JP2012124024A - 色素増感型太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】可視領域のみならず近赤外領域における色素の光吸収の増強を行うことにより、色素増感型太陽電池の光電変換効率を向上させる。
【解決手段】一方の透明基板の内側に透明導電膜を形成し、表面に白金もしくは炭素をコーティングしたカソード電極と、他方の透明基板の内側に透明導電膜および酸化チタンなどの多孔質金属酸化物膜を順次形成し、この多孔質金属酸化物膜の表面にルテニウム錯体などの色素を担持したアノード電極とを、酸化還元電解質を介して対向させ、光の吸収によりこれら電極間に電圧が発生するようにした色素増感型太陽電池であって、色素の近傍に酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子を配したことを特徴とする色素増感型太陽電池。
【選択図】図1

Description

本発明は、色素増感型太陽電池に関する。
色素増感型太陽電池は、可視光領域の利用が可能であって、理論変換効率が高く、人体に無害とされる酸化チタンを用いる、新しい太陽電池としてすでに知られている(特許文献1、特許文献2など参照)。
図4は、この色素増感型太陽電池の構成を示す概念図である。たとえば板ガラスなどの2枚の透明基板1の内側に、それぞれ透明導電膜2を形成して電極基板とする。透明導電膜2には、たとえば、酸化インジウム、ITO(スズドープ酸化インジウム)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)などが用いられている。
一方の電極基板の透明導電膜2の表面に、触媒となる白金もしくは炭素をコーティングして(図示せず)、カソード電極とする。他方の電極基板には、たとえば酸化チタンなどの多孔質金属酸化物膜4を形成して、その細孔表面に色素6を吸着、担持してアノード電極とする。この多孔質金属酸化物膜4は、表面積を大きくするために、たとえば焼結した金属酸化物微粒子5で形成される。これら電極間には、電解液や固体電解質からなる酸化還元電解質3を挟み込むことで、酸化還元電解質中の酸化還元対が、両電極間の電子の移動に寄与する。
酸化チタンなどの金属酸化物は、短波長の光しか吸収しないので、太陽光を効率よく電気エネルギに変換するための増感剤として色素が用いられている。この色素は、光吸収剤として機能し、太陽光を吸収して電子を多孔質金属酸化物膜に注入することにより、発電が行われる。たとえば色素のルテニウム錯体は、太陽光の可視領域の光を吸収し、ルテニウム金属・配位子軌道遷移により励起された電子が、多孔質金属酸化物の伝導帯に移り、光電流となる。このようにして、光を吸収すると両電極間に電圧が発生する太陽電池が構成される。この型の太陽電池は、このように色素を増感剤として用いることから、色素増感型太陽電池と呼ばれている。
すでに量産されているシリコン太陽電池では、シリコンのpn接合によってバンドの勾配が形成され、光照射によって生成した電子と正孔とが内部電界によって分離され、起電力が発生する。これに対して、酸化チタンなどの多孔質金属酸化物膜を利用した色素増感型太陽電池では、太陽光で励起された色素の電子のみが金属酸化物の微粒子に注入され、電子と正孔の再結合による損失がほとんどない。そして、電子注入により酸化された色素は、酸化還元電解質中に存在するドナーによって速やかに還元され、初期状態へ戻る。したがって、シリコン太陽電池において、光エネルギの吸収と電子の伝達が、同じシリコン半導体の中で行われているのとは異なり、金属酸化物を用いた色素増感型太陽電池では、光エネルギの吸収と電子の伝達が別々のところで行われている。これは植物がクロロフィルで光エネルギを吸収し、細胞膜中のメディエータで電子を伝達しているのとよく似た構造である。
グレッツェル(Michael Gratzel)らは、ナノスケールの酸化チタン微粒子を焼結した多孔質の酸化チタン膜を用いることにより、表面積を投影面積の約1000倍とし、色素として、酸化チタンなどの薄膜と相性がよく、太陽光を効率よく吸収する、ルテニウム錯体(たとえば、RuL2(NCS)2,L=4,4’−ジカルボキシ−2,2’ビピリジン;以下、この種のルテニウム錯体からなるルテニウム系色素を「Ru色素」という)を用い、酸化還元電解質に、アセトニトリル(90vol%)と、3メチル2オキサゾリジノン(10vol%)の混合溶媒に、ヨウ素とヨウ化リチウムを加えた電解液を用いて、I-/I3 -を酸化還元対としたときに、AM1.5(エアマス1.5:地球の中緯度における太陽スペクトルの太陽光)に対して10%の光電変換効率が得られることを報告している(非特許文献1参照)。
すでに広く用いられているシリコン太陽電池の光電変換効率は20%を超えるものもあるため、色素増感型太陽電池には、さらなる光電変換効率の向上が望まれている。このため、たとえば特許文献3に記載されているように、金属酸化物材料にインジウム系酸化物、スズ系酸化物などの導電性物質を混在させて、電極の抵抗率を下げるなどの、色素増感型太陽電池における改良が図られている。
このような改良の1つとして、色素増感型太陽電池において、銀または金の金属微粒子を用いることで、表面プラズモンによる増強効果が得られることが知られている(特許文献4参照)。しかし、ハロゲン系の酸化還元電解質が、これら金属微粒子と反応して、金属微粒子を溶解してしまう。たとえ金であっても、微粒子、薄膜の状態では室温で容易に溶解される。
本発明者は、特許文献5において、白金、白金合金、パラジウム、パラジウム合金に注目し、ガラス基板にPtAg系合金微粒子溶液を、塗布、乾燥して、PtAg系合金微粒子膜を形成し、その上にRu色素を担持させることにより、Ru色素のみの吸光度に比べて、PtAg系微粒子膜上のRu色素の光吸収を、可視領域から近赤外領域にわたって増強させることを提案している。しかしながら、PtAg系合金微粒子膜上にRu色素を担持させた場合、可視領域での吸光度は高いものの、近赤外領域において吸光度が漸減し、波長1300nmを超える領域では0.01未満となる(特許文献5、図2参照)。このように、近赤外領域における増強効果については、いまだ十分なものとはいえず、近赤外領域における光電変換効率のさらなる向上が望まれている。
色素増感型太陽電池において、光電変換層である多孔質金属酸化物膜(多孔性半導体層)のトータルの、近赤外領域におけるヘイズ率を60%以上95%以下とし、特に多孔質金属酸化物膜が複数の層からなる場合、光の入射側から最も遠い層の近赤外領域におけるヘイズ率を60%以上95%以下とすることにより、光電変換効率を向上させることが提案されている(特許文献6参照)。この技術では、近赤外領域における所定のヘイズ率を持つ多孔質金属酸化物膜を得るために、主として、酸化チタンや酸化亜鉛などの半導体粒子の粒径、分散条件、懸濁液の塗布条件・乾燥条件・焼成条件(すなわち温度と時間)、および懸濁液に加える添加剤や増粘剤の種類(たとえば分子量)や添加量などを規定するとしているが、これらの1つだけを規定しても、作製後の多孔質金属酸化物膜のヘイズ率は一義的に定まることはなく、必ずしも高い光電変換効率が得られるとは限らない。
特開平1−220380号公報 特開平5−504023号公報 特開平11−283682号 特開平9−259943号公報 特開2001−35551号公報 特許第3954085号公報 特開平9−156963号
M.K.Nazeeruddin et al., J. Am. Chem. Soc.1993, 115, 6382
本発明は、可視光領域のみならず近赤外領域における色素の光吸収の増強を行うことにより、光電変換効率が従来に比べてより一層向上した色素増感型太陽電池を提供することを目的としている。
本発明者は、一方の透明基板の内側に透明導電膜が形成され、該透明導電膜の表面に白金もしくは炭素がコーティングされているカソード電極と、他方の透明基板の内側に透明導電膜および多孔質金属酸化物膜が順次形成され、この多孔質金属酸化物膜の表面に色素が担持されているアノード電極とが、酸化還元電解質を介して対向し、光の吸収によりこれら電極間に電圧が発生するように構成されている色素増感型太陽電池において、多孔質金属酸化物膜の表面に担持されている色素の表面または近傍にあって、可視領域のみならず近赤外領域における、該色素の光吸収を増強する材料について鋭意検討を行ったのである。そして、酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子に注目して、研究を進めた結果、これらのプラズモン粒子近傍において、プラズモン吸収による電場が増強される現象が生じ、もって、近傍の色素において光の吸収効果が増大される効果が得られるとの知見のもとに、本発明者は、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は、一方の透明基板の内側に透明導電膜が形成され、該透明導電膜の表面に白金もしくは炭素がコーティングされているカソード電極と、他方の透明基板の内側に透明導電膜および多孔質金属酸化物膜が順次形成され、この多孔質金属酸化物膜の表面に色素が担持されているアノード電極とが、酸化還元電解質を介して対向し、光の吸収によりこれら電極間に電圧が発生するように構成されている色素増感型太陽電池に係る。
特に、本発明の色素増感型太陽電池は、前記色素の表面または近傍に、酸化ルテニウム微粒子および窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の金属微粒子がさらに配されていることを特徴とする。
酸化ルテニウム微粒子および窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の金属粒子の粒子径が、1nm〜100nmの範囲にあることが好ましく、1nm〜10nmの範囲にあることがさらに好ましい。
また、酸化ルテニウム微粒子および窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の金属粒子の前記多孔質金属酸化物膜を含む膜全体に対する質量比が、1質量%〜50質量%の範囲にあることが好ましく、5質量%〜30質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
本発明において、色素増感型太陽電池の前記多孔質金属酸化物膜は、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化スズ(SnO2)、酸化タングステン(WO3)、およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)から選ばれる1種以上の金属酸化物で形成されていることが好ましい。
また、前記色素は、ルテニウム系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、およびナフタロシアニン系色素から選ばれる1種以上の色素であることが好ましい。
さらに、前記酸化還元電解質は、ヨウ素、臭素、または塩素からなるハロゲンを含む電解液または固体電解質であることが好ましい。
本発明の色素増感型太陽電池は、アノード電極の多孔質金属酸化物膜の表面に担持されている色素の表面または近傍に、可視領域のみならず近赤外領域における該色素の光吸収を増強させるための酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上をさらに配することにより、該色素の光吸収を増強している。
これらの酸化ルテニウム微粒子および窒化チタン微粒子は、微粒子状態においてもハロゲン系の酸化還元電解質との反応によって溶解することはないため、本発明の色素増感型太陽電池では、ハロゲン系の酸化還元電解質を用いることができ、これにより大きな光電流が容易に取り出せるため、その光電変換効率を著しく向上させることが可能となる。
本発明にかかる色素増感型太陽電池の構成を示す概念図である。 可視領域から近赤外領域における、酸化ルテニウム微粒子によるRu色素の吸光度の増強を示す、吸光度−波長曲線グラフである。 可視領域から近赤外領域における、窒化チタン微粒子によるRu色素の吸光度の増強を示す、吸光度−波長曲線グラフである。 従来の色素増感型太陽電池の構成を示す概念図である。
本発明者は、色素増感型太陽電池における色素の光吸収を、可視領域のみならず近赤外領域においても、増強しうる新たな材料を検討し、酸化ルテニウム微粒子と窒化チタン微粒子に着目したものである。
図2は、酸化ルテニウム微粒子によるRu色素の光吸収の増強効果を示す。図2中、横軸の波長(単位:nm)に対して、縦軸は吸光度(無次元数)を示し、「△」は、ガラス基板にRu色素のみを担持した場合、「○」は、ガラス基板に酸化ルテニウム微粒子溶液を、塗布、乾燥して酸化ルテニウム微粒子膜を形成し、Ru色素を担持した場合である。Ru色素のみの吸光度に比べ、酸化ルテニウム微粒子膜上のRu色素の光吸収が、可視領域(380nm〜800nm程度)から近赤外領域(800nm以上)にかけて、増強されていることが理解される。
なお、吸光度は分光法において、ある物体を光が通った際に強度がどの程度弱まるかを示す無次元量である。波長λ における吸光度Aは、
A=−log10(I/I0
と定義される。つまり、吸光度Aは、入射光強度I0 と透過光強度Iの比(透過率)の常用対数に負号を付けたものとして表される。ここで、負号は、光吸収のある場合を正とするために付けられている。また、透過率l/l0は分光光度計で測定することが可能である。
酸化ルテニウム微粒子は、太陽光の照射により表面プラズモン吸収による光エネルギの吸収が起こり、色素との共鳴や色素への電荷移動により、可視領域から近赤外領域において色素の光吸収への増強効果があると考えられる。この色素の光吸収の増強効果により光電流の増加が引き起こされ、光電変換効率を向上させることができる。
なお、特許文献7において、酸化ルテニウム、窒化チタンのプラズモン吸収による赤外線遮蔽効果を利用した熱線遮蔽膜についての開示があるが、本発明は、プラズモン吸収によりプラズモン粒子近傍において電場増強が得られ、これによりその近傍における色素などの光吸収を増大させるという新たな知見に基づくものである点で、特許文献7の技術とは全く異なるものである。
図3は、窒化チタン微粒子によるRu色素の光吸収の増強効果を示す。酸化ルテニウム微粒子の場合と同様に、窒化チタン微粒子についても色素の光吸収に対する増強効果が得られていることが理解される。
さらに、酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子は、微粒子状態でもハロゲン系の酸化還元電解質によっては溶解されないことが確認されている。
本発明者は、これらの事実に基づき、本発明を完成するに至ったものである。
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の構成を示す概念図である。本発明の色素増感型太陽電池は、基本構造としては従来と同様に、一方の透明基板1の内側に透明導電膜2が形成され、該透明導電膜2の表面に白金もしくは炭素がコーティング(図示せず)されているカソード電極と、他方の透明基板1の内側に透明導電膜2および多孔質金属酸化物膜4が順次形成され、この多孔質金属酸化物膜4の表面に色素6が担持されているアノード電極とが、酸化還元電解質3を介して対向し、光の吸収によりこれら電極間に電圧が発生するように構成されている。特に、本発明では、アノード電極(光電極)として、透明導電膜2のついたガラス基板1上に多孔質の金属酸化物膜4を形成し、多孔質金属酸化物膜4を構成する金属酸化物微粒子5の表面に色素6および酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子7を担持する構造を採用している。以下、それぞれの要素ごとに詳述する。
(1)カソード電極
カソード電極は、透明基板1と、透明基板1のアノード電極側の表面に形成された透明導電膜2とにより構成され、かつ、透明導電膜2の表面に白金または炭素がコーティング(図示せず)されている構造である。
本発明において、透明基板としては、ガラス基板、プラスチック基板、金属基板などを使用することができ、この中でも光透過性のよい透明のガラス基板が特に好ましい。ガラス基板の厚さなどについては、透明性を妨げない範囲で任意に選択される。
透明基板上に形成する透明導電膜は、電極として用いるために成膜するものである。このような電極として使用するために形成する透明導電膜は、特に限定されるものではなく、従来用いられている材料を用いることができる。光透過性の観点から、ITO、酸化スズ(SnO2)、FTO、酸化亜鉛(ZnO)などの材料を用いた透明導電膜が好ましい。この透明導電膜の作製方法については、スパッタリング法、真空蒸着法など、当該分野で公知のものを適宜選択して用いることができる。また、透明導電膜の膜厚についても、透明性を阻害しない範囲で、要求される特性に応じて任意に選択されることが好ましい。
また、この透明導電膜の表面に形成される白金または炭素は、スパッタリング法などの成膜方法を用いてコーティングされる。
(2)アノード電極
アノード電極は、透明基板1と、透明基板1のカソード電極側の表面に順次、形成された透明導電膜2および多孔質金属酸化物膜4とからなり、多孔質金属酸化物膜4を構成する金属酸化物微粒子5の表面に色素6および酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子7が担持されている構造である。透明基板、透明導電膜には、カソード電極と同様のものが用いられる。
1)多孔質金属酸化物膜
多孔質金属酸化物膜は、一般に光電変換材料用に使用されるものであれば、特に限定されるものではなく、たとえば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、酸化ニオブ(Nb25)、酸化スズ、酸化タングステン(WO3)、またはチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)から選ばれる1種以上を用いることが、光電変換効率の観点から好ましい。特に、安定性、安全性の観点から酸化チタンが好ましい。なお、本発明で使用される酸化チタンは、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸などの種々の酸化チタン、あるいは水酸化チタン、含酸化チタンなどがあげられる。これらの中では、励起された色素のエネルギ準位(LUMO)から電子を受け取る酸化チタン(TiO2)の伝導帯における状態密度が大きいほど、効率的に電子を受け取ることができるとの理由から、アナターゼ型の酸化チタンが特に好ましい。
多孔質金属酸化物膜は、透明導電膜上に形成された膜状の多孔性半導体である。ただし、多孔質金属酸化物膜は、種々の形態の半導体材料を用いることができ、たとえば、粒子状などの半導体を用いて作製することもできる。
多孔質金属酸化物膜を、電極基板を構成する透明導電膜の上に形成する方法としては、公知の種々の手段を使用することができる。具体的には、a)電極基板上に金属酸化物粒子を含有する懸濁液を塗布し、乾燥および焼成する方法、b)電極基板上に所望の原料ガスを用いたCVD法、MOCVD法などにより成膜する方法、あるいはc)原料固体を用いたPVD法、蒸着法、スパッタリング法、ゾル−ゲル法などにより形成する方法があげられる。
なお、この多孔質金属酸化物膜の膜厚は、特に限定されるものではないが、光吸収の観点からは0.1μm〜50μm程度の範囲内とすることが好ましい。さらに、光電変換効率を向上させるためには、色素を多孔質金属酸化物膜により多く吸着させることが必要である。このため、多孔質金属酸化物膜は比表面積が大きなものが好ましく、10m2/g〜200m2/g程度の範囲の比表面積を具備することが好ましい。
塗布法の粒子状材料として用いられる金属酸化物粒子としては、たとえば、焼結前の平均粒径が1nm〜2000nm程度の範囲内にある粒子があげられる。また、この金属酸化物粒子を懸濁するために使用される溶媒は、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのグライム系溶媒、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒、イソプロピルアルコール/トルエンなどのアルコール系混合溶媒、水などがあげられる。
成膜ないしは塗布後に、金属酸化物粒子を含有する膜を自然乾燥し、その後、焼成により金属酸化物を微粒子の状態で焼結させることで、多孔性を膜に付与する。焼成では、金属酸化物粒子の粒成長は極力抑えて大きな比表面積を維持したまま、粒子間の電気伝導性が向上するように焼結することが好ましい。多孔質金属酸化物膜の乾燥および焼成は、使用する基板や金属酸化物粒子の種類により、温度、時間、雰囲気などを適宜調整することができる。
2)色素
本発明では、多孔質金属酸化物膜上に、光増感剤として機能する色素を吸着させるが、この色素を吸着させる方法としては、たとえば電極基板上に形成された多孔質金属酸化物膜を、色素を溶解した1種または2種以上の非プロトン性溶液、疎水性溶液または非プロトン性かつ疎水性溶液に浸漬する方法があげられる。たとえば、Ru色素の場合、溶媒としてエタノールを用い、3×10-4mol/L程度の濃度のRu色素溶液を作製する。浸漬は、20℃〜40℃で2時間〜10時間の還流を行い、色素を担持させる。
ここで、使用可能な色素は、種々の可視領域および近赤外領域に吸収を持つものであって、かつ、多孔質金属酸化物に強固に吸着させるために、色素分子中にカルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基などのインターロック基を有するものが好ましい。インターロック基は、励起状態の色素と多孔質金属酸化物半導体の導電帯との間の電子移動を容易にする電気的結合を提供するものである。
このような色素として、たとえば、ルテニウムビピリジン系色素を含むルテニウム系色素(Ru色素)、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポリフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素などがあげられる。その中では、変換効率が高いので、特にルテニウム系色素、キサンテン系色素が好ましい。
色素に、たとえばルテニウム系色素を用いると、太陽光の可視領域から近赤外領域にかけての光を吸収して、ルテニウム金属・配位子軌道遷移により励起された電子が、多孔質金属酸化物である、たとえば酸化チタンの伝導帯に移り光電流となる。
なお、ルテニウム色素の具体例としては、RuL2(NCS)2,L=4,4’−ジカルボキシ−2,2’ビピリジン(N−3)のほか、[RuL2(NCS)2]:2TBA,L=4,4’−ジカルボキシ−2,2’ビピリジン,TBA=テトラ−n−ブチルアンモニウム(N−719)、RuLL′(NCS)2,L=4,4’−ジカルボキシ−2,2’ビピリジン,L′=4,4’−ジノニル−2,2’ビピリジン(Z−097)などのルテニウム錯体をあげることができる。
色素の粒径は、Ru色素の場合には1nm程度である。吸着可能な色素量は、面積1cm2(=1014nm2)の電極を考えた場合、1014(個/cm2)/6.00221×1023(個/mol)=1.66×10-10(mol/cm2)となる。ただし、たとえば、ナノチタニアを用いることで幾何面積に対して実効表面積が1,000倍に増えたと仮定すると、吸着可能な色素量は上記吸着量の1,000倍の1.66×10-7(mol/cm2)と計算できる。しかしながら、実際には、吸着可能な色素量はそこまでは増加しないと考えられている。
3)酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子
本発明の色素増感型太陽電池のアノード電極における、透明基板上に形成された透明導電膜上には、多孔質金属酸化物膜が形成されるが、多孔質金属酸化物膜を構成する金属酸化物微粒子の表面には、色素とともに、酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子を担持している。
酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子を用いると、ハロゲン系の酸化還元電解質に対して溶解および消失させることなく、これらの微粒子を色素近傍に配することができる。酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子は、化学結合や吸着により色素に直接配してもよく、多孔質金属酸化物である酸化チタンなどの金属酸化物に化学結合や吸着した結果として、多孔質金属酸化物である酸化チタンに担持された色素の近傍に配するようにしてもよい。
本発明で用いる酸化ルテニウム微粒子および窒化チタン微粒子は、酸化物や窒化物であることから、接触による電気伝導性は低い。しかしながら、これらのプラズモン粒子は、プラズモン吸収によりその粒子近傍において電場を増強することで、その近傍における色素などの可視光および近赤外領域での光吸収を増大させるという効果をもたらすことができる。この点、特許文献5に開示されたPtAg系合金微粒子による効果は、色素の可視光領域での光吸収を増大させるにとどまっている。一方、特許文献3に記載された導電性物質を混在させることにより、酸化物半導体電極材料の電気伝導性を向上させることで、光電変換効率を向上させるメカニズムは、本発明のものと大きく異なっている。
酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子の粒径は1nm〜100nmの範囲にあることが好ましく、1nm〜10nmの範囲にあることがより好ましい。担持方法としては、後述するとおり、酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子の分散液に、色素を担持した多孔質金属酸化物である酸化チタン膜を浸漬する方法などがある。
上記の酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子の担持量は、微量である場合は効果が発揮されず、多い場合は実質的に色素と酸化チタンの量が減り光電変換効率が低下するため、全体の1質量%〜50質量%であることが好ましく、全体の5質量%〜30質量%であることがより好ましい。
図2に示すように、Ru色素(RuL2(NCS)2,L=4,4’−ジカルボキシ−2,2’ビピリジン)の表面や近傍に酸化ルテニウム微粒子を配した場合、可視領域と近赤外領域の境界付近でRu色素の吸光度が0.01未満となるものの、可視領域と近赤外領域のほとんどの領域においてRu色素の吸光度が0.01を超えており、可視領域から近赤外領域にかけて、特に、金属微粒子との比較では近赤外領域において、色素の光吸収の増強効果が大きい。
また、図3に示すように、Ru色素の表面や近傍に窒化チタン微粒子を配した場合も同様に、窒化チタン微粒子膜上のRu色素の吸光度は、可視領域から近赤外領域にかけて0.01未満となることはなく、これらの領域で広くRu色素の光吸収が増強される。したがって、窒化チタン微粒子を配した方が酸化ルテニウム微粒子に比べて波長依存性がより小さくなり、この領域の光を利用する用途においてはより有利である。
このように、酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子は、太陽光の照射により表面プラズモン吸収による光エネルギの吸収が起こり、色素との共鳴や色素への電荷移動により、可視領域から近赤外領域において広く色素の光吸収の増強効果がある。この色素の光吸収の増強効果により、光電流の増加が引き起こされ、色素増感型太陽電池の光電変換効率を向上させることができるのである。
(3)酸化還元電解質
本発明の色素増感型太陽電池の酸化還元電解質には、ヨウ素、臭素、または塩素からなるハロゲンを含む電解液もしくは固体電解質が用いられる。基本的には、レドックス対で酸化還元電位が色素のHOMO準位より上にあればよく、ハロゲンを含む電解液もしくは固体電解質は、この条件を満たしており、その中でも、ヨウ素が好ましい。
溶液系電解質では、たとえば、ヨウ素酸化還元対I-/I3 -の相互変換とこれらの拡散を伴うイオン伝導による導電が支配的と考えられている。一方、固体電解質は、室温下で一定の形状を保持しうるゲル状態を用いる「擬固体」に分類されるものである。ゲルは溶液を内包した状態であり、厳密には固体ではないが、色素増感型太陽電池のメソポーラス膜中で流動性がない電解質の状態を得られることから固体電解質に含まれる。したがって、電解質のイオン伝導性を保持したままの固体ということができる。
たとえば、ヨウ素系の酸化還元電解質としては、アセトニトリル(90vol%)と3メチル2オキサゾリジノン(10vol%)の混合溶媒に、ヨウ素とヨウ化リチウムを加えたものがあげられる。このヨウ素系の酸化還元電解質では、ヨウ素酸化還元対(I3 -/I-)として機能し、カソード電極とアノード電極間の電子移動に寄与している。
(4)太陽電池の作製方法
標準的な色素増感型太陽電池は、ガラス基板とその上に成膜された透明導電膜(たとえばFTO膜)からなる電極基板の該透明導電膜上に、白金もしくは炭素を、真空蒸着法、スパッタリング法、塗布法などでコーティングして、カソード電極を作製する。
次に、同様の電極基板の透明導電膜(たとえばFTO膜)上に、多孔質金属酸化物膜(たとえば、酸化チタン膜を、膜厚が数μm〜数十μmの範囲となるように成膜する。成膜方法としては、たとえば、酸化チタンなどの金属酸化物からなる微粒子を用いて分散液を作製し、この分散液を透明導電膜上に塗布する。その後、300℃〜600℃程度の大気中で焼成することにより、多孔質金属酸化物膜付きの電極基板を得る。
さらに、得られた多孔質金属酸化物膜付きの電極基板を、色素(たとえば、RuL2(NCS)2,L=4,4’−ジカルボキシ−2,2’ビピリジン)の溶液(溶媒として、たとえばエタノール)に浸漬して、色素を多孔質金属酸化物表面に担時して、アノード電極を作製する。
本発明の色素増感型太陽電池では、さらに次のような方法により、色素の表面または近傍に、色素の光吸収を増強させるための酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上をさらに配している。
1)多孔質金属酸化物膜の作製時において、金属酸化物微粒子の分散液中に、酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子を混合する。
2)多孔質金属酸化物膜の塗布後に、酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子を、金属酸化物と同様に塗布し、その後、焼成を施す。
3)色素を多孔質金属酸化物表面に担時してアノード電極を作製した後、酸化ルテニウム微粒子、窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の微粒子を、金属酸化物と同様にして、塗布する。
4)多孔質金属酸化物膜の作製後、この膜を塩化ルテニウム(RuCl3)のエタノール溶液を含浸させ、その後に熱処理を行い、多孔質金属酸化物膜の細孔内に酸化ルテニウム微粒子を析出させる。
このようにして、カソード電極とアノード電極が作製できたら、これらのカソード電極とアノード電極を数十μmの間隔で対向させて、周辺を封止剤で固定する。最後に、カソード電極とアノード電極の間に酸化還元電解質であるハロゲンを含む電解液または固体電解質を充填して、色素増感型太陽電池を作製する。
以下の種々の条件で、本発明の実施例および比較例にかかる色素増感型太陽電池を作製し、その特性の評価をそれぞれ行った。
(実施例1、比較例1)
透明導電膜が形成された透明基板として、市販のFTO膜付きガラス(日本板硝子株式会社製、導電層膜厚450nm)を用いた。金属酸化物として酸化チタン(住友金属鉱山株式会社製)を用い、その成膜材料としては、平均粒径15nmの酸化チタンペースト(Solaronix社製)を用いた。また、酸化ルテニウム微粒子の形成材料としては、平均粒径30nmの酸化ルテニウム(住友金属鉱山株式会社製)1%エタノール分散液を用いた。
酸化チタン11%ペーストと、質量比で2倍の酸化ルテニウム1%エタノール分散液とを、質量比で酸化チタン:酸化ルテニウム=3:1となるように調整した混合ペーストを、FTO膜付きガラス上に塗布し、自然乾燥後、500℃で30分間、電気炉で焼成を行った。1回の塗布で約2μm厚の酸化ルテニウム微粒子を含む酸化チタン多孔質膜が形成された。この場合、酸化ルテニウムは質量比で全体の24%の担持量となった。
次に、上記の酸化ルテニウム微粒子を含む酸化チタン多孔質膜を、Ru色素(RuL2(NCS)2,L=4,4’−ジカルボキシ−2,2’ビピリジン)溶液に浸漬し、80℃で2時間の還流を行い、酸化チタン多孔質膜の表面にRu色素を担持した。Ru色素溶液は、エタノールに3×10-4mol/LのRu色素(Solaronix社製、Ruthenium535)を溶解させることにより作製した。
以上のようにして、光電極であるアノード電極を形成した。一方、カソード電極は、フッ素ドープSnO2ガラス表面に、スパッタリング法で白金をコーティングして形成した。
カソード電極とアノード電極とを対向させて電池構造を形成し、隙間に酸化還元電解質として、ヨウ素系電解液を注入した。このヨウ素系電解液は、アセトニトリル(90vol%)と3メチル2オキサゾリジノン(10vol%)の混合溶媒に、ヨウ素とヨウ化リチウムを加えたものである。以上により、実施例1の色素増感型太陽電池を作製した。
一方、参照用として、酸化ルテニウム微粒子を添加せずに酸化チタン多孔質膜を形成したこと以外は同様のプロセスで、比較例1の色素増感型太陽電池を作製した。
上記2つの色素増感型太陽電池に対して、AM1.5のソーラーシミュレータで1000W/m2の疑似太陽光を照射して電流電圧特性を測定した。その結果、比較例1の太陽電池の光電変換効率が5%であったのに対し、酸化ルテニウム微粒子を色素近傍に配した本発明の色素増感型太陽電池では、光電変換効率が7%と、酸化ルテニウム微粒子を色素近傍に配していない標準プロセスの色素増感型太陽電池に対して約40%向上した。
(実施例2、比較例2)
酸化ルテニウム微粒子が担持された酸化チタン多孔質膜の形成を、酸化チタン11%ペーストをFTO膜付きガラス上に塗布し、自然乾燥後、さらに酸化ルテニウム1%エタノール分散液を塗布した。この場合、酸化ルテニウムは質量比で全体の14%の担持量となった。自然乾燥後、500℃で30分間、電気炉で焼成することにより行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の色素増感型太陽電池を作製した。また、参照用として、酸化ルテニウム1%エタノール分散液の塗布を省略したこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2の色素増感型太陽電池を作製し、それぞれの色素増感型太陽電池について実施例1と同様に測定評価した。
その結果、比較例2の色素増感型太陽電池の光電変換効率が5%であったのに対し、実施例2の色素増感型太陽電池では光電変換効率が6%と、約20%向上した。
(実施例3、比較例3)
アノード電極の形成を、酸化チタン11%ペーストをFTO膜付きガラス上に塗布し、自然乾燥後、500℃で30分間、電気炉で焼成を行い、次に、得られた酸化チタン多孔質膜をRu色素溶液に浸漬し、80℃で2時間、還流を行い、酸化チタン多孔質の表面にRu色素を担持したのち、酸化ルテニウム微粒子1%エタノール分散液をさらに塗布した。この場合、酸化ルテニウムは質量比で全体の7%程度の担持量となった。自然乾燥させて、酸化ルテニウム粒子を担持させるように行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の色素増感型太陽電池を作製した。また、参照用として、酸化ルテニウム1%エタノール分散液の塗布を省略したこと以外は、実施例3と同様にして、比較例3の色素増感型太陽電池を作製し、それぞれの色素増感型太陽電池について実施例1と同様に測定評価した。
その結果、比較例3の色素増感型太陽電池の光電変換効率が5%であったのに対し、実施例3の色素増感型太陽電池では光電変換効率が7%と、約40%向上した。
(実施例4、比較例4)
アノード電極の形成を、酸化ルテニウム微粒子の材料として、塩化ルテニウム(RuCl3)3%エタノール溶液を用い、まず、酸化チタン11%ペーストをFTO膜付きガラス上に塗布した。自然乾燥後、500℃で30分間、電気炉で焼成を行い、次に、得られた酸化チタン多孔質膜を塩化ルテニウム3%エタノール溶液に含浸させ、550℃で30分間、電気炉で熱処理を行い、酸化チタン多孔質膜の細孔内に酸化ルテニウム微粒子を析出させた。この場合、酸化ルテニウムは質量比で全体の10%程度の担持量となった。その後、この酸化ルテニウム微粒子を含む酸化チタン多孔質膜を、Ru色素溶液に浸漬し、80℃で2時間、還流を行い、酸化チタン多孔質の表面にRu色素を担持させることにより行ったこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4の色素増感型太陽電池を作製した。また、参照用として、塩化ルテニウム3%エタノール溶液へ含浸を省略したこと以外は、実施例4と同様にして、比較例4の色素増感型太陽電池を作製し、それぞれの色素増感型太陽電池について実施例1と同様に測定評価した。
その結果、比較例4の色素増感型太陽電池の光電変換効率が5%であったのに対し、実施例4の色素増感型太陽電池では光電変換効率が6%と、約20%向上した。
(実施例5、比較例5)
酸化ルテニウム微粒子の代わりに、窒化チタン微粒子を担持させることとし、この窒化チタン微粒子の材料として、平均粒径30nmの窒化チタン微粒子1%エタノール分散液を用い、酸化チタン11%ペーストと質量比で2倍の窒化チタン微粒子1%エタノール分散液を混合したペーストをFTO膜付きガラスに塗布したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の色素増感型太陽電池を作製した。この場合、窒化チタンは質量比で全体の20%程度の担持量となった。また、参照用として、窒化チタン微粒子を添加せずに酸化チタン多孔質膜を形成したこと以外は、実施例5と同様にして、比較例5の色素増感型太陽電池を作製し、それぞれの色素増感型太陽電池について実施例1と同様に測定評価した。
その結果、比較例5の色素増感型太陽電池の光電変換効率が5%であったのに対し、窒化チタン微粒子を色素近傍に配した実施例5の色素増感型太陽電池では光電変換効率が7%と、約40%向上した。
(実施例6、比較例6)
窒化チタン微粒子が担持された酸化チタン多孔質膜の形成を、酸化チタン11%ペーストをFTO膜付きガラス上に塗布し、自然乾燥後、さらに窒化チタン1%エタノール分散液を塗布し、自然乾燥後、500℃で30分間、電気炉で焼成することにより行ったこと以外は、実施例5と同様にして、実施例6の色素増感型太陽電池を作製した。この場合、窒化チタンは質量比で全体の11%程度の担持量となった。また、参照用として、窒化チタン1%エタノール分散液の塗布を省略したこと以外は、実施例6と同様にして、比較例6の色素増感型太陽電池を作製し、それぞれの色素増感型太陽電池について実施例1と同様に測定評価した。
その結果、比較例6の色素増感型太陽電池の光電変換効率が5%であったのに対し、実施例6の色素増感型太陽電池では光電変換効率が6%と、約20%向上した。
(実施例7、比較例7)
アノード電極の形成を、酸化チタン11%ペーストをFTO膜付きガラス上に塗布し、自然乾燥後、500℃で30分間、電気炉で焼成を行い、次に、得られた酸化チタン多孔質膜をRu色素溶液に浸漬し、80℃で2時間、還流を行い、酸化チタン多孔質の表面にRu色素を担持したのち、窒化チタン微粒子1%エタノール分散液をさらに塗布し、自然乾燥させて、窒化チタン微粒子を担持させるように行ったこと以外は、実施例5と同様にして、実施例7の色素増感型太陽電池を作製した。この場合、窒化チタンは質量比で全体の5%程度の担持量となった。また、参照用として、窒化チタン1%エタノール分散液の塗布を省略したこと以外は、実施例7と同様にして、比較例7の色素増感型太陽電池を作製し、それぞれの色素増感型太陽電池について実施例1と同様に測定評価した。
その結果、比較例7の色素増感型太陽電池の光電変換効率が5%であったのに対し、実施例7の色素増感型太陽電池では変換効率が7%と、40%向上した。
Figure 2012124024
1 透明基板
2 透明導電膜
3 酸化還元電解質
4 多孔質金属酸化物膜
5 金属酸化物微粒子
6 色素
7 酸化ルテニウム微粒子および/または窒化チタン微粒子

Claims (9)

  1. 一方の透明基板の内側に透明導電膜が形成され、該透明導電膜の表面に白金もしくは炭素がコーティングされているカソード電極と、他方の透明基板の内側に透明導電膜および多孔質金属酸化物膜が順次形成され、この多孔質金属酸化物膜の表面に色素が担持されているアノード電極とが、酸化還元電解質を介して対向し、光の吸収によりこれら電極間に電圧が発生するように構成されている色素増感型太陽電池であって、
    前記色素の表面または近傍に、酸化ルテニウム微粒子および窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の金属微粒子がさらに配されていることを特徴とする、色素増感型太陽電池。
  2. 前記酸化ルテニウム微粒子および窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の金属粒子の粒子径が1nm〜100nmの範囲にある、請求項1に記載の色素増感型太陽電池。
  3. 前記酸化ルテニウム微粒子および窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の金属粒子の粒子径が1nm〜10nmの範囲にある、請求項1に記載の色素増感型太陽電池。
  4. 前記酸化ルテニウム微粒子および窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の金属粒子の前記多孔質金属酸化物膜を含む膜全体に対する質量比が、1質量%〜50質量%の範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
  5. 前記酸化ルテニウム微粒子および窒化チタン微粒子から選ばれる1種以上の金属粒子の前記多孔質金属酸化物膜を含む膜全体に対する質量比が、5質量%〜30質量%の範囲にある、請求項1〜3のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
  6. 前記多孔質金属酸化物膜が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化スズ、酸化タングステン、およびチタン酸ストロンチウムから選ばれる1種以上の金属酸化物で形成される、請求項1〜5に記載の色素増感型太陽電池。
  7. 前記色素が、ルテニウム系色素、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、およびナフタロシアニン系色素から選ばれる1種以上の色素からなる、請求項1〜6に記載の色素増感型太陽電池。
  8. 前記酸化還元電解質が、ヨウ素、臭素、または塩素からなるハロゲンを含む電解液である、請求項1〜7のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
  9. 前記酸化還元電解質が、ヨウ素、臭素、または塩素からなるハロゲンを含む固体電解質である、請求項1〜7のいずれかに記載の色素増感型太陽電池。
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