで、溶液セル30に密着し装着することができる。
また、透明体ブロックとしては、例えば、半円柱形、台形、直方体形、及び立方体形等の光学プリズム等が使用できる。透明体ブロックが台形や直方体形や立方体形のプリズムであり、これらのプリズムの平面部よりコリメート光を垂直に入射させる場合には、透明体ブロックの入射側には、特にシリンドリカルレンズや球面凸レンズ等を設置する必要もなく、溶液セル30が装着された台形プリズムへの入射光は、平行光ビームの状態で溶液セル30へ入射させられる。
また、透明体ブロックは、入射角制御部4構成のθ回転ステージ14に固定しておき、溶液セル30を支持する機能を備えることもできる。
なお、入射角制御部4においてθ回転ステージ14を用いない場合、透明体ブロックは、測定散乱角制御部8の2θ回転ステージ18の中心軸上に設置しておき、溶液セル30を支持する機能を備えることもできる。
〔タンパク質結晶化溶液31の測定・分析処理〕
次に、図6を参照して、タンパク質結晶化溶液の分析には、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xを用いて、散乱角を解析し、タンパク質結晶化溶液の結晶化状態を分析する測定・分析処理について記載する。
本実施形態のタンパク質結晶化分析装置Xは、前方小角散乱光又は後方小角散乱光により、タンパク質結晶化溶液を分析する装置である。
ここで、上述のように、光散乱計測によるタンパク質結晶化溶液の状態分析には、コロイド粒子のような微粒子の場合よりも、高感度かつ高精度の光散乱計測技術が要求される。
本発明の発明者らは、鋭意実験と開発を行った結果、結晶化の前段階状態にあるタンパク質凝集体の散乱特性が、コロイド等の微粒子、例えばシリカ微粒子等の散乱光特性とは大きく異なっていることを見いだした。
すなわち、例えば、米国国立標準技術研究所(NIST)準拠標準粒子である、粒子径0.5μmのシリカ粒子は、水中分散系による光散乱の散乱角度分布において、広い散乱角範囲で強い散乱光が生じる、球状微粒子による典型的レーリー散乱の放射パターンを示す。
これに対して、本発明の発明者らは、結晶化剤を含んだニワトリ卵白リゾチームの結晶化前段階状態における結晶化溶液では、上記の微粒子分散系よりも散乱光強度が微弱であるが、前方小角又は後方小角の光散乱が顕著に表れることを見いだした。
これは、結晶化の前段階状態にあるタンパク質凝集体は、タンパク質結晶化溶液中で周囲の溶媒と強く結合しているため、散乱光強度の放射角度分布、時間的変化等の光散乱の特性が、溶媒中に分散しているシリカ微粒子等の散乱光特性とは大きく異なっているためである。
よって、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化溶液31の測定・分析処理においては、上述した各部を用いて、タンパク質結晶化溶液31の前方小角又は後方小角の光散乱、特に前方小角光散乱を測定する。これにより、タンパク質の結晶形成の前段階状態の分析を行う。
より具体的には、前方小角又は後方小角の光散乱、特に前方小角光散乱の測定によって、沈殿剤(結晶化剤)を含むタンパク質結晶化溶液31中におけるタンパク質の凝集体、結晶核、微結晶などの結晶化形成の結晶化状態を推定する。これにより、溶液が結晶化する状態にあるかどうか、すなわち上述の準安定領域にあるか等についての分析を行う。
以下で、制御解析部9によりその他の各部を制御し、タンパク質結晶化溶液31を測定・分析する処理の詳細について、図6を参照して説明する。
(ステップS101)
まず、制御解析部9は、初期設定処理を行う。
具体的に説明すると、制御解析部9は、タンパク質結晶化溶液31を光散乱計測によって分析するためタンパク質結晶化分析装置Xの初期設定を行う。
まず、制御解析部9は、入射角制御部4による試料測定部3の初期角度、測定散乱角制御部8による測定散乱光導入部7及び散乱光検出部5の初期角度、微小走査回転角度、終了条件、光源1の種類や波長、測定散乱光導入部7を含む光学系/回路系の構成、ロックイン解析をするか否か等について、実験を行うユーザーの設定等の入力を検知する。
また、制御解析部9は、タンパク質結晶化の結晶化条件が異なる溶液に対して、タンパク質結晶化溶液の前方小角光散乱を計測する。
このため、溶液試料となるタンパク質結晶化溶液31について、所定温度において、タンパク質の濃度、沈殿剤(結晶化)の濃度や種類、使用する緩衝液(バッファー)のpH値など、様々なタンパク質の結晶化条件についての情報を取得し設定する。この設定は、タンパク質結晶化溶液31の溶液状態を分析する際に使用できる。
(ステップS102)
次に、制御解析部9は、初期角度回転処理を行う。
具体的に、制御解析部9は、入射角制御部4により、測定試料部3を初期角度位置へ回転させる。また、制御解析部9は、測定散乱角制御部8により、測定散乱光導入部7及び散乱光検出部5についても、初期角度位置へ回転させる。
具体的には、制御解析部9は、入射角制御部4のドライバー4a(図2)を用いて、θ回転ステージ14(図2)を初期角度位置まで回転させ、測定試料部3へ入射する光の入射角を、例えば、垂直入射の角度に設定する。また、制御解析部9は、測定散乱角制御部8のドライバー8a(図2)を用いて、2θ回転ステージ18(図2)を初期角度位置まで回転させ、散乱光測定の開始角度に設定する。
(ステップS103)
次に、制御解析部9は、散乱光強度測定処理を行う。
この処理において、制御解析部9は、散乱光検出部5と入射モニター光検出部6とを用いて、タンパク質結晶化溶液31からの散乱光強度を測定する。
また、ロックイン検出法を用いる場合、光変調器16であるライトチョッパーと、ロックインアンプ17による調整も行う。
(ステップS104)
次に、制御解析部9は、測定データ保存処理を行う。
具体的には、制御解析部9は、計測、解析された散乱角θsに対するタンパク質結晶化溶液の光散乱強度のデータ群を、タンパク質結晶化溶液の結晶化についての分析データ(生データ)としてHDD等に記憶する。
また、制御解析部9は、光散乱強度のデータを、グラフとして直接、ディスプレイやプリンタやプロッタ等で描画して出力することもできる。
(ステップS105)
次に、制御解析部9は、ステップ角度回転処理を行う。
具体的には、測定散乱角制御部8のドライバー8aを用い、2θ回転ステージ18を所定の微小角ずつ回転させる。
これにより、散乱光検出部5を、2θ回転ステージ18によって、散乱光を測定する所定の前方小角になるように調整する。
後方小角散乱光の取得の場合にも、同様にドライバー8aを用い、2θ回転ステージ18により、散乱光検出部5を所定の後方小角で検出できるように調整する。
(ステップS106)
次に、制御解析部9は、測定する散乱角度が終了条件になったか否かを判定する。
具体的には、上述のように散乱光を所定の範囲で行うため、微小角の回転により、所定の散乱角の範囲になった場合、終了条件を満たすと判定する。
Yes、すなわち終了条件を満たす場合、制御解析部9は、処理をステップS107に進める。
No、すなわち終了条件を満たさない場合には、制御解析部9は、処理をステップS103に戻して、散乱光の測定を続ける。
(ステップS107)
次に、制御解析部9は、位置復帰処理を行う。
具体的には、制御解析部9は、測定散乱角制御部8のドライバー8aを用い、2θ回転ステージ18を、所定の元の位置に戻す。
(ステップS108)
次に、制御解析部9は、散乱光解析処理を行う。
具体的には、制御解析部9は、得られた散乱角θsに対するタンパク質結晶化溶液の光散乱強度のデータ群から、散乱光データを作成する。
このタンパク質結晶化溶液31の散乱光データとしては、次のいずれかの算出値、あるいはこれらの組み合わせを採用する。
まず、入射側のモニター光の強度I0に対する、タンパク質結晶化溶液31の測定された散乱光強度Isとの比、すなわち、Is/I0を散乱光強度として得る。これは、相対的な散乱光強度であるものの、光源の出力が変動した場合でも、散乱光測定に影響を与えず、測定散乱光導入部7を構成するスリット群、ピンホール群、又は虹彩絞り群、あるいはこれらの組み合わせの配置やそれら各素子の開口径等を変更しなければ、タンパク質結晶化溶液の散乱光測定として、十分で再現性の良いデータが得られる。
また、使用する光源1が安定しており、出射光の出力変動の影響が問題にならない程に十分に小さい場合は、上述したように、入射光強度をモニターする必要がない。この場合は、タンパク質結晶化溶液の測定された散乱光強度Is自身を散乱光強度として採用してもよい。
さらにまた、測定対象のタンパク質を含まないタンパク質結晶化溶液の溶媒、例えば緩衝液における散乱光強度を参照散乱光として、参照散乱光強度Irに対する、タンパク質結晶化溶液の散乱光強度Isとの比Is/Irを相対的散乱光強度とすることも可能である。また、測定対象のタンパク質を含まないタンパク質結晶化溶液の溶媒、例えば緩衝液の散乱光測定値を、参照散乱光の値として用いても良い。これにより、タンパク質凝集体からの散乱光を高感度に検出できる。
従って、計測するタンパク質結晶化溶液の散乱光データとして、上述のどの算出値を選択するかは、使用する光源の性能、構築した入射調整部の光学系、測定試料部3の構造や配置、測定散乱光導入部の構成や配置、測定対象のタンパク質結晶化溶液の散乱光特性等に応じて好適に決定することができる。
また、制御解析部9は、動的散乱光についても解析できる。
具体的に説明すると、制御解析部9は、前方小角又は後方小角における散乱光強度の時間的変化を、所定の時間間隔で数十回から数百回程度で測定し、得られた散乱光強度の変動パターン(揺らぎ)のデータを解析する。
制御解析部9は、散乱光の揺らぎデータの解析を統計的方法により行い、揺らぎの周波数パワースペクトル及び自己相関関数を求める。この解析結果から、タンパク質結晶化溶液の状態を分析することができる。
解析に必要となる測定する動的散乱光の時間間隔や測定データの個体数等の測定条件は、分析対象のタンパク質の種類や濃度、沈殿剤(結晶化剤)の種類や濃度、その他の結晶化溶液の諸条件(pH値、緩衝液の種類、温度等)等に依存し、分析する上で最適な測定条件として適切に設定する。
さらに、制御解析部9は、測定された散乱角θsに対する散乱光強度Isのデータから、静的散乱光強度の平均値を求めることもできる。
また、制御解析部9は、より好ましくは、散乱ベクトル(大きさ)qに対する散乱光強度Isデータに基づいて静的散乱光強度の平均値を求める。さらに、制御解析部9は、散乱角θsから、別の測定方法によって測定したタンパク質結晶化溶液31の屈折率nの値を用いて、散乱ベクトル(大きさ)qを下記の式(1)から求めることもできる。

q=4πn/λ・sin(θs/2) …… 式(1)

ここで、タンパク質結晶化溶液31の屈折率nは、光干渉法、全反射臨界角測定法、金属の光学的特性を利用した全反射減衰(ATR)法等を用いて測定し、その値を用いることができる。
その後、制御解析部9は、解析結果の最終的な出力を行う。
以上により、タンパク質結晶化溶液31の測定・分析処理を終了する。
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
上述のように、タンパク質結晶化条件の探索においては、沈殿剤(結晶化剤)の添加や溶液濃度の変化等の条件が、溶液中で単分散状態にあるタンパク質分子同士が凝集し、結晶を形成する方向にあるか否かを判別することが必要である。
本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xは、各濃度や沈殿剤(結晶化剤)の種類等の条件を変えたタンパク質結晶化溶液31に対して、得られた光散乱、特に前方小角光散乱又は後方小角光散乱による光散乱の測定データから、タンパク質結晶化の分析を行う。
これにより、光学顕微鏡等では結晶がまだ観察できないような、タンパク質結晶核成長の過程にある状態のタンパク質結晶化溶液31のタンパク質溶液結晶化状態を分析、判別することができる。
つまり、タンパク質結晶化分析装置Xは、タンパク質結晶化溶液において、光学顕微鏡等でタンパク質の結晶核成長や微結晶形成が確認されるまでの前段階状態にあるにも関わらず、結晶化が進行する方向にあるか否かを簡単に分析できる。
より詳細に説明すると、タンパク質結晶化溶液31が準安定領域の状態であれば、結晶核成長や微結晶形成が形成されると、結晶が大型化しやすい。このため、タンパク質の結晶作製は準安定領域の濃度条件下で行うことが好ましい。よって、この準安定領域となる濃度領域を見出すことがタンパク質結晶を作製する上で、最も重要である。
本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xは、従来のタンパク質結晶化条件の探索やタンパク質結晶作製のような非能率的な結晶化条件の網羅的手法とは異なり、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xは、タンパク質の結晶生成に要する時間を必要とせずに、タンパク質結晶化溶液の状態を分析でき、その溶液条件がタンパク質結晶化を促進する条件であるかどうかを判定できる。
従って、例えば、いくつかの結晶化条件を組み合わせた溶液試料に対して、光散乱計測を行い、得られた測定データを解析することで、タンパク質結晶化条件の探索が可能となる。つまり、数種類から数十種類程度の少数の溶液試料の測定であっても、タンパク質結晶化条件の探索ができる。
これにより、タンパク質の結晶核が成長し、光学顕微鏡等で微結晶が観察できるまでの長期の時間を待たずに、結晶形成前段階にある溶液状態において、設定した溶液条件でタンパク質の結晶化に進む方向にあるかどうか等の判断が短時間で行うことができる。すなわち、タンパク質の結晶化条件を比較的短時間に探索できる。
また、結晶構造解析に適した良質のタンパク質結晶を作製するには、高純度のタンパク質原料を使用する。タンパク質原料は大変貴重で高価であるために、コスト面から、分析に用いる溶液量が微量であることが好ましい。
ここで、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xは、溶液セル30を通過する透過光の光路長は1mm程度以下であるため、分析に必要な溶液試料となるタンパク質結晶化溶液31の容量が、数十μL程度以下で測定できる。
また、溶液セル30にタンパク質結晶化溶液31を封入した状態でタンパク質の結晶化の分析を行うことができる。このため、貴重な溶液試料を損なうことなく、タンパク質結晶化の状態を測定できる。
また、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xにおいて、タンパク質結晶化溶液31からの計測する散乱光は、前方小角散乱光又は後方小角散乱光である。この前方小角散乱光又は後方小角散乱光からは、タンパク質結晶化溶液31の結晶化状態に敏感な高感度の信号が得られる。
また、光源から得られる平行な光、すなわちコリメート光をタンパク質結晶化溶液31へ入射させることによって、タンパク質結晶化溶液31からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光の、散乱角度に対する散乱光強度の関数、すなわち放射角度依存性(散乱光強度の角度分布)を計測することができる。
この計測された散乱光強度と放射角度依存性の信号やデータによって、高感度にタンパク質結晶化溶液31における結晶化状態を調べることができる。
また、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xは、入射角制御部4によって、タンパク質結晶化溶液31の溶液セル30へ入射する光の入射角度を適宜調整し、特に溶液セル30の入射側の側面に垂直に光を入射するように、入射角度を調整することができる。また、入射光調整部2によって、タンパク質結晶化溶液31へ入射する光の光量や偏光性を調整することができる。
これにより、タンパク質結晶化溶液31の散乱光データを再現性良く、高い信頼性で得ることができる。
また、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xは、溶液セル30から放射される散乱光に対し、測定散乱光導入部7及び散乱光検出部5の角度位置を調整制御する測定散乱角制御部8を備えている。
これにより、溶液セル30からの散乱光を好適な散乱角度で測定できる。
以下、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xを用いて、タンパク質結晶化溶液の測定・分析処理を行った例を、実施例として説明する。
しかしながら、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(溶液セル30の構成)
本実施例においては、図3A、Bで説明したのと同様の本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xの溶液セル30を用いた。
ここで、タンパク質結晶化溶液31としては、分析対象のタンパク質とその沈殿剤(結晶化剤)とを含む溶液を使用した。この分析対象のタンパク質は、タンパク質のニワトリ卵白リゾチームである。ニワトリ卵白リゾチームは、従来の相図が作成されているように、結晶化の諸条件が良く調査されており、分析対象として最適なタンパク質である。また、沈殿剤(結晶化剤)は、塩化ナトリウムを含む水溶液を用い、pH値を緩衝液(バッファー)である酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液で調整した。
平板状基板32、33は平板状の透明基板であり、薄い光学ガラス基板を用いた。
また、スペーサー34として、透明の平板状基板32及び平板状基板33の間にタンパク質結晶化溶液31を収容するために溝孔が形成されたシリコンゴムのスペーサーを用いた。具体的には、溶液セル30の平板状基板32及び平板状基板33の間に、溝孔のあるスペーサー34を挟むことによって、分析対象であるタンパク質結晶化溶液31を収容した。
この上で、平板状基板32又は平板状基板33側から、タンパク質結晶化溶液31へ光を入射し、反対側基板から散乱光を放射した。
図7は、タンパク質結晶化分析装置Xによって測定された、ニワトリ卵白リゾチーム結晶化溶液の静的光散乱分布(SLS)のグラフである。縦軸は、散乱光強度として取得したIs値を、入射モニター光検出部6による入射モニター光の強度I0で割って得られた値、すなわちIs/I0を示す。横軸は、前方小角散乱角の角度θs(°)を示す。
測定試料としては、ニワトリ卵白リゾチーム(以下、リゾチームと呼ぶ)の濃度30mg/mL、沈殿剤(結晶化剤)の塩化ナトリウムの濃度を0%、1.5%、3.0%について、図3A、Bと同様の溶液セル30にリゾチーム結晶化溶液を封止したバッチ法のタンパク質結晶化溶液31を用いた。
タンパク質結晶化溶液を収容した溶液セル30には、図5に示したのと同様に、半径10mmのBK−7ガラス製の半円柱形プリズム40の側面平面部に、ガラス材料と同じ屈折率の屈折率整合オイルで貼り付け、測定試料を装着した半円柱形プリズム40をθ回転ステージ14(図2)上に設置した。これに、図5のレンズ41に対応する、焦点距離130mmの円筒面平凸レンズ(シリンドリカルレンズ)により、半円柱形プリズム40の球面部側面側から試料溶液であるタンパク質結晶化溶液31へ、波長473nmの、水平面に対し垂直に偏光した(TE(s)偏光の)青色レーザ光を入射した。この上で、タンパク質結晶化溶液31からの散乱光を、透過光の方向(前方)からの散乱角度20°から3°までの前方小角散乱角の範囲で測定した。
図7のリゾチーム結晶化溶液の散乱光強度の散乱角依存性によると、リゾチームの沈殿剤(結晶化剤)である塩化ナトリウム(NaCl)の濃度3.0%の溶液の散乱光が、NaCl濃度0%(無し)の溶液の散乱光に比べて、その散乱光強度が著しく大きいことが判る。特に、散乱角8°付近より小角、特に4°から6°付近の散乱角において、散乱光強度が著しく増大している。一方、NaCl濃度1.5%の結晶化溶液の散乱光は、NaCl濃度0%の溶液の散乱光曲線と比べてもあまり大きな相違が見られない。
上記の特性から、NaCl濃度1.5%と3.0%とでは、リゾチーム結晶化溶液中のリゾチームの状態が大きく異なっており、散乱光強度が顕著に増大しているNaCl濃度3.0%の溶液では、リゾチームの結晶化が著しく進行していると判定できる。
12°〜20°の比較的大きな散乱角では、4°〜8°付近の散乱角が小角である散乱光特性ほどには、溶液中のNaCl濃度の相違による散乱光強度の差は現れていない。しかしながら、4°〜8°付近、特に4°〜6°付近の前方小角散乱角における散乱光で、リゾリーム結晶化溶液の状態の相違が敏感に現れることが分かる。
また、NaCl濃度3.0%のリゾチーム結晶化溶液の散乱光の曲線には、特に、小さな変動が計測されている。この変動は、散乱光測定の際の迷光、及び散乱光計測の際の電気的ノイズ等に因るものではなく、結晶化溶液からの散乱光自身の揺らぎ、すなわち、溶液中のリゾチーム凝集体や微結晶等の散乱体の熱的揺らぎが原因で生じたものである。
4°〜6°付近の前方小角散乱角で、散乱光検出部5の光検出器として、高感度の光電子増倍管(PMT)を用いて散乱光を検出し、ストレージ型(波形記録型)のオシロスコープでその散乱光による増幅電圧信号を観測したところ、散乱光が数十Hz程度以下の低周波領域において時間的に複雑に揺らいでいることが分かった。
一方、結晶化溶液の散乱光強度が小さい、12°〜20°の比較的大きな散乱角では、散乱光の揺らぎは小さい。このため、この揺らぎを良好なSN比で測定するには、低ノイズの高性能増幅器等が必要であり、微小計測技術を必要とする。
さらに、図7のリゾチーム結晶化溶液の静的散乱光の測定データを、リゾチーム結晶化溶液のタンパク質濃度―沈殿剤(結晶化剤)濃度に係る相図と併せて考察すると、以下のことが分かる:
上述の特許文献1や非特許文献1に記載の相図によると、NaCl濃度0%と、NaCl濃度1.5%とは、相図中の実線よりもわずかに低濃度側、すなわち結晶化が進行しない濃度領域に位置していた。つまり、NaCl濃度0%及び1.5%は、結晶化が進行しない濃度条件であり、具体的には、リゾチームの結晶作製には適していない濃度領域である。
ここで、図7に示すタンパク質結晶化溶液31の散乱光特性において、NaCl濃度0%(沈殿剤(結晶化剤)を含まない場合)と1.5%のリゾチーム溶液(30mg/mL)では、大きな相違が見られなかった。
このような散乱光特性から、この濃度条件の溶液は結晶化が進行しない状態であると判断することができる。つまり、本実施例の結果は、相図に示される濃度位置と良く一致する。
これに対して、図7に示すように散乱光強度が著しく増大するNaCl濃度3.0%の溶液は、特許文献1や非特許文献1に記載の相図で準安定領域に位置している。すなわち、相図によると、この濃度条件下では結晶化が進行するため、リゾチームの結晶作製に適した溶液状態である。従って、図7に示す顕著な散乱光の増大は、リゾチームの結晶化が進行する状態に対応していることが分かる。
さらにまた、相図において、一度に多数のタンパク質の微結晶が形成され、良質で大型のタンパク質結晶の作製には適さない過飽和の濃度領域、例えばNaCl濃度5.0%のリゾチーム溶液(30mg/mL)の散乱光特性は、図7には示されていないが、その散乱強度がNaCl濃度3.0%の場合よりもさらに増大し、しかも小角散乱角だけでなく、全体的に広い散乱角度範囲(測定した散乱角20°まで)で散乱光の増大が見られるようになる。また、この際、散乱光曲線には、新たに周期的な散乱ピークが現れた。これらの散乱ピークは、溶液中に形成されたサイズが光学顕微鏡で観測可能な数十μm程度以上の微結晶による光回折に拠るものである。光学顕微鏡で確認したところ、例えば、過飽和溶液であるNaCl濃度5.0%のリゾチーム溶液(30mg/mL)では、実際に多数のリゾチーム微結晶を確認できた。
従って、この実施例により、本発明の実施の形態に係るタンパク質結晶化分析装置Xによって、タンパク質結晶化の状態分析に適した、前方小角散乱角における散乱光に対し高感度かつ高精度に測定が実現できることが分かる。また、測定された散乱光の特性から、タンパク質結晶化溶液の結晶化状態を分析することが可能である。さらに、散乱光の測定から、顕微鏡で観察可能な結晶が形成された場合のタンパク質結晶化溶液の結晶化状態の分析も可能である。
図8は、上述の実施例におけるタンパク質結晶化溶液の静的光散乱強度の平均値と沈殿剤(結晶化剤)の関係を示すグラフである。
図8の横軸は結晶化剤であるなNaCl濃度を示している。また、図8の縦軸は、静的光散乱強度の平均値を散乱光強度の値として示している。この静的光散乱強度の平均値は、図7に示されるようなタンパク質結晶化溶液を測定した静的光散乱分布(θs―Is)を基に、上述の式(1)により、散乱角θsを波数ベクトルqに変換し、q―Isのデータにおいて、測定範囲のqに関して散乱光強度Isを平均した値である。この値は、各溶液試料の静的光散乱強度を相対的に簡単に比較できる指標となる。
図8では、リゾチーム濃度20mg/mL、及び30mg/mLの溶液において、沈殿剤(結晶化剤)のNaCl濃度0%(無し)、1.5%、及び3.0%の溶液試料に対して、静的散乱光強度の平均値を比較している。
リゾチーム濃度の小さい20mg/mLの溶液では、散乱光強度が、1.5%、3.0%とNaCl濃度の増加によって単調に比例して増大しているのに対して、リゾチーム濃度のより大きい30mg/mLでは、NaCl濃度3.0%の溶液で急激な散乱光強度の増大を示している。
このことから、リゾチーム濃度の大きい30mg/mLで、NaCl濃度1.5%と3.0%の付近で、溶液中におけるリゾチームの状態の変化、例えば凝集体形成や微結晶形成の促進などの結晶化の進行が起こることが推測できる。なお、これらの各溶液のリゾチーム及び結晶化剤の濃度条件は、特許文献1や非特許文献1に記載の相図によると、リゾチームの結晶作製に適する準安定条件の濃度領域に位置する。
また、図8に示されるリゾチーム溶液の光散乱強度の平均値を、特許文献1や非特許文献1に記載の相図と照合すると、以下が判明する:
すなわち、これらの相図によると、NaCl濃度に対してリゾチーム濃度の大きい30mg/mL溶液の散乱光強度の増大が急激であるのは、リゾチーム濃度の低い20mg/mLに比べて、NaCl濃度に対する準安定領域が狭いために、NaCl濃度に対してより敏感にリゾチームの結晶化状態が変化したことが原因であると推定される。
従って、タンパク質結晶化溶液の各濃度、溶液温度、pH値等の諸条件を変化させ、タンパク質結晶化溶液の光散乱、特に前方小角光散乱又は後方小角光散乱を計測・解析することによって、タンパク質の状態図(相図)に相当するデータを収集できる。このため、実際にタンパク質の結晶を作成しなくても、測定した光散乱データを基に、相図に相当するタンパク質の状態図を作成することも可能である。
たとえば、溶液のpH値、溶液温度、タンパク質濃度をそれぞれ一定の条件下で、沈殿剤(結晶化剤)の濃度を変化させた場合における前方小角光散乱又は後方小角光散乱を計測することができる。
また、例えば、溶液のpH値、溶液温度、沈殿剤(結晶化剤)の濃度をそれぞれ一定の条件にして、タンパク質濃度を変化させた場合における、前方小角光散乱又は後方小角光散乱を計測することもできる。
また、タンパク質結晶化溶液の前方小角における静的光散乱(SLS)の計測だけでなく、前方小角における動的光散乱(DLS)の計測データからも、上述の実施例に示したようなタンパク質結晶化溶液の状態を分析することができる。
本発明は、タンパク質結晶化溶液の結晶化状態の分析装置及び分析方法を提供するため、産業上利用することができる。
1 光源
2 入射光調整部
2a 偏光素子
2b 光量調整フィルター
3 測定試料部
4 入射角制御部
4a ドライバー
5 散乱光検出部
6 入射モニター光検出部
6a 入射モニター光検出器
6b ビームスプリッタ
7 測定散乱光導入部
8 測定散乱角制御部
8a ドライバー
9 制御解析部
9a A/D変換器
9b PC
11 スリット群
14 θ回転ステージ
15 入射光光路変更部
15a、15b 平面ミラー
16 光変調器
17 ロックインアンプ
18 2θ回転ステージ
30 溶液セル
31 タンパク質結晶化溶液
32、33 平板状基板
34 スペーサー
40 半円柱形プリズム
41 レンズ
X タンパク質結晶化分析装置

Claims (20)

  1. タンパク質の結晶化を分析するタンパク質結晶化分析装置において、
    タンパク質結晶化溶液の前方小角又は後方小角の散乱光を、該散乱光検出部へと導く測定散乱光導入部と、
    前記測定散乱光導入部により導かれた前記散乱光を検出する散乱光検出部と、
    前記散乱光検出部で検出された前記散乱光の強度を解析し、前記タンパク質結晶化溶液におけるタンパク質の結晶化状態を分析する制御解析部とを備える
    ことを特徴とするタンパク質結晶化分析装置。
  2. 前記散乱光は、測定対象の溶液へ入射する光の透過光に対する散乱角度が10°程度以下の前方小角散乱光、又は測定対象の溶液へ入射する光の反射光に対する散乱角度が10°程度以下の後方小角散乱光であり、
    前記測定散乱光導入部は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光を導く
    ことを特徴とする請求項1に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  3. 測定する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の散乱角度を変化させる測定散乱角制御部を備え、
    前記制御解析部は、前記測定散乱角制御部の散乱角度を制御し、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の値を解析する
    ことを特徴とする請求項2に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  4. 前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の値は、それぞれ前記散乱角度に対する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度関数により求める
    ことを特徴とする請求項3に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  5. 前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の値は、それぞれ前記散乱角度に対する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度関数から求めた前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度の平均値である
    ことを特徴とする請求項3に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  6. 前記制御解析部は、前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の時間的強度ゆらぎに基づいて、前記タンパク質結晶化溶液におけるタンパク質の結晶化状態を分析する
    ことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  7. 前記測定散乱光導入部は、前記タンパク質結晶化溶液と前記散乱光検出部の間に配置され、少なくとも2つ以上のスリット、ピンホール、又は虹彩絞りを含む
    ことを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  8. 前記タンパク質結晶化溶液の入った溶液セルを固定する、透明ブロック及び支持台を含む測定試料部を備え、
    前記透明ブロックは、前記溶液セルを光学的に密着させる
    ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  9. 前記透明ブロックは、半円柱形プリズムであり、前記溶液セルへ平行光を入射するためのレンズ部を備える
    ことを特徴とする請求項8に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  10. 前記溶液セルに入射する光の入射角度を調整制御するための入射角制御部を備える
    ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  11. 前記タンパク質結晶化溶液に光を照射する光源を備える
    ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  12. 前記光源は、単一光の光源であり、タンパク質分子に固有の光吸収帯から離れた波長領域の光源である
    ことを特徴とする請求項11に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  13. 前記光源は、ダイオード励起固体レーザである
    ことを特徴とする請求項11又は12に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  14. 前記光源から出射される光の偏光状態を調整し、
    前記散乱光の検出に適するように、前記タンパク質結晶化溶液への入射光の光量を調整する、入射光調整部を備える
    ことを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  15. 前記光源から出射される光の強度をモニターする入射モニター光検出部を備える
    ことを特徴とする請求項11乃至14のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  16. 前記タンパク質結晶化溶液は、
    タンパク質と、該タンパク質の結晶化剤とを含む
    ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載のタンパク質結晶化分析装置。
  17. タンパク質の結晶化を分析するタンパク質結晶化分析方法において、
    タンパク質結晶化溶液に光を照射し、
    前記タンパク質結晶化溶液からの前方小角散乱光又は後方小角散乱光を測定し、
    前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度に基づいて、前記タンパク質結晶化溶液の状態を分析する
    ことを特徴とするタンパク質結晶化分析方法。
  18. 前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度は、それぞれ散乱角度に対する前記前方小角散乱光の強度関数又は前記後方小角散乱光の強度関数である
    ことを特徴とする請求項17に記載のタンパク質結晶化分析方法。
  19. 前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度は、それぞれ散乱角度に対する前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の強度関数から得られる、前記前方小角散乱光の強度の平均値又は前記後方小角散乱光の強度の平均値である
    ことを特徴とする請求項17に記載のタンパク質結晶化分析方法。
  20. 前記前方小角散乱光又は前記後方小角散乱光の時間的強度ゆらぎに基づいて、前記タンパク質結晶化溶液におけるタンパク質の結晶化状態を分析する
    ことを特徴とする請求項17に記載のタンパク質結晶化分析方法。
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