JP2012116941A - 樹脂ワニス、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板及び半導体装置 - Google Patents

樹脂ワニス、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板及び半導体装置 Download PDF

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Abstract

【課題】誘電特性に優れ、導体層との密着性及び回路埋め込み性に優れ、ボイドの発生がなく、スジ状のムラ等の外観不良がない絶縁層を作製することができる樹脂ワニスを提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂及びビスマレイミド化合物を含有する熱硬化性樹脂と、固形分中60〜85質量%の割合で含有する充填材とを含む熱硬化性樹脂組成物を、ケトン系溶剤に含有させたことを特徴とする、樹脂ワニス。
【選択図】なし

Description

本発明は、樹脂ワニス、プリプレグ、金属張積層板、プリント配線板及び半導体装置に関する。
電子材料分野では、ノート型パーソナルコンピューターや携帯電話等の情報処理機器を含む電子機器に対する小型化、高速化等の要求に伴い、当該電子機器に使用される半導体装置等の電子部品においても小型化、高速化等が進んでおり、情報伝達の高速伝送においては、電気信号の劣化が問題となっている。電気信号の劣化は、導体損失と誘電体損失の和で表されるが、特に多層プリント配線板に用いられる層間絶縁材料の誘電特性に起因する誘電体損失は、高速伝送に必要な高周波領域では著しく増加する。そのため、誘電体損失がGHz帯の周波数において電気信号劣化の主要因となっている。この問題を解決するために、プリント配線板の絶縁層に低誘電率及び低誘電正接の特性を有する材料を用いることが求められている。
プリント配線板の絶縁層は、プリプレグを用いて形成することができる。プリプレグは、一般的に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂組成物を溶剤に含有させて樹脂ワニスとし、これをガラスクロス等の基材に含浸させて加熱乾燥させることにより作製される。プリント配線板の絶縁層を低誘電率化及び低誘電正接化させる手段として、絶縁層に用いられるプリプレグのガラスクロスに保持される樹脂組成物量を大きくする方法がある。特にGHz帯での高周波領域において、ガラスクロスは誘電率及び誘電正接が比較的高く、樹脂は誘電率及び誘電正接が比較的低いため、ガラスクロスの体積比を小さくし、樹脂を主成分とした樹脂組成物の体積比を大きくすることで、プリプレグ全体の誘電率及び誘電正接を下げることができる。
また、プリプレグ上に金属箔等の導体層を設けて導体回路層を形成することにより作製したプリント配線板は、前記プリプレグが有する樹脂組成物量を大きくすることで、誘電率及び誘電正接が比較的高いガラスクロスから導体回路層までの間隔が広くなるため、低誘電率化、低誘電正接化を図ることができる。
しかし、プリプレグが有する樹脂組成物量を大きくすると、プリプレグが厚くなってしまうため、プリプレグの樹脂組成物量を大きくし、且つ、プリプレグの厚さを従来と同等に維持し或いは従来よりも薄くするためには、薄いガラスクロスを用いる必要がある。
しかしながら、薄いガラスクロスを用いて作製したプリプレグは、ガラスクロスに対する樹脂組成物量は大きいが、樹脂の弾性率や熱膨張率の影響が大きくなるため、プリプレグ全体の弾性率低下、熱膨張率増大が起こる。そこで従来は、樹脂組成物中の充填材の含有量を大きくすることによってプリプレグの弾性率低下、熱膨張率増大を阻止していた。さらに、充填材は樹脂に比べても誘電正接が低いため、樹脂組成物中に充填材を多量に含有させることにより、プリプレグの誘電正接をさらに低くすることができる。
また、特許文献1には、ヤーンを構成するモノフィラメントを切断する起毛処理を施した後の厚み変化率が10%以上のガラスクロスと、このガラスクロスに保持された半硬化の硬化性樹脂とから成ることを特徴とするプリプレグが開示され、当該プリプレグは、ガラスクロスの起毛によって半硬化の硬化性樹脂の保持率が高まり、低誘電率及び低誘電正接である旨が記載されている。
特開平8−41224号公報
しかしながら、樹脂組成物中の充填材量を大きくすると、当該樹脂組成物を用いて作製したプリプレグは、コア基板用基材として用いる時に導体層との密着性が悪かったり、当該プリプレグをビルドアップ用絶縁材として用いる時に回路の埋め込みが困難になったりする等の問題が生じる。また、充填材量が大きいプリプレグでは、半硬化状態の樹脂層にボイドが発生しやすく、当該プリプレグを用いて得られたプリント配線板や半導体装置は、絶縁層に発生するボイドにより、絶縁信頼性の低下が起こりやすくなる。このような問題点は、反応性が低く低粘度の樹脂を用いることで改善することができるが、低粘度の樹脂を用いた樹脂組成物のワニスは、流動性が高く、ワニス中の樹脂と充填材とが分離しやすい。そのため、当該ワニスを用いてプリプレグを作製し、得られたプリプレグを加熱加圧成形して積層板を作製すると、ワニスを基材に含浸させる際に樹脂と充填材とが分離することに起因して、得られる積層板は、スジ状のムラが発生する等の外観不良が生じやすくなる。
また、特許文献1に開示されているプリプレグは、本発明者の実験によれば、起毛したガラスクロスを用いているため、表面の回路パターンの平滑性が高い積層板を得るためにはプリプレグの厚みが厚くなり、薄膜化に対応させることが困難である。
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであって、本発明の目的は、誘電特性に優れ、導体層との密着性及び回路加工等を施した平滑でない面に対する接着性(回路埋め込み性)に優れ、ボイドの発生がなく、スジ状のムラ等の外観不良がない絶縁層を作製することができる樹脂ワニスを提供することにある。
また、本発明の別の目的は、前記樹脂ワニスをガラスクロスに保持させた後、前記ケトン系溶剤を除去することにより得られる、誘電特性に優れ、導体層との密着性及び回路埋め込み性に優れ、ボイドの発生がないプリプレグを提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、前記プリプレグを用いて作製した金属張積層板を提供し、前記プリプレグ又は前記金属張積層板を用いてプリント配線板を提供し、前記プリント配線板を用いて作製した半導体装置を提供することにある。
上記目的は、下記発明(1)〜(10)により達成される。
(1)エポキシ樹脂及びビスマレイミド化合物を含有する熱硬化性樹脂と、固形分中60〜85質量%の割合で含有する充填材とを含む熱硬化性樹脂組成物を、ケトン系溶剤に含有させたことを特徴とする、樹脂ワニス。
(2)前記ケトン系溶剤が、シクロヘキサノン、イソホロン及びメチルシクロヘキサノンのうち少なくとも1種を含み、且つ、シクロヘキサノン、イソホロン及びメチルシクロヘキサノンの含有量の総量が70質量%以上である、上記(1)に記載の樹脂ワニス。
(3)前記熱硬化性樹脂が、さらにシアネート樹脂を含むものである、上記(1)又は(2)に記載の樹脂ワニス。
(4)上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載の樹脂ワニスを、ガラスクロスに保持させた後、前記ケトン系溶剤を除去することにより得られるプリプレグ。
(5)前記ガラスクロスの単位面積あたり重量が24g/m〜49g/mで、且つ前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が48g/m〜279g/mである、上記(4)に記載のプリプレグ。
(6)前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が、ガラスクロスの単位面積あたりの重量の2倍〜5.7倍である上記(4)又は(5)に記載のプリプレグ。
(7)上記(4)乃至(6)のいずれか一に記載のプリプレグ上に金属箔を積層し、加熱加圧して得られることを特徴とする金属張積層板。
(8)上記(7)に記載の金属張積層板を内層回路基板に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
(9)内層回路上に、上記(4)乃至(6)のいずれか一に記載のプリプレグを絶縁層に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
(10)上記(8)又は(9)に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。
本発明によれば、誘電特性に優れ、導体層との密着性及び回路埋め込み性に優れ、ボイドの発生がなく、スジ状のムラ等の外観不良がない絶縁層を作製することができる樹脂ワニスを得ることができる。
また、本発明によれば、前記樹脂ワニスを用いて、誘電特性に優れ、導体層との密着性及び回路埋め込み性に優れ、ボイドの発生がないプリプレグを得ることができる。
さらに、本発明によれば、前記プリプレグを用いて、金属張積層板を得ることができ、前記プリプレグまたは前記金属張積層板を用いてプリント配線板を得ることができ、前記プリント配線板を用いて半導体装置を得ることができる。
本発明のプリプレグの製造に用いられる含浸塗布設備の一例を示す概略図である。
(樹脂ワニス)
本発明の樹脂ワニスは、エポキシ樹脂及びビスマレイミド化合物を含有する熱硬化性樹脂と、固形分中60〜85質量%の割合で含有する充填材とを含む熱硬化性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と称することがある。)を、ケトン系溶剤に含有させたことを特徴とする。
なお、本発明において熱硬化性樹脂組成物とは、樹脂ワニスの溶剤以外の全成分、すなわち固形分を意味し、液状の樹脂成分等も固形分に含まれる。
また、本発明において熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有するとは、前記熱硬化性樹脂組成物に含まれる可溶性の樹脂等は溶剤に溶解し、不溶性の充填材等は溶剤に分散していることを意味する。
樹脂組成物を溶剤に含有させて得られる樹脂ワニスは、流動性が高すぎると樹脂と充填材とが分離しやすくなる。そのため、前記樹脂ワニスをガラスクロスに保持させた後、溶剤を除去することにより得られるプリプレグは、樹脂ワニスを基材に含浸させる際に樹脂と充填材とが分離することに起因して、加熱加圧成形するとスジ状のムラが発生したりする。一方、従来の流動性の低い樹脂ワニスを用いると、得られるプリプレグを加熱加圧成形してもスジ状のムラは発生しない。しかし、流動性の低い樹脂ワニスを用いて得られたプリプレグは、コア基板用基材として用いる時に導体層との密着性が悪かったり、ビルドアップ用絶縁材として用いる時に回路の埋め込みが困難になったりする。さらに、流動性の低い樹脂ワニスを用いると、得られるプリプレグや当該プリプリプレグを加熱加圧成形した時に樹脂層にボイドが発生しやすく、当該プリプレグを用いて製造したプリント配線板や半導体装置の絶縁信頼性を低下させたりする。従って、プリプレグの作製等に用いられる樹脂ワニスは、溶剤を含んだ樹脂ワニスの状態では、樹脂と充填材とが分離しにくい高すぎない流動性を有し、且つ、当該樹脂ワニスを用いて得られるプリプレグは、コア基板用基材として用いる時の導体層との密着性、及び、ビルドアップ用絶縁材として用いる時の回路埋め込みに優れ、ボイドの発生がない組成であることが求められる。
本発明者らは鋭意検討の結果、ビスマレイミド化合物とケトン系溶剤とを組み合わせることにより、多量の充填材を含有しているにも関わらず、溶剤を含んだ状態では、樹脂と充填材とが分離しにくい高すぎない流動性を有し、当該樹脂ワニスを用いて得られるプリプレグが、コア基板用基材として用いる時の導体層との密着性、及び、ビルドアップ用絶縁材として用いる時の回路埋め込みに優れ、ボイドの発生がなく、加熱加圧成形した時にスジ状のムラが発生しないことを見出した。
ビスマレイミド化合物は、極性が高いため、極性の低い溶剤には溶解せず、また、ビスマレイミド化合物の二重結合部分がルイス酸的な性質を有するため、アルコール等のプロトン性極性溶剤には溶解しない。また、ビスマレイミド化合物は、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の含窒素非プロトン性極性溶剤には溶解するが、これらの溶剤に溶解させた場合、ビスマレイミド化合物と含窒素非プロトン性極性溶剤の相互作用が強く、流動性が高くなってしまう。これに対し、本発明者らは、ケトン系化合物を溶剤として用いた場合、ビスマレイミド化合物が溶解し、かつ、ワニスの流動性が低下することを見出した。これは、ビスマレイミド化合物の二重結合部分のルイス酸的な性質と、ケトン系溶剤のカルボニル部分が適度に相互作用し、溶解するものの、ケトン系溶剤の疎水性であるアルキル鎖部分が適度に反発することで、ワニスの流動性が低下するものと考えられる。また、本発明者らは、ケトン系溶剤の中でも、特にシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、イソホロンなどの環状ケトン類が、カルボニル基の極性が高く、ワニスの高い溶解性と流動性の低下を両立できることを見出した。また、本発明の樹脂ワニス中のビスマレイミド化合物とケトン系溶剤とは、相互作用して平衡状態となっており、一部のビスマレイミド化合物が硬化反応し難い状態となる。硬化反応し難い状態となったビスマレイミド化合物の一部は、樹脂ワニスを加熱乾燥した後にも存在し、樹脂組成物の硬化反応の進行を遅くするため、半硬化状態での樹脂組成物の粘度を下げると考えられる。従って、本発明の樹脂ワニスを用いて得られるプリプレグは、樹脂組成物中に充填材を多量に含有しているにも関わらず、コア基板用基材として用いる時の導体層との密着性、及び、ビルドアップ用絶縁材として用いる時の回路埋め込みに優れ、ボイドが発生しない。
さらに、本発明の樹脂ワニスを用いて得られるプリプレグは、本発明の樹脂ワニスが、エポキシ樹脂を含むことで導体層との密着性に優れ、ビスマレイミド化合物を含むことで、誘電特性(誘電率、誘電正接)に優れ、充填材を多量に含有することで高弾性及び低熱膨張性であり、誘電正接がより低い。
まず、本発明の樹脂ワニスに用いられる熱硬化性樹脂組成物について説明する。
前記熱硬化性樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂及びビスマレイミド化合物を含有する熱硬化性樹脂と、充填材とを含有する。
前記熱硬化性樹脂は、少なくともエポキシ樹脂及びビスマレイミド化合物を含み、その他にも、特に限定されないが、例えば、シアネート樹脂、フェノール樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ポリエステル樹脂等を含んでいてもよい。
前記熱硬化性樹脂は、硬化性及び導体層との密着性の観点からエポキシ樹脂を含み、硬化性及び誘電特性(低誘電率、低誘電正接)の観点からビスマレイミド化合物を含む。さらに、ビスマレイミド化合物は、本発明の樹脂ワニスに含まれるケトン系溶媒と組み合わせることにより、前記樹脂ワニスの流動性を下げる効果がある。また、前記熱硬化性樹脂は、難燃性を向上させ、熱膨張係数を小さくし、プリプレグの誘電特性(低誘電率、低誘電正接)、導体層との密着性等を向上させ、さらには耐熱性、剛性等を向上させる点から、シアネート樹脂を含むことがより好ましい。
前記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、実質的にハロゲン原子を含まないエポキシ樹脂であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’−シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’−(1,4−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4’−(1,3−フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタンノボラック型エポキシ樹脂、1,1,2,2−(テトラフェノール)エタンのグリシジルエーテル類、3官能、又は4官能のグリシジルアミン類、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、メトキシナフタレン変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、メトキシナフタレンジメチレン型エポキシ樹脂、ナフトールアルキレン型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、上記エポキシ樹脂をハロゲン化した難燃化エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる分子量を有する2種類以上を併用することもでき、1種類又は2種類以上と、それらのプレポリマーを併用することもできる。
これらのエポキシ樹脂の中でも特に、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、及びナフタレン型エポキシ樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。これにより、低吸水性、耐熱性及び難燃性が向上する。
前記エポキシ樹脂の分子量は、特に限定されないが、300〜3000が好ましく、特に400〜2000が好ましい。分子量が前記下限値未満であると、プリプレグの機械的強度が低下したり、タック性が生じたりする場合がある。分子量が前記上限値を超えると、プリプレグ作製時におけるガラスクロスへの含浸性が低下し、均一な製品が得られない場合があったり、硬化反応が速くなり、半硬化状態での導体層との密着性や回路埋め込み性が悪くなったりする場合がある。
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で5〜25重量%が好ましく、特に6〜10重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると硬化性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下したり、導体層との密着性が低下したりする場合があり、前記上限値を超えると耐熱性が低下したり、誘電特性が不十分になったりする場合がある。
前記ビスマレイミド化合物は、分子鎖の両末端にマレイミド基を有する化合物であり、例えば、下記式(1)で表わされるものを用いることができる。ただし、前記ビスマレイミド化合物は、分子鎖の両末端以外にマレイミド基を有していても良い。
Figure 2012116941
式(1)中、R1〜R4は水素又は炭素数1〜4の置換若しくは無置換の炭化水素基であり、R5は2価の置換又は無置換の有機基である。ここで有機基とは、異種原子を含んでいてもよい炭化水素基であり、異種原子としては、例えばO、S等が挙げられる。Rは、好ましくはメチレン基、芳香環及びエーテル結合(−O−)が任意の順序で結合した主鎖構造を有し、主鎖上に置換基及び/又は側鎖を有していても良い炭化水素基であり、主鎖構造に含まれるメチレン基、芳香環及びエーテル結合の合計数が15個以下のもの、より好ましくは11個以下のものである。上記置換基又は側鎖としては、例えば、炭素数3個以下の炭化水素基、マレイミド基、アルコキシ基等が挙げられる。
以下に、本発明による好ましいビスマレイミドの具体的例示化合物(2)〜(5)を示すが、本発明はこれらの化合物に限定されることはない。
Figure 2012116941
Figure 2012116941
Figure 2012116941
Figure 2012116941
前記ビスマレイミド化合物としては、具体的には、4,4'−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、p−フェニレンビスマレイミド、2,2'−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、N,N'−エチレンジマレイミド、N,N'−ヘキサメチレンジマレイミド等が挙げられる。これらの中でも、低吸水率等を考慮すると、2,2'−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタンが好ましい。
前記ビスマレイミド化合物は、単独で用いてもよいし、種類の異なるビスマレイミド化合物を併用したり、ビスマレイミド化合物とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
前記ビスマレイミド化合物の含有量は、特に限定されないが、樹脂ワニス全体から溶媒を除いた固形分基準で5〜25重量%が好ましく、特に6〜10重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると硬化性や誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が不十分となる場合があり、前記上限値を超えると半田耐熱性が悪化する場合がある。
前記シアネート樹脂は、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化シアン化合物とフェノール類やナフトール類とを反応させ、必要に応じて加熱等の方法でプレポリマー化することにより得ることができる。また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
前記シアネート樹脂の種類としては、特に限定されないが、例えば、ノボラック型シアネート樹脂、ビスフェノールA型シアネート樹脂、ビスフェノールE型シアネート樹脂、テトラメチルビスフェノールF型シアネート樹脂等のビスフェノール型シアネート樹脂、及びナフトールアラルキル型シアネート樹脂等を挙げることができる。ノボラック型シアネート樹脂は、樹脂層の熱膨張係数を小さくすることができ、樹脂層の機械的強度、誘電特性(低誘電率、低誘電正接)にも優れる。
前記シアネート樹脂は、分子内に2個以上のシアネート基(−O−CN)を有することが好ましい。例えば、2,2’−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、1,1’−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナト−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,3−ビス(4−シアナトフェニル−1−(1−メチルエチリデン))ベンゼン、ジシクロペンタジエン型シアネートエステル、フェノールノボラック型シアネートエステル、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル、1,1,1−トリス(4−シアナトフェニル)エタン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスファイト、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,3−、1,4−、1,6−、1,8−、2,6−又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、4,4−ジシアナトビフェニル、及びフェノールノボラック型、クレゾールノボラック型の多価フェノール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂、ナフトールアラルキル型の多価ナフトール類と、ハロゲン化シアンとの反応で得られるシアネート樹脂等が挙げられる。これらの中で、フェノールノボラック型シアネート樹脂が難燃性、及び低熱膨張性に優れ、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)イソプロピリデン、及びジシクロペンタジエン型シアネートエステルが架橋密度の制御、及び耐湿信頼性に優れている。特に、フェノールノボラック型シアネート樹脂が低熱膨張性の点から好ましい。また、更に他のシアネート樹脂を1種類あるいは2種類以上併用したりすることもでき、特に限定されない。
前記シアネート樹脂は、単独で用いてもよいし、種類の異なるシアネート樹脂を併用したり、シアネート樹脂とそのプレポリマーとを併用したりすることもできる。
前記プレポリマーは、通常、前記シアネート樹脂を加熱反応等により、例えば3量化することで得られるものであり、ワニスの成形性、流動性を調整するために好ましく使用されるものである。
前記プレポリマーは、特に限定されないが、例えば、3量化率が20〜50重量%のプレポリマーを用いた場合、良好な成形性、流動性を発現できる。
前記シアネート樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、5.0×10〜4.5×10が好ましく、特に6.0×10〜3.0×10が好ましい。重量平均分子量が下限値未満であるとプリプレグを作製した場合にタック性が生じ、プリプレグ同士が接触したとき互いに付着したり、樹脂の転写が生じたりする場合がある。また、重量平均分子量が上限値を超えると反応が速くなりすぎ、特にプリプレグが導体層との密着性及び回路埋め込み性に劣ることがある。なお、シアネート樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法で測定した値である。
前記シアネート樹脂の含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で5〜25重量%が好ましく、特に6〜10重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、シアネート樹脂は、効果的に耐熱性、及び難燃性を発現させることができる。また、含有量が前記下限未満であると、熱膨張性が大きくなり、耐熱性が低下する場合があり、前記上限値を超えると得られるプリプレグの強度が低下する場合がある。
また、本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、前記熱硬化性樹脂の他に、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂等の熱可塑性樹脂を含有していても良い。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物は充填材を含有する。これにより、当該熱硬化性樹脂組成物を溶剤に含有した樹脂ワニスの流動性を低下させることができ、さらに、当該樹脂ワニスを用いて作製したプリプレグを高弾性、低熱膨張性、及び低誘電正接とすることができる。
前記充填材としては、例えば、タルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩;酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩;ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物;チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等の無機充填材、シリコンゴム、アクリルゴム粒子、ポリスチレンパウダー等の有機充填材を用いることができる。
本発明に用いられる充填材としては、これらの中でも特に低誘電正接及び低熱膨張性である点から、シリカが好ましく、特に溶融シリカが好ましい。
また、前記充填材の形状は、破砕状、球状等が挙げられるが、プリプレグ製造において樹脂組成物のガラスクロスに対する含浸性を確保するため、球状であることが好ましく、特に球状シリカを使うことが好ましい。
前記充填材の粒径は、特に限定されないが、平均粒径が0.01〜5.0μmであることが好ましく、特に0.1〜2.0μmであることが好ましい。充填材の平均粒径が前記下限値未満であると、本発明の樹脂組成物を用いて樹脂ワニスを調製する際に、樹脂ワニスの粘度が高くなるため、プリプレグを作製する際の作業性に影響を与える場合がある。一方、前記上限値を超えると、樹脂ワニス中で充填材の沈降等の現象が起こる場合がある。充填材の平均粒径を前記範囲内とすることにより、作業性に優れたものとすることができる。なお、前記平均粒径は、例えば、超音波振動電流法(ゼータ電位)、超音波減衰分光法(粒度分布)およびレーザー回折散乱法により測定することができる。具体的には、微粒子の平均粒径はD50で規定できる。
また前記充填材は、特に限定されないが、平均粒径が単分散の充填材を用いることもできるし、平均粒子径が多分散の充填材を用いることができる。なお、本発明において平均粒径が単分散であるとは、粒径の標準偏差が10%以下であるものを意味し、多分散であるとは、粒径の標準偏差が10%以上であるものを意味する。
本発明に用いられる充填材としては、平均粒径が単分散及び/または、多分散の充填材を1種類単独で用いることもできるし、2種類以上併用することもできる。
前記充填材の含有量は、特に限定されないが、前記熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で60〜85重量%が好ましく、特に65〜75重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると充填材の分散性に優れ、樹脂ワニスがガラスクロスに保持されやすいためガラスクロスへの樹脂層の厚付けができ、さらに、前記熱硬化性樹脂組成物を用いて作製したプリプレグは高弾性、低熱膨張性、低誘電率及び低誘電正接となる。
本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含有することができる。
前記硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に限定することなく用いることができ、エポキシ樹脂の硬化剤として公知の脂肪族アミン、芳香族アミン、ジシアンジアミド、ジカルボン酸ジヒドラジド化合物、酸無水物、フェノール樹脂等を用いることができる。これらの硬化剤は、単独で用いても2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、耐熱性の観点から芳香族アミンが好ましい。
前記硬化剤の含有量は、特に限定されないが、前記熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を用いない場合は、前記熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で2〜15重量%が好ましく、特に5〜12重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると、硬化を促進する効果が不充分で樹脂組成物の流動性が高く、プリプレグの加熱加圧成形時にスジ状のムラが発生したり、硬化が不充分でモノマーが残存し、その結果半田耐熱性が悪化したりする場合がある。一方、含有量が前記上限値を超えると、硬化を促進する効果が飽和する場合があり、硬化に寄与しない反応基が残存し、誘電特性(低誘電率、低誘電正接)が悪化する場合がある。
なお、前記熱硬化性樹脂としてシアネート樹脂を用いる場合はシアネート樹脂とアミノ基が激しく反応するため、前記硬化剤の含有量は、前記熱硬化性樹脂組成物全体の固形分基準で0〜5重量%が好ましく、特に0〜2重量%が好ましい。
また、本発明において硬化剤と硬化促進剤を併用しても良い。前記硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の有機燐系や、1.8−ジアザビシクロウンデセン、トリエチレンジアミン、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール等の窒素系の硬化促進剤かそれらのアダクト品が好適に使用される。
また、本発明に用いられる熱硬化性樹脂組成物は、特に限定されないが、カップリング剤を使用することができる。これにより、熱硬化性樹脂と充填材との界面の濡れ性を向上させることにより、ガラスクロスに対して樹脂及び充填材を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を向上させることができる。
前記カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオイル型カップリング剤等が挙げられる。
前記カップリング剤の含有量は、特に限定されないが、前記充填材100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、特に0.1〜2重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると前記充填材を十分に被覆できないため耐熱性を向上する効果が低い場合があり、前記上限値を超えると反応に影響を与え、曲げ強度等が低下する場合がある。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、上記成分以外の添加物を、特性を損なわない範囲で添加することができる。上記成分以外の成分としては、アクリル系重合物等の表面調整剤、染料及び顔料等の着色剤等を挙げることができる。
本発明の樹脂ワニスは、溶剤としてケトン系溶剤を用いる。本発明の樹脂ワニスに用いられる溶剤は、全体の70質量%以上がケトン類からなるものであればよく、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、アルコールエステル類、エーテルアルコール類、及びエステルエーテル類等のケトン類以外の溶剤を30質量%未満の割合で含んでいてもよい。
前記ケトン類としては、特に限定されないが、例えば、アセトン、アセトフェノン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2‐(1‐シクロヘキセニル)シクロヘキサノン等が挙げられる。前記ケトン類は、1種を単独で、または2種以上を併用して用いられる。これらの中でも、ビスマレイミド化合物の溶解性の点で環状ケトン類が好ましく、特にシクロヘキサノン、イソホロン及びメチルシクロヘキサノンが好ましい。つまり、本発明に用いられるケトン系溶剤は、シクロヘキサノン、イソホロン及びメチルシクロヘキサノンのうち少なくとも1つを含み、且つ、当該3種のケトン類の含有量の総量が70質量%以上であることが好ましい。また、特に沸点及び生産性の観点からシクロヘキサノンを含むことが好ましい。なお、本発明において環状ケトン類とは、飽和又は不飽和脂環式ケトンである。また、前記メチルシクロヘキサノンは、2−メチルシクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノンのいずれにおいても同様に好ましい。
本発明の樹脂ワニスは、特に限定されないが、例えば、前記充填材を溶剤に分散したスラリーを調製し、当該スラリーにその他の成分を添加し、さらに前記溶剤を加えて溶解・混合させる方法等が挙げられる。スラリー状のものを用いることで、充填材の2次凝集を防止することができ、分散性が向上される。
本発明の樹脂ワニスの固形分は、特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。樹脂ワニスの固形分量が前記下限値未満であると、樹脂ワニスの流動性が高すぎ、前記上限値を超えると、樹脂ワニスの流動性が低すぎる。樹脂ワニスの固形分量が前記範囲内であると、樹脂ワニスの流動性が良好であるため、プリプレグ作製時において、ガラスクロスに対する樹脂組成物の保持率が高く且つ作業性に優れる。
(プリプレグ)
次に、本発明のプリプレグについて説明する。
本発明のプリプレグは、上述した本発明の樹脂ワニスをガラスクロスに保持させた後、前記樹脂ワニス中の溶剤を除去することにより得られる。プリプレグ作製の際の加熱乾燥工程では、樹脂ワニス中の溶剤が除去されると同時に、樹脂ワニスが含有する樹脂組成物の硬化反応が進行し、加熱乾燥後の樹脂層は半硬化状態となる。
本発明のプリプレグは、上述の樹脂ワニスを用いて作製されるため、多量の充填材が含まれているにも関わらず、樹脂ワニスを基材に含浸させる際に樹脂と充填材とが分離しない。よって、加熱加圧成形して積層板を製造する際にも、スジ状のムラが発生する等の外観不良が生じない。
また、本発明のプリプレグの樹脂層は、加熱乾燥時の硬化反応の進行が、ビスマレイミド化合物と残留ケトン溶剤との相互作用によって遅くなるため、半硬化状態においてボイドが発生せず、当該プリプレグをコア基板用基材として用いる時の樹脂層と導体層との密着性、及び当該プリプレグをビルドアップ用絶縁材として用いる時の樹脂層への回路埋め込み性にも優れる。
また、本発明のプリプレグは、本発明の樹脂ワニスが、エポキシ樹脂を含むことで導体層との密着性に優れ、ビスマレイミド化合物を含むことで、誘電特性(誘電率、誘電正接)に優れ、充填材を多量に含有することで高弾性及び低熱膨張性であり、誘電正接がより低い。
前記ガラスクロスとしては、例えばガラス織布、ガラス不織布、ガラスペーパー等が挙げられる。これらの中でも線膨張係数を低減する観点から、ガラス織布が好ましい。
前記ガラスクロスを構成するガラスは、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でもEガラス、Tガラス、または、Sガラスが好ましい。これにより、ガラスクロスの高弾性化を達成することができ、熱膨張係数も小さくすることができる。
前記樹脂ワニスを前記ガラスクロスに含浸させる方法は、例えばガラスクロスを樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより塗布する方法、スプレーにより吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、ガラスクロスを樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、ガラスクロスに対する熱硬化性樹脂組成物の含浸性を向上させることができる。尚、ガラスクロスを樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。図1に示すように、ガラスクロス1を、含浸槽2の樹脂ワニス3中に浸漬して、ガラスクロス1に樹脂ワニス3を含浸する。その際、含浸槽2が備えるディップロール4(図1では3本)によってガラスクロス1は樹脂ワニス3中に浸漬される。次いで、樹脂ワニス3を含浸したガラスクロス1を、垂直方向に引き上げて、水平方向に並設され、対向している1対のスクイズロール又は、コンマロール(図1の5はスクイズロール)の間を通して、ガラスクロス1への樹脂ワニス3の塗布量を調整する。その後、樹脂ワニス3が塗布されたガラスクロス1を、乾燥機6で所定の温度で加熱して、塗布された樹脂ワニス中の溶剤を揮発させると共に熱硬化性樹脂組成物を半硬化させてプリプレグ7を製造する。なお、図1中の上部ロール8はプリプレグ7を進行方向に移動させるために、プリプレグ7の進行方向と同方向に回転している。また、前記樹脂ワニス3の溶剤を乾燥させる条件は、温度90〜180℃、時間1〜10分で乾燥させることにより半硬化のプリプレグ7を得ることができる。
本発明のプリプレグは、前記ガラスクロスの単位面積あたり重量が24g/m〜49g/mで、且つ前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が48g/m〜279g/mであることが好ましい。ガラスクロスの単位面積あたり重量及び熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が前記範囲内であると、ガラスクロスに保持される樹脂組成物量が大きいので、プリプレグが低誘電率及び低誘電正接となり、且つ、ガラスクロスが薄いので、プリプレグ全体の厚さが従来と同等又はそれ以下となる。
また、本発明のプリプレグは、前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が、ガラスクロスの単位面積あたりの重量の2倍〜5.7倍であることが好ましく、特に3倍〜5倍であることが好ましい。これにより、プリプレグが低誘電率及び低誘電正接となる。
(金属張積層板)
次に、金属張積層板について説明する。
本発明の金属張積層板は、上述のプリプレグ上に金属箔を積層し、加熱加圧して得られる。前記プリプレグは、1枚で用いても良いし、2枚以上積層した積層体を用いても良い。プリプレグを1枚で用いるときは、その上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。プリプレグを2枚以上積層した積層体を用いるときは、当該積層体の最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔を重ねる。次に、プリプレグと金属箔とを重ねたものを加熱加圧成形することで金属張積層板を得ることができる。
前記金属箔としては、例えば、銅、銅系合金、アルミ、アルミ系合金、銀、銀系合金、金、金系合金、亜鉛、亜鉛系合金、ニッケル、ニッケル系合金、錫、錫系合金、鉄、鉄系合金等の金属箔が挙げられる。また、上記のような銅、銅系合金等の導体層をめっきにより形成してもよい。
前記加熱する温度は、特に限定されないが、120〜220℃が好ましく、特に150〜200℃が好ましい。前記加圧する圧力は、特に限定されないが、0.5〜5MPaが好ましく、特に1〜3MPaが好ましい。また、必要に応じて高温槽等で150〜300℃の温度で後硬化を行ってもかまわない。
本発明の金属張積層板は、本発明のプリプレグを用いているため、ボイドの発生がなく、金属箔の密着性に優れる。さらに、加熱加圧成形時の樹脂組成物のフローが少なく、加熱加圧中の金属張積層板内における溶融樹脂の不均一な移動が抑制され、金属張積層板表面のスジ状のムラを防止し、且つ均一な厚みとすることができる。
(プリント配線板)
次に、本発明のプリント配線板について説明する。
本発明のプリント配線板は、上記の金属張積層板を内層回路基板に用いてなる。
または、本発明のプリント配線板は、上記のプリプレグを絶縁層に用いてなる。
本発明においてプリント配線板とは、絶縁層の上に金属箔等の導体層を設けて導体回路層を形成したものであり、片面プリント配線板(一層板)、両面プリント配線板(二層板)、及び多層プリント配線板(多層板)のいずれであってもよい。多層プリント配線板とは、メッキスルーホール法やビルドアップ法等により3層以上に重ねたプリント配線板であり、内層回路基板に絶縁層を重ね合わせて加熱加圧成形することによって得ることができる。
前記内層回路基板は、例えば、本発明の金属張積層板の金属箔にエッチング等を行って、所定パターンの導体回路を形成し、当該導体回路部分を黒化処理したものを好適に用いることができる。
前記絶縁層としては、本発明のプリプレグを用いることができる。尚、前記絶縁層として、本発明のプリプレグを用いる場合は、前記内層回路基板は本発明の金属張積層板からなるものでなくてもよい。
以下、本発明のプリント配線板の代表例として、本発明の金属張積層板を内層回路基板として用い、本発明のプリプレグを絶縁層として用いる場合の多層プリント配線板について説明する。
前記金属張積層板の片面又は両面に、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法等の公知の方法により回路形成し、内層回路基板を作製する。場合によっては、ドリル加工、レーザー加工によりスルーホールを形成し、メッキ等で両面の電気的接続をとることもできる。この内層回路基板に前記プリプレグを重ね合わせて加熱加圧成形することで絶縁層を形成する。同様にして、前記公知の方法により導体回路層と絶縁層とを交互に繰り返し形成することにより、多層プリント配線板を得ることができる。
具体的には、前記プリプレグと前記内層回路基板とを重ね合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形し、その後、熱風乾燥装置等で絶縁層を加熱硬化させる。ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
次に、積層した絶縁層にレーザーを照射して、開孔部を形成する。前記レーザーは、エキシマレーザー、UVレーザー及び炭酸ガスレーザー等が使用できる。
レーザー照射後の樹脂残渣(スミア)等は過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤等により除去する処理、すなわちデスミア処理を行うことが好ましい。デスミア処理が不十分で、デスミア性が十分に確保されていないと、開孔部に金属メッキ処理を行っても、スミアが原因で上層導体回路層と下層導体回路層との通電性が十分に確保されなくなるおそれがある。また、デスミア処理を行うことで、平滑な絶縁層の表面を同時に粗化することができるため、次工程において金属メッキにより形成される外層回路の密着性を上げることができる。尚、レーザー照射による開孔部形成の前に、絶縁層表面に導体層を形成してもよい。
次に、開孔部に金属メッキ処理を行い、前記公知の方法により絶縁層表面に外層回路形成を行う。開孔部に金属メッキ処理を行うことで、外層回路と内層回路との導通を図る。
さらに絶縁層を積層し、前記同様回路形成を行っても良いが、多層プリント配線板では、回路形成後、最外層にソルダーレジスト膜を形成する。ソルダーレジスト膜の形成方法は、特に限定されないが、例えば、ドライフィルムタイプのソルダーレジストを積層(ラミネート)し、露光、及び現像により形成する方法、又は液状レジストを印刷したものを露光、及び現像により形成する方法によりなされる。尚、得られた多層プリント配線板を半導体装置に用いる場合、半導体素子を実装するため接続用電極部を設ける。接続用電極部は、金メッキ、ニッケルメッキ及び半田メッキ等の金属皮膜で適宜被覆することができる。
(半導体装置)
次に、本発明の半導体装置について説明する。
前記で得られたプリント配線板に半田バンプを有する半導体素子を実装し、半田バンブを介して、前記プリント配線板との接続を図る。そして、プリント配線板と半導体素子との間には封止樹脂を充填し、半導体装置を形成する。半田バンプは、錫、鉛、銀、銅、ビスマス等からなる合金で構成されることが好ましい。
半導体素子とプリント配線板との接続方法は、フリップチップボンダー等を用いて、プリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプとの位置合わせを行ったあと、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。尚、接続信頼性を良くするため、予めプリント配線板上の接続用電極部に半田ペースト等、比較的融点の低い金属の層を形成しておいてもよい。この接合工程に先んじて、半田バンプ及び/又はプリント配線板上の接続用電極部の表層にフラックスを塗布することで接続信頼性を向上させることもできる。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
(1)ワニスの調製
8.0重量部のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製、NC−3000H、エポキシ当量285)、9.1重量部の2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成製、BMI−80)、12.3重量部のフェノールノボラック型シアネート樹脂(LONZA社製、Primaset PT−30)、0.1重量部の2−フェニルイミダゾール(四国化成製、2PZ)、0.5質量部の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製、KBM−403)、70.0質量部の溶融シリカ粒子(アドマテックス製、SO−25R、平均粒径0.5μm)を42.8重量部のシクロヘキサノンに加え、不揮発分(固形分)が70質量%となるように調整して熱硬化性樹脂組成物のワニスを得た。
(2)プリプレグの製造
上記で得られたワニスを用いて、ガラス織布(厚さ0.032mm、旭化成エレクトロニクス製)31g/mに対して、ワニスを熱硬化性樹脂組成物の固形分で151g/m含浸させて、180℃の乾燥炉で5分間乾燥させ、熱硬化性樹脂組成物含有量83.0質量%のプリプレグを作製した。なお、このとき、熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたりの重量は、ガラスクロスの単位面積あたりの重量の4.9倍であった。
(3)金属張積層板の製造
上記で得られたプリプレグを4枚重ね、その最も外側の上下両面に厚さ12μmの電解銅箔(古河サーキットホイル製、F2WS−12)を重ねて、圧力4MPa、温度220℃で180分間加熱加圧成形を行い、厚さ0.4mmの両面銅張積層板を得た。
(4)プリント配線板の製造
上記で得られた両面銅張積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、無電解メッキで上下銅箔間の導通を図り、両面の銅箔をエッチングすることにより内層回路を両面に形成した(L(導体回路幅(μm))/S(導体回路間幅(μm))=50/50)。
次に、内層回路に過酸化水素水と硫酸を主成分とする薬液(旭電化工業(株)製、テックSO−G)をスプレー吹き付けすることにより、粗化処理による凹凸形成を行った。
次に、前記プリプレグを内層回路上に真空積層装置を用いて積層し、温度170℃、時間60分間加熱硬化し、積層体を得た。
その後、得られた積層体が有するプリプレグに、炭酸レーザー装置を用いてφ60μmの開孔部(ブラインド・ビアホール)を形成し、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレートコンパクト CP)に15分浸漬後、中和して粗化処理を行った。
次に、脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅メッキ皮膜による約0.5μmの給電層を形成した。この給電層表面に、厚さ25μmの紫外線感光性ドライフィルム(旭化成社製、AQ−2558)をホットロールラミネーターにより貼り合わせ、最小線幅/線間が20μm/20μmのパターンが描画されたクロム蒸着マスク(トウワプロセス社製)を使用して、位置を合わせ、露光装置(ウシオ電機社製UX−1100SM−AJN01)にて露光、炭酸ソーダ水溶液にて現像し、めっきレジストを形成した。
次に、給電層を電極として電解銅めっき(奥野製薬社製81−HL)を3A/dmにて30分間行い、厚さ約25μmの銅配線を形成した。ここで2段階剥離機を用いて、前記めっきレジストを剥離した。各薬液は、1段階目のアルカリ水溶液層にはモノエタノールアミン溶液(三菱ガス化学社製R−100)、2段階目の酸化性樹脂エッチング剤には過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液(日本マクダーミッド社製、マキュダイザー9275、9276)、中和には酸性アミン水溶液(日本マクダーミッド社製マキュダイザー9279)をそれぞれ用いた。
そして、給電層を過硫酸アンモニウム水溶液(メルテックス(株)製、AD−485)に浸漬処理することで、エッチング除去し、配線間の絶縁を確保した。次に、絶縁層を温度200℃、時間60分で最終硬化させ、最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、プリント配線板を得た。
(5)半導体装置の製造
プリント配線板は、前記で得られたプリント配線板であって、半導体素子の半田バンプ配列に相当するニッケル金メッキ処理が施された接続用電極部を配したものを50mm×50mmの大きさに切断し使用した。半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、半田バンプを有し、半導体素子の回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製、CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、プリント配線板上に加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂の硬化条件は、温度150℃、120分の条件であった。
(実施例2)
ワニスに含まれる2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成製、BMI−80)、フェノールノボラック型シアネート樹脂(LONZA社製、Primaset PT−30)の添加量を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例3)
ワニスに含まれるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製、NC−3000H、エポキシ当量285)をナフタレン骨格変性クレゾールノボラックエポキシ樹脂(日本化薬製、NC−7300L、エポキシ当量230)に変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例4)
ワニスに含まれるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製、NC−3000H、エポキシ当量285)をアントラセン型エポキシ樹脂(三菱化学製、YX−8800、エポキシ当量210)に変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例5)
ワニスに含まれる2.2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成製、BMI−80)をビス−(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン(ケイアイ化成製、BMI−70)に変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例6)
ワニスに含まれる2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成製、BMI−80)をポリフェニルメタンマレイミド(大和化成製、BMI−2300)に変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例7)
ワニスに含まれるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製、NC−3000H、エポキシ当量285)、2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成製、BMI−80)、フェノールノボラック型シアネート樹脂(LONZA社製、Primaset PT−30)、溶融シリカ粒子(アドマテックス製、SO−25R、平均粒径0.5μm)の添加量を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例8)
ワニスに含まれるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製、NC−3000H、エポキシ当量285)、2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成製、BMI−80)、フェノールノボラック型シアネート樹脂(LONZA社製、Primaset PT−30)、溶融シリカ粒子(アドマテックス製、SO−25R、平均粒径0.5μm)の添加量を表1に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例9)
実施例1のワニスを用いて、ガラス織布(厚さ0.039mm、旭化成エレクトロニクス製)25g/mに対して、ワニスを樹脂組成物の固形分で142g/m含浸させて、180℃の乾燥炉で5分間乾燥させ、樹脂組成物含有量85.0質量%のプリプレグを作製した以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。なお、実施例9で得られたプリプレグの熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたりの重量は、ガラスクロスの単位面積あたりの重量の5.7倍であった。
(実施例10)
実施例1のワニスを用いて、ガラス織布(厚さ0.045mm、旭化成エレクトロニクス製)49g/mに対して、ワニスを樹脂組成物の固形分で126g/m含浸させて、180℃の乾燥炉で5分間乾燥させ、樹脂組成物含有量73.5質量%のプリプレグを作製した以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。なお、実施例10で得られたプリプレグの熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたりの重量は、ガラスクロスの単位面積あたりの重量の2.6倍であった。
(実施例11)
実施例1の溶剤を3−メチルシクロヘキサノンに変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例12)
実施例1の溶剤をイソホロンに変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例13)
実施例1の溶剤をシクロヘキサノン32.8重量部及びメチルイソブチルケトン10.0重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(実施例14)
ワニスに含まれるビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製、NC−3000H、エポキシ当量285)を9.5重量部、2.2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成製、BMI−80)12.5重量部に変え、フェノールノボラック型シアネート樹脂(LONZA社製、Primaset PT−30)を用いず、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学製、APB)を7.4重量部用いた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例1)
ビスマレイミド化合物を用いず、フェノールノボラック型シアネート樹脂(LONZA社製、Primaset PT−30)の添加量を表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例2)
ビスマレイミド化合物を用いず、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬製、NC−3000H、エポキシ当量285)の添加量を表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例3)
ビスマレイミド化合物を用いず、アントラセン型エポキシ樹脂(三菱化学製、YX−8800、エポキシ当量210)の添加量を表2に示すように変えた以外は、実施例4と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例4)
エポキシ樹脂を用いず、2,2’−ビス[4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイアイ化成製、BMI−80)、フェノールノボラック型シアネート樹脂(LONZA社製、Primaset PT−30)の添加量を表2に示すように変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例5)
溶融シリカ粒子(アドマテックス製、SO−25R、平均粒径0.5μm)の添加量を表2に示すように30.0重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例6)
溶融シリカ粒子(アドマテックス製、SO−25R、平均粒径0.5μm)の添加量を表2に示すように200.0重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例7)
溶剤をジメチルホルムアミドに変えた以外は、実施例1と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例8)
溶剤をジメチルホルムアミドに変えた以外は、実施例5と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(比較例9)
溶剤をジメチルホルムアミドに変えた以外は、実施例14と同様にして、ワニスの調製、プリプレグの製造、金属張積層板の製造、プリント配線板の製造、半導体装置の製造を行った。
(評価)
各実施例および各比較例で得られた金属張積層板又はプリント配線板を用いて以下の評価を行った。評価内容を項目と共に示す。また、各実施例により得られた評価結果を表1に示し、各比較例により得られた評価結果を表2に示す。
(1)スジ状ムラの発生状況
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板表面のスジ状のムラの発生状況を目視により評価した。スジ状のムラが確認されなかったものを「問題なし」とし、スジ状のムラが確認されたものを「スジあり」とした。
(2)ボイドの発生状況
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板を全面エッチングし、ボイドの発生状況を目視により評価した。ボイドが確認されなかったものを「問題なし」とし、ボイドが確認されたものを「ボイドあり」とした。なお、両面銅張積層板に発生するボイドは、プリプレグに発生したボイドが加熱加圧により硬化したものであるので、両面銅張積層板にボイドが確認されたものは、当該両面銅張積層板の製造に用いられたプリプレグにもボイドが発生していたことを意味する。
(3)熱膨張係数(50〜100℃)
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板を全面エッチングし、得られた積層板から5mm×20mmの試験片を作製し、TMA(熱機械的分析)装置(TAインスツルメント社製、Q400)を用いて、温度範囲30〜300℃、昇降温速度10℃/分、荷重5gの条件で、温度30〜300℃の昇降温を1サイクルとし、2サイクル目の50〜100℃における線膨張係数(CTE)を測定した。
(4)銅箔ピール強度
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板から100mm×20mmの試験片を作製し、23℃におけるピール強度を測定した。尚、ピール強度測定は、JIS C 6481に準拠して行った。
(5)誘電特性
各実施例及び各比較例で得られた両面銅張積層板を全面エッチングし、97×25mm、53×25mm、38×25mmに切断し、0.018mmの圧延銅箔を貼り付け、トリプレート線路共振器を作成し、マイクロ波ネットワークアナライザHP8510C、HP83651A、HP8517B(アジレントテクノロジー製)を用いて、トリプレート線路共振器法で誘電率及び誘電正接を測定した。
(6)回路埋め込み性
各実施例及び各比較例で得られたプリント配線板の回路部分の断面を研磨し、蛍光液(マークテック社製蛍光浸透探傷剤、SUPER GLO OD−2800N)とともに圧力容器に入れ、125℃、1.5気圧で15分間浸透させた後、プリント配線板の回路部分の断面を落射蛍光顕微鏡により観察した。回路埋め込み不良により、回路の導体部分と絶縁層の間に埋め込みができなかった空隙部分が生じ、その空隙部分に蛍光浸透探傷剤が浸透し、蛍光が見られたものを「埋め込み不良」とし、蛍光が見られなかったものを「異常なし」とした。
Figure 2012116941
Figure 2012116941
比較例1では、ビスマレイミド化合物を用いず、シアネート樹脂を多く使用したため、回路埋め込み性が悪かった。
比較例2では、ビスマレイミド化合物を用いず、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂を多く使用したため、誘電正接が悪化した。
比較例3では、ビスマレイミド化合物を用いず、アントラセン型エポキシ樹脂を多く使用したため、スジ状のムラが発生した。
比較例4では、エポキシ樹脂を用いなかったため、銅箔ピール強度が悪化した。
比較例5では、充填材の量が少ないため、熱膨張係数及び誘電正接が高かった。
比較例6では、充填材の量が多いため、ボイドが発生し、回路埋め込み性が悪く、銅箔ピール強度が悪化した。
比較例5、6、7では、溶剤としてケトン系溶剤を用いず、含窒素非プロトン性極性溶媒を用いたため、樹脂ワニスの流動性が大きく、スジ状のムラが発生した。
一方、実施例1〜14では、誘電特性に優れ、導体層との密着性及び回路埋め込み性に優れ、スジ状のムラやボイドの発生もなく、低熱膨張性、銅箔ピール強度に優れる等の基本的な要求品質も満たしていた。
1…ガラスクロス
2…含浸槽
3…樹脂ワニス
4…ディップロール
5…スクイズロール
6…乾燥機
7…プリプレグ
8…上部ロール

Claims (10)

  1. エポキシ樹脂及びビスマレイミド化合物を含有する熱硬化性樹脂と、固形分中60〜85質量%の割合で含有する充填材とを含む熱硬化性樹脂組成物を、ケトン系溶剤に含有させたことを特徴とする、樹脂ワニス。
  2. 前記ケトン系溶剤が、シクロヘキサノン、イソホロン及びメチルシクロヘキサノンのうち少なくとも1種を含み、且つ、シクロヘキサノン、イソホロン及びメチルシクロヘキサノンの含有量の総量が70質量%以上である、請求項1に記載の樹脂ワニス。
  3. 前記熱硬化性樹脂が、さらにシアネート樹脂を含むものである、請求項1又は2に記載の樹脂ワニス。
  4. 前記請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂ワニスを、ガラスクロスに保持させた後、前記ケトン系溶剤を除去することにより得られるプリプレグ。
  5. 前記ガラスクロスの単位面積あたり重量が24g/m〜49g/mで、且つ前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が48g/m〜279g/mである、請求項4に記載のプリプレグ。
  6. 前記熱硬化性樹脂組成物の単位面積あたり重量が、ガラスクロスの単位面積あたりの重量の2倍〜5.7倍である請求項4又は5に記載のプリプレグ。
  7. 前記請求項4乃至6のいずれか一項に記載のプリプレグ上に金属箔を積層し、加熱加圧して得られることを特徴とする金属張積層板。
  8. 前記請求項7に記載の金属張積層板を内層回路基板に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
  9. 内層回路上に、前記請求項4乃至6のいずれか一項に記載のプリプレグを絶縁層に用いてなることを特徴とするプリント配線板。
  10. 前記請求項8又は9に記載のプリント配線板に半導体素子を搭載してなることを特徴とする半導体装置。
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