JP2012123910A - 誘導加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器 - Google Patents

誘導加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器 Download PDF

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Abstract

【課題】高周波抵抗を低減しつつ、簡単な構成で、加工性を大幅に向上させる誘導加熱コイルとそれを使用した安価な誘導加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱コイル24は、丸形状の素線をつぶしてその断面が扁平形状を有する素線を用いることで、うず巻状に巻回してコイル状に形成しやすく、簡単な構成で、加工性を大幅に向上させることができるようになる。スペース手段30と磁性体層31の相乗効果で、近接効果で生じる高周波抵抗の低減をできるとともに、コンパクトに、加熱コイル24を形成することができ、さらに、磁性体層31を薄くできるので、塗布または印刷、転写等によって容易に表面に形成できるとともに、磁性材料を曲がりやすく構成でき、うず巻状に巻回してコイル状に形成しやすく、高周波抵抗を低減しつつ、加工性が大幅に向上させ、安価な誘導加熱コイルを提供する。
【選択図】図2

Description

本発明は、損失を低減し、熱効率を向上させる誘導加熱コイルを容易に製造できる構成にした誘導加熱調理器に関するものである。
誘導加熱は電磁誘導を利用して加熱することで、近年、これを利用した新しい調理器具の加熱方式として、誘導加熱調理器は家庭の中でも普及しつつある。
上述の誘導加熱の原理は、導線に交流電流を流すと、その周りに、向き、強度の変化する磁力線が発生する。その近くに電気を通す物質(通常は金属)を置くとこの変化する磁力線の影響を受けて、金属の中に渦電流が流れる。金属には通常電気抵抗があるため、金属に電流が流れると電力=電流の2乗×抵抗分のジュール熱が発生して金属が加熱される現象をいう。
実際の誘導加熱調理器は、高周波インバータ電源が誘導加熱コイルに高周波電流を供給すると、誘導加熱コイルで高周波磁界が発生し、これが鍋に加わり、鍋(金属製)が直接発熱する仕組みを用いている。
ここで、高周波電流が誘導加熱コイルを構成する導体を流れる時、電流密度が導体の表面で高く、表面から離れると低くなる現象、即ち、表皮効果が生じ、抵抗が増加して、温度上昇が大きくなり効率が低下する等の課題がある。
この防止策として、導体の細分化によって導体表面積を大きくする方法があり、細いエナメル線を複数本撚り合せたリッツ線をうず巻状に巻回して誘導加熱コイルを形成したものが主流となっている。
しかしながら、リッツ線は、形成するそれぞれの線が細いため、誘導加熱コイルの製作時に、引っかかりなど何らかの理由で、捻れて傷ついたり、断線したりするなど損傷を受けやすく、取り扱いに注意を要する上に、リッツ線を形成するそれぞれの線に絶縁のためのエナメル処理をしてあり、コストアップになってしまう課題があった。
そこで、簡素かつ、容易な工法で従来の誘導加熱コイルの同様以下の損失となる誘導加熱コイルを実現し、冷却性能等に余裕を持たせ、結果、安価な誘導加熱装置を提供するために、誘導加熱装置用誘導加熱コイルで渦巻き状の電気導体の間に磁性体を挿入する構成が考えられた(例えば、特許文献1参照)。
図6は、特許文献1に記載された従来の誘導加熱装置用誘導加熱コイルの断面図を示すものである。図6に示すように、電気導体1は渦巻き状に形成し、磁性体2が電気導体1の内周部の電気導体1の間に挿入されている。また、中周部及び外周部の前記電気導体1間は、空間を空けている。
一般的に、近接した電気導体に平行に電流が流れると互いの電気導体から発生する磁界の影響で電流が流れにくくなるという近接効果が発生する。上述の近接効果についてリッツ線を用いたもので詳述する。
図7は近接するコイル周辺の電磁環境摸式図であり、電気導体のコイル線3および前記コイル線3から生じる磁束4を示している。図7において、コイル線3には紙面手前から
向こう側に電流が流れるものとしている。
コイル線3の電流は、近接する互いのコイル線から生じる磁束4により、近接するコイル線より遠ざかる方向へ分布が偏る。
コイル線3の色の濃淡は、電流密度を表しており、濃い部分では電流密度が高いことを示している。この電流分布の偏りを生じさせる一連の現象を一般的に近接効果と呼ぶ。この近接効果により、誘導加熱コイルの抵抗(特に、高周波電流を流したときの高周波抵抗)が大きくなり、誘導加熱コイルの発熱損失が増加する。
従来、この問題を解決するために、図6に示すように電気導体1のターン間に磁性体2を挿入することで、電気導体1に電流が流れた際に磁界が発生し、電気導体1に磁束が影響しようとするが、電気導体1のターン間に設けられた磁性体2の方に磁束が作用することで、近接効果を低減でき、結果として誘導加熱コイルの抵抗が低減し、誘導加熱コイルの発熱損失が低減することになる。
特開2002−43044号公報
しかしながら、前記従来の構成では、渦巻き状にした電気導体1のターン間に磁性体2を挿入するという構成なので、製造が難しいという課題を有していた。
特に、磁性体2を渦巻き状に加工して電気導体1の間に挿入することが難しく、例えば、粉状の磁性体2を用いて、渦巻き状の電気導体1の間に挿入することは、磁性体2が粉状であるため、その性質上、均等に形成することは難しく、もしできたとしても、その状態を維持することは困難で、極めて製作しにくいものであった。
また、磁性体2の無い、即ち、電気導体1間が空間だけの箇所の寸法を所定の値に維持することも困難であった。さらに、磁性体2は基本的に導電性があり、電気導体2間の絶縁性を確保することも難しかった。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、高周波抵抗を低減しつつ、簡単な構成で、加工性を大幅に向上させて、安価に生産できる誘導加熱コイルと、それを使用した誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱コイルは、被加熱調理容器を加熱する略円形状の加熱コイルと、前記加熱コイルを保持するコイルベースとを備え、前記加熱コイルは、銅やアルミなどの金属製導体の導体線を円板状になるようにうず巻状に巻回し形成し、且つ、うず巻状に巻回した隣り合う前記導体線間に間隔を設ける絶縁性のスペース手段を配設するとともに、前記スペース手段あるいは導体線にフェライトなど磁性材料の磁性体層を形成して、うず巻状に巻回した隣り合う前記導体線間に磁性体層を配設した構成としたものである。
また、導体線は、丸形状の素線をつぶしてその断面が扁平形状を有する素線とするとともに、前記導体線をつぶして形成された扁平面が隣り合うようにうず巻状に巻回して誘導加熱コイルを形成した構成としてある。
これによって、うず巻状に巻回した隣り合う前記導体線間に間隔を設ける絶縁性のスペース手段を配設するとともに、前記スペース手段あるいは導体線にフェライトなど磁性材料の磁性体層を形成して、うず巻状に巻回した隣り合う前記導体線間に磁性体層を配設してあるので、スペース手段による導体線間の隙間形成と磁性体層による磁束の遮断作用の相乗効果で、近接効果で生じる導体線の高周波抵抗を低減することができる。
特に、近接効果で生じる導体線の高周波抵抗の低減は、スペース手段と磁性体層の相乗効果で、スペース手段で設けるうず巻状に巻回した隣り合う導体線間の間隔を絶縁確保のために大きくする必要もなく、また、スペース手段あるいは導体線の表面に形成するフェライトなど磁性材料の磁性体層の厚さもさほど必要なく、結果的にコンパクトに加熱コイルを形成することができ、結果として導体線の高周波抵抗を低減し、加熱コイルの発熱損失を低減することができる。
また、形成する磁性体層の厚さは、さほど必要ないので、磁性体層はフェライトなど磁性材料を塗布または印刷、転写等によって容易に表面に形成することができるとともに、磁性体層の厚さが薄いため、曲がりやすく構成でき、うず巻状に巻回してコイル状に形成しやすく、加工性が大幅に向上する。
そして、導体線は、丸形状の素線をつぶしてその断面が扁平形状を有する素線とするとともに、前記導体線をつぶして形成された扁平面が隣り合うようにうず巻状に巻回し形成してあるので、捻れて傷ついたり、断線しにくくなり、取り扱いが容易になり、また、断面形状が扁平状の長方形であるため、うず巻状に巻回してコイル状に形成しやすく、加工性が大幅に向上する。
また、導体線は丸形状の素線をつぶしてあるので、その端部に角部分がないため、うず巻状に巻回してコイル状に形成するときに、スムーズに巻きやすくなり、加工性が向上するとともに、角線を用いるとそのエッジ部に電流が集中して損失を生じるエッジ効果の心配もなくなる。
さらに、丸形状の素線をつぶしてその断面が扁平形状を有する素線の一つの断面積は、従来のリッツ線の細いエナメル線を複数本撚り合せたものの断面積に相当し、簡単な構成で、加工性を大幅に向上させることができる。
本発明の誘導加熱コイルは、近接効果で生じる高周波抵抗の低減ができるとともに、コンパクトに加熱コイルを形成することができ、さらに、磁性体層を薄くできるので、塗布または印刷、転写等によって容易に表面に形成できるとともに、磁性材料を曲がりやすく構成でき、うず巻状に巻回してコイル状に形成しやすく、高周波抵抗を低減しつつ、簡単な構成で、加工性を大幅に向上させ、安価な誘導加熱コイルを提供することができる。
本発明の実施の形態1における誘導加熱コイルを使用した誘導加熱調理器の要部断面図 本発明の実施の形態1における誘導加熱コイルの要部拡大断面図 本発明の実施の形態1における誘導加熱コイルを使用した誘導加熱調理器の要部平面図 本発明の実施の形態1における誘導加熱コイルを使用した誘導加熱調理器の制御ブロック図 (a)本発明の実施の形態1における誘導加熱コイルのつぶした部分の平面部に広い形状の断面形状図(b)本発明の実施の形態1における誘導加熱コイルの導体線の直線部が少ない長円形の断面形状図(c)本発明の実施の形態1における誘導加熱コイルの導体線の直線部がない楕円形状図(d)本発明の実施の形態1における誘導加熱コイルの導体線のつぶした部分が内側に若干凹むようにした形状の断面形状図 従来の誘導加熱装置用誘導加熱コイルの断面図 近接するコイル周辺の電磁環境摸式図
第1の発明は、被加熱調理容器を加熱する略円形状の加熱コイルと、加熱コイルを保持するコイルベースとを備え、加熱コイルは、銅やアルミなどの金属製導体の導体線を円板状になるようにうず巻状に巻回し形成し、且つ、うず巻状に巻回した隣り合う導体線間に間隔を設ける絶縁性のスペース手段を配設するとともに、スペース手段あるいは導体線にフェライトなど磁性材料の磁性体層を形成して、うず巻状に巻回した隣り合う導体線間に磁性体層を配設したものである。
これによって、スペース手段と磁性体層の相乗効果で、近接効果で生じる発熱損失を低減しつつ、簡単な構成で、加工性を大幅に向上させ、安価な誘導加熱コイルとすることができる。
第2の発明は、特に、第1の発明の導体線は、丸形状の素線をつぶしてその断面が扁平形状を有する素線とするとともに、導体線をつぶして形成された扁平面が隣り合うようにうず巻状に巻回して加熱コイルを形成した構成としてある。
これによって、導体線をつぶして形成された扁平面が隣り合うようにうず巻状に巻回し形成してあるので、捻れて傷ついたり、断線しにくくなり、取り扱いが容易になり、また、断面形状が扁平状の長方形であるため、うず巻状に巻回してコイル状に形成しやすく、また、導体線は丸形状の素線をつぶしてあるので、その端部に角部分がないため、うず巻状に巻回してコイル状に形成するときに、スムーズに巻きやすくなり、加工性が向上するとともに、角線を用いた時のエッジ部に電流が集中して損失を生じるエッジ効果の心配もなくすことができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の導体線の外周に耐熱ワニス等によって絶縁処理を施したものである。
これによって、導体線の外周に耐熱ワニス等によって絶縁処理を施してあるので、その周囲がすべりやすく、スムーズに巻きやすくなり、加工性が向上するとともに、導体線の表面に傷がつきにくいため、導体線が擦れて導体線の粉が生じて、他の部分の電気部品に悪影響を及ぼす心配もなくすことができる。
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の磁性体層をスペース手段あるいは導体線にフェライトなど磁性材料を塗布または印刷、転写等によって表面に形成するように構成したものである。
これによって、磁性体層はスペース手段あるいは導体線にフェライトなど磁性材料を塗布または印刷、転写等によって表面に形成してあるので、スペース手段と磁性体層が一体形成されて、位置ずれ等の心配がなくなり、経年的にも磁性体層にひび割れ等を生じても脱落しなければ性能への影響は少なく、スペース手段と磁性体層の効果を安定化する。
また、磁性体層はスペース手段に一体化されているので、取り扱いが容易で、うず巻状に巻回してコイル状に形成しやすく、加工性を大幅に向上することができる。
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明のスペース手段あるいは導体線にフェライトなど磁性材料を塗布または印刷、転写等によって表面に形成される磁性体層は、磁性材料とバインダーとなる接着成分を有し、磁性材料を接着成分で包み込むように形成して、磁性体層に絶縁性を付与するようにしたものである。
これによって、磁性材料を接着成分で包み込むように形成して、磁性体層に絶縁性を付与するようにしてあるので、導体線を他の手段で絶縁しなくてもよくなり、加工工程を簡素化でき、加工性が大幅に向上するとともに安価にすることができる。
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか1つの発明の誘導加熱コイルを用いた誘導加熱調理器とすることにより、上記した第1〜5のいずれか1つの発明の作用効果が得られ、高周波抵抗を低減しつつ、簡単な構成で、加工性を大幅に向上させて、安価に生産できる誘導加熱コイルを用いた誘導加熱調理器を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における誘導加熱コイルを使用した誘導加熱調理器の要部断面図、図2は本発明の第1の実施の形態における誘導加熱コイルの要部拡大断面図、図3は本発明の第1の実施の形態における誘導加熱コイルを使用した誘導加熱調理器の要部平面図、図4は本発明の第1の実施の形態における誘導加熱コイルを使用した誘導加熱調理器の制御ブロック図、図5は本発明の第1の実施の形態における誘導加熱コイルに用いる導体線の断面形状図である。
図1〜図4に示すように、本体21の天面は鍋などの被加熱調理容器22を載置するトッププレート23で形成され、その一部に操作部21aが設けてあり、トッププレート23の内側には被加熱調理容器22を加熱する略円形状の誘導加熱コイル33と、上記誘導加熱コイル33の運転や電源供給するインバータ部25を制御する制御部26が配置されていて、制御部26が、インバータ部25のスイッチング半導体をオン、オフしてインバータ部25の高周波発振を制御するとともに発振動作の起動、停止も制御している。
上記インバータ部25は、周波数変換装置の1つで、電源整流器、フィルタコンデンサ、共振コンデンサ、スイッチング半導体などを含み、商用電源27を高周波電流に変換し、この高周波電流を加熱コイル24に供給して、加熱コイル24は被加熱調理容器22の近傍で高周波磁界を発生し、被加熱調理容器22の底を加熱する。
また、加熱コイル24は、耐熱樹脂性のコイルベース28上に載置されており、丸形状の素線をつぶしてその断面が扁平形状を有する素線とした単線の導体線29の扁平面が隣り合うようにうず巻状に巻回して形成してあり、且つ、うず巻状に巻回した隣り合う導体線29の間に間隔を設けるように誘電損失の低く耐熱性の高いマイカ製のスペース手段30を導体線29間に挿入して形成してある。誘導加熱コイル33は、加熱コイル24と耐熱樹脂性のコイルベース28とで構成している。
さらに、スペース手段30の表面にフェライトなど磁性材料を塗布して形成した磁性体層31を形成してあり、この磁性体層31は、磁性材料とバインダーとなる接着成分を有し、磁性材料を微細粉として接着成分で包み込むように形成して、磁性体層31に絶縁性を付与するようにしてあるとともに、導体線29の外周には耐熱ワニス等によって絶縁処理(図示せず)を施して構成してある。
以上のように構成された誘導加熱コイルとそれを使用した誘導加熱調理器について、以下その動作、作用を説明する。
本体21の天面に位置するトッププレート23に鍋などの被加熱調理容器22を載置して、使用者が操作部21aを操作して、所定の条件で加熱を開始すると、制御部26が、インバータ部25を稼働させて高周波電流を加熱コイル24に供給し、加熱コイル24は被加熱調理容器22の近傍で高周波磁界を発生して、被加熱調理容器22の底を加熱するようになっている。
ここで、うず巻状に巻回した隣り合う導体線29間に間隔を設ける絶縁性のマイカ製のスペース手段30を配設するとともに、スペース手段30にフェライトなど磁性材料の磁性体層31を形成して、うず巻状に巻回した隣り合う導体線29間に磁性体層31を配設してあるので、スペース手段30による導体線間の隙間形成と磁性体層による磁束の遮断作用の相乗効果で、近接効果で生じる高周波抵抗を低減できる。
特に、近接効果で生じる高周波抵抗の低減は、スペース手段30と磁性体層31の相乗効果で、スペース手段30で設けるうず巻状に巻回した隣り合う導体線29間に間隔を大きくする必要もなく、また、スペース手段30の表面に形成するフェライトなど磁性材料の磁性体層31の厚さもさほど必要なく、結果的にコンパクトに加熱コイル24を形成することができ、結果として導体線29の高周波抵抗が低減し、加熱コイル24の発熱損失を低減することができる。
実験によれば、スペース手段30による間隙を0.2〜0.5mm程度にすればよく、また、フェライトなど磁性材料の磁性体層31の厚さもさほど必要なく、磁性体層31の厚さが100μm程度あればよく、結果的にコンパクトに、加熱コイル24を形成することができ、結果として導体線29の高周波抵抗が低減し、加熱コイル24の発熱損失を低減することができる。
また、磁性体層31の厚さはさほど必要ないので、フェライトなど磁性材料を塗布または印刷、転写等によって容易に表面に形成することができるとともに、磁性体層31の厚さが薄いため、曲がりやすく構成でき、うず巻状に巻回してコイル状に形成しやすく、加工性が大幅に向上する。
そして、導体線29は、丸形状の素線をつぶしてその断面が扁平形状を有する素線とするとともに、導体線29をつぶして形成された扁平面が隣り合うようにうず巻状に巻回し形成してあるので、捻れて傷ついたり、断線しにくくなり、取り扱いが容易になり、また、断面形状が扁平状の長方形であるため、うず巻状に巻回してコイル状に形成しやすく、加工性が大幅に向上する。
また、導体線29は単線として、丸形状の素線をつぶしてあるので、その端部に角部分がないため、うず巻状に巻回してコイル状に形成するときに、スムーズに巻きやすくなり、加工性が向上するとともに、角線を用いるとそのエッジ部に電流が集中して損失を生じるエッジ効果の心配もなくなる。
さらに、丸形状の素線をつぶしてその断面が扁平形状を有する導体線29の一つの断面積は、従来のリッツ線の細いエナメル線を複数本撚り合せたものの断面積に相当し、複数の細線が引っ掛かったり切れたりする心配もなくなり、簡単な構成で、加工性を大幅に向上させることができるとともに、素線が太くなるので素線の加工費も大幅に安くなりコストも低減できるようになる。
例えば、従来のリッツ線では、径0.3mmの素線を34芯に束ねたものであれば、その断面積は2.4平方mmとなり、丸形状の素線であれば1.8mmの径で面積が2.55平方mmとなり計算上その断面積が同等以上となり、これを扁平形状に例えば厚さ0.8mmにつぶせば、コイルの径を大きくせずに容易に断面積を大きくすることができる。
このように、導体線29に用いる丸形状の素線の径を大きくすることで断面積を大きくすることができ、導体線29自身の有する直流抵抗値を低減することができるが、実際には、変形量や加工条件等によっても変わるが扁平形状につぶしたときに素線が1〜2割程度伸び、断面積が小さめとなるので、その分、導体線29に用いる丸形状の素線の径を大きくするように考慮した方がよい。
尚、誘導加熱調理器で使われる周波数25kHz前後あるいは20kHz〜100kHz対する表皮効果による電流の流れる深さを示す表皮深さは、材質が銅の場合、20kHzで0.467mm、100kHzで0.209mmであるので、扁平形状につぶしたときの厚さは表皮深さの倍の0.42〜0.93mm以下であれば表皮効果の影響を受け難いことになる。
従って、使われる周波数に対応する表皮効果による電流の流れる深さを示す表皮深さに応じて、導体線29の材質や、扁平形状につぶしたときの厚さを設定して、近接効果による高周波抵抗の増加分を考慮して、必要な抵抗成分つまり断面積から、板の幅や枚数を設定すればよい。
図5(a)は本発明の第1の実施の形態における誘導加熱コイルの導体線のつぶした部分の平面部に広い形状の断面形状図(b)は本発明の第1の実施の形態における誘導加熱コイルの導体線の直線部が少ない長円形の断面形状図(c)は本発明の第1の実施の形態における誘導加熱コイルの導体線の直線部がない楕円形状図(d)は本発明の第1の実施の形態における誘導加熱コイルの導体線のつぶした部分が内側に若干凹むようにした形状の断面形状図である。
また、丸形状の素線をつぶしてその断面が扁平形状とする場合に、図5(a)のように、つぶした部分の平面部に広い形状にかぎらず、図5(b)のように、直線部が少ない長円形あるいは、図5(c)のように、直線部がない楕円形状、または、図5(d)のように、つぶした部分が内側に若干凹むようにしてもよく、導体線29とスペース手段30との固定やうず巻状に巻回すときの加工性等によって設定すればよい。
さらに、導体線29の外周に耐熱ワニス等によって絶縁処理を施してあるので、その周囲がすべりやすく、スムーズに巻きやすくなり、加工性が向上するとともに、導体線29の表面に傷つきにくいため、導体線29が擦れて導体線29の粉が生じて、他の部分例えば制御部26の電気部品に悪影響を及ぼす心配もなくなる。
そして、磁性体層31は、マイカ製のスペース手段30にフェライトなど磁性材料を塗布によって表面に形成してあるので、スペース手段30と磁性体層31が一体形成されて、位置ずれ等の心配がなくなり、経年的にも磁性体層31にひび割れ等を生じても脱落しなければ性能への影響は少なく、スペース手段30と磁性体層31の効果が安定化する。
また、磁性体層31は、マイカ製のスペース手段30に一体化されているので、取り扱いが容易で、うず巻状に巻回してコイル状に形成しやすく、加工性が大幅に向上する。
さらに、加熱コイル24の導体線29の耐熱ワニス等によって施された絶縁処理の被膜
が、組み立て時の引っかかりなど何らかの理由で傷ついたとしても、磁性材料を接着成分で包み込むように形成して、磁性体層31に絶縁性を付与するようにしてあるので、隣り合う導体線29間に短絡して安全性が損なわれるという心配もなく、より安全性の確保ができるようになる。
尚、導体線29の外周には耐熱ワニス等によって絶縁処理(図示せず)を施した例で説明したが、これは耐熱ワニス等によって絶縁処理をしなくてもよく、これによれば、導体線29を他の手段で絶縁しなくてもよくなり、加工工程を簡素化でき、加工性が大幅に向上するとともに安価にすることができる。
さらに、加熱コイル24の導体線29を単線として構成して説明したが、これは導体線29を、水平方向に並べた複数の導体線29を一体として、水平方向にうず巻状に巻回して加熱コイル24を形成するとともに、複数の導体線29間にフェライトなど磁性材料の磁性体層31を形成するようにしてもよい。
これによれば、水平方向に並べた複数の導体線29を一体として、水平方向にうず巻状に巻回して加熱コイル24を形成してあるので、加熱コイル24自身の厚さを薄くすることができるとともに、電流を分散させることができ、表皮効果で生じる高周波抵抗の低減ができる。
また、複数の導体線29間に磁性体層31でフェライトなど磁性材料の磁性体層31を形成してあるので、表皮効果で生じる高周波抵抗の低減に加え、さらに素線間の近接効果で生じる高周波抵抗の低減をすることができるようになる。
さらに、図1、図2ではトッププレート23と加熱コイル24の間に隙間を設けて説明したが、これは、トッププレート23と加熱コイル24を密着するようにしてもよく、また、トッププレート23と加熱コイル24の間に断熱材等を配設してもよい。
前述のトッププレート23に加熱コイル24を密着させるように配設すると、加熱コイル24と被加熱調理容器22の結合が強くなるため、加熱しやすくなるとともに、加熱コイル24の電磁界漏れを大幅に低減するとともに、相乗効果で加熱コイル24の熱効率を大幅に向上することができる。
また、トッププレート23と加熱コイル24の間に断熱材等を配設すると、トッププレート23が加熱コイル24によって、傷つかないようすることができるとともに、空焼き時などの被加熱調理容器22からの熱の影響を受け難くでき、加熱コイル24を保護することができる。
本実施の形態における誘導加熱コイルを用いた誘導加熱調理器とすることにより、高周波抵抗を低減しつつ、簡単な構成で、加工性を大幅に向上させて、安価に生産できる誘導加熱コイルを用いた誘導加熱調理器を得ることができる。
以上のように、本発明にかかる誘導加熱コイルは、高周波抵抗を低減しつつ、簡単な構成で、加工性を大幅に向上させて、安価に生産することが可能となるので、誘導加熱を利用した産業分野等の用途にも適用できる。
21 本体
21a 操作部
22 被加熱調理容器
23 トッププレート
24 加熱コイル
28 コイルベース
29 導体線
30 スペース手段
31 磁性体層
33 誘導加熱コイル

Claims (6)

  1. 被加熱調理容器を加熱する略円形状の加熱コイルと、前記加熱コイルを保持するコイルベースとを備え、前記加熱コイルは、銅やアルミなどの金属製導体の導体線を円板状になるようにうず巻状に巻回し形成し、且つ、うず巻状に巻回した隣り合う前記導体線間に間隔を設ける絶縁性のスペース手段を配設するとともに、前記スペース手段あるいは導体線にフェライトなど磁性材料の磁性体層を形成して、うず巻状に巻回した隣り合う前記導体線間に磁性体層を配設した誘導加熱コイル。
  2. 前記導体線は、丸形状の素線をつぶしてその断面が扁平形状を有する素線とするとともに、前記導体線をつぶして形成された扁平面が隣り合うようにうず巻状に巻回して加熱コイルを形成した請求項1に記載の誘導加熱コイル。
  3. 前記導体線は外周に絶縁処理を施した請求項1または2に記載の誘導加熱コイル。
  4. 前記スペース手段あるいは前記導体線に磁性材料を塗布、印刷または転写によって表面に形成するように構成した請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱コイル。
  5. 前記スペース手段あるいは前記導体線に磁性材料を塗布、印刷または転写によって表面に形成される磁性体層は、磁性材料とバインダーとなる接着成分を有し、磁性材料を接着成分で包み込むように形成して、磁性体層に絶縁性を付与するようにした請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導加熱コイル。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の誘導加熱コイルを用いた誘導加熱調理器。
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