JP2012127012A - 生乾き臭抑制剤 - Google Patents
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Abstract
Description
再発性の生乾き臭の特徴的な点は、洗濯し十分に乾燥した後は発生しない、ないし殆ど低減されるが、湿気を帯びるだけで臭いが発生する点にある。再発性の生乾き臭は、長期間タンスなどに収納した場合に生じ易い。しかしながら、下着、ハンカチ又はタオルなど、ヒトの肌との接触機会が多く、洗浄−使用サイクルの期間の短い使用頻度の多い繊維製品は、一度この生乾き臭が発生するようになると使用中に臭いが再発してくることが多い。さらには、洗濯回数が増えるほど生乾き臭の臭い強度が高まる傾向がある。
香料成分を用いたマスキング方法としては、香料成分又は香料成分の安定化剤として脂環式ケトン化合物を含有する布帛処理剤を用いたマスキング方法が知られている(例えば、特許文献3及び4参照)。異臭の原因となる微生物の抗菌や殺菌による消臭方法としては、ジケトン化合物や、陽イオン性有機抗菌剤、トリクロサン及びジクロロサンなどの殺菌剤を含有する処理剤を用いた方法などが知られている。例えば、特許文献5には、殺菌剤を用いて生乾き臭を抑制する技術が開示されている。また特許文献6はジケトン化合物を用いて、発汗に伴った悪臭を抑制する技術に関し、非微生物悪臭を抑制する技術が開示されている。その他には、特許文献7には過酸化水素を含有する液体漂白剤自体のマスキングと香調の安定のために、界面活性剤並びにテルペン系炭化水素、脂肪族アルコール及び環状ケトンから選ばれる香料を含有する液体漂白剤組成物が開示されている。
さらに、このような知見に基づきさらなる検討を行った。その結果、特定の構造を有するカルボニル化合物が生乾き臭の抑制に有用であることを見出した。さらには、このようなカルボニル化合物が、生乾き臭の主な原因物質である4−メチル−3−ヘキセン酸の微生物による生成を抑制することを見出した。
本発明はこれらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
また、本発明は、前記生乾き臭抑制剤を含有する、生乾き臭抑制組成物に関する。
また、本発明は、前記4−メチル−3−ヘキセン酸生成抑制剤を含有する、4−メチル−3−ヘキセン酸生成抑制組成物に関する。
一般に、生乾き臭等の臭い抑制剤の作用機序としては、繊維製品等に付着した微生物の殺菌、繊維製品に残存する汗、皮脂等の生乾き原因物質への変換を予防、生乾き臭原因物質の無臭物質への分解又は変換、生乾き臭のマスキング等が挙げられる。なお、本発明における「生乾き臭抑制剤」の作用機序は、皮脂汚れ成分が生乾き臭原因物質の1種である4M3Hに変換されるのを予防し4M3Hの生成を抑制するものである。
なお、4M3Hには、下記に示すようにシス・トランス異性体が存在し、本発明においては、シス型、トランス型のいずれの構造の化合物も包含するものである。
繊維製品を洗濯後乾燥が不十分なため生じる生乾き臭としては、S(硫黄)臭、N(窒素)臭、アルデヒド臭、低級脂肪酸臭、4M3H臭を含む中級分岐脂肪酸臭などの複合臭である。一方、繊維製品を十分に乾燥させて生乾き臭を除去した後、再び雨、汗等の湿気などにより、繊維製品から再発する雑巾様臭の再発性の不快臭は、4M3H臭を主とする中級分岐脂肪酸臭が大部分であり、その他のS臭、N臭、アルデヒド臭などの揮発性の高い臭いはほとんど発生しない。
また、「生乾き臭抑制」とは、生乾き臭を抑制すること、生乾き臭生成を予防することを包含するものである。そして本発明では、生乾き臭として前記再発性の生乾き臭、特には4M3H臭の抑制を特徴的に指すものとする。
一般式(1)において、脂環式炭化水素基がシクロヘキサジエニル基の場合、該環の二重結合は共役していることが好ましい。なお、当然ながら、破線による2つの二重結合が環(或いはシクロとも言う)内で1つの炭素原子を挟んで隣り合うことはない。
R1又はR3で示される炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル基、tert−ペンチル基等が挙げられる。
R1又はR3で示される炭素数2〜5のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、3−ブテニル基、1−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基が挙げられる。
一般式(1)において、R1は炭素数2〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基、又は−O−R3で表される基であることが好ましく、エチル基、1−プロペニル基、3−ブテニル基、エトキシ基が好ましい。また、R3は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数2〜4のアルケニル基であることが好ましい。
例示化合物(1)(1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、α−ダマスコン)、
例示化合物(2)(1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、β−ダマスコン)、
例示化合物(3)(1-(2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、δ−ダマスコン)、
例示化合物(4)(1-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、β−ダマセノン)、
例示化合物(5)(1-(3,3-ジメチル-6-シクロヘキセン-1-イル)-ペンタ-4-エン-1-オン、α-ダイナスコン(α-DYNASCONE))、
例示化合物(6)(1-(3,3-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-ペンタ-4-エン-1-オン、β−ダイナスコン(β−DYNASCONE))、
例示化合物(7)(2,2,6-トリメチル-シクロヘキサン-1-カルボン酸エチル、テサロン(THESARONE))、
例示化合物(8)(2,6,6-トリメチル-シクロヘキサ-1,3-ジエン-1-カルボン酸エチル、エチルサフラネート(ETHYL SAFRANATE))、
例示化合物(11)(1-(p-メンテン-6-イル)-1-プロパノン、ネロン(NERONE))
例示化合物(12)(1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン、イソダマスコン)、
例示化合物(13)(2-メチル-4-オキソ-6-ペンチルシクロヘキセ-2-エン-1-カルボン酸エチル、Calyxol)、
例示化合物(14)(2-エチル-6,6-ジメチルシクロヘキセ-2-エン-1-カルボン酸エチル、ジベスコン(GIVESCONE))、
例示化合物(15)(2,2-ジメチル-6-メチレン-1-シクロヘキサン-1-カルボン酸メチル、ロマスコン(ROMASCONE))、及び
例示化合物(16)(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキセン-1-カルボン酸-2-プロペン-1-イル)
がより好ましい。
また、一般式(1)で表される化合物は、通常の製造方法で合成することもできる。例えば、前記例示化合物(16)は、例示化合物(8)をアリルアルコールと反応させてエステル交換反応を行い、生成したエタノールを除去することで合成することができる。
一般式(1)で表される化合物の可溶化又は乳化に用いる溶媒としては、乾燥により繊維製品から除去される低沸点の溶媒が好ましく、1013hPaにおいて110℃以下の沸点を有する溶媒がより好ましく、1013hPaにおいて105℃以下の沸点を有する溶媒が特に好ましい。好適な溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶剤;アセトニトリル等が挙げられる。
本発明の組成物における界面活性剤の含有量は1ppm以上が好ましく、2ppm以上がより好ましい。また、界面活性剤を500ppm以上含有する場合は、一般式(1)で表される化合物を0.2ppm以上含有させることが好ましい。
本発明における繊維製品の素材としては特に制限はなく、ウール、シルク、木綿等の天然素材、ポリエステル、ポリアミド等の化学繊維、及びこれらの組合せのいずれであってもよい。本発明において、繊維製品の素材は木綿であることが好ましい。繊維製品は未使用であっても、一度以上使用した使用済のものでもよい。本発明の生乾き臭抑制剤若しくは4M3H生成抑制剤、又はこれを含んでなる生乾き臭抑制組成物若しくは4M3H組成物を接触させる繊維製品は、湿気/水分を含んだものでもよいし、乾燥を十分に行ったものであってもよい。
スプレー処理を行う場合、噴霧手段としてはスプレーヤーが好ましく、エアロゾールやミスト、又はトリガー式などのポンプタイプのものを挙げることができる。ポンプタイプのスプレーヤーを用いる場合は、ボタ落ちが少ない蓄圧式と呼ばれるものを用いることが好ましい。本発明において、トリガー式スプレーヤーを用いて繊維製品に噴霧する方法がより好ましい。
トリガー式スプレーヤーを用いて繊維製品に噴霧する場合、組成物の20℃における粘度が15mPa・s以下が好ましく、1〜10mPa・sがより好ましい。なお、組成物の粘度調整は、組成物濃度の調整、市販の増粘剤の使用等によって行うことができる。なお、本発明の組成物の粘度は、以下のようにして測定されたものである。まず、東京計器社製B型粘度計モデル形式BMに、ローター番号No.1のローターを備え付けたものを準備する。試料をトールビーカーに充填し、20℃の恒温槽内にて20℃に調製する。恒温に調製された試料を粘度計にセットする。ローターの回転数を60rpmに設定し、回転を始めてから60秒後の粘度を水性組成物の粘度とする。
本発明の組成物に繊維製品を含浸させる場合、繊維製品に対する組成物の含浸量は、質量比で繊維製品/組成物=1/1〜1/30が好ましく、1/2〜1/20がより好ましく、1/3〜1/10がさらに好ましい。含浸する場合の組成物の温度は5〜40℃が好ましく、10〜35℃がより好ましい。含浸時間は1〜30分が好ましく、5〜15分程度がより好ましい。本発明の組成物には一般式(1)で表される化合物を1〜10000ppm含有させることが好ましい。また、繊維製品を組成物そのものに含浸させても、濃厚溶液組成物を水道水などで希釈した希釈液に繊維製品を含浸させてもよい。
衣類などの繊維製品50g程度を裁断し、ジクロロメタン500mLによりニオイ成分を抽出後減圧濃縮する。さらに、1M水酸化ナトリウム水溶液200mLを抽出溶液に添加し、回収した水層に2M塩酸200mL添加し酸性にする。この溶液に、ジクロロメタン200mLを加え有機層を減圧濃縮し、酸性成分の濃縮物を1mLに定容する。
続いてアジレント社製ガスクロマトグラフィーにゲステル社製Preparative Fraction Collector(PFC)装置を接続したものを用い、濃縮物を以下の条件においてGC保持時間で分画し、目的成分周辺のGC30回分を内径6mm、長さ117mmのガラス管に充填したTENAX TA(商品名、ジーエルサイエンス社製)200mgに捕集する。
以下に、ガスクロマトグラフィーの条件を示す。
(GC−PFC条件)
GC:Agilent6890N(商品名、アジレント社製)
カラム:DB−1(商品名、アジレント社製)、長さ30m、内径0.53mm、膜厚1μm
40℃ 1min.hold→6℃/min.to 60℃→4℃/min.to 300℃
Injection volume:2μL
PFC(Gerstel社製):trap time 18min.to 24 min.,30 times
trap:Tenax TA(商品名、ジーエルサイエンス社製)200 mg
生乾き臭の原因菌となる4M3H生成能を有する微生物としては、モラクセラ(Moraxella)属細菌、アシネトバクター(Acinetobacter)属細菌、シェードモナス(Pseudomonas)属細菌、バチルス(Bacillus)属細菌、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属細菌、ラルストニア(Ralstonia)属細菌、キュープリアビダス(Cupriavidus)属細菌、サイクロバクター(Psychorobacter)属細菌、セラチア(Serratia)属細菌、エシェリキア(Escherichia)属細菌、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属細菌、ブルクホルデリア(Burkholderia)属細菌、サッカロマイセス(Saccaromyces)属酵母、及びロドトルラ(Rhodotorula)属酵母等が挙げられる。具体的には、モラクセラ・エスピー(Moraxella sp.)、モラクセラ・オスロエンシス(Moraxella osloensis)、アシネトバクター・レイディオレジステンス(Acinetobacter radioresistens)、アシネトバクター・ジュニイ(Acinetobacter junii)、アシネトバクター・カルコアセティカス(Acinetobacter calcoaceticus)、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、エシェリキア・コーライ(Escherichia coli)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、シュードモナス・アルカリゲネス(Pseudomonas alcaligenes)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、サイクロバクター・パシフィセンシス(Psychrobacter pacificensis)、サイクロバクター・グラシンコラ(Psychrobacter glacincola)、スフィンゴモナス・ヤノイクヤエ(Sphingomonas yanoikuyae)、ラルストニア エスピー(Ralstonia sp.)、サッカロマイセス・セレビジエ(Saccaromyces cerevisiae)、ロドトルラ・ムシラギノーサ(Rhodotorula mucilaginosa)、ロドトルラ・スルーフィエ(Rhodotorula slooffiae)、キュープリアビダス・オキサラティカス(Cupriavidus oxalaticus)及びブルクホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)等が挙げられる。
洗濯乾燥の後に生乾き臭が強く発生した木綿のタオルを家庭より回収して50gを裁断し、ジクロロメタン500mLよりニオイ成分を抽出後減圧濃縮した。さらに、1M水酸化ナトリウム水溶液200mLを抽出溶液に添加し、水層を回収し、2M塩酸200mL添加し酸性にした。この溶液に、ジクロロメタン200mLを加え有機層を減圧濃縮し、酸性成分の濃縮物を1mLに定容した。
(GC−PFC条件)
GC:Agilent 6890N(商品名、アジレント社製)
カラム:DB-1(商品名、アジレント社製)、長さ30m、内径0.53mm、膜厚1μm
40℃1min.hold→6℃/min.to 60℃→4℃/min.to 300℃
Injection volume:2μL
PFC(Gerstel社製):trap time 18min.to 24min.、30times
trap:TENAX TA(商品名、ジーエルサイエンス社製)200mg
(TDS−GC−MS条件)
GC:Agilent 6890N(商品名、アジレント社製)
MS:Agilent 5973(商品名、アジレント社製)
TDS脱着条件:250℃、パージ流量50mL/min、パージ時間 3min.
カラム:DB-FFAP(商品名、アジレント社製)、長さ30m、内径250μm、膜厚0.25μm
40℃1min.hold→6℃/min.to 60℃→2℃/min.to 240℃
(1)菌株の単離
洗濯乾燥の後に生乾き臭が発生した木綿のタオル又はバスタオルを裁断し、LP希釈液(日本製薬社製)を添加後、攪拌した溶液0.1mlをレシチン・ポリソルベート添加ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト(本明細書においてSCD−LPともいう)寒天培地(日本製薬社製)に塗沫し、35℃、24時間培養後、得られたコロニーから微生物を単離した。単離した細菌株の同定は、16S rDNA遺伝子の上流領域約500bpの塩基配列、酵母株の同定は、LSUのD2領域の約200〜500bp領域の塩基配列を決定し、当該塩基配列と基準株との同一性に基づき行なった。塩基配列の同一性は、遺伝子情報処理ソフトウェアCustalWを用いて算出した。なおモラクセラ・エスピーに関してはモラクセラ・オスロエンシスATCC19976の塩基配列を決定し、その塩基配列と比較することで同定した。
各タオル又はバスタオルから単離された菌株を表1に示す。
上記で単離された各種菌株をそれぞれ生乾き臭が発生した木綿のタオル、あるいは使用後洗濯して保管していた木綿のタオルを滅菌処理したものに接種し、35℃で24時間加湿条件下(湿度100%)で培養後、生乾き臭の発生の有無を下記基準に基づいて、香料評価の訓練を受けた専門評価者(N=3)により、合意により判定した。
1:生乾き臭の発生が非常に強い
2:生乾き臭の発生が強い
3:生乾き臭の発生が弱い
4:生乾き臭が全くしない
その結果を表1に示す。
したがって、生乾き臭には本菌種などの特定の微生物が関与していることが明らかとなった。
前記試験例2に準じて単離、同定した菌株、環境(土壌、住居内)より定法によりソイビーン・カゼイン・ダイジェスト(本明細書においてSCDともいう)寒天培地又はPDA培地を用いて分離した後、単離同定した菌株、及び微生物供託機関から入手した微生物の4M3H生成能を測定した。
なお、微生物供託機関から入手した菌株は下記の通りである。
モラクセラ・オスロエンシスNCIMB10693株(NCIMB(National collection of industrial and marine bacteria)から購入)
モラクセラ・オスロエンシスATCC19976株(ATCC(American Type Culture Collection)から購入)
サイクロバクター・インモビリス(Psychrobacter immobilis)NBRC15733株、サイクロバクター・パシフィセンシスNBRC103191株、サイクロバクター・グラシンコラNBRC101053株、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)NBRC13275株、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)NBRC14164株、スフィンゴモナス・ヤノイクヤエNBRC15102株、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)NBRC3333株、ブレブンディモナス・ディミヌタ(Brevundimonas diminuta)NBRC12697株、ロゼオモナス・エリラタ(Roseomonas aerilata)NBRC106435株、キュープリアビダス・オキサラティカスNBRC13593株、シュードキサントモナス・エスピー(Pseudoxanthomonas sp.)NBRC101033株、セラチア・マルセセンスNBRC12648株、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)NBRC3320株、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)NBRC100395株、エシェリキア・コーライNBRC3972株、スタフィロコッカス・アウレウスNBRC13276株、サッカロマイセス・セレビジエNBRC1661株、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)NBRC1061株、アルガリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)NBRC13111株、ブルクホルデリア・セパシアNBRC15124株及びロドトルラ・ムシラギノサNBRC0909株(いずれもNBRC(NITE Biological Resource Center)から購入)
バチルス・セレウスJCM2152株、バチルス・サブティリスJCM1465株及びラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)JCM1149株(JCM(Japan Collection of Microorganisms)から購入)
その結果を表2に示す。
入手した菌株をSCD液体培地(日本製薬社製)5mLに一白金耳接種し、35℃で24時間振とう培養(160rpm)を行なった。培養後の菌体を遠心(8000×g、10分)して上清を取り除いた後、生理食塩水5mLに懸濁し、再度遠心(8000×g、10分)した後上清を取り除き、生理食塩水を用いてOD600=1.0となるように菌液を調製した。
家庭生活の中で使用と洗濯を繰り返した木綿の中古タオルを5cm×5cmの正方形に切断し滅菌したものに前記各種菌液0.1mLを植菌し、加湿条件下で37℃で24時間静置した。
専門評価者(N=3)により、24時間静置後の前記木綿の中古タオルの生乾き臭の有無を合意により判定した。評価基準は、生乾き臭が強く感じられる試料を◎、生乾き臭が感じられる試料を○、生乾き臭が若干感じられる試料を△、生乾き臭が全くない試料を×とした。その結果を表3に示す。
特開2009−149546号公報に準じて、14−メチルヘキサデカン酸を下記の2工程の反応で合成した。
(a)工程
12−ドデカノリド11.9g(60.0mmol)、32%臭化水素/酢酸溶液24.3g(96.0mmol、1.6当量)を、テフロン(登録商標)で保護された100mLオートクレーブに入れ、窒素置換した後密閉し、60℃のオイルバスを用いて、16時間マグネチックスターラーで攪拌した。冷却後、水14mLを加え、熱ヘキサン200mLを用い、分液ロートに移送した。イオン交換水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過、n−ヘキサンで晶析することで、12−ブロモドデカン酸14.4g(収率86%)を得た。
(b)工程
次に、還流冷却管、50mL滴下ロート、マグネチックスターラー、温度センサーを備えた100mLの4口フラスコに、12−ブロモドデカン酸5.0g(17.9mmol)及びトリフェニルホスフィン(関東化学社製)28.2mg(0.006eq)を入れ、減圧乾燥した。アルゴン雰囲気下、臭化銅(I)(アルドリッチ社製)77.1mg(0.03当量)、無水テトラヒドロフラン10mLを加えた。室温下、2−メチルブチルマグネシウムブロミド39.5mL(3当量、1.36Nテトラヒドロフラン溶液)を、1時間で滴下した。1時間攪拌した後、1N塩酸水溶液50mLを加え、ヘキサン100mLで2回抽出した。イオン交換水50mLで2回洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過、減圧濃縮して、粗生成物3.9gを得た。
ガスクロマトグラフィー(カラム:アジレント社製、商品名:Ultra−2、30m×0.2mm×0.33μm、DET300℃、INJ300℃、カラム温度100℃→300℃、10℃/分)で、内標にオクタデカンを用い、定量した結果、収率79%であった。
このようにして、12−ドデカノリドから14−メチルヘキサデカン酸を全収率68%で得た。また純度は98%であった。
2cm×2cmの正方形に切断した木綿の平織り布に、皮脂汚れ成分として、前述の方法で合成した14−メチルヘキサデカン酸又は16−メチルオクタデカン酸0.5mgをメタノール0.1mLに溶解した溶液を塗布し、その後メタノールの乾固を行った。
上記木綿の平織り布に、前記各種菌液0.1mLを植菌し、加湿条件下で37℃で24時間静置し、下記の4M3Hの定量及び生乾き臭の官能評価を行った。
24時間静置後の前記タオルに、メタノール10mLを添加し、そのうちの1mLとADAM(9−Anthrydiazomethanene、フナコシ社製、0.1w/v%)1mLとを混合し、室温で60分放置し、誘導体化を行なった。
その後、10μL溶液について、LC−FL(液体クロマトグラフィー装置:HITACHI ELITE LaChrom(商品名、日立社製)、カラム:Lichrospher 100 RP−8(e)(商品名、アジレント社製、5μm×125mm×4mmφ)、カラム温度:40℃、溶離剤:アセトニトリル/水=7/3(体積比)の混合溶液、流速:1.0mL/min、検出器:励起波長(365nm)、測定波長(412nm))を用いて解析を行うことで、生成した4M3Hの定量を行った。4M3Hの生成量について、生成した4M3Hの量が1μgより多かった試料を◎、0.1μgより多く1μg以下の試料を○、0μgより多く0.1μg以下の試料を△、全く検出されなかった試料を×として評価した。14−メチルヘキサデカン酸を塗布した場合の結果を表4に、16−メチルオクタデカン酸を塗布した場合の結果を表5にそれぞれ示す。
(2)生乾き臭の官能評価
専門評価者(N=3)により、24時間静置後の前記木綿平織り布の生乾き臭の有無を判定した。評価基準は、生乾き臭が強く感じられる試料を◎、生乾き臭が感じられる試料を○、生乾き臭が若干感じられる試料を△、生乾き臭が全くない試料を×とした。14−メチルヘキサデカン酸を塗布した場合の結果を表4に、16−メチルオクタデカン酸を塗布した場合の結果を表5にそれぞれ示す。
SCD−LP寒天培地(和光純薬社製)に、モラクセラ・エスピー4−1株を供試細菌として接種し、常温にて1〜2週間培養し、これを前培養プレートとした。前培養プレートからコンラージでコロニー表面を掻き取り、生理食塩水5mLに懸濁し、OD600=1.0(約108CFU/mL)に調整した。
表6に示す化合物に代えて、表7に示す化合物を用い、モデル試験布1gに対して塗布する化合物の塗布量を10μgとしたこと以外は実施例1と同様に細菌定着布を調製し、試験例3と同様に細菌定着布における4M3H量を定量し、化合物を添加しない場合の4M3H生成量に対する比を算出し、4M3H生成抑制率を測定した。その結果を表7に示す。
また、比較化合物(C−3)は次のように合成した。25mLの3つ口フラスコに2,2,6-トリメチルシクロヘキサ-1,3-ジエン-1-カルボン酸エチル7.77g、1-ヘキサノール6.13g及び5%ナトリウムエトキシド(エタノール溶液)0.56gを加え、窒素フロー下140〜145℃で約2時間攪拌した。2時間後、槽内の圧力を40kPaとし、更に約11時間攪拌を続けた。11時間冷却し、ヘキサンを加えて200mLの分液ロートに移し、飽和食塩水50mLで2回、イオン交換水50mLで3回水洗した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下濃縮し、更に減圧蒸留(70〜90Pa、バス温110〜130℃)することにより、7.65gの比較化合物(C−3)(2,2,6-トリメチルシクロヘキサ-1,3-ジエンカルボン酸ヘキシル)を無色油状物として得た(収率76%)。
表6に示す化合物に代えて、表8に示す化合物を用い、モデル試験布1gに対して塗布する化合物の塗布量を0.01μg、0.1μg、1μg又は10μgとしたこと以外は実施例1と同様に細菌定着布を調製し、専門評価者5名により、無臭を0とし、抑制剤被験物で全く処理しない場合(ブランク)の生乾き臭気強度を5とし、各化合物を塗布した場合の生乾き臭気強度を評価した。その結果を表8に示す。
複数回洗濯と使用を繰り返した20代〜40代の成人男子の肌着のうち、乾燥時は臭わないが、湿り気を帯びたときに、同じ臭気の生乾き臭を発する肌着(綿100%)を、5cm×5cmに裁断し、同じ臭いレベルであると専門評価者により確認されたピースを実衣料試験布とした。なお、同じ臭気の生乾き臭について定性的に分析したところ、4M3H臭を主とする中級分岐脂肪酸臭であることが確認された。
前記実衣料試験布を十分に洗濯し、直ちに25℃、相対湿度35%環境下で24時間放置し、十分に乾燥させた。乾燥後の実衣料試験布の臭気強度は、同専門評価者により後述の評価基準1であることを確認した。
次に、表9に示す組成の組成物1〜6を市販のポリエチレン製スプレー容器に入れ、上記実衣料試験布1枚辺り、0.05g噴霧した。
このようにして調製した実衣料試験布について、下記の臭気強度評価試験(臭気強度評価A〜C)を行った。
組成物1〜6を噴霧した実衣料試験布を、生乾き臭の発生し易い環境下である37℃、相対湿度70%の培養庫において24時間保管した。保管後の実衣料試験布について、専門評価者5人により生乾き臭(S臭、N臭、アルデヒド臭、低級脂肪酸臭、4M3H臭等の中級分岐脂肪酸臭を含む複合臭)の官能評価を行った。
<臭気強度評価B(乾燥状態の繊維製品から発生する再発性の生乾き臭の評価)>
前記臭気強度評価Aを行った実衣料試験布を25℃、相対湿度35%の環境下に一昼夜放置して乾燥処理を行ない、実衣料試験布を十分に乾燥させた。乾燥後の実衣料試験布について、同専門評価者5人により生乾き臭(S臭、N臭、アルデヒド臭、低級脂肪酸臭、4M3H臭等の中級分岐脂肪酸臭を含む複合臭)の官能評価を行った。
<臭気強度評価C(繊維製品を再度湿潤させることによって発生する再発性の生乾き臭の評価)>
前記臭気強度評価Bで用いた実衣料試験布に、スプレー容器を用いて水道水0.1g噴霧した。水道水を噴霧した直後、再度湿潤させた実衣料試験布について、同専門評価者5人により再発性の生乾き臭(4M3H臭を主とする中級分岐脂肪酸臭)の官能評価を行った。
(評価基準)
1:まったく臭わない
2:ほぼ臭わない
3:なんとなくわかる臭い
4:よく嗅ぐとわかる臭い
5:はっきりとわかる臭い
前記臭気強度評価A〜Cの結果を表9に示す。
これに対し、本発明の組成物には優れた生乾き臭及び再発性の生乾き臭の抑制効果を有することがわかる。具体的には、生乾き状態であっても、本発明の組成物1〜4を接触させた繊維製品において中級分岐脂肪酸臭を含む複合臭である生乾き臭が抑制された(臭気強度評価A)。さらに、完全に乾燥させた繊維製品を再度湿潤させた場合であっても、本発明の組成物1〜4を接触させた繊維製品において4M3H臭を主とする中級分岐脂肪酸臭が大部分である再発性の生乾き臭が抑制された(臭気強度評価C)。
同じ臭いレベルである、実施例4と同様の5cm×5cmに裁断した肌着を実衣料試験布とした。表10に示す組成の組成物7〜9を20℃水道水にて1000倍希釈し、前記実衣料試験布を希釈液に1/8の質量比で10分含浸させた。その後、生乾き臭の発生し易い環境下に置くことなく実衣料試験布を十分に乾燥させた後、該実衣料試験布に、スプレー容器を用いて水道水0.1g噴霧し、湿らせた実衣料試験布を蓋付きの角型滅菌シャーレに入れ、25℃で12時間静置した。その後、湿潤させた実衣料試験布について、専門評価者5人により再発性の生乾き臭(4M3H臭を主とする中級分岐脂肪酸臭)の官能評価を行った。その結果、本発明の組成物7〜9は、臭気を発することなく優れた再発性の生乾き臭抑制効果を有するものであった。一方で、本発明の組成物を用いることなく、水で処理した場合は、従来の臭いが確認され、再発性の生乾き臭抑制効果は確認されなかった。
Claims (10)
- 下記一般式(1)で表される化合物からなる、生乾き臭抑制剤。
- R1がカルボニル炭素を介して結合する環上の炭素原子に対して、α位及び/又はβ位に、R2で示されるアルキル基が1つ以上結合する、請求項1記載の生乾き臭抑制剤。
- 前記一般式(1)の化合物が、1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(α−ダマスコン)、1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(β−ダマスコン)、1-(2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(δ−ダマスコン)、1-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(β−ダマセノン)、1-(3,3-ジメチル-6-シクロヘキセン-1-イル)-ペンタ-4-エン-1-オン(α−ダイナスコン)、1-(3,3-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-ペンタ-4-エン-1-オン(β−ダイナスコン)、2,2,6-トリメチル-シクロヘキサン-1-カルボン酸エチル(テサロン)、2,6,6-トリメチル-シクロヘキサ-1,3-ジエン-1-カルボン酸エチル(エチルサフラネート)、1-(p-メンテン-6-イル)-1-プロパノン(ネロン)、1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(イソダマセノン)、2-メチル-4-オキソ-6-ペンチルシクロヘキセ-2-エン-1-カルボン酸エチル(Calyxol)、2-エチル-6,6-ジメチルシクロヘキセ-2-エン-1-カルボン酸エチル(ジベスコン)、2,2-ジメチル-6-メチレン-1-シクロヘキサン-1-カルボン酸メチル(ロマスコン)又は2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキセン-1-カルボン酸-2-プロペン-1-イルである、請求項1又は2記載の生乾き臭抑制剤。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の生乾き臭抑制剤を含有する、生乾き抑制組成物。
- 下記一般式(1)で表される化合物からなる、4−メチル−3−ヘキセン酸生成抑制剤。
- R1がカルボニル炭素を介して結合する環上の炭素原子に対して、α位及び/又はβ位に、R2で示されるアルキル基が1つ以上結合する、請求項5記載の4−メチル−3−ヘキセン酸生成抑制剤。
- 前記一般式(1)の化合物が、1-(2,6,6-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(α−ダマスコン)、1-(2,6,6-トリメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(β−ダマスコン)、1-(2,6,6-トリメチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(δ−ダマスコン)、1-(2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキサジエン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(β−ダマセノン)、1-(3,3-ジメチル-6-シクロヘキセン-1-イル)-ペンタ-4-エン-1-オン(α−ダイナスコン)、1-(3,3-ジメチル-1-シクロヘキセン-1-イル)-ペンタ-4-エン-1-オン(β−ダイナスコン)、2,2,6-トリメチル-シクロヘキサン-1-カルボン酸エチル(テサロン)、2,6,6-トリメチル-シクロヘキサ-1,3-ジエン-1-カルボン酸エチル(エチルサフラネート)、1-(p-メンテン-6-イル)-1-プロパノン(ネロン)、1-(2,4,4-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-イル)-2-ブテン-1-オン(イソダマセノン)、2-メチル-4-オキソ-6-ペンチルシクロヘキセ-2-エン-1-カルボン酸エチル(Calyxol)、2-エチル-6,6-ジメチルシクロヘキセ-2-エン-1-カルボン酸エチル(ジベスコン)、2,2-ジメチル-6-メチレン-1-シクロヘキサン-1-カルボン酸メチル(ロマスコン)又は2,6,6-トリメチル-1,3-シクロヘキセン-1-カルボン酸-2-プロペン-1-イルである、請求項5又は6記載の4−メチル−3−ヘキセン酸生成抑制剤。
- 請求項5〜7のいずれか1項記載の4−メチル−3−ヘキセン酸生成抑制剤を含有する、4−メチル−3−ヘキセン酸生成抑制組成物。
- 繊維製品における4−メチル−3−ヘキセン酸の生成を抑制する、請求項8記載の4−メチル−3−ヘキセン酸生成抑制組成物。
- 1〜4のいずれか1項記載の生乾き臭抑制剤若しくは生乾き臭抑制組成物又は請求項5〜9のいずれか1項記載の4−メチル−3−ヘキセン酸生成抑制剤若しくは4−メチル−3−ヘキセン酸生成抑制組成物を繊維製品と接触させ、該繊維製品からの生乾き臭の発生を抑制する、生乾き臭抑制方法。
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