JP2012122060A - インクジェット用のインク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 樹脂A、樹脂B及び顔料を含有する、インクジェット用のインクにおいて、前記顔料が、前記樹脂Bにより分散されてなるハロゲン化金属フタロシアニン顔料であり、前記樹脂Aがカルボキシ基を有するランダム共重合体であり、前記樹脂Bがカルボキシ基を有するブロック共重合体であり、かつ、前記樹脂Aの酸価が前記樹脂Bの酸価よりも低く、さらに、pKaが4.3以下である官能基及びpKaが5.0以上6.6以下である官能基を有する多塩基酸を含有することを特徴とするインク。
【選択図】 なし
Description
以下、本発明のインクを構成する成分などについて説明する。
本発明のインクには、色材としてハロゲン化金属フタロシアニン顔料(以下、顔料と呼ぶことがある)を含有させる。インク中のハロゲン化金属フタロシアニン顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上20.0質量%以下、さらには2.0質量%以上8.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクには、インクに添加する樹脂としてカルボキシ基を有するランダム共重合体(樹脂A)と、上記で説明した顔料を分散させるための分散樹脂としてカルボキシ基を有するブロック共重合体(樹脂B)と、を含有させる。
本発明のインクに含有させる、カルボキシ基を有するランダム共重合体(樹脂A)について説明する。樹脂Aは、後述するカルボキシ基を有するブロック共重合体(樹脂B)の酸価よりも低酸価であることを要する。本発明においては、この樹脂Aはインクに添加する樹脂として用いるものであるが、顔料の分散に主として寄与するのが樹脂Bであれば、樹脂Aのごく一部が顔料の分散に寄与することを除外するものではない。なお、上述の通り、ブロック共重合体の顔料粒子の表面への吸着力はランダム共重合体よりも強いため、顔料を分散させているブロック共重合体と置き換わることは通常は生じない。
本発明のインクに含有させる、カルボキシ基を有するブロック共重合体(樹脂B)について説明する。先にも述べた通り、樹脂Aの酸価は樹脂Bの酸価よりも低いことを要する。本発明においては、樹脂Bは顔料を分散させるための分散樹脂として用いるので、ブロック共重合体は複数の疎水性ユニットで構成される疎水性部分と複数の親水性ユニットで構成される親水性部分を有する。本発明で使用するブロック共重合体もカルボキシ基を有するものであるので、親水性ユニットとしてカルボキシ基を有するユニットを少なくとも含んで構成されれば、疎水性ユニットはどのようなものであってもよい。なお、本発明のインクに使用するブロック共重合体は、アニオン又はカチオンリビング重合法、グループトランスファー重合法、原子移動ラジカル重合法、可逆的付加開裂連鎖移動重合法などの常法により合成することができる。本発明においては、樹脂Bの重量平均分子量が2,000以上20,000以下であることが好ましい。
本発明のインクに含有させる樹脂Aや樹脂Bとしては、以下に挙げるような親水性ユニット及び疎水性ユニットを構成ユニットとして少なくとも有するものであることが好ましい。具体的には、樹脂A及び樹脂Bの酸価の関係を満たすように、各樹脂にカルボキシ基を有する単量体に由来するユニット必要量を持たせれば、それ以外は以下に挙げるような群から適宜に選択した単量体に由来するユニットを使用することができる。なお、以下の記載における(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルを示すものとする。
本発明においては、樹脂Aの酸価が樹脂Bの酸価よりも低いことが必要である。この関係を満たせば各樹脂の酸価はどのようにしてもよい。本発明においては、樹脂Aの酸価が100mgKOH/g以上180mgKOH/g以下、樹脂Bの酸価が140mgKOH/g以上250mgKOH/g以下であることがより好ましい。なお、樹脂の酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性基を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg)のことである。本発明においては、樹脂Aや樹脂Bが水溶性を有することが好ましい。本発明において樹脂が水溶性であることとは、該樹脂を酸価と当量のアルカリで中和した場合に粒径を有さないものであることとする。このような条件を満たす樹脂を、本明細書においては水溶性の樹脂として記載する。
本発明においては、インク中の樹脂Aの含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の樹脂Bの含有量(質量%)が、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインク中の、ハロゲン化金属フタロシアニン顔料を分散している樹脂の種類は、以下に述べる方法によって知ることができる。先ず、インクを20,000rpmで2時間遠心分離することで、沈降分として顔料を含む成分と、上澄み分である水溶性の成分とに分ける。そして、顔料を含む成分中に存在する樹脂の分析を下記のようにして行う。遠心分離により分離された顔料を含む成分を再度、水に分散して、これに塩酸などを加えて酸析を行う。析出物を遠心分離やろ過などにより分離して、固形物を得る。この固形物について、テトラヒドロフランなどの有機溶剤でソックスレー抽出を行い、樹脂を得る。そして、得られた樹脂をNMRなどにより分析する。具体的には、単量体に特有のピークを確認することにより共重合体の組成を分析することができる。また、ブロック共重合体であれば明確なピークが見られるのに対して、ランダム共重合体ではブロードなピークとなるため、樹脂の形態もNMRにより分析することができる。このような方法により、顔料の分散樹脂の種類を知ることができる。また、最初の遠心分離後に得られた水溶性の成分中に存在する樹脂についても、上記と同様にして分析することで、インク中に添加する樹脂の種類を知ることができる。
本発明のインクには、その分子構造中に、pKaが4.3以下である官能基及びpKaが5.0以上6.6以下である官能基を有する多塩基酸を含有させる。インクに上記の多塩基酸が少なくとも含まれていれば、本発明の効果を損なわない限り、それ以外の塩基酸もインクに含まれていてもよい。なお、pKaが低い方の官能基のpKaは1.5以上であることが好ましい。
本発明のインクには、水、又は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有させることができる。水としては脱イオン水を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、40.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤としては、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、含窒素化合物類などのインクジェット用のインクに使用可能なものをいずれも用いることができ、1種又は2種以上をインクに含有させることができる。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下、さらには3.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましい。
本発明のインクには、上記成分以外にも必要に応じて、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの常温で固体の有機化合物や、尿素、エチレン尿素などの含窒素化合物を含有させてもよい。また、上記の成分の他に、さらに必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤などの種々の添加剤をインクに含有させてもよい。特に、インク中の液体成分を速やかに記録媒体に浸透させるために、適量の界面活性剤をインクに含有させることが好ましい。
本発明のインクは中性〜アルカリ性に調整されていることが好ましい。このようにすれば、ブロック共重合体、ランダム共重合体、多塩基酸の水性媒体への溶解性を向上させ、インクの長期保存性をより一層高めることができる。このため、インクのpHは7.0以上であることが好ましい。ただし、インクジェット記録装置を構成する種々の部材を腐食させる場合があるため、インクのpHは10.0以下であることが好ましい。
本発明のインクは常法にしたがって調製することができるが、ブロック共重合体(樹脂B)によりハロゲン化金属フタロシアニン顔料が分散されている必要があるため、以下のような手順で調製することが好ましい。先ず、顔料の分散樹脂であるブロック共重合体(樹脂B)と水を含む混合物に顔料を添加し、撹拌した後、分散処理を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って顔料分散液を得る。次に、上記で得られた顔料分散液と、水性媒体(水や水溶性有機溶剤)、インクに添加するランダム共重合体(樹脂A)、必要に応じてその他の成分など加え、撹拌して、インクとする。
本発明のインクカートリッジは、インクを収容するインク収容部を備えてなり、前記インク収容部に、上記で説明した本発明のインクが収容されてなるものである。インクカートリッジの構造としては、インク収容部が、液体のインクを収容するインク収容室、及び負圧によりその内部にインクを保持する負圧発生部材を収容する負圧発生部材収容室で構成されるものが挙げられる。または、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容量の全量を負圧発生部材により保持する構成のインク収容部であるインクカートリッジであってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
本発明のインクジェット記録方法は、インクジェット方式の記録ヘッドにより上記で説明した本発明のインクを吐出して、記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式やインクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられ、本発明においては、熱エネルギーを利用するインクジェット記録方法を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。なお、本発明においては、記録媒体としては、普通紙やインク受容層を有する記録媒体などの、インク吸収能を有する紙などを用いることが好ましい。
各単量体を用いて常法により表3の上段に示すユニットの組成(質量)比を有する水溶性の樹脂を合成した。得られた樹脂について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりその重量平均分子量を、また、電位差滴定によりその酸価を測定した結果を表3の下段に示す。
表4の上段に示す各成分(単位:部)の混合物をバッチ式縦型サンドミル(アイメックス製)に入れ、0.3mm径のジルコニアビーズ85.0部を充填し、水冷しながら3時間分散した。なお、各樹脂は、その酸価と当量の水酸化カリウムを用いて中和したものを固形分として使用した。その後、遠心分離を行うことで粗大粒子を含む非分散物を除去した。さらに、適量のイオン交換水を用いて希釈した後、ポアサイズが3.0μmであるミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、顔料及び樹脂の含有量(単位:%)が表4の下段に示す値である各顔料分散液を得た。
表5〜7の上段に示す各成分(単位:%)を混合し、十分撹拌した後、ポアサイズが2.5μmであるミクロフィルター(ポール製)にて加圧ろ過を行い、各インクを調製した。なお、樹脂を含む水溶液としては、上記で合成した樹脂をその酸価と当量の水酸化カリウムで中和した、樹脂(固形分)の含有量が10.0%である水溶液を用いた。また、アセチレノールE100は川研ファインケミカル製のノニオン性界面活性剤である。表5〜7の下段には、樹脂A(インクに添加する樹脂)及び樹脂B(分散樹脂)の酸価や含有量など、各インクの主特性を示したが、多塩基酸の官能基量とは多塩基酸のpKaが5.0以上6.6以下である官能基量のことである。
(吐出速度)
上記で得られたインクについて、以下のようにして吐出速度の評価を行った。インクジェット方式の記録ヘッドに一定の駆動電圧を印加することにより吐出口から吐出されるインクの状態を、インクの吐出方向に直交する方向(横方向)からCCDカメラで撮影し、吐出速度を算出した。具体的には、ストロボの発光間隔と撮影間隔とを同期させ、ごく短い間隔でストロボを発光させた。この間に、吐出のための駆動電圧を印加し、その時点から所定の時間が経過した時点で、記録ヘッドの吐出口が設けられた面と吐出されたインク滴の重心との距離(μm)を撮影データから求め、この距離とストロボの発光間隔(μ秒)から吐出速度を算出した。吐出速度の測定は3個の吐出口について行い、その平均を測定値とした。対照例として、ハロゲン化されていない金属フタロシアニン顔料を含有するため、吐出特性の低下が生じない参考例1のインクを用い、該インクの吐出速度を100とした場合の、各インクの吐出速度を相対値として求め、この相対値により吐出速度の評価を行った。吐出速度の評価基準は以下の通りである。評価結果を表8に示す。本発明においては、下記の評価基準でD以下が許容できないレベル、C以上が許容できるレベルとした。
A:相対値が95以上であった
B:相対値が90以上95未満であった
C:相対値が80以上90未満であった
D:相対値が70以上80未満であった
E:相対値が60以上70未満であった
F:相対値が60未満であった。
上記で得られたインクについて、以下のようにして析出物の評価を行った。インクジェット方式の記録ヘッドを用い、吐出口列の中心付近の80個の吐出口から、駆動周波数を2kHzとして、1つの吐出口あたり2,000万滴のインクを吐出させた。その後、記録ヘッドの吐出口を光学顕微鏡で観察し、発生した析出物の状態により評価を行った。析出物の評価基準は以下の通りである。評価結果を表8に示す。本発明においては、下記の評価基準でD以下が許容できないレベル、C以上が許容できるレベルとした。
A:全ての吐出口において析出物が発生していなかった
B:5%未満の吐出口において析出物が発生していた
C:5%以上20%未満の吐出口において析出物が発生していた
D:20%以上50%未満の吐出口において析出物が発生していた
E:50%以上の吐出口において析出物が発生していた。
Claims (7)
- 樹脂A、樹脂B及び顔料を含有する、インクジェット用のインクにおいて、
前記顔料が、前記樹脂Bにより分散されてなるハロゲン化金属フタロシアニン顔料であり、
前記樹脂Aがカルボキシ基を有するランダム共重合体であり、前記樹脂Bがカルボキシ基を有するブロック共重合体であり、かつ、前記樹脂Aの酸価が前記樹脂Bの酸価よりも低く、
さらに、pKaが4.3以下である官能基及びpKaが5.0以上6.6以下である官能基を有する多塩基酸を含有することを特徴とするインク。 - 前記樹脂Aの酸価が、前記樹脂Bの酸価に対する比率で、0.60以上0.85以下である請求項1に記載のインク。
- 前記インク中の、前記樹脂Aの含有量(質量%)が、前記樹脂Bの含有量(質量%)に対する質量比率で、0.05倍以上1.50倍以下である請求項1又は2に記載のインク。
- 前記多塩基酸のpKaが5.0以上6.6以下である官能基量(mmol/kg)が、前記樹脂Aのカルボキシ基量(mmol/kg)に対する比率で、0.013以上1.000以下である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のインク。
- 前記多塩基酸の分子量が、300以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインク。
- インクを収容するインク収容部を有するインクカートリッジであって、前記インク収容部に収容されたインクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
- インクをインクジェット方式で吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、前記インクが、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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